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  • 特開-基礎構造 図1
  • 特開-基礎構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072147
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】基礎構造
(51)【国際特許分類】
   E02D 35/00 20060101AFI20240520BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E02D35/00
E02D27/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182840
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】奥出 久人
(72)【発明者】
【氏名】九嶋 壮一郎
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 孝文
(72)【発明者】
【氏名】森 弘誓
(72)【発明者】
【氏名】祐野 友輝
(72)【発明者】
【氏名】石出 一郎
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046DA17
(57)【要約】
【課題】浮き基礎に支持された上部建物の不同沈下を適宜修正する。
【解決手段】基礎構造10は、地盤Gを掘削して埋設された箱形の浮き基礎50と、浮き基礎50の底部を構成するフラットスラブ52の上に設けられ上部建物150を支持する基礎架構70と、フラットスラブ52の上に設けられ基礎架構70をジャッキアップするジャッキアップ機構110と、ジャッキアップ機構110でジャッキアップされた基礎架構70を構成する鉄骨柱74のベースプレート76とフラットスラブ52との間に形成された隙間を詰める間詰め材20と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤を掘削して埋設された箱形の浮き基礎と、
浮き基礎の底部を構成するスラブの上に設けられ上部建物を支持する基礎架構と、
前記スラブの上に設けられ、前記基礎架構をジャッキアップするジャッキアップ機構と、
前記ジャッキアップ機構でジャッキアップされた前記基礎架構の下端部と前記スラブとの間に形成された隙間を詰める間詰め材と、
を備えた基礎構造。
【請求項2】
前記基礎架構の下端部は、柱脚部のベースプレートであり、
前記ベースプレートには貫通孔が形成され、
前記貫通孔には、前記スラブから突出するアンカーボルトが挿通されている、
請求項1に記載の基礎構造。
【請求項3】
前記上部建物は、木造とされ、
前記基礎架構は、鉄骨造とされている、
請求項1又は請求項2に記載の基礎構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の不同沈下を修正できるようにした建物の基礎部構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、基礎スラブの上に基礎梁を基礎スラブと分離した状態に構成されている。当該基礎スラブの両側に地震力などの水平外力による建物の横移動を阻止し、かつ建物のジャッキアップ時の基礎梁のガイド部材およびジャッキの反力台となる耐震ストッパーを設けている。そして、この耐震ストッパーの上に建物をジャッキアップする際にジャッキを設置する。
【0003】
特許文献2には、軟弱地盤上に建造される不等沈下対策型の建造物に関する技術が開示されている。この先行技術では、スラブの外周に位置する基礎の端部には段差が形成されており、スラブとの間にジャッキの挿入に供される挿入部が形成されている。修正作業にあたっては、最初にスラブが基礎に対して自由に上昇できるようにする。次に、ジャッキを挿入部に挿入し、スラブをジャッキアップする。そして、沈下レベル測定管の指示値が基礎の沈下の少ないものの指示値と同一になった時点でジャッキアップを終了し、基礎と梁との間に生じた空隙にスペーサを挿入する。
【0004】
特許文献3には、構造物の基礎形式に依存することなく、不同沈下を低減できる構造物の不同沈下対策構造に関する技術が開示されている。この先行技術では、不同沈下対策構造は、構造物の荷重を基礎を介して地盤に伝える。基礎と、地盤または杭の杭頭部との間に、沈下量制御手段が設けられている。沈下量制御手段は、縦方向に伸縮する伸縮ジャッキと、伸縮ジャッキの液圧を調整するレギュレータとを備えている。そして、設定液圧値以上の圧力が作用すると伸縮ジャッキが縮むように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5-106233号公報
【特許文献2】特開平5-156657号公報
【特許文献3】特許6259591号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
浮き基礎に支持された上部建物は、地盤が軟弱又は超軟弱等で不同沈下した場合、不同沈下を適宜修正することができない又は困難である。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑み、浮き基礎に支持された上部建物の不同沈下を適宜修正することができる基礎構造を提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第一態様は、地盤を掘削して埋設された箱形の浮き基礎と、前記浮き基礎の底部を構成するスラブの上に設けられ、上部建物を支持する基礎架構と、前記スラブの上に設けられ、前記基礎架構をジャッキアップするジャッキアップ機構と、前記ジャッキアップ機構でジャッキアップされた前記基礎架構の下端部と前記スラブとの間に形成された隙間を詰める間詰め材と、を備えた基礎構造である。
【0009】
第一態様に記載の基礎構造では、地盤を掘削して埋設された箱形の浮き基礎は、地盤を掘削した排土によって生じる浮力により上部建物の支持力を得る。箱型の浮き基礎とすることで、基礎梁をなくすことが可能となり、軽量化される。地盤が軟弱又は超軟弱等で不同沈下したとしても、ジャッキアップ機構で基礎架構をジャッキアップし、基礎架構の下端部とスラブとの間に形成された隙間に間詰め材を詰めて基礎架構を固定することで、上部建物の不同沈下を適宜修正することができる。
【0010】
第二態様は、前記基礎架構の下端部は、柱脚部のベースプレートであり、前記ベースプレートには貫通孔が形成され、前記貫通孔には、前記スラブから突出するアンカーボルトが挿通されている、第一態様に記載の基礎構造である。
【0011】
第二態様に記載の基礎構造では、ジャッキアップする際、基礎架構の柱脚部のベースプレートの貫通孔に挿通されたアンカーボルトにガイドされるので、基礎架構の揺れが抑制される。
【0012】
第三態様は、前記上部建物は、木造とされ、前記基礎架構は、鉄骨造とされている、第一態様又は第二態様に記載の基礎構造である。
【0013】
第三態様に記載の基礎構造では、木造の上部建物は鉄骨造の基礎架構に支持されているので、上部建物が浮き基礎に直接支持されている構成よりも木柱脚部等の納まりを簡素化することが可能となる。また、木造の上部建物にジャッキアップを受けるための部材や機構等を設ける必要がない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、浮き基礎に支持された上部建物の不同沈下を適宜修正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態の基礎構造の断面図である。
図2図1の木柱の柱脚部の近傍の拡大断面図である。
図3図1の鉄骨柱の柱脚部の近傍の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態の基礎構造について説明する。
[基礎構造]
先ず基礎構造の具体的な構造について説明する。
【0017】
図1に示すように、基礎構造10は、浮き基礎50と基礎架構70とジャッキアップ機構110と間詰め材20とを有して構成されている。
【0018】
浮き基礎50は、地盤Gを掘削した凹部12に構築され、地盤Gに埋設されている。本実施形態の浮き基礎50は、平面視矩形状とされ、フラットスラブ52とフラットスラブ52の外周縁部(矩形の各辺部)から立ち上がる擁壁54とを有して構成された上面が開口した箱形である。本実施形態の浮き基礎50は、鉄筋コンクリート造である。なお、上記、浮き基礎50の構造は一例であって、これに限定されるものではない。
【0019】
本実施形態では、浮き基礎50の下には、つまり、凹部12の底には捨てコン14が打設されているが、捨てコン14は必須ではない。
【0020】
浮き基礎50の底部を構成する平面視矩形状のフラットスラブ52の上には、上部建物150を支持する基礎架構70が設けられている。本実施形態の基礎架構70は、鉄骨造である。基礎架構70は、鉄骨梁72と鉄骨柱74とを有して構成されている。鉄骨梁72は、平面視で矩形枠状に配置されると共に枠内に格子状に配置され、互いに接合されている。鉄骨柱74は、鉄骨梁72同士が接合された接合部位73に上端部75が接合されている。なお、本実施形態の鉄骨梁72及び鉄骨柱74は、H形鋼で構成されているが、これに限定されるものではない。また、上記、基礎架構70の構造は一例であってこれに限定されるものではない。
【0021】
図1及び図2に示すように、鉄骨柱74の柱脚部77の下端には、ベースプレート76が接合されている。そして、フラットスラブ52の上面に台部53が形成され、この台部53の上に鉄骨柱74の柱脚部77のベースプレート76が設置されている。なお、台部53とベースプレート76との間には、間詰め材20が充填されている。間詰め材20は、コンクリート及びモルタル等を材料としている。
【0022】
浮き基礎50の底部を構成するフラットスラブ52には、複数のアンカーボルト80が埋設されている。アンカーボルト80は台部53から突出している。なお、アンカーボルト80の突出している部位をボルト突出部82とする。本実施形態では、アンカーボルト80のボルト突出部82の上端位置は、鉄骨柱74の鉛直方向の高さの1/3から1/2の間にある。
【0023】
図2に示すように、ボルト突出部82は、鉄骨柱74のベースプレート76に形成された貫通孔79に挿通されている。ボルト突出部82には、ナット84が捻じ込まれ、これによりベースプレート76がフラットスラブ52にボルト締結される。なお、前述したようにフラットスラブ52の台部53とベースプレート76との間には、間詰め材20が充填されている。
【0024】
図1及び図3に示すように、鉄骨梁72同士が接合された接合部位73の上には、鋼製の接合部材60が接合されている。図3に示すように、本実施形態では、接合部材60は、平面視で格子状に配置された複数のリブ62の上に接合板64が接合された構成となっている。
【0025】
図1及び図3に示すように、基礎架構70の鉄骨梁72の上には、鉄筋コンクリートスラブ90が設けられている。図3に示すように、前述の鋼製の接合部材60のリブ62の下部は鉄筋コンクリートスラブに埋設され、リブ62の上部及び接合板64は鉄筋コンクリートスラブ90から突出している。
【0026】
図1に示すように、基礎架構70は、上部建物150を支持している。本実施形態の上部建物150は、木造である。図3に示すように、上部建物150の構造部材である木柱152の柱脚部154が、基礎架構70の接合部材60の接合板64の上に載せられ接合されている。具体的には、接合部材60の接合板64に挿通されてナット66で締結された鋼棒68が木柱152の柱脚部154に挿入され接着されている。つまり、木柱152の柱脚部154は、接合部材60に鋼棒挿入接着接合されている。
【0027】
図1及び図2に示すように、浮き基礎50のフラットスラブ52の上には、ジャッキアップ機構110が設置されている。本実施形態のジャッキアップ機構110は、二つの油圧ジャッキ112を有して構成され、二つの油圧ジャッキ112は、フラットスラブ52の台部53の上の鉄骨柱74の両側に設置されている。
【0028】
図1に示すように、ジャッキアップ機構110の油圧ジャッキ112の上端部112Uは、基礎架構70の鉄骨梁72に下面に接触し、基礎架構70をジャッキアップする。別の観点から説明すると、浮き基礎50内に設けられたジャッキアップ機構110は、浮き基礎50を支持受けとして、基礎架構70をジャッキアップする。
【0029】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0030】
地盤Gを掘削して埋設された箱形の浮き基礎50は、地盤Gを掘削した排土によって生じる浮力により上部建物150の支持力を得る。このように、箱型の浮き基礎50とすることで、例えば浮き基礎から基礎梁を省略することが可能となり、軽量化される。
【0031】
また、地盤Gが軟弱又は超軟弱等で上部建物150が不同沈下したとしても、ジャッキアップ機構100で基礎架構70をジャッキアップし、基礎架構70の鉄骨柱74のベースプレート76とフラットスラブ52の台部53との間に形成された隙間に間詰め材20を詰めて基礎架構70を固定することで、上部建物150の不同沈下を適宜修正することができる。
【0032】
したがって、地盤Gの支持層に根入れする杭基礎で上部建物150を支持し上部建物150の沈下を防止する構造と比較して、施工コストを低減できる。
【0033】
また、基礎架構70の鉄骨柱74の柱脚部77のベースプレート76の貫通孔79にアンカーボルト80のボルト突出部82が挿通されている。よって、ボルト突出部82にガイドされジャッキアップする際の基礎架構70の揺れが抑制され、その結果、上部建物150の揺れが抑制される。
【0034】
アンカーボルト80のボルト突出部82は、上端位置が鉄骨柱74の鉛直方向の高さの1/3から1/2の間にあり、通常よりも長いので、ジャッキアップ量が大きくても外れない。なお、ボルト突出部82の長さは、将来想定されるジャッキアップ量よりも長ければよい。
【0035】
また、木造の上部建物150は鉄骨造の基礎架構70に支持されている。よって、上部建物150が浮き基礎50のフラットスラブ52に直接支持されている構成やフーチング基礎で上部建物150の木柱152の柱脚部154を支持する構成と比較し、高力ボルトによる仕口的な接合となるので、木柱152の柱脚部154の納まりを簡素化することが可能となる。別の観点から説明すると、フラットスラブやフーチング基礎がアンカーボルトを介して直接支持する一般的な柱脚納まりと比較して、木柱152の柱脚部154の納まりを簡素化できる。
【0036】
また、木造の上部建物150の木柱152や木梁等にジャッキアップを受けるための部材や機構等を設ける必要がない。したがって、上部建物150をジャッキアップして上部建物150の不同沈下を修正する基礎構造と比較して、施工コストを低減できる。
【0037】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態に限定されない。
【0038】
例えば、上記実施形態では、上部建物150は、木造であったが、これに限定されるものではない。上部建物150は、木造以外、例えば鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造及び鉄骨造等であってもよい。
【0039】
また、例えば、上記実施形態では、基礎架構70は鉄骨造であったが、これに限定されるものではない。基礎架構70は、鉄骨造以外、例えば鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造及び木造等であってもよい。
【0040】
また、例えば、上記実施形態では、ジャッキアップ機構110は、油圧ジャッキ112を用いたが、これに限定されるものではない。油圧ジャッキ以外、例えばエアジャッキを用いてもよい。
【0041】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。
【符号の説明】
【0042】
10 基礎構造
20 間詰め材
50 浮き基礎
52 フラットスラブ(スラブの一例)
70 基礎架構
76 ベースプレート
77 柱脚部
79 貫通孔
80 アンカーボルト
110 ジャッキアップ機構
150 上部建物
G 地盤
図1
図2
図3