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特開2024-72169測距装置、距離補正方法及び測距プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072169
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】測距装置、距離補正方法及び測距プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/497 20060101AFI20240520BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
G01S7/497
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182876
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】501009849
【氏名又は名称】株式会社日立エルジーデータストレージ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 克美
(72)【発明者】
【氏名】杉山 久貴
(72)【発明者】
【氏名】泉 克彦
【テーマコード(参考)】
2F112
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA12
2F112DA25
2F112DA26
2F112DA28
2F112EA05
2F112GA01
5J084AA05
5J084AB07
5J084AD01
5J084AD02
5J084BA04
5J084BA20
5J084BA34
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA10
5J084CA19
5J084DA09
5J084EA08
5J084EA11
(57)【要約】
【課題】簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を補正することができる測距装置、距離補正方法及び測距プログラムを提供する。
【解決手段】測距装置は、測定対象物に測定光を照射する照射部と、測定対象物からの反射光を受光し、反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部と、露光量に基づいて測定対象物までの計測距離を計算する距離計算部と、を備える。距離計算部は、記憶部に格納された補正情報に基づいて、補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、計測距離が含まれる適用距離範囲に対応する補正式を用いて、計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する距離補正計算を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する距離補正計算を実行する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測距装置において、
前記補正情報は、複数の設置環境のそれぞれに対応する複数の前記補正式セットを示す情報であり、
前記制御装置は、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
複数の前記補正式セットのそれぞれについて、
所定の前記測定対象物までの前記計測距離を計算し、前記補正式セットに含まれる複数の前記補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出し、所定の前記測定対象物までの実際の距離と算出した前記補正後計測距離との間の距離の差分を算出する距離差分計算を行い、
複数の前記補正式セットのそれぞれについて算出した前記距離の差分のうち、最小の前記距離の差分を取得するときに用いた前記補正式を含む前記補正式セットを、前記距離補正計算に用いる前記補正式セットとして設定し、
設定した前記補正式セットを用いて前記距離補正計算を実行する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項3】
請求項2に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
前記受光センサによって受光した光に基づく情報を前記受光センサから取得し、取得した前記情報に基づいて距離測定対象範囲の画像を生成するように構成され、
前記制御装置は、
前記画像を分割した複数の画像領域の各画像領域について、
各画像領域に存在する所定の前記測定対象物を前記距離の差分を求める対象として前記距離差分計算を行い、
各画像領域に対して、
複数の前記補正式セットのそれぞれについて算出した前記距離の差分のうち、最小の前記距離の差分を取得するときに用いた前記補正式を含む前記補正式セットを、各画像領域に存在する前記測定対象物の前記計測距離を補正するときの前記距離補正計算に用いる前記補正式セットとして設定し、
前記測定対象物が存在する前記画像領域を特定し、
前記測定対象物が存在する前記画像領域に対して設定された前記補正式セットを前記距離補正計算に用いる、
ように構成された、
測距装置。
【請求項4】
請求項2に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
前記測定対象物が存在する設置環境の複数の状態の各状態について、前記距離差分計算を行い、
複数の状態の各状態に対して、
複数の前記補正式セットのそれぞれについて算出した前記距離の差分のうち、最小の前記距離の差分を取得するときに用いた前記補正式を含む前記補正式セットを、前記設置環境が各状態である場合に前記測定対象物の前記計測距離を補正するときの前記距離補正計算に用いる前記補正式セットとして設定し、
前記測定対象物が存在する前記設置環境の状態を判定し、
判定した前記測定対象物が存在する前記設置環境の状態に対して設定された前記補正式セットを前記距離補正計算に用いる、
ように構成された、
測距装置。
【請求項5】
請求項4に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
所定時間が経過する毎に前記設置環境中の固定の測定点の前記補正後計測距離を計算し、
前記補正後計測距離の変化量に基づいて、前記設置環境の状態を判定する、
ように構成された、
測距装置。
【請求項6】
請求項2に記載の測距装置において、
前記制御装置は、
実測値に基づく2つの補正式及び各補正式の適用距離範囲を示す情報から、前記記憶部に格納される、複数の前記補正式セットを示す前記補正情報を作成するように構成された、
測距装置。
【請求項7】
請求項1に記載の測距装置において、
複数の前記補正式は、傾き及び切片が互いに異なる1次関数からなる2つの補正式である、
測距装置。
【請求項8】
請求項1に記載の測距装置において、
複数の前記補正式は、傾き及び切片が互いに異なる1次関数からなる3つ以上の補正式である、
測距装置。
【請求項9】
請求項1に記載の測距装置において、
前記記憶部には、前記補正情報として、
設置環境でのマルチパスにより生じる計測誤差と実際の距離との関係を近似した近似モデルに対応する、
係数を変数とする補正式と、
前記設置環境を示す識別情報、前記補正式の切替距離及び当該補正式の切替距離を基準として区分される各適用距離範囲に対応する係数が互いに対応付けられた補正式関連情報と、
が格納される、
測距装置。
【請求項10】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置に適用される距離補正方法であって、
前記制御装置によって、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する、
距離補正方法。
【請求項11】
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置の制御装置に前記計測距離の補正処理を実行させる測距プログラムであって、
前記制御装置に、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する処理を実行させる、
測距プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測距装置、距離補正方法及び測距プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、マルチパス現象により発生する距離誤差の補正を行う測距装置の測定補正方法(以下、「従来技術」と称呼される。)を開示する。マルチバス現象は、壁、床などに反射率が高い素材が使用された環境で使用する場合、壁、床などからの不要な反射により、光路長が長くなったように見える現象である。
【0003】
レーザから出射した赤外光が対象物に反射し、受光素子に戻ってくるまでの時間を計測することで距離計測を行う測距装置であるTOF(Time Of Flight)の原理上、マルチパスの影響を強く受ける環境下では、計測対象物までの実際の距離に対し、TOFによる計測距離が長くなることで距離誤差が発生する課題がある。
【0004】
これに対して、従来技術は、準備工程として、測距装置からの距離が設定値L1となるように測定サンプルを配置する。従来技術は、測距装置により測定サンプルまでの距離を測定して測定値L2を得る。従来技術は、設定値L1を変えながら、複数通りの設定値L1に対応する測定値L2を取得する。従来技術は、取得した複数の設定値L1と測定値L2との関係をもとに、測定値L2を設定値L1に変換するための補正式を作成する。従来技術は、実測工程として、測距装置で測定した対象物までの距離を補正式にて補正し、測定距離の補正値を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-117036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術は、補正式を作成するために、作業者が測定サンプルの配置及び測定装置から測定サンプルまでの距離の測定の動作(作業)を何度も繰り返し行うことが必要であり、時間及び手間がかかってしまい面倒である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされた。即ち、本発明の目的の一つは、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を補正することができる測距装置、距離補正方法及び測距プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の測距装置は、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する距離補正計算を実行する、ように構成されている。
【0009】
本発明の距離補正方法は、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、を備えた測距装置に適用される距離補正方法であって、前記制御装置によって、前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する。
【0010】
本発明の測距プログラムは、測定対象物に測定光を照射する照射部と、前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、を備えた測距装置の制御装置に前記計測距離の補正処理を実行させる測距プログラムであって、前記制御装置に、前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る測距装置の構成例を示す図である。
図2図2は測距装置の距離測定の原理を説明するための図である。
図3図3は実際の距離と計測距離との関係を示すグラフである。
図4図4はマルチパスの影響による計測誤差が発生するメカニズムを説明するための図である。
図5A図5Aは理想的な実際の距離と計測距離と関係と、マルチパスの影響を受けた場合の実際の距離と計測距離との関係を示すグラフである。
図5B図5Bは実際の距離と計測距離の誤差との関係を示すグラフである。
図6A図6Aは実際の距離と計測誤差との関係を近似した近似モデルを示すグラフである。
図6B図6Bは計測距離の補正式を説明するためのグラフである。
図7図7は補正テーブルを説明するための図である。
図8図8は距離計算部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
図9A図9Aは設置環境毎の実際の距離と計測誤差との関係を示すグラフである。
図9B図9Bは設置環境毎の実際の距離と計測誤差との関係を近似した近似モデルを示すグラフである。
図10図10は設置環境毎の計測距離の補正式を説明するためのグラフである。
図11図11は補正テーブルを説明するための図である。
図12図12はGUI画面の例を示す図である。
図13A図13Aは距離計算部が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。
図13B図13Bは距離計算部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
図14図14は補正式の作成方法を説明するための図である。
図15A図15Aは本発明の第3実施形態に係る測距装置の概要を説明するための図である。
図15B図15Bは本発明の第3実施形態に係る測距装置の概要を説明するための図である。
図16図16は距離計算部が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。
図17図17は距離計算部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
図18図18は本発明の第4実施形態に係る測距装置の概要を説明するための図である。
図19図19は本発明の第4実施形態に係る測距装置の構成例を示す図である。
図20図20は距離計算部が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。
図21図21は距離計算部が実行する処理フローを示すフローチャートである。
図22図22は実際の距離と計測誤差との関係の近似モデルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、実施形態の全図において、同一又は対応する部分には同一の符号を付す場合がある。以下の説明では、識別情報について説明する際、「名称」等の表現を用いるが、これ以外の識別情報(例えば、識別番号等)に置換されてもよい。以下の説明では、「テーブル」、「レコード」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されてもよい。以下の説明では、機能ブロックを主語として処理を説明する場合があるが、処理の主語が、機能ブロックに代えて、CPU又は装置とされてもよい。
【0014】
<<第1実施形態>>
図1は本発明の第1実施形態に係る測距装置100の構成例を示す図である。図1に示すように、測距装置100は、レーザダイオード110と、受光センサ120と、電源130と、制御装置140と、を含む。測距装置100は、外部処理装置200と互いに情報を送受信可能に接続されている。
レーザダイオード110は、測定対象物OB1に、測定光として赤外領域の波長のパルス光を照射する照射部として機能する光源である。
【0015】
受光センサ120は、受光した光を光電変換により電気信号に変換して出力する撮像素子(例えば、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor))を含む。撮像素子は、格子状に並んだ複数の画素と、周知の読み出し回路等とを含む。受光センサ120は、露光及び非露光動作を示す露光信号を発生し出力する。受光センサ120は、レーザダイオード110から出射したパルス光が測定対象物OB1にて反射した光を受光する。
【0016】
電源130は、測距装置100を駆動するための電力を供給する。
【0017】
制御装置140は、発光制御部141と、距離計算部142と、画像処理部143と、を含む。制御装置140は、CPU等のプロセッサ及びメモリ等の記憶装置(記憶媒体)を含むコンピュータにより構成することができる。CPUは、メモリに格納されたプログラムを読み込んで実行することにより、発光制御部141、距離計算部142及び画像処理部143の各機能を実現する。なお、制御装置140は、その一部又は全部をハードウェアにより構成することもできる。例えば、制御装置140は、FPGA(Field Programmable Gate Array)等を用いて、発光制御部141、距離計算部142及び画像処理部143の機能の少なくとも一部を実現するようにしてもよい。
【0018】
発光制御部141は、露光信号に基づいて、レーザダイオード110が出力するパルス光(矩形パルス光)の発光時間及び消灯時間を制御する。なお、発光制御部141が、レーザダイオード110に発光時間及び消灯時間を制御するための発光信号を出力し、受光センサ120に露光動作及び非露光動作を示す露光信号を出力して、レーザダイオード110の発光時間及び消灯時間と、受光センサ120の露光動作及び非露光動作とを制御するようにしてもよい。
【0019】
受光センサ120は、パルス光が測定対象物OB1にて反射した反射光を検出する。受光センサ120は、露光信号が露光動作を示すタイミングで反射光を露光し、受光センサ120の各画素位置での露光量(電荷量)を電気信号に変換し出力する(受光データとして出力する。)。
【0020】
距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて、測定対象物OB1までの距離を計算する。距離計算部142は、例えば、後述の測定原理により、測定対象物OB1までの距離を計算する。なお、この補正前の測定対象物OB1までの距離は、「計測距離」と称呼される。
【0021】
距離計算部142は、補正テーブルメモリ144を含む。補正テーブルメモリ144は、例えば、データの読み出し及び書き込み可能な不揮発性の記憶装置(記憶媒体)により構成される。補正テーブルメモリ144は、便宜上、「記憶部」とも称呼される場合がある。補正テーブルメモリ144には、「複数の補正式(本例において2つの補正式)及び各補正式の適用範囲」を示す補正情報が格納されている。なお、この補正情報の詳細は、後述する。「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」は、便宜上、「補正式セット」とも称呼される場合がある。「補正式の適用範囲」は、補正式が適用される計測距離の範囲のことであり、「補正式の適用距離範囲」とも称呼される場合がある。
【0022】
距離計算部142は、距離補正演算142aを行う。具体的に述べると、距離計算部142は、画素毎の計測距離を補正テーブルメモリ144に格納された補正情報に基づいて作成(設定)された補正式に適用することにより計測距離を補正し、画素毎の補正後距離を計算する。距離計算部142は、計算した画素毎の補正後距離を距離データとして画像処理部143に送信する。なお、距離補正演算142aは、便宜上、「距離補正計算」とも称呼される場合がある。補正後距離は、便宜上、「補正後計測距離」とも称呼される場合がある。
【0023】
画像処理部143は、距離データに基づいて、距離画像を生成し、生成した距離画像を外部処理装置200に出力する。画像処理部143は、受光データに基づいて、赤外画像(IR画像)を生成し、生成した赤外画像(IR画像)を外部処理装置200に出力するようにしてもよい。
【0024】
外部処理装置200は、例えば、PC(Personal Computer)等のコンピュータである。外部処理装置200は、画像処理部143から入力された距離画像を利用する。例えば、外部処理装置200には、図示しないディスプレイが接続され、外部処理装置200は、入力された距離画像をディスプレイに表示する。なお、外部処理装置200は、画像処理部143から入力された赤外画像(IR画像)を利用してもよい。
【0025】
<本発明の課題の詳細>
ここで本発明の理解を容易にするため、本発明の課題の詳細について説明する。図2は測距装置100の距離測定の原理を説明するための図である。
【0026】
制御装置140の発光制御部141は、レーザダイオード110の発光タイミングを制御する。受光センサ120は、露光及び非露光動作を示す露光信号(露光パルス)を発生する。発光パルス及び露光パルスは、パルス幅Tを有しており、露光パルスのパルス幅Tの間に受光した反射光の露光量を電気信号に変換する。
【0027】
距離を測定するための発光露光期間は、第1の発光露光期間(A0)、第2の発光露光期間(A1)及び第3の発光露光期間(A2)を含む。
【0028】
第1の発光露光期間(A0)では、発光パルス及び露光パルスが同期している。第2の発光露光期間(A1)では、露光パルスは、発光パルスより時間Tだけ位相が遅れている。第3の発光露光期間(A2)では、露光パルスは、発光パルスよりTより長い所定時間だけ位相が遅れている。この場合において、測定対象物OB1までの距離Lは、図2の計算式(1)により計算できる(なお、計算式(1)中、cは光速を示す。S0は第1の発光露光期間(A0)の露光量を示し、S1は第2発光露光期間(A1)の露光量を示し、S2は第3発光露光期間の露光量を示す。)。なお、第3の発光露光期間(A2)では、発光パルスがオフであってもよい。
【0029】
測距装置100の設置環境が理想的な環境(理想的な状態)であれば、レーザダイオード110から出射したパルス光の反射光312のみを使用して距離演算を行うため、測定対象物OB1までの距離の変化に応じて反射光は連続的に変化する。
【0030】
従って、測距装置100の設置環境が理想的な環境(理想的な状態)である場合、図3の一点鎖線Ln1に示すように、実際の距離と計測距離との間の誤差はなく、実際の距離と計測距離との関係の線形性(以下、「距離計測結果の線形性」とも称呼される。)が確保される。
【0031】
しかし、発明者が検証した結果によれば、マルチパスの影響を強く受ける環境下で測距装置100を使用する場合、図4に示すように、距離計算に使用される露光量が、外乱反射光による影響を受けてしまう。これにより、図5Aの実線Ln2に示すように、距離計測結果の線形性が損なわれる。即ち、図5Aに示すように、実際の距離と計測距離との関係を示す実線Ln2は、変曲点を有する弓形状となる傾向にあり、図5Bに示すように、実際の距離と計測距離の誤差(計測誤差)との関係を示す実線Ln3は、変曲点を有する上に凸の山形状となる傾向にあることがわかった。
【0032】
これに対して、本発明の第1実施形態に係る測距装置100は、マルチパスが生じる環境で使用した場合に生じる計測誤差を補正することを目的として、予め変曲点で区分される計測距離範囲毎に複数の補正式及び各補正式の適用範囲を作成し、補正テーブルメモリ144に格納する。
【0033】
図6Aに示したマルチパスの影響によって生じる計測誤差(距離誤差)と実際の距離との関係を示す実線Ln4は、既述したように、上に凸の山形状のような曲線となる。従って、距離誤差は、一点鎖線Ln5で示した傾き及び切片の異なる2つの直線で示すように、距離誤差の簡易的な近似モデルを立てることができる。
【0034】
図6Bは、計測距離をX軸(横軸)とし、実際の距離をY軸(縦軸)としたXY座標系である。これに距離誤差の近似モデルを当て嵌めることによって、計測距離から実際の距離を導出する近似補正式(実線Ln7)を立てることができる。即ち、距離誤差の近似モデルは、距離誤差を有する計測距離と実際の距離との関係を示す一点鎖線Ln6で表される。一点鎖線Ln6から、計測距離と実際の距離との関係を示す実線Ln7を示す近似補正式(2つの補正式(Ynear=anearX+offsetnear及びYfar=afarX+offsetfar)及び各補正式の適用範囲)が立てられる。
【0035】
測距装置100は、この近似補正式(補正式)を用いて、計測距離を実際の距離に(実際の距離に近付くように)補正することが可能になる。
【0036】
2つの補正式は、それぞれの補正式に対応する適切な距離位置で使い分ける必要がある。このため、測距装置100は、実線Ln7の変曲点に対応する計測距離(=補正切替距離SwL)に基づいて、2つの補正式を適切に使い分ける。
【0037】
具体的に述べると、測距装置100は、計測距離が0より大きく且つ補正切替距離SwL以下の距離範囲にある場合、補正式Ynear=anearX+offsetnearを用いて、計測距離を補正する。測距装置100は、計測距離が補正切替距離SwLより大きく且つ計測最大距離Lmax以下の距離範囲にある場合、補正式Yfar=afarX+offsetfarを用いて、計測距離を補正する。なお、Ynear及びYfarは、実際の距離に対応する補正後の距離である。anear及びafar並びにoffsetnear及びoffsetfarは、使用が想定される環境に応じて予め設定される係数(固定値)を示す。anear及びafarは、互いに異なる値である。offsetnear及びoffsetfarは、互いに異なる値である。
【0038】
測距装置100は、2つの補正式(Ynear=anearX+offsetnear及びYfar=afarX+offsetfar)及び各補正式の適用範囲に基づいて、計測距離に応じた適切な補正式を用いて、計測距離を補正する。これにより、測距装置100は、距離計測結果の線形性の劣化を低減することによって、精度よく測定対象物OB1までの距離を測定することができる。
【0039】
<距離補正の概要>
測距装置100の距離計算部142の補正テーブルメモリ144には、Yを補正後距離とし、Xを計測距離とし、係数a及び係数bを変数とする補正式(Y=aX+b)と、補正テーブル710とが格納されている。
【0040】
図7は補正テーブル710を説明するための図である。なお、図7において、補正テーブル710に格納される値(数値)の例を、アルファベット及び数字等の組合せ(例えば、「anear-1」、「offsetnear-1など)で示している(図11においても同様。)。
【0041】
補正テーブル710は、情報(値)を格納するカラム(列)として、設置環境711と、A-B間補正712と、B-C間補正713と、A-B/B-C補正切替距離714とを含む。A-B間補正712は、サブカラム(列)として、傾き712aと、offset712bとを含む。B-C間補正713は、サブカラムとして、傾き713aと、offset713bとを含む。補正テーブル710には、設置環境に応じた補正式及び補正式の適用範囲を作成(設定)するための各列に対応する情報が、互いに対応付けられて行単位の情報(レコード)として格納されている。この行単位の情報(レコード)は、複数の補正式(本例において2つ)及び各補正式の適用範囲を設定するための情報であり、「補正式関連情報」と称呼される。
【0042】
具体的に述べると、設置環境711には、設置環境を識別するための識別情報(設置環境の名称)が格納されている。傾き712aには、補正式の係数aに適用される値が格納されている。offset712bには、補正式の係数bに適用される値が格納されている。傾き713aには、補正式の係数aに適用される値が格納されている。offset713bには、補正式の係数bに適用される値が格納されている。A-B/B-C補正切替距離714には、補正切替距離が格納されている。
【0043】
距離計算部142は、補正切替距離に基づいて、どの補正式(係数)を適用するかを判断する基準となる計測距離範囲であるA-B間の距離範囲及びB―C間の距離範囲を設定(特定)する。具体的に述べると、A-B間の距離は、0より大きく且つ補正切替距離SwL-1以下の範囲に設定される。B-C間の距離は、補正切替距離SwL-1より大きく且つ測定可能な計測最大距離Lmax以下の範囲に設定される。
【0044】
距離計算部142は、計測距離、並びに、係数を変数とする補正式及び補正テーブル710に基づいて、補正式に適用する係数(傾き及びoffset)を特定する。距離計算部142は、特定した係数を、係数a及び係数bを変数とする補正式(Y=aX+b)に適用することによって、計測距離の補正に使用する補正式を設定する。
【0045】
具体的に述べると、計測距離がA-B間の距離範囲である場合、距離計算部142は、補正テーブル710のA-B間補正712のサブカラムの傾き712a及びoffset712bに格納された値(anear-1、offsetnear-1)を補正式の係数の変数に適用する。これにより、距離計算部142は、補正に使用する補正式を設定する。距離計算部142は、補正式を用いて、計測距離を補正する。
【0046】
計測距離がB-C間の距離範囲である場合、距離計算部142は、補正テーブル710のB-C間補正713のサブカラムに格納された傾き713a及びoffset713bの値を補正式の係数の変数に適用する。これにより、距離計算部142は、補正に使用する補正式を設定する。距離計算部142は、補正式を用いて、計測距離を補正し、補正後の計測距離を算出する。
【0047】
なお、係数を変数とする補正式及び補正テーブル710は、予め近似モデルに基づいて作成され補正テーブルメモリ144に格納される。補正テーブル710は、測距装置100の使用が想定される設置環境において、例えば、作業者が測距装置100によってターゲットまでの距離を計測し、ターゲットまでの実際の距離と計測値との誤差に基づいて作成される。補正テーブル710は、近似モデルに基づいて作成すればよいので、少ない測定点数(実測値及び計測値)で補正テーブル710を作成できる。
【0048】
<具体的作動>
図8は距離計算部142が実行する処理フローを示すフローチャートである。距離計算部142は、所定時間が経過する毎に、図8に示す処理フローを実行することにより、画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0049】
距離計算部142は、図8のステップ800から処理を開始して以下に述べるステップ805乃至ステップ820の処理を実行した後、ステップ895に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0050】
ステップ805:距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて画素毎の計測距離を計算する。
【0051】
ステップ810:距離計算部142は、計測距離に基づいて、適用する補正式を設定(選択)する。具体的に述べると、距離計算部142は、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用した補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用した補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0052】
ステップ815:距離計算部142は、ステップ810で設定した補正式を用いて、画素毎の計測距離を補正することにより、画素毎の補正後距離を算出する。
【0053】
ステップ820:距離計算部142は、算出した画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0054】
<効果>
以上説明したように、本発明の第1実施形態に係る測距装置100は、マルチパスの影響により発生する距離誤差に対する近似モデルに基づく「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を保持し、補正式を用いて計測距離を補正する。測距装置100は、補正式として、マルチパスの影響による計測距離範囲毎の距離誤差の挙動に対応した適切な補正式(計測距離に応じた適切な補正式)を設定する。
【0055】
以上により、測距装置100は、補正式を作成するための面倒な作業を必要とすることなく、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を精度よく補正することができる。
【0056】
なお、予め補正テーブルメモリ144に格納される複数の補正式及び各補正式の適用範囲(補正情報)は、近似モデルに基づいて作成すればよいので、少ない測定点数(実測値及び計測値)で複数の補正式及び各補正式の適用範囲(補正情報)を作成できる。
【0057】
<<第2実施形態>>
本発明の第2実施形態に係る測距装置100について説明する。本発明の第2実施形態に係る測距装置100は、以下の点のみにおいて、第1実施形態に係る測距装置100と相違点を有する。
・第1実施形態に係る測距装置100では、補正テーブルメモリ144に格納されている補正テーブル710に1つの補正式関連情報が格納されている。これに対して、第2実施形態に係る測距装置100では、補正テーブルメモリ144に格納されている補正テーブル710に複数の補正式関連情報(複数の補正式(本例において2つ)及びその各補正式の適用範囲を設定するための情報)が格納されている。第2実施形態に係る測距装置100は、補正テーブルメモリ144に格納された補正テーブル710(複数の補正式関連情報)から、設置環境に最適な一つの補正式関連情報を選択し、選択した補正式関連情報に基づいて、設置環境に最適な「複数(本例において2つ)の補正式及び各補正式の適用範囲」を設定して、設定した「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を計測距離の補正に使用する。
【0058】
以下、これらの相違点を中心として説明する。
<概要>
測距装置100の設置環境のマルチパスの影響の程度に応じて、実際の距離からの計測距離の誤差である計測誤差の程度も変わる。例えば、図9Aに示すように、設置環境1、設置環境2、設置環境3及び設置環境4の計測誤差は、設置環境1に比べて設置環境2の方が大きく、設置環境2に比べて設置環境3の方が大きく、設置環境3に比べて、設置環境4の方が大きくなっている。即ち、これらの環境の計測誤差の大小関係は、設置環境1<設置環境2<設置環境3<設置環境4となっている。
従って、より精度の高い計測距離を計算するためには、設置環境に応じた適切な補正式を用いることが好ましい。
【0059】
例えば、図10に示すように、図9Bに示す設置環境毎の計測誤差の近似モデルに基づいて、設置環境1に適切な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が求められ、設置環境2に適切な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が求められ、設置環境3に適切な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が求められ、設置環境4に適切な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が求められる。
更に、図示は省略するが、設置環境5から設置環境xまでのそれぞれの環境(xは6以上の任意の整数)に適切な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が求められる。
【0060】
これらの設置環境毎の複数の「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を示す情報が、補正テーブルメモリ144に格納されている。「2つの補正式及び各補正式の適用範囲を示す情報」は、補正に使用する補正式及び補正式の適用範囲を示す補正情報であり、「係数を変数とする補正式(Y=aX+b)」と、「複数の補正式関連情報(設置環境を示す情報、補正式の係数の値及び補正切り替距離)を含む補正テーブル710」とを含む。
【0061】
図11は補正テーブル710の一例を示す図である。図11に示すように、補正テーブル710は、複数の設置環境のそれぞれに応じた補正式関連情報が格納されている点以外、第1実施形態の補正テーブル710と同様である。
【0062】
測距装置100が設置された環境下において、補正式の設定処理が実行されることによって、設置環境に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が設定される。なお、補正式の設定処理の詳細は、後述する。
【0063】
測距装置100は、設置環境に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が設定された後、計測距離に応じて最適な補正式を設定し、補正式を用いて計測距離を補正する。これにより、測距装置100は、距離計測結果の線形性の劣化を低減することによって、精度よく測定対象物OB1までの距離を測定することができる。測距装置100は、設置環境に応じて、予め補正テーブルメモリ144に格納された情報に基づく補正式を使用するので、特許文献1(特開2021-117036号公報)のように、補正式を作成及び設定するために作業者が作業をする必要がないので、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を補正することができる。
【0064】
<具体的作動>
図12は、補正式の設定処理を実行するために使用されるGUI(Graphical User Interface)を構成するGUI画面GM1の例を示す図である。GUI画面GM1は、ターゲットまでの実際の距離の入力欄1211と、キャリブレーション開始ボタン1212と、ターゲット指定画像1213と、を含む。
【0065】
入力欄1211には、ターゲットまでの実際の距離が入力される。ターゲットとは、設置環境に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定(選択)するために使用する測定対象物である。設置環境に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定する処理は、「キャリブレーション」とも称呼される場合がある。
【0066】
キャリブレーション開始ボタン1212は、測距装置100にキャリブレーションを開始させるための画像で構成されたボタンである。
【0067】
ターゲット指定画像1213は、画像中のターゲットの計測距離の測定点を指定するための画像である。この画像は、距離画像を用いても、IR画像を用いてもよい。例えば、ユーザは、入力装置を操作することによって、ターゲットにカーソルを合わせて、特定の操作を実行することなどによってターゲットの測定点を指定することができる。
【0068】
GUI画面GM1は、例えば、外部処理装置200に接続されたディスプレイのような表示装置に表示される。ユーザは、外部処理装置200に接続されたマウス、キーボード等の入力装置を介して、GUIを操作する(GUI画面GM1に情報を入力する。)。外部処理装置200は、GUI画面GM1に入力された情報を測距装置100に送信する。測距装置100の距離計算部142は、外部処理装置200から送信されたGUI画面GM1に入力された情報を取得する。
【0069】
ユーザは、GUIを操作することによって、ターゲットの測定点を指定し、ターゲットまでの距離を入力する。測距装置100の距離計算部142は、GUI画面GM1にターゲットの測定点及びターゲットまでの実際の距離が入力された状態で、ユーザによってキャリブレーション開始ボタン1212が操作されると、補正式の設定処理を開始する。
【0070】
図13Aは距離計算部142が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。ユーザにより、キャリブレーション開始ボタン1212が操作されると、距離計算部142は、図13Aのステップ1300から処理を開始して以下に述べるステップ1305乃至ステップ1325の処理を順に実行した後、ステップ1330に進む。
【0071】
ステップ1305:距離計算部142は、ユーザによってGUI画面GM1に入力されたターゲットの測定点までの正確な距離を取得する。
【0072】
ステップ1310:距離計算部142は、ターゲットの測定点までの距離の計測を開始する。
【0073】
ステップ1315:距離計算部142は、補正テーブル710の設置環境を一つ選択する。
【0074】
ステップ1320:距離計算部142は、補正テーブル710から選択した設置環境に対応する補正式関連情報を取得する。距離計算部142は、補正式関連情報に基づいて、設置環境に対応する「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定する。距離計算部142は、計測距離に適切な補正式を用いてターゲット(ターゲットの測定点)までの距離を計測する。
【0075】
ステップ1325:距離計算部142は、計測した距離とターゲットの測定点までの正確な距離(GUI画面GM1の入力欄1211に入力された実際の距離)との差である距離誤差を計算し、選択した設置環境に対応する距離誤差として、補正テーブルメモリ144に格納する(記録する。)。
【0076】
距離計算部142は、ステップ1330に進むと、補正テーブル710に格納された全ての設置環境について距離誤差を記録したか否かを判定する。
【0077】
補正テーブル710に格納された全ての設置環境について距離誤差を記録していない場合、距離計算部142はステップ1330にて「NO」と判定してステップ1335に進み、補正テーブル710に格納された設置環境のうち未選択の設置環境を選択する。
【0078】
その後、距離計算部142は、ステップ1320に戻り、再びステップ1320及びステップ1325の処理を順に実行してステップ1330に進む。
【0079】
ステップ1320乃至ステップ1335の処理が繰り返し実行されることにより、ステップ1330にて補正テーブル710に格納された全ての設置環境について距離誤差を記録している場合、距離計算部142はステップ1330にて「YES」と判定して、以下に述べるステップ1340及びステップ1345の処理を順に実行する。その後、距離計算部142は、ステップ1395に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0080】
ステップ1340:距離計算部142は、記録されたターゲットまでの距離誤差のうち最小となる距離誤差に対応する設置環境を特定し、特定した設置環境に対応する補正テーブル710の補正式関連情報を選択する。
【0081】
ステップ1345:距離計算部142は、選択した補正式関連情報を、計測距離の補正に用いる補正式関連情報として設定する。
【0082】
図13Bは距離計算部142が実行する処理フローを示すフローチャートである。距離計算部142は、所定時間が経過する毎に、図13Bに示す処理フローを実行することにより、画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0083】
距離計算部142は、図13Bのステップ1400から処理を開始して以下に述べるステップ1405乃至ステップ1420の処理を実行した後、ステップ1495に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0084】
ステップ1405:距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて画素毎の計測距離を計算する。
【0085】
ステップ1410:距離計算部142は、ステップ1345にて、補正テーブル710(計算距離に用いる補正式関連情報として設定された補正式関連情報(以下、「設定補正式関連情報」と称呼される。))及び計測距離に基づいて、適用する補正式を設定(選択)する。
【0086】
具体的に述べると、距離計算部142は、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された設定補正式関連情報の傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された設定補正式関連情報の傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用した補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0087】
ステップ1415:距離計算部142は、ステップ1410で設定した補正式を用いて、画素毎の計測距離を補正することにより、画素毎の補正後距離を算出する。
【0088】
ステップ1420:距離計算部142は、算出した画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0089】
<効果>
以上説明したように、本発明の第2実施形態に係る測距装置100は、複数の「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」から選択(設定)した設置環境に最適な「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を用いて計測距離を補正する。これにより、測距装置100は、補正式を作成するための面倒な作業を必要とすることなく、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差をより精度よく補正することができる。
【0090】
<<第2実施形態の変形例>>
第2実施形態において、測距装置100の制御装置140は、図示しない補正式自動作成部を備えていてもよい。補正式自動作成部は、以下に説明するように、2つの補正式及び補正切替距離を作成する。図14は補正式の作成方法を説明するための図である。なお、外部処理装置200が、補正式自動作成部の機能を有していてもよい。
【0091】
実測線Ln11は、実測値に基づく補正式を示す線である。補正式自動作成部は、実測値に基づく補正式を示す実測線Ln11を表す情報が入力されると、実測線Ln11に基づいて補正式を作成する。
【0092】
補正式自動作成部は、実際の距離が1/2LmaxのB点の直線(破線SL1)上における、理想線Ln2と実際の距離が1/2Lmaxの直線(破線SL1)との交点P1と、実測線Ln11と実際の距離が1/2Lmaxの直線(破線SL1)との交点P2との間の距離L10を所定の数n1(本例においてn1=6)で割ることにより、所定間隔d1を計算する。
【0093】
補正式自動作成部は、理想線Ln2と1/2Lmaxの直線(破線SL1)との交点P1から計測距離が大きい方向に、所定間隔d1毎に点を所定数n2(本例においてn2=8)だけプロットする。なお、このプロットした所定数の点は、「第1の点」と称呼する。
【0094】
補正式自動作成部は、実際の距離が1/2Lmaxより短いA点の距離の直線(破線SL2)上における、理想線Ln2とA点の距離の直線(破線SL2)との交点P3と、実測線Ln11とA点の距離の直線(破線SL2)との交点P4との間の距離を所定の数n1で割ることにより、所定間隔d2を計算する。
【0095】
補正式自動作成部は、理想線Ln2とA点の距離の直線(破線SL2)との交点P3から計測距離が大きい方向に、所定間隔d2毎に点を所定数n2だけプロットする。なお、このプロットした所定数の点は、「第2の点」と称呼する。
【0096】
補正式自動作成部は、実際の距離が1/2Lmaxより長いC点の距離の直線(破線SL3)上における、理想線Ln2とC点の距離の直線(破線SL3)との交点P5と、実測線Ln11とC点の距離の直線(破線SL3)との交点P6との間の距離を所定の数n1で割ることにより、所定間隔d3を計算する。
【0097】
補正式自動作成部は、理想線Ln2とC点の距離の直線(破線SL3)との交点P5から計測距離が大きい方向に、所定間隔d3毎に点を所定数n2だけプロットする。なお、このプロットした所定数の点は、「第3の点」と称呼する。
【0098】
補正式自動作成部は、理想線Ln2との交点から計測距離が大きい方向に数えた場合の順番が対応する第1の点、第2の点及び第3の点の各点の間を結ぶことにより、複数の直線を作成する。
【0099】
補正式自動作成部は、この複数の直線から、それぞれの直線を表す補正式と、変曲点とを求める。
【0100】
補正式自動作成部は、各補正式から係数と、各変曲点から補正切替距離とを取得し、設置環境の識別情報(設置環境の名称)に対応付けることにより複数の補正式関連情報を作成し、作成した複数の補正式関連情報を補正テーブルメモリ144に格納された補正テーブル710に格納する。
【0101】
<効果>
第2実施形態の変形例によれば、測距装置100は、実測値に基づく補正式から複数の「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を自動で作成できる。これにより、第2実施形態の変形例は、複数の「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を作成するための手間を削減できる。
【0102】
<<第3実施形態>>
本発明の第3実施形態に係る測距装置100について説明する。第3実施形態に係る測距装置100は、以下の点のみにおいて、第2実施形態に係る測距装置100と相違点を有する。
・第3実施形態に係る測距装置100は、分割した画像領域毎に、最適な補正式を設定する。
【0103】
以下、この相違点を中心として説明する。
<概要>
図15A及び図15Bは第3実施形態に係る測距装置100の概要を説明するための図である。部屋の領域に応じてマルチパスの影響の程度が異なることにより、計測距離と実際の距離との関係を示す線が異なることが生じ得る。この場合、図15A及び図15Bに示すように、画像領域毎に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が異なる。そこで、測距装置100は、画像領域毎に最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定する。
【0104】
<具体的作動>
図示は省略するが、例えば、GUI画面GM1は、ユーザが入力装置を操作することによって、GUI画面GM1に画像を分割する境界を示す線を入力できるようになっている。
【0105】
ユーザは、入力装置を操作することによって、GUI画面GM1に分割する境界を示す線及び線によって分割された後の画像領域毎のターゲットの測定点の指定及びターゲットの測定点までの実際の距離を入力する。
【0106】
ユーザは、GUI画面GM1に、分割する境界を示す線、分割された後の画像領域毎のターゲットの測定点の指定及びターゲットの測定点までの実際の距離が入力された状態で、キャリブレーション開始ボタン1212を操作すると、測距装置100の距離計算部142は、補正式の設定処理を開始する。
【0107】
図16は距離計算部142が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。ユーザにより、キャリブレーション開始ボタン1212が操作されると、距離計算部142は、図16のステップ1600から処理を開始して以下に述べるステップ1605乃至ステップ1615の処理を順に実行する。
【0108】
ステップ1605:距離計算部142は、分割された画像領域のうちの未選択の画像領域を一つ選択する。
【0109】
ステップ1610:距離計算部142は、「測距装置100」から「選択した画像領域のターゲットの測定点」までの正確な距離を取得する。
【0110】
ステップ1615:距離計算部142は、「測距装置100」から「選択した画像領域のターゲットの測定点」までの距離の計測を開始する。
【0111】
その後、距離計算部142は、既述のステップ1315乃至ステップ1340の処理を実行する。これにより、距離計算部142は、選択した画像領域について、ターゲットまでの距離誤差が最小になる設置環境に対応する補正式関連情報を選択する。
【0112】
その後、距離計算部142は、ステップ1620に進み、選択した補正式関連情報を、選択した画像領域に存在する測定対象物の距離計算の補正に使用する補正式関連情報に設定した後、ステップ1625に進む。
【0113】
距離計算部142は、ステップ1625に進むと、全ての画像領域に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されたか否かを判定する。
【0114】
全ての画像領域に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されていない場合、距離計算部142は、ステップ1625にて「NO」と判定してステップ1605に戻る。
【0115】
全ての画像領域に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されている場合、距離計算部142は、ステップ1625にて「YES」と判定してステップ1695に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0116】
図17は距離計算部142が実行する処理フローを示すフローチャートである。距離計算部142は、所定時間が経過する毎に、図17に示す処理フローを実行することにより、画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0117】
距離計算部142は、図17のステップ1700から処理を開始して以下に述べるステップ1705乃至ステップ1720の処理を実行した後、ステップ1795に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0118】
ステップ1705:距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて画素毎の計測距離を計算する。
【0119】
ステップ1710:距離計算部142は、画像領域、計測距離及び補正テーブル710(ステップ1620にて各画像領域に対して設定された補正式関連情報(設定補正式関連情報))に基づいて、適用する補正式を設定(選択)する。
【0120】
例えば、画像領域が第1画像領域及び第2画像領域に分割されていたと仮定する。この場合、距離計算部142は、測定対象物が存在する画素領域が第1画像領域である場合において、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された第1画像領域に対する設定補正式関連情報の傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。そして、距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、測定対象物が存在する画素領域が第1画像領域である場合において、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された第1画像領域に対する設定補正式関連情報の傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0121】
距離計算部142は、測定対象物が存在する画素領域が第2画像領域である場合において、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された第2画像領域に対する設定補正式関連情報の傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。そして、距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、測定対象物が存在する画素領域が第2画像領域である場合において、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された第2画像領域に対する設定補正式関連情報の傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0122】
ステップ1715: 距離計算部142は、ステップ1710で設定した補正式を用いて、計測距離を補正することにより、補正後距離を算出する。
【0123】
ステップ1720:距離計算部142は、算出した画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0124】
<効果>
以上説明したように、本発明の第3実施形態に係る測距装置100は、画像領域毎に、複数の「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」から選択(設定)した設置環境に最適な「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を用いて計測距離を補正する。これにより、測距装置100は、補正式を作成するための面倒な作業を必要とすることなく、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差をより精度よく補正することができる。
【0125】
<<第4実施形態>>
本発明の第4実施形態に係る測距装置100について説明する。本発明の第4実施形態に係る測距装置100は、以下の点のみにおいて、第2実施形態に係る測距装置100と相違点を有する。
・第4実施形態に係る測距装置100は、設置環境の状態が変化した場合に、変化した状態に応じた最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定する。
【0126】
以下、この相違点を中心として説明する。
<概要>
図18は第4実施形態に係る測距装置100の概要を説明するための図である。図18に示すように、比較的狭い部屋1800では、ドアDR1の開閉によりマルチパスによる距離誤差が生じる。例えば、ドアDR1が閉まっている状態Aは、ドアDR1が開いている状態Bに比べてマルチパスが距離誤差に与える影響の程度が大きい。従って、同じ設置環境であっても、設置環境の状態に応じて、最適な「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」が異なる。
【0127】
そこで、第4実施形態に係る測距装置100は、固定点P18までの距離を測定し測定した距離の変化に基づいて、状態が変化したことを判定する。測距装置は、状態が変化した場合に状態に応じた「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」を設定し、「2つの補正式及び各補正式の適用範囲」に基づいて、計測距離に応じた補正式を使用して、計測距離を補正する。
【0128】
これにより、測距装置100は、距離計測結果の線形性の劣化を低減することによって、精度よく測定対象物までの距離を測定することができる。測距装置100は、設置環境及びその状態に応じて、予め補正テーブルメモリ144に格納された補正式を使用するので、特許文献1(特開2021-117036号公報)のように、補正式を設定するために、作業者が作業をする必要がないので、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差を補正することができる。
【0129】
<構成>
図19は、本発明の第4実施形態に係る測距装置100の構成例を示す図である。図19に示すように、測距装置100は、距離比較部1900を備える。距離比較部1900は、所定時間が経過する毎に固定点P18の補正後距離を距離計算部142から取得する。距離比較部1900は、固定点P18の補正後距離に基づいて距離変化(例えば、所定時間当たりの距離変化量)を計算し、距離変化に基づいて設置環境の状態変化を判定し、判定結果を距離計算部142に入力する。以上の点以外は、図1に示した測距装置100と同様である。
【0130】
<具体的作動>
ユーザは、入力装置を操作することによって、GUI画面GM1に設定対象の設置環境の状態、ターゲットの測定点の指定及びターゲットの測定点までの実際の距離を入力する。なお、図示は省略するが、GUI画面GM1は、設定対象の設置環境の1以上の状態の名称を入力できるようになっている。
【0131】
測距装置100の距離計算部142は、ユーザによって、GUI画面GM1に、設定対象の設置環境の状態、ターゲットの測定点の指定及びターゲットまでの実際の距離が入力された状態で、キャリブレーション開始ボタン1212が操作されると、補正式の設定処理を開始する。
【0132】
図20は距離計算部142が実行する補正式の設定処理の処理フローを示すフローチャートである。
ユーザによってキャリブレーション開始ボタン1212が操作されると、距離計算部142は、図20のステップ2000から処理を開始してステップ2005に進み、設定対象の設置環境の状態のうちの未選択の状態を一つ選択する。
【0133】
その後、距離計算部142は、既述のステップ1310を実行した後、ステップ2010に進み、選択した状態においてターゲットの測定点までの距離の計測を開始する。その後、距離計算部142は、既述のステップ1315乃至ステップ1340の処理を実行する。これにより、距離計算部142は、選択した状態に対して、ターゲットまでの距離誤差が最小になる設置環境に対応する補正式関連情報を選択する。
【0134】
その後、距離計算部142は、ステップ2015に進み、選択した補正式関連情報を、選択した状態においての距離計算の補正に使用する「補正式関連情報」に設定した後、ステップ2020に進む。
【0135】
距離計算部142は、ステップ2020に進むと、全ての状態に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されたか否かを判定する。
【0136】
全ての状態に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されていない場合、距離計算部142は、ステップ2020にて「NO」と判定してステップ2005に戻る。
【0137】
全ての状態に対して、補正に使用する「補正式関連情報」が設定されている場合、距離計算部142は、ステップ2020にて「YES」と判定してステップ2095に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0138】
図21は距離計算部142が実行する処理フローを示すフローチャートである。距離計算部142は、所定時間が経過する毎に、図21に示す処理フローを実行することにより、画素毎の補正後の距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0139】
距離計算部142は、図21のステップ2100から処理を開始して以下に述べるステップ2105乃至ステップ2125の処理を順に実行した後、ステップ2195に進んで本処理フローを一旦終了する。
【0140】
ステップ2105:距離計算部142は、受光センサ120からの電気信号(露光量)に基づいて画素毎の計測距離を計算する。
【0141】
ステップ2110:距離計算部142は、距離比較部1900による設置環境の状態の判定結果に基づいて、設置環境の状態を判定する。なお、距離比較部1900による設置環境の状態の判定は、次のように行われる。例えば、初期設定の状態は、実際の設置環境の状態に応じた状態A及び状態Bの何れかに設定されている。以下の説明では、初期設定の状態が状態Aであると仮定する。距離比較部1900は、所定時間当たりの固定位置までの補正後距離の距離変化を取得している。距離比較部1900は、距離変化の絶対値が閾値以上であるか否かを判定する。距離変化の絶対値が閾値以上である場合、距離比較部1900は、状態Aから状態Bに変化したと判定する(即ち、状態Bと判定する。)。距離変化の絶対値が閾値より小さい場合、距離比較部1900は、状態Aから状態Bに変化していないと判定する(即ち、状態Aと判定する。)。
【0142】
一方、状態Bにおいて、距離変化の絶対値が閾値以上である場合、距離比較部1900は、状態Bから状態Aに変化したと判定する(即ち、状態Aと判定する。)。距離変化の絶対値が閾値より小さい場合、距離比較部1900は、状態Bから状態Aに変化していないと判定する(即ち、状態Bと判定する。)。
【0143】
ステップ2115:距離計算部142は、判定した状態、計測距離及び補正テーブル700(ステップ2015に各状態に対して設定された補正式関連情報(設定補正式関連情報))に基づいて、適用する補正式を設定(選択)する。
【0144】
距離計算部142は、判定した状態が状態Aである場合において、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された状態Aに対する設定補正式関連情報の傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。そして、距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、判定した状態が状態Aである場合において、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された状態Aに対する設定補正式関連情報の傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0145】
距離計算部142は、判定した状態が状態Bである場合において、計測距離がA-B間である場合、A-B間補正712に格納された状態Bに対する設定補正式関連情報の傾き712a及びoffset712bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。そして、距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。距離計算部142は、判定した状態が状態Bである場合において、計測距離がB-C間である場合、B-C間補正713に格納された状態Bに対する設定補正式関連情報の傾き713a及びoffset713bの値を、係数を変数とする補正式に適用する。距離計算部142は、この補正式を、距離補正に使用する補正式として設定する。
【0146】
ステップ2120: 距離計算部142は、ステップ2115で設定した補正式を用いて、計測距離を補正することにより、補正後距離を算出する。
【0147】
ステップ2125:距離計算部142は、算出した画素毎の補正後距離(距離データ)を画像処理部143に出力する。
【0148】
<効果>
以上説明したように、本発明の第4実施形態に係る測距装置100は、設置環境の状態毎に、複数の「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」から選択(設定)した設置環境に最適な「複数の補正式及び各補正式の適用範囲」を用いて計測距離を補正する。これにより、測距装置100は、補正式を作成するための面倒な作業を必要とすることなく、簡単にマルチパス現象により発生する距離誤差をより精度よく補正することができる。
【0149】
<<他の変形例>>
本発明は上記各実施形態及び上記変形例に限定されることなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。更に、上記各実施形態及び上記変形例は、本発明の範囲を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0150】
設置環境によっては、実際の距離と計測誤差との関係が、図22の線Ln21に示すような形状になる場合がある。この場合、傾き及び切片が異なる2本の直線での近似モデルより、傾き及び切片が異なる3本の直線での近似モデル(線Ln22)を立てておく方がより優れた補正の効果を得ることができる。従って、このような近似モデルから計測距離に対して3つの近似補正式を立てるようにしてもよい。
【0151】
この場合、例えば、係数を変数とする補正式(Y=aX+b)と、補正式関連情報として、設置環境を示す識別情報と、各適用範囲の補正式の係数の値と、2つの補正切替距離(SwL1及びSwL2)とが互いに対応付けられた情報が補正テーブル710に格納される。距離計算部142は、補正式関連情報から補正に使用する補正式及び補正式の適用範囲を設定する。上記各実施形態において、適用範囲毎の補正式(近似補正式)が4つ以上であってもよい。
【0152】
本発明は、以下の構成をとることもできる。
【0153】
[1]
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置に適用される距離補正方法であって、
前記制御装置によって、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する、
距離補正方法。
【0154】
[2]
測定対象物に測定光を照射する照射部と、
前記測定対象物からの反射光を受光し、前記反射光に基づく露光量を検出する受光センサと、
複数の補正式及び各補正式の適用距離範囲を含む補正式セットを示す補正情報を格納する記憶部を含み、前記露光量に基づいて前記測定対象物までの計測距離を計算する制御装置と、
を備えた測距装置の制御装置に前記計測距離の補正処理を実行させる測距プログラムであって、
前記制御装置に、
前記記憶部に格納された前記補正情報に基づいて、
前記補正式セットに含まれる複数の補正式のうちの、前記計測距離が含まれる前記適用距離範囲に対応する前記補正式を用いて、前記計測距離を補正することにより、補正後計測距離を算出する処理を実行させる
測距プログラム。
【符号の説明】
【0155】
100…測距装置、110…レーザダイオード、120…受光センサ、130…電源、140…制御装置、141…発光制御部、142…距離計算部、143…画像処理部、144…補正テーブルメモリ、200…外部処理装置
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22