(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072164
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】特徴量算出装置、特徴量算出方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 17/14 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
G06F17/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182867
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 佳祐
(72)【発明者】
【氏名】江藤 力
【テーマコード(参考)】
5B056
【Fターム(参考)】
5B056BB11
(57)【要約】
【課題】離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)の特徴量として、ラプラス逆変換を算出する技術を提供する。
【解決手段】特徴量算出装置(1)は、下記式(1)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(2)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する算出部(11)を備える。
【数1】
【数2】
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(2)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する算出手段を備えている、特徴量算出装置。
【数1】
【数2】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【請求項2】
信号y(t)に含まれるオフセットbは、既知であり、
前記算出手段は、下記式(3)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する、
請求項1に記載の特徴量算出装置。
【数3】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【請求項3】
信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(αk-1,αk]を表す情報を出力する出力手段を更に備えている、
請求項2に記載の特徴量算出装置。
【請求項4】
信号y(t)に含まれるオフセットbは、未知であり、
前記算出手段は、下記式(4)を用いて値ν
y((α
k-1,α
k])を算出する第1測度算出手段、下記式(5)を用いて値ν
1((α
k-1,α
k])を算出する第2測度算出手段、下記式(6)を用いてオフセットbを算出するオフセット算出手段、及び、下記式(7)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する第3測度算出手段を含んでいる、
請求項1に記載の特徴量算出装置。
【数4】
【数5】
【数6】
【数7】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【請求項5】
信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(α0,α1]を表す情報を出力し、オフセット情報として、オフセットbを表す情報を出力する出力手段を更に備えている、
請求項4に記載の特徴量算出装置。
【請求項6】
信号y(t)は、匂いセンサから出力される信号である、
請求項1又は2に記載の特徴量算出装置。
【請求項7】
請求項6に記載の特徴量算出装置と、
前記特徴量算出装置により算出された特徴量に基づいて、匂いの種類、又は、匂いの発生源の種類を判定する判定装置と、を備えている、
匂い判定装置。
【請求項8】
前記算出手段は、
信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合、下記式(8)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する一方、
前記微分が前記閾値より大きい場合、前記第1測度算出手段、前記第2測度算出手段、前記オフセット算出手段、及び前記第3測度算出手段により値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する、
請求項4に記載の特徴量算出装置。
【数8】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【請求項9】
少なくとも1つのプロセッサが、
下記式(9)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(10)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出することを含む、特徴量算出方法。
【数9】
【数10】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【請求項10】
コンピュータに、
下記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(12)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する処理を実行させるプログラム。
【数11】
【数12】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号の特徴量を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ラプラス変換の逆変換により元の関数を求める手法が従来用いられている。例えば非特許文献1には、ラプラス逆変換により元の連続測度を求める手法が開示されている。また、非特許文献2には、δ関数を用いて離散測度を形式的に連続測度として扱い、連続測度のラプラス変換の結果を逆変換する手法が記載されている。非特許文献2には、δ関数の線形和により離散測度を形式的に連続測度として扱い、連続測度をラプラス変換した結果を逆変換することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】H. Fujiwara et.al.,"Real inversion of the Laplace transform in numerical singular",Journal of Analysis and Applications,January 2008value decomposition
【非特許文献2】Donald G. Gardner, et.al.,"Method for the Analysis of Multicomponent Exponential Decay Curves",March 17, 1959
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1に開示されている手法は、関数空間上の操作を用いた方法であり、ルベーグ測度に関する密度関数を持たない離散測度への適用可能性は自明でない。また、非特許文献2に記載の手法では、gが超関数の場合には、そもそもgを求めることができない。したがって離散測度を求めることもできない。
【0005】
本発明の一態様は上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的の一例は、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)の特徴量として、ラプラス逆変換を算出することのできる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る特徴量算出装置は、下記式(1)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、下記式(2)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する算出手段を備える。
【0007】
また、本発明の一態様に係る特徴量算出方法は、少なくとも1つのプロセッサが、下記式(1)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、下記式(2)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出することを含む。
【0008】
また、本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータに、下記式(1)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、下記式(2)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する処理を実行させる。
【0009】
【数1】
【数2】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)の特徴量として、ラプラス逆変換を算出できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】例示的実施形態1に係る特徴量算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】例示的実施形態1に係る特徴量算出方法の流れを示すフロー図である。
【
図3】例示的実施形態2に係る特徴量算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】例示的実施形態3に係る特徴量算出装置の構成を示すブロック図である。
【
図5】例示的実施形態4に係る匂い判定装置の構成を示すブロック図である。
【
図6】例示的実施形態4に係る匂い判定方法の流れを示すフロー図である。
【
図8】MSSセンサで計測された信号y(t)の一例を示す図である。
【
図9】例示的実施形態4に係る匂い判定装置が算出した特徴量を用いて表される信号y(t)の一例を示す図である。
【
図10】例示的実施形態4に係る匂い判定装置が算出した特徴量を用いて表される信号y(t)の一例を示す図である。
【
図11】例示的実施形態2の変形例に係る特徴量算出方法の流れを示すフロー図である。
【
図12】各例示的実施形態に係る情報処理装置として機能するコンピュータの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔例示的実施形態1〕
本発明の第1の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本例示的実施形態は、後述する例示的実施形態の基本となる形態である。
【0013】
(特徴量算出装置の構成)
本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1の構成について、
図1を参照して説明する。
図1は、特徴量算出装置1の構成を示すブロック図である。特徴量算出装置1は、算出部11(算出手段)を備える。
【0014】
算出部11は、下記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、下記式(12)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する。
【0015】
【数3】
【数4】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【0016】
βmin、βmaxは、例えば特徴量算出装置1のユーザが入力装置を用いて入力した値であってもよく、また、特徴量算出装置1において予め設定された値であってもよい。α0,α1,…,αnは、[βmin、βmax]の分割区間を定める値であり、βmin、βmaxが与えられることによりα0,α1,…,αnはβmin~βmaxの範囲において任意に設定可能である。例えば、算出部11が区間[βmin、βmax]を等分するα1,…,αnを算出してもよく、また、例えばユーザがβmin~βmaxの範囲においてα1,…,αnを設定してもよい。また、オフセットbは、例えば特徴量算出装置1のユーザが入力装置を用いて入力した値であってもよく、また、特徴量算出装置1において予め設定された値であってもよい。また、特徴量算出装置1がオフセットbを算出する処理を実行してもよい。
【0017】
以上のように、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1においては、上記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、上記式(12)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する構成が採用されている。
【0018】
算出部11が算出するνy-b((αk-1,αk])は、上記式(12)に示すように、信号y(t)を表す上記式(11)に含まれるξkに対応する。そのため、νy-b((αk-1,αk])を求めることにより、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)を表す特徴量として、ラプラス逆変換を算出することができる。
【0019】
(特徴量算出プログラム)
上述の特徴量算出装置の機能は、プログラムによって実現することもできる。本例示的実施形態に係る特徴量算出プログラムは、コンピュータに、上記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、上記式(12)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する処理を実行させる。ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ1,ξ2,…,ξKは実数であり、β1,β2,…,βKは正数であり、α0,α1,…,αnは、βmin≦min{β1,β2,…,βK}及びβmax≧max{β1,β2,…,βK}として、βmin=α0<α1<…<αn=βmaxを満たす正数である。この特徴量算出プログラムによれば、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)の特徴量として、ラプラス逆変換を算出できるという効果が得られる。
【0020】
(特徴量算出方法の流れ)
本例示的実施形態に係る特徴量算出方法S1の流れについて、
図2を参照して説明する。
図2は、特徴量算出方法S1の流れを示すフロー図である。なお、この特徴量算出方法における各ステップの実行主体は、特徴量算出装置1が備えるプロセッサであってもよいし、他の装置が備えるプロセッサであってもよい。
【0021】
S11では、少なくとも1つのプロセッサが、上記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、上記式(12)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する。ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ1,ξ2,…,ξKは実数であり、β1,β2,…,βKは正数であり、α0,α1,…,αnは、βmin≦min{β1,β2,…,βK}及びβmax≧max{β1,β2,…,βK}として、βmin=α0<α1<…<αn=βmaxを満たす正数である。
【0022】
以上のように、本例示的実施形態に係る特徴量算出方法S1においては、少なくとも1つのプロセッサが、上記式(11)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、上記式(12)により近似される値νy-b((αk-1,αk])を算出する構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量算出方法S1によれば、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)の特徴量として、ラプラス逆変換を算出できるという効果が得られる。
【0023】
〔例示的実施形態2〕
(特徴量算出装置の概要)
本発明の第2の例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aは、信号y(t)の特徴量を算出する装置である。ここで、信号y(t)は、分析対象についての観測結果を示す信号である。信号y(t)は、例えば匂いセンサから出力される信号、血圧の計測値を示す信号、又はDWI(diffusion weighted image)の画像信号である。ただし、信号y(t)は上述した例に限定されず、他の事象についての信号であってもよい。例えば、信号y(t)は、地震のP波又はS波の速度を表す信号であってもよい。
【0024】
本例示的実施形態では、信号y(t)の数理モデルとして、以下の式(21)を用いる。
【数5】
ここで、Kは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数である。また、本例示的実施形態において、オフセットbは既知である。
【0025】
上記式(21)において、b、ξk、βkは信号y(t)を表現する値である。b、ξk、βkは信号y(t)の特徴量であるともいえる。b、ξk、βkを求めることにより、信号y(t)を式(21)で表現することができる。
【0026】
本例示的実施形態では、離散測度を再構築する手法として、フーリエ反転公式ではなくレヴィの反転公式から導かれる式を用いる。フーリエ反転公式のかわりにレヴィの反転公式から導かれる式を適用することにより、連続測度による近似の影響を打ち消す極限操作を実行可能な形が得られる。
【0027】
(特徴量算出装置の構成)
図3は、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aの構成を示すブロック図である。特徴量算出装置1Aは、算出部11A、及び出力部12Aを備える。算出部11Aは、信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する。ここで、nは自然数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。算出部11Aが行うν
y-b((α
k-1,α
k])の算出方法については後述する。
【0028】
算出部11Aは、例えば特徴量算出装置1Aの入出力IF(図示略)を介して入力される信号y(t)を取得してもよく、また、特徴量算出装置1Aの通信IF(図示略)を介して受信される信号y(t)を取得してもよい。また、算出部11Aは、特徴量算出装置1Aが内蔵する記憶装置又は外部記憶装置から信号y(t)を読み出すことにより信号y(t)を取得してもよい。
【0029】
また、算出部11Aは例えば、βmin、βmaxとして、ユーザが入力装置を用いて入力した値を用いてもよく、また、特徴量算出装置1Aに予め設定された値を用いてもよい。α0,α1,…,αnは、区間[βmin,βmax]の分割を定める値であり、βmin、βmaxが与えられることによりα0,α1,…,αnはβmin~βmaxの範囲において任意に設定可能である。例えば、算出部11Aが区間[βmin,βmax]を等分するα1,…,αnを算出してもよく、また、例えばユーザがβmin~βmaxの範囲においてα1,…,αnを設定してもよい。また、算出部11Aは例えば、オフセットbとして、特徴量算出装置1のユーザが入力装置を用いて入力した値を用いてもよく、また、特徴量算出装置1において予め設定された値を用いてもよい。
【0030】
出力部12Aは、信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(αk-1,αk]を表す情報を出力する。
【0031】
(算出部が行う算出処理)
算出部11Aは、信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、下記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。
【0032】
【数6】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【0033】
計測時間T、積分範囲cとしては、特徴量算出装置1Aに予め設定された値が用いられてもよく、また、ユーザが入力装置を用いて上記値を入力し、入力された値を算出部11Aが用いる構成であってもよい。また、特徴量算出装置1Aが上記値を算出する構成であってもよい。
【0034】
式(23)の右辺のうち、
【数7】
はレヴィの反転公式に対応している。また、式(23)の右辺のうち、
【数8】
は特性関数である。
【0035】
式(23)に示されるように、本例示的実施形態では、離散測度を再構築する手法として、フーリエ反転公式ではなくレヴィの反転公式から導かれる式を用いる。
【0036】
(特徴量ν
y-b((α
k-1,α
k])と、b、ξ
k、及びβ
kとの関係)
上記式(23)において、(α
k-α
k-1)がα
k-1に比べ十分小さく、かつ積分範囲cが十分大きい場合、値ν
y-b((α
k-1,α
k])は、
【数9】
の近似値となる。すなわち、値ν
y-b((α
k-1,α
k])は、α
k-1<ξ
k≦α
kを満たすξ
kの総和の近似値となる。
【0037】
上記の下、βmin≦β1<…<βK≦βmaxを満たす正数βmin、βmaxがとれるとする。このとき、幅の十分小さな分割βmin=α0<α1<…<αn=βmaxを固定し、各k=1,…,nについて、上記式(23)によりνy-b((αk-1,αk])を計算することで、信号y(t)の特徴量
b,α0,νy-b((α0,α1]),…,αn-1,νy-b((αn-1,αn])
が抽出される。
【0038】
これらの特徴量は、信号y(t)を特徴づける量として抽出しようとしていた特徴量b、βk、ξkに相当する。自然数Kが未知という設定のため、βk、ξkに相当する値αk、νy-b((αk-1,αk])がそれぞれ、設定された十分大きなn個だけ求まる。これは、Kが未知であるため、受け皿としてnが大きく設定され、特徴量の数が冗長になるということである。
【0039】
信号y(t)と無関係に人工的に設定されるαkは、それ自身が特徴量であるというよりは、αk(βkに相当)に対応する係数が、νy-b((αk-1,αk])(ξkに相当)である、という意味で信号y(t)を特徴づける。このように、算出部11Aが算出するνy-b((αk-1,αk])と、αkとから導かれるξk、βkを用いて信号y(t)を表すことができる。
【0040】
(特徴量算出装置の効果)
以上のように、本例示的実施形態によれば、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)からもとの離散測度を再現する際に、フーリエ反転公式のかわりにレヴィの反転公式から導かれる式を用いることにより、離散測度を再現することができる。
【0041】
また、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aにおいては、信号y(t)に含まれるオフセットbは既知であり、算出部11Aは上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aによれば、例示的実施形態1に係る特徴量算出装置1の奏する効果に加えて、オフセットbが既知である場合の信号y(t)をラプラス変換に持つ離散測度を再現できるという効果が得られる。
【0042】
また、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aにおいては、出力部12Aが、信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(αk-1,αk]を表す情報を出力するという構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Aによれば、例示的実施形態1に係る特徴量算出装置1の奏する効果に加えて、オフセットbが既知である場合の信号y(t)をラプラス変換に持つ離散測度を再現できるとともに、区間(αk-1,αk]を表す情報を出力できるという効果が得られる。
【0043】
〔例示的実施形態3〕
本発明の第3の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図4は、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Bの構成を示すブロック図である。特徴量算出装置1Bは、算出部11B及び出力部12Bを備える。
【0044】
算出部11Bは、上記式(21)により表される信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、νy-b((αk-1,αk])を算出する。ここで、信号y(t)を表す上記式(21)に含まれるオフセットbは未知である。
【0045】
算出部11Bは、第1測度算出部111、第2測度算出部112、オフセット算出部113、及び第3測度算出部114を備える。第1測度算出部111は、下記式(24)を用いて値ν
y((α
k-1,α
k])を算出する。
【数10】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【0046】
第2測度算出部112は、下記式(25)を用いて値ν
1((α
k-1,α
k])を算出する。
【数11】
【0047】
オフセット算出部113は、下記式(26)を用いてオフセットbを算出する。
【数12】
【0048】
オフセット算出部113が算出したオフセットbに対し、信号y(t)の特徴量
b,α0,νy((α0,α1])-bν1((α0,α1]),…,
αn-1,νy((αn-1,αn])-bν1((αn-1,αn])
が抽出される。
【0049】
ここで、f(t)=y(t)-bとすると、対応f→ν
f((A,B])の線形性により、
【数13】
が成り立つ。すなわち、最終的なアウトプットは、オフセットbが既知の場合と同様の量である。そのため、第3測度算出部114は、上記式(27)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する。
【0050】
算出部11Bが実行する算出処理に用いる情報として、(i)計測時間T、(ii)積分範囲c、(iii)指数減少係数の下限βmin、(iv)指数減少係数の上限βmax、(v)指数減少係数の存在範囲の分割区間を定める値α0、α1、…、αn、が挙げられる。これらの情報は、特徴量算出装置1Bに予め設定された情報(デフォルト値)であってもよく、また、ユーザが入力装置を用いて上記情報を入力し、入力された情報を算出部11Bが用いてもよい。また、特徴量算出装置1Bが上記情報の少なくとも一部を算出する構成であってもよい。
【0051】
出力部12Bは、信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(α0,α1]を表す情報を出力し、オフセット情報として、オフセットbを表す情報を出力する。
【0052】
以上のように、本例示的実施形態によれば、離散測度のラプラス変換にオフセットbを加えたものとして表現される信号y(t)からもとの離散測度を再現する際に、フーリエ反転公式ではなくレヴィの反転公式から導かれる式を用いることにより、離散測度を再現することができる。
【0053】
また、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Bにおいては、信号y(t)に含まれるオフセットbは未知であり、算出部11Bは、上記式(24)を用いて値νy((αk-1,αk])を算出する第1測度算出部111、上記式(25)を用いて値ν1((αk-1,αk])を算出する第2測度算出部112、上記式(26)を用いてオフセットbを算出するオフセット算出部113、及び、上記式(27)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する第3測度算出部114を含む構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Bによれば、例示的実施形態1に係る特徴量算出装置1の奏する効果に加えて、オフセットbが未知である信号y(t)の特徴量を算出できるという効果が得られる。
【0054】
また、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Bにおいては、信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(α0,α1]を表す情報を出力し、オフセット情報として、オフセットbを表す情報を出力する出力部12Bを備えるという構成が採用されている。このため、本例示的実施形態に係る特徴量算出装置1Bによれば、例示的実施形態1に係る特徴量算出装置1の奏する効果に加えて、区間(α0,α1]を表す情報とオフセットbを表す情報とを出力できるという効果が得られる。
【0055】
〔例示的実施形態4〕
本発明の第4の例示的実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、例示的実施形態1~3にて説明した構成要素と同じ機能を有する構成要素については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0056】
(匂い判定装置の構成)
図5は、本例示的実施形態に係る匂い判定装置1Cの構成を示すブロック図である。匂い判定装置1Cは、匂いセンサから出力される信号y(t)から匂いの判定を行う装置である。ここで、匂いセンサとしては、例えば膜型表面応力センサ(Membrane-type Surface stress Sensor;MSSセンサ)が用いられる。MSSセンサにより、においガス分子が膜に吸脱着したときの電気信号値を計測する。ただし、匂いセンサはMSSセンサに限られず、他のセンサであってもよい。
【0057】
匂い判定装置1Cは、算出部11C及び判定部13を備える。匂い判定部13は本明細書に係る判定装置の一例である。算出部11Cは、算出部11A及び算出部11Bを備える。算出部11Cは、上記式(21)により表される信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、νy-b((αk-1,αk])を算出する。このとき、算出部11Cは、オフセットbが未知であるか既知であるかを判定し、オフセットbが未知である場合は上述の例示的実施形態2に係る算出部11Aの算出処理によりνy-b((αk-1,αk])を算出する。一方、算出部11Cは、オフセットbが既知である場合、上述の例示的実施形態3に係る算出部11Bの算出処理によりνy-b((αk-1,αk])を算出する。
【0058】
本例示的実施形態では、算出部11Cは、信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合にオフセットbが既知であると判定し、信号y(t)の微分が所定の閾値より大きい場合、オフセットbが未知であると判定する。換言すると、算出部11Cは、信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合、上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。一方、算出部11Cは、上記微分が上記閾値より大きい場合、第1測度算出部111、第2測度算出部112、オフセット算出部113、及び第3測度算出部114により値νy-b((αk-1,αk])を算出する。算出部11Cが実行する算出処理に用いる情報(計測時間T、積分範囲c、指数減少係数の下限βmin、指数減少係数の上限βmax、指数減少係数の存在範囲の分割区間を定める値α0、α1、…、αn、等)の設定方法は上述の例示的実施形態2で示した方法と同様である。
【0059】
判定部13は、算出部11Cが算出した特徴量に基づいて、匂いの種類、又は、匂いの発生源の種類を判定する。判定部13は、一例として、算出部11Cが算出した特徴量を所定のデータベースに登録された複数の特徴量と照合することにより、種類の判定を行ってもよい。また、判定部13は、一例として、信号y(t)の特徴量を入力とし、匂いの種類を出力とする学習済モデルに、算出部11Bが算出した特徴量を入力することにより、匂いの種類を判定してもよい。この場合、学習済モデルは、信号y(t)の特徴量と匂いの種類を示すラベルとを含む訓練データを用いた機械学習により構築された学習済モデルである。学習済モデルの機械学習の手法は限定されず、一例として、決定木ベース、線形回帰、又はニューラルネットワークの手法が用いられてもよく、また、これらのうちの2以上の手法が用いられてもよい。ただし、判定部13が行う判定処理の手法は上述した例に限定されるものではなく、判定部13は他の手法により判定処理を行ってもよい。
【0060】
(匂い判定方法の流れ)
図6は、匂い判定装置1Cが行う匂い判定方法の流れを示すフロー図である。S21では、算出部11Cは、信号y(t)の微分が所定の閾値以下であるか否かを判定する。信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合(ステップS21にてYES)、算出部11CはステップS22の処理に進む。一方、信号y(t)の微分が所定の閾値より大きい場合(ステップS21にてNO)、算出部11CはステップS23の処理に進む。
【0061】
S22では、算出部11Cは、連続するn個の区間(α0,α1],(α1,α2],…,(αn-1,αn]の各々に対して、上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。ステップS22で算出部11Cが行う算出処理は、上述の例示的実施形態2に係る算出部11Aが行う算出処理と同様である。このとき、算出部11Cは、オフセットbの近似値としてy(t)の最終時刻での値を採用し、上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。
【0062】
S23では、算出部11Cは、上記式(24)を用いて値νy((αk-1,αk])を算出する。ステップS23で算出部11Cが行う算出処理は、上述の例示的実施形態3に係る第1測度算出部111が行う算出処理と同様である。
【0063】
S24では、算出部11Cは、上記式(25)を用いて値ν1((αk-1,αk])を算出する。ステップS24で算出部11Cが行う算出処理は、上述の例示的実施形態3に係る第2測度算出部112が行う算出処理と同様である。
【0064】
S25では、算出部11Cは、上記式(26)を用いてオフセットbを算出する。ステップS25で算出部11Cが行う算出処理は、上述の例示的実施形態3に係るオフセット算出部113が行う算出処理と同様である。
【0065】
S26では、算出部11Cは、上記式(27)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。ステップS26で算出部11Cが行う算出処理は、上述の例示的実施形態3に係る第3測度算出部114が行う算出処理と同様である。
【0066】
S27では、判定部13は、算出部11Cが算出した特徴量に基づき、信号y(t)が表す匂いの種別を判定する。S28では、判定部13は、算出部11Cが算出した特徴量及び判定部13の判定結果の少なくともいずれか一方を示す情報を出力する。判定部13は一例として、判定結果である匂いの種類を出力してもよく、また、一例として、算出部11Cが算出した特徴量に基づき特定された信号y(t)のパラメータb、ξk、βkを出力してもよい。また、判定部13は、匂い判定装置1Cに入力されたセンサの実際の出力値と、算出部11Cが算出した特徴量に基づき算出された信号y(t)とを表示出力してもよい。
【0067】
図7は、ステップS28で出力される判定結果の表示例を示す図である。
図7の例では、センサを識別する識別情報、判定部13が判定処理を行った日時、判定部13の判定結果、等が互いに関連付けて表示される。ただし、判定部13が出力する判定結果を示す情報は
図7に示す例に限られない。判定部13は、例えば、信号y(t)のパラメータb、ξ
k、β
kを表示出力してもよい。
【0068】
(実際の測定値と算出結果の具体例)
図8は、MSSセンサで計測された信号y(t)の一例を示す図である。図において、横軸は経過時間を示し、縦軸は信号値を示す。また、
図9及び
図10は、算出部11Cが算出した特徴量を用いて表される信号y(t)の一例を示す図である。
図9は、人工的に生成されたオリジナルデータ201と、オリジナルデータ201について本実施形態に係る算出部11Cが算出した特徴量を用いて表される信号y(t)202と、を表す。オリジナルデータ201は、y(t)=10-7e
-0.5t-3e
-0.75tで表されるデータである。
【0069】
図10は、MSSセンサで計測された実際の計測データ211と、算出部11Cが算出した特徴量を用いて表される信号y(t)212と、を表す。
図9及び
図10に示すように、算出部11Cが算出した特徴量を用いて信号y(t)を表現することができる。
【0070】
(匂い判定装置の効果)
以上説明したように本例示的実施形態に係る匂い判定装置1Cは、匂いセンサから出力される信号y(t)の特徴量を算出する。そのため、本例示的実施形態によれば、匂いセンサにより測定された匂いを表す信号y(t)の特徴量を算出することができる。
【0071】
また、本例示的実施形態に係る匂い判定装置1Cは、算出部11Cが算出した特徴量に基づいて、匂いの種類、又は、匂いの発生源の種類を判定する判定部13を備える。そのため、本例示的実施形態に係る匂い判定装置1Cによれば、離散測度のラプラス変換からもとの離散測度を再現することにより、匂いの種類、又は匂いの発生源の種類を判定することができる。
【0072】
また、本例示的実施形態に係る算出部11Cは、信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合、上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。一方、算出部11Cは、上記微分が上記閾値より大きい場合、第1測度算出部111、第2測度算出部112、オフセット算出部113、及び第3測度算出部114により値νy-b((αk-1,αk])を算出する。微分が閾値以下である場合はオフセットbが既知であるとしてνを算出することにより、特徴量の算出精度を高くすることができる。
【0073】
〔変形例〕
上述の例示的実施形態2において、算出部11Aが、信号y(t)が定常状態(フラットな状態)になるまで観測を続けてから、特徴量の算出処理を開始してもよい。換言すると、算出部11Aが、信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合に、特徴量の算出処理を開始してもよい。
【0074】
図11は、本変形例に係る特徴量算出方法の流れを示すフロー図である。S31において、算出部11Aは、分析対象である信号y(t)の微分が所定の閾値以下であるかを判定する。微分が閾値以下である場合(ステップS31にてYES)、算出部11AはステップS32の処理に進む。一方、微分が閾値より大きい場合(ステップS31にてNO)、算出部11Aは微分が閾値以下になるまで待機する。
【0075】
ステップS32において、算出部11Aは、値νy-b((αk-1,αk])を算出する。このとき、算出部11Aは、信号y(t)から推定される信号y(t)の極限値をオフセットbとし、オフセットbが既知であるとして上記式(23)を用いて値νy-b((αk-1,αk])を算出する。ステップS33において、出力部12Aは、算出部11Aが算出した特徴量を出力する。本態様によれば、定常状態(フラットな状態)になるまで観測された信号y(t)を用いることで、逆変換の精度を高くすることができる。
【0076】
〔ソフトウェアによる実現例〕
特徴量算出装置1、1A、1B、匂い判定装置1C(以下、「特徴量算出装置1等」という)の一部又は全部の機能は、集積回路(ICチップ)等のハードウェアによって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0077】
後者の場合、特徴量算出装置1等は、例えば、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータによって実現される。このようなコンピュータの一例(以下、コンピュータCと記載する)を
図12に示す。コンピュータCは、少なくとも1つのプロセッサC1と、少なくとも1つのメモリC2と、を備えている。メモリC2には、コンピュータCを特徴量算出装置1等として動作させるためのプログラムPが記録されている。コンピュータCにおいて、プロセッサC1は、プログラムPをメモリC2から読み取って実行することにより、特徴量算出装置1等の各機能が実現される。
【0078】
プロセッサC1としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、MPU(Micro Processing Unit)、FPU(Floating point number Processing Unit)、PPU(Physics Processing Unit)、TPU(Tensor Processing Unit)、量子プロセッサ、マイクロコントローラ、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。メモリC2としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又は、これらの組み合わせなどを用いることができる。
【0079】
なお、コンピュータCは、プログラムPを実行時に展開したり、各種データを一時的に記憶したりするためのRAM(Random Access Memory)を更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、他の装置との間でデータを送受信するための通信インタフェースを更に備えていてもよい。また、コンピュータCは、キーボードやマウス、ディスプレイやプリンタなどの入出力機器を接続するための入出力インタフェースを更に備えていてもよい。
【0080】
また、プログラムPは、コンピュータCが読み取り可能な、一時的でない有形の記録媒体Mに記録することができる。このような記録媒体Mとしては、例えば、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、又はプログラマブルな論理回路などを用いることができる。コンピュータCは、このような記録媒体Mを介してプログラムPを取得することができる。また、プログラムPは、伝送媒体を介して伝送することができる。このような伝送媒体としては、例えば、通信ネットワーク、又は放送波などを用いることができる。コンピュータCは、このような伝送媒体を介してプログラムPを取得することもできる。
【0081】
〔付記事項1〕
本発明は、上述した実施形態に限定されるものでなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。例えば、上述した実施形態に開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0082】
〔付記事項2〕
上述した実施形態の一部又は全部は、以下のようにも記載され得る。ただし、本発明は、以下の記載する態様に限定されるものではない。
(付記1)
下記式(31)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(32)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する算出手段を備えている、特徴量算出装置。
【数14】
【数15】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【0083】
(付記2)
信号y(t)に含まれるオフセットbは、既知であり、前記算出手段は、下記式(33)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する、付記1に記載の特徴量算出装置。
【数16】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【0084】
(付記3)
信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(αk-1,αk]を表す情報を出力する出力手段を更に備えている、付記2に記載の特徴量算出装置。
【0085】
(付記4)
信号y(t)に含まれるオフセットbは、未知であり、前記算出手段は、下記式(34)を用いて値ν
y((α
k-1,α
k])を算出する第1測度算出手段、下記式(35)を用いて値ν
1((α
k-1,α
k])を算出する第2測度算出手段、下記式(36)を用いてオフセットbを算出するオフセット算出手段、及び、下記式(37)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する第3測度算出手段を含んでいる、付記1に記載の特徴量算出装置。
【数17】
【数18】
【数19】
【数20】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【0086】
(付記5)
信号y(t)の特徴量として、値νy-b((αk-1,αk])を表す情報を出力すると共に、付加情報として、区間(α0,α1]を表す情報を出力し、オフセット情報として、オフセットbを表す情報を出力する出力手段を更に備えている、付記4に記載の特徴量算出装置。
【0087】
(付記6)
信号y(t)は、匂いセンサから出力される信号である、付記1~5の何れか一項に記載の特徴量算出装置。
【0088】
(付記7)
付記6に記載の特徴量算出装置と、前記特徴量算出装置により算出された特徴量に基づいて、匂いの種類、又は、匂いの発生源の種類を判定する判定装置と、を備えている、匂い判定装置。
【0089】
(付記8)
前記算出手段は、
信号y(t)の微分が所定の閾値以下である場合、下記式(38)を用いて値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する一方、
前記微分が前記閾値より大きい場合、前記第1測度算出手段、前記第2測度算出手段、前記オフセット算出手段、及び前記第3測度算出手段により値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する、
付記4に記載の特徴量算出装置。
【数21】
ここで、Γ(・)は複素ガンマ関数であり、Im(・)は・の虚部であり、logは自然対数関数であり、πは円周率であり、iは虚数単位であり、cは正数であり、Tは信号y(t)の計測時間を表す正数である。
【0090】
(付記9)
少なくとも1つのプロセッサが、下記式(39)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(40)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出することを含む、特徴量算出方法。
【数22】
【数23】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【0091】
(付記10)
コンピュータに、下記式(41)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(42)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する処理を実行させるプログラム。
【数24】
【数25】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【0092】
(付記11)
少なくとも1つのプロセッサを備え、前記プロセッサは、下記式(43)により近似される、オフセットbを含む信号y(t)の特徴量として、連続するn個の区間(α
0,α
1],(α
1,α
2],…,(α
n-1,α
n]の各々に対して、下記式(44)により近似される値ν
y-b((α
k-1,α
k])を算出する算出処理を実行する特徴量算出装置。
【数26】
【数27】
ここで、K及びnは自然数であり、b及びξ
1,ξ
2,…,ξ
Kは実数であり、β
1,β
2,…,β
Kは正数であり、α
0,α
1,…,α
nは、β
min≦min{β
1,β
2,…,β
K}及びβ
max≧max{β
1,β
2,…,β
K}として、β
min=α
0<α
1<…<α
n=β
maxを満たす正数である。
【0093】
なお、この特徴量算出装置は、更にメモリを備えていてもよく、このメモリには、前記算出処理を前記プロセッサに実行させるためのプログラムが記憶されていてもよい。また、このプログラムは、コンピュータ読み取り可能な一時的でない有形の記録媒体に記録されていてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1、1A、1B 特徴量算出装置
1C 匂い判定装置
11、11A、11B、11C 算出部
12A、12B 出力部
13 判定部
111 第1測度算出部
112 第2測度算出部
113 オフセット算出部
114 第3測度算出部
S1 特徴量算出方法