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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072112
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】キサゲ加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23D 79/06 20060101AFI20240520BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B23D79/06
B23Q11/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182776
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三ツ橋 正
(72)【発明者】
【氏名】町田 港
【テーマコード(参考)】
3C011
3C050
【Fターム(参考)】
3C011BB02
3C011BB21
3C050FC09
(57)【要約】
【課題】刃と加工対象面との間に切り屑が挟まったまま加工が行われてしまうことを抑制可能なキサゲ加工装置を提供する。
【解決手段】スクレーパ22と、スクレーパ22を移動させるロボットアーム200と、スクレーパ22の刃先に向けて気流を発生させる気流発生装置50と、を備え、気流発生装置50により発生する気流は、スクレーパ22による加工対象面11に平行かつスクレーパ22による加工時の移動方向に垂直な仮想直線に対して平行か、又は、前記仮想直線よりも前記移動方向の後方側から前方側に向かう方向に向かって流れることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクレーパと、
前記スクレーパを移動させる移動機構と、
前記スクレーパの刃先に向けて気流を発生させる気流発生装置と、
を備え、
前記気流発生装置により発生する気流は、前記スクレーパによる加工対象面に平行かつ前記スクレーパによる加工時の移動方向に垂直な仮想直線に対して平行か、又は、前記仮想直線よりも前記移動方向の後方側から前方側に向かう方向に向かって流れることを特徴とするキサゲ加工装置。
【請求項2】
前記スクレーパによる加工中、または、前記スクレーパによる加工終了時点において、前記気流発生装置により気流が発生することを特徴とする請求項1に記載のキサゲ加工装置。
【請求項3】
前記気流発生装置は、
気流発生源と、
前記スクレーパと共に移動可能に構成され、かつ、前記気流発生源により発生した気流を導く管と、
前記管の先端に設けられるノズルと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のキサゲ加工装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記加工対象面における前記スクレーパによる加工位置よりも、前記スクレーパの前記移動方向の前方側に位置することを特徴とする請求項3に記載のキサゲ加工装置。
【請求項5】
前記スクレーパによる加工によって発生し、かつ前記気流発生装置により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑を捕捉する捕捉構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載のキサゲ加工装置。
【請求項6】
前記捕捉構造は、
前記気流発生装置により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑が突き当たるように配される内壁を有する通路と、
前記通路に入った切り屑が前記通路外に戻るのを抑制する戻り抑制部材と、
を備えることを特徴とする請求項5に記載のキサゲ加工装置。
【請求項7】
前記通路内で前記通路に沿って気流を発生する通路用気流発生装置と、
前記通路用気流発生装置によって発生する気流により流されて、前記通路から送り出される切り屑を回収する切り屑回収部材と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載のキサゲ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キサゲ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属を削る手持ち工具の一種で、キサゲと呼ばれる工具が知られている。キサゲ加工の本来の目的は、摺動面を高精度な平面に仕上げることにある。キサゲ加工によって摺動面に形成されたミクロン単位の微小な凹みは、摺動時に潤滑油の油溜まりの作用をするため、摺動面の潤滑性が向上し、摺動時のリンギングを防止する効果がある。このような、手作業によるキサゲ加工は、熟練が要求される作業であり、また、大変な重労働でもあった。そこで、キサゲ加工を自動で行うキサゲ加工装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-58975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
キサゲ加工を自動で行うキサゲ加工装置においては、加工時に発生する切り屑が、刃と加工対象面との間に挟まってしまうことがある。その状態のまま加工が行われると、加工精度が低下してしまう。
【0005】
本発明の目的は、刃と加工対象面との間に切り屑が挟まったまま加工が行われてしまうことを抑制可能なキサゲ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0007】
本発明のキサゲ加工装置は、
スクレーパと、
前記スクレーパを移動させる移動機構と、
前記スクレーパの刃先に向けて気流を発生させる気流発生装置と、
を備え、
前記気流発生装置により発生する気流は、前記スクレーパによる加工対象面に平行かつ前記スクレーパによる加工時の移動方向に垂直な仮想直線に対して平行か、又は、前記仮想直線よりも前記移動方向の後方側から前方側に向かう方向に向かって流れることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、スクレーパによる加工により生じた切り屑は、気流発生装置により発生する気流によって、吹き飛ばされる。これにより、刃と加工対象面との間に切り屑が挟まってしまうことを抑制することができる。
【0009】
前記スクレーパによる加工中、または、前記スクレーパによる加工終了時点において、前記気流発生装置により気流が発生するとよい。
【0010】
前記気流発生装置は、
気流発生源と、
前記スクレーパと共に移動可能に構成され、かつ、前記気流発生源により発生した気流
を導く管と、
前記管の先端に設けられるノズルと、
を備えるとよい。
【0011】
前記ノズルは、前記加工対象面における前記スクレーパによる加工位置よりも、前記スクレーパの前記移動方向の前方側に位置するとよい。
【0012】
キサゲ加工により生じる切り屑は、スクレーパによる加工位置よりも前方に溜まりやすいので、このような構成を採用することで、より一層確実に切り屑を吹き飛ばすことができる。また、気流がスクレーパに邪魔されることも抑制することができる。
【0013】
前記スクレーパによる加工によって発生し、かつ前記気流発生装置により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑を捕捉する捕捉構造を有するとよい。
【0014】
これにより、切り屑をキサゲ加工装置から除去する清掃作業を容易にすることができる。
【0015】
前記捕捉構造は、
前記気流発生装置により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑が突き当たるように配される内壁を有する通路と、
前記通路に入った切り屑が前記通路外に戻るのを抑制する戻り抑制部材と、
を備えるとよい。
【0016】
これにより、切り屑が加工対象面側に戻ってしまうことを抑制することができる。
【0017】
前記通路内で前記通路に沿って気流を発生する通路用気流発生装置と、
前記通路用気流発生装置によって発生する気流により流されて、前記通路から送り出される切り屑を回収する切り屑回収部材と、
を備えるとよい。
【0018】
これにより、切り屑をキサゲ加工装置から除去する清掃作業をより一層容易にすることができる。
【0019】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、刃と加工対象面との間に切り屑が挟まったまま加工が行われてしまうことを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は本発明の実施例に係るキサゲ加工装置の概略構成を示す図である。
図2図2はロボットハンドに保持されたスクレーパユニットを示す図である。
図3図3はスクレーパの刃をワークの加工対象面に当接させた状態を示す図である。
図4図4は制御装置の構成の一例を示すブロック図である。
図5図5は制御装置の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
図6図6は本実施例に係るスクレーパユニットの概略構成図である。
図7図7は本実施例に係る捕捉構造の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0023】
(実施例)
<加工装置の概略構成>
図1は本発明の実施例に係るキサゲ加工装置1の概略構成を示す図であり、各種構成を斜視図にて示している。図中、矢印Zは鉛直方向を示し、矢印X,Yは、Z方向に垂直かつ互いに直交する方向を示している。なお、X,Y方向を含む面は水平面に対して平行な面である。キサゲ加工装置1は、制御装置100と、移動機構としてのロボットアーム200と、三次元形状計測器300とを備えている。
【0024】
キサゲ加工装置1は、加工対象であるワーク10の加工対象面11に対してキサゲ加工を自動で行う装置である。ワーク10は、例えば、工作機械等を構成する金属製の摺動部材であり、その摺動面を加工対象面11とすることができる。キサゲ加工は金属加工の一種であり、キサゲ工具であるスクレーパ22を用いて加工対象面11の凸部を削り取り、加工対象面11の平面度を高め、さらに油溜まりを形成することによって摺動摩擦係数を低減させることができる。なお、キサゲ加工の本来の目的は、摺動面を高精度な平面に仕上げることにある。キサゲ加工においては、摺動面の摺動時にリンギング(wringing)現象が発生することを防止すべく、キサゲの仕上加工において、摺動面にミクロン単位の微小な多数の窪みを潤滑油の油溜まりとして形成し、摺動面の潤滑性を向上させるようにしている。
【0025】
ロボットアーム200は、例えば、6軸の多関節ロボットアームであり、制御装置100によって制御される。ロボットアーム200は、その先端側にロボットハンド210を有し、このロボットハンド210にスクレーパユニット20やハンドチャック30を着脱自在に保持することが可能である。すなわち、ロボットアーム200は、ロボットハンド210にスクレーパユニット20及びハンドチャック30を選択的に付け替えることができる。そして、ロボットアーム200は、各関節(例えば、第1軸~第6軸)をサーボモータ等によって駆動することで、ロボットハンド210をXYZ三次元直交座標系の任意の位置へと移動させることができる。
【0026】
図2はロボットハンド210に保持されたスクレーパユニット20を示す斜視図である。スクレーパユニット20は、ロボットハンド210に着脱自在なホルダ部21と、ホルダ部21と一体に設けられたキサゲ工具であるスクレーパ22とを有するアタッチメントである。スクレーパ22は、可撓性を有する金属材料により形成された略帯板形状のスクレーパ本体23と、スクレーパ本体23の先端側に取り付けられた刃24を有している。刃24は、例えば超硬合金によって形成されており、例えば鋳物で形成されたワーク10の加工対象面11を切削することが可能である。図中の符号Wは刃24の幅寸法を示している。本実施例に係る刃24の先端25の形状は、弧状(例えば、円弧状や楕円弧状)である。ただし、刃24の先端25の形状はV字状であってもよい。例えば、ロボットハンド210には、刃24の幅寸法W、及び先端25の寸法形状が異なるスクレーパユニット20を付け替えることができる。
【0027】
ワーク10の加工対象面11に対するキサゲ加工は、例えば図1に示す加工用架台C1にワーク10を固定し、ロボットハンド210にスクレーパユニット20を保持した状態でロボットアーム200を制御することによって行われる。加工用架台C1の表面は、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。
【0028】
図3は、スクレーパ22の刃24をワーク10の加工対象面11に当接させた状態を側方から見た図である。キサゲ加工では、加工対象面11に刃24を斜めに当てがい、ロボットハンド210を-Z方向に駆動して加工対象面11に刃24を押し付けた状態からロボットハンド210をX-Y平面と平行に、図3中矢印方向に移動させる。これにより、加工対象面11は、ミクロンオーダーあるいはサブミクロンオーダーの厚さずつ切削される。
【0029】
なお、図3に示す符号θは、加工対象面11を刃24によって切削する際に刃24とX-Y平面とがなす角度である(以下、「工具角度」という)。ロボットアーム200は、例えば、キサゲ加工時における工具角度θとロボットハンド210の垂直押し込み量(-Z方向への変位量)δzを制御パラメータとすることで、スクレーパ22における1行程の切削加工で、加工対象面11を切削する切削深さΔDS、及び切削幅WCを調整することができる。ここで、ロボットハンド210の垂直押し込み量(-Z方向への変位量)δzは、例えば、三次元形状計測器300によって計測される加工対象面11の基準点における高さを基準高さ(ゼロ点)として設定される。加工対象面11における基準点の位置(XY座標)は特に限定されない。例えば、加工対象面11の隅部を基準点に設定し、その表面高さを基準高さとしてもよい。なお、スクレーパ本体23は上記の通り可撓性を有するため、スクレーパ本体23が撓んだ状態で加工対象面11の切削が行われる。そのため、加工対象面11の切削深さがミクロンオーダーあるいはサブミクロンオーダーの寸法であるのに対して、切削時におけるロボットハンド210の垂直押し込み量δzはミリオーダーの変位量として設定することができる。
【0030】
次に、ハンドチャック30について説明する。ハンドチャック30は、架台間でワーク10を移動させる際に、ワーク10を把持するためのアタッチメントであり、ロボットハンド210に着脱自在となっている。図1に示すレイアウトでは、例えば、加工用架台C1及び計測用架台C2間でワーク10を移動させる際に用いられる。すなわち、ロボットアーム200は、ロボットハンド210に装着したハンドチャック30によってワーク10を把持することで、加工用架台C1及び計測用架台C2間でワーク10を自由に移動させることができる。
【0031】
計測用架台C2は、三次元形状計測器300を用いてワーク10における加工対象面11の三次元形状を計測する際に、ワーク10を載置するための架台である。計測用架台C2の表面も、X-Y平面に平行な平面状に形成されている。
【0032】
三次元形状計測器300は、例えば、白色光干渉方式の計測器であり、加工対象面11の三次元形状データ(凹凸形状データ)を高精度に取得することができる。但し、三次元形状計測器300は、加工対象面11の凹凸形状データ(高さデータ)を計測できれば特に限定されず、例えば三次元レーザスキャナ等を用いてもよい。また、三次元形状計測器300は、加工対象面11の凹凸形状データを非接触で取得する「非接触式」の計測器であってもよいし、加工対象面11にプローブ等を接触させることで当該加工対象面11の凹凸形状データを取得する「接触式」の計測器であってもよい。その他、キサゲ加工装置1は、スクレーパユニット20を載置するための工具載置用架台C3や、ハンドチャック30を載置するためのハンドチャック用架台C4等を備えていてもよい。
【0033】
また、ロボットアーム200は、更に、力覚センサ220を備えている。力覚センサ220は、キサゲ加工時に、スクレーパ22に作用する負荷(抵抗)を検出するセンサである。キサゲ加工装置1の制御装置100は、力覚センサ220が出力するキサゲ加工中における負荷の状態を監視(モニタリング)し、必要に応じて、負荷の強弱に基づいたフィードバック制御を行うことができる。なお、上述したロボットアーム200は本発明に係る移動機構の一例であり、移動機構はロボットアーム200に限定されない。本発明に係
る移動機構は、保持したスクレーパを動作させることによってワーク10の加工対象面11に対して自動でキサゲ加工を行うことができる構成であれば特に限定されない。
【0034】
<制御装置>
キサゲ加工装置1の制御装置100について説明する。制御装置100は、加工指示データに従ってロボットアーム200を制御し、その結果、ワーク10の加工対象面11に対して加工指示データに応じたキサゲ加工が行われる。また、制御装置100は、ロボットアーム200を制御するための加工指示データを生成する。すなわち、制御装置100は、ロボットアーム200を制御する装置として機能すると共に、ロボットアーム200を制御する際に用いる加工指示データを生成するための情報処理装置として機能する。但し、ロボットアーム200を制御するための加工指示データは、制御装置100とは別の情報処理装置によって生成されてもよい。この場合、当該情報処理装置が生成した加工指示データを制御装置100が取得し、取得した加工指示データに従って制御装置100がロボットアーム200を制御する。なお、情報処理装置から制御装置100への加工指示データの送信は有線通信または無線通信のいずれによって行われてもよい。
【0035】
図4は制御装置100の構成の一例を示すブロック図である。制御装置100は、例えば、一般的なコンピュータである。制御装置100を構成するコンピュータは、通信インターフェース(通信I/F)101、記憶装置102、入出力装置103、及びプロセッサ104を備え、これらが通信バス105を介して接続されている。
【0036】
通信I/F101は、例えばネットワークカードや通信モジュールであってもよく、所定のプロトコルに基づき、他のコンピュータ、機器等と通信を行う。例えば、制御装置100は、通信I/F101を介してワーク10における加工対象面11の三次元形状情報を三次元形状計測器300から受信する。
【0037】
記憶装置102は、例えば、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の主記憶装置、及びHDD(Hard-Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等の補助記憶装置(二次記憶装置)を含んでいる。主記憶装置は、プロセッサ104が読み出すプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報を一時的に記憶したり、プロセッサ104の作業領域を確保したりする。補助記憶装置は、プロセッサ104が実行するプログラムや他のコンピュータとの間で送受信する情報等を記憶する。また、補助記憶装置は、リムーバブルメディア(可搬記録媒体)を含んでいてもよい。リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、SDカード、または、CD-ROM、DVDディスク、若しくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。記憶装置102(例えば、補助記憶装置)には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。
【0038】
入出力装置103は、例えば、キーボード、マウス等の入力装置、モニタ等の出力装置、タッチパネルのような入出力装置等のユーザインターフェースである。
【0039】
プロセッサ104は、CPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等の演算処理装置であり、プログラムを実行することにより本実施例に係る各処理を行う。例えば、プロセッサ104が、記憶装置102の補助記憶装置に記憶されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することによって、加工指示データを生成するための加工指示データ生成処理等といった各種の処理が実現される。
【0040】
なお、制御装置100は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、
互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0041】
次に、制御装置100の機能構成について図5に基づいて説明する。図5は、制御装置100の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御装置100は、加工指示データ生成部110と、制御部111を機能部として有している。制御装置100のプロセッサ104は、記憶装置102の補助記憶装置に記憶されたプログラムを主記憶装置にロードして実行することにより、上述した各機能部を実現する。加工指示データ生成部110は、加工指示データを生成する加工指示データ生成処理を実行する。制御部111は、データ生成部110が生成した加工指示データを取得し、当該加工指示データに従ってロボットアーム200を制御する。
【0042】
<気流発生装置(通路用気流発生装置)>
本実施例に係るキサゲ加工装置1は、気流発生装置50を備えている。気流発生装置について、図1,6,7を参照して説明する。図6は本実施例に係るスクレーパユニット20の概略構成図であり、同図(a)はスクレーパユニット20(気流発生装置50の一部の構成も含む)の平面図を示し、同図(b)はスクレーパ22の刃24の刃先が加工対象面11に接した状態を正面から見た図の一部であり、気流発生装置50の一部の構成についても示している。図7は本実施例に係る捕捉構造(気流発生装置50の一部の構成も含む)の概略構成図であり、同図(a)はその平面図であり、同図(b)はその正面図である。気流発生装置50は、スクレーパ22の刃先(刃24の先端)に向けて気流を発生させる役割を担っている。この気流発生装置50は、気流発生源51と、チューブ52Xを介してスクレーパ22に接続され、気流発生源51により発生した気流を導く管52と、管52の先端に設けられるノズル52aとを備えている。気流発生源51は、屋内エアー配管、送風機や各種ポンプなど、気流を発生させることのできる各種公知技術を採用することができる。管52はスクレーパユニット20に固定されることで、スクレーパ22と共に移動可能に構成されている。例えば、スクレーパユニット20に固定される管52は金属などの剛体により構成し、気流発生源51により発生した気流を管52に導くためのチューブ52X(図1中、点線部分参照)に柔軟性を持たすことで、管52の移動を妨げないようにすることができる。
【0043】
本実施例において、気流発生装置50により発生する気流は、スクレーパ22による加工対象面11に平行かつスクレーパ22による加工時の移動方向に垂直な仮想直線Lに対して平行に流れるように構成されている。図6において、実線で示すノズル52aにより射出される気流は、仮想直線Lに対して平行に流れる(矢印R1参照)。ただし、気流発生装置50により発生する気流は、仮想直線Lよりもスクレーパ22の上記の移動方向の後方側から前方側に向かう方向に向かって流れる構成を採用してもよい。図6において、点線で示すノズル52bにより射出する気流は、仮想直線Lよりもスクレーパ22の上記の移動方向の後方側から前方側に向かう方向に向かって流れる(矢印R2参照)。
【0044】
なお、スクレーパ22による加工中、連続的に気流発生装置50により気流が発生するように制御装置100によって制御する構成を採用することができる。また、スクレーパ22による加工中は気流を発生させずに、加工終了時点において気流発生装置50により気流が発生するように、制御装置100によって制御する構成を採用することもできる。
【0045】
ここで、ノズル52aは、加工対象面11におけるスクレーパ22による加工位置よりも、スクレーパ22の移動方向の前方側に位置する構成を採用することも好適である。すなわち、図6(a)においては、ノズル52aにおける射出口の中心が、スクレーパ22の加工時の移動方向に対して、スクレーパ22による加工位置(刃先の位置)と一致するように設けられる場合を示している。しかしながら、ノズル52aにおける射出口の中心を加工位置よりもスクレーパ22の移動方向の前方側に位置する構成を採用することも好
適である。
【0046】
また、本実施例に係るキサゲ加工装置1は、スクレーパ22による加工によって発生し、かつ気流発生装置50により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑を捕捉する捕捉構造55を有している。この捕捉構造55は、加工用架台C1に備えられている。図7を参照して、捕捉構造55について説明する。
【0047】
捕捉構造55は、気流発生装置50により発生する気流によって吹き飛ばされる切り屑が突き当たるように配される内壁55aを有する通路と、通路に入った切り屑が通路外に戻るのを抑制する戻り抑制部材55bとを備えている。図7(b)に示すように、通路は、底面部と、上記の内壁55aを有する側面部と、天井面部とを有する構成である。また、戻り抑制部材55bは、通路内に向かうにつれて上方に傾く傾斜板状の部材により構成される。以上のように構成される捕捉構造55は、加工用架台C1において、ワーク10の幅方向(スクレーパ22の移動方向に対して垂直な方向)の両側にそれぞれ設けられている。
【0048】
また、本実施例に係るキサゲ加工装置1は、捕捉構造55における通路内で通路に沿って気流を発生する通路用気流発生装置を備えている。この通路用気流発生装置は、気流発生源51と、気流発生源51により発生した気流を導く管と、管の先端に設けられるノズル53とを備えている。本実施例では、気流発生装置50と通路用気流発生装置は共用の気流発生源51を用いているが、個別に気流発生源を設けても構わない。ノズル53は、その射出口が捕捉構造55における通路の一端に向けられるように配されている。これにより、通路の一端から他端に向かう気流を発生させることができる。
【0049】
また、図7(a)に示すように、通路用気流発生装置によって発生する気流により流されて、通路から送り出される切り屑を回収する切り屑回収部材56を設けると好適である。この図においては、切り屑回収部材56を点線にて示している。切り屑回収部材56は、気流を排出しつつ切り屑を溜められるように、メッシュ状の袋を採用するのが好適である。
【0050】
<本実施例に係るキサゲ加工装置の優れた点>
本実施例に係るキサゲ加工装置1によれば、スクレーパ22による加工により生じた切り屑は、気流発生装置50により発生する気流によって、吹き飛ばされる。より具体的には、気流発生装置50のノズル52aから気体(例えば、空気)が射出されて、スクレーパ22による加工によって発生した切り屑は、図7(b)中、矢印X1方向に吹き飛ばされる。吹き飛ばされた切り屑は、捕捉構造55における内壁55aに突き当たり、気流と自重により矢印X2方向に落下する。戻り抑制部材55bが設けられているため、切り屑が通路外に戻ってしまうことは抑制されて、通路内に収まる。また、通路内の切り屑は、通路用気流発生装置により発生する気流によって、通路の他端から送り出されて、切り屑回収部材56に回収される。
【0051】
なお、図7においては、スクレーパ22が、図7(a)中、上方から下方に向けて加工する際の状態を示したものである。この場合には、気流発生装置50のノズル52aから射出される気体は、図7中、右から左に向けて流れる。そのため、通路用気流発生装置に備えられる一対のノズル53のうち、図中左側のノズル53から気体を射出するように、制御装置100は通路用気流発生装置を制御する。これに対して、スクレーパ22が、図7(a)中、下方から上方に向けて加工する場合には、気流発生装置50のノズル52aから射出される気体は、図7中、左から右に向けて流れる。そのため、通路用気流発生装置に備えられる一対のノズル53のうち、図中右側のノズル53から気体を射出するように、制御装置100は通路用気流発生装置を制御する。通路用気流発生装置のノズル53
から気体を射出するタイミングについては、加工中、加工後、又は切り屑が所定量溜まった時点など、適宜選択することができる。
【0052】
以上のように、スクレーパ22による加工により生じた切り屑は、気流発生装置50により発生する気流によって、吹き飛ばされるので、刃24と加工対象面11との間に切り屑が挟まってしまうことを抑制することができる。従って、刃24と加工対象面11との間に切り屑が挟まったまま加工が行われてしまうことを抑制することができる。
【0053】
なお、上記の通り、気流発生装置50のノズル52aは、加工対象面11におけるスクレーパ22による加工位置よりも、スクレーパ22の移動方向の前方側に位置する構成を採用することも好適である。すなわち、キサゲ加工により生じる切り屑は、スクレーパ22による加工位置よりも前方に溜まりやすいので、このような構成を採用することで、より一層確実に切り屑を吹き飛ばすことができる。また、気流がスクレーパ22に邪魔されることも抑制することができる。
【0054】
また、本実施例では、捕捉構造55を有する構成を採用したことで、切り屑をキサゲ加工装置1から除去する清掃作業を容易にすることができる。更に、切り屑回収部材56を設けることで、切り屑をキサゲ加工装置1から除去する清掃作業をより一層容易にすることができる。
【符号の説明】
【0055】
1:キサゲ加工装置
10:ワーク
11:加工対象面
20:スクレーパユニット
21:ホルダ部
22:スクレーパ
23:スクレーパ本体
24:刃
25:先端
30:ハンドチャック
50:気流発生装置
51:気流発生源
52:管
52a,52b,53:ノズル
55 :捕捉構造
55a:内壁
55b:戻り抑制部材
56:切り屑回収部材
100:制御装置
200:ロボットアーム
210:ロボットハンド
220:力覚センサ
300:三次元形状計測器
C1:加工用架台
C2:計測用架台
C3:工具載置用架台
C4:ハンドチャック用架台
L:仮想直線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7