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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072099
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】リアクトル部品とその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20240520BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20240520BHJP
   H01F 41/12 20060101ALI20240520BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01F37/00 T
H01F37/00 J
H01F37/00 E
H01F37/00 M
H01F27/32 170
H01F41/12 C
H01F41/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182747
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】福田 好秀
(72)【発明者】
【氏名】工藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 勇士
(72)【発明者】
【氏名】市川 正人
【テーマコード(参考)】
5E044
5E062
【Fターム(参考)】
5E044AA02
5E044AD02
5E062FF02
(57)【要約】
【課題】部品点数の増加を抑制しつつコイルの一部にモールド樹脂が形成されないようすることができるリアクトル部品を提供すること。
【解決手段】リアクトル部品は、コイル10と、コイルの中空部に配置されたコア40と、コイルとコアの位置決め部材であるボビンと、コイルとボビンとコアとを一体的に覆う樹脂部50とを備えている。ボビンは、中空部に配置された筒部22,32と、コイルの両端に配置された二つのフランジ部と、二つのフランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部24とを有する。また、対をなす連結部は、コイルの一部を挟み込んでおり、コイルの一方の開口端から他方の開口端にわたってコイルの外壁に接する部位を含む先端面243および対向面244と、樹脂部に接する樹脂接触面245とを有し、挟み込んだコイルの一部が樹脂部から露出されるように樹脂部と区画している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻き回されて両端に開口を有する筒状のコイル(10)と、
前記コイルの中空部に配置されたコア(40)と、
前記コイルと前記コアの位置決め部材であり、前記中空部に配置された筒状部(22,32)と、前記筒状部に連なって設けられ、前記コイルの両端に配置された二つのフランジ部(21,31)と、二つの前記フランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部(24,24a,34a)と、を有するボビン(20,30)と、
前記コイルと前記ボビンと前記コアとを一体的に覆う樹脂部(50)と、を備え、
対をなす前記連結部は、前記コイルの一部を挟み込んでおり、前記コイルの一方の開口端と他方の開口端の間の少なくとも一部で前記コイルの外壁に接する部位を含むコイル側壁面(243,244)と、前記コイル側壁面の反対面であり前記樹脂部に接する樹脂側壁面(245)とを有し、挟み込んだ前記コイルの一部が前記樹脂部から露出されるように前記樹脂部と区画している、リアクトル部品。
【請求項2】
対をなす前記連結部は、前記外壁の曲面に沿って屈曲して互いの間隔が狭くなる対向部と、前記対向部に連なり互いの間隔が広くなる突出部とを有している、請求項1に記載のリアクトル部品。
【請求項3】
対をなす前記連結部は、一方の前記フランジ部から他方の前記フランジ部にいくにつれて、互いの間隔が徐々に狭くなって徐々に広くなる、請求項2に記載のリアクトル部品。
【請求項4】
前記対向部は、前記突出部よりも薄肉である、請求項2に記載のリアクトル部品。
【請求項5】
前記対向部の高さは、前記突出部の長さよりも長い、請求項2に記載のリアクトル部品。
【請求項6】
前記連結部は、前記フランジ部との根元にリブが設けられている、請求項2に記載のリアクトル部品。
【請求項7】
対をなす前記連結部は、前記樹脂部を形成する際の成型圧によって撓み、前記コイル側壁面の一部が前記外壁に接している、請求項2または3に記載のリアクトル部品。
【請求項8】
巻き回されて両端に開口を有する筒状のコイル(10)と、
前記コイルの中空部に配置されたコア(40)と、
前記コイルと前記コアの位置決め部材であり、前記中空部に配置された筒状部(22,32)と、前記筒状部に連なって設けられ、前記コイルの両端に配置された二つのフランジ部(21,31)と、二つの前記フランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部(24,24a,34a)と、を有するボビン(20,30)と、
前記コイルと前記ボビンと前記コアとを一体的に覆う樹脂部(50)と、を備えたリアクトル部品の製造方法であって、
対をなす前記連結部で前記コイルの一部を挟み込み、前記連結部の先端面が前記コイルの一方の開口端と他方の開口端の間の少なくとも一部で前記コイルの外壁に接するように前記ボビンと前記コイルとを組み付ける組付工程と、
前記コイルと前記コアと前記ボビンが組付けられた構造体を金型に配置する工程であり、前記連結部で挟み込まれた前記コイルの一部が前記金型と前記連結部によって周囲から隔てられた状態で配置する配置工程と、
前記配置工程後に、前記連結部で挟み込んだ前記コイルの一部が前記樹脂部から露出されるように前記樹脂部を形成する成型工程と、を備え、
前記成型工程では、前記コイルの一方の開口端から他方の開口端にわたって成型圧により前記連結部を撓ませて前記先端面を含むコイル側壁面を前記外壁に押圧しつつ、前記コイル側壁面の反対面に前記樹脂部を形成する、リアクトル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル部品とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リアクトル部品の一例として、特許文献1に開示されたものがある。リアクトル部品は、コイルの表面に配置される下枠体と、下枠体の枠内を除いてコイルを被覆するモールド樹脂とを備えている。下枠体は、コイルの筒軸に沿った一対の縦辺部を有する。一対の縦辺部は、コイルの下面を挟んで延び、コイルの下面に隣接する2枚の下側湾曲面に密着する。コイルは、一対の縦辺部が密着する一方の下側湾曲面から他方の下側湾曲面までの全横幅範囲に亘って、一対の縦辺部が挟むコイルの下面をモールド樹脂から露出させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-44280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リアクトル部品は、ボビンによって、コイルとコアとの位置決めを行う構成が考えられる。この構成の場合、特許文献1に記載の技術では、ボビンに加えて、コイルの一部にモールド樹脂が形成されないようにするために下枠体が必要になる。よって、特許文献1に記載の構成では、部品点数が増加するという問題がある。上記観点において、または言及されていない他の観点において、リアクトル部品にはさらなる改良が求められている。
【0005】
開示される一つの目的は、部品点数の増加を抑制しつつコイルの一部にモールド樹脂が形成されないようすることができるリアクトル部品を提供することである。開示される他の一つの目的は、部品点数の増加を抑制しつつコイルの一部にモールド樹脂が形成されないようすることができるリアクトル部品を製造可能な製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示されたリアクトル部品は、
巻き回されて両端に開口を有する筒状のコイル(10)と、
コイルの中空部に配置されたコア(40)と、
コイルとコアの位置決め部材であり、中空部に配置された筒状部(22,32)と、筒状部に連なって設けられ、コイルの両端に配置された二つのフランジ部(21,31)と、二つのフランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部(24,24a,34a)と、を有するボビン(20,30)と、
コイルとボビンとコアとを一体的に覆う樹脂部(50)と、を備え、
対をなす連結部は、コイルの一部を挟み込んでおり、コイルの一方の開口端と他方の開口端の間の少なくとも一部でコイルの外壁に接する部位を含むコイル側壁面(243,244)と、コイル側壁面の反対面であり樹脂部に接する樹脂側壁面(245)とを有し、挟み込んだコイルの一部が樹脂部から露出されるように樹脂部と区画していることを特徴とする。
【0007】
このように、リアクトル部品は、連結部を有するボビンを備えている。ボビンの連結部は、コイル側壁面と樹脂側壁面とを有し、挟み込んだコイルの一部が樹脂部から露出するように区画している。よって、リアクトル部品は、ボビンによってコイルの一部に樹脂部が形成されないようにすることができる。このため、リアクトル部品は、部品点数の増加を抑制しつつコイルの一部に樹脂部が形成されないようすることができる。
【0008】
また、ここに開示されたリアクトル部品の製造方法は、
巻き回されて両端に開口を有する筒状のコイル(10)と、
コイルの中空部に配置されたコア(40)と、
コイルとコアの位置決め部材であり、中空部に配置された筒状部(22,32)と、筒状部に連なって設けられ、コイルの両端に配置された二つのフランジ部(21,31)と、二つのフランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部(24,24a,34a)と、を有するボビン(20,30)と、
コイルとボビンとコアとを一体的に覆う樹脂部(50)と、を備えたリアクトル部品の製造方法であって、
対をなす連結部でコイルの一部を挟み込み、連結部の先端面がコイルの一方の開口端と他方の開口端の間の少なくとも一部でコイルの外壁に接するようにボビンとコイルとを組み付ける組付工程と、
コイルとコアとボビンが組付けられた構造体を金型に配置する工程であり、連結部で挟み込まれたコイルの一部が金型と連結部によって周囲から隔てられた状態で配置する配置工程と、
配置工程後に、連結部で挟み込んだコイルの一部が樹脂部から露出されるように樹脂部を形成する成型工程と、を備え、
成型工程では、コイルの一方の開口端から他方の開口端にわたって成型圧により連結部を撓ませて先端面を含むコイル側壁面を外壁に押圧しつつ、コイル側壁面の反対面に樹脂部を形成することを特徴とする。
【0009】
このように、リアクトル部品の製造方法は、配置工程後に行う成型工程において、成型圧によりボビンの連結部を撓ませて先端面を含むコイル側壁面をコイルの外壁に押圧しつつ、コイル側壁面の反対面に樹脂部を形成する。これによって、リアクトル部品の部品点数の増加を抑制しつつ、コイルの一部に樹脂部が形成されないリアクトル部品を製造できる。
【0010】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】リアクトル部品の概略構成を示す斜視図である。
図2図1の矢印II方向からの平面図である。
図3図1のIII‐III線に沿う断面図である。
図4】リアクトル部品の概略構成を示す分解斜視図である。
図5】樹脂成型前の構造体の概略構成を示す断面図である。
図6】樹脂成型時の構造体の概略構成を示す断面図である。
図7】樹脂成型後の構造体の概略構成を示す断面図である。
図8】樹脂成型による連結部の変形態様を示す断面図である。
図9図5の矢印IX方向からの側面図である。
図10】変形例における樹脂成型前の構造体の概略構成を示す底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、図面を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
【0013】
<構造>
図1図2図3図4に示すように、リアクトル部品100は、コイル10、ボビン(第1部材20,第2部材30)、コア40、樹脂部50を備えている。リアクトル部品100は、例えば電気自動車の駆動系においてバッテリの電圧を昇圧する電圧コンバータなどに用いられる。つまり、リアクトル部品100は、電圧コンバータなどにリアクトルを構成する回路素子である。リアクトル部品100は、コイルユニットおよびコイル装置と称されることがある。
【0014】
コイル10は、絶縁電線等の巻線が巻き回された状態をなしている。本実施形態では、図3図4などに示すように、比較的内部抵抗の小さい平角線の巻線を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず丸線であっても採用できる。
【0015】
図4に示すように、コイル10は、巻線が巻き回されて両端に開口を有する筒状をなしている。よって、コイル10は、巻線で囲まれた穴部12を有しているともいえる。穴部12には、ボビンの一部、およびコア40の一部が配置される。コイル10は、両端にリアクトル部品100の端子としての引出部11を有している。
【0016】
なお、穴部12は、コイル10の中空部に相当する。コイル10(穴部12)の中心を通る仮想直線を軸線とも称する。軸線は、コイル10の一項の開口から他方の開口に延びる仮想直線である。
【0017】
コイル10は、巻線が並んで配置されることで壁部(外壁)を構成している。コイル10は、壁部として、底壁13と、底壁13の反対部位である上壁14と、底壁13と上壁14に連なる二つの側壁15と、を有している。また、コイル10は、底壁13と二つの側壁15との間、上壁14と二つの側壁15との間が屈曲した形状(R形状)をなしている。この屈曲した形状の部位は、屈曲部ともいえる。
【0018】
なお、底壁13は、樹脂部50から露出する部位である。よって、底壁13は、露出壁とも称されることがある。この場合、上壁14は、底壁13の反対部位であるため反対壁とも称されることがある。
【0019】
図2図4などに示すように、ボビンは、別体に設けられた第1部材20と第2部材30とが組付けられて一体化されたものである。第1部材20と第2部材30は、たとえば樹脂を主成分として構成されている。ボビンは、コイル10とコア40の位置決め部材である。ボビンは、コイル10が巻き回される部材ともいえる。
【0020】
第1部材20は、フランジ部21、筒部22、穴部23、連結部24、根元部25を有している。第1部材20は、フランジ部21から軸線方向に筒部22と連結部24が突出して設けられている。フランジ部21と筒部22は、コア40が配置される穴部23が設けられている。フランジ部21は、略矩形状の外形をなしている。本実施形態では、一例として矩形の角を丸めた形状のフランジ部21を採用している。
【0021】
筒部22は、フランジ部21に連なって設けられている。筒部22は、第2部材30の筒部32との固定機構が設けられている。筒部22は、筒状部に相当する。
【0022】
連結部24は、第2部材30の第2連結部34に連結される部位である。連結部24は、対をなして設けられている。よって、本実施形態では、二つの連結部24を備えている。連結部24は、フランジ部21や筒部22と一体成型で設けられていてもよいし、接続部材などで接続されていてもよい。
【0023】
二つの連結部24は、フランジ部21の隣り合う二つの角部に設けられている。また、二つの連結部24は、コイル10に組付けられた状態で屈曲部を挟み込む位置に設けられている。つまり、二つの連結部24は、底壁13の両端に設けられているともいえる。さらに、二つの連結部24は、底壁13を挟み込む位置に設けられているともいえる。ここでの屈曲部は、底壁13の両端に連なる部位である。
【0024】
対をなす連結部24は、挟み込んだコイル10の一部が樹脂部50から露出されるように樹脂部50と区画している。つまり、連結部24は、コイル10の一部に樹脂部50が形成されないようにするための部材でもある。よって、連結部24は、樹脂切部とも称されることがある。
【0025】
連結部24は、第1部材20と第2部材30とが組付けられた状態で第2連結部34に連結される。連結部24と第2連結部34は、たとえば溶着や嵌合などによって連結される。第2連結部34は、フランジ部31に設けられている。このため、二つの連結部24は、二つのフランジ部21,31間にわたって設けられているといえる。
【0026】
連結部24は、樹脂部50を設ける前と設けた後で形状が変化する。つまり、連結部24は、樹脂部50を樹脂成型する際の成型圧で変形する。図5図8(a)は、樹脂部50を設ける前の連結部24を示している。図3図7図8(b)は、樹脂部50を設けた後の連結部24を示している。なお、以下では、樹脂部50を設ける前の状態を成型前状態、樹脂部50を設けた後の状態を成型後状態とも称される。なお、図7図8(b)では、コア40と樹脂部50を省略している。
【0027】
図5図8(a)に示すように、連結部24は、対向部241、突出部242、先端面243、対向面244、樹脂接触面245を有している。対向部241は、コイル10に対向する部位である。対向部241は、底壁13と側壁15との間の屈曲部に対向する位置に設けられている。突出部242は、対向部241の一端から突出した部位である。突出部242は、対向部241に対して、コイル10から遠ざかる方に突出している。よって、連結部24は、成型前状態において、軸線に垂直な断面がL字形状をなしているともいえる。
【0028】
また、図3図7図8(b)に示すように、連結部24は、成型圧によって、対向部241がコイル10に近づく方向に押圧されて変形する。つまり、対をなす連結部24は、成型後状態において、外壁の曲面に沿って屈曲して互いの間隔が狭くなる対向部241と、対向部241に連なり互いの間隔が広くなる突出部242とを有しているといえる。また、図2に示すように、対をなす連結部24は、一方のフランジ部21から他方のフランジ部31にいくにつれて、互いの間隔が徐々に狭くなって徐々に広くなる形状を有している。なお、図8(b)では、白抜き矢印で成型圧を示している。
【0029】
また、図5などに示すように、連結部24は、突出部242よりも対向部241の方が長い形状を有している。つまり、対向部241の高さは、突出部242の長さよりも長い。対向部241の高さは、底壁13や上壁14に対する垂線に沿う方向の長さである。突出部242の長さは、対向部241に対する突出方向の長さである。これによって、連結部24は、成型圧が均等に印加されやすくなる。また、連結部24は、成型圧によって対向部241がコイル10側に変形しやすくなる。
【0030】
先端面243は、対向部241の先端部におけるコイル10と対向する面である。先端面243は、成型前状態と成型後状態の両状態において、底壁13と側壁15との間の屈曲部と接触している。先端面243は、コイル10の一方の開口端から他方の開口端にわたって屈曲部と接触している。先端面243は、屈曲部との密着性を向上させるために、屈曲部の形状に沿った形状を有していると好ましい。
【0031】
対向面244は、先端面243に連なっており、コイル10と対向する面である。対向面244は、成型前状態では屈曲部から離れている。しかしながら、対向面244は、成型後状態では、少なくとも一部がコイル10の一方の開口端から他方の開口端にわたって屈曲部と接触している。これは、成型圧によって対向部241が変形するためである。つまり、連結部24は、樹脂部50を形成する際の成型圧によって撓み、対向面244の一部と先端面243が屈曲部に接している。
【0032】
先端面243と対向面244は、成型後状態で、コイル10の一方の開口端から他方の開口端にわたって、コイル10の外壁(屈曲部)に接する部位を含んでいるといえる。先端面243と対向面244は、コイル側壁面に相当する。なお、先端面243や対向面244は、コイル10の一方の開口端から他方の開口端の間の少なくとも一部において屈曲部と接触していてもよい。
【0033】
連結部24は、コイル10に対する先端面243および対向面244の密着度を向上させるために、対向部241が変形しやすいほうが好ましい。このため、連結部24は、突出部242よりも対向部241の方が薄肉に構成してもよい。
【0034】
樹脂接触面245は、先端面243と対向面244の反対面である。樹脂接触面245は、成型後状態において、樹脂部50と接する面である。樹脂接触面245は、成型前状態では直交する二つの平坦な面である。しかしながら、樹脂接触面245は、成型後状態では連結部24が変形することで曲面形状となっている。樹脂接触面245は、樹脂側壁面に相当する。
【0035】
なお、連結部24は、第2連結部34に対して第1連結部とも称されることがある。また、連結部24は、アーム部などと称されることもある。本実施形態では、第1部材20に連結部24が設けられた例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。連結部24は、ボビンに設けられていればよい。
【0036】
根元部25は、図2に示すように、連結部24におけるフランジ部21側の根本に設けられている。根元部25は、連結部24の根元に樹脂部50が形成されないようにするための部位である。根元部25は、リブに相当する。
【0037】
第2部材30は、フランジ部31、筒部32、穴部33、第2連結部34、根元部35を有している。第2部材30は、フランジ部31から軸線方向に筒部32が突出して設けられている。フランジ部31と筒部32は、コア40が配置される穴部33が設けられている。フランジ部31は、フランジ部21と同様の外形をなしている。
【0038】
筒部32は、フランジ部31に連なって設けられている。筒部32は、筒部22との固定機構が設けられている。筒部32は、筒状部に相当する。
【0039】
第2連結部34は、フランジ部31の隣り合う二つの角部に設けられている。第2連結部34は、連結部24が連結(接合)される部位である。根元部35は、図2に示すように、第2連結部34におけるフランジ部31側の根本に設けられている。根元部35は、第2連結部34の根元に樹脂部50が形成されないようにするための部位である。根元部35は、リブに相当する。
【0040】
第1部材20と第2部材30は、筒部22,32が穴部12に配置された状態で一体化される。また、第1部材20と第2部材30は、筒部22,32の固定機構によって固定されることで一体化される。なお、固定機構は、スナップフィットのように、弾性力を利用して嵌め込むことにより固定する方式のものなどを採用できる。しかしながら、筒部22と筒部32は、その他の方式によって接合されていてもよい。
【0041】
また、第1部材20と第2部材30は、筒部22,32が穴部12に配置されることで、コイル10と位置決めされる。第1部材20と第2部材30は、穴部23,33にコア40が配置されることで、コア40と位置決めされる。よって、ボビンは、筒部22,32がコイル10の穴部12に配置され、かつ、穴部23,33にコアが配置されることで、コイル10とコア40を位置決めしている。
【0042】
なお、フランジ部21,31は、第1部材20と第2部材30が一体化された状態でコイル10を挟み込むように配置される。つまり、フランジ部21,31は、軸線方向において、コイル10の両端に配置される。
【0043】
なお、本実施形態では、分割された第1部材20と第2部材30とを有したボビン20,30を採用している。しかしながら、本開示は、第1部材20と第2部材30とが一体的に形成されたボビンであっても採用できる。
【0044】
コア40は、穴部12に配置されている。コア40は、磁性体により形成されており、コイル10とともに磁気回路を構成している。コア40には、コイル10に流れる電流により生じた磁束が通る。コア40は、たとえば、一対のU字型のコアパーツに分割されており、それらを対向させて環状のコアが形成される。
【0045】
図1図2図3などに示すように、樹脂部50は、基部51、取付部52などを有している。樹脂部50は、コイル10と第1部材20と第2部材30とコア40とを一体的に覆っている。基部51は、コイル10などを覆っている部位である。詳述すると、基部51は、コイル10やコア40などの全体を覆っているわけではなく一部が露出した状態で覆っている。
【0046】
コイル10は、自身に電流が流れることで発熱する。コイル10から発せられた熱は、コア40に伝達される。そこで、基部51は、コイル10の熱を放熱させるために、コイル10やコア40の一部が露出した状態で設けられている。
【0047】
そのために、基部51は、第1窓部53、第2窓部55などが設けられている。第1窓部53は、基部51に設けられた穴である。第1窓部53は、上壁14の一部の対向領域に設けられている。これによって、コイル10は、上壁14の一部が基部51から露出している。
【0048】
第2窓部55は、基部51に設けられた穴である。第2窓部55は、側壁15の一部の対向領域に設けられている。詳述すると、第2窓部55は、側壁15に対向するコア40の一部が基部51から露出されるように設けられている。しかしながら、本開示は、第1窓部53、第2窓部55が設けられていない構成であっても採用できる。
【0049】
さらに、図2に示すように、樹脂部50は、底壁13の少なくとも一部が露出した状態で基部51が設けられている。基部51は、フランジ部21,31と、一対の連結部24で囲まれた領域が開口している。つまり、基部51は、フランジ部21,31と、一対の連結部24で囲まれた領域の周囲に設けられている。これによって、リアクトル部品100は、底壁13の対向領域が開口していない構成よりも、底壁13からの放熱性を高めることができる。空隙部54は、連結部24とコイル10との間の空間である。空隙部54は、基部51の開口と連通している。
【0050】
本実施形態では、図2に示すように、底壁13とともにコア40の一部も基部51から露出している例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されない。
【0051】
なお、取付部52は、基部51から突出して設けられている。取付部52は、リアクトル部品100を取り付け対象に取り付けるための部位である。取付部52は、ボルトなどの固定部材が挿入される貫通穴が設けられている。リアクトル部品100は、底壁13が取り付け対象と対向するように、取り付け対象に取り付けられる。リアクトル部品100は、取付部52がボルトなどによって取り付け対象に固定される。
【0052】
リアクトル部品100は、たとえば、放熱シートや放熱グリースなどの放熱部材を介して取り付けられると好ましい。なお、上記のように、リアクトル部品100は、樹脂部50から底壁13が露出している。よって、リアクトル部品100は、底壁13を放熱部材に接触させることができる。このため、リアクトル部品100は、底壁13が放熱部材と接していない構成よりも放熱性を向上させることができる。
【0053】
<製造方法>
図4図9を用いて、リアクトル部品100の製造方法に関して説明する。図4に示すように、リアクトル部品100は、コイル10、第1部材20、第2部材30、コア40に分割されている。
【0054】
まず、ボビンとコイル10とを組み付ける組付工程を行う。組付工程では、筒部22,32がコイル10の穴部12に配置され、両フランジ部21,31でコイル10を挟み込むように、第1部材20と第2部材30を取り付ける。また、組付工程では、図5図9に示すように、対をなす連結部24でコイル10の一部を挟み込み、先端面243がコイル10の一方の開口端から他方の開口端にわたってコイル10の外壁に接するように組み付ける。これによって、ボビンとコイル10とが組み付けられる。図9のRCLは、樹脂切ラインである。樹脂切ラインは、コイル10に対して樹脂部50が形成される部位と形成されない部位との境界である。
【0055】
また、組付工程では、ボビンとコイル10に対してコア40を組み付けてもよい。この場合、コア40の一部が穴部23,33に配置されるように組み付ける。ボビンとコイル10とコア40が組付けられたものは構造体に相当する。
【0056】
次に、構造体を金型200に配置する配置工程と、配置工程後に樹脂部50を形成する成型工程を行う。図6に示すように、配置工程では、連結部24で挟み込まれたコイル10の一部が金型200と連結部24によって周囲から隔てられた状態で配置する。つまり、配置工程では、底壁13が金型200と対向し、突出部242が金型200に接するように配置する。なお、本実施形態では、連結部24だけでなく、フランジ部21,31が金型200に接するように配置している。よって、配置工程では、連結部24とフランジ部21,31と金型200で囲まれた空間に樹脂部50が形成されないようにしている。
【0057】
そして、図6に示すように、成型工程では、連結部24で挟み込んだコイル10の一部が樹脂部50から露出されるように樹脂部50を形成する。成型工程では、たとえば射出成型によって樹脂部50を形成する。
【0058】
図6の白抜き矢印で示すように、成型工程では、連結部24に成型圧を印加することになる。成型工程では、成型圧によって、コイル10の一方の開口端から他方の開口端にわたって連結部24を撓ませる。このとき、連結部24は、突出部242が金型200と接しながら変形する。また、成型工程では、成型圧によって、先端面243を含むコイル側壁面をコイル10の外壁に押圧しつつ樹脂部50を形成する。ここでの外壁は、上記のように、底壁13と側壁15との間の屈曲部である。
【0059】
このように、成型工程では、連結部24をコイル10の外壁に押圧しつつ樹脂部50を形成する。このため、樹脂部50は、樹脂切ラインRCLを境界として、コイル10の上壁14、上壁14と側壁の間の屈曲部、側壁15の連結部24から露出している部位に形成される。また、樹脂部50は、コイル10の底壁13、底壁13と側壁15の間の屈曲部には形成されない。
【0060】
なお、連結部24に印加される成型圧(圧力)と連結部24の撓み量との関係は、シミュレーションなどによって解析することができる。連結部24の形状は、その解析結果に基づいて設計されている。つまり、連結部24は、成型後状態において上記のような形状となるように設計されている。
【0061】
<効果>
以上のように、リアクトル部品100は、連結部24を有するボビンを備えている。連結部24は、コイル10と接する先端面243と対向面244、および樹脂部50と接する樹脂接触面245とを有し、挟み込んだコイル10の一部が樹脂部50から露出するように区画している。よって、リアクトル部品100は、ボビンによってコイル10の一部に樹脂部50が形成されないようにすることができる。このため、リアクトル部品100は、部品点数の増加を抑制しつつコイル10の一部に樹脂部50が形成されないようすることができる。
【0062】
また、リアクトル部品100は、成型後状態で樹脂接触面245が曲面形状を有している。よって、リアクトル部品100は、樹脂接触面245が平坦面の構成よりも、樹脂接触面245と基部51とを接触面積を増やすことができる。
【0063】
リアクトル部品100は、対向部241の端部から突出した突出部242が設けられている。よって、リアクトル部品100は、突出部242が設けられてない構成よりも、成型工程において、空隙部54に樹脂部50の一部や異物が入り込むことを抑制できる。つまり、リアクトル部品100は、突出部242が金型200と接しながら変形する。このため、突出部242は、空隙部54に樹脂部50の一部や異物が入り込むことを抑制する機能を有しているといえる。
【0064】
また、リアクトル部品100の製造方法は、配置工程後に行う成型工程において、成型圧により連結部24を撓ませて先端面243を含むコイル側壁面をコイル10の外壁に押圧しつつ、樹脂接触面245に樹脂部50を形成する。これによって、リアクトル部品100の部品点数の増加を抑制しつつ、コイル10の一部に樹脂部50が形成されないリアクトル部品100を製造できる。
【0065】
また、リアクトル部品100の製造方法は、連結部24を撓ませて先端面243をコイル10に接触させるため、連結部24の公差を吸収することもできる。つまり、リアクトル部品100の製造方法は、連結部24にばらつきがあったとしても、樹脂切ラインRCLで樹脂部50を区分けすることができる。
【0066】
<変形例>
ボビンは、図10に示す変形例のような構成であっても採用できる。変形例のボビンは、対をなす連結部24aを有した第1部材20aと、対をなす第2連結部34aを有した第2部材30aを含んでいる。第1部材20aと第2部材30aが組付けられた状態で、第1部材20aと第2連結部34aは、先端部どうしが接触するように設けられている。第1部材20aと第2連結部34aは、たとえば、軸線に対して傾斜した面を有している。なお、連結部24aと第2連結部34aは、連結部に相当する。つまり、変形例では、連結部24aと第2連結部34aが組み合わさることで連結部を構成しているといえる。
【0067】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【0068】
(技術的思想の開示)
この明細書は、以下に列挙する複数の項に記載された複数の技術的思想を開示している。いくつかの項は、後続の項において先行する項を択一的に引用する多項従属形式(a multiple dependent form)により記載されている場合がある。さらに、いくつかの項は、他の多項従属形式の項を引用する多項従属形式(a multiple dependent form referring to another multiple dependent form)により記載されている場合がある。これらの多項従属形式で記載された項は、複数の技術的思想を定義している。
【0069】
(技術的思想1)
巻き回されて両端に開口を有する筒状のコイル(10)と、
前記コイルの中空部に配置されたコア(40)と、
前記コイルと前記コアの位置決め部材であり、前記中空部に配置された筒状部(22,32)と、前記筒状部に連なって設けられ、前記コイルの両端に配置された二つのフランジ部(21,31)と、二つの前記フランジ部間にわたって設けられた対をなす連結部(24,24a,34a)と、を有するボビン(20,30)と、
前記コイルと前記ボビンと前記コアとを一体的に覆う樹脂部(50)と、を備え、
対をなす前記連結部は、前記コイルの一部を挟み込んでおり、前記コイルの一方の開口端と他方の開口端の間の少なくとも一部で前記コイルの外壁に接する部位を含むコイル側壁面(243,244)と、前記コイル側壁面の反対面であり前記樹脂部に接する樹脂側壁面(245)とを有し、挟み込んだ前記コイルの一部が前記樹脂部から露出されるように前記樹脂部と区画している、リアクトル部品。
【0070】
(技術的思想2)
対をなす前記連結部は、前記外壁の曲面に沿って屈曲して互いの間隔が狭くなる対向部と、前記対向部に連なり互いの間隔が広くなる突出部とを有している、技術的思想1に記載のリアクトル部品。
【0071】
(技術的思想3)
対をなす前記連結部は、一方の前記フランジ部から他方の前記フランジ部にいくにつれて、互いの間隔が徐々に狭くなって徐々に広くなる、技術的思想1または2に記載のリアクトル部品。
【0072】
(技術的思想4)
前記対向部は、前記突出部よりも薄肉である、技術的思想2に記載のリアクトル部品。
【0073】
(技術的思想5)
前記対向部の高さは、前記突出部の長さよりも長い、技術的思想2または4に記載のリアクトル部品。
【0074】
(技術的思想6)
前記連結部は、前記フランジ部との根元にリブが設けられている、技術的思想1~5のいずれか1項に記載のリアクトル部品。
【0075】
(技術的思想7)
対をなす前記連結部は、前記樹脂部を形成する際の成型圧によって撓み、前記コイル側壁面の一部が前記外壁に接している、技術的思想1~6のいずれか1項に記載のリアクトル部品。
【符号の説明】
【0076】
10…コイル、11…引出部、12…中空部、13…底壁、14…側壁、15…上壁、20,20a…第1部材、21…フランジ部、22…筒部、23…中空部、24,24a…連結部、241…対向部、242…突出部、243…先端面、244…対向面、245…樹脂接触面、25…爪部、30,30a…第2部材、31…フランジ部、32…筒部、33…中空部、34,34a…第2連結部、35…爪部、40…コア、50…樹脂部、51…基部、52…取付部、53…第1窓部、54…空隙部、55…第2窓部、100…リアクトル部品、200…金型、RCL…樹脂切ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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図10