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特開2024-72089プレスフィット端子およびプレスフィット端子の接続構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072089
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】プレスフィット端子およびプレスフィット端子の接続構造
(51)【国際特許分類】
   H01R 12/58 20110101AFI20240520BHJP
【FI】
H01R12/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182715
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 聡
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB18
5E223AB41
5E223AB43
5E223AC21
5E223BA07
5E223BB12
5E223CB63
5E223CB64
5E223CD01
5E223CD15
5E223DB08
5E223DB13
(57)【要約】
【課題】スルーホールへの圧入時におけるプレスフィット端子および基板へのダメージを抑えることを可能としたプレスフィット端子およびプレスフィット端子の接続構造を提供する。
【解決手段】プレスフィット端子10は、先端部11、弾性部12および本体部13を備える。弾性部12は、一対の梁部21を有する。各梁部21は、前梁部22、後梁部24、および圧入部23を有する。前梁部22の前側傾斜部25は、アイホール19の前端Aよりも前方に、スルーホール91への圧入時にスルーホール91の開口端部93に最初に接触する接触開始部位33を有する。アイホール19の周縁は、アイホール19の前端Aから後方に向けて幅方向の外側に拡開する前側ホール端部28と、アイホール19の後端Bから前方に向けて幅方向の外側に拡開する後側ホール端部29と、を有する。後側ホール端部29のRは、前側ホール端部28のRよりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のスルーホールに軸方向に圧入されるプレスフィット端子であって、
前記軸方向の前端側から順に、先端部、弾性部および本体部を備え、
前記弾性部は、アイホールを挟んで前記軸方向と直交する幅方向に対向し、前記スルーホールの内周面に弾性反力を作用させる一対の梁部を有し、
前記一対の梁部は、前記軸方向の前端側で前記先端部に連なる前梁部と、前記軸方向の後端側で前記本体部に連なる後梁部と、前記軸方向に関して前記前梁部と前記後梁部との間に位置する圧入部と、を有し、
前記前梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記先端部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する前側傾斜部を有し、
前記後梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記本体部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する後側傾斜部を有し、
前記前側傾斜部は、前記アイホールの前記軸方向の前端よりも前方に、前記スルーホールへの圧入時に前記スルーホールの開口端部に最初に接触する接触開始部位を有し、
前記アイホールの周縁は、前記アイホールの前記軸方向の前端から後方に向けて前記幅方向の外側に拡開する前側ホール端部と、前記アイホールの前記軸方向の後端から前方に向けて前記幅方向の外側に拡開する後側ホール端部と、を有し、
前記後側ホール端部のRは、前記前側ホール端部のRよりも小さい、プレスフィット端子。
【請求項2】
0.2mm以上0.6mm以下の板厚で前記幅方向に板面を向けて配置される板状のプレスフィット端子であって、
前記アイホールの前記軸方向の前端から前記接触開始部位までの前記軸方向の距離をPとした場合に、
0.05mm≦P≦0.11mm
の関係式が成立する、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項3】
前記前側ホール端部は、真円の円弧に沿って湾曲している、請求項1に記載のプレスフィット端子。
【請求項4】
前記圧入部が前記スルーホールの内周面に前記軸方向に沿って接触し、前記アイホールの全体が前記スルーホールの内側に収まる請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプレスフィット端子の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プレスフィット端子およびプレスフィット端子の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたプレスフィット端子は、基板のスルーホールに軸方向に圧入される弾性部(プレスフィット部)を有している。弾性部は、アイホールを有し、スルーホールへの圧入時に、アイホールの開口幅を狭める方向に弾性変形してスルーホールの内周面に接触する。この種のプレスフィット端子は、特許文献2-4にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-163641号公報
【特許文献2】特開2021-163525号公報
【特許文献3】特開2020-166954号公報
【特許文献4】特開2004-127610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プレスフィット端子がスルーホールに圧入されて弾性変形したときに、プレスフィット端子の表面に割れが発生する懸念があった。こうしたプレスフィット端子へのダメージを抑えるために、上記特許文献1-4においてはアイホールの形状、配置等に十分な配慮がなされておらず、さらなる改良の余地があった。加えて、プレスフィット端子へのダメージ低減と基板へのダメージ低減の両立に問題があった。
【0005】
そこで本開示は、スルーホールへの圧入時におけるプレスフィット端子および基板へのダメージを抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、基板のスルーホールに軸方向に圧入されるプレスフィット端子であって、前記軸方向の前端側から順に、先端部、弾性部および本体部を備え、前記弾性部は、アイホールを挟んで前記軸方向と直交する幅方向に対向し、前記スルーホールの内周面に弾性反力を作用させる一対の梁部を有し、前記一対の梁部は、前記軸方向の前端側で前記先端部に連なる前梁部と、前記軸方向の後端側で前記本体部に連なる後梁部と、前記軸方向に関して前記前梁部と前記後梁部との間に位置する圧入部と、を有し、前記前梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記先端部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する前側傾斜部を有し、前記後梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記本体部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する後側傾斜部を有し、前記前側傾斜部は、前記アイホールの前記軸方向の前端よりも前方に、前記スルーホールへの圧入時に前記スルーホールの開口端部に最初に接触する接触開始部位を有し、前記アイホールの周縁は、前記アイホールの前記軸方向の前端から後方に向けて前記幅方向の外側に拡開する前側ホール端部と、前記アイホールの前記軸方向の後端から前方に向けて前記幅方向の外側に拡開する後側ホール端部と、を有し、前記後側ホール端部のRは、前記前側ホール端部のRよりも小さい、プレスフィット端子である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、スルーホールへの圧入時におけるプレスフィット端子および基板へのダメージを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態1に係るプレスフィット端子の斜視図である。
図2図2は、プレスフィット端子の先端部および弾性部の平面図である。
図3図3は、プレスフィット端子の正面図である。
図4図4は、プレスフィット端子の接触開始部位がスルーホールの開口端部に接触した状態を、基板を破断して示す図である。
図5図5は、プレスフィット端子がスルーホールに挿入された状態を、基板を破断して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のプレスフィット端子は、
(1)基板のスルーホールに軸方向に圧入されるプレスフィット端子であって、前記軸方向の前端側から順に、先端部、弾性部および本体部を備え、前記弾性部は、アイホールを挟んで前記軸方向と直交する幅方向に対向し、前記スルーホールの内周面に弾性反力を作用させる一対の梁部を有し、前記一対の梁部は、前記軸方向の前端側で前記先端部に連なる前梁部と、前記軸方向の後端側で前記本体部に連なる後梁部と、前記軸方向に関して前記前梁部と前記後梁部との間に位置する圧入部と、を有し、前記前梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記先端部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する前側傾斜部を有し、前記後梁部は、前記幅方向の外側の側端に、前記本体部側から前記圧入部に向けて前記幅方向の外側に傾斜する後側傾斜部を有し、前記前側傾斜部は、前記アイホールの前記軸方向の前端よりも前方に、前記スルーホールへの圧入時に前記スルーホールの開口端部に最初に接触する接触開始部位を有し、前記アイホールの周縁は、前記アイホールの前記軸方向の前端から後方に向けて前記幅方向の外側に拡開する前側ホール端部と、前記アイホールの前記軸方向の後端から前方に向けて前記幅方向の外側に拡開する後側ホール端部と、を有し、前記後側ホール端部のRは、前記前側ホール端部のRよりも小さい。
【0010】
プレスフィット端子のスルーホールへの圧入時に、前側傾斜部の接触開始部位がスルーホールの開口端部にまず接触し、前側傾斜部が弾性変形する。ここで、接触開始部位はアイホールの軸方向の前端よりも前方に位置しているので、前側傾斜部には圧縮応力が作用することになる。前梁部の割れは、スルーホールへの圧入時に前側傾斜部等に発生する引張り応力に起因することが、変形解析より明らかにされている。よって、圧縮応力が作用する前側傾斜部においては割れの発生を未然に抑えることができる。
プレスフィット端子のスルーホールへの圧入が進むと、後側傾斜部が大きく弾性変形し、アイホールの後側ホール端部寄りの開口幅が狭められる。ここで、後側ホール端部のRが前側ホール端部のRよりも小さいので、後側傾斜部は前記開口幅を狭める方向に円滑に弾性変形することができる。よって、後側傾斜部がスルーホールへ圧入される際に発生する基板へのダメージを抑えることができる。
このように本開示によれば、プレスフィット端子へのダメージと基板へのダメージをいずれも低減することが可能となる。
【0011】
(2)0.2mm以上0.6mm以下の板厚で前記幅方向に板面を向けて配置される板状のプレスフィット端子であって、前記アイホールの前記軸方向の前端から前記接触開始部位までの前記軸方向の距離をPとした場合に、0.05mm≦P≦0.11mmの関係式が成立することが好ましい。
【0012】
アイホールの前端から接触開始部位までの軸方向の距離Pが前記関係式を満たしていると、プレスフィット端子が受けるダメージを効果的に抑えることができる。なお、距離Pが0.05mmよりも小さいと、前側傾斜部に引張り応力が発生する懸念がある。他方、距離Pが0.11mmよりも大きいと、前側傾斜部がスルーホールへ圧入される際に発生する基板へのダメージが増大する懸念がある。
【0013】
(3)前記前側ホール端部は、真円の円弧に沿って湾曲していることが好ましい。
【0014】
プレスフィット端子のスルーホールへの圧入時に、前側ホール端部の潰れが抑えられるため、前側傾斜部には圧縮応力をより長く作用させることができる。
【0015】
(4)前記圧入部が前記スルーホールの内周面に前記軸方向に沿って接触し、前記アイホールの全体が前記スルーホールの内側に収まる、前記(1)-(3)のいずれかに記載されたプレスフィット端子の接続構造であると良い。
【0016】
圧入部における前側傾斜部寄りの部分と後側傾斜部寄りの部分とがいずれもスルーホールの内周面に接触することができるので、基板に対するプレスフィット端子の保持力を高めることができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
本開示の実施形態1に係るプレスフィット端子10は、軸方向に延びる形状をなし、基板90のスルーホール91に圧入される。なお、以下の説明において、前後方向については、プレスフィット端子10がスルーホール91に先行して圧入される先端側を、軸方向の前端側、または単に前端側と称する。つまり、軸方向が前後方向であり、各図の下側が前側になる。各図の左右方向は幅方向とする。幅方向の両側は、幅方向の外側と同義である。幅方向の外側は、単に外側と称することもあり、幅方向の内側は、単に内側と称することもある。各図において、前側は符号Fで表記され、幅方向(左側)は符号Wで表記される。また、後述する弾性部12の構造は、特に断らない限り、プレスフィット端子10がスルーホール91に圧入される前である変形前の形態に基づいて説明する。
【0019】
(プレスフィット端子の構造)
プレスフィット端子10は、導電金属製であって、金属板の打ち抜き等によって軸方向に細長い形状に成形される。プレスフィット端子10の板面は、幅方向に沿って配置される。プレスフィット端子10の板厚は、前記板面と直交し、幅方向を向いて配置される。
【0020】
このプレスフィット端子10は、図1に示すように、軸方向の前端側から順に、先端部11、弾性部12および本体部13を備えている。
本体部13は、プレスフィット端子10の全長の半分以上に亘って形成され、図示しないコネクタハウジングに装着される。図1に示す本体部13は、軸方向に直線状に形成されているが、軸方向の途中で折り曲げられていてもよい。本体部13は、後端部に図示しない相手端子金具に接触するタブ部14を有し、タブ部14よりも前方にコネクタハウジングに圧入される保持部15を有している。そして、本体部13は、弾性部12寄りの位置に、幅方向の両側に張り出す一対の張出片16を有している。各張出片16の後端は、幅方向に沿って配置される。各張出片16の後端には後方から図示しない治具が押し当てられる。プレスフィット端子10は、治具に押圧されて基板90のスルーホール91に圧入される。
【0021】
図2および図3に示すように、先端部11は、前端側に向けて縮径する縮径部17を有している。縮径部17は、プレスフィット端子10のスルーホール91への誘い込みとして機能する。先端部11は、幅方向の両側の側端における角部に、曲面状の面取り部18を有している。面取り部18は、先端部11から弾性部12に亘って形成されている。また、先端部11は、縮径部17を除いて、軸方向に一定の幅寸法で延びる形状になっている。
【0022】
図2に示すように、弾性部12は、幅方向の中央部に、板厚方向に貫通するアイホール19を有し、アイホール19を挟んだ幅方向の両側の端部に、一対の梁部21を有している。
各梁部21は、アイホール19を介して外側に膨出する形状とされている。各梁部21の内側の側端は、後述するアイホール19の周縁を区画している。各梁部21の外側の側端は、スルーホール91への圧入時に、スルーホール91の内周面に接触し、スルーホール91の内周面に形成された導電部92に電気的に接続される(図4および図5を参照)。
【0023】
図2に示すように、各梁部21は、軸方向の前端側から順に、前梁部22、圧入部23および後梁部24を有している。
前梁部22は、外側の側端に、先端部11から圧入部23にかけて外側に拡開する前側傾斜部25を有している。前側傾斜部25の前端つまり先端部11との連結端は、アイホール19の前端Aよりも前方に位置している。前側傾斜部25の後端つまり圧入部23との連結端は、アイホール19の前端Aよりも後方で且つアイホール19の前後中央よりも前方に位置している。
【0024】
後梁部24は、外側の側端に、本体部13から圧入部23にかけて外側に拡開する後側傾斜部26を有している。後側傾斜部26の軸方向に対する傾斜角は、前側傾斜部25の軸方向に対する傾斜角よりも大きくされている。後側傾斜部26の軸方向の長さは、前側傾斜部25の軸方向の長さよりも短くされている。後側傾斜部26の後端つまり本体部13との連結端は、アイホール19の後端Bよりも後方に位置している。後側傾斜部26の前端つまり圧入部23との連結端は、アイホール19の後端Bよりも前方で且つアイホール19の前後中央よりも後方に位置している。
【0025】
圧入部23は、外側の側端に、後側傾斜部26から前側傾斜部25にかけて軸方向に内側にやや傾斜して延びる中間側端部27を有している。中間側端部27は、軸方向に関してアイホール19の範囲内に配置されている。
【0026】
図2に示すように、アイホール19は、全体として軸方向に長く延び、幅方向の中央を通る軸線Sに対して左右対称の形状になっている。アイホール19の周縁は、アイホール19の前端Aを含む前側ホール端部28と、アイホール19の後端Bを含む後側ホール端部29と、前側ホール端部28と後側ホール端部29との間に位置する幅方向に一対の中間ホール縁部31と、を有している。
【0027】
前側ホール端部28は、アイホール19の前端Aから幅方向の両側に湾曲状しつつ後方に延びるように拡開し、全体として円弧状をなしている。具体的には、前側ホール端部28は、全体として真円の円弧に沿って湾曲し、幅方向の両端を中間ホール縁部31に連ねている。前側傾斜部25は、前側ホール端部28の幅方向の両側に位置している。
【0028】
後側ホール端部29は、アイホール19の後端Bから幅方向の両側に湾曲しつつ前方に拡開し、全体として円弧状をなしている。具体的には、後側ホール端部29は、全体として前側ホール端部28よりも短く、真円の円弧に沿って湾曲している。後側ホール端部29のRは、前側ホール端部28のRよりも小さくされている。なお、本明細書において、Rは、曲率半径に相当する。
【0029】
また、アイホール19の周縁は、各中間ホール縁部31から後側ホール端部29の周方向の両端にかけてテーパ状に縮幅する一対のテーパ部32を有している。前側傾斜部25は、前側ホール端部28および各テーパ部32の幅方向の両側に位置している。後梁部24は、後側ホール端部29および各テーパ部32と後側傾斜部26とによって区画され、幅寸法を大きく変化させることなく延びる形状になっている。
【0030】
各中間ホール縁部31は、軸方向に長く延び、互いに平行に配置されている。前側傾斜部25の後半部分と中間側端部27は、各中間ホール縁部31の幅方向の外側に位置している。
【0031】
(プレスフィット端子の作用および接続構造)
プレスフィット端子10は、各張出片16が図示しない治具で押圧されることで、先端部11側から基板90のスルーホール91に挿入される。前側傾斜部25は、先端部11に続いてスルーホール91に挿入される。図4に示すように、スルーホール91への挿入開始時に、前側傾斜部25の接触開始部位33が基板90の表面におけるスルーホール91の開口端部93に最初に接触する。前側傾斜部25の接触開始部位33は、スルーホール91の開口端部93に対して最初に接触する部位であり、アイホール19の前端Aよりも前方に位置している。
【0032】
前側傾斜部25の接触開始部位33がスルーホール91の開口端部93に接触した後、さらなるプレスフィット端子10の挿入によって、前梁部22がスルーホール91の開口端部93を摺動し、前梁部22が圧入部23とともに内側に弾性変形する。前述したように、接触開始部位33がアイホール19の前端Aよりも前方に位置しているので、接触開始部位33を含む前側傾斜部25には圧縮応力が作用し、前側傾斜部25の割れの発生が抑えられる。
【0033】
また、本実施形態1の場合、プレスフィット端子10の板厚は0.2mm-0.6mm、好ましくは0.3mm-0.5mm、より好ましくは0.4mmに設定されており、この場合において、アイホール19の前端Aから接触開始部位33までの軸方向の距離をP(図4を参照)とすると、Pが0.05mm≦P≦0.11mmの範囲となるように構成されている。板厚0.2mm-0.6mmのプレスフィット端子10が0.05mm≦P≦0.11mmの関係式を満たしていると、プレスフィット端子10の割れの発生を抑えるのに効果的であることが確認されている。つまり、距離Pが0.05より小さいと、前側傾斜部25に引張り応力が作用し、割れの発生を抑えることが困難になる。他方、距離Pが0.11より大きいと、前側傾斜部25がスルーホール91へ圧入される際に発生する基板90へのダメージが増大する懸念がある。
【0034】
さらにプレスフィット端子10のスルーホール91への挿入が進むと、中間側端部27がスルーホール91の内周面に接触して、圧入部23が内側に大きく弾性変形する。アイホール19の各テーパ部32が互いに近づくように変形すると、それに伴って後梁部24も内側に弾性変形する(図5を参照)。前述したように、後側ホール端部29のRが前側ホール端部28のRよりも小さいので、後側傾斜部26はアイホール19の後側ホール端部29寄りの開口幅を狭める方向に円滑に弾性変形することができ、後側傾斜部26がスルーホール91へ圧入される際に発生する基板90へのダメージを抑えることができる。
【0035】
本実施形態1の場合、圧入部23における後梁部24寄りの部位または後梁部24がスルーホール91の開口端部93に接触する挿入終盤状態での挿入力は、前梁部22の接触開始部位33がスルーホール91の開口端部93に接触する挿入初期状態での挿入力よりも小さくされている。このようにプレスフィット端子10の挿入終盤状態での挿入力が小さいことにより、プレスフィット端子10がスルーホール91に軸ずれして挿入されようとしたときに、基板90に与えるダメージを低減することが可能となる。
【0036】
プレスフィット端子10がスルーホール91に適正な深さで挿入されると、図5に示すように、アイホール19の全体がスルーホール91の内側に収まるように配置される。梁部21の圧入部23は、スルーホール91の内周面に軸方向に沿って接触し、スルーホール91の内周面に弾性反力を付与する。これにより、プレスフィット端子10は、基板90に保持されるとともに、導電部92に電気的に接続される。
【0037】
以上説明したように、本実施形態1によれば、前側傾斜部25の接触開始部位33がアイホール19の前端Aよりも前方に位置しているので、プレスフィット端子10のスルーホール91への圧入時に、前側傾斜部25に圧縮応力を作用させることができる。よって、前側傾斜部25の割れの発生を未然に抑えることができる。また、後側ホール端部29のRが前側ホール端部28のRよりも小さいので、後梁部24が内側に円滑に弾性変形することができる。よって、後側傾斜部26がスルーホール91へ圧入される際に発生する基板90へのダメージを抑えることができる。その結果、本実施形態1においては、スルーホール91への圧入時におけるプレスフィット端子10および基板90へのダメージを抑えることが可能となる。
【0038】
また、前側ホール端部28が真円の円弧に沿って湾曲しているため、プレスフィット端子10のスルーホール91への圧入時に、前側ホール端部28の潰れが抑えられ、前側傾斜部25に圧縮応力をより長く作用させることができる。
【0039】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、プレスフィット端子は、幅方向の中央を通る軸線に対して左右対称の形状になっていた。これに対し、他の実施形態によれば、プレスフィット端子は、幅方向の中央を通る軸線に対して左右非対称の形状であっても良い。例えば、弾性部は、左右非対称の形状であっても良い。
【符号の説明】
【0040】
10…プレスフィット端子
11…先端部
12…弾性部
13…本体部
14…タブ部
15…保持部
16…張出片
17…縮径部
18…面取り部
19…アイホール
21…梁部
22…前梁部
23…圧入部
24…後梁部
25…前側傾斜部
26…後側傾斜部
27…中間側端部
28…前側ホール端部
29…後側ホール端部
31…中間ホール縁部
32…テーパ部
33…接触開始部位
90…基板
91…スルーホール
92…導電部
93…開口端部
A…アイホールの前端
B…アイホールの後端
P…距離
S…軸線
図1
図2
図3
図4
図5