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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072188
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】噴射装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/42 20060101AFI20240520BHJP
   A01M 7/00 20060101ALI20240520BHJP
   B05B 9/04 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
F16K31/42 A
A01M7/00 H
B05B9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182911
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】390006415
【氏名又は名称】高砂電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】内田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】阿部 孔一
(72)【発明者】
【氏名】小山 知記
(72)【発明者】
【氏名】香村 聡彦
(72)【発明者】
【氏名】ドット ナブテジ
【テーマコード(参考)】
2B121
3H056
4F033
【Fターム(参考)】
2B121AA12
2B121CB02
2B121CB25
2B121CB35
2B121CB37
2B121CB42
2B121CB47
2B121CB61
2B121CC02
2B121CC31
2B121EA21
2B121FA05
3H056AA02
3H056BB32
3H056CA02
3H056CB03
3H056CC02
3H056CC11
3H056CC13
3H056CD01
3H056CE01
3H056DD01
3H056DD02
3H056DD08
3H056GG04
3H056GG11
4F033RA02
4F033RB02
4F033RC03
4F033RC15
4F033RC17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小型軽量化が可能な噴射装置を提供する。
【解決手段】噴射装置1は、流体が噴射可能に収容された流体容器としてのエアゾール缶と、エアゾール缶内の流体を噴出部に送出する流体送出路と、流体送出路を開閉する流体作動弁100と、を備える。流体作動弁100は、操作流体の流入によって、ピストン120を摺動させて、流体送出路を開放する。操作流体は、パイロット流体通路190によって、ピストン120が摺動可能に収容されたシリンダ室110の大径孔116の下端側に流入され、パイロット流体通路190には、形状記憶合金への通電によって、パイロット流体通路190を開放させる開用パイロット弁200が設けられている。シリンダ室110の大径孔116の下端側には、操作流体を形状記憶合金への通電によって流体を排出する閉用パイロット弁300が接続される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体、液体、薬剤又はスラリーなどの流体が噴射可能に収容された流体容器と、
該流体容器の噴出口が接続される導入口と、該導入口から導入された該流体を噴出部に送出する流体送出路と、
該流体送出路の途中に設けられ、該流体送出路を開閉する流体作動弁と、
を備え、
該流体作動弁は、
該流体送出路を開閉する直動弁と、
該直動弁を開閉動作させるピストンと、
該ピストンが摺動可能に収容されるシリンダ室と、
該直動弁を閉鎖する方向に該ピストンを付勢する弾性部材と、
が備えられ、
該流体送出路の該流体作動弁の上流側から該シリンダ室に、操作流体として該流体を流入させるパイロット流体通路が設けられ、該パイロット流体通路に、該パイロット流体通路を開く開用パイロット弁が設けられ、
該開用パイロット弁は、作動部材を設けて構成され、該作動部材の作動によって、該パイロット流体通路を開き、
該シリンダ室から該操作流体を排出して該流体作動弁を閉弁する閉用パイロット弁が設けられ、
該閉用パイロット弁は、作動部材を設けて構成され、該作動部材の作動によって、該シリンダ室から該操作流体を戻し通路を通して排出して、該流体作動弁を閉弁し、該流体の噴射を止める、ことを特徴とする噴射装置。
【請求項2】
前記開用パイロット弁の前記作動部材と前記閉用パイロット弁の前記作動部材が、それぞれ形状記憶合金であることを特徴とする請求項1に記載の噴射装置。
【請求項3】
前記流体作動弁は、前記開用パイロット弁が開動作したときに、前記流体容器の流体圧によってシリンダ室内と弁室内とが加圧され、該開用パイロット弁の開動作後、直ちに閉動作したとき、該流体作動弁の開弁状態を保持するように構成される、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の噴射装置。
【請求項4】
前記戻し通路は、前記シリンダ室から前記操作流体を前記噴出部の上流側に戻すように構成され、該戻し通路に、前記閉用パイロット弁が設けられた、ことを特徴とする請求項3に記載の噴射装置。
【請求項5】
前記戻し通路は、前記弁室に接続され、前記閉用パイロット弁の開弁時、前記シリンダ室の前記流体を、該弁室に戻す、ことを特徴とする請求項4に記載の噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の噴射装置の技術分野は、遠隔操作される飛行体や車両などに搭載されて、薬液などの流体を対象物に向けて噴射する噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠隔操作される無人飛行体に搭載されて流体を噴射する噴射装置として、例えば、特許文献1に記載された蜂の駆除装置の噴射装置が知られている。この噴射装置は、薬剤が収容されたエアゾール容器と、この容器の薬剤出口に接続された電磁切替弁と、が設けられ、地上のコントローラの操作によって電磁切替弁を作動させて、噴射状態と非噴射状態とを切り替えるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-104063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された駆除装置は、エアゾール容器の噴射状態と非噴射状態とを切り替えるために、電磁切替弁が備えられている。電磁切替弁は、通常、コア・コイルを含むソレノイドにより動作するプランジャが設けられるため、重量が増して大型化するとともに、その電源も大型化する。このため、遠隔操作される小型の無人飛行体の場合、その搭載重量の制限から、エアゾール容器に収容される薬剤の量が制限されるなどの課題があった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、小型軽量化が可能な噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る噴射装置は、気体、液体、薬剤又はスラリーなどの流体が噴射可能に収容された流体容器と、
該流体容器の噴出口が接続される導入口と、該導入口から導入された該流体を噴出部に送出する流体送出路と、
該流体送出路の途中に設けられ、該流体送出路を開閉する流体作動弁と、
を備え、
該流体作動弁は、
該流体送出路を開閉する直動弁と、
該直動弁を開閉動作させるピストンと、
該ピストンが摺動可能に収容されるシリンダ室と、
該直動弁を閉鎖する方向に該ピストンを付勢する弾性部材と、
が備えられ、
該流体送出路の該流体作動弁の上流側から該シリンダ室に、操作流体として該流体を流入させるパイロット流体通路が設けられ、該パイロット流体通路に、該パイロット流体通路を開く開用パイロット弁が設けられ、
該開用パイロット弁は、作動部材を設けて構成され、該作動部材の作動によって、該パイロット流体通路を開き、
該シリンダ室から該操作流体を排出して該流体作動弁を閉弁する閉用パイロット弁が設けられ、
該閉用パイロット弁は、作動部材を設けて構成され、該作動部材の作動によって、該シリンダ室から該操作流体を戻し通路を通して排出して、該流体作動弁を閉弁し、該流体の噴射を止める、ことを特徴とする。
【0007】
本明細書の実施形態に係る噴射装置によれば、噴射装置は、開用パイロット弁の作動部材の作動により、開用パイロット弁がパイロット流体通路の操作通路を開き、パイロット流体通路からシリンダ室に、操作流体としての流体が供給され、操作流体の圧力がピストンを摺動させて流体送出路を開き、流体を噴出させる。また、噴射装置は、閉用パイロット弁の作動部材の作動により、閉用パイロット弁が戻し通路を開き、シリンダ室の操作流体を戻し通路を通して排出し、弾性部材の付勢により、ピストンが移動し、直動弁が流体送出路を閉鎖する。作動部材を用いた開用パイロット弁と閉用パイロット弁は、作動部材の作動に伴い弁を開閉するため、ソレノイドを用いた電磁弁に比して、小型軽量に製作することができ、電源の小型化も可能である。また、流体作動弁は、流体の圧力により開閉動作するため、ソレノイドは不要となり、実施形態の噴射装置は、小型軽量化を図ることができる。
【0008】
ここで、上記噴射装置において、前記開用パイロット弁の前記作動部材と前記閉用パイロット弁の前記作動部材が、それぞれ形状記憶合金であることが好ましい。
【0009】
これによれば、形状記憶合金を用いた開用パイロット弁と閉用パイロット弁は、形状記憶合金への通電時の変形収縮に伴い弁を開閉するため、小型軽量に製作することができる。
【0010】
また、上記噴射装置において、前記流体作動弁は、前記開用パイロット弁が開動作したときに、前記流体容器の流体圧によってシリンダ室内と弁室内とが加圧され、該開用パイロット弁の開動作後、直ちに閉動作したとき、該流体作動弁の開弁状態を保持するように構成される、ことが好ましい。
【0011】
これによれば、開用パイロット弁の開動作時、パイロット流体通路から流入された操作流体としての流体の流体圧がシリンダ室内を加圧し、且つ、弁室内を加圧するため、直ぐに開用パイロット弁の作動部材の作動をオフした状態でも、ピストンは開弁状態を保持する。これにより、噴射装置は、流体の噴射を継続することができ、開用パイロット弁の消費電力量を抑制することができる。
【0012】
また、上記噴射装置において、前記戻し通路は、前記シリンダ室から前記操作流体を前記噴出部の上流側に戻すように構成され、該戻し通路に、前記閉用パイロット弁が設けられた、構成とすることができる。
【0013】
これによれば、噴射装置は、閉用パイロット弁の作動部材の作動により、閉用パイロット弁が戻し通路を開き、操作流体の圧力をシリンダ室から噴出部の上流側に戻す。このとき、シリンダ室内の圧力低下と弾性部材の付勢により、ピストンが摺動して流体作動弁が閉弁し、流体送出路を閉鎖する。流体送出路の閉鎖により、噴射装置は、流体を外部に放出させることなく、流体の噴射が停止される。
【0014】
また、上記噴射装置において、前記戻し通路は、前記弁室に接続され、前記閉用パイロット弁の開弁時、前記シリンダ室の前記流体を、該弁室に戻す、構成とすることができる。
【0015】
これによれば、噴出停止時、戻し通路を含めたパイロット流体通路に流れる流体を、弁室に戻し、流体を無駄に外気に放出することを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の噴射装置によれば、流体圧により動作する流体作動弁と、作動部材の作動により開閉動作するパイロット弁を備えるため、装置の小型軽量化を図ることができ、かつ、電源の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態の噴射装置の正面図である。
図2】同噴射装置の平面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4図2のIV-IV線断面図である。
図5図3のV-V線断面図である。
図6図3のVI-VI線断面図である。
図7図3の部分拡大図であり、(A)はピストンが下方に付勢された状態を示す図、(B)はピストンが上に押し上げられた状態を示す図である。
図8図4の部分拡大図であり、(A)は流体送出路が閉鎖された状態を示す図、(B)は操作通路が開放されて流体送出路が開放された状態を示す図である。
図9】同噴射装置に使用される形状記憶合金駆動バルブの斜視図である。
図10図9のX-X線断面図であり、操作通路が閉鎖された状態を示す図である。
図11】同断面図であり、操作通路が開放された状態を示す図である。
図12】同噴射装置を構成する通路部の平面図である。
図13】同噴射装置を構成するピストンとダイヤフラム弁の側面図である。
図14】同噴射装置を構成するシリンダ部材の平面図である。
図15】同噴射装置を構成する開用弁取付部と開用パイロット弁の左側面図である。
図16】同噴射装置を構成する閉用弁取付部と閉用パイロット弁の右側面図である。
図17】同噴射装置を搭載したドローンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る噴射装置の実施形態を図1図17に基づいて説明する。実施形態の噴射装置は、遠隔操作される飛行体としてのドローンDRに搭載されて蜂の巣WNを駆除する薬剤を散布する噴射装置を例に説明するが、これに限定されるものではない。
【0019】
図17に示すように、実施形態に係る噴射装置1は、ドローンDRに搭載され、蜂の巣WNを駆除する薬剤などの流体FLが噴射可能に収容された流体容器(エアゾール缶400)と、エアゾール缶400に接続され、図2図4に示すように、エアゾール缶400から噴出する流体FLが送出される流体送出路180を開閉する流体作動弁100と、流体作動弁100の開閉を操作するパイロット流体通路190と、パイロット流体通路190を操作する開用パイロット弁200及び閉用パイロット弁300とが設けられている。
【0020】
なお、本明細書において、噴射装置1の向きは、図1及び図2に示すように、前後は、流体FLが送出される流体送出路180の噴出部186側を前とし、左右は、開用パイロット弁200側を右とし、閉用パイロット弁300側を左とする。上下は、図3及び図4に示すように、噴射装置1内に配置されたピストン120の大径部121側を上とし、流体送出路180の導入口181側を下とする。図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、流体FLの流れに基づき、導入口181側を上流側、噴出部186側を下流側と表現することがある。さらに、流体作動弁100の筐体となるシリンダ部材111を基準に、内側又は外側と表現することがある。
【0021】
図1及び図2に示すように、流体作動弁100の本体となるシリンダ部材111は、略四角柱形状をなし、図3及び図4に示すように、シリンダ部材111内に、大径孔116と小径孔117を有するシリンダ室110が設けられる。シリンダ室110内には、大径部121と小径部123を有するピストン120が嵌入される。図13に示すように、ピストン120の大径部121に設けた円周溝に、Oリング122が嵌着され、小径部123に設けた円周溝に、Oリング124が嵌着される。図3に示すように、ピストン120の大径部121が嵌入されたシリンダ室110の大径孔116の底部に、僅かな空間が大径部121の底面との間に生じるように形成され、その底部の空間に、シリンダ部材111に設けた操作通路192及び戻し通路193が接続される。大径部121の底面がパイロット流体通路190を通して印加される流体圧の受圧面121aとなる。また、噴射休止時、この流体圧は、戻し通路193を通して弁室150に戻される。ピストン120の小径部123の底部に、直動弁としてのダイヤフラム弁140が取り付けられている。図3及び図4に示すように、ピストン120の上側には、ピストン120を下に付勢する弾性部材としてのコイルばね130が収容され、シリンダ部材111のシリンダ室110の上側は、蓋部材114によって閉塞され、コイルばね130により、ピストン120は下方に付勢される。ピストン120の大径部121の下面に、受圧面121aが設けられ、この大径部121の受圧面121aが流体圧を受けると、ピストン120がコイルばね130の付勢力に抗して上昇し、ダイヤフラム弁140が開く構造である。
【0022】
図3及び図4に示すように、シリンダ部材111の下部には、流体導入通路182や弁室150が設けられた通路部115が取り付けられている。図12に示すように、通路部115には、流体導入通路182に接続される操作通路192と、弁室150に接続される戻し通路193が設けられる。図3に示すように、シリンダ部材111の左右には、パイロット流体通路190の操作通路192を内部に設けた開用弁取付部112が右側面に取り付けられ、戻し通路193を内部に設けた閉用弁取付部113が左側面に取り付けられる。
【0023】
噴射装置1の本体部を構成する、シリンダ部材111、開用弁取付部112、閉用弁取付部113、蓋部材114、通路部115及びピストン120には、エンジニアリングプラスチックのPOM(ポリアセタール)を使用した。ダイヤフラム弁140には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)を使用し、Oリング122、124には、FFKM(パーフロロエラストマー)を使用した。噴射装置1は、コイルばね130を除いて、金属に比して軽量のプラスチック材料を使用できるため、軽量化を図ることができるものである。
【0024】
流体作動弁100の下部の通路部115には、図3及び図4に示すように、上下の中心軸方向に、下から、エアゾール缶400の噴出口が接続される導入口181が設けられ、流体FLが導入される流体導入通路182が導入口181の上方に設けられ、流体導入通路182が下側から接続される弁室150と、弁室150の底部で流体導入通路182の接続部分に設けた弁座部160に着座して閉弁するダイヤフラム弁140と、ダイヤフラム弁140を上下に動かすピストン120と、が設けられる。
【0025】
図4に示すように、通路部115の底部に導入口181が設けられ、エアゾール缶400の噴出口が導入口181に嵌着される。エアゾール缶400の噴出口が導入口181に接続されると、エアゾール缶400の噴出口が開放され、流体FLは、流体導入通路182へ入る。流体導入通路182には、図3に示すように、操作通路192の下部の端部が接続される。エアゾール缶400が取り付けられると、流体FLは、流体導入通路182からパイロット流体通路190の操作通路192にも流入するようになっている。
【0026】
弁室150は、通路部115の中央上部に形成され、流体導入通路182の上方に位置する。弁室150の底部で流体導入通路182の接続部分に、弁座部160が設けられる。弁室150の下側の通路部115内には、図12に示すように、エアゾール缶400からの流体FLが流入する流体導入通路182と、流入した流体FLを外部へ送出する流体送出通路184と、パイロット流体通路の戻し通路193が、設けられている。弁室150の弁座部160は、流体導入通路182の開口周囲に設けらる。図4及び図13に示すように、ダイヤフラム弁140は、ダイヤフラム141の中央部に弁体142を設けて構成され、コイルばね130により下方に付勢される。ピストン120の通常時、ダイヤフラム弁140の弁体142は、流体導入通路182の上端部開口部の弁座部160上に着座し、ダイヤフラム弁140は閉鎖される。図4に示すように、下側の通路部115に、流体送出通路184が水平に形成され、流体FLを流体送出通路184の内側の端部は、弁室150に接続され、その外側端部、つまり、流体送出通路184の下流側に、噴出部186が設けられる。噴出部186には、図17のように、流体FLを噴射するインジェクタノズル410などが接続される。
【0027】
図13に示すように、ピストン120は、上側の大径部121と下側の小径部123から構成され、図3に示すように、その大径部121はシリンダ室110の上側の大径孔116に嵌入され、小径部123は小径孔117に嵌入され、上下に摺動する。ピストン120は、その上側に備えられた弾性部材としてのコイルばね130によって下方に付勢され、初期状態(未噴射状態)では、ダイヤフラム弁140の弁体142が弁座部160上に着座し、閉弁して流体導入通路182を閉鎖する。
【0028】
ピストン120の大径部121の底部の受圧面121aが受ける流体圧は、その面積に比例して大きく、開用パイロット弁200が閉じた後も、受圧面121aは内部に閉じ込められた流体圧を受けて、ダイヤフラム弁140の開弁状態を保持する。
【0029】
大径孔116の下端には、図3図5及び図14に示すように、パイロット流体通路190の操作通路192と戻し通路193が接続される。操作流体としての流体FLは、操作通路192からシリンダ室110の大径孔116の下端に流入し、大径部121の受圧面121a(図13)がこの流体圧を受け、ピストン120の大径部121が上に押し上げられ、開弁する。
【0030】
大径孔116の下端側は、シリンダ室110とピストン120との間が、大径部121に設けられた周方向のOリング122と、小径部123に設けられた周方向のOリング124と、によって閉塞される。このため、操作流体としての流体FLが、操作通路192から大径孔116の下端側に流入し、開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300がそれぞれ閉じている場合、ピストン120の大径部121が上に押し上げられた状態が維持され、噴射装置1の噴射が維持されることになる。
【0031】
図2及び図5に示すように、シリンダ部材111の右側に開用弁取付部112が取り付けられ、左側に閉用弁取付部113が取り付けられる。図15に示す如く、開用弁取付部112には開用パイロット弁200が取り付けられ、図16に示す如く、閉用弁取付部113には閉用パイロット弁300が取り付けられる。パイロット流体通路190には、流体FLを大径孔116の下端側に流入させる操作通路192と、流体FLを大径孔116の下端側から排出させる戻し通路193とが設けられる。操作通路192には、作動部材として形状記憶合金によって開閉動作する駆動バルブの開用パイロット弁200が接続され、戻し通路193には、同様の構成の閉用パイロット弁300が接続される。
【0032】
図3に示すように、通路部115内に水平に形成された操作通路192aは、流体導入通路182に接続され、その他端は、シリンダ部材111の右側に取り付けられた開用弁取付部112内の縦の操作通路192bに接続される。図15に示す如く、開用弁取付部112には開用パイロット弁200が取り付けられ、開用パイロット弁200の流入通路261と流出通路262は、開用弁取付部112内の縦方向の操作通路192b間に接続される。シリンダ室110内の大径孔116の下端側のシリンダ部材111内に、操作通路192cが水平に設けられ、操作通路192cの一端は大径孔116の下端側に接続され、その他端には、開用弁取付部112に設けた開用パイロット弁200の流出通路262が接続される。開用弁取付部112には、操作通路192を開閉する作動部材としての形状記憶合金ワイヤ250を有した開用パイロット弁200が、図15に示すように、取り付けられる。
【0033】
シリンダ部材111の左側は、図3に示すように、閉用弁取付部113が取り付けられ、閉用弁取付部113内に、縦の戻し通路193bが設けられる。戻し通路193bの下端は、通路部115内に水平に設けた戻し通路193aを介して、弁室150に接続される。図16に示す如く、閉用弁取付部113には、戻し通路193を開閉する閉用パイロット弁300が取り付けられる。戻し通路193bの上端は、シリンダ部材111の上部に設けた戻し通路193cを介して、シリンダ室110の底部に接続される。
【0034】
開用パイロット弁200及び閉用パイロット弁300には、図9図11に示すように、形状記憶合金駆動バルブが使用される。この形状記憶合金駆動バルブは、形状記憶合金ワイヤ250への通電により開動作する構造である。図10に示すように、本体205の端部に、取付ベース260が固定され、取付ベース260とダイヤフラム弁230との間に弁室232が設けられる。ダイヤフラム弁230の弁体231はプランジャ220の先端に連結され、弁体231は弁室232に設けた弁座部233に着座して弁を閉じる。形状記憶合金ワイヤ250への通電によって、操作通路192を開く。閉用パイロット弁300は、戻し通路193bを開閉する形状記憶合金駆動バルブである。閉用パイロット弁300は、非通電時は閉弁して戻し通路193bを閉鎖し、形状記憶合金ワイヤ250の通電によって、戻し通路193bを開く。
【0035】
図9から図11に示すように、形状記憶合金駆動バルブは、本体205内にプランジャ収容室210が設けられ、プランジャ220がプランジャ収容室210に軸方向に移動可能に収容される。プランジャ220の中間部に、弾性部材のコイルばね240が外嵌され、このコイルばね240によって、通常時、プランジャ220はダイヤフラム弁230を閉鎖する。ダイヤフラム弁230は、プランジャ220の先端に取り付けられる。プランジャ220の先端側に突起部221が設けられ、突起部221に形状記憶合金ワイヤ250が架け渡され、形状記憶合金ワイヤ250の両端はそれぞれ端子251に接続される。形状記憶合金ワイヤ250への通電により、形状記憶合金ワイヤ250が収縮して、プランジャ220が端子251側に摺動し、ダイヤフラム弁230を開く。形状記憶合金ワイヤ250は、略U字状に形成され、両端部が端子251に固定される。形状記憶合金ワイヤ250の中間部は、プランジャ220の先端側の突起部221に係合される。形状記憶合金ワイヤ250の通電時、形状記憶合金ワイヤ250は、収縮し、プランジャ220をダイヤフラム弁230の反対側の端子251側に摺動させる。これによって、ダイヤフラム弁230の弁体231は、弁室232を開放し、流入通路261と流出通路262を連通させる。
【0036】
閉用パイロット弁300の形状記憶合金駆動バルブも、開用パイロット弁200のそれと同様に構成される。シリンダ部材111の左側に取り付けられた閉用弁取付部113内に、縦の戻し通路193bが設けられ、戻し通路193bの下端は、通路部115内に水平に設けた戻し通路193aを介して、弁室150に接続される。図16に示す如く、閉用弁取付部113には、戻し通路193bを開閉する閉用パイロット弁300が取り付けられる。図3及び図16に示すように、閉用パイロット弁300の流入通路261の先端が、シリンダ部材111の上部に水平に設けた戻し通路193cに接続され、戻し通路193cの端部が、シリンダ室110の大径孔116の底部に接続される。閉用パイロット弁300は、その形状記憶合金ワイヤ250の通電時、流入通路261と流出通路262を連通させる。このとき、シリンダ室110の大径孔116から流体FLを排出させ、大径部121の下面の受圧面121aの流体圧を下げ、コイルばね130の付勢力によってピストン120を下降させ、ダイヤフラム弁140を閉じる。
【0037】
形状記憶合金駆動バルブを用いた開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300は、例えば、サイズが19×18.4×t4mm、重さが1.5gと、非常に小型軽量のものを使用することができ、その消費電力は0.3W以下である。このため、実施形態の噴射装置1は、ソレノイドを用いた電磁弁を使用したものと比して、非常に小型軽量化を図ることができ、電源の小型化も可能である。
【0038】
次に、噴射装置1の動作について説明する。初期状態(未噴射状態)では、開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300は、通電されていないため、図10に示すように、閉鎖されている。流体作動弁100は、図3に示すように、コイルばね130がピストン120を介してダイヤフラム弁140を下方に付勢し、ダイヤフラム弁140が流体導入通路182の弁座部160に着座して、流体導入通路182は閉鎖された状態である。
【0039】
噴射の前段階として、噴射装置1の導入口181にエアゾール缶400を取り付ける。このとき、図7Aに示すように、流体送出路180の導入口181にエアゾール缶400の噴出口が接続されると、エアゾール缶400の噴出口から流体FLが、流体送出路180の流体導入通路182と、パイロット流体通路190の操作通路192aを通して、開用弁取付部112内の操作通路192bと開用パイロット弁200まで、流体FLが進入した状態となる。
【0040】
開用パイロット弁200に通電すると、形状記憶合金ワイヤ250の収縮により、開用パイロット弁200が開弁し、流体FLが開用パイロット弁200を通り、図7Bに示すように、シリンダ室110の大径孔116の底部に流体FLの圧力が印加される。これにより、受圧面121a(図13)に圧力が加えられたピストン120は、上方に摺動する。
【0041】
ピストン120の摺動によって、図7Bに示すように、流体導入通路182のダイヤフラム弁140が開き、流体FLは、図8Bに示すように、弁室150、流体送出通路184を通って、噴出部186からインジェクタノズル410を通して、対象物に向けて噴射される。このとき、開用パイロット弁200は、通電後、直ぐに通電を停止し、閉弁する。しかし、この状態でも、シリンダ室110の大径孔116の底部の流体FLの圧力は維持されるため、図8Bの状態が維持され、噴射装置1は、閉用パイロット弁300が作動されない限り、流体FLの噴射は維持される。このように、噴射装置1は、開用パイロット弁200の非常に短時間の通電により、ダイヤフラム弁140の開弁状態が保持され、流体FLの噴射が維持されるため、消費電力はわずかである。
【0042】
噴射装置1による噴射の停止は、閉用パイロット弁300に通電して、閉用パイロット弁300を動作させて行なう。閉用パイロット弁300の形状記憶合金ワイヤ250に、短時間通電すると、閉用パイロット弁300が開弁し、シリンダ室110の大径孔116の底部の流体FLは、戻し通路193cから、閉用パイロット弁300の弁室232を通り、さらに、戻し通路193bから戻し通路193aを通り、弁室150に流れる。これにより、シリンダ室110の大径孔116の圧力が低下し、ピストン120は、コイルばね130の付勢により下に摺動し、ダイヤフラム弁140を下方に摺動させて弁座部160に着座し、流体導入通路182を閉鎖する。流体導入通路182の閉鎖によって、噴射装置1の噴射は停止する。このように、シリンダ室110の大径孔116底部の流体FLは、噴射の停止時前に、弁室150に戻されるので、外部に排出されず、周辺環境を汚染することがないとともに、流体FLを無駄にすることはない。
【0043】
再度、流体FLを噴射する場合、開用パイロット弁200をオンして、その形状記憶合金ワイヤ250を収縮させ、ダイヤフラム弁230を開弁させると、流体作動弁100のダイヤフラム弁140が開き、流体FLが弁室150から流体送出通路184を通して、噴出部186から噴出される。
【0044】
このように、開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300を交互にオンすることにより、噴射装置1は、流体FLの噴射と停止を繰り返すことができるため、例えば、流体FLの噴射方向が蜂の巣からずれていた場合であっても、噴射を止めて、噴射方向を修正して再度噴射することができる。
【0045】
本明細書の実施形態に係る噴射装置によれば、噴射装置1は、開用パイロット弁200の形状記憶合金ワイヤ250への通電により、開用パイロット弁200がパイロット流体通路190の操作通路192bを開放し、パイロット流体通路190からシリンダ室110に、操作流体としての流体FLを供給し、ピストン120を摺動させて、ダイヤフラム弁140を開き、流体送出路180を開放する。また、噴射装置1は、閉用パイロット弁300の形状記憶合金ワイヤ250への通電により、閉用パイロット弁300が戻し通路193を開放し、シリンダ室110の操作流体を排出し、弾性部材の付勢により、ピストン120が流体送出路180を閉鎖する。形状記憶合金ワイヤ250を用いた開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300は、ソレノイドを用いた電磁弁に比して、形状記憶合金への通電時の変形収縮に伴い弁を開閉するため、小型軽量に製作することができ、電源の小型化も可能である。また、流体作動弁100は、流体の圧力により開閉動作するため、ソレノイドは不要となり、実施形態の噴射装置1は、小型軽量化を図ることができる。
【0046】
なお、実施形態の噴射装置は、その他実施形態として、以下のような形態であってもその実施をすることができる。
【0047】
実施形態の噴射装置1では、遠隔操作される飛行体としてのドローンDRに搭載されて蜂の巣を駆除する流体FLを散布する噴射装置を例に説明したが、噴射装置1は、飛行体に限らず、遠隔操作される車両に搭載することもできる。これによれば、例えば、屋根裏のような狭い場所の蜂の巣の駆除に対しても適用することができる。また、駆除するのは、蜂の巣に限られず、例えば、害虫、害鳥、害獣にも適用することができる。
【0048】
実施形態の噴射装置1では、流体FLを散布する噴射装置を例に説明したが、噴射装置1は、塗料を吹き付ける(塗装)ものとすることもできる。これによれば、例えば、高層建築物の高層部など、足場を組み立てなければ塗装することができない箇所に対して塗料を吹き付けることができる。また、高架橋の下などの補修に対して、事前調査のマーキングとして塗料を吹き付けることもできる。
【0049】
実施形態の噴射装置1では、流体送出路180を開閉する直動弁としてダイヤフラム弁140を用いたが、直動弁として直動ポペットタイプも使用することができる。
【0050】
実施形態の噴射装置1では、開用パイロット弁200と閉用パイロット弁300の作動部材として、それぞれ形状記憶合金(形状記憶合金ワイヤ250)を用いたが、これら作動部材として、ピエゾ素子、誘電エラストマなどの圧電素子も使用することができる。
【0051】
実施形態の噴射装置1では、シリンダ部材111、開用弁取付部112、閉用弁取付部113、蓋部材114、通路部115及びピストン120を形成する素材に、POM(ポリアセタール)を使用したが、これらの素材はPOMに限定されることなく、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂))、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などのエンジニアリングプラスチックを使用することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 噴射装置
100 流体作動弁
110 シリンダ室
111 シリンダ部材
112 開用弁取付部
113 閉用弁取付部
114 蓋部材
115 通路部
116 大径孔
117 小径孔
120 ピストン
121 大径部
121a 受圧面
122 Oリング
123 小径部
124 Oリング
130 コイルばね
140 ダイヤフラム弁
141 ダイヤフラム
142 弁体
150 弁室
160 弁座部
180 流体送出路
181 導入口
182 流体導入通路
183 分岐路
184 流体送出通路
185 合流点
186 噴出部
190 パイロット流体通路
192 操作通路
192a 操作通路
192b 操作通路
192c 操作通路
193 戻し通路
193a 戻し通路
193b 戻し通路
193c 戻し通路
200 開用パイロット弁
205 本体
210 プランジャ収容室
220 プランジャ
221 突起部
230 ダイヤフラム弁
231 弁体
232 弁室
233 弁座部
240 コイルばね
250 形状記憶合金ワイヤ
251 端子
260 取付ベース
261 流入通路
262 流出通路
300 閉用パイロット弁
400 エアゾール缶
410 インジェクタノズル
DR ドローン
FL 流体
WN 蜂の巣
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
図11
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図16
図17