(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072201
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/58 20060101AFI20240520BHJP
B60N 2/18 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
B60N2/58
B60N2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182924
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】治根田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】南雲 健二
(72)【発明者】
【氏名】北仲 史門
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 允敏
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA16
3B087BB25
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】シートクッションが下方側に配置された状態でも遮蔽部材が弛むことなく、簡単な構成で当該遮蔽部材の見栄えが担保される車両用シートを得る。
【解決手段】フロントスカート26は、アッパー部28、ミドル部30及びロア部32を含んで構成されている。アッパー部28はシート表皮20に接合されており、当該シートクッション12の下面12A側に配置されている。ミドル部30は、アッパー部28の下方側に配置されており、ミドル部30には、屈曲のきっかけとされる誘因部としての端末縫製部50、52が設けられている。また、ミドル部30は、この端末縫製部50、52によって屈曲された屈曲起点部54における屈曲角度を変えてシートクッション12のチルト動作に追従可能とされている。これにより、シートクッション12のチルトダウンによって生じるフロントスカート26の弛みを防止し、見栄えの悪化を抑制することが可能となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員が着座可能とされ、シート上下方向の位置を調整可能な上下移動機構を有するシートクッションと、
前記シートクッションの前端部に設けられ、シート状を成して屈曲可能とされ、前記シートクッションの下方側を車室内側から遮蔽する遮蔽部材と、
を備え、
前記遮蔽部材は、
前記シートクッションの表面を被覆し意匠面を構成するシート表皮に接合され、当該シートクッションの下面側に配置されたアッパー部と、
前記アッパー部の下方側に配置され、屈曲のきっかけとされる誘因部が形成され、前記誘因部によって屈曲された屈曲起点部における屈曲角度を変えて前記シートクッションの上下移動の動作に追従可能なミドル部と、
前記ミドル部の下方側に配置され、前記シートクッションの下方側に取り付けられるロア部と、
を含んで構成されている車両用シート。
【請求項2】
前記屈曲起点部は、前記ミドル部の上端部よりもシート前後方向の前方側に配置されるように設定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記屈曲起点部は、前記シートクッションが下方側に配置された状態で前記ミドル部の下端部よりもシート前後方向の後方側に配置されるように設定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記誘因部は、前記ミドル部におけるシート幅方向の両端部に形成されシート幅方向の内側に向かってそれぞれ切り欠かれた一対の切欠き部とされている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記誘因部は、前記切欠き部を含め、当該切欠き部に設けられ対向する端末同士が接合された端末接合部とされている請求項4に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記アッパー部と前記ミドル部は第1接合部によって一体化され、
前記誘因部は、前記第1接合部とされている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記ミドル部は、シート上下方向の2枚で構成されると共に第2接合部によって互いに接合され、
前記誘因部は、前記第2接合部とされている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記ロア部と前記ミドル部は第3接合部により一体化され、
前記第3接合部に対して接合されると共に前記シートクッションの下方側において当該シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームに設けられた被係合部材に係合されるフック部材をさらに備え、
前記フック部材を構成するフック部は、前記第3接合部よりも前記ミドル部側に配置され、前記シートクッションがシート上下方向の下方側に移動するとき前記誘因部の1つとされている請求項1に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車両用シートにおいて、シートクッションの前端部に遮蔽部材が設けられた技術が開示されている。この先行技術では、遮蔽部材の上端部をシートクッションの骨格を成すフレーム部材側に固定すると共に、遮蔽部材の下端部を車室床面側に固定することによって、シートクッションの裏面等の露出や他部材の侵入を抑えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、シートクッションがチルトアップ及びチルトダウン可能な場合、遮蔽部材の長さはシートクッションがチルトアップ(上方側に配置)された状態でシートクッションの下方側が遮蔽される寸法に設定される。このため、シートクッションがチルトダウン(下方側に配置)された状態では、シートクッションの高低差により遮蔽部材の余長分が弛み、見栄えがよくない。
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、シートクッションが下方側に配置された状態でも遮蔽部材が弛むことなく、簡単な構成で当該遮蔽部材の見栄えが担保される車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る車両用シートは、乗員が着座可能とされ、シート上下方向の位置を調整可能な上下移動機構を有するシートクッションと、前記シートクッションの前端部に設けられ、シート状を成して屈曲可能とされ、前記シートクッションの下方側を車室内側から遮蔽する遮蔽部材と、を備え、前記遮蔽部材は、前記シートクッションの表面を被覆し意匠面を構成するシート表皮に接合され、当該シートクッションの下面側に配置されたアッパー部と、前記アッパー部の下方側に配置され、屈曲のきっかけとされる誘因部が形成され、前記誘因部によって屈曲された屈曲起点部における屈曲角度を変えて前記シートクッションの上下移動の動作に追従可能なミドル部と、前記ミドル部の下方側に配置され、前記シートクッションの下方側に取り付けられるロア部と、を含んで構成されている。
【0007】
第1の態様に係る車両用シートでは、シートクッション及び遮蔽部材を備えている。シートクッションは、乗員が着座可能とされ、当該シートクッションにおけるシート上下方向の位置を調整可能な上下移動機構を有している。一方、遮蔽部材は、シートクッションの前端部に設けられており、シート状を成して屈曲可能とされ、シートクッションの下方側を車室内側から遮蔽する。
【0008】
ここで、遮蔽部材は、アッパー部、ミドル部及びロア部を含んで構成されている。アッパー部は、シートクッションの表面を被覆し意匠面を構成するシート表皮に接合されており、当該シートクッションの下面側に配置されている。ミドル部は、アッパー部の下方側に配置されており、屈曲のきっかけとされる誘因部が形成されている。ミドル部は、この誘因部によって屈曲された屈曲起点部における屈曲角度を変えてシートクッションの上下移動の動作に追従可能とされている。
【0009】
つまり、本態様では、シートクッションが下方側に配置された状態では、ミドル部の屈曲起点部は屈曲角度が小さくなり、ミドル部は屈曲され折り畳まれる状態となる。一方、シートクッションが上方側に配置された状態では、ミドル部の屈曲起点部は屈曲角度が大きくなり、シートクッションが下方側に配置された状態と比較してミドル部は伸びた状態となる。
【0010】
このように、本態様では、シートクッションが下方側に配置されるとき、屈曲のきっかけとされる誘因部によって屈曲起点部を起点として遮蔽部材が屈曲されることによって、シートクッションの下方側への配置によって生じる遮蔽部材の弛みを防止することが可能となる。これにより、本態様では、遮蔽部材の弛みによる見栄えの悪化を抑制することが可能となる。
【0011】
以上のように、本態様では、屈曲のきっかけとされる誘因部をミドル部に形成し当該誘因部によって屈曲起点部を起点としてミドル部を屈曲させることによって遮蔽部材をシートクッションの上下移動の動作に追従させることが可能となる。つまり、本態様では、ミドル部を屈曲させるために他部品を用いることはないため、簡単な構成で遮蔽部材の見栄えの悪化の抑制することが可能である。
【0012】
なお、本態様における「上下移動機構」には、シートクッションの前端部をシート上下方向に沿って移動させチルト可能とするチルト機構、シートクッションをシート上下方向に沿って昇降可能とする昇降機構等が含まれる。
【0013】
第2の態様に係る車両用シートは、第1の態様に係る車両用シートにおいて、前記屈曲起点部は、前記ミドル部の上端部よりもシート前後方向の前方側に配置されるように設定されている。
【0014】
第2の態様に係る車両用シートでは、屈曲起点部は、ミドル部の上端部よりもシート前後方向の前方側に配置されるため、シートクッションが下方側に配置される過程で遮蔽部材に対してシート上下方向の外力が作用したとき、屈曲起点部を起点として遮蔽部材のミドル部がアッパー部に対して折り畳み可能とされる。
【0015】
第3の態様に係る車両用シートは、第1の態様又は第2の態様に係る車両用シートにおいて、前記屈曲起点部は、前記シートクッションが下方側に配置された状態で前記ミドル部の下端部よりもシート前後方向の後方側に配置されるように設定されている。
【0016】
第3の態様に係る車両用シートでは、屈曲起点部は、シートクッションが下方側に配置された状態でミドル部の下端部よりもシート前後方向の後方側に配置されるため、シートクッションが下方側に配置される過程で遮蔽部材に対してシート上下方向の外力が作用したとき、屈曲起点部を起点として遮蔽部材のミドル部がアッパー部に対して折り畳まれると共に、ミドル部の下部側では、余長分がシート後方側へ向かって案内可能とされる。
【0017】
第4の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第3の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記誘因部は、前記ミドル部におけるシート幅方向の両端部に形成されシート幅方向の内側に向かってそれぞれ切り欠かれた一対の切欠き部とされる。
【0018】
第4の態様に係る車両用シートでは、誘因部は一対の切欠き部とされており、当該一対の切欠き部は、ミドル部におけるシート幅方向の両端部に形成され、シート幅方向の内側に向かってそれぞれ切り欠かれている。
【0019】
このように、シート幅方向に沿って切欠き部が形成されることによって、当該切欠き部では、シート上下方向の外力に対して反力が小さくなる。このため、シートクッションがシート上下方向の下方側へ移動する際、ミドル部に対してシート上下方向の外力が作用したとき、切欠き部がきっかけとなってミドル部が屈曲する。
【0020】
第5の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第4の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記誘因部は、前記切欠き部を含め、当該切欠き部に設けられ対向する端末同士が接合された端末接合部とされる。
【0021】
第5の態様に係る車両用シートでは、誘因部は、切欠き部を含めた端末接合部とされており、当該端末接合部は、切欠き部において対向する端末同士が接合され形成されている。
【0022】
このように、切欠き部において端末接合部を形成することによって、ミドル部におけるシート幅方向の両端部はシート幅方向の内側よりも窄んだ形状となる。端末接合部の接合代は、ミドル部の裏面側に設けられるため、ミドル部におけるシート幅方向の両端部は予めミドル部の裏面側(シート前後方向の前方側)へ向かって窄み、ミドル部は予め屈曲された形状とされる。
【0023】
つまり、端末接合部によってミドル部は屈曲する方向が定められ、シートクッションがシート上下方向の下方側へ移動するとき、当該端末接合部が誘因部となって端末接合部と端末接合部の間が屈曲起点部としてミドル部がシート上下に屈曲する。
【0024】
第6の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第5の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記アッパー部と前記ミドル部は第1接合部によって一体化され、前記誘因部は、前記第1接合部とされる。
【0025】
第6の態様に係る車両用シートでは、アッパー部とミドル部は第1接合部によって一体化され、誘因部は第1接合部とされているため、当該第1接合部をきっかけとして遮蔽部材を屈曲させることが可能となる。つまり、第1接合部では、誘因部と屈曲起点部が兼用されている。
【0026】
第7の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第6の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記ミドル部は、シート上下方向の2枚で構成されると共に第2接合部によって互いに接合され、前記誘因部は、前記第2接合部とされる。
【0027】
第7の態様に係る車両用シートでは、ミドル部は、シート上下方向の2枚で構成されると共に第2接合部によって互いに接合されている。このため、本態様では、誘因部は第2接合部とされており、当該第2接合部をきっかけとして遮蔽部材を屈曲させることが可能となる。つまり、第2接合部では、誘因部と屈曲起点部が兼用されている。
【0028】
第8の態様に係る車両用シートは、第1の態様~第7の態様の何れか1の態様に係る車両用シートにおいて、前記ロア部と前記ミドル部は第3接合部により一体化され、前記第3接合部に対して接合されると共に前記シートクッションの下方側において当該シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームに設けられた被係合部材に係合されるフック部材をさらに備え、前記フック部材を構成するフック部は、前記第3接合部よりも前記ミドル部側に配置され、前記シートクッションがシート上下方向の下方側へ移動するとき前記誘因部の1つとされる。
【0029】
第8の態様に係る車両用シートでは、ロア部とミドル部は第3接合部によって一体化されている。この第3接合部に対してフック部材が接合されている。一方、シートクッションの下方側には、シートクッションの骨格を構成するシートクッションフレームに設けられた被係合部が設けられており、フック部材は、当該被係合部に係合される。
【0030】
ここで、フック部材を構成するフック部は、第3接合部よりもミドル部側に配置されている。このため、当該フック部は、誘因部の1つとされ、シートクッションがシート上下方向の下方側へ移動するとき、フック部をきっかけとしてミドル部を屈曲させることが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る車両用シートは、シートクッションが下方側に配置された状態でもシートクッションの下方側を遮蔽する遮蔽部材が弛むことなく、簡単な構成で遮蔽部材の見栄えを担保することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションを示す正面図である。
【
図3】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションに設けられるフロントスカートを左斜め後方側から見た斜視図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションに設けられるフロントスカートの要部が分解された要部分解正面図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションにフロントスカートを取り付ける状態を示す
図2のA-A線に沿って切断したときの概略断面図である。
【
図6】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションのチルト動作に追従して屈曲するフロントスカートの作用を説明するための
図2のA-A線に沿って切断したときの概略断面図である。
【
図7】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションのロアモースト位置における
図6に対応する概略断面図である。
【
図8】
図7よりもシートクッションがチルトアップした状態での
図6に対応する概略断面図である。
【
図9】
図8よりもシートクッションがチルトアップした状態での
図6に対応する概略断面図である。
【
図10】本実施形態に係る車両用シートのシートクッションのアッパモースト位置にお
図6に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態に係る車両用シート10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FR、矢印RH、矢印UPは、車両用シート10の前方向、右方向、上方向をそれぞれ示している。また、本実施形態では、車両用シート10の前後左右上下の方向は、当該車両用シート10が搭載された車両(自動車)の前後左右上下の方向と一致している。以下、単に前後左右上下の方向を用いて説明する場合、シート前後方向の前後、シート左右方向(シート幅方向)の左右、シート上下方向の上下を示すものとする。
【0034】
(車両用シートの構成)
まず、本実施の形態に係る車両用シート10の構成について説明する。
【0035】
図1に示すように、車両用シート10は、着座乗員の大腿部及び腰部を支持するシートクッション12と、当該シートクッション12の後端側に設けられ着座乗員の上体を支持するシートバック14と、着座乗員の頭部を支持するヘッドレスト16と、を含んで構成されている。
【0036】
ここで、本実施形態の要部であるシートクッション12について説明する。
図1、
図2に示されるように、当該シートクッション12は、シートクッション12の骨格部材とされるシートクッションフレーム18と、着座乗員を弾性的に支持するシートクッションパッド19と、シートクッションパッド19を被覆するシート表皮20と、を備えている。
【0037】
また、シートクッション12は、チルト機構(上下移動機構)22を備えている。チルト機構22は、図示はしないが、例えば、一対のフロントリンク及び一対のリアリンクによる4節リンク機構によって構成され、
図6に示されるように、シートクッション12の前端部24の高さが、実線で示すロアモースト位置Pと二点鎖線で示すアッパモースト位置Qの間で調整可能とされている。
【0038】
なお、本実施形態では、上下移動機構として、チルト機構22について説明するが、これに限るものではなく、図示はしないが、シートクッション12を上下方向に沿って略水平に昇降移動させる昇降機構が適用されてもよい。
【0039】
シートクッション12の前端部24には、例えば、カーペット材で形成されたフロントスカート(遮蔽部材)26が設けられている。なお、フロントスカート26の素材は、必要とされる剛性を有していればよいため、カーペット材に限るものではなく、レザー等、他の素材が用いられてもよい。
【0040】
本実施形態では、
図3に示されるように、フロントスカート26は、アッパー部28、ミドル部30及びロア部32を含んで構成されている。なお、
図4では、ロア部32は図示していない。
【0041】
図4に示されるように、アッパー部28は、正面視でシート幅方向を長手方向として略台形状を成している。アッパー部28の上端角部28Aは角丸めされており、
図5に示されるように、シート表皮20の前端部34に対して、当該シートクッション12の下面12A側に配置されるように縫製(接合)される。
【0042】
また、
図4に示されるように、アッパー部28の下端部28Bには、アッパー部28の長手方向の両端よりも内側にその両端が配置された縫製代36が設けられている。一方、ミドル部30は、シート幅方向を長手方向とする略矩形状を成しており、ミドル部30の上端部30Aには、ミドル部30の長手方向の両端よりも内側にその両端が配置された縫製代38が設けられている。
【0043】
この縫製代38は、
図3に示されるように、アッパー部28の下端部28Bに設けられた縫製代36と重なった状態で縫製部(第1接合部)40を介して縫製されており、これにより、ミドル部30はアッパー部28と一体化されている。
【0044】
なお、本実施形態では、縫製によりミドル部30とアッパー部28を一体化させているが、部材同士を接合するに当たって縫製に限るものではない。例えば、接着、溶着等による接合であってもよく、ミドル部30とアッパー部28の接合に限らず、他の部材同士の接合においてもこれと同様である。
【0045】
また、
図4に示されるように、ミドル部30の上部42には、長手方向の両端部にミドル部30の長手方向の内側に向かって切り欠かれた正面視で三角形状を成す切欠き部(誘因部)46がそれぞれ形成されている。
【0046】
ミドル部30の上部42における長手方向の両端は、切欠き部46から離間する方向(上下方向)へ向かうにつれて長手方向の内側へ向かって傾斜している。さらに、ミドル部30の上部42における長手方向の両端は、ミドル部30の裏面31側へ折り返された状態で縫製され、切欠き部46を間において上下に折り返し部48がそれぞれ設けられている。
【0047】
また、切欠き部46では、
図3に示されるように、互いに対向する切欠き部46の端末同士が端末縫製部(端末接合部、誘因部)50、52によって縫製されている。これにより、ミドル部30の上部42における長手方向の両端部は、長手方向の中央部よりも幅方向の寸法が短くなり、ミドル部30の裏面31側へ向かって窄んだ形状となる。
【0048】
また、ミドル部30の下端部30Bには、ミドル部30の長手方向の両端よりも内側にその両端が配置された縫製代56が設けられている。縫製代56には、ミドル部30の裏面31側にJファスナー(フック部材)58が後述する縫製部(第3接合部)60を介して共縫いされている。
【0049】
このJファスナー58は、
図5に示されるように、矢印方向へ回転させることによって、
図6に示されるように、シートクッションフレーム18に設けられたブラケット(被係合部)62に対して上方側から係合可能とされる。ここで、
図3に示されるように、Jファスナー58の先端部に設けられたフック部(誘因部)58Aは、ミドル部30の下部44側に突出している。
【0050】
ロア部32は、シート幅方向の長手方向とする略矩形状を成し、ロア部32の上端部32Aには、その長手方向の両端よりも内側にその両端が配置された縫製代62が設けられている。この縫製代62は、ミドル部30の下端部30Bに設けられた縫製代56と重なった状態で縫製部60を介して縫製されており、これにより、ロア部32はミドル部30及びアッパー部28と一体化されている。
【0051】
また、ロア部32の下端部32Bには、Jファスナー(フック部材)66が縫製部67を介して縫製されている。このJファスナー66は、シートクッションフレーム18(
図6参照)に設けられたブラケット62(
図6参照)に対して下方側から係合されるようになっている。
【0052】
以上のような構成により、
図6に示されるように、フロントスカート26は、アッパー部28がシートクッション12のシート表皮20に対して縫製され一体化されると共に、ミドル部30、ロア部32にそれぞれ設けられたJファスナー58、66がシートクッションフレーム18に設けられたブラケット62に対してそれぞれ係合されることによって、
図2に示されるように、シートクッション12の下方側はフロントスカート26によって見えないように遮蔽される。
【0053】
なお、
図10に示されるように、シートクッション12のアッパモースト位置Qにおいて、ミドル部30は完全にフラットにならないように設定されている。つまり、本実施形態では、アッパモースト位置Qであってもミドル部30は屈曲(180度未満)するように設定されている。
【0054】
(車両用シートの作用及び効果)
次に、本実施の形態に係る車両用シート10の作用及び効果について説明する。
【0055】
本実施形態では、
図1、
図2に示されるシートクッション12はチルト機構22を備えており、シートクッション12の前端部24の高さが変更可能とされている。つまり、チルト機構22により、シートクッション12は、
図6の実線で示されるようにチルトアップ又は二点鎖線で示されるようにチルトダウンする。
【0056】
このように、シートクッション12がチルトアップ又はチルトダウンすると、シートクッションフレーム18に設けられたブラケット62側の位置は変わらない状態でシートクッション12の前端部24の位置は上下するため、フロントスカート26は、シートクッション12のチルト動作に追従させる必要がある。
【0057】
本実施形態では、フロントスカート26はカーペット材で形成されており、生地自体は略伸縮しないため、フロントスカート26を屈曲させることによってフロントスカート26の上下方向の長さを調整している。
【0058】
図3に示されるように、本実施形態では、フロントスカート26は、アッパー部28、ミドル部30及びロア部32を含んで構成されている。アッパー部28は、シートクッション12のシートクッションパッド19(
図1参照)を被覆するシート表皮20に接合されており、当該シートクッション12の下面12A側に配置されている。
【0059】
当該ミドル部30は、アッパー部28の下方側に配置されており、ミドル部30には、屈曲のきっかけとされる誘因部としての端末縫製部50、52が設けられている。また、ミドル部30は、この端末縫製部50、52によって屈曲された屈曲起点部54における屈曲角度を変えてシートクッション12のチルト動作に追従可能とされている。
【0060】
つまり、本実施形態では、
図7に示されるように、シートクッション12がチルトダウンされた状態では、ミドル部30の屈曲起点部54は屈曲角度が小さくなり、ミドル部30は屈曲され折り畳まれる状態となる。一方、
図10に示されるように、シートクッション12がチルトアップされた状態では、ミドル部30の屈曲起点部54は屈曲角度が大きくなり、シートクッション12がチルトダウンされた状態と比較してミドル部30は伸びた状態となる。なお、屈曲起点部54は、ミドル部30とアッパー部28が縫製された縫製部40よりシート前方側に配置されている。
【0061】
このように、本実施形態では、
図7に示されるように、シートクッション12がチルトダウンされるとき、屈曲のきっかけとされる端末縫製部50、52(
図3参照)によって屈曲起点部54を起点としてフロントスカート26が屈曲されることによって、シートクッション12のチルトダウンによって生じるフロントスカート26の弛みを防止することが可能となる。これにより、本実施形態では、フロントスカート26の弛みによる見栄えの悪化を抑制することが可能となる。
【0062】
以上のように、本実施形態では、屈曲のきっかけとされる端末縫製部50、52をミドル部30に形成し当該端末縫製部50、52(
図3参照)によって屈曲起点部54を起点としてミドル部30を屈曲させることによってフロントスカート26をシートクッション12のチルト動作に追従させることが可能となる。つまり、本実施形態では、ミドル部30を屈曲させるために他部品を用いることはないため、簡単な構成で遮蔽部材の見栄えの悪化の抑制することが可能である。
【0063】
ここで、端末縫製部50、52について具体的に説明すると、
図3、
図4に示されるように、フロントスカート26のミドル部30における長手方向の両端部には、三角形状を成す切欠き部46が長手方向の内側へ向かって形成されている。
【0064】
このように、切欠き部46が形成されることによって、当該切欠き部46では、シート上下方向の外力に対して反力が小さくなる。このため、シートクッション12(
図6参照)がチルトダウンされる際、ミドル部30に対してシート上下方向の外力が作用したとき、切欠き部46がきっかけとなってミドル部30が屈曲する。
【0065】
さらに、本実施形態では、当該切欠き部46の端末同士が端末縫製部50、52によって縫製されている。端末縫製部50、52の端末縫製代51、53は、ミドル部30の裏面31側に設けられるため、ミドル部30におけるシート幅方向の両端部は予めミドル部30の裏面31側へ向かって窄み、ミドル部30は予め屈曲された形状とされる。
【0066】
つまり、端末縫製部50、52によってミドル部30は屈曲する方向が定められ、シートクッション12(
図6参照)がチルトダウンされるとき、当該端末縫製部50、52が誘因部となり端末縫製部50と端末縫製部52の間が屈曲起点部54としてミドル部30がシート上下に屈曲する。つまり、本実施形態では、フロントスカート26のミドル部30における屈曲角度を変えることによって、フロントスカート26の上下方向の長さを変えることができる。
【0067】
具体的に説明すると、
図10に示されるように、まず、シートクッション12がチルトアップされ、アッパモースト位置Qに配置された場合、フロントスカート26の上下方向の長さは最大となる。この状態で、フロントスカート26におけるアッパー部28とミドル部30が縫製された縫製部40の下方側にミドル部30に設けられたJファスナー58が配置される。
【0068】
そして、当該ミドル部30では、屈曲起点部54を起点としてシート前方側へ向かって屈曲するように設定されている。本実施形態では、フロントスカート26、シートクッションフレーム18及びブラケット62におけるそれぞれ寸法誤差を考慮し、アッパモースト位置Qにおいて、ミドル部30が完全にフラットにならないように設定されている。
【0069】
つまり、シートクッション12のアッパモースト位置Qにおいて、フロントスカート26に張力が作用しないようにし、シートクッションフレーム18及びブラケット62の寸法誤差が最大となった状態で、フロントスカート26が引っ張られることがないように設定されている。
【0070】
そして、
図10に示すシートクッション12のアッパモースト位置Qから
図9に示されるようにシートクッション12をチルトダウンさせると、フロントスカート26のミドル部30では、屈曲起点部54を起点としてさらに屈曲する。
【0071】
当該屈曲起点部54はフロントスカート26のアッパー部28の縫製部40よりもシート前方側に配置されるため、
図9に示す状態からさらにシートクッション12をチルトダウンさせると、
図8に示されるように、当該縫製部40を起点として、ミドル部30の上部42がアッパー部28に対して折り畳まれる。また、このとき、フロントスカート26のアッパー部28の縫製部40とJファスナー58のフック部58Aの離間距離L1は、ミドル部30の下部44の寸法L2(
図4参照)よりも短くなっている。
【0072】
ここで、前述のように、シートクッション12は、図示しない4節リンク機構によって、
図6に示されるように、シートクッション12の前端部24の高さがロアモースト位置Pとアッパモースト位置Qの間を調整可能とされている。このため、シートクッション12は、チルトダウンするにつれて、前端部24がシート下方側へ回動すると共にシートクッション12がシート後方側へ移動する。
【0073】
したがって、
図8に示されるように、ミドル部30の屈曲起点部54の位置は、ファスナー58のフック部58Aよりもシート後方側に配置されているため、シートクッション12のチルトダウンによりフロントスカート26に対してシート上下方向の外力が作用したとき、前述のように、ミドル部30がアッパー部28に対して折り畳まれると共に、ミドル部30の下部44側では、Jファスナー58のフック部58Aによって余長分がシート後方側へ向かって案内され、これにより、余長分が屈曲する(屈曲部59)。
【0074】
この状態からさらにシートクッション12をチルトダウンさせ、
図7に示されるように、シートクッション12がロアモースト位置Pになると、フロントスカート26のアッパー部28の縫製部40とJファスナー58のフック部58Aの離間距離L3は、ミドル部30の下部44の寸法(
図4参照)よりもさらに短くなる。このため、フロントスカート26のミドル部30はアッパー部28に対して折り畳まれる共に、ミドル部30の下部44側の余長分では、Jファスナー58のフック部58Aを介して屈曲部59の角度がさらに小さくなる。
【0075】
このように、本実施形態では、フロントスカート26のミドル部30において、屈曲起点部54、59における屈曲角度を変えることによってシートクッション12のチルト動作に追従可能とされている。また、本実施形態では、
図9に示されるように、フロントスカート26の屈曲起点部54は、縫製部40よりシート前方側に配置されているが、これに限るものではなく、シート後方側に配置されてもよい。さらに、本実施形態では、
図7に示されるように、シートクッション12がロアモースト位置P側に配置された状態で、当該屈曲起点部54はファスナー58のフック部58Aよりもシート後方側に配置されているが、これに限るものではなく、屈曲起点部54がファスナー58のフック部58Aよりもシート前方側に配置されてもよい。
【0076】
なお、本実施形態では、ミドル部30は1枚で形成されているが、これに限るものではない。例えば、ミドル部30がシート上下方向の2枚で構成され、屈曲起点部54において互いに縫製されることで一体化されてもよい。つまり、このように、縫製されることによって、縫製部が屈曲起点部とされてもよい。
【0077】
さらに、ミドル部30は1枚で形成され、例えば、屈曲起点部54等、屈曲させる箇所において縫製部、接着部等を設けてもよい。また、遮蔽部材26は、1枚で形成されてもよいし、複数枚で形成されてもよい。
【0078】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
10 車両用シート
12 シートクッション
12A 下面(シートクッションの下面)
18 シートクッションフレーム
20 シート表皮
22 チルト機構(上下移動機構)
24 前端部(シートクッションの前端部)
26 フロントスカート(遮蔽部材)
28 アッパー部(遮蔽部材)
30 ミドル部(遮蔽部材)
32 ロア部(遮蔽部材)
40 縫製部(第1接合部、誘因部)
46 切欠き部(誘因部)
50 端末縫製部(端末接合部、誘因部)
52 端末縫製部(端末接合部、誘因部)
54 屈曲起点部
58 Jファスナー(フック部材)
58A フック部(誘因部)
59 屈曲部(屈曲起点部)
60 縫製部(第3接合部)
62 ブラケット(被係合部)
66 Jファスナー(フック部材)