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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072127
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】動力工具
(51)【国際特許分類】
   B25F 5/00 20060101AFI20240520BHJP
   B24B 23/02 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B25F5/00 G
B24B23/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182810
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 文年
【テーマコード(参考)】
3C064
3C158
【Fターム(参考)】
3C064AA08
3C064AB02
3C064AC03
3C064BA12
3C064BA36
3C064BB24
3C064BB82
3C064CA03
3C064CA08
3C064CA25
3C064CA27
3C064CB04
3C064CB06
3C064CB11
3C064CB14
3C064CB17
3C064CB19
3C064CB32
3C064CB36
3C064CB64
3C064CB69
3C064CB73
3C064CB74
3C064CB82
3C064CB91
3C158AA02
3C158AA16
3C158AC03
3C158BA02
3C158BA04
3C158BB02
3C158BC02
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】経年変化によってブレーキシューが摩耗してもブレーキ力の低下を抑制して先端工具の停止時間の遅延を防止する。
【解決手段】グラインダ1のブレーキ機構75は、ブレーキドラム40の軸心Oから偏心する軸心O1を支点として揺動可能なブレーキアーム76A,76Bと、ブレーキアーム76A,76Bに保持され、ブレーキアーム76A,76Bの揺動に伴ってブレーキドラム40に当接可能なブレーキシュー77,77と、軸心Oを挟んだ軸心O1の反対側で、且つ軸心Oと軸心O1とを結ぶ直線L1と直交する直線L2上の第2の偏心位置に軸心O2が配置されて、弾性力を有する作用端79b,79bがブレーキアーム76A,76Bの端部に当接し、スイッチのOFF状態でブレーキシュー77,77がブレーキドラム40に当接する位置へブレーキアーム76A,76Bを付勢するトーションバネ79,79と、を含んでなる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、操作部材の操作に伴ってON/OFF動作するスイッチと、前記スイッチのON動作で回転する回転軸と、前記スイッチのOFF状態で前記回転軸を制動し、前記スイッチをON動作させる前記操作部材の操作に連動して前記回転軸の制動を解除するブレーキ機構と、が設けられてなる動力工具であって、
前記回転軸には、外形が円形のブレーキ部材が同軸で固定されており、
前記ブレーキ機構は、前記ブレーキ部材の中心から偏心する第1の偏心位置を支点として揺動可能な揺動部材と、
前記揺動部材に保持され、前記揺動部材の揺動に伴って前記ブレーキ部材に当接可能な押圧部材と、
前記ブレーキ部材の中心を挟んだ前記支点の反対側で、且つ前記ブレーキ部材の中心と前記支点とを結ぶ第1の直線と直交する第2の直線上の第2の偏心位置に中心が配置されて、弾性力を有する作用端が前記揺動部材の端部に当接し、前記スイッチのOFF状態で前記押圧部材が前記ブレーキ部材に当接する位置へ前記揺動部材を付勢するバネ部材と、を含んでなることを特徴とする動力工具。
【請求項2】
前記第2の直線に対する前記作用端の角度は、前記押圧部材の摩耗の進行に応じて変化することを特徴とする請求項1に記載の動力工具。
【請求項3】
前記揺動部材への前記作用端の弾性力の作用方向と、前記揺動部材の端部の揺動方向とがなす角度が、前記押圧部材の摩耗が進行するに従って小さくなることを特徴とする請求項2に記載の動力工具。
【請求項4】
前記揺動部材に前記作用端が当接する位置は、前記第2の直線方向で、前記押圧部材の摩耗が進行するに従って前記第2の偏心位置の中心に近づくことを特徴とする請求項2又は3に記載の動力工具。
【請求項5】
前記揺動部材の端部に、前記作用端が当接する突起部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の動力工具。
【請求項6】
前記作用端が当接する前記突起部の外面は、曲面形状であることを特徴とする請求項5に記載の動力工具。
【請求項7】
前記揺動部材と前記バネ部材とは、前記回転軸の軸線方向から見て、前記ブレーキ部材の中心を挟んでそれぞれ一対ずつ設けられていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の動力工具。
【請求項8】
前記バネ部材は、トーションバネであり、前記トーションバネの中心は、前記第2の直線方向で、前記揺動部材の端部に前記作用端が当接する位置よりも前記第1の直線側に位置していることを特徴とする請求項1乃至7の何れかに記載の動力工具。
【請求項9】
前記ブレーキ機構は、前記スイッチをON動作させる前記操作部材の操作に連動して、前記押圧部材が前記ブレーキ部材から離間する方向へ前記揺動部材を揺動させて前記回転軸の制動を解除することを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の動力工具。
【請求項10】
前記ブレーキ機構は、前記スイッチをON動作させる前記操作部材の操作に連動して前記揺動部材に当接し、前記押圧部材が前記ブレーキ部材から離間する方向へ前記揺動部材を揺動させる楔部材をさらに含むことを特徴とする請求項9に記載の動力工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、先端工具を回転させるグラインダ等の動力工具に関する。
【背景技術】
【0002】
円盤状砥石等の先端工具を回転させて作業を行うグラインダ等の動力工具においては、作業終了時の先端工具の惰性回転を短時間で停止させるために、ブレーキ機構が設けられている。このブレーキ機構は、特許文献1に例示されるように、モータの出力軸の後端に設けたブレーキ板を、コイルバネで付勢されるブレーキシューによって押圧することで出力軸に制動をかけるものである。工具の使用時には、パドルスイッチ等の操作部材の押し込み操作により、スイッチがONすると共に、操作部材に連動して回転するレバーによってブレーキシューをブレーキ板から離間させることで制動が解除される。操作部材の押し込み操作を解除すると、スイッチがOFFすると共に、ブレーキシューをブレーキ板に押圧させて制動をかけることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6953252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、制動時には回転するブレーキ板にブレーキシューが面当たりするため、経年変化によってブレーキシューが摩耗し、ブレーキ力が低下して先端工具の停止時間が延びてしまうおそれがあった。
【0005】
そこで、本開示は、経年変化によってブレーキシューが摩耗してもブレーキ力の低下を抑制して先端工具の停止時間の遅延を防止することができる動力工具を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示は、動力工具であって、ハウジング内に、操作部材の操作に伴ってON/OFF動作するスイッチと、スイッチのON動作で回転する回転軸と、スイッチのOFF状態で回転軸を制動し、スイッチをON動作させる操作部材の操作に連動して回転軸の制動を解除するブレーキ機構と、が設けられてなる動力工具であって、
回転軸には、外形が円形のブレーキ部材が同軸で固定されており、
ブレーキ機構は、ブレーキ部材の中心から偏心する第1の偏心位置を支点として揺動可能な揺動部材と、
揺動部材に保持され、揺動部材の揺動に伴ってブレーキ部材に当接可能な押圧部材と、
ブレーキ部材の中心を挟んだ支点の反対側で、且つブレーキ部材の中心と支点とを結ぶ第1の直線と直交する第2の直線上の第2の偏心位置に中心が配置されて、弾性力を有する作用端が揺動部材の端部に当接し、スイッチのOFF状態で押圧部材がブレーキ部材に当接する位置へ揺動部材を付勢するバネ部材と、を含んでなることを特徴とする。
なお、本開示において、「バネ部材」は、所定方向に突出する作用端を備え、その作用端が当該作用端と交差する方向に弾性力を生じさせるものを指す。例えばトーションバネや板バネが含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、支点を中心に揺動する揺動部材の端部をバネ部材の作用端によって付勢することで制動をかけるので、経年変化によって押圧部材が摩耗してもブレーキ力の低下を抑制して先端工具の停止時間の遅延を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】グラインダの斜視図である。
図2】グラインダの中央縦断面図である(スイッチOFF状態)。
図3図2のブレーキ機構部分の拡大図である。
図4】ブレーキ機構部分及び右側の半割ハウジングを後方から見た分解斜視図である。
図5】ブレーキ機構部分及び左側の半割ハウジングを前方から見た分解斜視図である。
図6】ブレーキ機構部分の分解斜視図である。
図7図3のA-A線断面図である。
図8図3のB-B線断面図である。
図9】ブレーキ機構部分のみを下方から見た斜視図である。
図10図3のC-C線断面図である。
図11図3のD-D線断面図である。
図12】左側の半割ハウジングを省略したブレーキ機構部分の側面図である(スイッチOFF状態)
図13】制動時のブレーキアームの位置をブレーキシューの初期状態と摩耗状態とでそれぞれ示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態において、第2の直線に対する作用端の角度は、押圧部材の摩耗の進行に応じて変化するものであってもよい。
この構成によれば、押圧部材の摩耗の進行に応じて作用端の弾性力を揺動部材へ効率よく伝えることができる。
本開示の一実施形態において、揺動部材への作用端の弾性力の作用方向と、揺動部材の端部の揺動方向とがなす角度が、押圧部材の摩耗が進行するに従って小さくなるものであってもよい。
この構成によれば、押圧部材の摩耗が進行するに従って揺動方向への弾性力の分力を大きくすることができる。
本開示の一実施形態において、揺動部材に作用端が当接する位置は、第2の直線方向で、押圧部材の摩耗が進行するに従って第2の偏心位置の中心に近づくものであってもよい。
この構成によれば、作用端の弾性力を揺動部材を回転させる方向へ効果的に伝えることができる。
【0010】
本開示の一実施形態において、揺動部材の端部に、作用端が当接する突起部が形成されているものであってもよい。
この構成によれば、作用端の弾性力を揺動部材へロスなく伝えることができる。
本開示の一実施形態において、作用端が当接する突起部の外面は、曲面形状であってもよい。
この構成によれば、揺動部材の揺動と作用端の角度の変更とがスムーズに行える。
本開示の一実施形態において、揺動部材とバネ部材とは、回転軸の軸線方向から見て、ブレーキ部材の中心を挟んでそれぞれ一対ずつ設けられているものであってもよい。
この構成によれば、バランスのよい制動及びその解除が可能となる。
本開示の一実施形態において、バネ部材は、トーションバネであり、トーションバネの中心は、第2の直線方向で、揺動部材の端部に作用端が当接する位置よりも第1の直線側に位置しているものであってもよい。
この構成によれば、初期状態と摩耗状態とのブレーキ力の調整が容易に行える。
【0011】
本開示の一実施形態において、ブレーキ機構は、スイッチをON動作させる操作部材の操作に連動して、押圧部材がブレーキ部材から離間する方向へ揺動部材を揺動させて回転軸の制動を解除するものであってもよい。
この構成によれば、揺動部材による回転軸の制動の解除が容易に行える。
本開示の一実施形態において、ブレーキ機構は、スイッチをON動作させる操作部材の操作に連動して揺動部材に当接し、押圧部材がブレーキ部材から離間する方向へ揺動部材を揺動させる楔部材をさらに含むものであってもよい。
この構成によれば、楔部材を利用して揺動部材による回転軸の制動の解除を確実に行うことができる。
【実施例0012】
以下、本開示の実施例を図面に基づいて説明する。
図1は、動力工具の一例であるグラインダの斜視図である。図2は、グラインダの中央縦断面図である。
グラインダ1は、前後方向に延びる筒状の本体ハウジング2を有している。本体ハウジング2は、樹脂製で、前側には、金属製のギヤハウジング3が設けられている。本体ハウジング2は、左右一対の半割ハウジング2a,2bを左右方向からネジ止めしてなる。本体ハウジング2は、前側の本体部4と、後側のグリップ部5とを有している。本体部4の後部で左右の側面には、前後方向に延びる複数の吸気口6,6・・が形成されている。グリップ部5は、本体部4よりも小径で、本体部4の軸線から上側へ偏心した位置から下方へ傾斜しながら後方へ延びている。グリップ部5は、スイッチ7とスイッチレバー8とを備えている。グリップ部5の後端には、電源コード9が接続されている。
本体部4の内部前側には、ラバースリーブ11を介してモータハウジング10が保持されている。ギヤハウジング3は、ギヤハウジングカバー12を介してモータハウジング10に前方からネジ止めされる。本体部4の左右には、サイドハンドル13の取付部14,14が設けられている。本体ハウジング2の前側で取付部14,14の内側には、ラバースリーブ11に外装される固定リング15が設けられている。取付部14,14は、固定リング15にネジ止めされている。
【0013】
モータハウジング10は、樹脂製で、モータ16を収容している。モータ16は、整流子モータで、回転軸17を前後方向に向けてモータハウジング10内に収容されている。回転軸17の前部は、ギヤハウジングカバー12を貫通してギヤハウジング3内に突出している。ギヤハウジングカバー12には、回転軸17を支持する軸受18が設けられている。ギヤハウジングカバー12の後方で回転軸17には、ファン19が固定されている。ギヤハウジング3の前面には、モータハウジング10内と連通する複数の排気口20,20・・が形成されている。
【0014】
ギヤハウジング3内で回転軸17の前端には、ベベルギヤ21が設けられている。ギヤハウジング3の下部には、ベアリングボックス22が組み付けられている。ギヤハウジング3とベアリングボックス22との内部には、上下方向にスピンドル23が設けられている。スピンドル23は、上部にベベルギヤ24を備えている。ベベルギヤ24は、回転軸17のベベルギヤ21と噛合している。スピンドル23は、ギヤハウジング3内とベアリングボックス22内に保持された上下の軸受25,25によって軸支されている。スピンドル23は、下端をベアリングボックス22から下方へ突出させている。スピンドル23の下端には、インナフランジ26とロックナット27とによって、円盤状砥石等の先端工具28が装着可能である。ベアリングボックス22には、先端工具28の後部上側及び後側を覆うホイールカバー29が取り付けられている。
【0015】
図3にも示すように、モータハウジング10の後部には、軸受保持部30が一体に形成されている。整流子31から後方へ突出する回転軸17は、軸受保持部30に保持された軸受32によって支持されている。軸受保持部30の上下には、一対の支持突起33,33が設けられている。支持突起33,33は、回転軸17の軸線と直交する上下方向に同軸で配置されている。各支持突起33には、キャップ状のラバーリング34がそれぞれ被せられている。左右の半割ハウジング2a,2bの内面には、図4及び図5に示すように、左右方向の中央側へ突出して上下のラバーリング34,34を中央で保持する保持部35,35が上下に設けられている。よって、モータハウジング10は、前側のラバースリーブ11と後側のラバーリング34,34とを介して本体ハウジング2内に弾性支持される。
【0016】
回転軸17の後端は、軸受保持部30を貫通して後方へ延びている。軸受保持部30の後方で回転軸17の後端には、ブレーキドラム40が固定されている。ブレーキドラム40は、図6にも示すように、ハブ41と、複数のスポーク42,42・・と、リム43とを備えている。ハブ41は、回転軸17に後方から螺合されて回転軸17と同軸且つ一体に結合されている。ハブ41の締付方向は、回転軸17の回転方向と逆方向となっている。いわゆる締まり勝手となっている。ハブ41の後端には、円盤状のマグネットスリーブ44が取り付けられている。ハブ41の外周には、円板部45が形成されている。円板部45の外周には、後方へ延びる円形リブ46が設けられている。スポーク42,42・・は、円形リブ46の外周面から放射状に延びて形成されている。リム43は、各スポーク42の径方向端部に連結されて、円板部45の径方向外側で同軸に配置されている。リム43は、スポーク42から前後に突出する帯板リング状で、外周面には、螺旋状の溝47が形成されている。溝47の前後の端部は、リム43の前後の端面に達して各端面に開口している。
【0017】
ブレーキドラム40の後方で本体部4内には、コイルホルダ50が設けられている。コイルホルダ50は、図7にも示すように、上下方向に延びる箱状である。コイルホルダ50は、上下2箇所で後方から軸受保持部30にネジ止めされている。コイルホルダ50の中心には、図8にも示すように、前方に開口する円形筒部51が設けられている。円形筒部51は、ブレーキドラム40のハブ41の後端及びマグネットスリーブ44を非接触で収容している。円形筒部51の前端は、ハブ41の円形リブ46の内側に突出している。円形リブ46と円形筒部51の前端とは、径方向に非接触でオーバーラップしている。
コイルホルダ50における円形筒部51の右側には、ピックアップコイル53の収容部52が形成されている。収容部52には、ピックアップコイル53が検知面を左向きにして収容されている。検知面は、マグネットスリーブ44の真横に位置している。右側の半割ハウジング2bの内面には、左側へ突出するボス54が形成されている。ボス54の先端には、ラバーピン55が保持されている。ラバーピン55は、ピックアップコイル53の右側面に当接してピックアップコイル53を収容部52の左側内面に押圧している。
【0018】
コイルホルダ50の後方で本体部4内には、コントローラ60が配置されている。コントローラ60は、左側の半割ハウジング2aの内面から突出された下受けリブ61と後受けリブ62とにより、左右方向の中央で縦向きに保持されている。コントローラ60は、内部に制御回路基板63を備えている。制御回路基板63の前面上側には、調整ダイヤル64が設けられている。調整ダイヤル64は、図1乃至図3に示すように、上部を本体ハウジング2の上方に露出させている。調整ダイヤル64の回転操作により、モータ16の回転数が調整可能となっている。
スイッチ7は、ボタン部7aを下向きにした姿勢でグリップ部5内の上側に保持されている。左右の半割ハウジング2a,2bの内面には、スイッチ7の上部を保持する保持リブ65がそれぞれ形成されている。グリップ部5内には、スイッチ7の下部を保持するスイッチベース66が保持されている。スイッチベース66は、グリップ部5の傾斜に沿って前後方向に延びる板状である。ボタン部7aは、スイッチベース66を貫通して下方に突出している。スイッチベース66の前部には、前後にストッパ片67と係止片68とが下向きに設けられている。スイッチベース66の後部下面には、左右両側へ突出する軸部69が形成されている。
【0019】
スイッチレバー8は、スイッチベース66の下側で前後方向に延びている。スイッチレバー8の後端は、スイッチベース66の軸部69へ回転可能に連結されている。スイッチレバー8の前部は、グリップ部5の下面に設けた開口70から下方へ露出している。スイッチレバー8は、ボタン部7aの下方に位置する押圧部71を備えている。スイッチレバー8の前面には、図3及び図6に示すように、係止孔8aが形成されている。係止孔8aには、ストッパ片67の下端が挿入している。スイッチレバー8は、上側位置と下側位置との間で上下方向へ揺動可能である。スイッチレバー8の上側位置では、係止孔8aの下縁がストッパ片67の下端に当接して押圧部71がボタン部7aを押圧する。よって、スイッチ7がONする。スイッチレバー8の下側位置では、係止孔8aの上縁にストッパ片67の下端が係止して押圧部71がボタン部7aから離間する。よって、スイッチ7がOFFする。スイッチベース66とスイッチレバー8との間には、コイルバネ72が介在されている。コイルバネ72により、スイッチレバー8は、常態では下側位置に付勢される。スイッチレバー8の前端下部には、ロックオンレバー73が設けられている。ロックオンレバー73は、スイッチレバー8の上側位置で回転操作して係止片68に係止させることで、スイッチレバー8を上側位置でロック可能となっている。スイッチレバー8の前部で左右の側面には、一対の連結ピン74,74が左右外側に向けて突設されている。
【0020】
本体部4内には、ブレーキ機構75が設けられている。ブレーキ機構75は、図6図8図9図10に示すように、前述のブレーキドラム40と、一対のブレーキアーム76A,76Bと、一対のブレーキシュー77,77と、一対のシューホルダ78,78と、一対のトーションバネ79,79と、楔板80と、前リンク81と、後リンク82とを備えている。
ブレーキアーム76A,76Bは、ブレーキドラム40の径方向外側に配置されている。ブレーキアーム76A,76Bは、正面視が半円状で、回転軸17及びハブ41を中心とした左右対称形となっている。ブレーキアーム76A,76Bの上部は、左側のブレーキアーム76Aが後側へ、右側のブレーキアーム76Bが前側へ屈曲している。この屈曲により、上部を除く左右のブレーキアーム76A,76Bは、ブレーキドラム40の軸線と直交する同一面上に位置する。
【0021】
ブレーキアーム76A,76Bの上端には、前後に軸線方向で重なるリング状の支点部83,83が設けられている。前後の支点部83,83には、支点ピン84が前後方向に貫通している。支点ピン84は、図3に示すように、回転軸17の軸線から上方へ偏心した位置で、前端が軸受保持部30の後面に、後端がコイルホルダ50の前面にそれぞれ支持されている。よって、ブレーキアーム76A,76Bは、支点ピン84を中心に左右へ揺動可能に支持される。ブレーキアーム76A,76Bの周方向の中間部には、左右外側へ円弧状に膨出する膨出部85,85が形成されている。ブレーキアーム76A,76Bの下端は、正面視で半円状に形成されて丸みを帯びている。ブレーキアーム76A,76Bの下端部には、径方向外側へ突出する突起部86,86が設けられている。各突起部86の先端も、正面視で半円状に形成されて丸みを帯びている。
【0022】
ブレーキシュー77,77は、膨出部85,85の径方向内側に配置されている。各ブレーキシュー77は、ブレーキアーム76A,76Bよりも前後方向の幅が大きい帯板状である。ブレーキシュー77,77は、ブレーキドラム40のリム43の外周面に沿った円弧状に形成されている。
シューホルダ78,78は、膨出部85,85に設けられている。各シューホルダ78は、前後一対の挟持プレート87,87を備えている。各挟持プレート87は、膨出部85を前後から挟む外周部88と、膨出部85の内側でブレーキシュー77の外周側を前後から挟む内周部89とを備えている。挟持プレート87,87は、前後から膨出部85とブレーキシュー77とを挟んだ状態で、外周部88,88を前後から上下互い違いにネジ90,90によって組み付けられる。すると、各シューホルダ78は、ブレーキシュー77を保持した状態で膨出部85に固定される。
【0023】
トーションバネ79,79は、回転軸17の軸線から下方へ偏心するブレーキアーム76A,76Bの下方で左右対称に配置されている。軸受保持部30の下部で左右両側には、トーションバネ79,79を保持するバネ保持部91,91が設けられている。各バネ保持部91は、ピン92と受け板93とを有している。ピン92は、後方へ突出してトーションバネ79を前方から貫通する。受け板93は、ピン92の下方でトーションバネ79を下側から支持する半円状である。受け板93の前部で左右外側には、切り込み94が形成されている。
各トーションバネ79は、ピン92に貫通させて受け板93上にセットした状態で、前側で左右外側に突出する固定端79aを切り込み94に係止させる。そして、後側で左右外側に突出する作用端79bは、さらに左右外側へ傾倒させて周方向に弾性力を持たせた状態で、図10に示すように、突起部86の先端に左右外側から当接させる。このとき左右方向で見て、各トーションバネ79の軸心O2は、作用端79bが突起部86と当接する位置Pよりも、支点ピン84の軸心O1及びブレーキドラム40の軸心Oを通る上下方向の直線L1側に位置している。
すると、回転付勢される作用端79bが突起部86の先端を径方向外側から内側に向けて押圧する。よって、左右のブレーキアーム76A,76Bには、支点ピン84の軸心O1を中心として互いの間隔が縮小する径方向内側へ回転付勢する力が働く。このため、ブレーキアーム76A,76Bにシューホルダ78,78を介して保持されるブレーキシュー77,77は、ブレーキドラム40のリム43の外周面を左右から同時に押圧する。
【0024】
楔板80は、ブレーキドラム40の下方で左右方向の中央に配置されている。楔板80は、左右に張り出す張出部95,95を備えた左右対称の板体である。楔板80の上部は、左右方向の中央が最も高くなり、中央から左右外側へ向かうに従って徐々に低くなって張出部95,95を形成する扇状となっている。張出部95,95は、ブレーキアーム76A,76Bの下端の下方に位置している。図3に示すように、軸受保持部30の後面とコイルホルダ50の前面とは、楔板80の前後面に近接又は当接している。よって、楔板80は、軸受保持部30とコイルホルダ50との間で前後移動を規制された状態となる。楔板80の下部で左右方向の中央には、前後に貫通して下方へ開口する結合溝96が形成されている。結合溝96は、底部となる上端から下方へ向かうに従って左右幅が小さくなるテーパ状となっている。
【0025】
前リンク81は、マグネットスリーブ44及びブレーキドラム40の下方で左右方向の中央に配置されている。前リンク81は、側面視L字状に屈曲される帯板状で、コイルホルダ50の円形筒部51の下方で縦向きに配置されている。前リンク81の屈曲部分には、左右方向に支持ピン97が貫通している。この支持ピン97は、図11に示すように、左側の半割ハウジング2aの内面に突設された受けボス98に支持されている。前リンク81の右側でコイルホルダ50の下部には、支持ピン97の右端部を位置決めするピン受け部99が設けられている。
よって、前リンク81は、本体ハウジング2内で支持ピン97を中心に回転可能に支持される。
【0026】
前リンク81は、前腕部100と後腕部101とを有している。前腕部100は、支持ピン97から前方へ突出して楔板80の結合溝96に挿入されている。後腕部101は、支持ピン97から後方上側へ斜めに延びている。前腕部100の横断面形状は、図10に示すように、結合溝96と同様に、上端から下方へ向かうに従って左右幅が小さくなるテーパ状となっている。よって、楔板80は、前腕部100が結合溝96に嵌合することで、上方へ抜け止めされた状態で前腕部100に結合され、前腕部100と一体に上下移動する。コイルホルダ50の下部には、前腕部100の下方への回転を規制する規制部102が設けられている。図3及び図10に示すように、前腕部100が規制部102に近接又は当接する前リンク81の回転位置、すなわち図3で支持ピン97を中心とした左回転位置では、楔板80は下限位置となる。この下限位置での楔板80は、図10で実線で示すように、ブレーキアーム76A,76Bの左右の下端から下方に離れている。後腕部101の上端には、長手方向に延びる長孔103が形成されている。
【0027】
後リンク82は、左右一対のアーム105,105と、連結軸106とを備えている。アーム105,105は、コイルホルダ50及びコントローラ60の左右外側に配置されて前後方向に延びている。アーム105,105の後部は、左右方向の中央側へ折曲されて左右の間隔が狭くなり、グリップ部5内に突出している。アーム105,105の後端は、スイッチレバー8の連結ピン74,74へ回転可能に連結されている。アーム105,105の中間部には、長手方向に延びる支点孔107,107が形成されている。コイルホルダ50の左右の側面には、先端が支点孔107,107に係止する支持ボス108,108がそれぞれ突設されている。
連結軸106は、左右方向に配置されて、前リンク81の後腕部101の長孔103を貫通している。連結軸106の左右両端は、アーム105,105の前端へ回転可能に連結されている。
【0028】
スイッチレバー8が下側位置にあると、図12に実線で示すように、アーム105,105は、支持ボス108,108が支点孔107,107の後側に位置する略水平姿勢となる。このとき連結軸106は前進位置にあり、前リンク81は左回転位置にある。よって、楔板80は、図10のようにブレーキアーム76A,76Bの下方に位置する下限位置となる。
ここからスイッチレバー8が、図12に二点鎖線で示すように上側位置へ揺動すると、連結ピン74,74が上方へ移動する。すると、アーム105,105は、二点鎖線で示すように、後端が連結ピン74,74と共に上方へ引き上げられながら支持ボス108,108を支点孔107,107内で相対移動させて支持ボス108,108を略中心として左回転する。このためアーム105,105の前端は、後退しながら連結軸106と共に下方へ移動する。すると、前リンク81は、支持ピン97を中心に右回転し、前腕部100を上昇させる。よって、楔板80は、図10に二点鎖線で示すように、ブレーキアーム76A,76Bの左右の下端の間に進入する上限位置となる。
【0029】
以上の如く構成されたグラインダ1において、スイッチ7がOFF状態のブレーキ機構75では、前述のように、回転軸17と回転が一体のブレーキドラム40のリム43の外周面に左右からブレーキシュー77,77が押圧する。よって、回転軸17は、ブレーキドラム40を介して制動される。
ここからグリップ部5を把持した手でスイッチレバー8を押し込み操作する。すると、図12に二点鎖線で示すように、スイッチレバー8が上側位置へ揺動してボタン部7aを押圧し、スイッチ7をONさせる。よって、コントローラ60は、モータ16に通電させる。
スイッチレバー8の上側位置への揺動に伴い、前述のように、後リンク82のアーム105,105が左回転し、前リンク81を右回転させて楔板80を上限位置へ移動させる。すると、図10に二点鎖線で示すように、ブレーキアーム76A,76Bが支点ピン84を中心に左右外側へ拡がり、ブレーキシュー77,77をブレーキドラム40のリム43から離間させる。よって、ブレーキが解除された回転軸17が回転する。回転軸17の回転は、ベベルギヤ21,24を介してスピンドル23に伝わり、先端工具28を回転させる。
【0030】
一方、回転軸17の回転により、ファン19が回転する。すると、本体部4の吸気口6,6・・から外気が吸い込まれる。吸い込まれた空気は、コントローラ60、コイルホルダ50の順に通過する。その後、空気は、ブレーキドラム40のスポーク42,42の間及びリム43の径方向外側を通ってモータ16へ流れる。そして、空気は、モータ16を通過した後、ギヤハウジングカバー12を通過して排気口20,20・・から排出される。この空気流により、コントローラ60、コイルホルダ50、ブレーキドラム40、モータ16が冷却される。
特に、ブレーキドラム40では、リム43の全体から放熱されるため、空気流の接触と相まって効果的に冷却される。また、ブレーキシュー77,77から粉塵等が出ることがあっても、空気流によって前方へ吹き飛ばされ、リム43の外周面に付着しにくくなる。溝47に入った粉塵等は、ブレーキドラム40の回転に伴い、溝47を介して前後に排出される。
【0031】
そして、スイッチレバー8の押し込みを解除すると、コイルバネ72の付勢によってスイッチレバー8は下側位置へ揺動する。よって、ボタン部7aの押し込みが解除されてスイッチ7がOFFする。
一方、スイッチレバー8の下側位置への揺動に伴い、後リンク82が支持ボス108,108を略中心に右回転しながら図3及び図12に実線で示す位置へ前進する。すると、前リンク81が支持ピン97を中心に左回転し、前腕部100を下方へ揺動させる。よって、楔板80は、図10に実線で示す下限位置へ移動してブレーキアーム76A,76Bの下端の間から離間する。すると、ブレーキアーム76A,76Bがトーションバネ79,79の付勢によってそれぞれ左右方向の中央側へ回転し、ブレーキシュー77,77をブレーキドラム40のリム43の外周面に押圧させる。よって、ブレーキドラム40を介して回転軸17に制動がかかるため、スピンドル23に制動力が伝わって先端工具28が停止する。
【0032】
この制動時、ブレーキシュー77,77は、回転軸17よりも大径のリム43を径方向外側から押圧する。すなわち、回転軸17の軸線から径方向に離れた位置から回転軸17を間接的に制動することになる。このため、倍力作用が生じて小さい押圧力でも高い制動力を発揮することができる。また、リム43の外周面には、溝47によって粉塵等の異物が溜まりにくくなっている。このため、ブレーキシュー77,77からリム43への制動力は効率よく伝わり、ブレーキ性能に影響を与えない。
【0033】
そして、経年使用によってブレーキシュー77,77には摩耗が生じる。図13は、制動時のブレーキアーム76A,76Bの位置をブレーキシュー77,77の初期状態と摩耗状態とでそれぞれ示す概略図である。図13の右側が初期状態、左側が摩耗状態を示している。
図13に示すように、支点ピン84の軸心O1を通る直線L1と直交し、トーションバネ79の軸心O2を通る左右方向の直線L2を設定する。初期状態と摩耗状態とでは、この直線L2に対して、左右の作用端79b,79bがなす角度をαとして、初期状態を角度αA、摩耗状態を角度αBとすると、両者の関係は、αA<αBとなっている。つまり、作用端79bの角度αは、ブレーキシュー77,77の摩耗に応じて大きくなるように変化していることになる。言い換えると、ブレーキシュー77の摩耗に伴い、作用端79bが突起部86に当接する位置Pが、直線L2方向でトーションバネ79の軸心O2に近づくように変化していることになる。
【0034】
この作用端79bの角度αの変化により、位置Pにおいて、作用端79bが突起部86を押圧する方向、すなわち弾性力の作用方向D1と、支点ピン84を中心としたブレーキアーム76A,76Bの揺動方向(揺動軌跡との接線方向)D2とがなす角度βも変化する。この角度βの初期状態を角度βA、摩耗状態をβBとすると、βA>βBとなる。つまり、ブレーキシュー77が摩耗して作用端79bの角度αが小さくなると、摩耗状態での揺動方向D2への分力f2が、初期状態での揺動方向D2への分力f1よりも大きくなる。このため作用端79bの弾性力がブレーキアーム76A,76Bへ効率よく伝わることを示している。
従って、トーションバネ79の軸心O2の位置やばね定数を調整すれば、ブレーキシュー77が摩耗しても、初期状態でのブレーキシュー77の押圧力F1と略同等の押圧力F2でブレーキドラム40を制動することができる。
【0035】
このように、上記形態のグラインダ1は、本体ハウジング2(ハウジングの一例)内に、スイッチレバー8(操作部材の一例)の操作に伴ってON/OFF動作するスイッチ7と、スイッチ7のON動作で回転する回転軸17と、スイッチ7のOFF状態で回転軸17を制動し、スイッチ7をON動作させるスイッチレバー8の操作に連動して回転軸17の制動を解除するブレーキ機構75と、が設けられてなり、回転軸17には、外形が円形のブレーキドラム40(ブレーキ部材の一例)が同軸で固定されている。
そして、ブレーキ機構75は、ブレーキドラム40の軸心O(中心の一例)から偏心する軸心O1(第1の偏心位置の一例)を支点として揺動可能なブレーキアーム76A,76B(揺動部材の一例)と、ブレーキアーム76A,76Bに保持され、ブレーキアーム76A,76Bの揺動に伴ってブレーキドラム40に当接可能なブレーキシュー77,77(押圧部材の一例)と、ブレーキドラム40の軸心Oを挟んだ軸心O1の反対側で、且つブレーキドラム40の軸心Oと軸心O1とを結ぶ直線L1(第1の直線の一例)と直交する直線L2(第2の直線の一例)上の第2の偏心位置に軸心O2(中心の一例)が配置されて、弾性力を有する作用端79b,79bがブレーキアーム76A,76Bの端部に当接し、スイッチ7のOFF状態でブレーキシュー77,77がブレーキドラム40に当接する位置へブレーキアーム76A,76Bを付勢するトーションバネ79,79(バネ部材の一例)と、を含んでなる。
この構成によれば、軸心O1を中心に揺動するブレーキアーム76A,76Bの端部をトーションバネ79,79の作用端79b、79bによって付勢することで制動をかけるので、経年変化によってブレーキシュー77,77が摩耗してもブレーキ力の低下を抑制して先端工具28の停止時間の遅延を防止することができる。
【0036】
直線L2に対する作用端79bの角度αは、ブレーキシュー77の摩耗の進行に応じて変化する。
よって、ブレーキシュー77,77の摩耗の進行に応じて作用端79b,79bの弾性力をブレーキアーム76A,76Bへ効率よく伝えることができる。
ブレーキアーム76A,76Bへの作用端79b、79bの弾性力の作用方向D1と、ブレーキアーム76A,76Bの端部の揺動方向D2とがなす角度βが、ブレーキシュー77,77の摩耗が進行するに従って小さくなる。
よって、ブレーキシュー77,77の摩耗が進行するに従って揺動方向D2への弾性力の分力を大きくすることができる。
ブレーキアーム76A,76Bの端部に作用端79b,79bが当接する位置Pは、直線L2方向で、ブレーキシュー77,77の摩耗が進行するに従って軸心O2に近づくようになっている。
よって、作用端79bの弾性力をブレーキアーム76A,76Bを回転させる方向へ効果的に伝えることができる。
【0037】
ブレーキアーム76A,76Bの端部に、作用端79b,79bが当接する突起部86,86が形成されている。
よって、作用端79b,79bの弾性力をブレーキアーム76A,76Bへロスなく伝えることができる。
作用端79b,79bが当接する突起部86,86の外面は、曲面形状である。
よって、ブレーキアーム76A,76Bの揺動と作用端79b,79bの角度αの変更とがスムーズに行える。
ブレーキアーム76A,76Bとトーションバネ79,79とは、回転軸17の軸線方向から見て、ブレーキドラム40の軸心Oを挟んでそれぞれ一対ずつ設けられている。
よって、バランスのよい制動及びその解除が可能となる。
トーションバネ79の軸心O2は、直線L2方向で、ブレーキアーム76A,76Bの端部に作用端79b,79bが当接する位置Pよりも直線L1側に位置している。
よって、初期状態と摩耗状態とのブレーキ力の調整が容易に行える。
【0038】
ブレーキ機構75は、スイッチ7をON動作させるスイッチレバー8の操作に連動して、ブレーキシュー77,77がブレーキドラム40から離間する方向へブレーキアーム76A,76Bを揺動させて回転軸17の制動を解除する。
よって、ブレーキアーム76A,76Bによる回転軸17の制動の解除が容易に行える。
ブレーキ機構75は、スイッチ7をON動作させるスイッチレバー8の操作に連動してブレーキアーム76A,76Bに当接し、ブレーキシュー77,77がブレーキドラム40から離間する方向へブレーキアーム76A,76Bを揺動させる楔板80(楔部材の一例)をさらに含む。
よって、楔板80を利用してブレーキアーム76A,76Bによる回転軸17の制動の解除を確実に行うことができる。
【0039】
以下、本開示の変更例について説明する。
トーションバネの位置は、ブレーキアームの端部に当接してブレーキアームをブレーキドラム側へ付勢できれば、上記例の位置に限らず適宜変更できる。作用端の長さも適宜変更可能である。軸受保持部でのトーションバネの保持構造も上記実施例に限定しない。
バネ部材は、上記例のトーションバネに限らない。トーションバネの巻き数は、上記例より多くても少なくてもよい。
バネ部材は、線材でなく板材をコイル状に巻回させて作用端を形成するものであってもよい。
バネ部材は、コイル状でない板バネであってもよい。板バネの場合、例えばL字状に折曲した板バネの一端を固定端として他端を作用端とするものが考えられる。
【0040】
ブレーキアームは、上記例のような突起部を省略して突起部のない端部にバネ部材の作用端を当接させてもよい。
揺動部材は、上記例のブレーキアームのような膨出部をなくして、より円弧に近い形状としてもよい。揺動部材は、ブレーキ部材の外周に沿って屈曲させてもよいし、直線状としてもよい。
揺動部材の支点は、上記例のようにブレーキドラムの上側でなく、下側や横側に設けることもできる。
揺動部材は、一対でなくてもよい。例えば揺動部材は1つであってもよい。
押圧部材は、上記例のブレーキシューのように各揺動部材に1つずつ設ける構造に限らない。例えば、揺動部材にブレーキシューを2つ以上設けてブレーキ部材にそれぞれ径方向外側から接離可能としてもよい。押圧部材の保持も、上記実施例のシューホルダに限らない。例えば、一対の挟持プレートをヒンジで連結して押圧部材を保持させてもよい。
押圧部材は、上記例のようなシューホルダを用いずに揺動部材に接着等で直接取り付けてもよい。
【0041】
ブレーキ部材の形状は、適宜変更できる。例えば、上記例のブレーキドラムでは、スポークの数を増減したり、ハブやリムの形状を変えたりしてもよい。
ブレーキ部材は、上記例のブレーキドラムに限らず、一枚の円盤であってもよい。外周面の溝は、複数あってもよいし、省略してもよい。ブレーキ部材の回転軸への固定は、螺合以外の構造も採用できる。
上記例では、ブレーキドラムの外側にブレーキアームを配置して支点によって揺動可能に設け、ブレーキアームの端部に径方向外側からトーションバネの作用端を当接させているが、これと逆であってもよい。すなわち、回転軸に同軸で連結される円筒状のブレーキ部材の内側に、開口側から、外周側に押圧部材を有する揺動部材を支点によって揺動可能に設けると共に、揺動部材の端部の径方向内側にバネ部材を配置して、作用端を端部の内側から当接させて揺動部材を径方向外側へ揺動付勢してもよい。この場合、ブレーキ部材の内周面に、径方向外側へ揺動付勢される揺動部材の押圧部材が当接して制動が図られる。
【0042】
楔部材は、上記例の楔板に限らない。例えば、楔部材は、上部を扇状とした上記例に限らず、上方へ向かうに従って左右幅が狭くなるテーパ状、例えば台形状や三角形状としてもよい。前リンクとの結合は、テーパ状の結合溝による構造に限らず、ピン等を利用することもできる。
楔部材は、板状でなくブロック状、例えば円錐状のブロックとすることもできる。楔部材は、径方向でなく前後方向から保持部材の間に進退動させることもできる。
保持部材と楔部材との前後方向の位置決めは、上記例のようなモータハウジングとコイルホルダとを利用する構造に限らない。位置決めは、本体ハウジング内の他の構成部材を利用してもよい。位置決めは、構成部材を利用せず、例えばハウジング内に突設したリブ等を利用して行ってもよい。
リンク部材は、上記例の前リンクと後リンクとの構造に限らない。例えば、前リンクの前腕部には、楔部材に相当する部分を一体に形成することができる。前リンクは、一対のアームから形成してもよい。後リンクは、コントローラ等の構成部材がなければ一対のアームから形成しなくてもよい。
リンク部材は、3つ以上あってもよい。
【0043】
動力工具は、商用電源を用いるAC工具でなく、バッテリパックを電源とするDC工具であってもよい。
動力工具は、グラインダに限らない。ポリッシャやサンダ等の他の研削・研磨工具、丸鋸、カッタ等の切断工具等であっても、先端工具を回転させる回転軸に対して制動するブレーキ機構を用いるものであれば、本開示は適用可能である。よって、ブレーキ機構は、モータの回転軸以外の回転軸を制動するものであってもよい。
動力工具は、電動工具に限らない。エア工具やエンジン工具等であっても、本開示は採用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1・・グラインダ、2・・本体ハウジング、3・・ギヤハウジング、4・・本体部、5・・グリップ部、7・・スイッチ、8・・スイッチレバー、10・・モータハウジング、16・・モータ、17・・回転軸、19・・ファン、23・・スピンドル、28・・先端工具、30・・軸受保持部、40・・ブレーキドラム、41・・ハブ、43・・リム、47・・溝、50・・コイルホルダ、60・・コントローラ、74・・連結ピン、75・・ブレーキ機構、76A,76B・・ブレーキアーム、77・・ブレーキシュー、78・・シューホルダ、79・・トーションバネ、79a・・固定端、79b・・作用端、80・・楔板、81・・前リンク、82・・後リンク、83・・支点部、84・・支点ピン、85・・膨出部、87・・挟持プレート、91・・バネ保持部、95・・張出部、96・・結合溝、97・・支持ピン、100・・前腕部、101・・後腕部、105・・アーム、106・・連結軸、O・・ブレーキドラムの軸心、O1・・支点ピンの軸心、O2・・トーションバネの軸心、L1・・軸心Oと軸心O1とを結ぶ直線、L2・・直線L1と直交する直線、α・・直線L2に対する作用端の角度、β・・作用端の弾性力の作用方向D1とブレーキアームの端部の揺動方向D2とがなす角度、P・・作用端と突起部とが当接する位置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13