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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000721
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2483 20160101AFI20231226BHJP
   H01M 8/2465 20160101ALI20231226BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20231226BHJP
【FI】
H01M8/2483
H01M8/2465
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022099583
(22)【出願日】2022-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青野 晴之
(72)【発明者】
【氏名】河邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】小▲柳▼ 壮矩
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD05
5H126EE11
(57)【要約】
【課題】ガスマニホールド内で水蒸気の凝縮によって発生する液水を円滑に排出することができる燃料電池スタックを提供する。
【解決手段】燃料電池スタック11は、燃料ガスを用いて発電する複数の発電セル12が鉛直方向Zに積層されている。各発電セル12は、膜電極接合体18を支持した支持フレーム19と、支持フレーム19を挟む一対のセパレータ20とを備える。各発電セル12には、鉛直方向Zに延びて燃料ガスが流れる燃料ガス供給通路28を形成する燃料ガス供給孔21が形成されている。燃料ガス供給通路28の上壁面となる下面33の一部には、下面33に付着する水が集まる凸部34が設けられている。燃料ガス供給通路28における凸部34の下側には、凸部34から落下する水を排出する排出路51を形成する鉛直方向Zに延びる筒状の排出路形成部材50が配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを用いて発電する複数の発電セルが鉛直方向に積層された燃料電池スタックであって、
前記発電セルは、膜電極接合体を支持した支持フレームと、前記支持フレームを挟む一対のセパレータとを備え、
前記発電セルには、鉛直方向に延びて前記ガスが流れるガスマニホールドを形成するガス孔が形成され、
前記ガスマニホールドの上壁面の一部には、当該上壁面に付着する水が集まる集水部が設けられ、
前記ガスマニホールドにおける前記集水部の下側には、前記集水部から落下する前記水を排出する排出路を形成する鉛直方向に延びる筒状の排出路形成部材が配置されていることを特徴とする燃料電池スタック。
【請求項2】
前記集水部は、前記排出路形成部材側に向かうほど高さが低くなる傾斜面を有していることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【請求項3】
前記集水部は、前記上壁面における前記集水部以外の部分よりも親水性を高くした親水部によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池スタックとして、例えば、特許文献1に示すものが知られている。こうした燃料電池スタックは、複数の矩形板状の発電セルを水平方向に積層することによって形成されている。各発電セルは、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体と、樹脂枠付き電解質膜・電極構造体を挟持する第1金属セパレータ及び第2金属セパレータと、を備えている。電解質膜・電極構造体は、固体高分子電解質膜と、固体高分子電解質膜を挟持するアノード電極及びカソード電極とを備えている。
【0003】
燃料電池スタックには、水平方向に延びるガスマニホールドと、ガスマニホールドよりも下側で水平方向に延びるドレン(通路)とが各発電セルを貫通して形成されている。ガスマニホールドとドレンとは、互いに水平方向の一端側で連通している。ドレンは、燃料電池スタックの運転時に生じた生成水を排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-121562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のような燃料電池スタックでは、ガスマニホールドとドレンとが水平方向に延びて一端側で互いに連通するとともに、ガスマニホールドがドレンよりも上側に配置された構成になっている。このため、燃料電池スタックが運転されて高温になっても、ガスマニホールド内のガスに含まれる水蒸気はほとんどドレンに流れない。
【0006】
一方、燃料電池スタックの運転が停止されて低温になると、ガスマニホールド内で水蒸気が凝縮することによってガスマニホールド内に液水が発生する。ガスマニホールド内に液水が発生すると、寒冷地などでは当該液水がガスマニホールドに接続される配管などに流れ込んで凍結する。このため、当該配管に設けられた弁などの動作不良が発生するおそれがある。したがって、ガスマニホールド内で水蒸気の凝縮によって発生する液水を排出できるようにすることが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する燃料電池スタックは、ガスを用いて発電する複数の発電セルが鉛直方向に積層された燃料電池スタックであって、前記発電セルは、膜電極接合体を支持した支持フレームと、前記支持フレームを挟む一対のセパレータとを備え、前記発電セルには、鉛直方向に延びて前記ガスが流れるガスマニホールドを形成するガス孔が形成され、前記ガスマニホールドの上壁面の一部には、当該上壁面に付着する水が集まる集水部が設けられ、前記ガスマニホールドにおける前記集水部の下側には、前記集水部から落下する前記水を排出する排出路を形成する鉛直方向に延びる筒状の排出路形成部材が配置されていることを要旨とする。
【0008】
通常、燃料電池スタックの温度が高い状態においてガスマニホールドに存在する水蒸気の一部は、燃料電池スタックの温度が下がった場合に、凝縮して液水となってガスマニホールドの上壁面に付着する。上壁面に付着した液水は、落下してガスマニホールドに接続される配管内に溜まる。そして、燃料電池スタックを寒冷地などの気温が氷点下になる場所で使用した場合、ガスマニホールドに接続される配管内に溜まった液水が凍結するので、当該配管が詰まるなどの問題が生じる。この点、上記構成によれば、ガスマニホールドの上壁面に付着した液水は、集水部に集まってから排出路形成部材内に落下して排出される。したがって、ガスマニホールド内で水蒸気の凝縮によって発生する液水を円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の燃料電池スタックの端面図。
図2】発電セルの分解斜視図。
図3】ダミーセルの分解斜視図。
図4図1の要部拡大図。
図5】変更例の燃料電池スタックの要部拡大断面図。
図6】別の変更例の燃料電池スタックの要部拡大断面図。
図7】さらに別の変更例の燃料電池スタックの要部拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、燃料電池スタックの一実施形態を図面に従って説明する。
<燃料電池スタック11>
図1に示すように、燃料電池スタック11は、水素を含む燃料ガス及び酸素を含む酸化剤ガスを用いて発電する複数の矩形板状の発電セル12及び発電しない1つの矩形板状のダミーセル13がそれらの厚さ方向に積層されたセル積層体14を備えている。複数の発電セル12及び1つのダミーセル13は、鉛直方向Zに積層されている。
【0011】
ダミーセル13は、積層された複数の発電セル12のうちの上端部に位置する発電セル12の上に積層されている。すなわち、ダミーセル13は、セル積層体14の上端部に位置している。セル積層体14の上下の両端には、集電を行うターミナルプレート15及び絶縁を行う絶縁プレート16を介してエンドプレート17がそれぞれ配置されている。
【0012】
<発電セル12>
図1及び図2に示すように、各発電セル12は、枠状に形成されて中央の開口部に矩形シート状をなす膜電極接合体18(MEA:Membrane Electrode Assembly)を支持した合成樹脂製の支持フレーム19と、一対の金属製のセパレータ20とを有している。一対のセパレータ20は、膜電極接合体18及び支持フレーム19を鉛直方向Zにおいて挟んでいる。
【0013】
各発電セル12は、膜電極接合体18における鉛直方向Zの一方側(アノード側)の部分に燃料ガスが供給され且つ他方側(カソード側)の部分に酸化剤ガスが供給されると、燃料ガス及び酸化剤ガスの膜電極接合体18での電気化学反応に基づき発電を行う。各発電セル12の長手方向の両端部、すなわち各支持フレーム19及び各セパレータ20の長手方向の両端部には、複数(本例では6つ)の孔が貫通して形成されている。
【0014】
これら6つの孔は、ガス孔の一例としての燃料ガス供給孔21、燃料ガス排出孔23、酸化剤ガス供給孔24、酸化剤ガス排出孔25、冷却媒体供給孔26、及び冷却媒体排出孔27とされている。燃料ガス供給孔21は、発電セル12における他の孔よりも発電セル12の長手方向の幅が広くなっている。複数の発電セル12の燃料ガス供給孔21は、鉛直方向Zに延びてガスの一例としての燃料ガスが供給されるガスマニホールドの一例としての燃料ガス供給通路28を形成する。
【0015】
複数の発電セル12の燃料ガス排出孔23は、鉛直方向Zに延びて燃料ガスが排出される燃料ガス排出通路30を形成する。複数の発電セル12の酸化剤ガス供給孔24は、鉛直方向Zに延びて酸化剤ガスが供給される酸化剤ガス供給通路(図示略)を形成する。複数の発電セル12の酸化剤ガス排出孔25は、鉛直方向Zに延びて酸化剤ガスが排出される酸化剤ガス排出通路(図示略)を形成する。
【0016】
複数の発電セル12の冷却媒体供給孔26は、鉛直方向Zに延びて例えば冷却水などの冷却媒体が供給される冷却媒体供給通路(図示略)を形成する。複数の発電セル12の冷却媒体排出孔27は、鉛直方向Zに延びて冷却媒体が排出される冷却媒体排出通路(図示略)を形成する。燃料ガス排出通路30、酸化剤ガス供給通路(図示略)、酸化剤ガス排出通路(図示略)、冷却媒体供給通路(図示略)、及び冷却媒体排出通路(図示略)は、燃料ガス供給通路28よりも発電セル12の長手方向の幅が狭くなっている。
【0017】
<ダミーセル13>
図1及び図3に示すように、ダミーセル13は、発電セル12において膜電極接合体18を矩形シート状の導電体31に変更し且つ上側のセパレータ20をダミーセパレータ20aに変更したものである。ダミーセル13は、下側のセパレータ20が発電セル12と共通になっている。すなわち、ダミーセル13は、中央の開口部に導電体31を支持した支持フレーム19、ダミーセパレータ20a、及びセパレータ20を有している。ダミーセル13における導電体31を支持した支持フレーム19は、鉛直方向Zにおいてダミーセパレータ20aとセパレータ20とによって挟まれている。
【0018】
ダミーセパレータ20aは、発電セル12のセパレータ20から燃料ガス供給孔21を省略し且つ下面33の一部に凸部34を設けたものであって、これ以外はセパレータ20と同一の構成になっている。ダミーセル13は、膜電極接合体18を有していないので、燃料ガス及び酸化剤ガスが供給されても発電しない。ダミーセパレータ20aの下面33は、燃料ガス供給通路28の上壁面を構成している。
【0019】
<凸部34及び排出路形成部材50>
凸部34は、下面33に付着する水が集まる集水部を構成している。凸部34は、燃料ガス供給通路28内におけるダミーセパレータ20aの下面33の一部に設けられている。燃料ガス供給通路28内における膜電極接合体18側とは反対側の端部には、燃料ガス供給通路28のほぼ全体にわたって鉛直方向Zに延びる筒状の排出路形成部材50が配置されている。排出路形成部材50は、燃料ガス供給通路28内に、固定部(図示略)によって固定されている。
【0020】
排出路形成部材50は、燃料ガス供給通路28内における凸部34の下側に配置されている。排出路形成部材50は、内部に凸部34から落下する水を排出するための排出路51を形成する。凸部34は、断面視三角形状をなすとともに、排出路形成部材50に向かうほど高さが低くなる傾斜面35を有している。傾斜面35における最も低い部分は、鉛直方向Zにおいて排出路51に対応している。傾斜面35における最も高い部分は、燃料ガス供給通路28における膜電極接合体18側の端部に位置している。排出路形成部材50の上端と凸部34の下端との間には、僅かな隙間が形成されている。
【0021】
<燃料電池スタック11における配管との接続構造>
図1に示すように、燃料電池スタック11において、ターミナルプレート15とセパレータ20との間、支持フレーム19とセパレータ20との間、支持フレーム19とダミーセパレータ20aとの間、及びセパレータ20同士の間は、ガスケット36によってシールされている。
【0022】
燃料電池スタック11の下端部に位置するターミナルプレート15、絶縁プレート16、及びエンドプレート17には、これらを貫通してなる燃料ガス供給口37及び燃料ガス排出口38がそれぞれ形成されている。燃料ガス供給口37の一部には、排出路形成部材50の下端部が挿入されている。燃料ガス供給口37及び燃料ガス排出口38は、燃料ガス供給通路28及び燃料ガス排出通路30とそれぞれ連通している。
【0023】
燃料ガス供給口37には、燃料ガスが収容されたガスタンク40から延びるガス供給配管41が接続されている。ガス供給配管41の途中位置には、ガスタンク40からガス供給配管41を介して燃料ガス供給口37に供給される燃料ガスの圧力を調整する圧力調整弁42が設けられている。
【0024】
燃料ガス排出口38には、鉛直方向Zに延びる第1排出配管43の上端側が接続されている。第1排出配管43には、燃料ガス排出口38から水分を含む未反応の燃料ガスが排出される。第1排出配管43の途中位置には、燃料ガス排出口38から排出された未反応の燃料ガスから水分を分離する気液分離器44と、第1開閉弁45とが設けられている。
【0025】
第1開閉弁45は、第1排出配管43における気液分離器44よりも下側の位置に配置されている。第1開閉弁45は、常時閉弁されるとともに、気液分離器44で未反応の燃料ガスから分離された水を排出するときに開弁される。気液分離器44の側部とガス供給配管41における圧力調整弁42と燃料ガス供給口37との間の位置とは、水平方向に延びる連結管46によって連結されている。
【0026】
連結管46の途中位置には、気液分離器44で水分が分離された後の未反応の燃料ガスをガス供給配管41側へ向かって送出するポンプ47が設けられている。排出路形成部材50の下端部には、鉛直方向Zに延びる第2排出配管48の上端側が接続されている。排出路形成部材50内の排出路51と、第2排出配管48内とは連通している。第2排出配管48の途中位置には、第2開閉弁49が設けられている。第2開閉弁49は、常時閉弁されるとともに、排出路51及び第2排出配管48内に溜まった水を排出するときに開弁される。
【0027】
燃料電池スタック11の下端部に位置するターミナルプレート15、絶縁プレート16、及びエンドプレート17には、これらを貫通してなる酸化剤ガス供給口(図示略)及び酸化剤ガス排出口(図示略)がそれぞれ形成されている。これら酸化剤ガス供給口及び酸化剤ガス排出口は、上記酸化剤ガス供給通路(図示略)及び上記酸化剤ガス排出通路(図示略)とそれぞれ連通している。上記酸化剤ガス供給口及び上記酸化剤ガス排出口には、それぞれ配管(図示略)が接続される。
【0028】
燃料電池スタック11の下端部に位置するターミナルプレート15、絶縁プレート16、及びエンドプレート17には、これらを貫通してなる冷却媒体供給口(図示略)及び冷却媒体排出口(図示略)がそれぞれ形成されている。これら冷却媒体供給口及び冷却媒体排出口は、上記冷却媒体供給通路(図示略)及び上記冷却媒体排出通路(図示略)とそれぞれ連通している。上記冷却媒体供給口及び上記冷却媒体排出口には、それぞれ配管(図示略)が接続される。
【0029】
<燃料電池スタック11の作用>
図1及び図4に示すように、燃料電池スタック11において発電を行う際には、ガスタンク40の燃料ガスがガス供給配管41及び燃料ガス供給口37を介して燃料ガス供給通路28に供給される。この場合、燃料ガス供給通路28に供給される燃料ガスは、圧力調整弁42で圧力が調整される。燃料ガス供給通路28に供給された燃料ガスは、ダミーセル13よりも下側にある各発電セル12の膜電極接合体18におけるアノード側の面に供給される。
【0030】
一方、各発電セル12の膜電極接合体18におけるカソード側の面には、酸化剤ガス供給口(図示略)から酸化剤ガス供給通路(図示略)を介して酸化剤ガスが供給される。そして、各発電セル12の膜電極接合体18におけるカソード側の面に供給された酸化剤ガスと、各発電セル12の膜電極接合体18におけるアノード側の面に供給された燃料ガスとの膜電極接合体18での電気化学反応に基づいて発電がなされる。
【0031】
膜電極接合体18での未反応の燃料ガスは、水分を含むとともに、燃料ガス排出通路30及び燃料ガス排出口38を介して第1排出配管43に排出される。第1排出配管43に排出された水分を含む未反応の燃料ガスは、気液分離器44で水分が分離された後、ポンプ47により連結管46を介してガス供給配管41に送出される。ガス供給配管41に送出された未反応の燃料ガスは、ガスタンク40からの燃料ガスと一緒に、再び燃料ガス供給通路28に供給される。なお、膜電極接合体18での未反応の酸化剤ガスは、酸化剤ガス排出通路(図示略)を介して酸化剤ガス供給口(図示略)から排出される。
【0032】
また、燃料電池スタック11の運転中には燃料電池スタック11の温度が高くなっているため、燃料電池スタック11内の水分は水蒸気になっている。特に、燃料ガス供給通路28に供給される燃料ガスには水分が含まれているため、燃料ガス供給通路28には水蒸気が存在する。この場合、排出路形成部材50の上端開口は開放されているため、燃料ガス供給通路28の水蒸気の一部は排出路形成部材50の上端開口から排出路51へ流れ込む。
【0033】
そして、燃料電池スタック11の運転が停止されると燃料電池スタック11の温度が下がるため、排出路51の水蒸気及び燃料ガス供給通路28の水蒸気は凝縮して液水Wとなる。このとき、燃料ガス供給通路28の水蒸気は、燃料ガス供給通路28の上端部に溜まり易いので、ダミーセパレータ20aの下面33及び傾斜面35に付着した状態で凝縮して液水Wとなる。
【0034】
すると、この液水Wは、重力により傾斜面35を伝って排出路形成部材50側に流動して排出路51に滴下(落下)する。このため、燃料ガス供給通路28内で水蒸気の凝縮によって発生する液水Wが排出路51を通じて円滑に排出される。したがって、ダミーセパレータ20aの下面33から燃料ガス供給通路28における排出路形成部材50の外側に滴下される液水Wの量が低減される。
【0035】
因みに、燃料電池スタック11において排出路形成部材50(排出路51)が存在しない場合には、燃料ガス供給通路28に水蒸気の凝縮による液水Wが多量に発生する。すると、この液水Wは、重力によって燃料ガス供給通路28から燃料ガス供給口37を介してガス供給配管41に流れ込む。
【0036】
このため、燃料電池スタック11を寒冷地などの気温が氷点下になる場所で使用した場合、ガス供給配管41に流れ込んだ液水Wが凍るため、ガス供給配管41内が詰まったり、圧力調整弁42が凍結したりしてしまう。この結果、ガスタンク40から燃料ガス供給通路28に燃料ガスが供給され難くなるので、燃料電池スタック11の始動が困難になるという問題がある。
【0037】
この点、本実施形態の燃料電池スタック11では、上述したように、燃料ガス供給通路28内で水蒸気の凝縮によって発生する液水Wが排出路51を通じて円滑に排出される。したがって、燃料電池スタック11の運転停止により温度が低くなった際に燃料ガス供給通路28に存在する液水Wの量が低減されるので、重力によって燃料ガス供給通路28から燃料ガス供給口37を介してガス供給配管41に流れ込む液水Wの量も低減される。
【0038】
この結果、燃料電池スタック11を寒冷地などの気温が氷点下になる場所で使用した場合でも、液水Wの凍結によってガス供給配管41内が詰まったり圧力調整弁42が凍結したりすることが抑制される。よって、寒冷地などの気温が氷点下になる場所での燃料電池スタック11の始動性が向上する。
【0039】
なお、排出路51に溜まった液水Wは、燃料電池スタック11が使用される場所の温度が液水Wの凍らない温度であるときに第2開閉弁49を開くことで、第2排出配管48から外部へ円滑に排出される。
【0040】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)燃料電池スタック11は、燃料ガスを用いて発電する複数の発電セル12が鉛直方向Zに積層されている。発電セル12は、膜電極接合体18を支持した支持フレーム19と、支持フレーム19を挟む一対のセパレータ20とを備える。発電セル12には、鉛直方向Zに延びて燃料ガスが流れる燃料ガス供給通路28を形成する燃料ガス供給孔21が形成されている。燃料ガス供給通路28の上壁面となるダミーセパレータ20aの下面33の一部には、下面33に付着する水が集まる凸部34が設けられている。凸部34は、排出路形成部材50側に向かうほど高さが低くなる傾斜面35を有している。燃料ガス供給通路28における凸部34の下側には、凸部34から滴下(落下)する液水Wを排出する排出路51を形成する鉛直方向Zに延びる筒状の排出路形成部材50が配置されている。
【0041】
通常、燃料電池スタック11の温度が高い状態において燃料ガス供給通路28に存在する水蒸気の一部は、燃料電池スタック11の温度が下がった場合に、凝縮して液水Wとなって燃料ガス供給通路28における下面33に付着する。燃料ガス供給通路28における下面33に付着した液水Wは、落下して燃料ガス供給通路28に接続されるガス供給配管41内に溜まる。そして、燃料電池スタック11を寒冷地などの気温が氷点下になる場所で使用した場合、ガス供給配管41内に溜まった液水Wが凍結するので、ガス供給配管41が詰まるなどの問題が生じる。この点、上記構成によれば、燃料ガス供給通路28における下面33に付着した液水Wは、重力によって凸部34の傾斜面35を伝って排出路形成部材50側へ流動した後、排出路形成部材50内の排出路51に落下して排出される。したがって、燃料ガス供給通路28内で水蒸気の凝縮によって発生する液水Wを円滑に排出することができる。
【0042】
(変更例)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0043】
図5に示すように、排出路形成部材50の上端部に、排出路形成部材50における排出路51の径を大きくした拡径部52を設けてもよい。このようにすれば、凸部34から滴下する液水Wが排出路51から零れることを抑制できる。
【0044】
図6に示すように、凸部34の下端部を排出路形成部材50の上端開口から排出路51に挿入させるようにしてもよい。このようにすれば、凸部34から滴下する液水Wが排出路51から零れることをより一層抑制できる。
【0045】
図7に示すように、燃料ガス供給通路28における下面33に、凸部34の代わりに集水部の一例としての親水部53を設けてもよい。すなわち、集水部は、親水部53によって構成してもよい。親水部53は、下面33における親水部53以外の部分よりも親水性を高くした部分である。具体的には、下面33における親水部53を構成する部分の材料の親水性を、下面33における親水部53以外の部分を構成する材料の親水性よりも高くしてもよい。あるいは、ダミーセパレータ20aを構成する材料の親水性よりも高い親水性を有したコーティング材を下面33の一部に塗布することによって親水部53を設けるようにしてもよい。このようにすれば、下面33における親水部53以外の部分に水蒸気が付着した状態で凝縮して液水Wになった際に、当該液水Wを親水部53へ流動し易くすることができる。なお、下面33における親水部53以外の部分に撥水性を付与してもよい。
【0046】
・凸部34は、ダミーセパレータ20aの下面33に一体形成してもよいし、ダミーセパレータ20aとは別体で形成してダミーセパレータ20aの下面33に取り付けるようにしてもよい。
【0047】
・凸部34は、円錐状または角錐状に形成してもよい。
・発電セル12において、燃料ガス供給孔21は、任意の形状に変更してもよい。
・排出路形成部材50の内径及び外径は、適宜変更してもよい。排出路形成部材50の断面形状は、円形に限らず、例えば楕円形や多角形であってもよい。
【0048】
・燃料電池スタック11において、ガスを酸化剤ガスとし、ガス孔を酸化剤ガス供給孔24とし、ガスマニホールドを鉛直方向Zに延びて酸化剤ガスが供給される酸化剤ガス供給通路(図示略)とする。そして、当該酸化剤ガス供給通路の上壁面に凸部34を設けるとともに酸化剤ガス供給通路内における凸部34の下側に排出路形成部材50を配置してもよい。つまり、凸部34及び排出路形成部材50は、ガスマニホールドとして酸化剤ガス供給孔24に適用してもよい。あるいは、凸部34及び排出路形成部材50は、ガスマニホールドとして燃料ガス排出通路30や酸化剤ガス排出通路(図示略)に適用してもよい。
【0049】
・燃料電池スタック11において、ダミーセル13を省略し、上側のターミナルプレート15の下面を、ダミーセパレータ20aの下面33の代わりに、燃料ガス供給通路28(ガスマニホールド)の上壁面としてもよい。この場合、凸部34は、上側のターミナルプレート15の下面に設けられる。
【0050】
・燃料電池スタック11は、電気自動車やハイブリッド自動車などに搭載される燃料電池システムに用いてもよいし、屋外に設置される据え置き型の燃料電池システムに用いてもよい。
【符号の説明】
【0051】
11…燃料電池スタック
12…発電セル
13…ダミーセル
14…セル積層体
15…ターミナルプレート
16…絶縁プレート
17…エンドプレート
18…膜電極接合体
19…支持フレーム
20…セパレータ
20a…ダミーセパレータ
21…ガス孔の一例としての燃料ガス供給孔
23…燃料ガス排出孔
24…酸化剤ガス供給孔
25…酸化剤ガス排出孔
26…冷却媒体供給孔
27…冷却媒体排出孔
28…ガスマニホールドの一例としての燃料ガス供給通路
30…燃料ガス排出通路
31…導電体
33…上壁面の一例としての下面
34…集水部の一例としての凸部
35…傾斜面
36…ガスケット
37…燃料ガス供給口
38…燃料ガス排出口
40…ガスタンク
41…ガス供給配管
42…圧力調整弁
43…第1排出配管
44…気液分離器
45…第1開閉弁
46…連結管
47…ポンプ
48…第2排出配管
49…第2開閉弁
50…排出路形成部材
51…排出路
52…拡径部
53…集水部の一例としての親水部
W…液水(水)
Z…鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7