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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072155
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】トルクセンサおよびロボット
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/14 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G01L3/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182857
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000191009
【氏名又は名称】新東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田名網 克周
(72)【発明者】
【氏名】林 美由希
(57)【要約】
【課題】小型化を実現するとともに分解能の設計の自由度の高いトルクセンサを実現する。
【解決手段】トルクセンサは、板状のスペーサを含む第一の板状部材と、それに締結された第二の板状部材(20)とを有している。第二の板状部材(20)におけるスペーサ外の外周領域(90)には、スペーサの外縁に形成された凹部内に配置された膜状歪ゲージ(51)とそれに接続された膜状配線(52)が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の板状部材と、
前記第一の板状部材に対向する第二の板状部材と、
前記第一の板状部材と一体化され、かつ、前記第二の板状部材と締結されている板状のスペーサと、を備え、
前記スペーサの外縁には、凹部が形成されており、
前記第二の板状部材の前記第一の板状部材に対向する主面のうち、前記スペーサからはみ出した外周領域に、前記凹部内に配置された膜状歪ゲージと、前記膜状歪ゲージに接続された膜状配線が形成されている、
ことを特徴とするトルクセンサ。
【請求項2】
前記膜状歪ゲージを封止するための封止材が前記凹部に充填されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のトルクセンサ。
【請求項3】
前記凹部と前記トルクセンサの側方の外側とを連通する連通部を含み、
前記連通部は、前記トルクセンサの側面に開口する連絡部を含み、
前記膜状配線は前記連通部に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。
【請求項4】
前記スペーサと前記第二の板状部材とを締結するための締結具、および、前記膜状歪ゲージのそれぞれが特定の中心を有する円周上に配置されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のトルクセンサ。
【請求項5】
前記膜状歪ゲージを複数有し、複数の前記膜状歪ゲージのそれぞれが前記円周上に等間隔に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載のトルクセンサ。
【請求項6】
ロボットアームと、前記ロボットアームに固定されている請求項1に記載のトルクセンサと、前記トルクセンサに固定されているロボットハンドと、を有する
ことを特徴とするロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクセンサおよびロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
トルクセンサは、種々の産業分野で利用されており、例えば工業用ロボットの動作の判定に利用されている。このようなトルクセンサには、規格化された所定の一部品の積層数を調整することで耐荷重仕様を設計可能なフランジタイプのトルクセンサが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-73177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トルクセンサには、その用途に応じたサイズおよび分解能が要求される。しかしながら、上述のような従来技術は、種々の問題を有する。
【0005】
たとえば、フランジタイプの回転式トルクセンサは、一般にサイズが大きい。また、歪ゲージの大きさのために外形を小さくできないことがある。また、歪ゲージから基板までの配線(リード線)を実装することから、外形を小さくできないことがある。また、歪ゲージおよび配線を実装するために厚みを薄くできないことがある。また、静電容量式センサでは上下基板のギャップから外力を測定するため、厚みが一定以上に限定されることがある。さらに、トルクセンサの起歪体の材質と歪ゲージの特性によって分解能の範囲が決まることから、起歪体の材質と歪ゲージとの組み合わせが制限されることがある。このように、従来のトルクセンサは、小型化および分解能の設計の自由度の観点から検討の余地が残されている。
【0006】
本発明の一態様は、小型化を実現するとともに分解能の設計の自由度の高いトルクセンサを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を解決するために、本発明の一態様に係るトルクセンサは、第一の板状部材と、前記第一の板状部材に対向する第二の板状部材と、前記第一の板状部材と一体化され、かつ、前記第二の板状部材と締結されている板状のスペーサと、を備え、前記スペーサの外縁には、凹部が形成されており、前記第二の板状部材の前記第一の板状部材に対向する主面のうち、前記スペーサからはみ出した外周領域に、前記凹部内に配置された膜状歪ゲージと、前記膜状歪ゲージに接続された膜状配線が形成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、小型化を実現するとともに分解能の設計の自由度の高いトルクセンサを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係るロボットの構成を模式的に示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るトルクセンサの一断面の構造を模式的に示す図である。
図3】本発明の一実施形態に係るトルクセンサにおける第一の板状部材の、第二の板状部材と対向する主面の構造を模式的に示す図である。
図4】本発明の一実施形態に係るトルクセンサにおける第二の板状部材の、第一の板状部材と対向する主面の構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。
【0011】
〔ロボット〕
図1は、本発明の一実施形態に係るロボットの構成を模式的に示す図である。図1に示されるように、ロボット100は、Z軸方向に沿って、ロボットアーム110と、ロボットアーム110に固定されているトルクセンサ1と、トルクセンサ1に固定されているロボットハンド120と、を有する。
【0012】
〔トルクセンサ〕
トルクセンサ1は、第一の板状部材10と、第一の板状部材10に対向する第二の板状部材20とを有している。図2は、本発明の一実施形態に係るトルクセンサ1の一断面の構造を模式的に示す図である。図3は、本発明の一実施形態に係るトルクセンサ1における第一の板状部材10の、第二の板状部材20と対向する主面の構造を模式的に示す図である。図4は、本発明の一実施形態に係るトルクセンサ1における第二の板状部材20の、第一の板状部材10と対向する主面の構造を模式的に示す図である。以下、第一の板状部材および第二の板状部材における「対向する主面」を単に「対向面」とも言う。また、平面視したときの形状を単に「平面形状」とも言う。
【0013】
図2に示されるように、トルクセンサ1は、第一の板状部材10と第二の板状部材20とが互いに対向して合体することで構成されている。第一の板状部材10および第二の板状部材20の材料は、いずれも、Z軸周りの外力により歪を発生する範囲において、適宜に選択され、例えばステンレス鋼である。図3および図4に示されるように、第一の板状部材10および第二の板状部材20は、いずれも、円環状の平面形状を有する板状部材であり、中央部に円形の貫通孔60を有している。
【0014】
[第一の板状部材]
第一の板状部材10は、対向面に溝30を有している。溝30の断面形状は矩形である。溝30の深さは、後述するプリント配線の厚みおよびフレキシブル基板140の厚みの総和よりも大きい範囲で適宜に設定可能であり、例えば0.1μmかそれ以下である。
【0015】
溝30は、第一の板状部材10の内周縁と外周縁との間に周設されている円環部31と、円環部31の内周縁からさらに内側に延在する三つの凹部32A、32B、32Cと、円環部31の外周縁から径方向の外側に延在して円環部31と外部とを連通する連絡部33とを含み、円環部31、凹部32A、32B、32Cおよび連絡部33が溝30の平面形状を形成している。。凹部32A、32B、32Cは、いずれも、第一の板状部材10の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向に等間隔で配置されている。凹部32A、32B、32Cの個々の平面形状は矩形である。
【0016】
第一の板状部材10における溝30の内周側は、略円環状の平面形状を有する板状のスペーサ40となっている。このように、トルクセンサ1では、スペーサ40は、第一の板状部材10と一体化されている。すなわち、スペーサ40は、第一の板状部材10の一部である。
【0017】
第一の板状部材10における溝30の外周側は、略円環状の平面形状を有する外縁部80となっている。外縁部80の平面形状は、円環が連絡部33によって欠かれたC字様の形状である。外縁部80には、第一の板状部材10と第二の板状部材20とを互いに締結するための穴が形成されている。当該穴とは、すなわち、四つの孔81A、81B、81C、81Dと、二つの穴82A、82Bと、四つの穴83A、83B、83C、83Dである。
【0018】
孔81A、81B、81C、81Dは、いずれもネジ131を螺合によって挿通させるための座ぐり孔である。孔81A、81B、81C、81Dは、いずれも、第一の板状部材10の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。
【0019】
穴82A、82Bは、ピン132を挿入するための穴である。穴82A、82Bも、いずれも、第一の板状部材10の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。
【0020】
穴83A、83B、83C、83Dはネジ133が螺合するためのネジ穴である。穴83A、83B、83C、83Dも、いずれも、第一の板状部材10の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。
【0021】
なお、平面視したときに、凹部32Cは、穴82Bと同軸上(X軸上)に配置されている。また、一つの孔81Cは、X軸に対して特定の角度a1で交差する直線状に配置されており、一つの孔83Cは、X軸に対して特定の角度A2で交差する直線状に配置されている。
【0022】
[第二の板状部材]
第二の板状部材20は、その対向面に外周領域90を有している。外周領域90は、第二の板状部材20の対向面のうち、スペーサ40からはみ出した部分である。より詳しくは、外周領域90は、第二の板状部材20の対向面のうち、第二の板状部材20が第一の板状部材10と対向したときに溝30に対向する部分である。あるいは、外周領域90は、第二の板状部材20の対向面のうち、第二の板状部材20が第一の板状部材10と対向したときにスペーサ40及び外縁部80と対向しない部分、とも言える。
【0023】
第二の板状部材20は、外周領域90においてプリント配線50を有している。プリント配線50は、三つの膜状歪ゲージ51A、51B、51Cと、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cのそれぞれに接続されている膜状配線52A、52B、52Cと、を有している。
【0024】
プリント配線50は、例えば下地層と配線層とオーバーコート層とによって構成されている。下地層(絶縁層)は、例えばシリカ(SiO)の層である。下地層は、配線層よりも若干広い幅を有するように形成されている。配線層は、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cと膜状配線52A、52B、52Cとである。膜状歪ゲージ51A、51B、51Cは、それぞれ、窒化クロム(NCr)の薄層で形成されている。オーバーコート層は、例えばポリイミド層である。オーバーコート層も、下地層と同様に、配線層よりも若干広い幅を有するように形成されている。
【0025】
膜状歪ゲージ51Aは、少なくともそのゲージの部分が、凹部32Aに対応する矩形の部分に形成されている。よって、トルクセンサ1においては、膜状歪ゲージ51Aは、少なくともそのゲージの部分が、凹部32A内に配置される。同様に、膜状歪ゲージ51B、51Cも、それぞれ、少なくともそのゲージの部分が凹部32B、32Cの内部に配置される。膜状配線52A、52B、52Cは、それぞれ銅(Cu)の薄層で形成されている。なお、上記の無機層(下地層および配線層)は、例えばスパッタリングによって作製される。
【0026】
膜状配線52A、52B、52Cのそれぞれは、その一端で膜状歪ゲージ51A、51B、51Cのそれぞれに対応して接続されている。膜状配線52A、52B、52Cのそれぞれは、外周領域90を通って外周領域90における連絡部33の部分に隣接する部分まで延在している。膜状配線52A、52B、52Cの他端は、外周領域90において一列に配列している。
【0027】
第二の板状部材20は、対向面におけるその内周縁と外周領域90の内周縁との間の略円環状の部分に三つのネジ孔84A、84B、84Cを有している。ネジ孔84A、84B、84Cは、いずれも、ネジ134が螺合するための孔である。ネジ孔84A、84B、84Cは、いずれも、第二の板状部材20の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。また、ネジ孔84A、84B、84Cは、いずれも、穴82A、82Bおよび穴83A、83B、83C、83Dが配置されている、中心Oを中心とする円周よりも小さい径の円周上に配置されている。ネジ孔84Aは、径方向において凹部32Aに対応する矩形の部分と同軸線上に配置されている。同様に、ネジ孔84Bは、径方向において凹部32Bに対応する矩形の部分と同軸線上に配置されており、ネジ孔84Cは、径方向において凹部32Cに対応する矩形の部分と同軸線上に配置されている。
【0028】
第二の板状部材20における外周領域90の外周側は、略円環状の平面形状を有する外縁領域91となっている。外縁領域91は、第一の板状部材10における外縁部80に対向する領域である。外縁領域91の平面形状は、第一の板状部材10における連絡部33に対向する領域によって円環が欠かれたC字様の形状である。外縁領域91には、二つの穴82A、82Bと、四つの穴83A、83B、83C、83Dである。これらの穴は、第一の板状部材10のそれらに対向する位置に形成されている。穴82A、82Bは、ピン132を挿入するための穴であり、いずれも、第二の板状部材20の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。孔83A、83B、83C、83Dは、ネジ133が螺合するためのネジ穴であり、いずれも、第二の板状部材20の平面形状における中心Oから等距離に配置されており、かつ円周方向において等間隔に配置されている。第二の板状部材20における孔83A、83B、83C、83Dは座ぐり穴となっている。
【0029】
〔ロボットおよびトルクセンサの組み立て〕
図2に示されるように、第一の板状部材10は、孔81A、81B、81C、81Dのそれぞれに第一の板状部材10側からネジ131を螺合させることによってロボットアーム110に固定される。第二の板状部材20は、穴82A、82Bのそれぞれにピン132を挿入することにより、また、孔83A、83B、83C、83Dのそれぞれに第二の板状部材20側からネジ133を螺合させることによって、第一の板状部材10に固定される。ネジ133の螺合により、第二の板状部材20は、第一の板状部材10と締結され、またスペーサ40と締結される。ロボットハンド120は、ネジ孔84A、84B、84Cのそれぞれにロボットハンド120側からネジ134を螺合させることによって第二の板状部材20に固定される。
【0030】
このように、ネジ133は、スペーサ40と第二の板状部材20とを締結するための締結具となっている。また、ピン132は、第一の板状部材10と第二の板状部材20との位置合わせのための固定具となっている。トルクセンサ1において、上記の締結具は、いずれも、第一の板状部材10および第二の板状部材20の平面形状の中心Oを中心とする円周上に配置されている。
【0031】
また、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cにおけるそれぞれのゲージの部分が凹部32A、32B、32Cの内部に配置されている。よって、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cのそれぞれは、中心Oを中心とする円周上に配置されており、また、当該円周上に等間隔に配置されている。
【0032】
トルクセンサ1のプリント配線50における膜状配線52A、52B、52Cの他端部には、フレキシブル基板140が接続されている。フレキシブル基板140は、例えば、接続部に異方性導電粒子を配置し、当該接続部を膜状配線52A、52B、52Cの他端部に圧着することによって接続される。フレキシブル基板140は、第一の板状部材10の連絡部33と第二の板状部材20の対向面との隙間からトルクセンサ1の外側に延在し、例えば膜状歪ゲージ51A、51B、51Cのそれぞれを含むブリッジ回路に接続される。
【0033】
溝30は、凹部32A、32B、32C、円環部31および連絡部33を有し、第二の板状部材20の対向面の外周領域90との間に隙間を形成する。外周領域90には、前述したように膜状配線52A、52B、52Cが配置されている。当該隙間は、連絡部33を含むことから、凹部32A、32B、32Cとトルクセンサ1の側方の外側とを連通する連通部となっている。そして、当該連通部には、膜状配線52A、52B、52Cが配置されている。
【0034】
また、上記の連通部およびそれに連なる凹部32A、32B、32Cには、封止材70が充填されている。封止材70は、耐水性を有する公知の封止材であり、例えばエポキシ樹脂である。封止材70は、フレキシブル基板140をプリント配線50と接続した後、第一の板状部材10を第二の板状部材に合わせる前に、円環部31に充填されていてもよい。あるいは封止材70は、第一の板状部材10を第二の板状部材に合わせた後に連絡部33によって形成されるトルクセンサ1の外周面の開口から注入されてもよい。このようにして、凹部32A、32B、32Cには封止材70が充填され、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cが封止材70によって封止されている。よって、連通部への異物の侵入および異物との接触が防止される。
【0035】
〔主な作用効果〕
トルクセンサ1にロボットハンド120からz軸周りの外力が伝達されると、ネジ134から第二の板状部材20に当該外力が伝わって、第二の板状部材20が歪む。この歪が伝達された膜状歪ゲージ51A、51B、51Cの抵抗変化によって、z軸周りの外力(トルク)が検出される。
【0036】
トルクセンサ1は、ロボットアーム110とロボットハンド120との間に直接固定することが可能である。よって、トルクセンサ1の構成がコンパクトである。
【0037】
トルクセンサ1は、スペーサ40を有し、スペーサ40からはみ出た領域は、円環部31、凹部32A、32B、32Cおよび連絡部33によって形成される溝30の平面形状と溝30の深さとを有する隙間となる。本実施形態では膜状歪ゲージ51A、51B、51Cおよび膜状配線52A、52B、52Cを採用することから、この隙間に歪ゲージおよび配線を配置することが可能である。よって、歪ゲージおよび配線が板状部材間に配置され、これらの保護が図られる。
【0038】
トルクセンサ1は、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cを有する。このようにトルクセンサ1が成膜された歪ゲージを有することから、トルクセンサ1を、より小型に、かつより薄くすることが可能である。
【0039】
また、トルクセンサ1は、膜状配線52A、52B、52Cを有することから、配線間のピッチをより狭くすることが可能である。よってトルクセンサ1では、配線に要するスペースをより小さく、またより薄くすることが可能である。
【0040】
また、トルクセンサ1では、第一の板状部材10と第二の板状部材20の材質に応じた歪み検出の分解能が得られる。また、膜状歪ゲージ51A、51B、51CがNCr製であることから、高いゲージ率が得られ、よって高い分解能を有する。たとえば、ニッケル銅(NiCu)製の膜状歪ゲージに比べて約5倍高いゲージ率が得られる。
【0041】
また、トルクセンサ1では、膜状歪ゲージ51A、51B、51Cが同一円周上に等間隔で配置されている。よって、Z軸周りの外力の影響を膜状歪ゲージが同等に受けることから、トルクを精確に検出する観点から有利である。
【0042】
さらに、トルクセンサ1では、第一の板状部材10と第二の板状部材20とを締結するピン132およびネジ133のそれぞれも、中心Oを中心とする円周上に等間隔で配置されている。よって、Z軸周りの外力を受けたときのトルクセンサ1へのこれらの締結具による歪みの影響が周方向において均等化され、トルクを精確に検出する観点から有利である。
【0043】
さらに、トルクセンサ1では、ロボットアーム110に固定するためのネジ131、および、ロボットハンド120に固定するためのネジ134、のそれぞれも、中心Oを中心とする円周上に等間隔で配置されている。よって、Z軸周りの外力を受けたときのトルクセンサ1へのこれらの固定具による歪みの影響が周方向において均等化され、トルクを精確に検出する観点から有利である。
【0044】
また、トルクセンサ1では、ロボットハンド120に固定するためのネジ134は、膜状歪ゲージが配置されている、中心Oを中心とする円周よりも小さい径の円周上に配置されている。さらに、ネジ134は、第一の板状部材10と第二の板状部材20とを締結するピン132およびネジ133が配置されている、中心Oを中心とする円周よりも小さい径の円周上に配置されている。このように、トルクセンサ1は、より外周側で第一の板状部材10および第二の板状部材20を固定し、より内周側で歪の検出対象であるロボットハンド120を固定して当該歪みを検出させる構造を含んでいる。よって、トルクセンサ1は、検出対象のトルクをより検出しやすく、トルク検出の感度を高める観点から有利である。
【0045】
また、トルクセンサ1では、前述の連通部(凹部、円環部および連絡部)が封止材70によって封止される。よって、トルクセンサ1の防水性および防塵性が高まり、トルクセンサ1の信頼性の向上に有利である。
【0046】
また、トルクセンサ1は、例えば図3および図4に示されるように、平面形状の中央に貫通孔60を有する円環形状を有する。よって、歪みが生じやすく、良好な感度を有する。
【0047】
トルクセンサ1における第一の板状部材10および第二の板状部材20は、溝の掘削、穴の穿孔、および電気材料の印刷などの一般的な加工によって作製可能である。
【0048】
トルクセンサ1は、小型化および薄型化の観点から有利であり、また、分解能も種々設定可能である。よって、トルクセンサ1は、既存のロボットへの適用に有利であり、高い汎用性が期待される。
【0049】
〔変形例〕
本発明に係るトルクセンサは、本発明の効果が得られる範囲において、前述した以外の構成を有していてもよい。たとえば、第一の板状部材と第二の板状部材との締結は、接着剤による接着であってもよい。
【0050】
また、トルクセンサの形状は円環形状でなくてもよく、例えば円板形状であってもよい。
【0051】
また、スペーサは、前述のように第一の板状部材と一体化されていてもよいし、あるいは第二の板状部材と一体化されていてもよい。
【0052】
また、第一の板状部材の材質と第二の板状部材の材質とは同じであってもよく、異なっていてもよい。特に、当該材質が異なる場合では、第一の板状部材の材質と第二の板状部材の材質との組み合わせに応じて、トルクセンサの分解能のレンジを一般用から高分解能用まで調整することが可能である。板状部材の材料には、前述したステンレス鋼などの金属のほか、樹脂も適用可能である。
【0053】
また、膜状歪ゲージの数は、用途および所望の精度に応じて適宜に決めることが可能である。たとえば、単なる外力の有無を検出する用途であれば、膜状歪ゲージは一つまたは二つでもよい。また、Z軸周りの外力以外の外力をさらに検出する場合では、膜状歪ゲージの数は4以上であってもよい。
【0054】
また、第一の板状部材における溝の凹部、円環部および連絡部は、それぞれ異なる深さを有していてもよい。たとえば、プリント配線における各層の厚みは数ミクロン程度であり、プリント配線の厚みは、フレキシブル基板の厚みに比べて薄い。よって、凹部および円環部に比べて連絡部をより深く形成してもよい。
【0055】
また、トルクセンサは、貫通孔60の周壁に開口する凹部を有し、貫通孔60における凹部の開口部から封止材を凹部および連通部に注入可能に構成されてもよい。
【0056】
〔まとめ〕
以上の説明から明らかなように、本発明の第一の態様のトルクセンサ(1)は、第一の板状部材(10)と、第一の板状部材に対向する第二の板状部材(20)と、第一の板状部材と一体化され、かつ、第二の板状部材と締結されている板状のスペーサ(40)と、を備え、スペーサの外縁には、凹部(32A、32B、32C)が形成されており、第二の板状部材の第一の板状部材に対向する主面のうち、スペーサからはみ出した外周領域(90)に、凹部内に配置された膜状歪ゲージ(51A、51B、51C)と、この膜状歪ゲージに接続された膜状配線(52A、52B、52C)が形成されている。よって、第一の態様は、小型化を実現するとともに分解能の設計の自由度の高いトルクセンサを実現することができる。
【0057】
本発明の第二の態様のトルクセンサは、第一の態様において、膜状歪ゲージを封止するための封止材(70)が凹部に充填されている。第二の態様は、トルクセンサの耐湿性および耐水性を高める観点からより一層効果的である。
【0058】
本発明の第三の態様のトルクセンサは、第一の態様または第二の態様において、凹部とトルクセンサ側方の外側とを連通する連通部を含み、当該連通部はトルクセンサの側面に開口する連絡部を含み、膜状配線は当該連通部に配置されている。第三の態様は、歪を検出する回路をセンサ内部に配置して当該回路を保護することによるトルクセンサの信頼性を高める観点からより一層効果的である。
【0059】
本発明の第四の態様のトルクセンサは、第一の態様から第三の態様のいずれかにおいて、スペーサと第二の板状部材とを締結するための締結具、および、膜状歪ゲージのそれぞれが、特定の中心(O)を有する円周上に配置されている。第四の態様は、トルクを精確に検出する観点からより一層効果的である。
【0060】
本発明の第五の態様のトルクセンサは、第四の態様において、膜状歪ゲージを複数有し、複数の膜状歪ゲージのそれぞれが上記の円周上に等間隔に配置されている。第五の態様は、トルクを精確に検出する観点からより一層効果的である。
【0061】
本発明の第六の態様のロボット(100)は、ロボットアーム(110)と、ロボットアームに固定されている、第一の態様から第五の態様のいずれかのトルクセンサと、トルクセンサに固定されているロボットハンド(120)と、を有する。第六の態様は、ロボットハンドによるトルクを所望の分解能のレンジで検出する観点からより一層効果的である。
【0062】
前記構成によれば、トルクセンサの信頼性が高まるとともに小型化と分解能の自在な設定とが可能となる。このような本発明は、トルクセンサのさらなる活用の促進に寄与することが期待され、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」等の達成に貢献することが期待される。
【0063】
本発明は上述した各実施形態に限定されず、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0064】
1 トルクセンサ
10 第一の板状部材
20 第二の板状部材
30 溝
31 円環部
32A、32B、32C 凹部
33 連絡部
40 スペーサ
50 プリント配線
51A、51B、51C 膜状歪ゲージ
52A、52B、52C 膜状配線
60 貫通孔
70 封止材
80 外縁部
81A、81B、81C、81D 孔
82A、82B 穴
83A、83B、83C、83D 穴(孔)
84A、84B、84C ネジ孔
90 外周領域
91 外縁領域
100 ロボット
110 ロボットアーム
120 ロボットハンド
131、133、134 ネジ
132 ピン
140 フレキシブル基板
図1
図2
図3
図4