(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072151
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】居住空間内に空気を送り込むダクト
(51)【国際特許分類】
F24F 13/02 20060101AFI20240520BHJP
C08J 9/18 20060101ALI20240520BHJP
C08J 9/232 20060101ALI20240520BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F24F13/02 H
C08J9/18 CFG
C08J9/18 CES
C08J9/232 CET
F24F13/02 B
B60H1/00 102L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182852
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】三枝 善博
(72)【発明者】
【氏名】中本 哲生
(72)【発明者】
【氏名】板谷 博治
【テーマコード(参考)】
3L080
3L211
4F074
【Fターム(参考)】
3L080AB01
3L080AC05
3L080AD02
3L080AE01
3L080AE02
3L211BA14
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3L211DA91
4F074AA17
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4F074DA32
4F074DA35
4F074DA57
4F074DA59
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、ダクト本体に吸音性能を付与し、ダクトから放出されるノイズを低減することに加え、ダクト自体に断熱性を効果的に発現させた空調用のダクトを提供することにある。
【解決手段】本発明の居住空間内に空気を送りこむダクトは、垂直入射吸音率におけるピーク強度が0.5超であり、かつ10mm厚における垂直入射吸音率のピーク周波数が7000Hz以下であるビーズ発泡成形体を含むことを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10mm厚における垂直入射吸音率におけるピーク強度が0.5超であり、かつ10mm厚における垂直入射吸音率のピーク周波数が7000Hz以下であるビーズ発泡成形体を含むことを特徴とする、居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項2】
10mm厚における垂直入射透過損失が20dB以下である、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項3】
前記ビーズ発泡成形体がポリエチレン系の熱可塑性樹脂を含む、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項4】
少なくとも2つの部材を含み、前記部材が嵌合部で連結されたダクトであって、
前記嵌合部を熱溶着により溶融接合している、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項5】
前記ビーズ発泡成形体の通気量が30cc/cm2・sec以下である、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項6】
車両用の空調ダクトである、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【請求項7】
車両用のインパネダクトである、請求項1に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、居住空間内に空気を送り込むダクトに関する。より詳細には、内部に多数の気泡を有する発泡材を含むダクトに関するものであり、特に、吸音性能を付与した新規な空調ダクトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
発泡成形品として、例えば自動車のインストルメントパネル内に取り付けられる各種空調ダクトが知られている。これら空調ダクトには、発泡した樹脂材料を成形した発泡ダクトが広く用いられている。発泡ダクトは、軽量であり、例えばポリオレフィン系樹脂等の樹脂材料に発泡剤を加えて溶融混練し、押出機のダイから押し出される発泡パリソンをブロー成形することにより容易に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6566200号公報
【特許文献2】特許第6923796号公報
【特許文献3】特許第6541938号公報
【特許文献4】特開2002-181372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ブロー成形することにより得られる成形体は、通常の方法では吸音性能が無い。そこで、特定の周波数範囲のノイズピーク低減効果を向上させる点で、空調用ダクトの改良の余地があった。特許文献1では、吸音特性を発現させるために発泡成形体の略厚さ方向に孔が穿設されているが、製造工程が増加してコスト増加につながるため好ましくない。特許文献2では、発泡成形体に加え、吸音材層が組み込まれているが、部品点数の観点からコスト増につながるため好ましくない。特許文献3では、軽量で消音性に優れたダクトが提案されているが、吸音を発現する層の厚みが小さいため、低周波数帯の消音機能がほとんどなく、ノイズ低減効果が最大でも5dB前後であり、ノイズ低減効果が不十分であった。特許文献4では、ビーズ発泡成形体からなるダクトは断熱性により結露防止機能が発現しているが、これはダクト自体の吸音特性、消音性を図ったものではない。そこで、ダクトそのものに吸音特性、消音特性を設けるとともに、ダクト本体を効果的に断熱できる空調用ダクトが要望されている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、その目的は、ダクト本体に吸音性能を付与し、ダクトから放出されるノイズを低減することに加え、ダクト自体に断熱性を効果的に発現させた空調用のダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸音特性を有するビーズ発泡成形体を含むことを特徴とする、居住空間内に空気を送り込むダクトが優れた消音特性を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]
10mm厚における垂直入射吸音率におけるピーク強度が0.5超であり、かつ10mm厚における垂直入射吸音率のピーク周波数が7000Hz以下であるビーズ発泡成形体を含むことを特徴とする、居住空間内に空気を送りこむダクト。
[2]
10mm厚における垂直入射透過損失が20dB以下である、[1]に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
[3]
前記ビーズ発泡成形体がポリエチレン系の熱可塑性樹脂を含む、[1]または[2]に記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
[4]
少なくとも2つの部材を含み、前記部材が嵌合部で連結されたダクトであって、
前記嵌合部を熱溶着により溶融接合している、[1]~[3]のいずれかに記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
[5]
前記ビーズ発泡成形体の通気量が30cc/cm2・sec以下である、[1]~[4]のいずれかに記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
[6]
車両用の空調ダクトである、[1]~[5]のいずれかに記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
[7]
車両用のインパネダクトである、[1]~[6]のいずれかに記載の居住空間内に空気を送りこむダクト。
【発明の効果】
【0008】
本発明の空調ダクトによれば、発泡成形体の厚みに応じた吸音特性を発現させることができることに加え、低面密度からなる高い透音性と、高い断熱性による結露防止効果を兼ね備えており、居住空間内に空気を送り込むダクト(例、自動車のインパネダクト、ルーフダクト、フロアダクト、業務用エアコン、家庭用エアコン)の用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の居住空間内に空気を送りこむダクトの一例を示す概略図である。
【
図2】本実施形態のダクトの嵌合部の一例を示す概略図である。
【
図3】一対のダクトの合わせ面を凹凸嵌合する一対応の一例を示す断面図である。
【
図4】ビーズ発泡成形体の独立気泡間の膜の厚み測定の一例を示す。
【
図5】実施例で作製したダクトの形状を説明する図である。(A)は流路方向の断面図であり、(B)は流路方向に対して垂直な断面図である。(B)は実施例のうち、厚さ14mmと2mmの例について示した。
【
図6】ピーク強度、ピーク周波数の測定方法を説明する図である。
【
図7】垂直入射透過損失の測定方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。
【0011】
[居住空間]
本明細書において「居住空間」とは、人が存在し得る空間であって、例えば、ダクトが空気を送り込んだ先の内部空間である。例えば、自動車の内部やビルの内部、和室、洋室、浴室、玄関などが挙げられる。
【0012】
[居住空間内に空気を送り込むダクト]
本実施形態の居住空間内に空気を送り込むダクトは、垂直入射吸音率におけるピーク強度が0.5超であり、かつ10mm厚における垂直入射吸音率のピーク周波数が7000Hz以下であるビーズ発泡成形体を含む。
【0013】
以下、各構成要素について詳細に説明する。
【0014】
[ビーズ発泡成形体]
ビーズ発泡成形体を形成する熱可塑性樹脂としては、汎用の熱可塑性樹脂、例えば、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ハイインパクトポリスチレン、ABS樹脂、ポリエチレン(高密度、低密度)、ポリメチルメタアクリレート、ポリ塩化ビニリデン共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート、変性ポリフェニレンエーテル等の樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は、有機揮発性発泡剤や熱分解性発泡剤を含有させてもよいし、バイオマス原料を含有さしめたものであっても良い。
【0015】
ビーズ発泡成形体を形成する熱可塑性樹脂としては、車両などへの搭載時に振動による擦れ音が小さくなる観点から、ポリエチレンであることが好ましい。特にポリエチレンは、ポリプロピレンに比べて柔軟性が高いため、擦れ音を一層小さくすることができる。また、既存のポリエチレン系のダクトと同一樹脂となることから、熱溶着などの接合が可能となる観点からもポリエチレンが好ましい。
上記ビーズ発泡成形体は、樹脂成分としてポリエチレン系の熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、樹脂成分がポリエチレン系の熱可塑性樹脂のみであることがより好ましい。上記ビーズ発泡成形体中の樹脂成分100質量%に対する、ポリエチレン系の熱可塑性樹脂の質量割合は、70質量%以上であることが好ましく、一層吸音性能に優れる観点から、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。上記樹脂成分の質量割合は、ビーズ発泡成形体100質量%に対して90質量%以上であることが好ましい。
【0016】
ビーズ発泡成形体の気密性を保持する観点から、ビーズ発泡成形体の独立気泡率は、70%以上100%以下が好ましく、80%以上99%以下がより好ましく、90%以上98%以下が更に好ましい。高い独立気泡を維持する観点から、球状の発泡ビーズを用いること好ましい。上記独立気泡率は、例えば、ビーズ発泡粒子の膨張能を大きくし連通部を下げること等により調整することができる。
【0017】
[ビーズ発泡成形体の諸特性]
上記ビーズ発泡成形体は吸音特性を有する。そのため、上記ビーズ発泡成形体の独立気泡の膜の厚みは20μm以下であることが好ましく、10μm以下がより好ましく、5μm以下がさらに好ましい。なお、上記のビーズ発泡成形体の独立気泡間の膜厚みは、1.0mm~20.0mmのいずれかの厚みでの測定値が、上記範囲内であればよい。ビーズ発泡成形体の独立気泡間の膜厚みが上記上限以下であれば、気密性を保持しつつ吸音特性を発現させることが可能であり、所望の吸音周波数の吸音特性を設計することができる。また、上記上限以下であると透過音を抑制することができる。また、ビーズ発泡成形体の独立気泡の膜厚みが上記上限以下であれば、吸音特性が発現し、厚みに応じた吸音周波数を設計することができる。
【0018】
上記ビーズ発泡成形体の厚みは、吸音特性、消音特性、剛性、強度と軽量性のバランスに優れる観点から、1.0~30mmであり、2.0~20mmであることが好ましく、より好ましくは3.0mm~10mmである。
【0019】
ビーズ発泡成形体のJIS K 6767(1999)に準拠して測定される引張伸びは、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、15%以上が更に好ましく、100%以下が好ましく、75%以下が好ましく、50%以下が更に好ましい。ビーズ発泡成形体の引張伸びが上記下限以上であれば、ビーズ発泡成形体に曲げ変形や衝撃が加わった際に破断しないため、突起物と化して危険が伴うこともなく、ダクトとしての気密性を保持することが可能である。また、ビーズ発泡成形体の引張伸びが上記上限以下であれば、ビーズ発泡成形体の強度を維持することができ、荷重がかかってもダクト継ぎ目部を維持し、気密性を保持することが可能である。上記引張伸びは、例えば、発泡倍率、融着強度、ビーズ材質により調整することができる。
【0020】
ビーズ発泡成形体のASTM E 1530に準拠して測定される熱伝導率は、0.01W/m・K以上が好ましく、0.015W/m・K以上が好ましく、0.02W/m・K以上が更に好ましく、0.15W/m・K以下が好ましく、0.10W/m・K以下が好ましく、0.08W/m・K以下が更に好ましい。ビーズ発泡成形体の熱伝導率が上記下限以上であれば、ダクト内部と外部の断熱性が十分となる。また、ビーズ発泡成形体の熱伝導率が上記上限以下であれば、ビーズ発泡成形体の内部を冷風が通過した際の表面温度が大きく変化せず、ダクト外周部に結露水が発生しにくい。上記熱伝導率は、例えば、発泡倍率等により調整することができる。
【0021】
ビーズ発泡成形体のJIS A 1405-2に基づき測定される垂直入射吸音率(例えば、後述のピーク強度)は、0.5以上が好ましく、0.6以上が好ましく、0.7以上が更に好ましい。ビーズ発泡成形体の垂直入射吸音率が上記下限以上であれば、ダクトが吸音体として作用し、ブロアから発生するノイズを低減して、居室空間内に空気を送り込むことが可能となる。さらにブロア内の音を透過させやすくなり、居室空間内に入る音が低減する。吸音特性を発現するビーズ発泡成形体は、厚みに応じた吸音ピークが発現するため、ノイズ低減周波数を狙って吸音する場合はビーズ発泡成形体の厚みを制御することにより、達成可能である。
【0022】
[居住空間内に空気を送りこむダクトの構造]
本発明の居住空間内に空気を送りこむダクトは、流体の流通方向に沿って2分割した形状の一対の半体1、2を合わせて形成したものであってよい。例えば、一対の半体1、2はそれぞれ熱可塑性樹脂のビーズを発泡させた成形体で構成され、その肉厚が1mm~50mmが好ましく、2mm~40mmがより好ましく、3mm~30mmが更に好ましい。また、密度は0.005~1.0g/cm
3が好ましく、0.01~0.8g/cm
3がより好ましく、0.02~0.6g/cm
3が更に好ましい。一対の半体1、2の合わせ面は
図2に示すように、その一方に嵌合凸部1を、かつ他方に嵌合凹部2を形成して、一対の半体1、2を凹凸嵌合により接合する構成とすることができる。上記肉厚、上記密度は、例えば、発泡倍率等により調整することができる。
【0023】
[ビーズ発泡成形体の製造方法]
上記ビーズ発泡成形体を製造するための方法は特に限定されないが、(i)第1樹脂として熱可塑性樹脂を使用し、その熱可塑性を利用した方法、(ii)固体状態の第1樹脂粒子の切削などの後加工による方法などが可能であり、粒子に所望の外径を付与できる方法であればいずれも適用可能である。その中でも、生産性に優れ、安定した形状の粒子が製造可能な方法として、吐出断面を設けたダイを使用した押し出し法が好適に使用できる。押し出し法として、押出機により第1樹脂(例えば、熱可塑性樹脂)を溶融押し出し、ストランドカット又はアンダーウォーターカットなど工業的に通常使用されている方法によりペレタイズして得られた基材樹脂ペレットを発泡させ予備発泡粒子を得る方法;および押し出し機に発泡剤をバレル途中から注入し吐出と同時に発泡させ、冷却後、アンダーウォーターカット又はストランドカットし予備発泡粒子を直接得る方法;押出機内で熱可塑性樹脂を溶融させ所望の断面形状を有するダイスから押し出し、冷却後ペレタイザーにより所定の長さに切断することにより基材樹脂ペレットを製造し、該基材樹脂ペレットに発泡剤を含浸させ、加熱することにより所定の発泡倍率で発泡させる方法;等、従来公知の方法を任意に応用して製造することができる。
【0024】
第1樹脂に発泡剤を含有(含浸)させる方法としては、特に限定されることなく、一般的に用いられている方法としてよい。
【0025】
かかる方法としては、特に限定されないが、例えば、水などの懸濁系で水性媒体を用いて行う方法(懸濁含浸)や、重炭酸ナトリウムなどの熱分解型発泡剤を用いる方法(発泡剤分解)、ガスを臨界圧力以上の雰囲気とし液相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(液相含浸)、ガスを臨界圧力未満の雰囲気とし気相状態にして、基材樹脂に接触させる方法(気相含浸)などが挙げられる。
【0026】
上記ビーズ発泡成形体を製造するための方法は、予備発泡工程をさらに含んでもよい。予備発泡圧力は、0.1MPa以上10MPa以下が好ましく、0.2MPa以上8MPa以下がより好ましく、0.3MPa以上5MPa以下がさらに好ましい。予備発泡時間は、1時間以上48時間以下が好ましく、2時間以上36時間以下がより好ましく、3時間以上24時間以下がさらに好ましい。予備発泡工程は、例えば、空気雰囲気下で行うことが好ましい。
【0027】
また、上記ビーズ発泡成形体を製造するための方法は、型内に充填した予備発泡粒子を加熱する工程をさらに含んでもよい。加熱工程は、例えば、飽和水蒸気を型に導入することによって行ってもよい。ビーズ発泡成形体を製造するための方法は、加熱工程の後に冷却する工程をさらに含んでもよい。
【0028】
上記ビーズ発泡成形体の垂直入射吸音率におけるピーク強度は、0.5超であり、一層吸音性能に優れる観点から、好ましくは0.6超、より好ましくは0.7超である。
また、上記ビーズ発泡成形体を10mm厚としたときの垂直入射吸音率のピーク周波数は、7000Hz以下であり、一層吸音特性に優れる観点から、6500Hz以下、好ましくは6000Hz以下、より好ましくは5500Hz以下である。
上記ピーク強度、ピーク周波数は、例えば、成形品の厚み、成形品の表面への凹凸形状加工、発泡倍率等により調整することができる。
なお、上記ピーク強度及び上記ピーク周波数は以下の値をいう。厚さ10mmの試験片を用いて後述の実施例の方法で吸音率を測定し、縦軸が垂直入射吸音率、横軸が周波数である吸音率の曲線を作成する(
図6)。該曲線の極大値のときの垂直入射吸音率(縦軸の値)を垂直入射吸音率におけるピーク強度、周波数(横軸の値)を垂直入射吸音率のピーク周波数のHz値とする。上記極大値は、例えば、周波数が最も低い垂直入射吸音率が0.5超の極大値としてよい。
垂直入射吸音率が高く、ピーク強度が高いと、音がビーズ発泡成形体内部まで入りやすくなり、質量則よりも音が透過しやすくなり、ダクト外部に音が漏れるため、ダクト内の音が小さくなる。そしてダクトから排出口から出る音が小さくなり、ノイズを低減することができる。
【0029】
上記ビーズ発泡成形体の10mm厚における垂直入射透過損失は、ダクト内を通過する音を逃がし、結果として空気の出口から発生するノイズを低減できる観点から、20dB以下であることが好ましく、より好ましくは18dB以下、さらに好ましくは15dB以下である。周波数2000Hzにおいて上記を満たすことが好ましく、周波数1000Hzと周波数2000Hzのいずれにおいても上記を満たすことがより好ましい。
上記垂直入射透過損失は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる(
図7)。
上記垂直入射透過損失は、例えば、ビーズ発泡成形体の面密度、成形品の表面への凹凸形状加工、発泡倍率等により調整することができる。
【0030】
上記ビーズ発泡成形体の通気量は、入り口から流入する風量を維持する観点から、の観点から、30cc/cm2・sec以下であることが好ましく、より好ましくは10cc/cm2・sec以下、さらに好ましくは3cc/cm2・sec以下である。
上記通気量は、後述の実施例に記載の方法で測定することができる。
上記通気量は、例えば、ビーズ発泡成形体の厚み、成形時の膨張能や発泡倍率等により調整することができる。
【0031】
本実施形態のダクトは複数の部材を組み合わせていてよい。例えば、ダクト内の空気等の流体の流れ方向に沿って切断された複数の部材を組み合わせていてもよいし(
図2)、流れ方向に垂直な面で切断された複数の部材を組み合わせてもよい。
複数の部材の連結部は嵌合部であってよい。嵌合部としては、上述の
図2に示すような形状が挙げられる。
【0032】
本実施形態のダクトは直線状であってもよいし、屈曲部を有していてもよい(
図1、5)。屈曲部を有することで狭いスペースに格納でき、また、吸音性能が一層向上する。屈曲部が多すぎると、ダクト内の流体の流れが悪くなるため、屈曲部は5個以内であることが好ましく、より好ましくは3個以内、さらに好ましくは2個以内である。
【0033】
本実施形態のダクトは、上記ビーズ発泡成形体を含み、ビーズ発泡成形体のみからなるダクトであってもよいし、ビーズ発泡成形体と他の部材との組み合わせであってもよい。
上記他の部材としては、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂部材、ポリウレタン発泡体、金属部材等が挙げられる。
【0034】
本実施形態のダクトに対して、一部をビーズ発泡体で代用することも可能であり、上記代用するビーズ発泡成形体の長手方向、短手方向の長さは、ダクト内を通過する音をダクト外部に逃がし、空気の出口から発生するノイズを低減する観点から、10~3000mmであることが好ましく、より好ましくは30~2000mmである。
【0035】
本実施形態のダクトは、ダクト内を通過する音をダクト外部に逃がし、空気の出口から発生するノイズを低減する観点から、上記屈曲部に上記ビーズ発泡成形体を含むことが好ましい。特に、上記屈曲部が上記ビーズ発泡成形体のみからなることが好ましく、ダクト内の全ての屈曲部が上記ビーズ発泡成形体のみからなる屈曲部であることがより好ましい。
【0036】
本実施形態のダクトは、独立気泡構造のビーズ発泡成形体を用いることにより、ダクト内部から外部への流体の漏れがなく、流体の流速が低下しにくくなる。中でも、本実施形態のダクトは、内部から外部へ貫通する貫通孔がないことが好ましい。
【0037】
本実施形態のダクトにおいて、吸音性能及び耐結露性を有しているため、単層でもうけることが可能であるが、さらなるノイズ低減の観点から、本実施形態のダクトの外側にフェルトや発泡体などの吸音層を設置することも可能である。
【0038】
本実施形態のダクトは、自動車のインパネダクト、ルーフダクト、フロアダクト、業務用エアコン、家庭用エアコンの用途に好適に用いることができ、中でも車両用の空調ダクトに特に好適に用いることができる。また、車両内の中でも、パネルに囲まれた狭い空間内に配置されるインパネダクトに特に適している。
【実施例0039】
以下、具体的な実施例及び比較例を挙げて本発明について詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0040】
[評価方法]
以下の実施例、比較例において記載した物性評価は、以下のように行った。
【0041】
<厚み(mm)、密度ρ0(g/cm3)、面密度(kg/m2)>
後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、縦50mm、横50mm、表1に記載の厚み(mm)、の直方体のビーズ発泡体成形体を切り出し、試料とした。なお、以下の評価においてダクトから上記形状の試料を切り出せない場合は複数に分けて切り出したビーズ発泡成形体を重ねて上記形状とした。また、1個のダクトから測定試料を作製できない場合は、同一方法で製造した複数個のダクトから切り出した部材を重ねて測定試料としてよい。
ビーズ発泡成形体の質量W(g)を測定した後、ノギス(ミツトヨ製)を用いて面積S(m2)、体積V(cm3)を測定し、W/S(g/m2)をビーズ発泡成形体の面密度とし、W/V(g/cm3)をビーズ発泡成形体の密度とした。
【0042】
<独立気泡率>
後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、縦20mm、横20mm、表1に記載の厚み(mm)、の直方体のビーズ発泡体成形体を切り出し、試料とし、独立気泡率を測定した。
S(%)={(Vx-W/ρ)/(Va-W/ρ)}×100 ・・・(1)
式(1)中、Vxは、発泡体の真の容積(cm3)であり、Vaは、発泡体の見かけの容積(cm3)であり、Wは、発泡体の重量(g)であり、ρは、発泡体の基材樹脂の密度(g/cm3)である。発泡体の真の容積はピクノメータにより算出される。
【0043】
<独立気泡膜の厚み>
上記「<厚み(mm)、密度ρ0(g/cm
3)、面密度(kg/m
2)>」と同じ試料を用いて独立気泡膜の厚みを測定した。
各実施例のビーズ発泡成形体のSEM顕微鏡写真の画像解析によって「独立気泡膜の平均厚み」を測定した(
図4)。独立気泡膜の厚みの算出については、SEM像から画像ソフトを使って求めた。画像ソフトはImageJ1.48v(フリーウェア Version1.46 開発者 Wayne Rasband 2014年7月10日)を使用した。ビーズ発泡成形体試料から0.1cm×0.1cmの試験片を切り出し、直接、走査型電子顕微鏡の試料台に取り付けた。試験片を載せた試料台を走査顕微鏡中に挿入し、低真空モードで20KVの加速電圧、15mmの作動距離、及び0°試料チルトを用いて画像観察を行った。100倍以上の倍率(例えば110倍等)で撮られた反射電子画像を用いて独立気泡膜の厚みを測定した。各ビーズ発泡成形体の電子顕微鏡写真において、10個の測定対象気泡を任意に選択し、各気泡の独立気泡膜の厚み任意の5か所を測定した。そして、各気泡の任意の上記5か所の平均値から、10個の測定対象気泡の平均値を算出し、ビーズ発泡成形体試料の独立気泡膜の厚み(μm)とした。3μm以下の膜の厚みに関しては、<3として記載した。比較例1と2については、独立気泡が存在しないため、表中には「―」と記載した。
【0044】
<引張伸び>
JIS K6767Aに基づき、厚さ10mmのビーズ発泡成形体を表1記載の密度で作製し、打ち抜き刃で打ち抜き、ダンベル状1号型を作製し、N=5の平均で算出した。なお、打ち抜き後の試験片を、温度23℃±2℃、相対湿度(50±5%)で24時間放置した後に評価を行った。
【0045】
<熱伝導率>
後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、φ50mm、厚み5.0mmの円盤状のビーズ発泡体成形体の試料を切り出した。
ASTM E1530に準拠し、熱伝導率測定装置(DTC-300型、TAインスツルメンツ社製)を用いて円盤熱流計法による評価を実施した。0℃、20、40℃、60℃の温度域で各ビーズ発泡成形体につき1回測定し、4つの温度域の平均値を熱伝導率とした。
【0046】
<結露率>
結露率は、後述の実施例に記載の方法で作製したダクト内を0℃の冷水で満たし、温度40℃、湿度90%の恒温槽に10分間放置したのち、発泡体ダクトの外表面に結露した水および滴下した水を布に染み込ませてその重量変化(結露量)を計測し、計測された結露量(g)を発泡体ダクトの表面の単位面積(cm2)当りに換算した値である。
【0047】
<液だれ>
結露率測定後、結露水が滴下していることを目視で確認できた場合を「有」、目視では分からなかった場合を「無」とした。
【0048】
<通気量>
ビーズ発泡成形体の通気量はJIS L 1096:2010年 A法(フラジール法)に準じて以下のようにして測定した。後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、100mm、横100mm、表1に記載の厚み(mm)のビーズ発泡体成形体を切り出した。
ビーズ発泡成形体の通気量は、デジタルフラジール型通気度試験機(株式会社大栄科学精器製作所製、「DAP-360」)を用いて測定した。試験片を測定部に取り付けた後、差圧設定範囲を125Paに設定し、測定した圧力と使用した空気孔の種類から、試験片の通過する空気量(cc/cm2・sec)を算出し、ビーズ発泡成形体のフラジール通気量とした。通気量が測定下限以下となる場合を「―」とした。
【0049】
<垂直入射吸音率>
垂直入射吸音率は、後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、厚み10mm、20mmにスライス(または重ね合わせ)し、打ち抜き刃で打ち抜き、直径15mmの円盤のビーズ発泡成形体を切り出し、日本音響エンジニアリング社製垂直入射吸音率測定システムWinZacMTX型により、周波数500~10000Hzにおける垂直入射吸音率を20℃において測定した。垂直入射吸音率は、(JIS A1405-2)に準拠して測定した。円盤状サンプルの裏側に直接剛体をおいた場合の垂直入射吸音率を測定し、縦軸が垂直入射吸音率、横軸が周波数(Hz)であるグラフを作成した(
図6)。そして、低周波数帯側から確認して最初のピーク(極大値)の周波数(ピーク周波数、Hz)とその吸音率(ピーク吸音率、ピーク強度)を算出し、結果を示した。
なお、本明細書におけるピーク周波数とは、任意の一つの厚みの試料(例えば、厚さ10mmの試料)におけるピーク周波数としてよい。
【0050】
<擦れ音>
擦れ音は、摩擦堅牢度試験機(大栄科学精器製作所製、RT-200)の摩擦子180gにポリプロピレン製のフィルムをセットした。後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、長さ220mm幅30mmに切り出し、摩擦堅牢度試験機にセットした。100回の往復摩擦を繰り返し、100回まで音が聞こえなかった場合を「〇」、少し鳴る場合を「△」、大きく鳴る場合を「×」とした。
【0051】
<垂直入射透過損失>
垂直入射透過損失は、後述の実施例に記載の方法で作製したダクトから、直径41.5mmの円盤を切り出し、直径42.0mmの音響管に接続し、日本音響エンジニアリング社製垂直入射遮音率測定システムWinZacMTX型を用い、周波数160~4000Hzにおける垂直入射透過損失を20℃において測定し(
図7)、1000Hz、2000Hzの透過損失を垂直入射透過損失(dB)として表1に記載した。
【0052】
<ブロア評価時のノイズ低減量>
図1に記載の方法で、後述の実施例の方法で作製したダクトに音源を接続し、遮音ボックスで覆った。音源はスピーカー(SONY製ブル―トゥーススピーカー、SRS-XB01WC)を用いた。遮音ボックスは、TRUSCO製Shizumareを5枚組み合わせて音源とブロアの中に囲い、遮音ボックスの境目は粘土で封止し、音漏れが無いようにした。遮音壁は一部を切りだし、ダクト出口部分を遮音壁の外側に出るようにダクトを設置し、境目は同じく粘土で封止して音漏れが無いようにした。スピーカーから音を出し、遮音壁の外側の集音器で音を録音し、周波数分析を行い、1000Hz~4000Hzまでのホワイトノイズを比較した。比較例1のPE系2mm厚の射出成形品の場合よりも5dB以上下がっている場合を「〇」、比較例2のPE系1mm厚の射出成形品の場合よりも5dB以上下がっている場合を「◎」とした。
【0053】
[実施例1]
ポリエチレン系樹脂として、サンテックLD(旭化成(株)製)を用いて、水懸濁系で架橋剤としてジクミルパーオキサイドを用いて架橋を行った。これを耐圧容器に収容し、容器内の気体を乾燥空気で置換した後、発泡剤として二酸化炭素(気体)を注入し、基材樹脂ペレットを発泡炉内で加圧水蒸気により発泡させた。得られた発泡ビーズを0.3MPa、室温条件下で3時間かけて二酸化炭素を含浸させた後、金型内に充填し、水蒸気孔を有する型内成形金型内に、クラッキング充填し、圧力(ゲージ圧)0.14MPaの加熱水蒸気を用いて加熱することによって、発泡ビーズを膨張させた。なお、クラッキング充填とは、発泡性粒子間に生じる空隙部の体積に相当する容量分だけ金型を開いた状態で発泡性粒子を充填し、充填後に正規の位置まで型閉めを行う充填方法を指す。金型を冷却し、生成物を金型内から取り出し、80℃に設定した乾燥室内で12時間放置することによって、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は40cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と反対2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0054】
[実施例2]
架橋剤量を変更した以外は実施例1と同様に半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は20cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と反対2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0055】
[実施例3]
架橋剤量を変更した以外は実施例1と同様に半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は10cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と反対2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0056】
[実施例4]
架橋剤量を変更した以外は実施例1と同様に半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は5cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と反対2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0057】
[実施例5]
ポリプロピレン系樹脂(エチレン-プロピレン-ブテン共重合体、ブテン成分含有量9.0質量%、エチレン成分含有量1.0質量%)を押出機内で200~230℃にて溶融混練した後、ストランド状に押出して水冷し、ペレタイザーで切断、乾燥してポリプロピレン系樹脂粒子を得た。上記ポリプロピレン系樹脂粒子1kgを、分散媒としての水3Lともに5Lの密閉容器内に仕込み、発泡剤として二酸化炭素を容器内圧力が3.7MPa(二酸化炭素圧力)となるように密閉容器内に添加し、攪拌下に140℃(発泡温度)まで加熱昇温して15分保持した後、容器内容物を大気圧下に放出して1次発泡ビーズを得た。得られた1次発泡ビーズを、耐圧容器に収容し、圧力0.3MPaの内圧を付与した後、水蒸気孔を有する型内成形金型内に、クラッキング充填し、加熱水蒸気を用いて加熱することによって、1次発泡ビーズを膨張させた。金型を冷却し、生成物を金型内から取り出し、40℃の乾燥室内で12時間放置することによって、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は40cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と半体2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0058】
[実施例6]
松原産業製、商品コード「MSMB02A」の発泡ポリスチレンを用いた。ビーズ発泡成形体の密度は0.013g/cm
3、倍率は77倍であった。このビーズ発泡成形体を切削加工により各面を切り出し、エアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0059】
[実施例7]
実施例4と同様にして得た発泡ビーズを0.3MPa、室温条件下で3時間かけて二酸化炭素を含浸させた後、金型内に充填し、水蒸気孔を有する型内成形金型内に、充填し、圧力(ゲージ圧)0.14MPaの加熱水蒸気を用いて加熱することによって、発泡ビーズを膨張させた。金型を冷却し、生成物を金型内から取り出し、80℃に設定した乾燥室内で12時間放置することによって、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は5.0cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と半体2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ10mmのダクトを作製した。
【0060】
[実施例8]
実施例4と同様にして得た発泡ビーズを0.3MPa、室温条件下で3時間かけて二酸化炭素を含浸させた後、金型内に充填し、水蒸気孔を有する型内成形金型内に、充填し、圧力(ゲージ圧)0.14MPaの加熱水蒸気を用いて加熱することによって、発泡ビーズを膨張させた。金型を冷却し、生成物を金型内から取り出し、80℃に設定した乾燥室内で12時間放置することによって、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は5.0cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と半体2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ5.0mmのダクトを作製した。
【0061】
[実施例9]
ポリアミド6樹脂(UBEナイロン「1022B」、宇部興産株式会社製)を、押出機を用いて溶融し、異形押し出しダイから吐出させたストランドをペレタイザーでペレタイズし、得られたペレットを10℃の圧力釜に投入し、4MPaの二酸化炭素を吹き込み3時間吸収させた。次いで二酸化炭素を含浸させたペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、1次発泡ビーズを得た。得られた1次発泡ビーズを再度圧力釜に入れ、10℃にて0.70MPaの二酸化炭素を22時間吸収させた。次いでこの二酸化炭素を含浸したポリアミド樹脂発泡粒子を、水蒸気孔を有する型内成形金型内に、クラッキング充填し、加熱水蒸気を用いて加熱することによって、1次発泡ビーズを膨張させた。金型を冷却し、生成物を金型内から取り出し、40℃の乾燥室内で24時間放置することによって、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は5.0cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と半体2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0062】
[実施例10]
株式会社イノアックコーポレーション製、「カームフレックスF-140」の発泡ポリウレタンを用いた。発泡ポリウレタンの密度は3.3cm
3/gであった。この発泡成形体をウォータージェット加工により各面を切り出し、エアー漏れが発生しないよう、両面テープにより接着し、
図5の形状の厚さ10mmのダクトを作製した。
【0063】
[比較例1]
株式会社扶桑ゴム産業製の「軟質ポリエチレン板(低密度ポリエチレン)」1mm厚を用いた。この成形体を用いて、切削加工により各面を切り出し、エアー漏れが発生しないよう、接着テープにより接着し、
図5の形状の厚さ2.0mmのダクトを作製した。
【0064】
[比較例2]
株式会社扶桑ゴム産業製の「軟質ポリエチレン板(低密度ポリエチレン)」2mm厚を用いた。この成形体を用いて、切削加工により各面を切り出し、エアー漏れが発生しないよう、接着テープにより接着し、
図5の形状の厚さ1.0mmのダクトを作製した。
【0065】
[比較例3]
ポリアミド系樹脂(UBEナイロン「1022B」、UBE株式会社製)を押出機内で240~270℃にて溶融混練した後、ストランド状に押出して水冷し、ペレタイザーで切断、乾燥してポリアミド系樹脂粒子を得た。上記ポリアミド系樹脂粒子1kgを、5Lの密閉容器内に仕込み、発泡剤として二酸化炭素を容器内圧力が4.0MPaとなるように密閉容器内に添加し、10℃(発泡温度)で3時間保持した後、炭酸ガス含浸ペレットを発泡装置に移し、240℃の空気を20秒間吹き込み、1次発泡ビーズを得た。得られた1次発泡ビーズを乾燥後、耐圧容器に収容し、圧力0.7MPaの内圧を付与した後、金型内に充填し、半体1成形体を得た。得られた成形体の型内成形体倍率は5.0cm
3/gであった。同様の手法で半体2成形体を作製し、半体1成形体と半体2成形体をエアー漏れが発生しないよう、熱溶着により接着し、
図5の形状の厚さ14mmのダクトを作製した。
【0066】
成形した各部材について、成形品の厚み、密度、面密度、独立気泡率、独立気泡の膜厚み、引張伸び、熱伝導率、結露率、液だれ、垂直入射吸音率、擦れ音、垂直入射透過損失を測定した。
【0067】