(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072116
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】薄膜トランジスタアレイ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20240520BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
H01L29/78 619A
H01L29/78 618B
H01L29/78 626C
H01L29/78 617S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182787
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 学
【テーマコード(参考)】
5F110
【Fターム(参考)】
5F110AA26
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5F110NN40
(57)【要約】
【課題】可撓性基板の曲げに対する薄膜トランジスタの電気的な耐久性の向上を可能とした薄膜トランジスタアレイを提供する。
【解決手段】ゲート絶縁層22は、体積分率で50%を超える有機高分子化合物を含む。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、複数の薄膜トランジスタ12Aが間隔を空けて並ぶ。可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、各薄膜トランジスタ12Aのゲート絶縁層22と、その薄膜トランジスタ12Aに隣り合う薄膜トランジスタ12Aのゲート絶縁層22との間の距離Dが、5μm以上200μm以下である。複数の薄膜トランジスタ12Aを覆う層間絶縁層13をさらに備える。層間絶縁層13のヤング率が、ゲート絶縁層22のヤング率よりも低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有した表面を備える可撓性基板と、
前記可撓性基板上に位置する半導体層と、前記半導体層を覆うゲート絶縁層とを備える複数のトップゲート型の薄膜トランジスタと、を備える薄膜トランジスタアレイであって、
前記ゲート絶縁層は、体積分率で50%を超える有機高分子化合物を含み、
前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、前記複数の薄膜トランジスタが間隔を空けて並び、
前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、各薄膜トランジスタの前記ゲート絶縁層と、その薄膜トランジスタに隣り合う薄膜トランジスタの前記ゲート絶縁層との間の距離が、5μm以上200μm以下であり、
有機高分子化合物から構成され、前記複数の薄膜トランジスタを覆う層間絶縁層をさらに備え、
前記層間絶縁層のヤング率が、前記ゲート絶縁層のヤング率よりも低い
薄膜トランジスタアレイ。
【請求項2】
前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、
前記ゲート絶縁層の面積が第1面積S1であり、
前記薄膜トランジスタにおけるチャネル領域の面積が第2面積S2であり、
前記第1面積S1と前記第2面積S2とが以下の式を満たす
S2≦S1≦5S2
請求項1に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項3】
前記半導体層が、酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成される
請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項4】
前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタであり、
前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、
前記半導体層の全体が、前記可撓性基板の前記表面に位置し、
前記ソース電極は、前記半導体層の表面における第1領域と、前記可撓性基板の前記表面における第1領域とを覆い、
前記ドレイン電極は、前記半導体層の前記表面における第2領域と、前記可撓性基板の前記表面における第2領域とを覆い、
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層、前記ソース電極、および、前記ドレイン電極を覆い、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置する
請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項5】
前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタであり、
前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、
前記ソース電極は、前記可撓性基板の前記表面における第1領域に位置し、
前記ドレイン電極は、前記可撓性基板の前記表面における第2領域に位置し、前記ソース電極から離間し、
前記半導体層は、前記ソース電極の一部を覆う第1部分と、前記ドレイン電極の一部を覆う第2部分と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、かつ、前記可撓性基板の前記表面上に位置する第3部分とを含み、
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層、前記ソース電極、および、前記ドレイン電極を覆い、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置する
請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【請求項6】
前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタであり、
前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、
前記半導体層の全体が、前記可撓性基板の前記表面に位置し、前記半導体層は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分とを含み、
前記ゲート絶縁層は、前記半導体層の前記第3部分を覆い、
前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置し、
前記ソース電極は、前記半導体層の前記第1部分から前記層間絶縁層の表面まで延び、
前記ドレイン電極は、前記半導体層の前記第2部分から前記層間絶縁層の前記表面まで延びる
請求項1または2に記載の薄膜トランジスタアレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薄膜トランジスタアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置の一例は、一対の保護層、一対の放熱層、可撓性基板、薄膜トランジスタアレイ層、および、表示素子層を備えている。薄膜トランジスタアレイ層は、可撓性基板の第1面に位置し、かつ、可撓性基板における第1面とは反対側の第2面には、第1の放熱層が位置している。表示素子層は、薄膜トランジスタアレイ層上に位置し、かつ、可撓性基板、薄膜トランジスタアレイ層、および、表示素子層を含む積層体が、表示装置の厚さ方向において、一対の放熱層に挟まれている。一対の放熱層は、表示装置の厚さ方向において、一対の保護層に挟まれている。
【0003】
表示装置では、表示装置の厚さ方向において、薄膜トランジスタアレイ層が表示装置の中立面の近傍に位置するように、各保護層の厚さ、および、各放熱層の厚さが調整される。これにより、表示装置が曲げられた際に、薄膜トランジスタアレイ層に作用する引張応力、および、圧縮応力を抑えることが可能である。結果として、薄膜トランジスタアレイ層が有する曲げに対する電気的な耐久性を高めることが可能である(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した表示装置では、薄膜トランジスタアレイ層が有する曲げに対する耐久性を高めるために、薄膜トランジスタアレイ層以外の層における厚さや、表示装置の厚さ方向における位置が大きく制約される。そのため、薄膜トランジスタアレイ層以外の層に対する前述の制約を緩和するために、薄膜トランジスタアレイ層そのものによって曲げに対する電気的な耐久性を有することが可能な構成が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための薄膜トランジスタアレイは、絶縁性を有した表面を備える可撓性基板と、前記可撓性基板上に位置する半導体層と、前記半導体層を覆うゲート絶縁層とを備えるトップゲート型の薄膜トランジスタを複数備える。前記ゲート絶縁層は、体積分率で50%を超える有機高分子化合物を含む。前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、前記複数の薄膜トランジスタが間隔を空けて並ぶ。前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、各薄膜トランジスタの前記ゲート絶縁層と、その薄膜トランジスタに隣り合う薄膜トランジスタの前記ゲート絶縁層との間の距離が、5μm以上200μm以下である。薄膜トランジスタアレイは、前記複数の薄膜トランジスタを覆う層間絶縁層をさらに備える。前記層間絶縁層のヤング率が、前記ゲート絶縁層のヤング率よりも低い。
【0007】
上記薄膜トランジスタアレイによれば、第1の薄膜トランジスタが有するゲート絶縁層が第2の薄膜トランジスタが有するゲート絶縁層から離間するから、薄膜トランジスタアレイが屈曲されたときに、ゲート絶縁層よりもヤング率が低い層間絶縁層にひずみが集中する。これにより、ゲート絶縁層によって覆われたチャネル部分ではひずみが低減されるため、薄膜トランジスタアレイにおいて、可撓性基板の曲げに対する薄膜トランジスタの電気的な耐久性が向上する。
【0008】
上記薄膜トランジスタアレイにおいて、前記可撓性基板の前記表面と対向する視点から見て、前記ゲート絶縁層の面積が第1面積S1であり、前記薄膜トランジスタにおけるチャネル領域の面積が第2面積S2であり、前記第1面積S1と前記第2面積S2とが以下の式を満たす。
【0009】
S2≦S1≦5S2
上記薄膜トランジスタアレイによれば、第1面積S1が第2面積S2以上であるから、薄膜トランジスタが動作する確実性を高めることが可能である。また、第1面積S1が第2面積S2の5倍以下であるから、薄膜トランジスタアレイが、十分な可撓性を有することが可能である。
【0010】
上記薄膜トランジスタアレイにおいて、前記半導体層が、酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されてもよい。この薄膜トランジスタアレイによれば、半導体層が酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されるから、薄膜トランジスタアレイの電気的特性を高めることができる。
【0011】
上記薄膜トランジスタアレイにおいて、前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタであり、前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、前記半導体層の全体が、前記可撓性基板の前記表面に位置し、前記ソース電極は、前記半導体層の表面における第1領域と、前記可撓性基板の前記表面における第1領域とを覆い、前記ドレイン電極は、前記半導体層の前記表面における第2領域と、前記可撓性基板の前記表面における第2領域とを覆い、前記ゲート絶縁層は、前記半導体層、前記ソース電極、および、前記ドレイン電極を覆い、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置してもよい。
【0012】
上記薄膜トランジスタアレイにおいて、前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタであり、前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、前記ソース電極は、前記可撓性基板の前記表面における第1領域に位置し、前記ドレイン電極は、前記可撓性基板の前記表面における第2領域に位置し、前記ソース電極から離間し、前記半導体層は、前記ソース電極の一部を覆う第1部分と、前記ドレイン電極の一部を覆う第2部分と、前記ソース電極と前記ドレイン電極との間に位置し、かつ、前記可撓性基板の前記表面上に位置する第3部分とを含み、前記ゲート絶縁層は、前記半導体層、前記ソース電極、および、前記ドレイン電極を覆い、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置してもよい。
【0013】
上記薄膜トランジスタアレイにおいて、前記薄膜トランジスタは、トップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタであり、前記薄膜トランジスタは、ソース電極、ドレイン電極、および、ゲート電極をさらに備え、前記半導体層の全体が、前記可撓性基板の前記表面に位置し、前記半導体層は、第1部分と、第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分とを含み、前記ゲート絶縁層は、前記半導体層の前記第3部分を覆い、前記ゲート電極は、前記ゲート絶縁層上に位置し、前記ソース電極は、前記半導体層の前記第1部分から前記層間絶縁層の表面まで延び、前記ドレイン電極は、前記半導体層の前記第2部分から前記層間絶縁層の前記表面まで延びてもよい。
【発明の効果】
【0014】
上記薄膜トランジスタアレイによれば、可撓性基板の曲げに対する薄膜トランジスタの電気的な耐久性の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本開示の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造の第1例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造の第2例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造の第3例を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造の第4例を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、本開示の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造の第1例を示す断面図であり、
図5(b)は当該薄膜トランジスタアレイの平面図である。
【
図6】
図6は、本開示の薄膜トランジスタアレイの第1例を示す平面図である。
【
図7】
図7は、比較例1の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造を示す断面図である。
【
図8】
図8は、比較例6の薄膜トランジスタアレイが有する多層構造を示す断面図である。
【
図9】
図9は、実施例の薄膜トランジスタアレイにおける層構造を示す表である。
【
図10】
図10は、比較例の薄膜トランジスタアレイにおける層構造を示す表である。
【
図11】
図11は、実施例および比較例の薄膜トランジスタアレイの評価結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から
図11を参照して、薄膜トランジスタアレイの一実施形態を説明する。なお、以下に説明する薄膜トランジスタにおけるソースとドレインとは、薄膜トランジスタの駆動回路の動作によって定まるため、第1の電極がソースからドレインに機能を替えてもよく、かつ、第2の電極がドレインからソースに機能を替えてもよい。
【0017】
[薄膜トランジスタアレイの構造]
図1から
図6を参照して、薄膜トランジスタアレイの構造を説明する。なお、
図1が示す薄膜トランジスタアレイは、トップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタを備える。
図2が示す薄膜トランジスタアレイは、トップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタを備える。
図3が示す薄膜トランジスタアレイは、トップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタを備える。
図4が示す薄膜トランジスタアレイは、トップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタを備え、かつ、
図4には、各薄膜トランジスタが備えるドレイン電極に接続された画素電極の一部が層間絶縁層上に位置する構造が示されている。
【0018】
本開示の薄膜トランジスタアレイは、薄膜トランジスタが上述したいずれの構造であっても、以下の条件1から条件4を満たす。
(条件1)薄膜トランジスタの型式が、トップゲート型である。
【0019】
(条件2)ゲート絶縁層が、体積分率で50%を超える有機高分子化合物を含む。
(条件3)可撓性基板の表面と対向する視点から見て、各薄膜トランジスタのゲート絶縁層と、その薄膜トランジスタに隣り合う薄膜トランジスタのゲート絶縁層との間の距離が、5μm以上200μm以下である。
【0020】
(条件4)有機高分子化合物から構成される層間絶縁層のヤング率が、ゲート絶縁層のヤング率よりも小さい。
層間絶縁層のヤング率、および、ゲート絶縁層のヤング率は、ISO 14577に準拠したナノインデンター法によって測定される値である。
【0021】
以下、図面を参照して、薄膜トランジスタアレイが備える薄膜トランジスタの構造を詳しく説明する。
図1が示す薄膜トランジスタアレイ10は、絶縁性を有した表面11Sを備える可撓性基板11と、複数の薄膜トランジスタ12Aと、複数の薄膜トランジスタ12Aを覆う層間絶縁層13とを備えている。薄膜トランジスタ12Aの型式は、トップゲート‐トップコンタクト型である。薄膜トランジスタ12Aは、半導体層21、ゲート絶縁層22、ソース電極23、ドレイン電極24、および、ゲート電極25を備えている。
【0022】
半導体層21の全体が、可撓性基板11の表面11Sに位置している。ソース電極23は、半導体層21の表面21Sにおける第1領域21S1と、可撓性基板11の表面11Sにおける第1領域11S1とを覆っている。ドレイン電極24は、半導体層21の表面21Sにおける第2領域21S2と、可撓性基板11の表面11Sにおける第2領域11S2とを覆っている。ゲート絶縁層22は、半導体層21、ソース電極23、および、ドレイン電極24を覆っている。ゲート電極25は、ゲート絶縁層22上に位置している。
【0023】
図2が示す薄膜トランジスタアレイ10は、
図1が示す薄膜トランジスタアレイ10と同様に、可撓性基板11、複数の薄膜トランジスタ12B、および、層間絶縁層13を備えている。薄膜トランジスタ12Bの型式は、トップゲート‐ボトムコンタクト型である。薄膜トランジスタ12Bは、半導体層21、ゲート絶縁層22、ソース電極23、ドレイン電極24、および、ゲート電極25を備えている。
【0024】
ソース電極23は、可撓性基板11の表面11Sにおける第1領域11S3に位置している。ドレイン電極24は、可撓性基板11の表面11Sにおける第2領域11S4に位置している。ドレイン電極24は、ソース電極23から離間している。半導体層21は、第1部分21A、第2部分21B、および、第3部分21Cを含んでいる。第1部分21Aは、ソース電極23の一部を覆っている。第2部分21Bは、ドレイン電極24の一部を覆っている。第3部分21Cは、ソース電極23とドレイン電極24との間に位置し、かつ、可撓性基板11の表面11S上に位置している。ゲート絶縁層22は、半導体層21、ソース電極23、および、ドレイン電極24を覆っている。ゲート電極25は、ゲート絶縁層22上に位置している。
【0025】
図3が示す薄膜トランジスタアレイ10は、
図1が示す薄膜トランジスタアレイ10と同様に、可撓性基板11、複数の薄膜トランジスタ12C、および、層間絶縁層13とを備えている。薄膜トランジスタ12Cの型式は、トップゲート‐コプラーナー型である。薄膜トランジスタ12Cは、半導体層21、ゲート絶縁層22、ソース電極23、ドレイン電極24、ゲート電極25を備えている。
【0026】
半導体層21の全体が、可撓性基板11の表面11Sに位置している。半導体層21は、第1部分21Dと、第2部分21Eと、第1部分21Dと第2部分21Eとの間に位置する第3部分21Fとを含んでいる。ゲート絶縁層22は、半導体層21の第3部分21Fを覆っている。ゲート電極25は、ゲート絶縁層22上に位置している。ソース電極23は、半導体層21の第1部分21Dから層間絶縁層13の表面13Sまで延びている。ソース電極23は、層間絶縁層13が有する第1コンタクトホール13H1内に形成され、かつ、層間絶縁層13の表面13Sに露出している。ドレイン電極24は、半導体層21の第2部分21Eから層間絶縁層13の表面13Sまで延びている。ドレイン電極24は、層間絶縁層13が有する第2コンタクトホール13H2内に形成されて、かつ、層間絶縁層13の表面13Sに露出している。
【0027】
なお、半導体層21のうち、第1部分21Dおよび第2部分21Eは、第3部分21Fに対してドーパントが高濃度にドープされた高ドープ領域である。半導体層21の型式がn型の場合には、高ドープ領域はn型のドーパントが高濃度にドープされたn+領域である。一方で、半導体層21の型式がp型の場合には、高ドープ領域はp型のドーパントが高濃度にドープされたp+領域である。
【0028】
条件1に記載のように、本開示の薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの型式は、トップゲート型である。トップゲート型の薄膜トランジスタ12A,12B,12Cによれば、ゲート絶縁層22が形成される前に、半導体層21が形成される。半導体層21は、例えば、スパッタ法やプラズマCVD法によって形成される。そのため、半導体層21の形成にスパッタ法やプラズマCVD法などが用いられ、かつ、ゲート絶縁層22が高い可撓性を有した有機高分子化合物から形成される場合でも、ゲート絶縁層22に半導体層21の形成に起因した損傷が生じない。これにより、ゲート絶縁層22と半導体層21との間に良好な界面が形成され、結果として、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの電気的特性の劣化が抑えられる。
【0029】
これに対して、薄膜トランジスタがボトムゲート型である場合には、ゲート絶縁層上に半導体層が形成される。高い可撓性を有した有機化合物から構成されるゲート絶縁層の上にスパッタ法やプラズマCVD法などによって半導体層が形成された場合には、ゲート絶縁層が損傷し、ゲート絶縁層と半導体層との間には良好な界面が形成されないことがある。この場合、薄膜トランジスタの電気的特性が劣化する。
【0030】
なお、例えば酸化物半導体から構成される半導体層21を塗布法によって形成することも可能ではある。しかしながら、塗布法によって形成された酸化物半導体層が十分な移動度や信頼性を有するためには、酸化物半導体から構成される塗布膜を300℃以上の高温で焼成することが必要とされる。そのため、耐熱性の低い有機化合物から形成されるゲート絶縁層22上に、塗布法を用いて半導体層21を形成することは難しい。
【0031】
図4は、
図2が示す薄膜トランジスタアレイ10と同様に、トップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ12Bを備える構造の一例を示している。
図4が示す例では、薄膜トランジスタ12Bのドレイン電極24に画素電極が接続されている。
【0032】
図4が示すように、層間絶縁層13は、ドレイン電極24に接続されるコンタクトホール13Hを備えている。画素電極14は、コンタクトホール13Hを確定する面に沿って位置し、かつ、層間絶縁層13の表面13Sに位置している。
【0033】
図5は、
図1が示す薄膜トランジスタアレイ10と同様に、トップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタ12Aを備える構造の一例を示している。
図5(a)は、可撓性基板11に直交する平面に沿う断面における薄膜トランジスタ12Aの断面構造を示している。
図5(b)は、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見た薄膜トランジスタ12Aの平面構造を示している。なお、
図5(b)では、図示の便宜上、層間絶縁層13の図示が省略されている。
【0034】
図5(a)が示すように、薄膜トランジスタ12Aにおいて、半導体層21が可撓性基板11の表面11S上に位置している。半導体層21の一部がソース電極23によって覆われ、かつ、半導体層21の他の一部がドレイン電極24によって覆われている。
【0035】
可撓性基板11に直交する断面において、ゲート絶縁層22はテーパー状を有することが好ましい。テーパー状には、順テーパー状と逆テーパー状とが含まれる。ゲート絶縁層22は、
図5(a)が示すように、順テーパー状を有することがより好ましい。なお、順テーパー状とは、ゲート絶縁層22の厚さ方向に直交する断面積が、可撓性基板11の表面11Sに向けて単調増加する形状のことである。なお、前述したゲート絶縁層22の厚さ方向に直交する断面積とは、ゲート絶縁層22の外形によって規定される断面積である。これに対して、逆テーパー状とは、ゲート絶縁層22の厚さ方向に直交する断面積が、可撓性基板11の表面11Sに向けて単調減少する形状のことである。なお、前述したゲート絶縁層22の厚さ方向に直交する断面積とは、ゲート絶縁層22の外形によって規定される断面積である。
【0036】
ゲート絶縁層22の面積は、第1面積S1である。第1面積S1は、ゲート絶縁層22の厚さ方向に直交する断面積のうち、最も大きい断面積である。なお、当該断面積は、ゲート絶縁層22の外形によって規定される断面積である。そのため、
図5(a)が示すように、可撓性基板11に直交する断面において、ゲート絶縁層22が順テーパー状を有する場合には、ゲート絶縁層22のうちで、可撓性基板11接する位置での断面積が第1面積S1である。これに対して、ゲート絶縁層22が逆テーパー状を有する場合には、ゲート絶縁層22のうちで、ゲート電極25が位置する面の面積が第1面積S1である。
【0037】
図5(b)が示すように、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、ソース電極23とドレイン電極24との間の距離が、チャネル長Lである。ソース電極23とドレイン電極24とが並ぶ方向に直交する方向に沿う半導体層21の長さが、チャネル幅Wである。薄膜トランジスタ12Aにおいて、チャネル長Lとチャネル幅Wとによって特定される領域が、チャネル領域である。チャネル領域の面積は、第2面積S2である。第2面積S2は、チャネル長Lとチャネル幅Wとの乗算値である。
【0038】
なお、薄膜トランジスタの型式が
図3を参照して先に説明したトップゲート‐コプラーナー型である場合には、半導体層21における高ドープ領域は、チャネル領域には含まれない。そのため、薄膜トランジスタ12Bにおいて、チャネル長Lは、ソース電極23とドレイン電極24とが並ぶ方向に沿う第3部分21Fの長さであり、かつ、チャネル幅Wは、ソース電極23とドレイン電極24とが並ぶ方向に直交する方向に沿う第3部分21Fの長さである。
【0039】
ゲート絶縁層22の第1面積S1と、チャネル領域の第2面積S2とは、以下の式を満たすことが好ましい。
S2≦S1≦5S2
上記式によれば、第1面積S1が第2面積S2以上であるから、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cが動作する確実性を高めることが可能である。また、第1面積S1が第2面積S2の5倍以下であるから、薄膜トランジスタアレイ10が、十分な可撓性を有することが可能である。
【0040】
図6は、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見た薄膜トランジスタアレイ10の平面構造を示している。
図6は、複数の薄膜トランジスタ12Aの配列における一例を示している。
【0041】
図6が示すように、複数の薄膜トランジスタ12Aは、ソース電極23が延びる第1方向に沿って等間隔で並び、かつ、ソース電極23とドレイン電極24が並ぶ第2方向に沿って等間隔で並んでいる。第1方向において、薄膜トランジスタ12Aにおけるゲート絶縁層22間の距離が、第1距離D1である。第2方向において、薄膜トランジスタ12Aにおけるゲート絶縁層22間の距離が、第2距離D2である。第2距離D2は、第1距離D1よりも長い。なお、ゲート絶縁層22間の距離は、各ゲート絶縁層22の可撓性基板11と接する面での輪郭に基づく。すなわち、可撓性基板11の表面11Sにおいて、第1の薄膜トランジスタ12Aが備えるゲート絶縁層22の輪郭と、第2の薄膜トランジスタ12Aが備えるゲート絶縁層22の輪郭との間の距離が、ゲート絶縁層22間の距離である。
図6が示す例では、互いに隣り合う薄膜トランジスタ12A間の最短距離である第1距離D1が、上述した条件3におけるゲート絶縁層22間の距離Dである。すなわち、第1距離D1が、5μm以上200μm以下であればよい。
【0042】
以下、薄膜トランジスタ12A,12B、12Cが備える各層をより詳しく説明する。
[可撓性基板11]
可撓性基板11において、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの半導体層21および各電極23,24の少なくとも一方が位置する面が絶縁性を有することが必要である。
図1から
図6を参照して先に説明した薄膜トランジスタアレイ10では、可撓性基板11の表面11Sが絶縁性を有することが必要である。可撓性基板11は、透明基板でもよいし、不透明基板でもよい。薄膜トランジスタアレイ10が透過性ディスプレイに適用される場合には、可撓性基板11は透明基板であることが好ましい。
【0043】
可撓性基板11を構成する材料は、有機高分子化合物、有機材料と無機材料との両方を含む有機無機複合材料、金属、合金、および、無機高分子化合物から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0044】
有機高分子化合物は、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルサルフェン、トリアセチルセルロース、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレンコポリマー、ポリイミド、フッ素系ポリマー、環状ポリオレフィン系ポリマーから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。
【0045】
有機無機複合材料は、例えば、ガラス繊維強化アクリルポリマー、または、ガラス繊維強化ポリカーボネートであってよい。金属は、例えば、アルミニウム、または、銅であってよい。合金は、例えば、鉄クロム合金、鉄ニッケル合金、または、鉄ニッケルクロム合金であってよい。無機高分子化合物は、例えば、無アルカリガラスまたはアルカリガラスであってよい。無アルカリガラスは、酸化珪素、酸化硼素、および、酸化アルミニウムを含む。アルカリガラスは、酸化珪素、酸化ナトリウム、および、酸化カルシウムを含む。
【0046】
可撓性基板11は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11を構成する各層を構成する材料は、それぞれ有機高分子化合物、有機無機複合材料、金属、合金、および、無機高分子化合物から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。
【0047】
可撓性基板11が単層構造体である場合には、可撓性基板11は、絶縁性を有したフィルムでもよいし、可撓性を有した薄板ガラスでもよい。可撓性基板11が薄板ガラスである場合には、薄板ガラスの厚さは0.5mm以下であることが好ましく、0.1mm以下であることがより好ましい。
【0048】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、導電性を有した箔と、箔上に形成された絶縁層とを備えてもよい。この場合には、絶縁層が、可撓性基板11の表面11Sを有する。
【0049】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、下地基板と、下地基板から剥離可能に構成された剥離層とを備えてもよい。剥離層は、複数の薄膜トランジスタ12A,12B,12Cとともに、下地基板から剥がされる。複数の薄膜トランジスタ12A,12B,12Cを備える剥離層は、別の可撓性基材に貼り付けられてもよい。可撓性基材は、例えば、耐熱性が低い紙類、セロファン基材、布類、再生繊維類、皮革類、ナイロン基材、ポリウレタン基材であってよい。この場合には、剥離層と可撓性基材とは、別の可撓性基板11を構成する。
【0050】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、下地基板とガスバリア層とを備えてもよい。この場合には、可撓性基板11は、下地基板の両面または片面にガスバリア層を有することができる。下地基板が有機化合物から構成されるフィルムである場合には、水分子および酸素分子の少なくとも一方である酸化源がフィルムを透過し、酸化源が薄膜トランジスタ12A,12B,12Cを構成する各層に対して付着することがある。これにより、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの電気的特性が低下する場合がある。
【0051】
この点、下地基板の両面または片面にガスバリア層を形成することによって、酸化源の透過を抑えることが可能である。ガスバリア層は、無機化合物から形成されてよい。無機化合物は、例えば酸化珪素、窒化珪素、アルミナなどであってよい。なお、ガスバリア層が可撓性基板11の片面のみに形成される場合には、ガスバリア層は、可撓性基板11の表面11Sを含んでもよいし、表面11Sとは反対側の面を含んでもよい。
【0052】
可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、下地基板と、下地基板の表面を平坦化するための平坦化層を備えてもよい。可撓性基板11が平坦化層を備える場合には、平坦化層が可撓性基板11の表面11Sを含む。あるいは、可撓性基板11が多層構造体である場合には、可撓性基板11は、下地基板と、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cを構成する各層と可撓性基板11との密着性を高めるための密着層を備えてもよい。可撓性基板11が密着層を備える場合には、密着層が可撓性基板11の表面を含む。
【0053】
[電極14,23,24,25]
各電極14,23,24,25はそれぞれ単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。各電極14,23,24,25が多層構造体である場合には、各電極14,23,24,25はそれぞれ電極の下層との密着性を高める最下層、および、電極の上層との密着性を高める最上層を有することが好ましい。
【0054】
各電極14,23,24,25を構成する材料は、単一材料から構成される金属でもよいし、合金でもよいし、導電性を有する金属酸化物でもよい。各電極14,23,24,25を構成する材料は、相互に異なってもよいし、同じであってもよい。
【0055】
金属は、例えば、遷移金属、アルカリ金属、および、アルカリ土類金属から構成される群から選択される少なくとも一種である。遷移金属は、例えば、インジウム、アルミニウム、金、銀、白金、チタン、銅、ニッケル、タングステンから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。アルカリ金属は、例えば、リチウム、あるいは、セシウムであってよい。アルカリ土類金属は、例えば、マグネシウムおよびカルシウムの少なくとも一種であってよい。合金は、例えば、モリブデンニオブ、鉄クロム、アルミニウムリチウム、マグネシウム銀、アルミネオジウム合金、アルミネオジムジルコニア合金(Al‐Nd)から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。
【0056】
金属酸化物は、例えば、酸化インジウム、酸化錫、酸化亜鉛、酸化カドミウム、酸化インジウムカドミウム、酸化カドミウム錫、酸化亜鉛錫から構成される群から選択されるいずれか一種であってよい。金属酸化物は、不純物を含んでもよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化インジウムであってよい。当該不純物は、例えば、錫、亜鉛、チタン、セリウム、ハフニウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステンから構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化錫でもよい。当該不純物は、例えばアンチモンまたはフッ素であってよい。不純物を含有する金属酸化物は、例えば不純物を含む酸化亜鉛でもよい。当該不純物は、ガリウム、アルミニウム、硼素から構成される群から選択される少なくとも一種であってよい。また、不純物を含む金属酸化物は、水素原子を含む金属酸化物でもよい。金属酸化物中に含まれる水素原子は、金属酸化物中において良好な電子供与サイトを形成することが可能である。
【0057】
電極14,23,24,25の成膜方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、原子堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)、印刷法、塗布法などであってよい。電極14,23,24,25の成膜方法は、スパッタ法または印刷法であることが好ましい。スパッタ法および印刷法によれば、他の成膜方法に比べて、生産速度が高く、生産コストが低く、かつ、大面積へ成膜が容易である。電極14,23,24,25を形成する際には、各種の成膜方法によって電極14,23,24,25を形成するための薄膜を成膜した後に、フォトマスクなどを用いたフォトリソグラフィ法によって、薄膜を所望の形状にパターニングしてもよい。なお、印刷法を用いて電極14,23,24,25を形成する場合には、印刷法を用いて電極14,23,24,25を形成するための薄膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法によって薄膜を所望の形状にパターニングしてもよい。あるいは、印刷法を用いた場合には、所望の形状を有した電極14,23,24,25を形成することも可能である。
【0058】
各電極14,23,24,25に適用することが可能な材料の範囲を広げる観点では、各電極14,23,24,25の電気抵抗率が、5.0×10-5Ω・cm以上であることが好ましい。薄膜トランジスタの消費電力を抑える観点では、各電極14,23,24,25の電気抵抗率は、1.0×10-2Ω・cm以下であることが好ましい。各電極14,23,24,25の電気抵抗値を抑える観点では、各電極14,23,24,25の厚さは、50nm以上であることが好ましい。薄膜トランジスタ12A,12B,12Cを構成する各層の平坦性を高める観点では、各電極14,23,24,25の厚さは、300nm以下であることが好ましく、150nm以下であることがより好ましい。
【0059】
[半導体層21]
半導体層21を構成する材料は、無機半導体でもよいし、有機半導体でもよい。移動度を高める観点、および、信頼性を高める観点から、半導体層21は無機半導体から構成されることが好ましい。無機半導体は、非単結晶シリコン、単結晶シリコン、化合物半導体であってよい。成膜温度を有機高分子化合物から構成される基板の耐熱温度程度まで低める観点では、半導体層21は、酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されることが好ましい。
【0060】
酸化物半導体は、インジウム、カドミウム、亜鉛、錫から構成される群から選択される少なくとも一種の元素を含むことが好ましい。酸化物半導体は、アルミニウム、チタン、ガリウム、タングステン、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ハフニウム、プラセオジム(Pr)、ネオジウム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)か構成される群から選択される少なくとも一種の金属元素を含んでもよい。
【0061】
非単結晶シリコンは、例えば、水素化非晶質シリコン(a‐Si:H)、水素化微結晶シリコン(μc‐Si:H)、低温多結晶シリコン(LTPS:Low Temperature Polycrystalline Silicon)などであってよい。
【0062】
半導体層21の厚さにおける均一性を高める観点では、半導体層21の厚さは、5nm以上であることが好ましい。半導体層21を構成する材料の使用量を抑える観点では、半導体層21の厚さは、100nm以下であることが好ましい。厚さの均一性を高めること、および、材料の使用量を抑制することを両立する観点では、半導体層21の厚さは、5nm以上100nm以下であることが好ましい。さらに、これらの効果を得る実効性を高める観点では、半導体層21の厚さは、10nm以上50nm以下であることがより好ましい。
【0063】
半導体層21の成膜方法は、例えば、スパッタ法、蒸着法、プラズマCVD法、原子堆積法、塗布法、転写法などであってよい。
[高ドープ領域]
上述したように、トップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタ12Bでは、半導体層21とソース電極23との電気的な接触、および、半導体層21とドレイン電極24との電気的な接触を改善するために、半導体層21にドーパントがドーピングされる。これによって、半導体層21に、高ドープ領域が形成される。
図3を参照して先に説明した例では、半導体層21における第1部分21Dおよび第2部分21Eが、高ドープ領域である。これに対して、半導体層21のうち、第1部分21Dと第2部分21Eとに挟まれた第3部分21Fには、ドーパントがドーピングされていない。これにより、第3部分21Fは、チャネル層として機能する。
【0064】
半導体層21に高ドープ領域を形成する際には、半導体層21のうち、第1部分21Dおよび第2部分21Eに、例えばプラズマ処理やイオン注入処理などによって、ドーパントをドープする。これにより、第1部分21Dおよび第2部分21Eに、ドーパントが高い濃度でドープされる。この際に、第3部分21Fをレジストなどによって被覆することによって、第3部分21Fに対してドーパントがドープされない。
【0065】
例えば、半導体層21がn型の酸化物半導体から構成される場合には、アルゴンガスや窒素ガスなどを用いてプラズマ処理を行うことによって、半導体層21内に酸素空孔を増加させることが可能である。これにより、半導体層21の導電率が増大するから、半導体層21に高ドープ領域を形成することができる。また、半導体層21がn型の酸化物半導体から形成される場合には、水素ガスやフッ化窒素(NF3)ガスなどを用いてプラズマ処理を行うことによって、水素やフッ素を半導体層21に注入することができる。半導体層21に注入された水素やフッ素がn型のドーパントとして働くから、半導体層21に高ドープ領域を形成することができる。n型の酸化物半導体は、例えば、酸化インジウムガリウム亜鉛(In‐Ga‐Zn‐O)、酸化亜鉛(Zn‐O)、酸化インジウム亜鉛(In‐Zn‐O)などであってよい。
【0066】
半導体層21が、n型の水素化アモルファスシリコンや、n型の微結晶シリコンから構成される場合には、例えば、ホスフィン(PH3)ガスと水素ガスとの混合ガスや、ホスフィンガスとアルゴンガスとの混合ガスを用いてプラズマ処理を行う。これにより、半導体層21に高ドープ領域を形成することができる。
【0067】
一方、半導体層21が、p型の水素化アモルファスシリコンや、p型の微結晶シリコンから構成される場合には、例えば、ジボラン(B2H6)ガスと水素との混合ガスや、ジボランガスとアルゴンとの混合ガスを用いてプラズマ処理を行う。これにより、半導体層21に高ドープ領域を形成することができる。
【0068】
[ゲート絶縁層22]
ゲート絶縁層22は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。ゲート絶縁層22が単層構造体あるいは多層構造体のいずれであっても、ゲート絶縁層22は、上述した条件2によるように、有機高分子化合物を含む。これにより本開示の薄膜トランジスタアレイ10は、可撓性を有することが可能である。なお、本開示の薄膜トランジスタアレイ10において、ゲート絶縁層22を構成する有機高分子化合物とは、有機高分子化合物のみから構成される材料だけではなく、有機高分子化合物と無機化合物の混合物である有機無機複合材料であって、かつ、混合物において有機高分子化合物の体積分率が50%を超える材料であってよい。すなわち、ゲート絶縁層22において、有機高分子化合物が主成分である。
【0069】
有機高分子化合物は、例えば、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーなどであってよい。有機高分子化合物中には、フッ素原子が含まれてもよい。
【0070】
有機無機複合材料は、有機高分子化合物と無機化合物との混合物であるから、有機高分子化合物に由来する柔軟性と、無機化合物に由来する高い耐電圧特性および高い誘電率特性とを兼ね備える。そのため、有機無機複合材料から構成されるゲート絶縁層22によれば、柔軟性、高い耐電圧特性、および、高い誘電率特性を得ることが可能である。
【0071】
有機無機複合材料は、例えば、アクリル系ポリマー内に無機化合物の微粒子を分散させた材料であってよい。微粒子を構成する無機化合物は、例えば、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、酸化チタン(TiO2)、酸化珪素(SiO2)、酸化ハフニウム(HfO2)、酸化イットリウム(Y2O3)などであってよい。上述したように、無機化合物の混合比率は、体積分率で50%未満である。無機化合物の混合比率が50%以上である場合には、無機化合物の特性が支配的になり、これによってゲート絶縁層22の柔軟性が損なわれ、結果としてゲート絶縁層22を備える薄膜トランジスタアレイ10の耐屈曲性が低下する。これに対して、無機化合物の混合比率が50%未満である、すなわち有機高分子化合物の混合比率が50%を超える場合には、有機高分子化合物の特性が支配的になるから、ゲート絶縁層22の柔軟性が維持される。
【0072】
ゲート絶縁層22の抵抗率は、1×1011Ω・cm以上であることが好ましい。ゲート絶縁層22の抵抗率は、1×1013Ω・cm以上であることがより好ましい。ゲート絶縁層22の厚さは、30nm以上3μm以下であることが好ましい。ゲート絶縁層22の厚さは、50nm以上1μm以下であることがより好ましい。ゲート絶縁層22の厚さが30nm以上であるから、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cのゲート絶縁層22として十分な耐電圧特性を有し、これによって薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの駆動中に絶縁破壊を生じることが抑えられる。一方、ゲート絶縁層22の厚さが3μm以下であるから、駆動電圧の上昇が抑えられ、これによって、薄膜トランジスタアレイ10による消費電力の上昇が抑えられる。
【0073】
本開示の薄膜トランジスタアレイ10では、可撓性基板11の表面11Sと対向する視点から見て、上述した条件3を満たすように、ゲート絶縁層が島状にパターニングされている。すなわち、本開示の薄膜トランジスタアレイ10では、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cごとに個別のゲート絶縁層22を備えている。通常、薄膜トランジスタアレイは、複数の薄膜トランジスタに共通する1層のゲート絶縁層を備えている。これに対して、本開示の薄膜トランジスタアレイ10では、1層のゲート絶縁層が島状にパターニングされ、これによって、互いに隣り合う薄膜トランジスタ12A,12B,12Cのゲート絶縁層22が離間している。
【0074】
本開示の薄膜トランジスタアレイ10では、第1の薄膜トランジスタ12A,12B、12Cが有するゲート絶縁層22が第2の薄膜トランジスタ12A,12B,12Cが有するゲート絶縁層22から離間するから、薄膜トランジスタアレイ10が屈曲されたときに、ゲート絶縁層22よりもヤング率が低い層間絶縁層13にひずみが集中する。これにより、ゲート絶縁層22によって覆われたチャネル部分ではひずみが低減されるため、薄膜トランジスタアレイ10において、可撓性基板11の曲げに対する薄膜トランジスタ12A,12B,12Cの電気的な耐久性が向上する。
【0075】
なお、薄膜トランジスタアレイ10の断面において、半導体層21が占める面積、および、各電極が占める面積は小さく、また、厚さも薄いから、半導体層21の力学特性および各電極の力学特性が薄膜トランジスタアレイ10の可撓性に及ぼす影響は小さい。これに対して、ゲート絶縁層22の厚さは通常、半導体層21の厚さおよび電極の厚さよりも厚く、かつ、薄膜トランジスタアレイ10の大部分に渡って位置する。そのため、ゲート絶縁層22を構成する材料に固くて脆い無機化合物を用いると、薄膜トランジスタアレイが可撓性基板の屈曲時に割れてしまうことがあった。なお、無機化合物は、例えば、二酸化珪素、窒化珪素、および、酸化アルミニウムなどである。
【0076】
この点、本開示の薄膜トランジスタアレイ10では、ゲート絶縁層22を構成する材料に有機高分子化合物を用い、かつ、各薄膜トランジスタ12A,12B,12Cが個別のゲート絶縁層22を備える。そして、層間絶縁層13がゲート絶縁層22よりもさらに柔らかいから、薄膜トランジスタアレイ10が高い可撓性を有し、かつ、薄膜トランジスタアレイ10は、可撓性基板11の屈曲にする電気的な耐久性を有することが可能である。
【0077】
このように、薄膜トランジスタアレイ10が上述した条件4を満たすから、薄膜トランジスタアレイ10は、可撓性基板11の曲げに対する電気的な耐久性を有することが可能である。ゲート絶縁層22のヤング率が第1ヤング率EGIであり、層間絶縁層13のヤング率が第2ヤング率EILである場合に、第1ヤング率EGIに対する第2ヤング率EILの比(EIL/EGI)は1未満である。第1ヤング率EGIに対する第2ヤング率EILの比は、例えば以下の式を満たすことが好ましい。
0.1025≦EIL/EGI≦0.795
【0078】
上述したように、島状にパターニングされたゲート絶縁層において、各ゲート絶縁層22とそのゲート絶縁層22に隣り合うゲート絶縁層22との間の距離Dは、5μm以上200μm以下である。ゲート絶縁層22間の距離が5μm以上であることによって、可撓性基板11の屈曲時に生じたひずみが層間絶縁層13に集中し、これによってゲート絶縁層22に生じるひずみを低減することができる。また、ゲート絶縁層22間の距離Dが200μm以下であることによって、薄膜トランジスタアレイ10の解像度が過剰に低くなることが抑えられるから、薄膜トランジスタアレイ10が実用に足る解像度を有することが可能である。
【0079】
ゲート絶縁層22のパターニングには、例えば以下に記載の方法を用いることができる。可撓性基板11上に絶縁層を形成した後に絶縁層をパターニングする場合には、絶縁層のパターニングにドライエッチング法を用いることができる。また、ゲート絶縁層22を塗布法で形成する場合には、ゲート絶縁層22を構成する材料に感光性を付与することによって、材料の塗布によって形成された塗布膜を露光し、次いで塗布膜を現像する。これにより、パターニングされた絶縁層を得ることができる。また、印刷法を用いてゲート絶縁層22を形成する場合には、所定のパターンを有したゲート絶縁層22を一度の処理で形成することができる。また、ゲート絶縁層22を形成するための絶縁膜を可撓性基板11上に成膜する前に、可撓性基板11として、表面11Sにおいて、ゲート絶縁層22を形成しない領域に撥液層を選択的に形成した基材を用いる。次いで、可撓性基板11の表面11Sに塗布法を用いてゲート絶縁層を形成するための絶縁層を形成する。この際に、撥液層が塗布液をはじくから、撥液層のパターンに応じたパターンを有した絶縁層を形成することができる。
【0080】
[層間絶縁層13]
層間絶縁層13は、単層構造体でもよいし、多層構造体でもよい。層間絶縁層13は、上述した条件3を満たす。すなわち、層間絶縁層13のヤング率は、ゲート絶縁層22のヤング率よりも低い。層間絶縁層13を構成する材料には、有機高分子化合物が最も適している。
【0081】
層間絶縁層13を構成する有機高分子化合物は、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、シリコーン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドゲル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリビニルフェノール、ポリイミド、ポリビニルアルコール、アクリルポリマー、エポキシポリマー、アモルファスフッ素ポリマーを含むフッ素系ポリマー、メラミンポリマー、フランポリマー、キシレンポリマー、ポリアミドイミドポリマー、シリコーンポリマーなどであってよい。有機高分子化合物は、フッ素原子を含んでもよい。
【0082】
層間絶縁層13を構成する有機高分子化合物は、伸縮性を有した有機高分子化合物であってもよい。伸縮性を有した有機系材料は、例えば、伸縮性エポキシポリマー、伸縮性シリコーン、伸縮性ポリウレタンなどであってよい。
【0083】
層間絶縁層13のヤング率は、ゲート絶縁層22のヤング率よりも低ければよい。層間絶縁層13のヤング率は10MPa以下であることが好ましく、3MPa以下であることがより好ましい。ゲート絶縁層22のヤング率、および、層間絶縁層13のヤング率は、適切な有機高分子化合物を選択することによって制御することができる。たとえば、フッ素樹脂であるCYTOP(CYTOPは登録商標)はアクリル樹脂よりもヤング率が低い。そのため、アクリル樹脂を用いてゲート絶縁層22を形成し、かつ、フッ素樹脂であるCYTOPを用いて層間絶縁層13を形成する。これによって、層間絶縁層13のヤング率をゲート絶縁層22のヤング率よりも低くすることができる。
【0084】
また、ゲート絶縁層22と層間絶縁層13とに同一の有機高分子化合物を用いた場合であっても、塗布法、焼成温度、乾燥速度などを制御することによって、ゲート絶縁層22のヤング率を層間絶縁層13のヤング率よりも低くすることが可能である。例えば、アクリルでは、焼成温度が230℃である場合のヤング率が7.8GPaである一方で、焼成温度が180℃である場合のヤング率が6.9GPaであって、焼成温度を低めることによって、ヤング率を低めることが可能である。このように、焼成温度を適切に制御することによって、同一の有機高分子化合物を用いて成膜した場合であっても、薄膜が有するヤング率を任意に制御することが可能である。
【0085】
層間絶縁層13の厚さは、例えば、500nm以上4μm以下であってよく、1μm以上3μm以上であることが好ましい。
層間絶縁層13を形成する方法は、例えば、蒸着法、塗布法、印刷法などであってよい。層間絶縁層13を形成する方法は、塗布法または印刷法であることが好ましい。層間絶縁層13はパターニングされていなくてもよいし、必要に応じて層間絶縁層13の一部がパターニングされてもよい。層間絶縁層13の一部をパターニングする場合には、例えば、層間絶縁層13のパターニングによって、上述したコンタクトホール13H,13H1,13H2を形成する。これにより、例えば、
図4を参照して先に説明した構造では、ドレイン電極24が層間絶縁層13のコンタクトホールを通じて画素電極14と電気的に接続される。層間絶縁層13のパターニングには、層間絶縁層13を構成する材料に適した方法が用いられる。層間絶縁層13のパターニングには、例えばドライエッチング法を用いることができる。
【0086】
[実施例]
以下、図面を参照して、実施例および比較例を説明する。なお、
図7には、比較例1の薄膜トランジスタの断面構造が示され、かつ、
図8には、比較例6の薄膜トランジスタの断面構造が示されている。また、
図9は、実施例の薄膜トランジスタアレイにおける層構造を示す表であり、かつ、
図10は、比較例の薄膜トランジスタアレイにおける層構造を示す表である。また、
図11は、実施例の薄膜トランジスタ、および、比較例の薄膜トランジスタの電気的特性に関する評価結果を示す表である。
【0087】
以下に説明する各実施例および各比較例では、10μmの厚さを有したポリイミド基材を可撓性基板として準備した。そして、各実施例および各比較例の薄膜トランジスタアレイにおいて、可撓性基板上に8×8の画素配列で、64個の薄膜トランジスタを形成した。
【0088】
[実施例1]
実施例1の薄膜トランジスタアレイ10として、
図1が示すトップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタ12Aを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnO
xの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O
2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。
【0089】
その後、IGZO薄膜上にスピンコート法を用いて感光性ポジ型レジストを塗布した。次いで、マスク露光を行った後に、アルカリ現像による現像を行うことによって、フォトレジストパターンを形成した。次に、IGZO薄膜を酸系のエッチング液を用いてウェットエッチングし、これによってIGZO薄膜のうち、不要な部分を除去した。続いて、レジスト剥離液により、IGZO薄膜からフォトレジストパターンを除去することによって半導体層21を得た。すなわち、フォトリソグラフィ法を用いて、半導体層21を得た。なお、以下において、IGZO薄膜と同様の方法によって薄膜をパターニングした場合に、フォトリソグラフィ法によって薄膜をパターニングしたと記載する。
【0090】
次に、半導体層21上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。これにより、チャネル長Lを10μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0091】
そして、可撓性基板11に架橋剤を含むポリビニルピロリドン(PVP)をスピンコート法を用いて塗布し、これによってPVP薄膜を形成した。次いで、PVP薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングした後に、パターニング後のPVP薄膜を焼成することによって、PVPを架橋させ、これによってゲート絶縁層22を得た。ゲート絶縁層22の厚さは0.8μmであり、ゲート絶縁層22間の最短距離は5μmであり、ゲート絶縁層の第1面積S1は200μm2であった。
【0092】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0093】
続いて、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによって層間絶縁層13を得た。焼成後の層間絶縁層13の厚さは、3μmであった。これにより、実施例1の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0094】
[実施例2]
実施例1において、以下を変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例2の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0095】
・ゲート絶縁層22間の距離D:7μm
・第1面積S1:500μm2
・ゲート絶縁層22:アクリル樹脂
・ゲート絶縁層22の厚さ:0.6μm
・層間絶縁層13:アモルファスフッ素樹脂
(CYTOP CTL‐809M Mタイプ、AGC(株)製)
・層間絶縁層13の厚さ:2.8μm
【0096】
[実施例3]
実施例2において、以下を変更した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例3の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0097】
・ゲート絶縁層22間の距離D:10μm
・第1面積S1:600μm2
・ゲート絶縁層22の厚さ:0.7μm
【0098】
[実施例4]
実施例2において、以下を変更した以外は、実施例2と同様の方法によって、実施例4の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0099】
・ゲート絶縁層22間の距離D:100μm
・第1面積S1:800μm2
・ゲート絶縁層22の厚さ:1.0μm
・層間絶縁層13:PDMS
【0100】
[実施例5]
実施例1において、以下を変更した以外は、実施例1と同様の方法によって、実施例5の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
・ゲート絶縁層22間の距離D:200μm
・第1面積S1:1000μm2
【0101】
[実施例6]
実施例6の薄膜トランジスタアレイ10として
図1が示すトップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタ12Aを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11SにプラズマCVD法を用いて30nmの厚さを有した水素化アモルファスシリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH
4)ガス、および、水素(H
2)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化アモルファスシリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層21を得た。
【0102】
次に、半導体層21のなかで、ソース電極23が接する領域、および、ドレイン電極24が接する領域に、ホスフィン(PH3)ガスと水素(H2)ガスとの混合ガスを用いてプラズマ処理を行た。これにより、半導体層21中に高ドープ領域を形成した。
【0103】
続いて、半導体層21上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。そして、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。これにより、チャネル長Lを20μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0104】
そして、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによってゲート絶縁層22を得た。焼成後のゲート絶縁層22の厚さは、0.8μmであり、ゲート絶縁層22間の最短距離は10μmであり、ゲート絶縁層22の第1面積S1は800μm2であった。
【0105】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0106】
続いて、可撓性基板11にポリジメチルシロキサンを塗布し、これによって、2.8μmの厚さを有した層間絶縁層13を得た。これにより、実施例6の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0107】
[実施例7]
実施例7の薄膜トランジスタアレイ10として、
図1が示すトップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタ12Aを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11SにプラズマCVD法を用いて20nmの厚さを有した水素化微結晶シリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH
4)ガス、および、水素(H
2)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化微結晶シリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層21を得た。
【0108】
次に、半導体層21のなかで、ソース電極23が接する領域、および、ドレイン電極24が接する領域に、ホスフィン(PH3)ガスと水素(H2)ガスとの混合ガスを用いてプラズマ処理を行た。これにより、半導体層21中に高ドープ領域を形成した。
【0109】
続いて、半導体層21上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。次いで、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。これにより、チャネル長Lを20μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0110】
そして、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによってゲート絶縁層22を得た。焼成後のゲート絶縁層22の厚さは0.8μmであり、ゲート絶縁層22間の最短距離は10μmであり、ゲート絶縁層22の第1面積S1は1200μm2であった。
【0111】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0112】
続いて、可撓性基板11にポリジメチルシロキサンを塗布し、これによって、2.8μmの厚さを有した層間絶縁層13を得た。これにより、実施例7の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0113】
[実施例8]
実施例8の薄膜トランジスタアレイ10として、
図2が示すトップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ12Bを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11Sに、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。
【0114】
次に、可撓性基板11の表面11Sに、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOxの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。次いで、IGZO薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることによって、半導体層21を得た。これにより、チャネル長Lを10μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0115】
次いで、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによって層間絶縁層13を得た。ゲート絶縁層22の厚さは0.8μmであり、ゲート絶縁層22間の最短距離は10μmであり、ゲート絶縁層22の第1面積S1は1200μm2であった。
【0116】
続いて、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0117】
次に、可撓性基板11にポリジメチルシロキサンを塗布し、これによって、2.8μmの厚さを有した層間絶縁層13を得た。これにより、実施例8の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0118】
[実施例9]
実施例8において、以下を変更した以外は、実施例8と同様の方法によって、実施例9の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0119】
・第1面積S1:1500μm2
【0120】
[実施例10]
実施例10の薄膜トランジスタアレイ10として、
図2が示すトップゲート‐ボトムコンタクト型の薄膜トランジスタ12Bを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11Sに、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。
【0121】
次に、可撓性基板11の表面11Sに、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOxの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。これにより、チャネル長Lを20μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0122】
次に、感光性のアクリル樹脂にアルミナ粒子を10体積%を混入させた液をスピンコートで塗布することによって、塗布膜を形成した。この際に、20nm以上40nm以下の粒径を有したアルミナ粒子を用い、かつ、アクリル樹脂の体積(VAC)とアルミナ粒子の体積(VAL)との総和に対するアルミナ粒子の体積を10体積%に設定した。すなわち、実施例10において、ゲート絶縁層22を構成する材料は以下を満たす。
100×{VAL/(VAC+VAL)}=10(体積%)
次いで、塗布膜をパターニングした後に、パターニングされた塗布膜を焼成することによって、ゲート絶縁層22を得た。ゲート絶縁層22の厚さは1μmであり、ゲート絶縁層22間の最短距離は10μmであり、かつ、ゲート絶縁層22の第1面積S1は800μm2であった。
【0123】
続いて、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0124】
次に、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂を塗布し、これによって3μmの厚さを有した層間絶縁層13を得た。これにより、実施例10の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0125】
[実施例11]
実施例11の薄膜トランジスタアレイ10として、
図3が示すトップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタ12Cを備える薄膜トランジスタアレイ10を作製した。まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnO
xの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O
2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングすることによって、半導体層21を得た。
【0126】
そして、可撓性基板11に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによってゲート絶縁層22を得た。焼成後のゲート絶縁層22の厚さは、0.8μmであり、かつ、ゲート絶縁層22の第1面積S1は1200μm2であり、かつ、ゲート絶縁層22間の最短距離を20μmであった。
【0127】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板11に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極25を得た。
【0128】
そして、半導体層21のうちで、ゲート電極25に被覆されていない部分、および、ゲート絶縁層22に被覆されていない部分に対して、NF3プラズマを照射し、これによって過剰にn型にドーピングされた高ドープ領域を形成した。これにより、チャネル長L、および、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0129】
次に、可撓性基板11にアモルファスフッ素樹脂(CYTOP CTL‐809M Mタイプ、AGC(株)製)をスピンコートを用いて塗布することによって、塗布膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いて塗布膜をパターニングした後、パターニングされた塗布膜を焼成することによってアモルファスフッ素樹脂を架橋させた。これにより、層間絶縁層13を形成した。層間絶縁層13の厚さは、2.2μmであった。
【0130】
続いて、層間絶縁層13中に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。そして、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極23およびドレイン電極24を形成した。これにより、実施例11の薄膜トランジスタアレイ10を得た。
【0131】
[比較例1]
比較例1の薄膜トランジスタアレイとして、
図7が示すトップゲート‐トップコンタクト型の薄膜トランジスタを備える薄膜トランジスタアレイを作製した。
【0132】
図7が示すように、薄膜トランジスタアレイ100は、可撓性基板111と、可撓性基板111上に位置する半導体層121を備えている。半導体層121の一部がソース電極123によって覆われ、かつ、半導体層121の他の一部がドレイン電極124によって覆われている。複数の半導体層121、複数のソース電極123、および、複数のドレイン電極124は、1層のゲート絶縁層122によって覆われている。ゲート絶縁層122のうち、可撓性基板111に接する面とは反対側の面において、半導体層121の上方に位置する部分には、ゲート電極125が位置している。複数のゲート電極125は、一層の層間絶縁層113によって覆われている。薄膜トランジスタアレイ100において、各薄膜トランジスタ112は、半導体層121、ソース電極123、ドレイン電極124、および、ゲート電極125を個別に有する一方で、ゲート絶縁層122および層間絶縁層113が、複数の薄膜トランジスタ112に共通している。
【0133】
薄膜トランジスタアレイ100を作製する際には、まず、可撓性基板11の表面11Sに、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOxの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてIGZO薄膜をパターニングすることによって、半導体層121を得た。
【0134】
次に、半導体層21上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極123およびドレイン電極124を形成した。これにより、チャネル長Lを10μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0135】
続いて、可撓性基板111に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによって、複数の薄膜トランジスタ112に共通する1層のゲート絶縁層122を得た。ゲート絶縁層122の厚さは、0.8μmであった。
【0136】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板111に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極125を得た。
【0137】
続いて、可撓性基板111にポリジメチルシロキサンを塗布し、これによって、3.0μmの厚さを有した層間絶縁層113を得た。これにより、比較例1の薄膜トランジスタアレイ100を得た。
【0138】
[比較例2]
実施例2において、以下を変更した以外は、実施例2と同様の方法によって、比較例2の薄膜トランジスタアレイを得た。
【0139】
・ゲート絶縁層間距離:4μm
・第1面積S1:400μm2
・層間絶縁層の厚さ:2.2μm
【0140】
[比較例3]
比較例3の薄膜トランジスタアレイとして、
図3が示すトップゲート‐コプラーナー型の薄膜トランジスタを備える薄膜トランジスタアレイを作製した。まず、可撓性基板の表面にプラズマCVD法を用いて20nmの厚さを有した水素化微結晶シリコン薄膜を形成した。この際に、シラン(SiH
4)ガス、および、水素(H
2)ガスから構成される混合ガスを用いた。次いで、水素化微結晶シリコン薄膜をフォトリソグラフィ法でパターニングすることによって、半導体層を得た。
【0141】
次に、可撓性基板に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによってゲート絶縁層を得た。焼成後のゲート絶縁層の厚さは0.8μmであり、ゲート絶縁層間の最短距離は3μmであり、ゲート絶縁層の第1面積S1は400μm2であった。
【0142】
次に、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極を得た。
【0143】
そして、半導体層のうちで、ゲート電極に被覆されていない部分、および、ゲート絶縁層に被覆されていない部分に対して、ホスフィン(PH3)ガスと水素(H2)ガスとの混合ガスを用いてプラズマ処理を行た。これにより、半導体層中に高ドープ領域を形成した。これにより、チャネル長Lを10μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0144】
次に、可撓性基板にアモルファスフッ素樹脂(CYTOP CTL‐809M Mタイプ、AGC(株)製)をスピンコートを用いて塗布することによって、塗布膜を形成した。続いて、フォトリソグラフィ法を用いて塗布膜をパターニングした後、パターニングされた塗布膜を焼成することによってアモルファスフッ素樹脂を架橋させた。これにより、層間絶縁層を形成した。層間絶縁層の厚さは、2.2μmであった。
【0145】
続いて、層間絶縁層中に100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。そして、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極およびドレイン電極を形成した。これにより比較例3の薄膜トランジスタアレイを得た。
【0146】
[比較例4]
実施例8において、以下を変更した以外は、実施例8と同様の方法によって、比較例4の薄膜トランジスタアレイを得た。
【0147】
・第1面積S1:300μm2
・層間絶縁層:アクリル樹脂
・層間絶縁層の厚さ:2.5μm
【0148】
[比較例5]
実施例10において、以下を変更した以外は、実施例10と同様の方法によって、比較例5の薄膜トランジスタアレイを得た。
【0149】
・第1面積S1:300μm
2
・第2面積S2:200μm
2
・チャネル長L×チャネル幅W:10μm×20μm
・半導体層:水素化アモルファスシリコン
・ゲート絶縁層:アクリル樹脂
・層間絶縁層:ポリビニルピロリドン
[比較例6]
比較例6の薄膜トランジスタとして、
図8が示すボトムゲート‐チャネルエッチ型の薄膜トランジスタアレイを作製した。
【0150】
図8が示すように、薄膜トランジスタアレイ200は、可撓性基板211と、可撓性基板211上に位置するゲート電極225を備えている。各ゲート電極225は、個別のゲート絶縁層222によって覆われている。ゲート絶縁層222上には、半導体層221が位置している。半導体層221の一部がソース電極223によって覆われ、かつ、半導体層221の他の一部がドレイン電極224によって覆われている。複数の薄膜トランジスタ212は、複数の薄膜トランジスタ212に共通する1層の層間絶縁層213によって覆われている。
【0151】
薄膜トランジスタアレイ200を作製する際には、まず、DCマグネトロンスパッタ法を用いて、100nmの厚さを有したAl‐Nd薄膜を可撓性基板211に形成した。この際に、Ndの原子分率が2%であるAl‐Ndターゲットを用い、かつ、スパッタガスとしてアルゴンガスを用いた。次いで、Al‐Nd薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってゲート電極225を得た。
【0152】
そして、可撓性基板211に感光性を有したアクリル樹脂をスピンコート法を用いて塗布することによって塗膜を形成し、次いで、マスク露光と、アルカリ現像とを塗膜に対して行うことによって塗膜をパターニングした。その後、パターニング後の塗膜を230℃で焼成し、これによってゲート絶縁層222を得た。焼成後のゲート絶縁層222の厚さは、0.8μmであり、ゲート絶縁層222間の最短距離は10μmであり、ゲート絶縁層222の第1面積S1は600μm2であった。
【0153】
さらに、可撓性基板211に、DCスパッタリング法を用いて、30nmの厚さを有したIGZO薄膜を形成した。この際に、InGaZnOxの組成を有するターゲットと、アルゴン(Ar)ガスと酸素(O2)との混合ガスであるスパッタガスとを用いた。次いで、IGZO薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることによって、半導体層221を得た。
【0154】
そして、半導体層221上に、100nmの厚さを有したAl系合金薄膜を形成した。続いて、Al系合金薄膜をフォトリソグラフィ法を用いてパターニングし、これによってソース電極223およびドレイン電極224を形成した。これにより、チャネル長Lを10μmに設定し、かつ、チャネル幅Wを20μmに設定した。
【0155】
続いて、可撓性基板211にアモルファスフッ素樹脂(CYTOP CTL‐809M Mタイプ、AGC(株)製)をスピンコートを用いて塗布することによって、層間絶縁層213を形成した。層間絶縁層213の厚さは、2.2μmであった。これにより、比較例6の薄膜トランジスタアレイ200を得た。
【0156】
[評価方法]
[ヤング率の測定方法]
ゲート絶縁層のヤング率、および、層間絶縁層のヤング率を、ISO 14577に準拠したナノインデンター法を用いて測定した。ナノインデンター法では、微小な圧子を薄膜に押し込み、押し込みによる薄膜の変形量から薄膜のヤング率を算出する。ヤング率の測定には、微小硬さ試験機(Hysitron TI Premier、ブルカー社製)を用い、圧子にはダイヤモンド製のBerkovich圧子を用い、荷重変位検出器にはnanoDMA Transducerを用い、かつ、制御方式には荷重制御方式を用いた。ヤング率を測定する際には、表面検出荷重を1μNに設定し、かつ、測定後の後処理において表面補正を行った。測定点数は各層について24点に設定し、かつ、各点において得られたヤング率の算術平均値を各層のヤング率に設定した。なお、ゲート絶縁層のヤング率、および、層間絶縁層のヤング率を、薄膜トランジスタアレイの作製途中であって、各層を形成する工程が完了した時点において測定した。すなわち、各層が、成膜の後に、パターニング、および、焼成を経て形成される場合には、パターニングおよび焼成を経た後の各層についてヤング率を測定した。
【0157】
[屈曲試験]
可撓性基板の屈曲に対する薄膜トランジスタアレイの電気的な耐性を評価するために、クラムシェル型曲げ試験機(DMLHP‐CS、ユアサシステム機器(株)製)を用いて、0.8mmの曲率半径で50万回の屈曲試験を行った。なお、屈曲試験では、各実施例および各比較例の薄膜トランジスタアレイが凹形状になる方向で屈曲試験を行ったために、屈曲試験時には薄膜トランジスタアレイに対して圧縮の曲げ応力が負荷された。そして、屈曲試験の前後において、以下に説明する評価方法によって電気的特性を評価し、屈曲試験前の電気的特性と、屈曲試験後の電気的特性とを比較した。
【0158】
[電気的特性の評価方法]
各実施例および各比較例の薄膜トランジスタアレイについて、半導体パラメータアナライザ(B1500A、アジレント・テクノロジー株式会社製)を用いることによって、伝達特性を測定した。そして、伝達特性から、移動度およびオンオフ比を算出した。また、屈曲試験前後における移動度の減少率、屈曲試験前後におけるオンオフ比の減少率、および、屈曲試験前後における閾値電圧の変化量ΔVthを算出した。
【0159】
なお、移動度の減少率を算出する際には、屈曲試験前の移動度に対する、屈曲試験前の移動度から屈曲試験後の移動度を減算した差分値の百分率を算出した。また、オンオフ比の減少率を算出する際には、屈曲試験前のオンオフ比に対する、屈曲試験前のオンオフ比から屈曲試験後のオンオフ比を減算した差分値の百分率を算出した。また、閾値電圧の変化量ΔVthを算出する際には、屈曲試験前の閾値電圧から屈曲試験後の閾値電圧を減算した。
【0160】
閾値電圧の測定、移動度の算出、および、オンオフ比の算出では、まず、ソース電極の電圧を0Vに設定し、かつ、ソース電極とドレイン電極との間の電圧であるソース‐ドレイン電圧Vdsを10Vに設定し、ゲート電圧Vgsとドレイン電流Idとの関係である伝達特性を得た。ゲート電圧Vgsは、ソース電極とゲート電極との間の電圧である。ドレイン電流Idは、ドレイン電極に流れる電流である。この際、ゲート電極の電圧を-20Vから+20Vまで変化させることによって、ゲート電圧Vgsを変化させた。そして、ドレイン電流Idが1mAであるときのゲート電圧Vgsを閾値電圧として測定した。
【0161】
なお、電気的特性の評価は、8×8の画素配列のうち、中央に位置する4つの薄膜トランジスタについて行い、かつ、電気的特性の評価値の算術平均値を各実施例および各比較例の薄膜トランジスタアレイにおける電気的特性の評価値に設定した。
【0162】
[評価結果]
各実施例および各比較例の薄膜トランジスタアレイについて、屈曲試験の前後において電気的特性を評価した結果は、
図11が示す通りであった。
【0163】
図11が示すように、実施例1から実施例11の薄膜トランジスタアレイ10によれば、オンオフ比の減少率が87.5%以下であり、かつ、閾値電圧の変化量ΔVthが1.1以下であることが認められた。また、実施例1から実施例11の薄膜トランジスタアレイ10によれば、移動度の減少率が33.3%以下であり、特に半導体層21がIGZOから形成される場合には、移動度の減少率が10%以下であることが認められた。
【0164】
一方で、比較例1から比較例6の薄膜トランジスタアレイによれば、閾値電圧の変化量ΔVthが6.2以上であり、また、比較例1から比較例5の薄膜トランジスタアレイによれば、オンオフ比の減少率が99.4%以上であることが認められた。こうした結果から、比較例1の薄膜トランジスタアレイ100ではゲート絶縁層122がパターニングされていないから、オンオフ比の減少率が大きく、かつ、閾値電圧の変化量ΔVthが大きく、これによって薄膜トランジスタが十分な性能を示さないといえる。また、比較例2,3の薄膜トランジスタアレイでは、ゲート絶縁層間の距離が5μmを下回るから、オンオフ比の桁数における差分値が大きく、かつ、閾値電圧の変化量ΔVthが大きく、これによって薄膜トランジスタが十分な性能を示さないといえる。
【0165】
なお、比較例6の薄膜トランジスタアレイ200では、オンオフ比の減少率が33.3%である一方で、屈曲試験前のオンオフ比が低く、これによって薄膜トランジスタとして十分な性能が得られない。比較例6の薄膜トランジスタアレイ200では、薄膜トランジスタ212の型式がボトムゲート型であり、これによって、半導体層221をスパッタ法によって形成する際にゲート絶縁層の表面が損傷し、結果としてオンオフ比が低められるといえる。
【0166】
また、比較例4,5の薄膜トランジスタアレイでは、ゲート絶縁層のヤング率が層間絶縁層のヤング率以下である場合には、可撓性基板の屈曲時に薄膜トランジスタが含むゲート絶縁層においてひずみが生じるから、薄膜トランジスタの特性が低下されるといえる。
【0167】
また、実施例7の薄膜トランジスタアレイ10と、比較例3の薄膜トランジスタアレイとの比較によれば、半導体層を構成する材料が同一である場合には、条件1から条件4を満たすことによって、移動度の減少率、オンオフ比の減少率、および、閾値電圧の変化量ΔVthの全てが改善されることが認められた。また、実施例6の薄膜トランジスタアレイ10と、比較例5の薄膜トランジスタとの比較によれば、半導体層を構成する材料が同一である場合には、条件1から条件4を満たすことによって、移動度の減少率、オンオフ比の減少率、および、閾値電圧の変化量ΔVthの全てが改善されることが認められた。
【0168】
このように、上述した条件1から条件4を満たす薄膜トランジスタアレイ10によれば、屈曲試験前後においても電気的特性の変動が抑えられる。すなわち、条件1から条件4を満たす薄膜トランジスタアレイ10によれば、可撓性基板11の曲げに対する電気的な耐久性が高められるといえる。
【0169】
また、実施例8,9の薄膜トランジスタアレイ10と、実施例1から実施例7、および、実施例11の薄膜トランジスタアレイ10との比較から、第1面積S1と第2面積S2とが以下の式を満たす場合に、移動度の減少率がより小さくなるといえる。
S2≦S1≦5S2
【0170】
以上説明したように、薄膜トランジスタアレイの一実施形態によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
【0171】
(1)薄膜トランジスタアレイ10が条件1から条件4を満たすことによって、可撓性基板11の屈曲に対する電気的な耐久性を高めることが可能である。
(2)第1面積S1が第2面積S2以上であることによって、薄膜トランジスタ12A,12B,12Cが動作する確実性を高めることが可能である。また、第1面積S1が第2面積の5倍以下であるから、薄膜トランジスタアレイ10が、十分な可撓性を有することが可能である。
【0172】
(3)半導体層21が酸化物半導体または非単結晶シリコンから構成されるから、薄膜トランジスタアレイ10の電気的特性を高める可能である。
【符号の説明】
【0173】
10…薄膜トランジスタアレイ
11…可撓性基板
12A,12B,12C…薄膜トランジスタ
13…層間絶縁層
21…半導体層
22…ゲート絶縁層
23…ソース電極
24…ドレイン電極
25…ゲート電極