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  • 特開-搬送装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072093
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/04 20060101AFI20240520BHJP
   B65H 20/02 20060101ALI20240520BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240520BHJP
【FI】
H01M4/04 Z
B65H20/02 Z
H01M4/139
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182726
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦上 太一
(72)【発明者】
【氏名】石津 誠二
(72)【発明者】
【氏名】梅原 将一
(72)【発明者】
【氏名】石塚 直宏
(72)【発明者】
【氏名】岸本 尚也
【テーマコード(参考)】
3F103
5H050
【Fターム(参考)】
3F103AA01
3F103AA03
3F103AA05
3F103BA01
3F103BA33
5H050AA19
5H050BA17
5H050GA29
5H050HA20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電池の製造工程における基材の搬送の際に、ロールと基材の間に擦れが発生することを防ぐことができる技術を提供すること。
【解決手段】本開示は、電池の製造工程において、長尺シート状の基材を搬送する搬送装置100に関する。搬送装置100は、基材を搬送するロール11と、ロール11を貫通するシャフト31と、ロール11とシャフト31との間に設けられた軸受け21、71と、基材の搬送に合わせて基材の搬送方向と同一の方向にシャフト31を回転させる駆動装置51と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の製造工程において、長尺シート状の基材を搬送する搬送装置であって、
前記基材を搬送するロールと、
前記ロールを貫通するシャフトと、
前記ロールと前記シャフトとの間に設けられた軸受けと、
前記基材の搬送に合わせて前記基材の搬送方向と同一の方向に前記シャフトを回転させる駆動装置と
を備える
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記駆動装置は、前記ロールが前記シャフトと一体となって回転していると仮定した場合の前記ロールの周速度が前記基材の搬送速度と等しくなるように前記シャフトを回転させる
ことを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記駆動装置は、マグネットカップリングによって前記シャフトに駆動力を伝達する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池の製造においては、アルミニウム箔などの基材の一方の面に電極液などの塗布液を供給した後に、基材を搬送しながら該基材上の塗布液を乾燥させる工程が知られている。特許文献1は、そのような工程において主面に塗布液が供給された基材を処理する基材処理装置を開示している。特許文献1に開示される基材処理装置は、乾燥部を通過した後の基材が温度差によって収縮し、基材に皺が発生することを防ぐことを目的としてなされたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-172917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるように、電池や回路基板の製造工程、印刷工程などにおいては、長いシート状の基材が巻出部から巻取部へと搬送される場面がある。このような工程では、基材が決まった搬送経路に沿って移動するように基材の搬送は回転するロールによってガイドされる。しかし、電池の製造工程においては、ロールの配置が限定的となる場面があり、十分な基材の巻き付け角度を得られないためにロールの回転速度が基材の搬送速度と一致しなくなることがある。回転速度が基材の搬送速度と一致しなくなって基材とロールの間に擦れが発生すると、基材の表面に傷や汚れを生じることがあり望ましくない。
【0005】
本開示はこのような課題に鑑みてなされたものである。本開示は電池の製造工程における基材の搬送の際に、ロールと基材の間に擦れが発生することを防ぐことができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、電池の製造工程において、長尺シート状の基材を搬送する搬送装置に関する。
搬送装置は、
基材を搬送するロールと、
ロールを貫通するシャフトと、
ロールとシャフトとの間に設けられた軸受けと、
基材の搬送に合わせて基材の搬送方向と同一の方向にシャフトを回転させる駆動装置と
を備える、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、電池の製造工程における基材の搬送の際に、ロールと基材の間に擦れが発生することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施の形態に係る搬送装置の構成例を示す図である。
図2】本実施の形態に係る搬送装置の構成例を示す図である。
図3】比較技術におけるロールの構成例を示す図である。
図4】巻き付け角度を説明するための図である。
図5】電池の製造工程に含まれる塗装工程の概略図である。
図6】電池の製造工程において基材が乾燥炉内を搬送される場面を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0010】
印刷工程や、回路基板、リチウムイオン電池の源泉工程などにおいては、フィルムや紙、金属箔などの長いシート状の基材を搬送する場面がある。このようなシート状の基材はウェブと呼ばれ、そのウェブを搬送する技術はウェブハンドリングと呼ばれる。ウェブハンドリングにおいては、基材は巻出装置から連続的に送り出され、塗装や印刷、コーティングなどの加工が施されたのちに巻取装置によって巻き取られる。このような工程においては、巻出部と巻取部の間を決まった搬送経路に沿って基材が搬送されるように、ロールを用いて基材の搬送をガイドする方法が一般的に知られている。
【0011】
図3には、搬送経路に配置される一般的なロール10の例が示されている。ロール10は基材と接触して基材を支持する。シャフト30は固定され、ロール10は軸受け20でシャフト30に対して回転可能に支持される。基材が移動している間は、ロール10と基材の間に静止摩擦力が働くことでロール10に駆動力が与えられるため、ロール10は基材の移動と共に回転し、基材の搬送をガイドすることができる。
【0012】
しかし、図3に示されるような構成においては、ロール10と基材の静止摩擦力が小さくなるとロール10を回転させるのに必要な駆動力が不足することがある。駆動力が不足し、ロール10を回転させるのに必要な駆動力を下回れば、ロール10の回転は止まってしまう。そうしてロール10が基材の搬送速度に合わせて回転しなくなると、基材がロール10の表面でこすれて傷を生じ、不良品となってしまう場合がある。
【0013】
静止摩擦力を変化させる1つの要因が、基材のロール10への巻き付け角度であり、巻き付け角度が小さくなると静止摩擦力が小さくなる。図4は、ロール10を軸方向から見たときの断面図を、基材40の巻き付け角度が大きいとき(上図)と小さいとき(下図)で比較した図である。巻き付け角度は、基材40がロール10に接触している部分の断面が成す円弧の中心角のことであり、抱き角とも呼ばれる。図4では巻き付け角度はθで表されている。
【0014】
図4の上図のように巻き付け角度が大きいときは、ロール10と基材40の間に十分な大きさの静止摩擦力が働くため問題ない。しかし、図4の下図のように基材40の巻き付け角度が小さい場合は、ロール10と基材40の接触長が短くなるため、ロール10と基材40の間に作用する静止摩擦力も小さくなる。静止摩擦力によってロール10に与えられるトルクがロール10を回転させ始めるために必要なトルクを下回れば、基材40が移動しているにも関わらずロール10が回転しなくなってしまうこともある。そうすると、基材40がロール10の表面と擦れることとなり、基材40がロール10を汚したり傷つけたりしてしまうこともあるし、逆に基材40の表面がロール10によって傷つけられ、不良品となってしまう可能性もある。
【0015】
搬送経路に設置される全てのロール10を、十分な基材40の巻き付け角度を持つように配置できれば上記のような問題は生じない。しかし、電池の製造工程においては、基材40の巻き付け角度を大きく保つことが困難な場面がある。
【0016】
巻き付け角度を大きくすることが困難な場面の例を図5及び図6を用いて説明する。図5はリチウムイオン電池の源泉工程のうち、基材40に液体が塗布される塗装工程の概略を示している。基材40は電池電極の材料となる金属箔であり、塗装ダイを通過するときに液体の電極ペーストを塗布される。図5に拡大した様子が示されているように、塗装工程後の基材40は片方の面が電極ペーストで濡れた状態である。電極ペーストを乾燥させるため、塗装工程後に基材40は乾燥炉に送られる。
【0017】
乾燥炉内では、図6上図のように基材40はロール10に支えられて移動していき、熱風ノズルから吹き付けられる熱風によって電極ペーストが次第に乾燥させられていく。このとき、電極ペーストを十分乾燥させるには数十個の熱風ノズルが必要となるため、基材40が乾燥炉内を移動する距離もその分だけ長くなる。そのため、もし巻き付け角度が大きくなるようにロール10を配置しようとすると、図6下図のように一部のロール10は電極ペーストが塗られた面を内側にして基材40を巻き付けるような配置にせざるを得なくなってしまう。しかし、基材40の電極ペーストが塗られた面は乾燥が終わるまでの間は濡れた状態のため、電極ペースト側を内側にして基材40を巻き付けることはできない。このように、電池の製造工程においては、基材40のロール10への巻き付け角度を小さくせざるを得ない場面がある。
【0018】
このように基材のロールへの巻き付け角度を大きくできない場合でも、基材とロールの間に発生する擦れを防ぐことを可能とすべく創案された搬送装置が、以下に説明する本実施の形態に係る搬送装置である。
【0019】
図1には、本実施の形態に係る搬送装置100の構成の例が示されている。なお、図1の(2)及び(3)の図は、(1)の搬送装置100をそれぞれ側面方向及び軸方向から見た図である。また、(3)のみ基材40搬送時の搬送装置100の様子を示している。
【0020】
搬送装置100は、ロール11、軸受け21、ロール貫通シャフト31、駆動装置51を備える。搬送装置100においても、基材40はロール11と接触して支持されながら搬送される。搬送装置100は、更に、ロール11と同一の回転軸周りに回転することのできるロール貫通シャフト31を備える。図1の構成では、ロール貫通シャフト31は軸受け71でベース61に対して支持されることで回転可能となっている。ロール貫通シャフト31はロール11を貫通しており、ロール11は軸受け21でロール貫通シャフト31に対して回転可能に支持される。
【0021】
ロール貫通シャフト31は駆動装置51から与えられる駆動力によって回転することができる。搬送装置100は、基材40が搬送される間、駆動装置51から駆動力を与えてロール貫通シャフト31を回転させる。このときの回転の方向は、図1(3)に示されるように基材40の搬送方向と同じ方向である。ロール貫通シャフト31が回転することで、軸受け21を介してロール11に基材40の搬送方向と同じ方向に回転するためのトルクが与えられる。こうしてロール貫通シャフト31によってロール11の回転がアシストされることで、基材40からロール11に作用する静止摩擦力が小さいとしても、ロール11が基材の搬送に合わせて回転することができる。
【0022】
駆動装置51がロール貫通シャフト31を回転させる速度は、ロール11がロール貫通シャフト31と一体となって回転していると仮定した場合のロール11の周速度が基材40の搬送速度と等しくなるような回転速度が望ましい。ただし、ロール貫通シャフト31の回転速度は、必ずしもロール11の周速度が基材40の搬送速度と等しいときのロール11の回転速度でなくてもよく、例えば、それよりも僅かに低い速度であってもよい。この場合も、少なくともロール11の回転を開始させるために必要なトルクはロール貫通シャフト31からロール11に与えることができる。このため、ロール11と基材40の間に作用する静止摩擦力が小さい場合でもロール11の回転をアシストすることができる。
【0023】
また、本実施の形態において、軸受け21は、ロール11がロール貫通シャフト31に対して回転するために必要なトルクが小さくなるように構成される。ロール11がロール貫通シャフト31に対して完全に固定されず、ロール貫通シャフト31に対して小さいトルクで回転可能に支持されることで、ロール11の回転速度の微修正が可能である。つまり、ロール11の周速度と基材40の搬送速度が僅かにずれたとしても、ロール11と基材40との間に作用する静止摩擦力によって基材40からロール11に与えられるトルクによって、ロール11の周速度が基材40の搬送速度と等しくなるようにロール11の回転速度が修正される。
【0024】
なお、駆動装置51はロール貫通シャフト31それぞれに対して1つずつ備えられてもよく、1つ1つのロール貫通シャフト31に対して独立して駆動力が伝達されてもよい。或いは、複数のロール貫通シャフト31に対して駆動装置51が1つ備えられてもよく、複数のロール貫通シャフト31に対して連動して駆動力が伝達されてもよい。
【0025】
駆動装置51とロール貫通シャフト31との間は、ギヤ、チェーン、プーリーなどにより物理的に接続されることで駆動力が伝達されてもよい。ただし、電池の製造工程においては、金属異物を発生させる可能性のあるギヤやチェーンなどを用いることのできない場面もある。そこで、本実施形態においては、駆動装置51とロール貫通シャフト31とをマグネットカップリングによって結合させることで駆動力を伝達する。
【0026】
動力の伝達にマグネットカップリングを用いることで、駆動装置51とロール貫通シャフト31を物理的に接触させる必要がなくなり、図2のように駆動装置51とロール貫通シャフト31の間に僅かに隙間を空けることも可能となる。図2に示される駆動装置51では、ロール貫通シャフト31と駆動装置51の駆動シャフトとが直交する直交タイプのマグネットカップリングが使用されている。マグネットカップリングが使用されることにより、駆動装置51とロール貫通シャフト31が摺動することによる金属異物の発生をなくすことができる。
【0027】
以上に説明したように、本実施形態に係る搬送装置によれば、ロールと基材の間の静止摩擦力が小さい場合でも基材の搬送に合わせてロールが回転するように、ロールの回転がアシストされる。これにより、ロールと基材の間に擦れが発生することによる基材やロールの傷や汚れの発生を防止することが可能である。
【0028】
なお、上記の説明では本実施の形態に係る搬送装置は電池の製造工程に用いられるものとして説明したが、電池の製造工程以外であっても、ウェブハンドリング工程において搬送経路が限定的となる様々な場面に適用することが可能である。例えば、印刷工程において印刷が終わった基材を乾燥しながら長い距離を移動させる場面において、本実施の形態に係る搬送装置を適用することが可能である。
【符号の説明】
【0029】
10、11 ロール
20、21、71 軸受け
30 シャフト
31 ロール貫通シャフト
40 基材
51 駆動装置
61 ベース
100 搬送装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6