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特開2024-72154作業機械、作業機械のコントローラ、および作業機械の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072154
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械のコントローラ、および作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/22 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
E02F9/22 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182855
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡宗 悠紀
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA03
2D003AB01
2D003BA01
2D003BA02
2D003CA02
2D003DA02
2D003DA04
2D003DB01
2D003DB03
2D003FA02
(57)【要約】
【課題】全輪駆動から後輪駆動に切り替える際のショックを低減する。
【解決手段】作業機械は、前輪と、前輪を回転駆動させる前輪駆動装置と、後輪と、後輪を回転駆動させる後輪駆動装置と、前輪と前輪駆動装置とを選択的に連結するクラッチと、前輪駆動装置およびクラッチを制御するコントローラとを備えている。コントローラは、後輪駆動装置による後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けると、前輪駆動装置から前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始する。コントローラは、回転駆動力が判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、クラッチを解放する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪と、
前記前輪を回転駆動させる前輪駆動装置と、
後輪と、
前記後輪を回転駆動させる後輪駆動装置と、
前記前輪と前記前輪駆動装置とを選択的に連結するクラッチと、
前記前輪駆動装置および前記クラッチを制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記後輪駆動装置による前記後輪の回転駆動を維持し前記前輪駆動装置による前記前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けると、前記前輪駆動装置から前記前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始し、前記回転駆動力が判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、前記回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、前記クラッチを解放する、作業機械。
【請求項2】
前記前輪駆動装置は、作動油の供給を受けて回転する油圧モータを含み、
前記コントローラは、前記前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けると、前記油圧モータに供給される前記作動油の圧力の減少を開始する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記コントローラは、前記作動油の圧力が所定値よりも小さくなったと判断されると、前記クラッチを解放する、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過しておらず、かつ前記回転駆動力が前記判定値以上である間、前記クラッチの係合を維持する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
後輪駆動装置による作業機械の後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による前記作業機械の前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けて、前記前輪駆動装置から前記前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始し、
前記回転駆動力が判定値よりも小さいか否かを判断し、
前記回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したか否かを判断し、
前記回転駆動力が前記判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、前記回転駆動力の減少を開始してから前記一定時間が経過したと判断されると、前記前輪と前記前輪駆動装置との間のクラッチを解放する、作業機械のコントローラ。
【請求項6】
後輪駆動装置による作業機械の後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による前記作業機械の前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けることと、
前記前輪駆動装置から前記前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始することと、
前記回転駆動力が判定値よりも小さいか否かを判断することと、
前記回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したか否かを判断することと、
前記回転駆動力が前記判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、前記回転駆動力の減少を開始してから前記一定時間が経過したと判断されると、前記前輪と前記前輪駆動装置との間のクラッチを解放することと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械、作業機械のコントローラ、および作業機械の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
モータグレーダなどの作業機械に、前後輪の全てを駆動する全輪駆動装置を設けることがある。米国特許第6644429号明細書(特許文献1)には、前輪を駆動する油圧モータと前輪との間にクラッチを配置し、クラッチを解放して後輪駆動状態にし、クラッチを係合させて全輪駆動状態にする、モータグレーダが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6644429号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
全輪駆動式の作業機械において、走行モードを全輪駆動から後輪駆動に切り替える際に、ショックが発生することがある。
【0005】
本開示では、全輪駆動から後輪駆動に切り替える際のショックを低減できる、作業機械、作業機械のコントローラ、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、前輪と、前輪を回転駆動させる前輪駆動装置と、後輪と、後輪を回転駆動させる後輪駆動装置と、前輪と前輪駆動装置とを選択的に連結するクラッチと、前輪駆動装置およびクラッチを制御するコントローラとを備える、作業機械が提案される。コントローラは、後輪駆動装置による後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けると、前輪駆動装置から前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始する。コントローラは、回転駆動力が判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、クラッチを解放する。
【0007】
本開示のある局面に従うと、作業機械のコントローラが提案される。コントローラは、後輪駆動装置による作業機械の後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による作業機械の前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けて、前輪駆動装置から前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始する。コントローラは、回転駆動力が判定値よりも小さいか否かを判断する。コントローラは、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したか否かを判断する。コントローラは、回転駆動力が判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、前輪と前輪駆動装置との間のクラッチを解放する。
【0008】
本開示のある局面に従うと、作業機械の制御方法が提案される。制御方法は、以下のステップを備えている。第1のステップは、後輪駆動装置による作業機械の後輪の回転駆動を維持し前輪駆動装置による作業機械の前輪の回転駆動を停止させる指令の入力を受けることである。第2のステップは、前輪駆動装置から前輪に伝達される回転駆動力の減少を開始することである。第3のステップは、回転駆動力が判定値よりも小さいか否かを判断することである。第4のステップは、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したか否かを判断することである。第5のステップは、回転駆動力が判定値よりも小さくなったと判断されるか、または、回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、前輪と前輪駆動装置との間のクラッチを解放することである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の作業機械、作業機械のコントローラ、および作業機械の制御方法によると、全輪駆動から後輪駆動に切り替える際のショックを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態におけるモータグレーダの構成を概略的に示す側面図である。
図2図1に示すモータグレーダの概略構成を示す構成図である。
図3】クラッチ作動圧を供給する回路の構成を示す図である。
図4】コントローラの機能構成を説明するブロック図である。
図5】実施形態におけるモータグレーダの走行制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態について図に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。実施形態から任意の構成が抽出され、それらが任意に組み合わされることも、当初から予定されている。
【0012】
実施形態においては、作業機械の一例としてモータグレーダ1について説明する。図1は、実施形態におけるモータグレーダ1の構成を概略的に示す側面図である。
【0013】
図1に示されるように、実施形態のモータグレーダ1は、全6輪の車両である。モータグレーダ1は、左右一対の前輪と、片側2輪ずつの後輪とからなる走行輪を備えている。前輪は、左前輪2と、図1には図示しない右前輪とを有している。後輪は、左後前輪4と、左後後輪5と、図示しない右後前輪および右後後輪とを有している。前輪および後輪の数および配置は、図1に示される例に限られるものではない。
【0014】
モータグレーダ1は、ブレード50を含む作業機を備えている。ブレード50は、前輪と後輪との間に設けられている。モータグレーダ1は、ブレード50で、地面の整地作業、除雪作業、軽切削などの作業を行なうことができる。
【0015】
モータグレーダ1は、車体フレームを備えている。車体フレームは、フロントフレーム51と、リアフレーム52とを有している。フロントフレーム51は、リアフレーム52に、回動可能に連結されている。
【0016】
前輪は、ブレード50と共に、フロントフレーム51に設けられている。前輪は、フロントフレーム51の前端部に、回転可能に取り付けられている。後輪は、リアフレーム52に設けられている。後輪は、リアフレーム52に、後述するようにエンジンからの駆動力によって回転駆動可能に取り付けられている。
【0017】
図2は、図1に示すモータグレーダ1の概略構成を示す構成図である。上述した左右一対の前輪は、左前輪2と、右前輪3とを有している。モータグレーダ1は、エンジン6を備えている。エンジン6は、図1に示されるリアフレーム52に支持されている。エンジン6は、前輪および後輪を回転駆動させる駆動力を発生する駆動源であり、たとえばディーゼルエンジンである。
【0018】
エンジン6の出力側には、トルクコンバータ8、変速機9、終減速装置10およびタンデム装置11を介して、左後輪4,5と、左後輪4,5と一対の右後輪(図示は省略する)と、が接続されている。トルクコンバータ8は、オイルを媒体としてエンジン6からの駆動力を伝達する流体クラッチである。変速機9は、機械式変速機である。変速機9は、複数の速度段に対応した複数のクラッチを有している。各クラッチの連結状態および非連結状態を切り替えることにより、変速機9は速度段を複数段階に切り替える。エンジン6は、トルクコンバータ8、変速機9、終減速装置10およびタンデム装置11を介して、左後輪4,5と右後輪とを駆動する。
【0019】
トルクコンバータ8、変速機9、終減速装置10およびタンデム装置11は、エンジン6の発生する駆動力を後輪に伝達する、後輪動力伝達装置を構成している。終減速装置10は、後輪を回転駆動させる後輪駆動装置の一例に対応する。
【0020】
変速機9に、左右一対の油圧システム7L,7Rが接続されている。油圧システム7Lは、左前輪2を駆動する。油圧システム7Rは、右前輪3を駆動する。エンジン6は、トルクコンバータ8、変速機9、油圧システム7L,7Rを介して、左前輪2と右前輪3とを駆動する。油圧システム7L,7Rは、機械式の変速機9を介さずに、エンジン6の他方の出力側に接続されていてもよい。左右の油圧システム7L,7Rは、それぞれ、HST(Hydraulic Static Transmission)を構成している。
【0021】
モータグレーダ1は、前輪2,3と左後輪4,5および右後輪との全てを動力発生用および伝達用の各装置6~11で共に駆動することが可能な、全輪駆動車両である。当該装置6~11は、全輪駆動装置12を構成している。全輪駆動装置12のうち、エンジン6、油圧システム7L,7Rの一部、トルクコンバータ8、変速機9および終減速装置10は、リアフレーム52に支持されている。
【0022】
油圧システム7Lは、左油圧ポンプ15と、左油圧モータ16とを備えている。油圧システム7Rは、右油圧ポンプ17と、右油圧モータ18とを備えている。エンジン6の出力がPTO(Power Take-Off)14を介して左油圧ポンプ15および右油圧ポンプ17へ伝達されて、左油圧ポンプ15および右油圧ポンプ17が駆動される。左油圧モータ16は、左油圧ポンプ15から吐出する作動油で回転されて、左前輪2を駆動する。右油圧モータ18は、右油圧ポンプ17から吐出する作動油で回転されて、右前輪3を駆動する。
【0023】
油圧ポンプ15,17は、可変容量型油圧ポンプである。油圧ポンプ15,17は、可変斜板を有する斜板式油圧ポンプであってもよい。左油圧ポンプ15の可変斜板の角度は、後述するコントローラから出力される制御指令値に従って、斜板駆動部15Aにより無段階で連続的に制御される。右油圧ポンプ17の可変斜板の角度は、後述するコントローラから出力される制御指令値に従って、斜板駆動部17Aにより無段階で連続的に、左油圧ポンプ15の可変斜板とは独立して制御される。斜板駆動部15A,17Aは、たとえばソレノイドである。
【0024】
油圧モータ16,18は、可変容量形のモータであってもよい。油圧モータ16,18は、斜軸式アキシャル形のモータであってもよい。油圧モータ16,18の容量は、オペレータが選択した速度段によって、一定の値となる。油圧モータ16,18は、固定容量形のモータであってもよい。
【0025】
左油圧ポンプ15と、左油圧モータ16とは、左油圧回路21により接続されている。左油圧ポンプ15から吐出する作動油は、左油圧回路21を経由して、左油圧モータ16に供給される。左前輪2が駆動されるときの左前輪2の回転速度は、左油圧ポンプ15から吐出する作動油によって、制御されている。左油圧回路21には、左油圧回路21内の作動油の圧力を検出する圧力センサ27L,28Lが設けられている。圧力センサ27L,28Lは、左油圧回路21内の油圧を示す信号を出力する。
【0026】
右油圧ポンプ17と、右油圧モータ18とは、右油圧回路22により接続されている。右油圧ポンプ17から吐出する作動油は、右油圧回路22を経由して、右油圧モータ18に供給される。右前輪3が駆動されるときの右前輪3の回転速度は、右油圧ポンプ17から吐出する作動油によって、制御されている。右油圧回路22には、右油圧回路22内の作動油の圧力を検出する圧力センサ27R,28Rが設けられている。圧力センサ27R,28Rは、右油圧回路22内の油圧を示す信号を出力する。
【0027】
エンジン6からの駆動力を前輪2,3へ伝達するための動力伝達装置は、エンジン6で油圧ポンプ15,17を駆動することにより作動油に圧力を発生させ、油圧ポンプ15,17から吐出した圧油によって油圧モータ16,18が駆動されることで回転力が再び発生する。すなわち、前述した通り、左右の油圧システム7L,7Rは、それぞれ、HSTを構成している。
【0028】
圧力センサ27L,27Rは、モータグレーダ1の前進走行時に油圧ポンプから油圧モータへ作動油が流れる油路に設けられている。圧力センサ27L,27Rは、モータグレーダ1の前進走行時に油圧ポンプから吐出される高圧の作動油の圧力を検出する。圧力センサ28L,28Rは、モータグレーダ1の後進走行時に油圧ポンプから油圧モータへ作動油が流れる油路に設けられている。圧力センサ28L,28Rは、モータグレーダ1の後進走行時に油圧ポンプから吐出される高圧の作動油の圧力を検出する。
【0029】
左油圧式クラッチ機構23と左減速機25とが、左前輪2と左油圧モータ16との間に設けられている。右油圧式クラッチ機構24と右減速機26とが、右前輪3と右油圧モータ18との間に設けられている。左油圧式クラッチ機構23および右油圧式クラッチ機構24に油圧が供給されることにより、左前輪2と右前輪3とに動力が伝達されて、モータグレーダ1は全輪駆動となる。左油圧式クラッチ機構23および右油圧式クラッチ機構24への油圧の供給が遮断されると、モータグレーダ1は、全輪駆動が解除されて後輪駆動となる。
【0030】
トルクコンバータ8、変速機9、PTO14、油圧システム7L,7R、クラッチ機構23,24および減速機25,26は、エンジン6の発生する駆動力を前輪に伝達する、前輪動力伝達装置を構成している。油圧モータ16,18は、前輪を回転駆動させる前輪駆動装置の一例に対応する。油圧ポンプ15,17から油圧モータ16,18に供給される作動油の供給量(油圧ポンプの吐出量)を上げることで、前輪の回転速度を増加できる。油圧ポンプ15,17から油圧モータ16,18に供給される作動油の供給量を下げることで、前輪の回転速度を減少できる。
【0031】
速度センサ31は、変速機9の出力軸に設けられている。速度センサ31は、変速機9の出力軸の回転速度を測定することにより、モータグレーダ1の移動時(走行時)の後輪の回転速度を検出する。速度センサ31は、後輪の回転速度を示す信号を出力する。
【0032】
図3は、クラッチ作動圧を供給する回路の構成を示す図である。実施形態のモータグレーダ1は、クラッチ作動圧を供給するクラッチ制御回路を、前輪2,3に回転駆動力を伝達するHSTとは別に有する、外部圧式のクラッチを有している。図3には、左右の油圧回路およびクラッチのうち、左油圧回路21および左油圧式クラッチ機構23が、代表的に図示されている。図3にはまた、左油圧式クラッチ機構23の係合状態と解放状態とを切り替えるチャージ回路40が、代表的に図示されている。油圧式クラッチ機構23,24を、以下では単にクラッチ23,24とも称する。
【0033】
左油圧式クラッチ機構23は、湿式多板式のクラッチである。図3に示されるクラッチ板23A,23Bは、左油圧式クラッチ機構23に含まれる複数枚の板のうちの隣り合う2枚の板を、代表的に示すものである。クラッチ板23Aとクラッチ板23Bとは、互いに向き合って配置されている。
【0034】
左前輪回転軸29Aは、左油圧モータ16の出力軸と一体的に回転可能に、左油圧モータ16に接続されている。左前輪回転軸29Bは、左前輪2と一体的に回転可能に、左前輪2に接続されている。左前輪回転軸29Aと左前輪回転軸29Bとの間に、クラッチ板23A,23Bが配置されている。
【0035】
クラッチ板23Aとクラッチ板23Bとが接触して一体的に回転する状態が、クラッチ23の係合状態である。クラッチ板23Aとクラッチ板23Bとが離れて配置され、クラッチ板23Aとクラッチ板23Bとの間に隙間が形成され、クラッチ板23Aが回転してもクラッチ板23Aの回転がクラッチ板23Bには伝達されない状態が、クラッチ23の解放状態である。
【0036】
回転センサ32は、左前輪回転軸29Aに設けられており、左前輪回転軸29Aの回転速度を検出する。回転センサ32は、左前輪回転軸29Aの回転速度を示す信号を出力する。回転センサ33は、左前輪回転軸29Bに設けられており、左前輪回転軸29Bの回転速度を検出する。回転センサ33は、左前輪回転軸29Bの回転速度を示す信号を出力する。
【0037】
ピストンロッド45は、クラッチ板23Aをクラッチ板23Bに向けて押圧して、クラッチ23を係合状態にする。クラッチシリンダ44は、筒状の形状を有しており、内部にピストンを収容している。ピストンロッド45は、クラッチシリンダ44の内部と外部とに亘って延びている。ピストンロッド45の基端は、クラッチシリンダ44内に配置されており、ピストンに取り付けられている。ピストンロッド45の先端は、クラッチシリンダ44の外部に配置されている。ピストンロッド45は、筒状のクラッチシリンダ44の軸方向(図3においては、図中の上下方向)に、クラッチシリンダ44に対して往復移動可能に構成されており、ピストンロッド45がクラッチシリンダ44から突き出る長さを変更可能である。クラッチシリンダ44の内部には、戻しばね46が配置されている。
【0038】
クラッチシリンダ44の内部の油室に、チャージ油路42を介して圧油が供給されると、圧油がピストンに作用して、ピストンロッド45はクラッチシリンダ44から押し出される向きに移動する。ピストンロッド45がクラッチ板23Aを、クラッチ板23Aをクラッチ板23Bに近づける向きに押圧する。これにより、クラッチ板23Aがクラッチ板23Bに接触して、クラッチ23が係合状態になる。
【0039】
クラッチシリンダ44の内部の油室への圧油の供給が停止されると、戻しばね46が、ピストンロッド45をクラッチシリンダ44の内部に引き込む付勢力を作用する。ピストンロッド45とクラッチ板23Aとが、クラッチ板23Aがクラッチ板23Bから離隔する方向に移動する。これにより、クラッチ板23Aとクラッチ板23Bとは非接触となり、クラッチ23が解放状態になる。
【0040】
チャージポンプ41は、左油圧回路21とは別の構成として設けられている。チャージポンプ41は、チャージ油路42に圧油を供給する。チャージポンプ41は、チャージ油路42を経由させて、クラッチシリンダ44に圧油を供給する。チャージ油路42に、クラッチ制御弁43が設けられている。クラッチ制御弁43は、たとえばソレノイドバルブである。クラッチ制御弁43が非通電状態で、クラッチシリンダ44の内部の油室への圧油の供給は停止しており、クラッチ23は解放されている。クラッチ制御弁43が通電状態に切り替えられることにより、クラッチシリンダ44の内部の油室へ圧油が供給されて、クラッチ23が係合状態になる。
【0041】
図3を参照して左油圧式クラッチ機構23の係合状態と解放状態とを切り換えるチャージ回路40について説明したが、右油圧式クラッチ機構24(図2)の係合状態と解放状態とを切り換えるチャージ回路(不図示)もまた、右油圧回路22とは別に設けられており、左油圧式クラッチ機構23用のチャージ回路40と同様の構成を有している。チャージポンプ41は、左右のチャージ回路に共通である。チャージポンプ41は1つで、チャージ圧をクラッチに供給するクラッチ制御弁は、左右のチャージ回路がそれぞれ有している。
【0042】
図4は、コントローラ60の機能構成を説明するブロック図である。モータグレーダ1は、コントローラ60を備えている。コントローラ60は、図示しないCPU(中央処理装置)により各種のプログラムを読み出して実行し、各種演算処理を行う。
【0043】
走行モード切替スイッチ80は、オペレータによって操作される。オペレータによる走行モード切替スイッチ80の操作量は、電気信号に変換されて、コントローラ60に入力される。
【0044】
走行モードは、全輪駆動走行モードと、後輪駆動走行モードとを含んでいる。全輪駆動走行モードの状態では、前輪2,3に動力が伝達され、かつ、左右の後輪に動力が伝達され、6輪全ての走行輪を駆動輪としてモータグレーダ1が走行する。後輪駆動走行モードの状態では、前輪2,3への動力の伝達が遮断され、左右の後輪には動力が伝達され、左右の後輪4輪を駆動輪としてモータグレーダ1が走行する。
【0045】
オペレータが走行モード切替スイッチ80を手動で操作することにより、オペレータが選択した走行モードが、コントローラ60の走行モード入力部61に入力される。走行モード入力部61は、オペレータの操作による走行モードの入力を受け付ける。
【0046】
図2に示される、左油圧回路21に設けられる圧力センサ27Lと、右油圧回路22に設けられる圧力センサ27Rとを、圧力センサ27と総称する。左油圧回路21に設けられる圧力センサ28Lと、右油圧回路22に設けられる圧力センサ28Rとを、圧力センサ28と総称する。圧力センサ27,28から、油圧回路内の作動油の圧力の検出結果が、コントローラ60の圧力検出値入力部63に入力される。
【0047】
コントローラ60は、メモリ72を有している。メモリ72には、モータグレーダ1の動作を制御するためのプログラム、およびそのプログラムの実行に必要な各種データが記憶されている。メモリ72にはまた、作業実行にともなって発生するワーキングデータが一時的に記憶される。コントローラ60は、タイマ73を有している。タイマ73は、時刻を計時する。
【0048】
図5は、実施形態におけるモータグレーダ1の走行制御の処理の流れを示すフローチャートである。以下、コントローラ60がモータグレーダ1の走行モードを全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードへ切り替えるときに実行される処理について、図4図5を適宜参照して、説明する。
【0049】
図5に示されるように、ステップS1において、コントローラ60は、オペレータが走行モードを切り替えたことの入力を受ける。より詳細には、図5のステップS1において、走行モード入力部61は、走行モード切替スイッチ80から、走行モードを全輪駆動(AWD)走行モードから後輪駆動(RWD)走行モードへ切り替えるように、オペレータが走行モード切替スイッチ80を操作したことの入力を受ける。走行モード入力部61は、後輪駆動装置による後輪の回転駆動を維持する一方、前輪駆動装置による前輪2,3の回転駆動を停止させる指令の入力を受ける。
【0050】
ステップS2において、コントローラ60は、油圧ポンプ15,17の容量を制御する。油圧ポンプ15,17は可変容量形油圧ポンプであり、ポンプ容量指令部71は、油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の流量を減少させる。ポンプ容量指令部71は、油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の流量を、一気にゼロにまで下げるのではなく、時間をかけて徐々に下げる制御をする。
【0051】
具体的に、ポンプ容量指令部71は、油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の現在の流量よりも小さくゼロよりも大きい、作動油の流量を設定する。ポンプ容量指令部71は、作動油の流量を、時間が経過するに従って減少するように、設定する。ポンプ容量指令部71は、作動油の流量を段階的に減少させてもよい。ポンプ容量指令部71は、作動油の流量を漸次的に減少させてもよく、作動油の流量が時間に対して比例するように減少させてもよい。
【0052】
ポンプ容量指令部71は、油圧ポンプ15,17から油圧モータ16,18へその流量の作動油が供給されるように、各油圧ポンプ15,17の斜板駆動部15A,17Aへ制御信号を送信する。エンジン6の回転数が同じでも、各油圧ポンプ15,17の斜板を制御することで、油圧ポンプ15,17から吐出される作動油の流量を変更できる。このように油圧ポンプ15,17の制御が行われる。
【0053】
全輪駆動走行モードでは、クラッチ23,24は、係合状態にある。油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の流量を減少させる制御が開始される時点では、クラッチ23,24は、係合状態に維持されている。油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の流量を減少させる制御が開始される時点では、クラッチ制御弁43に対して、クラッチ23,24を解放状態にする指令は出力されない。
【0054】
ステップS3において、コントローラ60は、推定前輪駆動力が判定値よりも小さいか否かを判断する。
【0055】
推定前輪駆動力は、左前輪2に付与される回転駆動力の推定値(本明細書中では「推定前輪駆動力(左)」と称する)と、右前輪3に付与される回転駆動力の推定値(本明細書中では「推定前輪駆動力(右)」と称する)と、の和によって求められる。すなわち、以下の式(1)により、推定前輪駆動力が求められる。
【0056】
【数1】
【0057】
推定前輪駆動力(左)と推定前輪駆動力(右)とを総称して、推定前輪駆動力(左/右)とする。推定前輪駆動力(左/右)は、以下の式(2)により求められる。
【0058】
【数2】
【0059】
式(2)における、HST回路圧は、圧力センサ27,28により検出され圧力検出値入力部63に入力される、油圧回路内の作動油の圧力である。モータ容量は、油圧モータ16,18の容量である。減速比は、減速機25,26の減速比である。効率は、油圧モータ16,18の効率と減速機25,26の効率とを考慮した係数である。タイヤ負荷半径は、前輪2,3が実際に移動した距離から求められる前輪2,3の有効半径である。減速比、効率、およびタイヤ負荷半径は、メモリ72に記憶されている。
【0060】
判定値は、走行抵抗に係数を乗じることにより求められる。すなわち、以下の式(3)により、判定値が求められる。
【0061】
【数3】
【0062】
式(3)における走行抵抗は、前輪2,3に作用するモータグレーダ1の重量(機械重量)と、前輪2,3の転がり抵抗係数とにより、以下の式(4)で求められる。
【0063】
【数4】
【0064】
式(3)における係数は、モータグレーダ1が走行中にクラッチ23,24を解放状態にしても発生するショックを十分に小さくできる値に設定される。係数は、0よりも大きく1よりも小さい値に設定される。係数は、0.5以下の値に設定されてもよい。たとえば係数は、0.3に設定されてもよい。係数は、0.2に設定されてもよい。
【0065】
図4に示される前輪駆動力判定部64は、圧力検出値入力部63に入力されるHST回路圧と、油圧モータ16,18の容量と、メモリ72から読み出される減速比、効率およびタイヤ負荷負荷半径とを、式(1)および式(2)に適用する。これにより、前輪駆動力判定部64は、推定前輪駆動力を算出する。前輪駆動力判定部64はまた、式(3)および式(4)に基づいて、判定値を算出する。
【0066】
前輪駆動力判定部64は、算出した推定前輪駆動力と、算出した判定値とを比較する。推定前輪駆動力が判定値以上であると判断された場合(ステップS3においてNO)、ステップS4において、コントローラ60は、油圧ポンプ15,17が吐出する作動油の流量を減少させる制御が開始されてから、一定時間が経過したか否かを判断する。時間判定部66は、タイマ73から現在時刻を読み出す。時間判定部66は、ステップS2の処理でポンプ容量指令部71が斜板駆動部15A,17Aへの制御信号の送信を開始した時刻から、現在時刻までの、経過時間を算出する。
【0067】
時間判定部66は、その経過時間が、予め定められた時間の閾値に到達したか否かを判断する。時間判定部66は、メモリ72に記憶されている時間の閾値(図5に示される「一定時間」)をメモリ72から読み出す。時間判定部66は、算出した経過時間と、メモリ72から読み出した一体時間とを比較する。時間判定部66は、経過時間と一定時間とを比較した結果、現時点での経過時間が一定時間よりも小さい場合、作動油の流量を減少させる制御が開始されてから一定時間が未だ経過していないと判断する。
【0068】
作動油の流量を減少させる制御が開始されてから一定時間が未だ経過していないと判断された場合(ステップS4においてNO)、ステップS6において、クラッチ23,24を係合状態に維持する。クラッチ指令部70は、クラッチシリンダ44への圧油の供給を続けて、クラッチ板23Aをクラッチ板23Bに押し付けた状態を維持するように、クラッチ制御弁43へ制御信号を送信する。これにより、クラッチ23,24が係合状態に維持される。そして、ステップS3の判断に戻る。
【0069】
ステップS3の判断において、推定前輪駆動力が判定値より小さいと判断された場合(ステップS3においてYES)、または、ステップS4の判断において、作動油の流量を減少させる制御が開始されてから一定時間が経過したと判断された場合(ステップS4においてYES)、クラッチ解放指令が出力される。
【0070】
ステップS7において、クラッチ23,24を解放状態にする処理が行われる。クラッチ指令部70は、クラッチシリンダ44への圧油の供給を停止して、クラッチ板23Aをクラッチ板23Bから離隔させるように、クラッチ制御弁43へ制御信号を送信する。これにより、クラッチ23,24が解放状態にされ、モータグレーダ1が後輪走行状態に切り替えられる。このようにして、モータグレーダ1の走行モードの、全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードへの切り替えが完了する(図5の「END」)。
【0071】
なお、図5に示されるフローとは別に、クラッチ解放条件が成立すると、クラッチ23,24が解放状態にされる。図4に示されるクラッチ解放条件判定部67が、クラッチ解放条件が成立しているか否かを判断する。
【0072】
クラッチ解放条件判定部67は、たとえば、図示しないエンジン回転数センサから、エンジン6の回転状態の入力を受けてもよい。クラッチ解放条件判定部67は、エンジン6の回転数が閾値よりも小さいときに、クラッチ解放条件が成立したと判定してもよい。
【0073】
クラッチ解放条件判定部67は、たとえば、図示しない圧力センサから、チャージ油路42内の作動油の圧力の入力を受けてもよい。クラッチ解放条件判定部67は、チャージ油路42内の作動油の圧力が閾値よりも小さいときに、クラッチ解放条件が成立したと判定してもよい。
【0074】
クラッチ解放条件判定部67は、たとえば、モータグレーダ1の走行のために操作される走行操作装置の操作量を検出する走行操作検出部(不図示)から、モータグレーダ1の進行方向の入力を受けてもよい。クラッチ解放条件判定部67は、モータグレーダ1の前進走行と後進走行とを切り替える走行操作装置の操作がされたときに、クラッチ解放条件が成立したと判定してもよい。
【0075】
以上説明したように本実施形態においては、図4,5に示されるように、コントローラ60(走行モード入力部61)は、モータグレーダ1の走行モードを全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードへと切り替える指令の入力を受ける。コントローラ60(ポンプ容量指令部71)は、油圧モータ16,18に供給される作動油の流量を減少させる。作動油の流量が低下することで、油圧回路内の作動油の圧力が徐々に低下する。油圧モータ16,18は前輪2,3を回転駆動させる前輪駆動装置であり、油圧モータ16,18に供給される作動油の圧力は、前輪2,3に伝達される回転駆動力の一例に対応する。
【0076】
図4,5に示されるように、コントローラ60(前輪駆動力判定部64)が、推定前輪駆動力が判定値よりも小さくなったと判断するか、または、コントローラ60(時間判定部66)が、前輪2,3に伝達される回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断すると、コントローラ60(クラッチ指令部70)は、クラッチ23,24を解放する。
【0077】
推定前輪駆動力が判定値以上の状態では、モータグレーダ1の走行抵抗に対して前輪2,3の駆動力が負担する割合が大きいと考えられる。前輪駆動力が走行抵抗よりも大きい状態でクラッチ23,24を即時に解放して前輪2,3に対して駆動力を突然に付与しなくすると、その解放の時点から後輪の駆動力による走行が開始される。モータグレーダ1の走行抵抗が後輪の回転駆動力よりも大きいと、ショックが発生することがある。後輪の速度に対する前輪2,3の速度の比である速度比が大きい(たとえば、速度比>1)ときに、ショックが発生しやすい。
【0078】
走行モードの切替操作後、一定時間はクラッチ23,24を係合状態に維持したまま、油圧ポンプ15,17から吐出される作動油の流量を減少させる。クラッチ23,24を解放する前に、油圧モータ16,18に供給される作動油の圧力を減少させることで、前輪2,3に伝達される回転駆動力が低下する。クラッチ23,24を係合状態から解放状態に切り替えてもショックが発生しない程度に、モータグレーダ1の走行抵抗に対して後輪の駆動力が負担する割合が増大したと判断されてから、クラッチ23,24を解放する。このように全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードに切り替えることで、走行モードを切り替える際のショックを低減することができる。
【0079】
前輪2,3に伝達される回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過したと判断されると、推定前輪駆動力が依然として判定値以上であっても、クラッチ23,24を解放する。オペレータが走行モードを全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードに切り替える操作をしてから、長時間全輪駆動走行モードのままにされると、操作に対する応答性が損なわれることで、オペレータが不快感を抱くことがある。オペレータによる指令を受け付けてから一定時間が経過すると、多少のショックが発生してもクラッチ23,24を解放する。長時間クラッチ23,24を係合状態のままにせず、オペレータの操作に対する応答性を向上させることで、オペレータの不快感を解消することができる。
【0080】
推定前輪駆動力(左/右)は、油圧モータ16,18に供給される作動油の圧力に比例する。コントローラ60(前輪駆動力判定部64)が、推定前輪駆動力が判定値よりも小さくなったと判断するとき、油圧モータ16,18に供給される作動油の圧力が所定値よりも小さくなっている。油圧モータ16,18に供給される作動油の圧力が所定値よりも小さくなったことを判断して、クラッチ23,24を解放することで、クラッチ23,24を解放する際にショックが発生する可能性を軽減することができる。
【0081】
図4,5に示されるように、前輪2,3の回転駆動力の減少を開始してから一定時間が経過しておらず、かつ前輪2,3の回転駆動力が判定値以上である間、クラッチ23,24の係合を維持する。モータグレーダ1の走行モードを全輪駆動走行モードから後輪駆動走行モードへと切り替える指令の入力を受けても、クラッチ23,24を突然に解放することはせず、前輪2,3に伝達される回転駆動力を低下させてから、クラッチ23,24を解放する。これにより、クラッチ23,24を解放する際にショックが発生する可能性を確実に軽減することができる。
【0082】
上記の実施形態では、前輪2,3にはHSTによって動力が伝達され、一方、後輪には変速機9を経由して機械的な動力伝達が行われる。この例に限られず、後輪が後輪駆動装置によって回転駆動され、前輪が前輪駆動装置によって後輪とは独立して回転駆動されるのであれば、動力伝達装置は任意に選択され得る。たとえば、油圧システム7L,7Rとは別のHSTを介して、後輪に動力が伝達されてもよい。前輪2,3を回転駆動させる前輪駆動装置は、油圧モータ16,18に限られず、たとえば電動モータであってもよい。
【0083】
上記の実施形態で説明した、モータグレーダ1の走行モードを切り替える処理を実行するコントローラは、必ずしもモータグレーダ1に搭載されていなくてもよい。モータグレーダ1に搭載されたコントローラ60が、圧力センサ27,28の検出値を外部のコントローラへ送信する処理を行い、信号を受信した外部のコントローラが走行モードを切り替えるシステムを構成してもよい。外部のコントローラは、モータグレーダ1の作業現場に配置されてもよく、モータグレーダ1の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。
【0084】
上記の実施形態では、作業機械の一例としてモータグレーダ1を挙げているが、モータグレーダ1に限らず、他の種類の作業機械にも適用可能である。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0086】
1 モータグレーダ、2 左前輪、3 右前輪、4 左後前輪、5 左後後輪、6 エンジン、7L,7R 油圧システム、8 トルクコンバータ、9 変速機、10 終減速装置、11 タンデム装置、12 全輪駆動装置、15 左油圧ポンプ、15A,17A 斜板駆動部、16 左油圧モータ、17 右油圧ポンプ、18 右油圧モータ、21 左油圧回路、22 右油圧回路、23 左油圧式クラッチ機構、23A,23B クラッチ板、24 右油圧式クラッチ機構、25 左減速機、26 右減速機、27,28 圧力センサ、29A,29B 左前輪回転軸、31 速度センサ、32,33 回転センサ、40 チャージ回路、41 チャージポンプ、42 チャージ油路、43 クラッチ制御弁、44 クラッチシリンダ、45 ピストンロッド、46 戻しばね、50 ブレード、51 フロントフレーム、52 リアフレーム、60 コントローラ、61 走行モード入力部、63 圧力検出値入力部、64 前輪駆動力判定部、66 時間判定部、67 クラッチ解放条件判定部、70 クラッチ指令部、71 ポンプ容量指令部、72 メモリ、73 タイマ、80 走行モード切替スイッチ。
図1
図2
図3
図4
図5