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特開2024-72134コージェネレーションシステム、発電ユニットおよび排熱回収方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072134
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】コージェネレーションシステム、発電ユニットおよび排熱回収方法
(51)【国際特許分類】
   F02G 5/00 20060101AFI20240520BHJP
   H02K 7/18 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F02G5/00 A
H02K7/18 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182821
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000169499
【氏名又は名称】高砂熱学工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】515098015
【氏名又は名称】TMES株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷野 正幸
(72)【発明者】
【氏名】増田 正夫
(72)【発明者】
【氏名】岡村 明彦
(72)【発明者】
【氏名】大井 淳
(72)【発明者】
【氏名】冨澤 廣一
【テーマコード(参考)】
5H607
【Fターム(参考)】
5H607BB02
5H607DD19
5H607FF22
(57)【要約】
【課題】発電に伴う排熱の有効的な回収と発電された電力の安定した供給を両立する。
【解決手段】コージェネレーションシステムは、エンジンと、エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、上流側がエンジンの本体内の排熱を回収する熱媒体が流れる第1流路に接続され、第1流路を通じて流入された熱媒体との間で熱交換を行うとともに、熱交換によって冷却された熱媒体を下流側に流出させる第1熱交換器と、第1熱交換器の下流側に設けられ、第1熱交換器から流出された熱媒体と発電装置を冷却するオイルとの間で熱交換を行うオイルクーラと、を備える。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、
上流側が前記エンジンの本体内の排熱を回収する熱媒体が流れる第1流路に接続され、前記第1流路を通じて流入された前記熱媒体との間で熱交換を行うとともに、前記熱交換によって冷却された前記熱媒体を下流側に流出させる第1熱交換器と、
前記第1熱交換器の下流側に設けられ、前記第1熱交換器から流出された前記熱媒体と前記発電装置を冷却するオイルとの間で熱交換を行うオイルクーラと、
を備えるコージェネレーションシステム。
【請求項2】
前記第1熱交換器には給湯水が流入し、
前記第1熱交換器は、前記給湯水と前記第1流路を通じて流入された前記熱媒体との間の熱交換によって前記エンジン本体内の排熱を回収するとともに、前記熱交換後の給湯水を流出する、請求項1に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項3】
前記第1流路に接続される第2流路に設けられ、
前記第2流路から流れ込む熱媒体と、前記オイルクーラとの間で熱交換が行われた熱媒体との流入量を調整し、前記流入量が調整された熱媒体を第3流路に流出させる第1制御弁を備え、
前記第1制御弁は、前記熱媒体を押圧して前記エンジン本体内に還流させる循環ポンプに流入される熱媒体の温度に基づいて前記流入量を調整する、請求項1または2に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項4】
上流側が前記第3流路に接続され、前記第3流路を通じて流入された熱媒体を熱交換によって冷却するとともに、前記冷却された熱媒体を下流側に流出させる第2熱交換器をさらに備える、請求項3に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項5】
前記第3流路に接続される第4流路に設けられ、
前記第4流路から流れ込む熱媒体と、前記第2熱交換器によって冷却された熱媒体とのとの流入量を調整し、前記流入量が調整された熱媒体を第5流路に流出させる第2制御弁を備え、
前記第2制御弁は、前記熱媒体を押圧して前記エンジン本体内に還流させる循環ポンプに流入される熱媒体の温度に基づいて前記流入量を調整する、請求項4に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項6】
前記循環ポンプは、前記第5流路に設けられ、
上流側に接続された前記第5流路に流れる熱媒体を押圧して下流側の第6流路に流出させる、請求項5に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項7】
前記第6流路に設けられ、前記循環ポンプから押圧された熱媒体と、エンジンの本体内を循環する潤滑油との間で熱交換を行う潤滑油クーラをさらに備える、請求項6に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項8】
上流側が前記第6流路に接続され、前記第6流路を通じて流入された熱媒体と、エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行うとともに、前記熱交換が行われた熱媒体を下流側で接続される前記エンジンの本体内に還流し、前記熱交換が行われた排ガスを排気口へ排出する第3熱交換器をさらに備える、請求項6に記載のコージェネレーションシステム。
【請求項9】
エンジンと、前記エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、前記
エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流入される第3熱交換器とを備えるコージェネレーションシステムであって、
前記エンジンおよび発電装置と前記第3熱交換器とは、固定面が共通する架台に隣接して固定されるとともに、
前記エンジンから排出される排ガスは、前記架台の固定面の上方に向かって突設されるように逆V字状に曲げ加工が施された排気管を通じて前記第3熱交換器に供給される、
コージェネレーションシステム。
【請求項10】
エンジンと、前記エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、前記エンジンおよび発電装置が固定される架台と、
前記架台と固定面を共通にして、前記エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流入される第3熱交換器が隣接して固定されたときに、前記エンジンから排出される排ガスを前記第3熱交換器に供給する排気管であって、前記架台の固定面の上方に向かって突設されるように逆V字状に曲げ加工が施された排気管と、前記排気管と前記第3熱交換器との間に接続される触媒と、
吸気フィルタと、前記吸気フィルタと前記エンジンとの間に接続され、前記吸気フィルタを通じて吸気された気体を前記エンジンに供給する吸気管と、
を一体的に組付け可能な発電ユニット。
【請求項11】
エンジンと、前記エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、第1熱交換器と、オイルクーラとを備えるコージェネレーションシステムの排熱回収方法であって、
前記第1熱交換器は、上流側が前記エンジンの本体内の排熱を回収する熱媒体が流れる第1流路に接続され、前記第1流路を通じて流入された前記熱媒体との間で熱交換を行うとともに、前記熱交換によって冷却された前記熱媒体を下流側に流出させ、
前記オイルクーラは、前記第1熱交換器の下流側に設けられ、前記第1熱交換器から流出された前記熱媒体と前記発電装置を冷却するオイルとの間で熱交換を行う、
排熱回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コージェネレーションシステム、発電ユニットおよび排熱回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーの効率的利用、電力構成の多様化・分散化、災害対策などの観点から、熱と電力の双方を供給可能なコージェネレーションシステムの普及が進んでいる。コージェネレーションシステム(以下、CGSともいう)は、例えば、ガスエンジン等を動力源とする発電装置と、発電の際に生じた排熱等を回収する熱交換器等の熱回収装置とを備える。例えば、特許文献1には、略直方体に形成された筐体としてのパッケージ内にコージェネレーション装置を収納するパッケージ収納型エンジン発電機が開示されている。コージェネレーション装置は、エンジンにより駆動された発電機からの発電電力を外部に供給するとともに、エンジン廃熱回収装置によってエンジンの廃熱を回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コージェネレーションシステムにおいては、ガスエンジン等で生じる排熱の有効的な回収と、当該ガスエンジン等を用いて発電された電力の安定した供給の両立が求められる。そこで、本開示は、発電に伴う排熱の有効的な回収と発電された電力の安定した供給が両立可能な技術の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、以下の手段を採用する。
すなわち、本開示の一側面におけるコージェネレーションシステムは、エンジンと、エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、上流側がエンジンの本体内の排熱を回収する熱媒体が流れる第1流路に接続され、第1流路を通じて流入された熱媒体との間で熱交換を行うとともに、熱交換によって冷却された熱媒体を下流側に流出させる第1熱交換器と、第1熱交換器の下流側に設けられ、第1熱交換器から流出された熱媒体と発電装置を冷却するオイルとの間で熱交換を行うオイルクーラと、を備える。
【0006】
これにより、熱媒体は、エンジン本体内から回収された排熱を第1熱交換器との熱交換を介して冷却できるとともに、オイルが回収した発電装置の排熱を熱交換によって冷却できる。熱媒体はエンジン本体および発電機を含む発電装置を冷却できるため、発電に伴う排熱の有効的な回収と発電電力の安定的な供給が両立できる。
【0007】
また、第1熱交換器には給湯水が流入し、第1熱交換器は、給湯水と第1流路を通じて流入された熱媒体との間の熱交換によってエンジン本体内の排熱を回収するとともに、熱交換後の給湯水を流出するようにしてもよい。これにより、エンジン本体を冷却する熱媒体が回収した排熱を、第1熱交換器を介して給湯・暖房に利用できる。
【0008】
また、第1流路に接続される第2流路に設けられ、第2流路から流れ込む熱媒体と、オイルクーラとの間で熱交換が行われた熱媒体との流入量を調整し、流入量が調整された熱媒体を第3流路に流出させる第1制御弁を備え、第1制御弁は、熱媒体を押圧してエンジ
ン本体内に還流させる循環ポンプに流入される熱媒体の温度に基づいて流入量を調整するようにしてもよい。これにより、エンジン本体内に還流する熱媒体の温度に応じて、熱媒体の流入量が調整できるため当該熱媒体の温度制御が可能になる。例えば、エンジンの過冷却運転による出力低下、発電機過熱による出力低下といった状態を抑止できる。
【0009】
また、上流側が第3流路に接続され、第3流路を通じて流入された熱媒体を熱交換によって冷却するとともに、冷却された熱媒体を下流側に流出させる第2熱交換器をさらに備えるようにしてもよい。これにより、熱媒体の温度が上昇した場合であっても、第2熱交換器による更なる冷却が可能になるため、発電機過熱による出力低下といった状態を抑制し、電力供給の安定性を高めることができる。
【0010】
また、第3流路に接続される第4流路に設けられ、第4流路から流れ込む熱媒体と、第2熱交換器によって冷却された熱媒体とのとの流入量を調整し、流入量が調整された熱媒体を第5流路に流出させる第2制御弁を備え、記第2制御弁は、熱媒体を押圧してエンジン本体内に還流させる循環ポンプに流入される熱媒体の温度に基づいて流入量を調整するようにしてもよい。これにより、エンジン本体内に還流する熱媒体の温度に応じて、熱媒体の流入量が調整できるため当該熱媒体の温度制御が可能になり、例えば、エンジンの過冷却運転による出力低下、発電機過熱による出力低下といった状態が抑制できる。
【0011】
また、循環ポンプは、第5流路に設けられ、上流側に接続された第5流路に流れる熱媒体を押圧して下流側の第6流路に流出させるようにしてもよい。熱媒体をエンジン側に循環させる循環ポンプを第5流路に設けることで、エンジン・発電機の運転に適した温度環境を維持することができるため、電力供給の安定性を高めることができる。
【0012】
また、第6流路に設けられ、循環ポンプから押圧された熱媒体と、エンジンの本体内を循環する潤滑油との間で熱交換を行う潤滑油クーラをさらに備えるようにしてもよい。これにより、熱媒体のエンジン本体を冷却する冷却効率を高めることができる。
【0013】
さらに、上流側が第6流路に接続され、第6流路を通じて流入された熱媒体と、エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行うとともに、熱交換が行われた熱媒体を下流側で接続されるエンジンの本体内に還流し、熱交換が行われた排ガスを排気口へ排出する第3熱交換器をさらに備えるようにしてもよい。これにより、エンジン本体側に還流する熱媒体を排ガスで暖めることができるので、エンジンの過冷却が防止できる。
【0014】
本開示の他の側面におけるコージェネレーションシステムは、エンジンと、エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流入される第3熱交換器とを備えるコージェネレーションシステムであって、エンジンおよび発電装置と第3熱交換器とは、固定面が共通する架台に隣接して固定されるとともに、エンジンから排出される排ガスは、架台の固定面の上方へ向かって突設されるように逆V字状に曲げ加工が施された排気管を通じて第3熱交換器に供給される。
【0015】
これにより、固定面が共通する架台に固定された、発電装置、第3熱交換器を含むエンジン周辺機器の重心位置の相対的な低重心化を図り防振性を高めることが可能になり、安定した発電電力を供給するための信頼性が確保できる。
【0016】
また、本開示の他の側面における発電ユニットは、エンジンと、エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、エンジンおよび発電装置が固定される架台と、架台と固定面を共通にして、エンジンから排気される排ガスとの間で熱交換を行う熱媒体が流入される第3熱交換器が隣接して固定されたときに、エンジンから排出される排ガス
を第3熱交換器に供給する排気管であって、架台の固定面の上方に向かって突設されるように逆V字状に曲げ加工が施された排気管と、排気管と第3熱交換器との間に接続される触媒と、吸気フィルタと、吸気フィルタとエンジンとの間に接続され、吸気フィルタを通じて吸気された気体をエンジンに供給する吸気管と、を一体的に組付け可能であってもよい。これにより、固定面が共通する架台に固定された、発電装置、第3熱交換器を含むエンジン周辺機器の重心位置の相対的な低重心化を図り防振性を高めた発電ユニットを一体的に組付けて提供できる。
【0017】
また、本開示の他の側面における形態として、エンジンと、エンジンの動力を用いて発電する発電機とを有する発電装置と、第1熱交換器と、オイルクーラとを備えるコージェネレーションシステムの排熱回収方法であって、第1熱交換器は、上流側が前記エンジンの本体内の排熱を回収する熱媒体が流れる第1流路に接続され、第1流路を通じて流入された熱媒体との間で熱交換を行うとともに、熱交換によって冷却された熱媒体を下流側に流出させ、オイルクーラは、第1熱交換器の下流側に設けられ、第1熱交換器から流出された熱媒体と発電装置を冷却するオイルとの間で熱交換を行う排熱回収方法であってもよい。
【0018】
このような形態であっても、熱媒体は、エンジン本体内から回収された排熱を第1熱交換器との熱交換を介して冷却できるとともに、オイルが回収した発電装置の排熱を熱交換によって冷却できる。熱媒体はエンジン本体および発電機を含む発電装置を冷却できるため、発電に伴う排熱の有効的な回収と発電電力の安定的な供給が両立できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示により、発電に伴う排熱の有効的な回収と発電された電力の安定した供給が両立可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの全体構成を示す正面図である。
図2図2は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの全体構成を示す上面図である。
図3図3は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの全体構成を示す左側面図である。
図4図4は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの全体構成を示す右側面図である。
図5図5は、補機収納室に配置された換気ファンによる空気の流れを説明する図である。
図6図6は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの、筐体内における排熱回収のフローの一例を示す図である。
図7図7は、発電機および発電に係る周辺機器における排熱回収系統の一例を示す図である。
図8図8は、発電機オイルの循環系統の一例を示す図である。
図9図9は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの、エンジン引き出し構造を説明する正面図である。
図10図10は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの、エンジン引き出し構造を説明する左側面図である。
図11図11は、下部共通架台の構造の一例を示す図である。
図12図12は、固定架台の構造の一例を示す図である。
図13図13は、比較例におけるエンジンと排ガス熱交換器との接続形態を説明する図である。
図14図14は、実施形態に係るコージェネレーションシステムの、排ガス熱交換器の構造を説明する図である。
図15図15は、入口ヘッダー部に生じる渦流の発生を説明する図である。
図16図16は、旋回流防止板を説明する斜視図である。
図17図17は、旋回流防止板を説明する矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。また、以下の実施形態は可能な限り適宜に組み合わせることができる。
【0022】
<全体構成>
先ず、本実施形態に係るコージェネレーションシステムの全体構成を説明する。図1から図4は、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の全体構成を示す図である。図1は、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1を正面視した正面図であり、図2は、当該システムを上面視した上面図である。同様にして、図3はコージェネレーションシステム1を左側から側面視した左側面図であり、図4は当該システムを右側から側面視した右側面図である。
【0023】
本実施形態に係るコージェネレーションシステム(以下、「CGS」ともいう)1は、ガスエンジン等を動力源として発電し、発電の際に生じた排熱等を回収する熱交換器等の熱回収装置を備える発電システムである。図1から図4に示されるように、CGS1は、略直方体に構成された筐体2を備え、当該筐体は複数の区画に区分けされ、それぞれに分割可能なように構成されている。本実施形態では、CGS1は、分割可能な筐体構造を採用することでエレベータ等を用いた建屋等への搬入作業を可能にする。
【0024】
筐体2は、例えば、図1に示されるように、隔壁Z1により、正面左側のエンジン室2A、吸気室2Bを含む区画と、正面右側のラジエータ室2Dと補機収納室2Cとを含む区画に区分けされる。隔壁Z1により区分けされた正面左側の区画は、隔壁Z2によりさらに、上方側に位置する吸気室2Bとエンジン室2Aとに区分けされる。同様にして、隔壁Z1により区分けされた正面右側の区画は、隔壁Z3によって、さらに上方側に位置するラジエータ室2Dと下方側に位置する補機収納室2Cに区分けされる。
【0025】
エンジン室2Aには、エンジン11と、当該エンジンを動力源とする発電機12が連接して配置される。例えば、図3に示されるように、発電機12は筐体2の正面側、エンジン11は筐体2の正面側と対向する背面側に配置されている。図1に戻り、エンジン11は、例えば、LPGや都市ガス等を燃料とするガスエンジンであり、空気等と混合された燃料ガスが燃焼されることによって起動される。エンジン11は、例えば、複数のシリンダーを備え、各シリンダー内で燃焼させた燃料ガスの燃焼エネルギーに基づいてクランク軸を回転させ、当該クランク軸に連動する発電機12を駆動する。エンジン11のシリンダー毎の排気流路は、単一の排気流路にまとめるエキゾーストマニホールド13に接続され、当該マニホールドは触媒14を介して排ガス熱交換器15に接続される。図14で説明するように、エンジン11の排気口に接続されたエキゾーストマニホールド13は、排ガス熱交換器15の排ガス入力口15aに接続される。なお、本実施形態においては、排ガス熱交換器15は、「第3熱交換器」の一例に相当する。
【0026】
発電機12には、インバータやコンバータ等の発電に係る周辺機器が設けられ、本実施形態では、発電機12およびインバータやコンバータ等の発電に係る周辺機器を総称して「発電装置」ともいう。発電機12によって発電された電力は、インバータやコンバータ等の発電に係る周辺機器を介して商用電力に変換される。変換後の発電電力は、例えば、
補機収納室2Cに配置されたパワーコンディショナ40を介して、外部に供給される。
【0027】
エンジン11によって燃焼された燃焼後の排ガスは、エキゾーストマニホールド13、触媒14を通じて排ガス熱交換器15に流入される。本実施形態においては、エンジン室2Aに配置されるエンジン11と、発電機12と、排ガス熱交換器15とは、後述するように、共通の架台に固定され、筐体左側面側に一体的に引き出し可能なように構成されている。なお、図1では、共通の架台に固定されたエンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15が、筐体左側面側に一体的に引き出された状態が開示されているが、通常、コージェネレーションシステム1はエンジン11をエンジン室2A内に収めた状態で使用される。エンジン室2Aのエンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15が固定される架台の下方側には、エンジン11のオイルを貯留するオイルタンク16が配置される。オイルタンク16が配置されるエンジン室2A下方側の隔壁Z1側には、エンジン11の燃料になる燃料ガスを供給するためのガス接続口25が開口する。
【0028】
排ガス熱交換器15に流入された排ガスは、エンジン本体を冷却する冷却水等の熱媒体との間で熱交換が行われ、図14で説明するように、排気管が接続された排ガス出力口15bに排出される。排ガスは排気管を通じて接続された、エンジン排気を消音する消音機17に排出される。消音機17は、隔壁Z1およびZ3によって区画されたラジエータ室2Dの隔壁Z1側に配置される。そして、図2に示されるように、筐体2の上側筐体面には、消音機17と接続される排ガス吐出口21が開口している。消音機17に流入された排ガスは消音されて、実線矢印Z4で示されるように、排ガス吐出口21から筐体外に吐出される。
【0029】
また、ラジエータ室2Dには、ラジエータ18と、排気ファン19とが配置される。ラジエータ18は、ラジエータ室2Dの略中央下方側に設けられ、エンジン11の本体内を冷却する冷却水等の熱媒体が流れる配管を通じて当該エンジンと接続される。ラジエータ18は、エンジン11に接続された配管を介して流入された熱媒体の熱を室内の空気に放熱し、当該熱媒体を冷却する。排気ファン19は、ラジエータ室2Dの略中央上側、かつ、ラジエータ18が配置された位置の上方側に設けられる。筐体2の、排気ファン19が配置された位置に対応する上側筐体面には排気口19aが開口し、当該排気口にはメッシュ状の金網等が設けられている。
【0030】
図1から図2に示されるように、ラジエータ18の下方側には外気を取り込むための吸込口20が開口する。ラジエータ室2D周辺の外気は、排気ファン19の吸引力により吸込口20を経由して当該ラジエータ室に流入する。ラジエータ室2Dに流入した外気は排気ファン19によって上方側に吸い上げられ、当該排気ファンの下方側に配置されたラジエータ周辺に排気口19aへ向かう空気の流れを形成する。熱媒体による放熱を受けたラジエータ周辺の空気は、ラジエータ周辺に形成された空気の流れにより上方側に吸い上げられ、実線矢印Z5で示されるように、排気口19aから筐体外に排出される。ラジエータ18によって放熱による熱交換が行われた熱媒体は、ラジエータ周辺に形成された空気の流れを通じて継続的に冷却される。なお、本実施形態においては、ラジエータ18は、「第2熱交換器」の一例に相当する。
【0031】
ラジエータ室2Dと隔壁Z3で区分けされた補機収納室2Cには、発電機12によって発電された電力を商用の交流電力に変換するため制御装置であるパワーコンディショナ40と、補機制御盤41、換気ファン23が配置される。補機制御盤41は、例えば、発電機12の運転に必要な補機類(例えば、潤滑油ポンプ、冷却水ポンプ、給排気ファン等)を運転、制御するための制御盤である。換気ファン23は、パワーコンディショナ40が配置された室内の正面下方側のエンジン室2A側に配置される。なお、換気ファン23が配置位置に対応する隔壁Z1には、吸気ガラリ40aを通じて補機収納室2Cに取込んだ
外気をエンジン室2Aに給気するための給気口が開口する。また、後述するように、補機収納室2Cには、放熱熱交換器30と、冷却水ポンプ31が配置される。
【0032】
パワーコンディショナ40は、補機収納室2Cの正面側、かつ、右側面側に配置され、補機制御盤41は、補機収納室2Cの背面側、かつ、右側面側に配置される。図4に示されるように、パワーコンディショナ40が配置される補機収納室2Cの右側筐体面には、外気を補機収納室内に取込むための通気口である吸気ガラリ40aが開口している。吸気ガラリ40aの下方側には、筐体外部の給湯配管に接続させるための給湯接続口24a、24bが開口する。
【0033】
図2図4に示されるように、補機収納室2Cには正面側に開閉可能な開閉扉2C1が設けられ、パワーコンディショナ40は当該扉の内側に取り付けフレームを介して固定される。したがって、開閉扉2C1の内側に取り付けられたパワーコンディショナ40は、当該扉を正面側に開くことで補機収納室2Cから筐体外部に引き出し可能な構造になっている。また、補機収納室2Cには、把手2C3の操作により右側面側に開閉可能な開閉扉2C1が設けられ、当該収納室内に配置された補機制御盤41への保守・点検作業が可能な構造になっている。
【0034】
図1に戻り、エンジン室2Aと隔壁Z2によって区画された吸気室2Bには、オイルクーラ22が配置される。オイルクーラ22は、発電機12の内部を循環する発電機オイルを冷却するクーラである。後述するように、本実施形態では、オイルクーラ22との熱交換を介して発電機12を冷却するとともに、インバータやコンバータ等の発電に係る周辺機器の排熱を回収することで、電力の安定供給と排熱の効率的な回収を可能にする。
【0035】
図2から図3に示されるように、オイルクーラ22は正面側に配置される。オイルクーラ22が配置される左側面側には、エンジン11および発電機12の発電・停止、出力制御を司るECUやサーキットブレーカ等を含むECU制御盤42が配置される。ECU制御盤42が配置される吸気室2Bには、把手2B2の操作により左側面側に開閉可能な開閉扉2B1が設けられ、左側面側の室内に配置されたECU制御盤42への保守・点検作業が可能な構造になっている。
【0036】
また、吸気室2Bには、エンジン11の吸気管に接続される吸気フィルタ26が、ECU制御盤42の配置位置に対して背面側(正面側と対向する方向側)に配置される。吸気フィルタ26が配置された吸気室2Bの左側筐体面には、外気を吸気室2B内に取込むための通気口である吸気ガラリ26aが開口される。また、吸気室2Bの隔壁Z1側には、エンジン室2Aのエンジン音を消音する消音風道17aが設けられる。消音風道17aは、隔壁Z1および隔壁Z2に開口する。
【0037】
図5は、補機収納室2Cに配置された換気ファン23による空気の流れを説明する図である。図5においては、共通の架台に固定されたエンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15がエンジン室内に収納された状態を正面視した正面図が例示される。図5に示されるように、補機収納室2Cには放熱熱交換器30と、冷却水ポンプ31が配置される。放熱熱交換器30は、補機収納室2Cの背面側上方側に配置され、冷却水ポンプ31は、補機収納室2Cの背面側下方側に配置される。放熱熱交換器30には、給湯接続口24aを介して供給された給湯水が流入し、熱交換後の給湯水が給湯接続口24bを介して流出される。なお、放熱熱交換器30、冷却水ポンプ31については後述する。
【0038】
図5において、ハッチングされた破線矢印Z6は、換気ファン23による空気の流れを表す。既に説明したように、換気ファン23は、筐体2に設けられた吸気ガラリ40aを通じて補機収納室2Cに取込んだ外気をエンジン室2Aに給気する。換気ファン23によ
る外気の給気は、その押圧力により、長手方向(正面側から背面側に向かう方向)に並列して配置された排ガス熱交換器15、発電機12、エンジン11に対して下方側から吹き付ける空気の流れを形成する。換気ファン23によって形成された空気の流れは、排ガス熱交換器15、発電機12、エンジン11が放熱する熱を奪って冷却し、下方側から吹き付けられる空気の流れに沿ってエンジン室2Aの上方側に移動する。エンジン室2Aの上部側における空気の流れは、ハッチングされた矢印Z7からZ9に示されるように、吸気室2Bに設けられた消音風道17aを介してラジエータ室2Dに流入する。そして、消音風道17aを介してラジエータ室2Dに流入された空気の流れは、排気ファン19によって吸引され、排気口19aを通じて筐体外部に排出される。
【0039】
このように、エンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15のそれぞれによってエンジン室内に放熱された熱は、エンジン室2Aと吸気室2Bとの間、吸気室2Bとラジエータ室2Dとの間に形成された経路を経由して、筐体外部に放出される。本実施形態では、換気ファン23によってエンジン室内に形成された空気の流れによって、エンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15を効率的に冷却することができる。
【0040】
図1から図5を用いて説明したように、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1では、各構成要素が配置される区画を複数に分割可能な筐体構造を採用した。例えば、コージェネレーションシステム1の筐体2は、エンジン室2A、吸気室2B、補機収納室2C、ラジエータ室2Dの4区画に分割される。このため、例えば、コージェネレーションシステム1が建屋屋上等に設置される際に、筐体2のサイズ、重量がエレベータの搬入制限に掛かる場合であっても、分割後の個々の区画を個別に当該建屋のエレベータ等を使用して設置場所に搬入できる。筐体2を建屋屋上に吊り上げるためのクレーン等の重機手配を必要とせず、当該吊り上げ作業に係る保険費用が生じることもない。コージェネレーションシステム1の設置に係る総体的な作業コストが抑制できる。
【0041】
また、本実施形態では、発熱源であるエンジン11、発電機12と、排熱量が相対的に高い排ガス熱交換器15をエンジン室2Aに集中して配置する構造を採用することで、他の各区画を発熱源による熱的な曝露から分離可能とした。つまり、吸気室2Bに配置されるECU制御盤42、補機収納室2Cに配置されるパワーコンディショナ40、補機制御盤41等を構成する電子機器等を熱的な曝露から分離することが可能になる。
【0042】
そして、本実施形態は、エンジン室2Aと左右方向に隣接する補機収納室2Cに換気ファン23を配置する構造を採用した。換気ファン23はエンジン室2Aと補機収納室2Cとの隔壁近傍の下方側に配置されるとともに、補機収納室2Cの隔壁Z1と対向する右側筐体面には外気を室内に取込むための吸気ガラリ40aが開口される。そして、エンジン室2Aの上方向に隣接する吸気室2Bには、エンジン室2Aとラジエータ室2Dとを接続する消音風道17aが形成され、ラジエータ室2Dには排気ファン19が配置される構造を採用した。また、排気ファン19は消音機17、ラジエータ18の上方側に配置され、ラジエータ18の配置位置の下方側の筐体面には、外気を取り込むための吸込口20が開口する構造を採用した。
【0043】
これにより、本実施形態では、吸気ガラリ40aで取り込まれた外気を、換気ファン23→エンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15→消音風道17a→排気ファン19の経路で、排気口19aから排出する空気冷却経路が形成できる。さらに、排気ファン19が配置されるラジエータ室2Dでは、吸込口20で取り込まれた外気をラジエータ18→消音機17→排気ファン19の経路で、排気口19aから排出する空気冷却経路が形成できる。なお、補機収納室2Cにおいても、吸気ガラリ40aで取り込まれた外気をパワーコンディショナ40→換気ファン23の経路で空気冷却する排熱経路が形成できる。このため、パワーコンディショナ40や補機制御盤41の運転伴う排熱を上記排熱経路に含
めることができる。本実施形態では、上記空気冷却経路を通じて各構成機器の放熱効率を高めることが可能になり、放熱効率が高められた各システム構成機器を運用して安定的な電力供給が可能になる。
【0044】
<筐体内排熱回収フロー>
図6は、本実施形態に係るコージェネレーションシステム(CGS)1の、筐体内における排熱回収のフローの一例を示す図である。図6においては、筐体2の分割可能な複数の区画(2Aから2D)に跨る排熱回収系統の全体的な経路が示されている。なお、図6において、T1からT6は、温度制御弁35、36の温度制御に関する温度センサを表す。
【0045】
(エンジン排ガス系統)
先ず、エンジン11の排ガス系統における、排熱回収経路を説明する。既に説明したように、本コージェネレーションシステムが備えるエンジン11は、LPGや都市ガス等を燃料とするガスエンジンであり、当該燃料はガス接続口25に接続された燃料配管等を通じてエンジン11に供給される。ガス接続口25を通じて供給された燃料は、遮断弁32、流量計33を介して燃料ミキサー34に流入される。燃料ミキサー34に流入された燃料は、吸気室2Bに配置された吸気フィルタ26を通じて吸気された燃焼空気と混合されてエンジン11に供給される。エンジン11は、複数のシリンダー(図6においては4気筒)を備え、各シリンダー内で燃焼させた燃焼ガス(燃料と燃焼空気の混合ガス)の燃焼エネルギーに基づいてそれぞれのクランク軸を回転させる。なお、遮断弁32の燃料が流れる流路の開閉制御、流量計33による計測値表示、燃料ミキサー34における燃料と燃焼空気の混合率等の制御は、補機制御盤41により行われる。
【0046】
エンジン11は、燃料ミキサー34から供給された燃焼ガス(燃料と燃焼空気の混合ガス)を燃焼させてクランク軸を回転させ、当該クランク軸に連動する発電機12を駆動する。発電機12によって発電された電力は、発電電力を商用電力に変換するためのコンバータやインバータ等の周辺機器を介して変換され、変換後の商用電力がパワーコンディショナ40に出力される。パワーコンディショナ40は、発電電力を商用電力に変換するためのコンバータやインバータを制御するとともに、変換後の商用電力を筐体外に供給する。なお、エンジン11および発電機12への発停指令、エンジン出力制御等は、吸気室2Bに配置されたECU制御盤42により行われる。また、ECU制御盤42は、TCUを含み、当該TCUを介して本CGSにおける発電電力量、各種アラーム、運転状態を示す各種状態信号が外部に出力されるとともに、外部から入力された発停止令や受電電力量、電力供給量等の制御信号が受信される。受信された制御信号に基づいて、ECU制御盤42はエンジン11および発電機12の運転を制御する。
【0047】
エンジン11の燃焼に伴う排ガスは、太破線矢印Z10に示されるように、シリンダー毎の排気流路を単一の排気流路にまとめるエキゾーストマニホールド13等を通じて排ガス熱交換器15に流入される(図14、排ガス入力口15a)。排ガス熱交換器15は、後述するようにシェル&チューブ型の熱交換器であり、シェル側に排ガスが流入するとともにチューブ側を流れる冷却水等の熱媒体との間で熱交換が行われる。排ガス熱交換器15において、チューブ側を流れる冷却水等の熱媒体との間の熱交換によって冷却された排ガスは、図14で説明するように、排気管が接続された排ガス出力口15bに排出される。排ガスは排気管に接続された消音機17を通じて排ガス吐出口21から排出される。このように、本実施形態においては、エンジン11によって燃焼された燃焼後の排ガスは、排ガス熱交換器15のチューブ側を流れる熱媒体との間の熱交換を通じて、排熱が回収される。
【0048】
(エンジン冷却水系統)
次に、エンジン11を冷却するエンジン冷却水系統における、排熱回収経路を説明する。図6において、エンジン冷却水系統における排熱回収経路は、太実線矢印Z11で例示される。エンジン11は、エンジン本体を覆い、当該エンジン本体内を冷却するエンジンジャケット11aを備える。エンジンジャケット内には、燃焼によって発熱したエンジン本体との間で熱交換を行う冷却水等の熱媒体が流入し、当該熱媒体は太実線矢印Z11で示されるエンジン冷却水系統の経路を循環する。エンジン本体の排熱は、エンジンジャケット内を循環する熱媒体によって回収される。
【0049】
エンジンジャケット内を循環する熱媒体は出力端11a1を通じて、当該エンジンジャケットと放熱熱交換器30の入力端30aを接続する流路Z11aに流出する。流路Z11aは、例えば、上流側がエンジンジャケット11aの出力端11a1に接続され、下流側が放熱熱交換器30の入力端30aに接続される接続配管等によって構成される。なお、流路Z11aには、下流側が温度制御弁35に接続される流路Z11bの上流側が接続される。本実施形態において、流路Z11aは「第1流路」、流路Z11bは「第2流路」、温度制御弁35は「第1制御弁」の一例に相当する。
【0050】
放熱熱交換器30には、給湯接続口24aを介して外部から供給された給湯水が流入する。流路Z11aを通じて放熱熱交換器30に流入された熱媒体は、給湯接続口24aを介して外部から供給された給湯水との間で熱交換を行い、当該放熱熱交換器の出力端30bに流出される。放熱熱交換器30において、熱媒体との間で熱交換が行われた熱交換後の給湯水は、給湯接続口24bを介して外部に流出される。本CGSの利用者は、エンジン本体を冷却する熱媒体との間で熱交換が行われた熱交換後の給湯水を、給湯や暖房等に用いることができる。
【0051】
本実施形態では、図6に示されるように、放熱熱交換器30の下流側に発電機12の発電機オイルを冷却するオイルクーラ22が設けられる。オイルクーラ22には、発電機内部を冷却するとともに、インバータやコンバータ等の電力変換に伴う排熱を回収する発電機オイルが循環される。本実施形態では、放熱熱交換器30の下流側にオイルクーラ22を設けることにより、給湯水との間で熱交換が行われた熱交換後の熱媒体を用いて発電機オイルを効果的に冷却できる。本実施形態において、放熱熱交換器30は「第1熱交換器」の一例に相当する。
【0052】
放熱熱交換器30の出力端30bから流出された熱交換後の熱媒体はオイルクーラ22に流入し、当該オイルクーラを流れる発電機オイルとの間で熱交換を行い、熱交換後の熱媒体は下流側に設けられた温度制御弁35に流入される。温度制御弁35は、流路Z11bから流入される熱媒体の流入量と、オイルクーラ22から流入される熱媒体の流入量とを調整し、調整後の熱媒体を下流側の流路Z11cに流出させる3方弁である。温度制御弁35による流入量の調整は各流路を開く弁の開度によって行われ、補機制御盤41に設けられたTICによって制御される。なお、温度制御弁35による流入量の調整については後述する。本実施形態において、流路Z11cは「第3流路」の一例に相当する。
【0053】
温度制御弁35によって流入量が調整された流路Z11bを流れる熱媒体、オイルクーラ22によって熱交換が行われた熱交換後の熱媒体は、上流側が当該制御弁に接続される流路Z11cに流出される。なお、流路Z11cには、下流側が温度制御弁36に接続される流路Z11dの上流側が接続される。本実施形態において、流路Z11dは「第4流路」、温度制御弁36は「第2制御弁」の一例に相当する。
【0054】
流路Z11cの下流側は、ラジエータ18の入力端18aに接続される。流路Z11cを流れる熱媒体は、ラジエータ18を介して、吸込口20から取込まれた外気との間で熱交換を行い、出力端18bに流出される。なお、ラジエータ18によって熱媒体との間で
熱交換が行われた外気は、排気ファン19により吸引され、上側筐体面に開口する排気口19aを介して外部に排気される。
【0055】
ラジエータ18の出力端18bは温度制御弁36に接続され、ラジエータ18によって外気との間で熱交換が行われた熱交換後の熱媒体は、下流側に設けられた温度制御弁36に流入される。温度制御弁36は、流路Z11dから流入される熱媒体の流入量と、ラジエータ18の出力端18bから流入される熱媒体の流入量とを調整し、調整後の熱媒体を下流側の流路Z11eに流出させる3方弁である。温度制御弁36による流入量の調整は各流路を開く弁の開度によって行われ、補機制御盤41に設けられたTICによって制御される。温度制御弁36による流入量の調整については後述する。本実施形態において、流路Z11eは「第5流路」の一例に相当する。
【0056】
流路Z11eの下流側は冷却水ポンプ31の入力端31aに接続される。なお、流路Z11eには、膨張タンク37が接続される。冷却水ポンプ31は、流路Z11eを介して流入された熱媒体を押圧し、下流側で潤滑油クーラ38の入力端に接続される流路Z11fに流出させる装置である。冷却水ポンプ31の押圧力により、エンジン本体を冷却する熱媒体は、太実線矢印Z11で示される排熱回収経路を循環する。本実施形態において、流路Z11fは「第6流路」、冷却水ポンプ31は「循環ポンプ」の一例に相当する。
【0057】
潤滑油クーラ38は、エンジン本体内のエンジン潤滑油を冷却するクーラである。流路Z11fを通じて流入された熱媒体は、潤滑油クーラ38を流れるエンジン潤滑油との間で熱交換を行い、潤滑油クーラ38の出力端に接続される下流側の流路Z11gに流出する。なお、熱媒体との間で熱交換が行われて冷却されたエンジン潤滑油は、エンジン本体内に供給される。
【0058】
潤滑油クーラ38を流れるエンジン潤滑油との間で熱交換が行われた熱媒体は、流路11gを通じて下流側に接続される排ガス熱交換器15のチューブ側の入力端(例えば図14、冷却水入力口15c)に流入される。排ガス熱交換器15に流入された熱媒体は、シェル側を流れる排ガスとの間で熱交換を行い、排ガス熱交換器15の出力端(例えば図14、冷却水出力口15d)に接続される流路Z11hに流出する。流路Z11hは、下流側がエンジンジャケット11aの入力端11a2に接続され、排ガス熱交換器15の出力端から流出された熱媒体は、エンジンジャケット11aの入力端11a2を通じてエンジン内に還流される。
【0059】
このように、本実施形態のエンジン冷却水系統では、エンジンジャケット11aの出力端11a1と、放熱熱交換器30の入力端30aとを流路Z11aによって接続する構造を採用した。これにより、熱媒体がエンジン11の本体から回収した排熱を熱交換前の給湯水との間で熱交換できるため、排熱の利用効率、および、熱媒体の冷却効率を高めることができる。そして、本実施形態のエンジン冷却水系統では、放熱熱交換器30の下流側に発電機12の発電機オイルを冷却するオイルクーラ22が設けられる構造を採用した。
【0060】
一般的に、コージェネレーションシステムにおいては、エンジン本体からの排熱回収と排ガスからの排熱回収の2通りの熱回収が行われる。このため、例えば、発電機本体、インバータ本体、コンバータ本体といった発電電力が商用電力に変換される際に発生する熱は利用されずに筐体内あるいは筐体外へオイルクーラ等を介して廃棄されていた。発電機オイルは、後述するように発電機12の本体、および、コンバータやインバータ等の発電電力を商用電力に変換するための周辺機器との間で生じた発電に伴う排熱を回収する。すなわち、本実施形態においては、オイルクーラ22の接続位置を熱媒体が流れる流路内に設けることで、廃棄されていた上記発電に伴う排熱が回収可能になる。本実施形態では、発電機オイルと放熱熱交換器30によって冷却された熱媒体との間で熱交換が行われるた
め、当該熱媒体は、発電機オイルを効率的に冷却できるとともに、発電機オイルの発電に伴う排熱を回収することができる。
【0061】
また、本実施形態のエンジン冷却水系統では、温度制御弁35、36を熱媒体が流れる流路に設ける構造を採用した。温度制御弁35、36では、TICが検知した温度値によって下流側に流出される熱媒体の温度範囲が制御される。したがって、例えば、冷却水ポンプ31に流入される熱媒体の温度が、発電機12による発電が不安定なときには、各温度制御弁によって熱媒体の流入量を調整し、安定的な発電が可能な温度状態に制御できる。例えば、エンジン11の過冷却運転による出力低下、発電機過熱による出力低下といった状態を抑止できる。
【0062】
また、本実施形態のエンジン冷却水系統では、冷却水ポンプ31の下流側にエンジン本体内のエンジン潤滑油を冷却する潤滑油クーラ38を設ける構造を採用した。これにより、熱媒体は、エンジン潤滑油との間の熱交換により、当該潤滑油の排熱を回収して冷却できるとともに、自身の熱で潤滑油を温めることも可能になる。
【0063】
そして、本実施形態のエンジン冷却水系統では、エンジン潤滑油との間で熱交換が行われた熱媒体を排ガス熱交換器15のチューブ側の入力端に流入させる構造を採用した。これにより、排ガス熱交換器15のチューブ側を流れる熱媒体は、シェル側を流れる排ガスの排熱を回収して冷却できるとともに、排ガスによる排熱を用いて熱媒体を温めることも可能になる。例えば、熱媒体の流れる順が、エンジンジャケット11a→排ガス熱交換器15の順の場合には、還流された熱媒体のエンジン入口温度が過冷却温度(例えば、60℃以下)となり、エンジン出力が低下する虞がある。しかしながら、本実施形態においては、排ガス熱交換器15により、燃焼後に排出される排ガスの回収熱で熱媒体を昇温させてからエンジンジャケット内に還流できる。すなわち、本実施形態に係るコージェネレーションシステム1では、過冷却運転による出力低下が抑止できる。
【0064】
(発電機オイル系統)
図7は、発電機12および発電に係る周辺機器における排熱回収系統の一例を示す図である。図7において、発電機12および発電に係る周辺機器の発電に伴う排熱を回収する発電機オイルには、低粘性のオイルが使用される。図7に示されるように、発電機オイルはキャッチタンク12dを通じて、下流側に設けられたオイルポンプ12aの入力端に流入される。キャッチタンク12dは、発電機オイルを貯留するためのタンクである。発電機オイルは、キャッチタンク12dからオイルポンプ12aに供給され、発電機内を循環後、再び当該タンクに還流される。オイルポンプ12aは、入力端に流入された発電機オイルを下流側に押圧し、出力端より流出される装置である。本実施形態では、オイルポンプ12aの下流側にはオイルクーラ22が設けられる。オイルポンプ12aにより、下流側へ押圧された発電機オイルは、オイルクーラ22に流入する。オイルクーラ22に流入された発電機オイルは、既に説明したように、放熱熱交換器30の出力端30bから流出された熱交換後の熱媒体との間で熱交換を行い、下流側に流出される。
【0065】
オイルクーラ22の下流側にはコンバータ12bが設けられる。オイルクーラ22を介して熱交換が行われた熱交換後の発電機オイルは、発電に伴うコンバータ12bの排熱を回収し、下流側に流出する。コンバータ12bの下流側にはインバータ12cを含む発電機12が設けられる。コンバータ12bの排熱を回収した発電機オイルは、発電機本体内に流入し、発電機本体を冷却して排熱を回収するとともに、発電に伴うインバータ12cの排熱を回収する。発電機12およびインバータ12cの排熱を回収した発電機オイルは、下流側のキャッチタンク12dに還流される。
【0066】
(オイルクーラ周辺の温度実測)
オイルクーラ22による冷却効果を確認するために、図8に示される発電機オイルの循環系統を用いて、オイルクーラ22による温度低下の度合いを実測した。図8において発電機・INV(12、12c)の上限温度、および、コンバータ12bの上限温度は、警報が発出される温度を表す。なお、図8に示される循環系統では、補機収納室2Cの換気ファン23を運転させて発電機12を冷却する状態とした。また、ch1からch5は、温度センサ(熱電対)を表し、順にキャッチタンク内の油温、オイルクーラ22の出力端における油温、換気ファン23による冷却風の当接箇所の油温、発電機12の出口の油温、コンバータ12bの出口の油温を計測する。同様にして、ch6からch9は、順に冷却水(熱媒体)入口、冷却水(熱交換後の熱媒体)出口、発電機12の本体表面温度(2か所)の温度を計測する。オイルポンプ12aによる流量の実測値は、26L/minであった。
【0067】
温度計測の結果、冷却水出口(ch7)→オイルクーラ出口(ch2)→発電機出口(ch4)→コンバータ出口(ch5)の順に、熱伝導による温度上昇が確認できた。また、最も高温となる部位は、発電機本体の表面であることが確認できた。そして、オイルクーラ22に流入される冷却水(熱媒体)から発電機本体表面間の温度範囲は、18~20℃degの範囲であることが判明した。
【0068】
このように、発電機オイルは、オイルクーラ22を流れる熱交換後の熱媒体との間で熱交換を行うことで、発電機12、および、発電に係る周辺機器の発電に伴う排熱を回収し、冷却することができる。オイルクーラ22に流入される熱媒体の温度を適宜に制御することで、例えば、コンバータ12bの電力変換動作を確保するための警報が発出される上限温度(例えば、85℃)を超えない温度範囲で発電機12の運用が可能になる。同様にして、発電機12やインバータ12cの出力を確保するための警報が発出される上限温度(例えば、95℃)を超えない温度範囲で発電機12の運用が可能になる。これにより、本実施形態では、オイルクーラ22に流入される熱媒体の温度を適宜に制御することで、発電電力の安定した供給が可能になる。
【0069】
なお、図6等で説明した本実施形態に係るコージェネレーションシステム1の、エンジン11および発電機12によって生じる排熱の筐体内排熱回収フローは、排熱回収方法ということもできる。すなわち、本実施形態において排熱回収方法は、エンジン11および発電機12と接続される各流路に配置された放熱熱交換器30、ラジエータ18、排ガス熱交換器15、オイルクーラ22、温度制御弁35、36、冷却水ポンプ31、潤滑油クーラ38等の制御動作、機能によって提供される。
【0070】
(温度制御弁による制御例)
次に、温度制御弁35、36によるエンジン冷却水の制御例を説明する。なお、以下の制御例においては、放熱熱交換器30のから出力される熱媒体の温度を59.4℃とし、エンジンジャケット11aの出力端11a1における熱媒体の温度を71.4℃とする。そして、図6に例示の温度センサT3の検知温度が約60℃になるように温度制御弁35、36を制御する形態例である。
【0071】
(1)エンジン停止時
エンジン停止時においては、放熱熱交換器30、および、ラジエータ18内が密閉状態とならないように温度制御弁35、36の開度を保持する。
【0072】
(2)エンジン運転時
エンジン運転時では、例えば、(a)暖気運転モード、(b)排熱利用運転モード、(c)余剰放熱運転モードの3つの形態で温度制御弁35、36の弁動作が制御される。
【0073】
(a)暖気運転モード
エンジン起動後、エンジンジャケット11aの出力端11a1における熱媒体温度、すなわち、図6の温度センサT1の検知温度が66℃を超えるまでは、温度制御弁35、36のそれぞれは、放熱熱交換器30、ラジエータ18を経由する流路側を閉じた状態で保持する。つまり、温度制御弁35は、流路Z11b側の弁を開放し、オイルクーラ22側の弁を閉鎖して、流路Z11bを流れる熱媒体のみを流路Z11cに流出させる。同様にして、温度制御弁36は、流路Z11d側の弁を開放し、ラジエータ18側の弁を閉鎖して、流路Z11dを流れる熱媒体のみを流路Z11eに流出させる。
【0074】
温度センサT1の検知温度が66℃に到達すると一定期間(例えば、5sec等)経過後に、TCU経由で外部の給湯制御回路に対して制御開始の通知を出力するとともに、外部の給湯・暖房用の給湯水を押圧するポンプ等へ運転許可信号を出力する。そして、温度制御弁35、36の制御形態は(b)排熱利用運転モード、(c)余剰放熱運転モードの何れかに移行する。
【0075】
(b)排熱利用運転モード
温度制御弁35では、図6に示される温度センサT3の検知温度が一定値(約60℃)となるように比例制御が行われる。具体的には、流路Z11b側の弁の開度、オイルクーラ22側の弁の開度のそれぞれが制御され、流路Z11eを流れる熱媒体の温度値が一定値となるように調整される。一方、温度制御弁36においては、流路Z11d側の弁の開放状態、ラジエータ18側の弁の閉鎖状態を保持することで、流路Z11dと流路Z11eが接続され、温度センサT3で検知される温度が一定値を保持する状態になる。
【0076】
(c)余剰放熱運転モード
排熱利用運転モードで運転中に給湯側の負荷が減少するような場合には、負荷減少に伴い放熱熱交換器30の出口温度(出力端での熱媒体の温度)が上昇する。温度制御弁35では、温度センサT3の温度が約60℃になるように比例制御が継続されることで、オイルクーラ22側の弁の開度が相対的に大きくなり、放熱熱交換器30を流れる熱媒体の流量が増加することになる。この結果、温度センサT3で検知される熱媒体の温度が60℃を超えて上昇することになる。温度制御弁36では、温度センサT3の検知温度が65℃を超えたときには、一定期間経過後(例えば、5sec後)にラジエータファン(排気ファン19)を起動し、温度センサT3の検知温度が一定値(約60℃)となるように比例制御を実施する。具体的には、流路Z11d側の弁の開度、ラジエータ18側の弁の開度のそれぞれが制御され、流路Z11eを流れる熱媒体の温度値が一定値となるように調整される。なお、余剰放熱運転モード時において、温度センサT3で検知される熱媒体の温度が、60℃以下のときには一定期間経過後(例えば、30sec後)に排熱利用運転モードに移行する。
【0077】
なお、図7を用いて説明したように、発電機12の運転時において、オイルクーラ22に流入される冷却水(熱媒体)と発電機本体表面との間の温度範囲は、18~20℃degの範囲で推移することが判明している。例えば、オイルクーラ22を循環する発電機オイルの上限温度をコンバータの警報が発出される警報温度である85℃と想定する。この場合、上記冷却水に対する発電機本体の表面温度差の最小値が18℃であるから、少なくとも負荷減少時における冷却水の上限温度を67℃以下となるように各温度制御弁を制御すれば警報が発出されることなく発電機12が運用されることになる。結果として、本実施形態では、余剰放熱運転モードの制御開始温度を65℃に設定しているため、発電機12の警報が発出される前に冷却水(熱媒体)の温度を低下できる。
【0078】
<エンジン引き出し構造>
次に、本実施形態に係るコージェネレーションシステム(CGS)1の、エンジン引き
出し構造を説明する。図9は、エンジン引き出し構造を正面視した正面図であり、図10は、エンジン引き出し構造を左側面視した左側面図である。なお、図9においては、エンジン等が引き出された状態(後述するように、移動量制限フック56が機能する位置まで引き出された状態)が2点鎖線で表されている。
【0079】
図9から図10に示されるように、本実施形態におけるエンジン11と、発電機12と、排ガス熱交換器15とは、エンジン共通架台50に固定され、筐体左側面側に一体的に引き出し可能なように構成される。エンジン共通架台50は、一体的に組付け可能な上部共通架台51と、下部共通架台52とを含み構成される。本実施形態においては、引き出し構造を採用することにより、引き出された各器機のメンテナンス性を向上させ、保守・整備に係るトータルした作業コストの削減が可能になる。
【0080】
上部共通架台51は略矩形状の架台であり、エンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15のそれぞれは、例えば、固定ボルト等で当該架台の共通する固定面に固定される。エンジン11および発電機12と、排ガス熱交換器15とは、上部共通架台51の長手方向(正面側から背面側方向)に並列して固定される。上部共通架台51において、排ガス熱交換器15はエンジン11および発電機12の近傍に設けられる。上部共通架台51は下部共通架台52の上方向に取り付けられ、上部共通架台51と下部共通架台52とは、運転時のエンジン11や発電機12の振動を干渉する防振ゴム55を介して組付けられる。筐体側には、一体的に組付けられたエンジン共通架台50の下部共通架台52を固定するためのエンジン固定架台61と、当該固定架台に固定されたエンジン共通架台50を左側面側に引き出すためのレール架台62を構成に含む筐体側架台60が設けられる。レール架台62は、エンジン固定架台61の下方側に設けられる。以下、エンジン共通架台50を「共通架台50」、エンジン固定架台61を「固定架台61」ともいう。
【0081】
(下部共通架台)
図11は、下部共通架台52の構造の一例を示す図である。図11において、(a)は、下部共通架台52を上面視した上面図であり、同様にして、(b)は左側面から視た左側面図であり、(c)は正面から視た正面図である。下部共通架台52は、複数のフレーム部材(54aから54e)を組合せて構成される略矩形状のフレーム体である。下部共通架台52は、例えば、引き出し方向に延伸する一対のフレーム材54a、54bと、引き出し方向と直交する方向に延伸する3つのフレーム材(54cから54e)から構成される。フレーム材(54cから54e)の一端部はフレーム材54aに溶接固定され、他端部はフレーム材54bに溶接固定される。
【0082】
一対のフレーム材54a、54bのそれぞれには、鉛直方向の下方側に、引き出し方向側を先頭として順に、第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cが設けられる。フレーム材54aに設けられた第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cのそれぞれは、フレーム材54bに設けられた第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cのそれぞれと互いに対を構成する。
【0083】
同様にして、一対のフレーム材54a、54bのそれぞれには、下部共通架台52を固定架台61に固定するためのメネジ付孔60aが3か所に貫通する。また、引き出し方向に先端側のフレーム材54eの上面側、および、後端側のフレーム材54eの上面側のそれぞれには、防振ゴム55が複数(図11では3か所)に設けられる。
【0084】
図11に示されるように、引き出し方向に対して後端側に位置する一対の第3車輪53cには、引き出し時に移動量を制限するための移動量制限フック56が設けられる。移動量制限フック56の端部は、引き出し方向に向かうかぎ状の爪が形成され、第3車輪53cと軸を共にして回動可能に設けられる。例えば、第3車輪53cを軸支するフレーム材
54aの内面側と、内面側に設けられる第3車輪53cとの間に設けられる。フレーム材54bにおいても同様である。
【0085】
(エンジン固定架台)
図9から図10に戻り、筐体側架台60は、下端側が筐体2の床面側に固定され、上方側に延伸する4本のフレーム材63を脚部として構成されるフレーム体である。4本のフレーム材63は、床面に直立し、略矩形状の領域の4隅を構成するように設けられる。固定架台61は、引き出し方向に並列して設けられた、正面側の2本のフレーム材63に組付けられた断面形状がL字状のフレーム材61aと、背面側に並列して設けられた2本のフレーム材63に組付けられた断面形状がL字状のフレーム材61bから構成される。フレーム材61aは、正面側の並列する2本のフレーム材63の上端部に床面に平行して組付けられ、フレーム材61bは、背面側の並列する2本のフレーム材63の上端部に床面に平行して組付けられる。フレーム材61aとフレーム材61bは、一対となり、床面からの高さ位置が平行して対向するように各フレーム材63に溶接固定される。正面側に組付けられるフレーム材61aはL字状の断面形状の一辺が背面側、背面側に組付けられるフレーム材61bはL字状の断面形状の一辺が正面側にそれぞれ突出するように固定される。
【0086】
図12は、固定架台61の構造の一例を示す図である。図12においては、4本のフレーム材63を脚部として正面側に組付けられたフレーム材61a、背面側に組付けられたフレーム材61bで構成される固定架台61を上面視した上面図が例示される。図12に示されるように、固定架台61を構成するフレーム材61a、61bのそれぞれには、下部共通架台52を固定するための取付孔60bが3か所に貫通する。同様にして、エンジン引き出した状態で、共通架台50を固定するための固定孔60cが、引き出し方向の端部側に設けられる。また、固定架台61を構成するフレーム材61a、61bのそれぞれには、エンジン引き出し時に、共通架台50の移動量を制限するための移動量制限フック56を掛けるためのフック掛溝60dが設けられる。フレーム材61aに設けられたフック掛溝60dと、フレーム材61bに設けられたフック掛溝60dとは、互いに平行する位置に設けられる。
【0087】
(レール架台)
図9から図10に戻り、固定架台61の下方側には、当該固定架台に固定された共通架台50を左側面側に引き出すためのレール架台62が設けられる。レール架台62は、引き出し方向に並列して設けられた、正面側の2本のフレーム材63に組付けられた断面形状がL字状のフレーム材62aと、背面側に並列して設けられた2本のフレーム材63に組付けられた断面形状がL字状のフレーム材62bから構成される。フレーム材62aは、固定架台61を構成するフレーム材61aの下方側、フレーム材62bは、固定架台61を構成するフレーム材61bの下方側に、それぞれ設けられる。フレーム材62aは、正面側の並列する2本のフレーム材63に床面に平行して組付けられ、フレーム材62bは、背面側の並列する2本のフレーム材63に床面に平行して組付けられる。フレーム材62aとフレーム材62bは、一対となり、床面からの高さ位置が平行して対向するように各フレーム材63に溶接固定される。正面側に組付けられるフレーム材62aはL字状の断面形状の一辺が背面側、背面側に組付けられるフレーム材62bはL字状の断面形状の一辺が正面側にそれぞれ突出するように固定される。
【0088】
図10のA部拡大図に示されるように、フレーム材62aの背面側方向に突出する部位の表面62a1には、下部共通架台52のフレーム材54aに設けられた第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cが回動可能に当接する。フレーム材62bにおいても同様であり、正面側方向に突出する部位の表面62b1には、フレーム材54bに設けられた第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cが回動可能に当接する。エンジン
共通架台50に固定されたエンジン11、発電機12、排ガス熱交換器15は、フレーム材62a、62bの各表面に回動可能に当接された第1車輪53aから第3車輪53cによる移動により、筐体外部に引き出される。なお、レール架台62を構成するフレーム材62a、62bのそれぞれには、各表面に加わる荷重耐性を高めるため、補強板62cが設けられる。
【0089】
(エンジン固定架台への取り付け)
筐体側に設けられた固定架台61への下部共通架台52の取り付けは、下部共通架台52の一対のフレーム材54a、54bに設けられたメネジ付孔60aおよび、固定架台61の一対のフレーム材61a、61bに設けられた取付孔60bを介して行われる。フレーム材54a、54bに設けられたメネジ付孔60aの裏側には、固定ボルト64に嵌合するナットが溶接された構造となっている。図10のA部拡大図に示されるように、例えば、レール架台62の上に載置された共通架台側のメネジ付孔60aの開口位置が、固定架台側の取付孔60bの開口位置の下方側に重なるように位置合わせが行われる。その後、固定架台側の取付孔60bから共通架台側のメネジ付孔60aに固定ボルト64を挿通し、当該ボルトを締め付けることで架台同士が固定される。A部拡大図に示されるように、固定架台61と下部共通架台52とは、固定架台側のフレーム材61aの裏面61c側と、下部共通架台側のフレーム材54aの表面側とが当接されて固定される。固定ボルト64を介して、固定架台61と下部共通架台52とは計6か所の取付孔(60a、60b)を介して固定される。メネジ付孔60aによる固定架台61への下部共通架台52の取り付け形態を採用することで、エンジン固定架台への取り付けに関する作業性を高めることが可能になる。
【0090】
なお、固定架台61への下部共通架台52の取り付けにおいて、作業スペースが確保できる場合では、例えば、フレーム材54a、54bには固定ボルト64が挿通されるメネジ付孔60aは取付孔60bと同様の取付孔であってもよい。つまり、固定ボルト64は、一対のフレーム材54a、54bに設けられたメネジ付孔60aに替る取付孔と、一対のフレーム材61a、61bに設けられた取付孔60bとを挿通する。そして、挿通された固定ボルト64にナットを嵌合させ、当該ボルトおよびナットを締結することで固定架台61と下部共通架台52とを固定させる構造であってもよい。
【0091】
固定ボルト64を介して固定架台61に下部共通架台52が固定された状態では、フレーム材54a、54bに設けられた第1車輪53a、第2車輪53b、第3車輪53cはレール架台62から浮いた状態で支持されることになる。つまり、エンジン発電機の運転時には、共通架台50に固定された各器機は、フレーム材61aとフレーム材54a、フレーム材61bとフレーム材54bを固定させる6本の固定ボルト64によって支持されることになる。例えば、フレーム材54a、54bに設けられた各車輪を浮かさずに固定する方法では、常時、車輪の軸受けに各器機の荷重が加わることになり、エンジン等の自重や運転時の振動等により、軸受けのベアリングや内外輪を損傷する虞がある。
【0092】
本実施形態では、上記の固定構造を採用することで、CGS運用時における軸受けに係る荷重負荷を抑止できるため、軸受けのベアリングや内外輪の損傷が防止できる。また、上記固定構造では、鋼材の面と面とを密着させて固定できるため、各車輪をレール架台62に当接させての固定より強固に固定できる。さらに、共通架台50のフレーム材54a、54bを介して、固定架台61における一対のフレーム材61a、61bの連結力を補強できる。
【0093】
(エンジン引き出し)
共通架台50に一体的に固定された各器機の引き出しにおいては、先ず、当該機器に接続される配管等の各種接続を分離させた状態で、当該架台と固定架台61とを固定する6
本の固定ボルト64を外す。次に、下部共通架台52の第1車輪53a、第2車輪53bをレール架台62に載置させる。そして、図9の2点鎖線で示されるように、レール架台62に載置させた各車輪を回動させ、当該レール架台に沿って共通架台50を移動量制限フック56が機能する位置まで筐体外に移動させる。なお、フレーム材54a、54bのそれぞれに設けられた第1車輪53aがレール架台62から外れた状態では、エンジン等の自重により下部共通架台52の後部が浮き上がることが想定される。しかしながら、本実施形態においては、フレーム材54a、54bの第3車輪53cが、それぞれフレーム材61a、61bの裏面側に接する。このため、本実施形態では、下部共通架台側のフレーム材54a、54bに設けられた第3車輪53cと、固定架台側のフレーム材61a、61bとによる接触構造が、下部共通架台52の後部の浮き上がりを防止する構造になっている。そして、エンジン引き出し時においては、第3車輪53cが摩擦の軽減を図るため、当該引き出し作業を容易にする。
【0094】
図9の2点鎖線の引き出し状態に示されるように、移動量制限フック56が機能する位置まで引き出された状態では、移動量制限フック56の端部に形成されたかぎ状の爪が、固定架台61の各フレーム材に設けられたフック掛溝60dに掛けられる。そして、第2車輪53bがレール架台62の端部に位置し、第2車輪53bと第3車輪53cとの間に貫通するメネジ付孔60aの位置が固定架台61に貫通する固定孔60cの位置と重なり合うことになる。
【0095】
本実施形態では、このような構造を採用することで、フック掛溝60dに引掛けられた移動量制限フック56による、引き出されたエンジン等のレール架台62からの脱落が防止できる。さらに、重なり合った共通架台側のメネジ付孔60aと固定架台側の固定孔60cとを用いて、両孔に挿通させた固定ボルト64で共通架台50を固定架台61に固定することで、共通架台50のレール架台62からの脱落が防止できる。
【0096】
なお、図1図10等に示されるように、本実施形態では、レール架台62と床面との間の空間にオイルタンク16を配置するスペースが確保できる。CGS1の運用において、オイルタンク16に保有されるエンジンオイルを用いることで、エンジン11の保守に関する保守サイクルを長くすることができる。
【0097】
<エキゾーストマニホールドの配置>
次に、本実施形態に係るコージェネレーションシステム(CGS)1の、エキゾーストマニホールド13の配置位置を説明する。図13は、比較例におけるエンジン11と排ガス熱交換器15との接続形態を説明する図である。図13においては、エンジン11、発電機12が配置される上方側に排ガス熱交換器15が配置される形態を正面視した正面図が例示される。図13において、エンジン11から排出された排ガスは、エンジン11と排ガス熱交換器15とを接続するエキゾーストマニホールド13、触媒14を介して排ガス熱交換器15に流入される。排ガス熱交換器15は、例えば、シェル&チューブ型の熱交換器であり、シェル側に流入された排ガスはチューブ側を流れるエンジン本体を冷却する冷却水等の熱媒体との間で熱交換が行われ排気口から排出される。エンジン11、発電機12は、防振ゴム55を介して筐体床面に固定される。また、排ガス熱交換器15は、例えば、シート状の防振用のスプリングパッド57を介して筐体2の内壁面に取り付けられる。
【0098】
図13に示す比較例の形態では、エンジン11と排ガス熱交換器15とを接続するエキゾーストマニホールド13は、正面から視て略V字状に曲折し、上方側に設けられた排ガス熱交換器15に接続されることになる。比較例の形態では、発電機12、排ガス熱交換器15を含むエンジン周辺機器の重心位置が相対的に高くなる。このため、エンジン11の始動・停止時における振動が相対的に大きく、振動を抑制する支点となる防振ゴム55
から大きく離れて配置される排ガス熱交換器15においては、振動の振幅がさらに増幅され、信頼性に課題があった。また、比較例の形態では、収容される筐体内において、発電機12、排ガス熱交換器15を含むエンジン周辺機器の高さ方向の占有スペースが相対的に大きくなるため、配置位置に課題を残していた。
【0099】
本実施形態においては、エンジン11と排ガス熱交換器15とを接続するエキゾーストマニホールド13を上下逆さに取り付け、例えば、図9等に示されるように、正面から視て略逆V字状に曲折して排ガス熱交換器15に接続されるように配置した。これにより、排ガス熱交換器15は、エンジン11および発電機12に隣接させて配置することが可能になる。エンジン11の排ガスは、共通架台50の固定面から上方側へ略逆V字状に突設して曲折するエキゾーストマニホールド13を通じて、エンジン11および発電機12に並列して固定された排ガス熱交換器15に供給される。この結果、発電機12、排ガス熱交換器15を含むエンジン周辺機器の重心位置を相対的に低重心化させ、高さ方向の占有スペースを縮小させたコンパクト化が可能になった。また、排ガス熱交換器15は、エンジン11および発電機12とともに防振ゴム55を介在させてエンジン共通架台50に一体的に取り付けることができるため、防振性の向上が期待できる。発電機12、排ガス熱交換器15を含むエンジン周辺機器の重心位置の相対的な低重心化、防振性の向上により、電力供給の安定性を高めることができるため、コージェネレーションシステム1の信頼性が確保できる。また、図9等に示されるように、排ガス熱交換器15とエンジン共通架台50との間に排ガス熱交換器15から出る凝縮水を回収するための回収スペース39が確保できる。これにより、凝縮水を処理する際の作業性が向上できる。なお、本実施形態において、エキゾーストマニホールド13は「架台の固定面の上方へ向かって突設されるように逆V字状に曲げ加工が施された排気管」の一例に相当する。
【0100】
なお、エンジン11および発電機12と、エンジン11および発電機12が固定されるエンジン共通架台50と、吸気フィルタ26およびエンジン11に接続される吸気管と、触媒14およびエキゾーストマニホールド13とを一体的に組付け可能な発電ユニットとして提供することもできる。このような形態で発電に係る構成を一体的に組付けて提供することで、コージェネレーションシステム1の大きさや規模、発電能力のバリエーションに応じた発電ユニットが供給できる。
【0101】
<排ガス熱交換器の内部構造>
次に、本実施形態に係るコージェネレーションシステム(CGS)1の、排ガス熱交換器15の内部構造を説明する。図14は、本実施形態に係る排ガス熱交換器15の構造を説明する図である。本実施形態に係る排ガス熱交換器15は、シェル&チューブ型の熱交換器であり、排ガスが流れるシェル側と、当該シェル側に流れる排ガスとの間で熱交換が行われる冷却水等の熱媒体が流れる複数の伝熱チューブ群を有するチューブ側とを備える。図14において、エンジン11から排出された排ガスは、エンジン11と排ガス熱交換器15とを接続する接続経路(例えば、エキゾーストマニホールド13)を介して排ガス熱交換器15の排ガス入力口15aに流入される。排ガス熱交換器15に流入された排ガスは、シェル側に流入され、排ガス熱交換器内に設けられたバッフル板15i、15jを介して伝熱チューブ側に撹拌され、当該チューブ側を流れる冷却水等の熱媒体との間で熱交換が行われる。熱交換後の排ガスは、排ガス出力口15bを介して、排ガス出力口15bと接続される配管に排出される。
【0102】
また、冷却水等の熱媒体は、冷却水入力口15cを介して入口ヘッダー部15gに流入される。入口ヘッダー部15gには、熱交換部15kを構成する複数の伝熱チューブが接続する鏡板15eが設けられ、鏡板15eの入口ヘッダー部側には流入された熱媒体を伝熱チューブ側に流入させるための流入口が複数に開口する。なお、鏡板15eは、出口ヘッダー部15hに設けられる鏡板15fと対を構成し、鏡板15fは鏡板15eと同様の
構造を有する。熱交換部15kを構成する各伝熱チューブは鏡板15eと鏡板15fとの間を出口ヘッダー部側に延伸する。入口ヘッダー部15gに流入された熱媒体は、鏡板15eによって分散され、当該鏡板を通じて伝熱チューブ毎の熱交換経路に流入される。各伝熱チューブを流れる熱媒体は、バッフル板15i、15jで撹拌された排ガスとの間で熱交換を行い、鏡板15fを通じて出口ヘッダー部15hに流入する。出口ヘッダー部15hに流入された各熱交換経路を流れる熱媒体は、一体となって冷却水出力口15dより流出し、冷却水出力口15dと接続される配管に流出される。
【0103】
ところで、冷却水等の熱媒体が流入される冷却水入力口15cには、曲がり配管(エルボ管)が接続される場合がある。エルボ管内では、熱媒体の流れに相対的な流速の分布に偏りが生ずる。排ガス熱交換器15の冷却水入力口15cに流入する熱媒体の流速分布の偏りにより、入口ヘッダー部内に渦流が生じる場合があった。
【0104】
図15は、入口ヘッダー部15gに生じる渦流の発生を説明する図である。図15(a)には、入口ヘッダー部15gを側面視した側面図、図15(b)には、エルボ管によって冷却水入力口15cに生じる速度分布例が例示される。図15(a)に示されるように、排ガス熱交換器15の熱媒体が流入される冷却水入力口15cにエルボ管15mが接続される場合には、エルボ管の曲率に伴って、管内を流れる熱媒体に流速差が形成される。図15(b)に示される流速分布では、例えば、曲がり方向の外側の流速が相対的に早く、内側の流速は相対的に遅くなる偏りが生じている。
【0105】
図15(b)に例示される偏りが生じた熱媒体が冷却水入力口15cから入口ヘッダー部15gに流入される際には、破線矢印15nに示されるように、流速の早い外側経由の熱媒体が流速の遅い内側経由の熱媒体の流れを巻き込みながら流入することになる。この結果、流速分布に偏りが生じた熱媒体が流入される入口ヘッダー部内では、管壁の外側から中心部に向かう渦流が生じることになる。入口ヘッダー部内に渦流が生じた場合には、鏡板15eを通じて伝熱チューブに分散される熱媒体の流れ(流速)が不均一になるため、シェル側を流れる排ガスとの間の熱交換の性能が低下することになる。
【0106】
図14に戻り、本実施形態においては、排ガス熱交換器15の冷却水入力口15cに流入する熱媒体の流速分布の偏りを起因として、入口ヘッダー部15gに生じる渦流を抑止するために、旋回流防止板70を入口ヘッダー部15gに設ける構造を採用した。
【0107】
図16から図17は、本実施形態に係る旋回流防止板70を説明する図である。図16(a)には、旋回流防止板70が設けられた入口ヘッダー部15gの斜視図、図16(b)には、(a)において、AA方向から視た矢視図が例示される。図17(a)には、図16(a)のBB方向から視た矢視図、図17(a)には、図16(a)のBB方向から視た旋回流防止板70の外形図が開示される。
【0108】
図16(a)に示されるように、入口ヘッダー部15gは略円筒状に構成され、入口ヘッダー部内には、渦流を抑止するための旋回流防止板70が設けられる。図17(b)に示されるように、旋回流防止板70は、辺70aから辺70dで構成される略直角台形形状を有する整流板である。旋回流防止板70においては、辺70aと辺70bは平行し、辺70cは辺70aおよび辺70bに直交する。辺70bは辺70aより長く、辺70dは、辺70aから辺70bに向かってテーパ状に傾斜する。
【0109】
図17(a)に示されるように、入口ヘッダー部内においては、旋回流防止板70は、鏡板15eと対向する壁面15g2に辺70cを接して設けられる。また、旋回流防止板70の辺70bは、入口ヘッダー部15gの円筒形状の内周面15g1に接して、鏡板15eが設けられる位置まで延伸する。また、旋回流防止板70の辺70aは、鏡板15e
と対向する壁面15g2から、一点鎖線Z13で示される冷却水入力口15cの中心位置まで延伸する。そして、図16(b)に示されるように、旋回流防止板70の辺70cは、入口ヘッダー部15gの径方向に、冷却水入力口15cに対向する内周面15g1の位置から一点鎖線Z12で示される中心位置まで延伸する。
【0110】
本実施形態では、このような直角台形形状を有する旋回流防止板70を入口ヘッダー部内に設けることで、周方向に生じる渦流の流れが抑止可能になる。これにより、排ガス熱交換器15においては、入口ヘッダー部内に生じた渦流を起因とする熱交換の性能低下が抑止できる。
【符号の説明】
【0111】
1・・コージェネレーションシステム
2・・筐体
11・・エンジン
11a・・エンジンジャケット
12・・発電機
13・・エキゾーストマニホールド
14・・触媒
15・・排ガス熱交換器
15a・・排ガス入力口
15b・・排ガス出力口
15c・・冷却水入力口
15d・・冷却水出力口
16・・オイルタンク
17・・消音器
18・・ラジエータ
19・・排気ファン
22・・オイルクーラ
23・・換気ファン
30・・放熱熱交換器
31・・冷却水ポンプ
35・・温度制御弁
36・・温度制御弁
38・・潤滑油クーラ
40・・パワーコンディショナ
41・・補機制御盤
42・・ECU制御盤
50・・エンジン共通架台
51・・上部共通架台
52・・下部共通架台
55・・防振ゴム
56・・移動量制限フック
60・・筐体側架台
61・・エンジン固定架台
62・・レール架台
60d・・フック掛溝
70・・旋回流防止板
図1
図2
図3
図4
図5
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図17