(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072177
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ファンの取付構造
(51)【国際特許分類】
F04D 29/64 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
F04D29/64 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182892
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】504027657
【氏名又は名称】株式会社イーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】永江 公二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 昌洋
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB02
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC11
3H130BA13C
3H130BA13D
3H130CB07
3H130DA02X
3H130DD01Z
3H130EA04C
3H130EA04D
3H130EB02C
3H130ED02C
3H130ED02D
(57)【要約】
【課題】簡易な構造でファン起動時の振動音を低減することができ且つモータの制御を容易として送風機の生産性を向上させることができるファンの取付構造を提供する。
【解決手段】外周面17の一部に平坦なDカット面18が形成された横断面D字状のDカット軸部16と、Dカット軸部16の先端に形成された雄ねじ部21と、を有する駆動軸15と、駆動軸15が嵌入されるファンボス10を有しファンボス10の内周面11の一部にDカット面18に対応する平坦なD平面12が形成されているファン2と、雄ねじ部21に螺合しファンボス10に嵌入された駆動軸15をワッシャ24を介してファンボス10に固定するナット23と、を具備し、Dカット面18を除くDカット軸部16の先端角部には、面取り部19が形成されており、ワッシャ24と面取り部19の間には、C字環状に形成されたCリング22が設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面の一部に平坦なDカット面が形成された横断面D字状のDカット軸部と、前記Dカット軸部の先端に形成された雄ねじ部と、を有する駆動軸と、
前記駆動軸が嵌入されるファンボスを有し前記ファンボスの内周面の一部に前記Dカット面に対応する平坦なD平面が形成されているファンと、
前記雄ねじ部に螺合し前記ファンボスに嵌入された前記駆動軸をワッシャを介して前記ファンボスに固定するナットと、を具備し、
前記Dカット面を除く前記Dカット軸部の先端角部には、面取り部が形成されており、
前記ワッシャと前記面取り部の間には、C字環状に形成されたCリングが設けられていることを特徴とするファンの取付構造。
【請求項2】
前記ファンが前記駆動軸に固定された状態において、前記Cリングは、前記ワッシャ、前記面取り部、及び前記ファンボスの前記内周面、に当接していることを特徴とする請求項1に記載のファンの取付構造。
【請求項3】
前記Dカット軸部の先端面は、前記ファンボスの先端面よりも先端側に位置して前記ワッシャに当接し、
前記ファンボスの先端面は、前記ワッシャに密着しないことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファンの取付構造。
【請求項4】
前記ナットが締め付けられる前において、前記Cリングは、前記Dカット軸部の先端面よりも先端側に突出していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファンの取付構造。
【請求項5】
前記ナットが締め付けられる前において、前記Cリングの中心径は、前記面取り部の内径よりも大きく、前記Cリングの外径は、前記ファンボスの内径よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファンの取付構造。
【請求項6】
前記駆動軸は、電動機の出力軸であり、
前記電動機は、磁界位置検出センサを有しないブラシレスDCモータであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のファンの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和装置等に用いられるファンの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
空気調和装置等で利用される送風機として、駆動軸の先端に送風用のファンを取り付けたものがある。この種の送風機におけるファンの取付構造として、駆動軸の先端側の外周面に、駆動軸を横断面略D字状とするDカット面を形成することが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、先端部にDカット部を形成し、Dカット部の先端に螺子部を形成した回転軸と、回転軸を挿通する挿通孔を中心に形成し、挿通孔にDカット部と対応した平坦部を形成した略円筒状のボス部を備えたファンとからなり、挿通孔に回転軸を挿通すると共に、螺子部をナットにより締結することにより、ファンを回転軸の一端に取付けてなるファンの取付構造が開示されている。
【0004】
また例えば、特許文献2には、モータによって回転駆動される駆動軸を、ファンロータに設けたボス部に貫挿させると共に、駆動軸の回転力がファンロータに伝達されるように駆動軸とボス部とをDカット構造で連結し、駆動軸の先端側に取り付けたナットによってファンロータの軸線方向の移動を規制するように構成したファン装置が開示されている。
【0005】
このようなファンの取付構造では、外周面の一部にDカット面が形成され横断面略D字状になった駆動軸を、内周面が横断面略D字状になるようにD平面が形成されたファンボスの軸孔に嵌入することにより、駆動軸とファンボスが接続される。
【0006】
このような取付構造により、駆動軸に形成されたDカット面とファンボスに形成されたD平面との接触によってファンボスに対する駆動軸の空転が抑えられ、駆動軸の回転動力が効率良くファンに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10-61595号公報
【特許文献2】特開2000-145694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来技術のように、Dカット構造でファンと駆動軸とを連結する構造においては、送風機の運転時に振動音が発生するという問題点があった。
これに対して特許文献1には、挿通孔に対応する回転軸の外周部に、予め充填剤を塗布し、回転軸を挿通孔に挿通した後硬化させることにより、ボス部を回転軸に密着固定することが開示されている。また、同文献には、ボス部と回転軸との嵌合公差を、しまり嵌めにすることが開示されている。このような構成により、回転軸に伝わりファンに伝達される振動を防止し、騒音を低減することができるとしている。
【0009】
また、特許文献2に開示されたファン装置では、ナットとボス部との間に弾性体を介在させ、これによってファンロータは弾性体の伸縮による軸線方向の移動が許容されている。このような構成により、モータから駆動軸に伝達された振動は弾性体の伸縮によって吸収され、ファンロータに伝わる振動が減衰するので、異音を低減することができるとしている。
【0010】
しかしながら、上記した従来技術のファンの取付構造は、送風機の騒音を抑えると共に、送風機の生産性を向上させるために改善すべき点がある。
具体的には、上記した従来技術のファンの取付構造では、モータの駆動制御が高精度に行われない場合に、振動音が発生し易いという問題点がある。例えば、モータの回転状況を正確に検出するホール素子等の磁界位置検出センサを有しないセンサレスのブラシレスDCモータを使用した場合に異音が発生し易い。特に、モータの起動直後にガタガタという機械的な振動音が発生する。
【0011】
詳しくは、センサレス制御のモータでは、起動時に同期制御が必要であり、同期制御区間において、機械角に対する好適な電気角の制御が難しく、駆動軸とファンボスとの間に回転速度差による周方向の振れが生じ易い。このような駆動軸とファンボスの回転振動によって、駆動軸のDカット面とファンボス内周のDカット平面との機械的な衝突が繰り返されて衝突音が発生すると考えられる。従来技術のファンの取付構造では、このようなセンサレス制御等においてモータ起動直後に発生する異音を低減することは容易ではなかった。
【0012】
例えば、特許文献1に開示された従来技術のように回転軸の外周部に充填剤を塗布する構成では、振動によって充填剤の滑りやナット締結の緩みが生ずる恐れがある。また、送風機を生産する材料として充填剤が必要であると共に、生産工程においては充填剤を塗布する工程等が必要である。また、ボス部と回転軸とを、しまり嵌めにする構造では、その嵌合組み立ては容易ではない。
【0013】
また、特許文献2に開示された従来技術のようにナットとボス部との間に弾性体を介在させる構成においては、駆動軸に対してボス部の移動が許容されるので、Dカット面の衝突によって異音が発生する恐れがある。また、振動によってナットが緩み、衝突音が激しくなる恐れもある。
【0014】
また一般に、芋ねじ等の固定部品を利用してボス部をDカット構造の軸に固定する構造が知られている。しかしながら、芋ねじ等を利用した固定方法では、芋ねじ等の固定部品が必要であると共に、ボス部には、芋ねじ等に螺合する金属製の固定部材を設ける必要がある。また、ボス部及び固定部材にねじ穴を加工する工程、芋ねじ等を締結する工程等も必要であり生産性に劣る。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造でファン起動時の振動音を低減することができ且つモータの制御を容易として送風機の生産性を向上させることができるファンの取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のファンの取付構造は、外周面の一部に平坦なDカット面が形成された横断面D字状のDカット軸部と、前記Dカット軸部の先端に形成された雄ねじ部と、を有する駆動軸と、前記駆動軸が嵌入されるファンボスを有し前記ファンボスの内周面の一部に前記Dカット面に対応する平坦なD平面が形成されているファンと、前記雄ねじ部に螺合し前記ファンボスに嵌入された前記駆動軸をワッシャを介して前記ファンボスに固定するナットと、を具備し、前記Dカット面を除く前記Dカット軸部の先端角部には、面取り部が形成されており、前記ワッシャと前記面取り部の間には、C字環状に形成されたCリングが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明のファンの取付構造は、外周面の一部に平坦なDカット面が形成された横断面D字状のDカット軸部と、前記Dカット軸部の先端に形成された雄ねじ部と、を有する駆動軸と、前記駆動軸が嵌入されるファンボスを有し前記ファンボスの内周面の一部に前記Dカット面に対応する平坦なD平面が形成されているファンと、前記雄ねじ部に螺合し前記ファンボスに嵌入された前記駆動軸をワッシャを介して前記ファンボスに固定するナットと、を具備し、前記Dカット軸部の先端角部には、面取り部が形成されており、前記ワッシャと前記面取り部の間には、C字環状に形成されたCリングが設けられている。このようなCリングを備えた構成により、ナットの締結でファンボスと駆動軸とを強固に固定することができる。具体的には、ナットの締結によってCリングを介して駆動軸の面取り部を押圧し、駆動軸のDカット面をファンボスのD平面に当接させて押圧することができる。よって、ファンボスと駆動軸との相対的な移動、接触面の変化及びそれによる振動をなくし、振動音の発生を抑制することができる。また、ナット締結の緩みを防止してファンボスと駆動軸との強固な固定を維持することができ、ナットが緩むことによる振動音の発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明のファンの取付構造では、前記ファンが前記駆動軸に固定された状態において、前記Cリングは、前記ワッシャ、前記面取り部、及び前記ファンボスの前記内周面、に当接している。これにより、Cリングを介してワッシャ、面取り部、及びファンボスの内周面を好適に強く固定することができる。よって、振動による異音の発生を抑えることができる。
【0019】
また、本発明のファンの取付構造では、前記Dカット軸部の先端面は、前記ファンボスの先端面よりも先端側に位置して前記ワッシャに当接し、前記ファンボスの先端面は、前記ワッシャに密着しない。これにより、例えば、金属製のボス部を有しない合成樹脂製のファンボスを採用する構成において、金属製のワッシャと駆動軸とを確実に接触させて強く固定し、ナットの緩みを防止することができる。よって、ナットの緩みによる振動音の再発生を抑制することができると共に、金属製のボス部を有しない低コストなファンを採用することができ、送風機の生産性を高めることができる。
【0020】
また、本発明のファンの取付構造では、前記ナットが締め付けられる前において、前記Cリングは、前記Dカット軸部の先端面よりも先端側に突出している。これにより、ナット締め付け時に、ワッシャとCリングとが確実に接触する。よって、ナットの締め付けによって、Cリングを確実に押圧して面取り部に押し当て、Cリングを駆動軸の径方向に拡張変形させてファンボスの内周面に押し付けて、駆動軸とファンボスとを確実に固定することができる。
【0021】
また、本発明のファンの取付構造では、前記ナットが締め付けられる前において、前記Cリングの中心径は、前記面取り部の内径よりも大きく、前記Cリングの外径は、前記ファンボスの内径よりも小さい。このようにナットが締め付けられる前にCリングの中心径が面取り部の内径よりも大きいことにより、ナットを締め付けた際、Cリングは確実に面取り部に当接して押圧される。これにより、Cリングは、径方向に押し広げられてファンボスの内周面を押圧する。また、ナットが締め付けられる前にCリングの外径がファンボスの内径よりも小さいことにより、Cリングをファンボスの内部に容易に挿入することができる。よって、Cリングは、ファンボスの内部に挿入されてから、ナットの締め付けによって径方向に拡張してファンボスの内周面に当接して内周面を押圧する。このように、Cリングによるファンボスの内周面の固定を容易且つ確実に行うことができる。
【0022】
また、本発明のファンの取付構造では、前記駆動軸は、電動機の出力軸であり、前記電動機は、磁界位置検出センサを有しないブラシレスDCモータであっても良い。本発明のファンの取付構造によれば、機械角に対する好適な電気角の制御が難しいセンサレス制御のモータであっても、Dカット構造から生ずる振動音を低減することができる。よって、磁界位置検出センサを有しない安価なモータを採用して部品コストを抑えると共に、モータの配線数を減らして送風機の生産性を高め、生産コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る送風機の概略構成を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る送風機のファンの取付部近傍を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る送風機の駆動軸の取付構成を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る送風機のファンボスとDカット軸部の横断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る送風機の駆動軸にCリングを取り付けた状態を示す分解斜視図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る送風機のファンボスの先端近傍を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る送風機のCリング近傍を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る送風機のナットを締め付ける前のCリング近傍を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る送風機1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る送風機1の概略構成を示す図である。
図1に示すように、送風機1は、回転して風を送るファン2と、ファン2を回転させるモータ3と、モータ3を制御する制御装置4と、を有する。
【0025】
送風機1は、図示しない空気調和装置等に用いられる装置であり、蒸発器で冷媒に冷却された空気または凝縮器で冷媒に加熱された空気等を室内、室外等に送る装置である。例えば、送風機1は、図示しないパッケージエアコンの室外機等に設けられ、室外熱交換器で冷却または加熱された空気を室外に吹き出す送風装置として利用されても良い。
【0026】
また、送風機1は、図示を省略するが、利用側ユニットと熱源側ユニットが一つの架台上に一体的に設けられた移動可能な強力スポットエアコン等に装備されても良い。このような装置において、送風機1は、熱源側ユニットで冷却または加熱された空気を室外等に送る装置として用いられると共に、利用側ユニットで冷却または加熱された空気を工場、作業場、倉庫、体育館等の空調を必要とする大空間に送る装置として利用されても良い。
また、送風機1は、図示しない空調用ダクト等に設けられ空気調和用の空気を送る装置として利用されても良い。
【0027】
ファン2は、回転しながら回転軸方向に空気を送る羽根板を有する軸流ファンであり、例えば、プロペラファン等である。ファン2は、例えば、合成樹脂製の材料から形成されている。なお、ファン2の形式は、図示を省略するが、遠心ファン、シロッコファン、ターボファン、クロスフローファン等であっても良い。
【0028】
ファン2の中心部には、ファンボス10が設けられている。ファンボス10には、モータ3の回転動力をファン2に伝達する駆動軸15が取り付けられている。駆動軸15は、モータ3の出力軸であり、鋼材等の金属材料から形成されている。なお、駆動軸15は、モータ3の出力軸に、図示しないベルト、プーリ、チェーン、スプロケット等の動力伝達機構を介して動力伝達可能に接続されても良い。
【0029】
モータ3は、ファン2を回転させる動力装置であり、具体的には電動機である。例えば、モータ3は、ホール素子等の磁界位置検出センサ、即ち出力軸の回転位置を検出するセンサ、を有しないブラシレスDCモータ(無整流子電動機)であっても良い。
【0030】
詳細については後述するが、本実施形態に係るファン2の取付構造によれば、モータ3が、機械角に対する好適な電気角の制御が難しいセンサレス制御のブラシレスDCモータであっても、ファン2と駆動軸15の連結構造から生ずる振動音を低減することができる。磁界位置検出センサを有しないブラシレスDCモータは安価であるので、送風機1のコストを削減し、生産性を高めることができる。
【0031】
制御装置4は、モータ3に駆動電力を供給しモータ3の運転を制御する装置である。制御装置4には、モータ3を駆動するためのインバータ基板等が設けられている。そのため、モータ3は、インバータ基板を内装しない形式の電動機で良い。これにより、モータ3のコストを低減することができる。また、モータ3と制御装置4とを接続する配線26の数を減らすことができるので、配線26のコストを削減すると共に配線26の接続作業を容易にして送風機1の生産性を高めることができる。
【0032】
また、モータ3は、磁界位置検出センサを有しないブラシレスDCモータであるので、磁界位置検出センサが内蔵された形式のブラシレスDCモータに比べてモータ3と制御装置4とを接続する配線26の数を減らすことができる。具体的には、モータ3と制御装置4とを接続する配線26は、モータ3を駆動する電源配線のみ、例えば、第1相(U)、第2相(V)及び第3相(W)の3相配線のみで良い。よって、送風機1は、配線26の材料コストを削減できると共に、配線26の接続作業が容易であり生産性の観点から優位である。
【0033】
図2は、送風機1のファン2の取付部近傍の概略構成を示す図である。
図2に示すように、ファンボス10は、ファン2の羽根板等(
図1参照)と同じく合成樹脂製の材料から形成され、略円筒状の形態をなし、駆動軸15に外嵌されている。具体的には、ファンボス10と駆動軸15との嵌合は、組み立てが容易な、すきま嵌め若しくは中間嵌めが良い。
【0034】
駆動軸15には、ファンボス10を支持する支持部材25が設けられている。支持部材25は、駆動軸15の先端側から外嵌されたファンボス10をモータ3(
図1参照)側から支持する部材である。具体的には、支持部材25は、例えば、軸用E型止め輪である。支持部材25として、軸用C型止め輪が用いられても良い。駆動軸15には、支持部材25が嵌められる図示しない溝が形成されており、その溝に支持部材25が嵌め込まれ、ファンボス10を支持する。
【0035】
駆動軸15の先端には、雄ねじ部21が形成されている。雄ねじ部21には、ファンボス10に嵌入された駆動軸15をワッシャ24及びCリング22を介してファンボス10に固定するナット23が螺合されている。即ち、ナット23の締結によって駆動軸15にファンボス10が固定されている。
【0036】
図3は、送風機1の駆動軸15の取付構成を示す分解斜視図である。
図2及び
図3を参照して、駆動軸15に嵌められたファンボス10の先端側にCリング22が設けられ、Cリング22よりも更に先端側にワッシャ24が設けられ、ワッシャ24よりも更に先端側の雄ねじ部21にナット23が螺合される。
【0037】
このような構成により、ファンボス10は、モータ3側が支持部材25に当接して支持された状態で、先端側がナット23の締結によってワッシャ24及びCリング22を介して先端側から押圧され、駆動軸15に固定される。
【0038】
図3に示すように、駆動軸15は、外周面17の一部に平坦なDカット面18が形成されたDカット軸部16を有する。Dカット軸部16は、
図2に示すように、ファンボス10に嵌め込まれる部分に形成されている。また、駆動軸15の雄ねじ部21は、Dカット軸部16の先端に形成されている。
【0039】
図4は、駆動軸15のDカット軸部16とファンボス10の横断面図であり、
図2に示すA-A断面を示している。
図4に示すように、Dカット軸部16は、外周面17の一部に平坦なDカット面18が形成され横断面略D字状の形態を成す。
【0040】
駆動軸15が嵌入されるファンボス10の軸孔も、Dカット軸部16に対応する形状に形成されている。具体的には、ファンボス10の軸孔には、先端側の内周面11の一部に駆動軸15のDカット面18に対応する平坦なD平面12が形成されている。D平面12が形成された部分のファンボス10の軸孔の形状は、駆動軸15のDカット軸部16と略同等の横断面略D字状である。
【0041】
駆動軸15のDカット面18と、ファンボス10のD平面12とは、略同一形状の平坦面であり密着している。このような構成により、駆動軸15とファンボス10とは、駆動軸15のDカット面18とファンボス10のD平面12との密着により周方向の相対的な移動が抑制され、ファンボス10に対する駆動軸15の空転が抑えられている。
【0042】
これにより、振動音の発生が抑えられ、駆動軸15の回転動力が効率良くファンボス10に伝達される。なお、詳細については後述するが、本実施形態に係る送風機1は、Cリング22を介したナット23の締め付け力によって、Dカット面18とD平面12とを強固に固定することができ、振動音の発生を確実に抑えることができる。
【0043】
図3を参照して、Cリング22は、略C字環状に形成されており、Dカット軸部16の先端角部には、面取り部19が形成されている。具体的には、面取り部19は、Dカット軸部16のDカット面18を除く外周面17と先端面20との間の角部に形成されており、略円錐台の円錐面状の形態をなす。
【0044】
図5は、送風機1の組み立て時において、駆動軸15にCリング22を取り付けた状態を示す分解斜視図である。
図5に示すように、略C字環状の形態をなすCリング22は、駆動軸15の先端側から外嵌され、Dカット軸部16の先端角部に形成された面取り部19に取り付けられる。即ち、Cリング22は、Dカット面18を除く外周面17の先端角部に設けられる。
【0045】
図6は、ファンボス10の先端近傍の概略構成を示す図である。
図6に示すように、Cリング22の先端側には、ワッシャ24が取り付けられ、ワッシャ24の先端側にある雄ねじ部21には、ナット23が螺合される。そして、ナット23の締結により、ワッシャ24及びCリング22を介して、駆動軸15とファンボス10とが強固に固定される。
【0046】
図7は、
図6に示すB部の拡大図であり、Cリング22近傍の概略構成を示している。
図7に示すように、ファン2のファンボス10が駆動軸15に固定された状態において、Cリング22は、ワッシャ24、面取り部19、及びファンボス10の内周面11、に当接して密着している。これにより、Cリング22を介してワッシャ24、面取り部19、及びファンボス10の内周面11を好適に強く固定することができる。
【0047】
このようなCリング22を備えた構成により、ナット23の締結でファンボス10と駆動軸15とを強固に固定することができる。具体的には、ナット23の締結によってワッシャ24を介してCリング22を押圧し、Cリング22で駆動軸15の面取り部19を押圧し、駆動軸15のDカット面18(
図3参照)をファンボス10のD平面12(
図4参照)に密着させて押圧することができる。
【0048】
よって、ファンボス10と駆動軸15との相対的な移動、接触面の変化及びそれによる振動をなくし、振動音の発生を抑制することができる。また、ナット23の締結の緩みを防止してファンボス10と駆動軸15との強固な固定を維持することができ、ナット23が緩むことによる振動音の再発生を抑制することができる。
【0049】
なお、Cリング22は、金属材料、例えば、丸棒鋼材等から形成され、Cリング22を構成するリング部材の横断面は略円形状である。これにより、Cリング22は、その加工が容易であり生産性に優れると共に、前述のとおり、ワッシャ24、面取り部19、及びファンボス10の内周面11に好適に密着してファンボス10を固定することができる。
【0050】
このように、本実施形態に係る送風機1では、Cリング22を介したナット23の締め付け力によって、駆動軸15のDカット面18がファンボス10のD平面12に強く押し付けられ、駆動軸15とファンボス10とが強固に固定されている。
【0051】
よって、モータ3(
図1参照)の起動直後において、モータ3の駆動トルクが大きく変動して駆動軸15の回転トルクとファン2の慣性力とに大きな差が生じても、駆動軸15とファンボス10との間に瞬間的に回転速度に違いが生ずることはなく、Dカット面18の端辺近傍とD平面12の端辺近傍とが衝突して振動音が発生することはない。
【0052】
即ち、ナット23の締結によりワッシャ24に伝えられる押圧力を、Cリング22を介して、駆動軸15とファンボス10とを強固に嵌め合わせる径方向の押圧力に変換して、ファン2の振動を抑えることができ、振動による異音の発生を抑えることができる。
【0053】
また、Dカット軸部16の先端面20は、ファンボス10の先端面13よりも先端側に位置する。具体的には、ファンボス10の長さL1、即ち支持部材25(
図2参照)からファンボス10の先端面13までの長さL1は、支持部材25からDカット軸部16の先端面20までの駆動軸15の長さL2よりも短い。即ち、L1<L2である。
【0054】
このような構成により、Dカット軸部16の先端面20は、ワッシャ24に当接して強固に固定され、ファンボス10の先端面13は、ワッシャ24に密着しない。これにより、例えば、金属製のボス部を有しない合成樹脂製のファンボス10を採用する構成において、金属製のワッシャ24と金属製の駆動軸15とを確実に接触させて強く密着させ固定し、ナット23の緩みを防止することができる。
【0055】
即ち、金属製のワッシャ24と合成樹脂製のファンボス10とが密着してファンボス10が固定される場合に比べ、金属製のワッシャ24と金属製の駆動軸15とが密着して固定される構成の方が、ナット23の締め付けトルクを大きくして緩み難い強固なねじ締結が可能となる。よって、ナット23の緩みによる振動音の再発生を抑制することができる。また、金属製のボス部を有しない低コストなファン2を利用することができるので、ファン2のコストを削減することができ、送風機1の生産性を高めることができる。
【0056】
図8は、ナット23(
図6参照)を締め付ける前のCリング22近傍を示す図である。
図8に示すように、ナット23が締め付けられる前において、Cリング22は、Dカット軸部16の先端面20よりも先端側に突出している。具体的には、支持部材25(
図2参照)からCリング22の先端までの距離L3は、支持部材25からDカット軸部16の先端面20までの駆動軸15の長さL2よりも長い。即ち、L2<L3である。
【0057】
このような構成により、ナット23締め付け時に、ワッシャ24(
図7参照)とCリング22とが確実に接触する。よって、ナット23の締め付けによって、Cリング22を確実に押圧して駆動軸15の面取り部19に押し当て、Cリング22を駆動軸15の径方向に拡張変形させてファンボス10の内周面11に押し付けて、駆動軸15とファンボス10とを確実に固定することができる。
【0058】
また、ナット23が締め付けられる前において、Cリング22の中心径d2は、面取り部19の内径D1よりも大きく、Cリング22の外径D3は、Dカット軸部16の外径D4及びファンボス10の内径d5よりも小さい。即ち、D1<d2<D3<D4<d5である。
【0059】
このように、ナット23が締め付けられる前にCリング22の中心径d2が面取り部19の内径D1よりも大きいことにより、ナット23を締め付けた際、Cリング22は確実に面取り部19に当接して押圧される。これにより、Cリング22は、駆動軸15の径方向に押し広げられてファンボス10の内周面11を押圧する。
【0060】
また、ナット23が締め付けられる前にCリング22の外径D3がファンボス10の内径d5よりも小さいことにより、Cリング22をファンボス10の軸孔に容易に挿入することができる。
【0061】
これによりCリング22は、ファンボス10の内部に挿入されてから、ナット23の締め付けによって面取り部19に押し当てられ径方向に拡張する。即ち、Cリング22の外径D3は、ナット23が締め付けられた後において、Dカット軸部16の外径D4よりも僅かに大きくなる。そして、Cリング22は、ファンボス10の内周面11に当接して内周面11を押圧する。このように、Cリング22によるファンボス10の内周面11の固定を容易且つ確実に行うことができる。
【0062】
なお、面取り部19の傾斜角度θ1、即ちDカット軸部16の先端面20に対する面取り部19の傾斜角度θ1は、好ましくは、30~60度、更に好ましくは、40~50度である。このような好適な傾斜角度θ1によって、ナット23を締め付けた際、Cリング22を好適に拡径してファンボス10の内周面11に押し付け、ファンボス10を固定することができる。
【0063】
このように、本実施形態に係る送風機1は、ファン2をモータ3(
図1参照)の駆動軸15に容易に取り付けることができる。そして、既に説明したように、Cリング22が設けられていることにより、駆動軸15のDカット面18(
図3参照)とファンボス10のD平面12(
図4参照)とを密着させ、ファンボス10に対する駆動軸15の空転が抑えられ、振動による異音を発生させることなく駆動軸15の回転動力を効率良くファン2に伝達することができる。
【0064】
このようにCリング22を備えた取付構造により、前述のとおり、モータ3として、起動直後において機械角に対する電気角の制御が難しいセンサレス制御を行うブラシレスDCモータを採用しても、振動音のない好適な起動を行うことができる。
【0065】
そして、本実施形態に係るファン2の取付構造によれば、磁界位置検出センサを有しない安価なモータ3を採用して部品コストを削減することができると共に、モータ3の配線26の数を減らして送風機1の生産性を高め、生産コストを削減することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態の一例として送風機1について説明したが、本発明は、この実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態においては、金属製のボス部を有しない合成樹脂のみからなるファンボス10の例を挙げたが、ファンボス10は、金属製のボス部を有するものでも良い。
【0067】
また、本実施形態に係るファン2の取付構造では、ナット23の緩みを防止して振動音の発生を抑止する優れた締結性能を発揮するが、ナット23の緩みを更に確実に防止するため、ファンボス10と駆動軸15とを固定する芋ねじ等が利用されても良い。
【0068】
また、ナット23を緩みを更に確実に防止するため、ナット23として、緩み止めリング等の周知の緩み防止構造を有するセルフロックナット等が利用されても良い。また、ワッシャ24として、ロックワッシャ等が利用されても良い。
【0069】
また、本発明の送風機1のモータ3の一例として、磁界位置検出センサを有しないブラシレスDCモータを説明したが、送風機1に利用されるモータ3は、磁界位置検出センサを有するものや、インバータ基板を内蔵するもの等、その他形式の電動機でも良い。
【0070】
本発明は、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0071】
1 送風機
2 ファン
3 モータ
4 制御装置
10 ファンボス
11 内周面
12 D平面
13 先端面
15 駆動軸
16 Dカット軸部
17 外周面
18 Dカット面
19 面取り部
20 先端面
21 雄ねじ部
22 Cリング
23 ナット
24 ワッシャ
25 支持部材
26 配線