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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007221
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】周波数選択素子、及び周波数選択方法
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/28 20060101AFI20240111BHJP
   H04R 1/24 20060101ALI20240111BHJP
   H04R 1/22 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H04R1/28 330
H04R1/24
H04R1/22 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108550
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】堀井 康史
(72)【発明者】
【氏名】洪 文甲
【テーマコード(参考)】
5D018
5D019
【Fターム(参考)】
5D018AD17
5D018BA01
5D019AA08
5D019FF01
5D019FF02
5D019GG08
(57)【要約】
【課題】所望の周波数成分のみを選択的に検出することを目的とする。
【解決手段】周波数選択素子(1)は、第1空間(S1)を有する第1筐体(20)と、第2空間(S2)を有する第2筐体(30)と、を有する筐体と、第1空間(S1)と第2空間(S2)との間に配置される弾性膜(50)と、を備え、弾性膜(50)は、基端(51)から先端(52)に向かうにつれ幅が漸次広くなる第1幅広部(53)と、第1幅広部(53)の先端(52)側の端部から連続し、先端(52)に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第1幅狭部(54)と、を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所望の周波数成分を取り出す周波数選択素子であって、
音波を入力する入力窓を一端に有し、第1空間を有する第1筐体と、
前記第1筐体に重なって位置し、前記入力窓が位置する側とは反対側において前記第1空間から前記音波が入力される第2空間を有する第2筐体と、
を有する筐体と、
前記第1空間と前記第2空間との間に配置され、前記入力窓側に位置する基端と、前記基端とは反対側の先端とを有する弾性膜と、
を備え、
前記弾性膜は、
前記基端から前記先端に向かうにつれ幅が漸次広くなる第1弾性膜と、
前記第1弾性膜の前記先端側の端部から連続し、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第2弾性膜と、
を有している
周波数選択素子。
【請求項2】
前記弾性膜は、前記第2弾性膜の前記先端側の端部から延び、前記先端に向かうにつれ漸次幅が広くなる第3弾性膜を更に有する
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項3】
前記弾性膜は、前記第3弾性膜の前記先端側の端部から延び、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第4弾性膜を更に有する
請求項2に記載の周波数選択素子。
【請求項4】
前記第3弾性膜の前記先端側の端部の幅は、前記第1弾性膜の前記先端側の端部の幅よりも広い
請求項2に記載の周波数選択素子。
【請求項5】
前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第2弾性膜の長さは、前記第1弾性膜の長さよりも短い
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項6】
前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第4弾性膜の長さは、前記第3弾性膜の長さよりも短い
請求項3に記載の周波数選択素子。
【請求項7】
前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第3弾性膜の長さは、前記第2弾性膜の長さよりも長い
請求項3に記載の周波数選択素子。
【請求項8】
前記第3弾性膜は、前記弾性膜の前記先端に形成され、
前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第3弾性膜の長さは、前記第2弾性膜の長さよりも短い
請求項2に記載の周波数選択素子。
【請求項9】
前記弾性膜は、前記基端の厚みよりも前記先端の厚みの方が薄い
請求項1から3のいずれか1項に記載の周波数選択素子。
【請求項10】
前記第2弾性膜は、前記先端に向かうにつれ厚みが漸次薄くなる
請求項9に記載の周波数選択素子。
【請求項11】
前記第4弾性膜の厚みは、前記先端に向かうにつれ厚みが漸次薄くなる
請求項3に記載の周波数選択素子。
【請求項12】
前記筐体は、前記第2空間の前記基端側に位置し、前記第2空間に入力された音波を反射する反射壁を有する
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項13】
前記第1空間及び前記第2空間には液体が充填されている
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項14】
前記第1空間及び前記第2空間は、前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記弾性膜の前記先端に向かうにつれ、前記延伸方向と直交する断面における断面積が漸次小さくなるように構成されている
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項15】
前記弾性膜には、前記弾性膜に照射された光を反射する光反射膜が形成されている
請求項1に記載の周波数選択素子。
【請求項16】
弾性膜の基端から前記弾性膜の先端に向かうにつれ幅が漸次広くなる第1弾性膜と、前記第1弾性膜の前記先端側の端部から連続し、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第2弾性膜と、を有している前記弾性膜が、第1空間と第2空間とを隔てており、
前記第1空間の前記基端側から音波を入力するステップ、を含む
周波数選択方法。
【請求項17】
入力された前記音波が前記第1空間および前記第2空間に伝播した際に生じる前記弾性膜の振動を検出するステップを更に含む
請求項16に記載の周波数選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数選択素子、及び周波数選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人の聴覚では、内耳の聴覚器官である蝸牛が有する有毛細胞が刺激されることにより、音を知覚することができる。外耳に音波が入力されると、中耳の聴覚器官である鼓膜及び耳小骨を介して、蝸牛に音波が伝播する。蝸牛に伝播した音波により、蝸牛の中央階が有する基底膜が励振される。基底膜が振動することにより、有毛細胞は刺激される。
【0003】
人は異なる周波数の音を聞き分けているが、これは音波の周波数により励振される基底膜の領域が異なることが関係していると考えられている。非特許文献1は、人の聴覚器官と類似する聴覚器官を持つコウモリの蝸牛をモデルとして行った実験であり、コウモリの可聴周波数帯域を3つの周波数帯域に分けて、基底膜の振動する領域を解析したものである。異なる3つの周波数帯域の音波を入力すると、各周波数帯域により励振される基底膜の領域が異なることが分かっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】李泓睿,玉木愛莉,堀井康史,「伝送線路理論に基づくコウモリの蝸牛モデルに設計」IEEE AP-S/MTT-S 若手技術交流会 2019,2019 年 12 月、関西大学
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、人の聴覚器官をモデル化した素子を工業製品として応用することができれば、音波に含まれる各周波数成分を選択的に検出することができる。例えば、基底膜における振動の理論を利用することができれば、弾性膜により音波に含まれる周波数成分を選択的に検出することが可能となる。
【0006】
ここで、図10及び図11に、人の蝸牛をモデルとした素子100に高音域及び低音域の音波を入力したときのシミュレーション結果を示す。
【0007】
図10の符号1001に示す素子100は、前庭階を模した第1空間110と、鼓室階を模した第2空間120と、中央階を模した区画部130と、基底膜を模した弾性膜140と、センサ180とにより構成されている。第1空間110、第2空間120及び開口160には、液体が充填されている。第1空間110には音波を入力するための卵円窓を模した入力窓150が設けられている。第1空間110に入力された音波は、蝸牛孔を模した開口160を介して第2空間120へと伝播される。第2空間120には音波を反射する反射壁170が設けられている。弾性膜140の振動は、センサ180により検出する。
【0008】
図10の符号1002に示すように、弾性膜140の幅は、弾性膜140の基部141から頂部142に向かうにつれ幅が漸次広くなるように構成した。図10の符号1003に示すように、弾性膜140の厚みは、基部141から頂部142に向かうにつれ厚みが漸次薄くなるように構成した。弾性膜140の寸法は以下のようにした。
【0009】
弾性膜140の長さL10は34mmとし、弾性膜140の基部141の幅W10は100μmとし、弾性膜140の頂部142の幅W11は500μmとし、基部141の厚みT10は30μmとし、頂部142の厚みT11は10μmとした。
【0010】
図11に、高音域及び低音域の音波のそれぞれを素子100に入力したときの、センサ180により検出された弾性膜140の振動の結果を示す。4000Hzの高音域の音波が入力されると、弾性膜140の基部141から徐々に弾性膜の変位が始まり、基部141から11mm付近の領域から弾性膜140は大きく振動した。弾性膜140の振動は、基部141から13mm付近の領域をピークに、その後徐々に減衰し、弾性膜140の頂部142まで僅かながら振動していた。1000Hzの低音域の音波が入力されると、弾性膜140の基部141から徐々に変位が始まり、基部141から15mm付近の領域を過ぎたところで弾性膜140は大きく振動した。弾性膜140の振動は、基部141から23mm付近の領域をピークに、その後徐々に減衰し、弾性膜140の頂部142まで振動していた。
【0011】
図11に示すシミュレーション結果より、音波の周波数により振動の振幅がピークとなる弾性膜140の領域は異なるものの、弾性膜140の振動は弾性膜140の基部141から弾性膜140の頂部142に渡って広く分布していた。仮に、素子100に4000Hzの周波数と1000Hzの周波数を含む音波を入力した場合、特に弾性膜140の基部141から15mm~34mmの領域では、4000Hzの周波数により励振された弾性膜140の振動と、1000Hzの周波数により励振された弾性膜140の振動とが干渉した状態で弾性膜140の振動が検出される。そのため、様々な周波数成分を含む音波が入力されるような場合、人の蝸牛をモデル化した素子100の弾性膜140では、特定の周波数成分を区別して検出することは、困難であった。
【0012】
本発明の一態様は、様々な周波数成分を含む音波から所望の周波数成分のみを選択的に検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る周波数選択素子は、所望の周波数成分を取り出す周波数選択素子であって、音波を入力する入力窓を一端に有し、第1空間を有する第1筐体と、前記第1筐体に重なって位置し、前記入力窓が位置する側とは反対側において前記第1空間から前記音波が入力される第2空間を有する第2筐体と、を有する筐体と、前記第1空間と前記第2空間との間に配置され、前記入力窓側に位置する基端と、前記基端とは反対側の先端とを有する弾性膜と、を備える。前記弾性膜は、前記基端から前記先端に向かうにつれ幅が漸次広くなる第1弾性膜と、前記第1弾性膜の前記先端側の端部から連続し、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第2弾性膜と、を有している。
【0014】
上記構成によれば、第1弾性膜を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第1弾性膜にて吸収されない音波は、第2弾性膜の領域において吸収される。第1弾性膜を励振する特定の周波数帯域とは異なる周波数帯域の音波のうち、第1弾性膜で吸収されなかった音波は、第2弾性膜に吸収されず、第2弾性膜から続く弾性膜の領域を励振する。従って、特定の周波数帯域の音波により励振される弾性膜の領域を、特定の領域に制限することができる。これにより、様々な周波数成分を含む音波から所望の周波数成分のみを選択的に検出することができる。
【0015】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜は、前記第2弾性膜の前記先端側の端部から延び、前記先端に向かうにつれ漸次幅が広くなる第3弾性膜を更に有することが好ましい。
【0016】
上記構成によれば、第1弾性膜及び第2弾性膜の領域において吸収された音波の周波数帯域とは異なる周波数帯域の音波を、第3弾性膜の領域において検出することができる。これにより、音波に含まれる様々な周波数成分を区別して検出することができる。
【0017】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜は、前記第3弾性膜の前記先端側の端部から延び、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第4弾性膜を更に有することが好ましい。
【0018】
上記構成によれば、第3弾性膜を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第3弾性膜により吸収されなかった音波は、第4弾性膜の領域において吸収される。従って、第3弾性膜を励振する特定の周波数帯域の音波は、第4弾性膜の領域において制限される。即ち、励振される弾性膜の領域を特定の周波数帯域毎に区分することができる。これにより、音波に含まれる周波数成分毎に区別して、所望の周波数成分の音波を選択的に検出することができる。
【0019】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第3弾性膜の前記先端側の端部の幅は、前記第1弾性膜の前記先端側の端部の幅よりも広いことが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、第1弾性膜及び第2弾性膜により吸収されなかった音波により第3弾性膜を励振させることができる。これにより、励振される弾性膜の領域を特定の周波数成分毎に区分することができる。
【0021】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第2弾性膜の長さは、前記第1弾性膜の長さよりも短いことが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、第2弾性膜の長さが短いため、延伸方向における弾性膜の長さを短くすることができる。これにより、周波数選択素子の小型化を図ることができる。
【0023】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第4弾性膜の長さは、前記第3弾性膜の長さよりも短いことが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、第4弾性膜の長さが短いため、延伸方向における弾性膜の長さを短くすることができる。これにより、周波数選択素子の小型化を図ることができる。
【0025】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記延伸方向において、前記第3弾性膜の長さは、前記第2弾性膜の長さよりも長いことが好ましい。
【0026】
上記構成によれば、第3弾性膜に振動を励振する周波数帯域の音波に応じて、第3弾性膜の最大振動位置を異ならせることができる。これにより、解像度の高い周波数スペクトル解析を第3弾性膜の領域において行うことができる。
【0027】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第3弾性膜は、前記弾性膜の前記先端に形成され、前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記第3弾性膜の長さは、前記第2弾性膜の長さよりも短いことが好ましい。
【0028】
上記構成によれば、第1弾性膜及び第2弾性膜により吸収されなかった周波数帯域の音波は、第3弾性膜の端部において反射される。従って、第3弾性膜の領域において弾性膜の振動の振幅を増幅することができる。これにより、弾性膜の先端においても低音域の周波数成分の音波を検出することができる。
【0029】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜は、前記基端の厚みよりも前記先端の厚みの方が薄いことが好ましい。
【0030】
上記構成によれば、高音域の音波は弾性膜の基端部側の領域を励振し、低音域の音波は弾性膜の先端側の領域を励振することができる。これにより、高音域の周波数成分と、低音域の周波数成分とを区別して検出することができる。
【0031】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第2弾性膜は、前記先端に向かうにつれ厚みが漸次薄くなることが好ましい。
【0032】
上記構成によれば、第1弾性膜を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第1弾性膜にて吸収されない音波は、第2弾性膜の領域においてより吸収され易くなる。これにより、特定の周波数成分の音波により励振される弾性膜の領域をより制限し易くすることができる。
【0033】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第4弾性膜の厚みは、前記先端に向かうにつれ厚みが漸次薄くなることが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、第3弾性膜を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第3弾性膜にて吸収されない音波は、第4弾性膜の領域においてより吸収され易くなる。これにより、励振される弾性膜の領域を特定の周波数成分毎に区分し易くすることができる。
【0035】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記筐体は、前記弾性膜の前記基端側に位置し、前記第2空間に入力された音波を反射する反射壁を有することが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、第2空間に伝播された音波は、第2空間において、弾性膜の先端側から基端側に向かって伝播され、弾性膜の基端側に位置する反射壁にて反射される。これにより、第2空間に伝播される音波の減衰を防ぐことができる。
【0037】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第1空間及び前記第2空間には液体が充填されていることが好ましい。
【0038】
上記構成によれば、第1空間及び第2空間に入力された音波の音波エネルギーを、より効率的に弾性膜に伝播させることができる。これにより、入力された音波により弾性膜を励振し易くすることができる。
【0039】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記第1空間及び前記第2空間は、前記弾性膜の前記基端から前記先端に向かう延伸方向において、前記弾性膜の前記先端に向かうにつれ、前記延伸方向と直交する断面における断面積が漸次小さくなるように構成されていることが好ましい。
【0040】
上記構成によれば、入力窓とは反対側における第1空間及び第2空間において、音波の振幅を増幅することができる。これにより、弾性膜の先端側における音波の感度を向上させることができる。
【0041】
本発明の一態様に係る周波数選択素子は、前記弾性膜には、前記弾性膜に照射された光を反射する光反射膜が形成されていることが好ましい。
【0042】
上記構成によれば、弾性膜の振動により弾性膜に照射された光が弾性膜上で散乱するため、人の肉眼で散乱光を観察することができる。従って、散乱光が観察された弾性膜の位置及び弾性膜の領域から、音刺激のスペクトラムを可視化することができると共に、スペクトラムの観測を行うことができる。即ち、周波数選択素子においてセンサを省略することができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0043】
本発明の一態様に係る周波数選択方法は、弾性膜の基端から前記弾性膜の先端に向かうにつれ幅が漸次広くなる第1弾性膜と、前記第1弾性膜の前記先端側の端部から連続し、前記先端に向かうにつれ幅が漸次狭くなる第2弾性膜と、を有している前記弾性膜が、第1空間と第2空間とを隔てており、前記第1空間の前記基端側から音波を入力するステップと、を含む。
【0044】
本発明の一態様に係る周波数選択方法は、入力された前記音波が前記第1空間および前記第2空間に伝播した際に生じる前記弾性膜の振動をセンサにより検出するステップを更に含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0045】
本発明の一態様によれば、様々な周波数成分を含む音波から所望の周波数成分のみを選択的に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本発明の実施形態1に係る周波数選択素子の概要を示す概略図である。
図2図1に示す周波数選択素子が備える弾性膜の構成を示す図である。
図3】実施形態1に係る周波数選択素子が備える弾性膜の第1変形例を示す図である。
図4】実施形態1に係る周波数選択素子が備える弾性膜の第2変形例を示す図である。
図5】本発明の実施形態2に係る周波数選択素子の概要を示す概略図である。
図6図2に示した弾性膜を備える周波数選択素子に音波を入力したときの弾性膜の変位を示すグラフである。
図7図2に示した弾性膜を備える周波数選択素子に音波を入力したときの弾性膜の変位を示すグラフである。
図8図3に示した弾性膜を備える周波数選択素子に音波を入力したときの弾性膜の変位を示すグラフである。
図9図4に示した弾性膜を備える周波数選択素子に音波を入力したときの弾性膜の変位を示すグラフである。
図10】人の蝸牛をモデルとした素子の構成を示す図である。
図11図10に示した弾性膜を備える素子に音波を入力したときの弾性膜の変位を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0047】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1に係る周波数選択素子1について、図1図6を参照して詳細に説明する。なお、図1などに示すようなX(X1-X2)方向、Y(Y1-Y2)方向、Z(Z1-Z2)方向という三方向の座標軸を規定して説明する。
【0048】
(周波数選択素子の構成の概要)
図1を参照して周波数選択素子1の概要について説明する。図1は、周波数選択素子1の概要を示す概略図である。図1に示すように、周波数選択素子1は、筐体10と、弾性膜50とを備えている。さらに、周波数選択素子1は、区画部40と、センサ60とを備えていてもよい。
【0049】
筐体10は、内部に空間を有する直方体状の筐体である。筐体10の内部は、板状の部材である区画部40及び弾性膜50により、第1空間S1と、第2空間S2とに区画されている。筐体10は、第1空間S1を有する第1筐体20と、第2空間S2を有する第2筐体30とを含む。第1筐体20と、第2筐体30とは、Z2方向において重なって位置している。なお、筐体10は、図示した例に限られない。筐体10は、円筒状の形状であってもよい。また、筐体10は、人の蝸牛のように渦巻き状の形状であってもよい。また、1つの筐体10が有する1つの内部空間を区画部40及び弾性膜50により区画することにより、第1筐体20と、第2筐体30とに分けてもよい。
【0050】
第1筐体20は、底壁21と、第1側壁22と、第2側壁23と、第3側壁24と、天壁25と、により構成されている。底壁21は、区画部40側に位置する。区画部40のZ1側の面が底壁21を構成している。底壁21のY方向(短手方向)におけるY1側の端部から第1側壁22がZ1方向に向かって延びている。底壁21のY方向におけるY2側の端部から第2側壁23がZ1方向に向かって延びている。底壁21のX方向(長手方向)において、X2側の端部から第3側壁24がZ1方向に向かって延びている。天壁25は、第1側壁22のZ1側の端部と、第2側壁23のZ1側の端部と、第3側壁24のZ1側の端部と、を接続する。第1筐体20は、X方向において、第3側壁24が設けられる側とは反対のX1側に入力窓27を有している。第1空間S1は、底壁21と、第1側壁22と、第2側壁23と、第3側壁24と、天壁25と、入力窓27とにより形成された第1筐体20の内部空間である。
【0051】
第2筐体30は、底壁31と、第1側壁32と、第2側壁33と、第3側壁34と、天壁35と、により構成されている。天壁35は、区画部40側に位置する。区画部40のZ2側の面が天壁35を構成している。天壁35のY方向におけるY1側の端部から第1側壁32がZ2方向に向かって延びている。底壁31のY方向におけるY2側の端部から第2側壁33がZ2方向に向かって延びている。底壁31のX方向において、X2側の端部から第3側壁34がZ2側に向かって延びている。底壁31は、第1側壁32のZ2側の端部と、第2側壁33のZ2側の端部と、第3側壁34のZ2側の端部と、を接続する。第2筐体30は、X方向において、第3側壁34が設けられる側とは反対のX1側に反射壁37を有している。第2空間S2は、底壁31と、第1側壁32と、第2側壁33と、第3側壁34と、天壁35と、反射壁37とにより形成された第2筐体30の内部空間である。
【0052】
第1筐体20の第1空間S1は、弾性膜50のZ1方向側の面と対向するように位置する。第2筐体30の第2空間S2は、弾性膜50のZ2方向側の面と対向するように位置する。第1空間S1と、第2空間S2とは、弾性膜50に対して面対称となるように形成されている。なお、第1空間S1と、第2空間S2とは、弾性膜50に対して非対称であってもよい。
【0053】
区画部40には、第1空間S1と第2空間S2とを連通する開口41が形成されている。開口41は、区画部40のX2側の先端付近に形成されている。開口41は、弾性膜50の先端52よりもX2方向側に形成されている。開口41を介して第1空間S1から第2空間S2に音波が伝播することで、第2空間S2に音波が入力される。
【0054】
第1空間S1、第2空間S2及び開口41には、液体が充填されている。第1空間S1、第2空間S2、及び開口41に充填される液体は、例えば、水、食塩水、人のリンパ液に準ずる液体等が挙げられる。上記構成によれば、第1空間及び第2空間に入力された音波の音波エネルギーを、より効率的に弾性膜に伝播させることができる。これにより、入力された音波により弾性膜を励振し易くすることができる。なお、第1空間S1、第2空間S2、及び開口41には、気体が充填されていてもよい。
【0055】
第1筐体20は、入力窓27を有する。入力窓27は、弾性膜50の基端51側に位置する。外部から入力窓27に音波が入力されると、第1空間S1に音波が入力される。入力窓27は、弾性を有する膜により構成されている。入力窓27は、例えば、ポリ塩化ビニル、ウレタン等の弾性を有する膜により構成される。なお、入力窓27は音波を入力可能な開口であってもよい。
【0056】
第2筐体30は反射壁37を有する。反射壁37は、第1空間S1から第2空間S2に入力された音波を反射する壁である。反射壁37は、弾性膜50の基端51側に位置する。なお、反射壁37は、弾性を有しない硬膜でも良いが、弾性を有する膜である方が好ましい。反射壁37は、例えばポリ塩化ビニル、ウレタン等の弾性を有する膜により構成される。
【0057】
上記構成によれば、入力窓27から第1空間S1に入力された音波は、開口41を介して第2空間S2に伝播され、第2空間S2において弾性膜50の先端52側から基端51側に向かって伝播され、弾性膜50の基端51側に位置する反射壁37にて反射される。これにより、第2空間S2に伝播する音波(特に低音域の音波)の減衰を防ぐことができる。
【0058】
センサ60は、弾性膜50の振動を検出するセンサ60である。センサ60は、例えば、弾性膜50にレーザ光を照射するレーザ照射部と、弾性膜50から反射からの反射光を受光する受光部とを有するセンサである。この場合、筐体10は、レーザ光を透過する部材により構成される。センサ60は、筐体10の外部に設けられている。なお、センサ60は筐体10の内部に設けてもよい。なお、センサ60は、弾性膜50の特定の領域毎に分けてレーザ光を照射し、各領域において振動を検出するものとしてもよい。また、センサ60は、複数のレーザ照射部と、複数の受光部とを有するものであってもよい。
【0059】
(弾性膜50の構成)
図2を参照して、弾性膜50の構成について説明する。図2は、図1に示す周波数選択素子1の弾性膜50の構成を示す図である。図2の符号201は、図1の弾性膜50をZ2方向から見た図である。図2の符号202は、図1の弾性膜50をY1方向から見た図である。
【0060】
弾性膜50は、第1筐体20の第1空間S1及び第2筐体30の第2空間S2に伝播された音波により励振される膜である。弾性膜50のヤング率、及び/または弾性膜50の形状(弾性膜50の幅及び厚み)を、検出する音波の周波数に応じて変更することにより、音波から所望の周波数成分のみを選択的に検出することが可能となる。弾性膜50は、ポリ塩化ビニル、ウレタン等の弾性を有する膜により構成される。
【0061】
弾性膜50は、区画部40に取り付けられている。弾性膜50の基端51は第1筐体20の入力窓27側に位置し、基端51とは反対側の弾性膜50の先端52は開口41側に位置している。弾性膜50は、基端51と先端52との間において、弾性膜50の幅にくびれを有する構成である。ここでは、幅はY方向における寸法、厚みはZ方向における寸法、長さはX方向における寸法を意味する。
【0062】
弾性膜50の先端52の厚みT5は、弾性膜50の基端51の厚みT1よりも薄くなっている。弾性膜50は、基端51から先端52に向かうにつれ弾性膜50の厚みが薄くなるように構成される。なお、本願において、基端51から先端52に向かうにつれ弾性膜50の厚みが薄くなる構成には、弾性膜50の厚みの一部が一定の厚みを有する構成を含むものとする。上記構成によれば、高音域の音波は弾性膜の基端部側の領域を励振し、低音域の音波は弾性膜の先端側の領域を励振することができる。これにより、高音域の周波数成分と、低音域の周波数成分とを区別して検出することができる。
【0063】
弾性膜50は、第1幅広部53(第1弾性膜)と、第1幅狭部54(第2弾性膜)と、第2幅広部55(第3弾性膜)と、第2幅狭部56(第4弾性膜)とを有している。第1幅広部53と、第1幅狭部54と、第2幅広部55と、第2幅狭部56とは、一体に形成してもよく、別々に形成したものを結合してもよい。
【0064】
第1幅広部53は、弾性膜50の基端51から先端52側に向かって延びている。第1幅広部53は、先端52に向かうにつれ幅が漸次広くなっている。また、第1幅広部53は、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなっている。なお、第1幅広部53の厚みは、先端52に向かって実質的に一定となる厚みとしてもよい。
【0065】
第1幅狭部54は、第1幅広部53の先端52側の端部から連続して形成され、第1幅広部53の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。基端51から先端52に向かう延伸方向(X2方向)における第1幅狭部54の長さL2は、第1幅広部53の長さL1よりも短い。
【0066】
上記構成によれば、第1幅狭部54の長さL2が短いため、延伸方向における弾性膜50の長さを短くすることができる。これにより、周波数選択素子1の小型化を図ることができる。また、第1幅広部53の長さL1を長くすることで、第1幅広部53に振動を励振する周波数帯域の音波に応じて、第1幅広部53の最大振動位置を異ならせることができる。これにより、周波数スペクトル解析を第1幅広部53の領域において行うことができる。
【0067】
第1幅狭部54の基端51側の端部の幅は、第1幅広部53の先端52側の端部の幅と同じ幅W2である。第1幅狭部54は、先端52に向かうにつれ幅が漸次狭くなっている。第1幅狭部54の先端52側の端部の幅W3は、弾性膜50の基端51の幅W1よりも広くてもよいし、幅W1よりも狭くてもよいし、幅W1と同じであってもよい。
【0068】
上記構成によれば、第1幅広部53を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第1幅広部53にて吸収されない音波は、第1幅狭部54の領域において吸収される。第1幅広部53を励振する特定の周波数帯域とは異なる周波数帯域の音波のうち、第1幅広部53で吸収されなかった音波は、第1幅狭部54に吸収されず、第1幅狭部54から続く弾性膜(第2幅広部55及び第2幅狭部56)の領域を励振する。従って、特定の周波数帯域の音波により励振される弾性膜50の領域を、特定の領域に制限することができる。これにより、様々な周波数成分を含む音波から所望の周波数成分のみを選択的に検出することができる。
【0069】
第1幅狭部54の基端51側の端部の厚みは、第1幅広部53の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT2である。第1幅狭部54の先端52側の端部の厚みT3は、第1幅狭部54の基端51側の端部の厚みT2よりも薄くなっている。第1幅狭部54は、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなっている。
【0070】
上記構成によれば、第1幅広部53を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第1幅広部53にて吸収されない音波は、第1幅狭部54の領域においてより吸収され易くなる。これにより、特定の周波数成分の音波により励振される弾性膜50の領域をより制限し易くすることができる。
【0071】
第2幅広部55は、第1幅狭部54の先端52側の端部から連続して形成され、第1幅狭部54の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。X2方向における第2幅広部55の長さL3は、第1幅狭部54の長さL2よりも長い。
【0072】
第2幅広部55の基端51側の端部の幅は、第1幅狭部54の先端52側の端部の幅と同じ幅W3である。第2幅広部55は、先端52に向かうにつれ幅が漸次広くなっている。第2幅広部55の先端52側の端部の幅W4は、第1幅広部53の先端52側の端部の幅W2よりも広い。
【0073】
上記構成によれば、第1幅広部53及び第1幅狭部54の領域において吸収された音波の周波数帯域とは異なる周波数帯域の音波を、第2幅広部55の領域において検出することができる。これにより、音波に含まれる様々な周波数成分を区別して検出することができる。
【0074】
また、上記構成によれば、第1幅広部53及び第1幅狭部54により吸収されなかった音波により第2幅広部55を励振させることができる。これにより、励振される弾性膜50の領域を特定の周波数成分(周波数帯域)毎に区分することができる。なお、第2幅広部55の幅W4は、第1幅広部53の幅W2よりも狭くてもよいし、幅W2と同じであってもよい。
【0075】
第2幅広部55の基端51側の端部の厚みは、第1幅狭部54の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT3である。第2幅広部55の厚みは、先端52に向かって一定の厚みである。なお、第2幅広部55の厚みは、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなる構成としてもよい。
【0076】
第2幅狭部56は、第2幅広部55の先端52側の端部から連続して形成され、第2幅広部55の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。X2方向における第2幅狭部56の長さL4は、第2幅広部55の長さL3よりも短い。
【0077】
上記構成によれば、第2幅狭部56の長さL4が短いため、延伸方向における弾性膜50の長さを短くすることができる。これにより、周波数選択素子1の小型化を図ることができる。また、第2幅広部55の長さL3を長くすることで、第2幅広部55に振動を励振する周波数帯域の音波に応じて、第2幅広部55の最大振動位置を異ならせることができる。これにより、周波数スペクトル解析を第2幅広部55の領域において行うことができる。
【0078】
第2幅狭部56の基端51側の端部の幅は、第2幅広部55の先端52側の端部の幅と同じ幅W4である。第2幅狭部56は、先端52に向かうにつれ幅が漸次狭くなっている。第2幅狭部56の先端52側の端部の幅(弾性膜50の先端52の幅)W5は、弾性膜50の基端51の幅W1よりも広くてもよいし、幅W1よりも狭くてもよいし、幅W1と同じであってもよい。また、幅W5は、第1幅狭部54の先端52側の端部の幅W3よりも広くてもよいし、幅W3よりも狭くてもよいし、幅W3と同じであってもよい。
【0079】
上記構成によれば、第2幅広部55を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第2幅広部55により吸収されなかった音波は、第2幅狭部56の領域において吸収される。従って、第2幅広部55を励振する特定の周波数帯域の音波は、第2幅狭部56の領域において制限される。即ち、励振される弾性膜50の領域を特定の周波数帯域毎に区分することができる。これにより、音波に含まれる周波数成分毎に区別して、所望の周波数成分の音波を選択的に検出することができる。
【0080】
第2幅狭部56の基端51側の端部の厚みは、第2幅広部55の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT4である。第2幅狭部56の先端52側の端部の厚みT5は、第2幅狭部56の基端51側の端部の厚みT4よりも薄くなっている。第2幅狭部56は、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなっている。第2幅狭部56の先端52側の端部の厚み(弾性膜50の先端52の厚み)T5は、弾性膜50の基端51の厚みT1よりも薄くなっている。
【0081】
上記構成によれば、第2幅広部55を励振する特定の周波数帯域の音波のうち、第2幅広部55にて吸収されない音波は、第2幅狭部56の領域においてより吸収され易くなる。これにより、励振される弾性膜の領域を特定の周波数成分毎に区分し易くすることができる。
【0082】
なお、弾性膜50には、弾性膜50に照射された光を反射する光反射膜が形成されていてもよい。上記構成によれば、弾性膜の振動により弾性膜に照射された光が弾性膜上で散乱するため、人の肉眼で散乱光を観察することができる。従って、散乱光が観察された弾性膜の位置及び弾性膜の領域から、音刺激のスペクトラムを可視化することができると共に、スペクトラムの観測を行うことができる。即ち、周波数選択素子1においてセンサを省略することができる。これにより、部品点数を削減することができる。
【0083】
(周波数選択素子による周波数選択方法)
周波数選択素子1を用いた周波数選択方法について説明する。
【0084】
先ず、周波数選択素子1の入力窓27に音波を入力する。入力窓27に入力された音波は、第1空間S1の液体に伝播する。第1空間S1の液体に伝播した音波は、第1空間S1をX2方向に進み、開口41を介して第2空間S2に伝播する。第2空間S2に伝播した音波は、X1方向に向かって進み、第2筐体30のX1方向の端部に位置する反射壁37にて反射される。反射壁37による音波の反射は、自由端反射による反射である。
【0085】
第1空間S1及び第2空間S2に入力された音波により、弾性膜50は振動する。特定の周波数帯域の音波により励振される弾性膜の領域は、弾性膜50の特定の領域を励振する。より詳細には、高音域の音波は第1幅広部53及び第1幅狭部54の領域を励振し、低音域の音波は第2幅広部55及び第2幅狭部56の領域を励振する。センサ60は、入力された音波が第1空間S1および第2空間S2に伝播した際に生じる弾性膜50の振動を検出する。より詳細には、センサ60は、音波により励振された弾性膜50の振動する領域の位置および振動の強度を検出する。弾性膜50の振動する領域の位置から、所望の周波数成分のみを選択的に検出することができる。すなわち、センサ60は、弾性膜50における振動の強度分布を検出する。センサ60は、振動の強度分布(波形)から、音波の周波数を特定してもよい。
【0086】
弾性膜50は、弾性膜50の両面がそれぞれ接する第1空間S1と第2空間S2との間に音圧の差が生まれることで振動する。以下、第1空間S1と、第2空間S2との間に音圧の差のことを単に音圧差と称する。音波が入力されると、音波の周波数帯域により音圧差が生じる。音圧差が生じない周波数帯域の場合、弾性膜50に振動が励振されない。これは、弾性膜50に対して奇対称な音波と、弾性膜50に対して偶対称な音波とが関係していると考えられている。第1空間S1及び第2空間S2に伝播する音波には、奇対称な音波及び偶対称な音波が含まれる。奇対称な音波は、第1空間S1と第2空間S2との間で音波の位相が異なるため、音圧差を発生させる。弾性膜50は、奇対称な音波により励振された振動の振動エネルギーを吸収する。一方、偶対称な音波は、第1空間S1と第2空間S2との間で同位相となり、音圧差を発生させない。そのため、偶対称な音波は弾性膜50に振動を励振しない。
【0087】
〔その他の実施例〕
本発明の弾性膜50は、上述の弾性膜50に限られるものではない。その他の実施例について、図3及び図4を用いて、以下に説明する。
【0088】
(第1変形例)
図3は、周波数選択素子1が備える弾性膜50の第1変形例を示す図である。図3の符号301は、周波数選択素子1に取り付けられた弾性膜50AをZ2方向から見た図である。図3の符号302は、周波数選択素子1に取り付けられた弾性膜50AをY1方向から見た図である。図3に示す弾性膜50Aは、図2に示した弾性膜50と比べて、第3幅広部57と、第3幅狭部58とを更に有している点で異なる。
【0089】
図3に示すように、第3幅広部57は、第2幅狭部56の先端52側の端部から連続して形成され、第2幅狭部56の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。X2方向における第3幅広部57の長さL5は、第2幅狭部56の長さL4よりも長い。
【0090】
第3幅広部57の基端51側の端部の幅は、第2幅狭部56の先端52側の端部の幅と同じ幅W5である。第3幅広部57は、先端52に向かうにつれ幅が漸次広くなっている。なお、第3幅広部57の先端52側の端部の幅W6は、第1幅広部53の先端52側の端部の幅W2よりも広くてもよいし、幅W2よりも狭くてもよいし、幅W2と同じであってもよい。また、第3幅広部57の先端52側の端部の幅W6は、第2幅広部55の先端52側の端部の幅W4よりも広くてもよいし、幅W4よりも狭くてもよいし、幅W4と同じであってもよい。
【0091】
第3幅広部57の基端51側の端部の厚みは、第2幅狭部56の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT5である。また、第3幅広部57の厚みは、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなっている。なお、第3幅広部57の厚みは、先端52に向かって実質的に一定となる構成としてもよい。
【0092】
第3幅狭部58は、第3幅広部57の先端52側の端部から連続して形成され、第3幅広部57の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。X2方向における第3幅狭部58の長さL6は、第3幅広部57の長さL5よりも短い。
【0093】
第3幅狭部58の基端51側の端部の幅は、第3幅広部57の先端52側の端部の幅と同じ幅W6である。第3幅狭部58は、先端52に向かうにつれ幅が漸次狭くなっている。第3幅狭部58の先端52側の端部の幅(弾性膜50の先端52の幅)W7は、弾性膜50の基端51の幅W1よりも広くてもよいし、幅W1よりも狭くてもよいし、幅W1と同じであってもよい。また、幅W7は、第1幅狭部54の先端52側の端部の幅W3よりも広くてもよいし、幅W3よりも狭くてもよいし、幅W3と同じであってもよい。また、幅W7は、第2幅狭部56の先端52側の端部の幅W5よりも広くてもよいし、幅W5よりも狭くてもよいし、幅W5と同じであってもよい。
【0094】
第3幅狭部58の基端51側の端部の厚みT6は、第3幅広部57の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT6である。第3幅狭部58は、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなっている。第3幅狭部58の先端52側の端部の厚み(弾性膜50の先端52の厚み)T7は、弾性膜50の基端51の厚みT1よりも薄くなっている。
【0095】
(第2変形例)
図4は、周波数選択素子1が備える弾性膜50の第2変形例を示す図である。図4の符号401は、周波数選択素子1に取り付けられた弾性膜50BをZ2方向から見た図である。図4の符号402は、周波数選択素子1に取り付けられた弾性膜50BをY1方向から見た図である。図4に示す弾性膜50Bは、図2に示した弾性膜50と比べて、第2幅狭部56を有していない点で異なる。
【0096】
第2幅広部55Bは、第1幅狭部54の先端52側の端部から連続して形成され、第1幅狭部54の先端52側の端部から先端52に向かって延びる。X2方向における第2幅広部55Bの長さL3は、特に限定はされないが、第1幅狭部54の長さL2よりも短くすることが好ましい。
【0097】
第2幅広部55Bの基端51側の端部の幅は、第1幅狭部54の先端52側の端部の幅と同じ幅W3である。第2幅広部55Bは、先端52に向かうにつれ幅が漸次広くなっている。なお、第2幅広部55Bの先端52側の端部の幅(弾性膜50Bの先端52の幅)W4は、第1幅広部53の先端52側の端部の幅W2よりも広くてもよいし、幅W2よりも狭くてもよいし、幅W2と同じであってもよい。
【0098】
第2幅広部55Bの基端51側の端部の厚みは、第1幅狭部54の先端52側の端部の厚みと同じ厚みT3である。また、第2幅広部55Bの厚みは、先端52に向かうにつれ厚みが漸次厚くなっている。第2幅広部55Bの先端52側の端部の厚み(弾性膜50の先端52の厚み)T4は、弾性膜50の基端51の厚みT1よりも薄くなっている。なお、第2幅広部55Bの厚みは、先端52に向かうにつれ厚みが漸次薄くなるようにしてもよいし、先端52に向かうにつれ厚みが実質的に一定となる構成としてもよい。
【0099】
上記構成によれば、第1幅広部53及び第1幅狭部54により吸収されなかった周波数帯域の音波は、第2幅広部55Bの端部(弾性膜50の先端52)において反射される。従って、第2幅広部55Bの領域において弾性膜50の振動の振幅を増幅することができる。これにより、センサ60は、弾性膜50の第2幅広部55Bの領域においても低音域の周波数成分の音波を検出することができる。
【0100】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、図5を参照して以下に説明する。図5は、実施形態2に係る周波数選択素子1Aの概要を示す概略図である。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図5に示す周波数選択素子1Aは、実施形態1に係る周波数選択素子1と比べて、第1空間S1及び第2空間S2が、弾性膜50の基端51から弾性膜50の先端52に向かう延伸方向(X2方向)に向かうにつれ空間が狭くなっている点で異なる。
【0101】
図5に示すように、筐体10Aは、X2方向に向かうにつれ、先細りした形状である。筐体10Aは、X2方向に向かうにつれ、筐体10Aの幅が狭くなると共に、筐体10Aの高さが低くなっている。より詳細には、第1筐体20Aの底壁21A及び天壁25Aは、X2方向に向かうにつれ、Y方向の幅が狭くなっている。第1筐体20Aの第1側壁22A及び第2側壁23Aは、X2方向に向かうにつれ、Z方向の高さが低くなっている。第2筐体30Aの底壁31A及び天壁35Aは、X2方向に向かうにつれ、Y方向の幅が狭くなっている。第2筐体30Aの第1側壁32A及び第2側壁33Aは、X2方向に向かうにつれ、Z方向の高さが低くなっている。
【0102】
第1筐体20Aの第1空間S3は、X2方向において、先端52に向かうにつれ、X2方向と直交する断面における断面積A1が漸次小さくなるように構成されている。第2筐体30Aの第2空間S4は、X2方向において、先端52に向かうにつれ、X2方向と直交する断面における断面積A2が漸次小さくなるように構成されている。
【0103】
上記構成によれば、入力窓27Aとは反対側における第1空間S3及び第2空間S4において、音波の振幅を増幅することができる。これにより、弾性膜50の先端52側における音波の感度を向上させることができる。
【0104】
上述した実施形態による周波数選択素子1,1Aを、地震波、船舶のスクリュー音などを高感度に検出できる水中マイク(ハイドロフォン)、ドローンの大規模編隊飛行時の超音波衝突防止レーダーシステム、水中での高感度超音波検出センサ、エコーロケーションを支援するデバイスなどに適用することが可能である。
【実施例0105】
本発明の一実施例について、図6を参照して以下に説明する。図6は、図2に示した弾性膜50を備える周波数選択素子1に音波を入力したときの、ある時点での弾性膜50の変位を示すグラフである。図6に示すグラフは、音圧(Pa)及び弾性膜50の変位(nm)を縦軸に、弾性膜50の基端51からの位置(μm)を横軸に取ったグラフである(図7図8図9についても同様)。図6には、高音域(7000Hz、9000Hz)、及び低音域(1000Hz、3000Hz)の音波をそれぞれ入力したときのグラフが示されている。図6に示すシミュレーション結果は、以下の条件下で行った。
【0106】
第1空間S1及び第2空間S2は、長さを35mm、幅を4mm、高さを2mmとした。入力窓27及び反射壁37は、幅を4mm、高さを2mmとした。区画部40は、長さを35mm、幅を4mm、高さを0.1mmとした。開口41は、直径を0.8mmとした。
【0107】
弾性膜50は、長さL1を11.9mmとし、長さL2を2mmとし、長さL3を2mmとし、長さL4を1mmとした。弾性膜50は、幅W1を100μmとし、幅W2を240μmとし、幅W3を80μmとし、幅W4を400μmとし、幅W5を80μmとした。弾性膜50は、厚みT1を30μmとし、厚みT2を23μmとし、厚みT3を4μmとし、厚みT4を4μmとし、厚みT5を2μmとした。
【0108】
7000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50の基端51付近において、第1空間S1の音圧を示す線Pa1と、第2空間S2の音圧を示す線Pa2との間に差があり、音圧差が生じていたことが分かる。弾性膜50の基端51から5mm付近から進行波が検出された。基端51から8mm付近で進行波の振幅がピーク(最大振動位置)を迎えた。その後、進行波は、徐々に減衰し、基端51から13.9mmの付近で消失した。音圧差は、弾性膜50に進行波が励振された後、徐々に差が縮まっていた。弾性膜50の進行波が消失したとき、音圧差は生じていなかった。
【0109】
9000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されたときも、7000Hzの音波と同様の結果が得られた。弾性膜50の基端51から5mm付近から進行波が検出された。基端51から7mm付近で進行波の振幅がピークを迎えた。その後、進行波は、徐々に減衰し、基端51から13.9mmの付近で消失した。
【0110】
一方、1000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50の基端51付近において、第1空間S1の音圧を示す線Pa1と、第2空間S2の音圧を示す線Pa2との間に差があり、音圧差が生じていたことが分かる。基端51から13mmまでの領域では、進行波は検出されなかった。基端51から13.9mmの付近から進行波が検出され、基端51から13.9mm付近で進行波の振幅が最も大きくなっている。その後、進行波は、徐々に減衰し、基端51から16.9mm付近で消失した。
【0111】
3000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されたときも、1000Hzの音波と同様の結果が得られた。弾性膜50の基端51から13mmまでの領域では、進行波は検出されなかった。基端51から13.9mmの付近から進行波が検出され、基端51から15mm付近で進行波の振幅が最も大きくなっている。その後、進行波は、徐々に減衰し、基端51から16.9mm付近で消失した。
【0112】
上記のシミュレーション結果から、高音域(7000Hz、9000Hz)の音波は、いずれも弾性膜50の基端51から13.9mmの付近、即ち第1幅狭部54の先端52側の端部付近において、進行波が消失している。高音域の音波は、いずれも基端51から13.9mm~16.9mmの領域では進行波を検出していない。これは、第1幅狭部54の領域において、高音域の音波により励振された振動が吸収されたことを意味する。即ち、高音域の周波数成分の音波により励振される弾性膜50の振動の領域は第1幅狭部54により制限されている。
【0113】
一方、低音域(1000Hz、3000Hz)の音波は、弾性膜50の基端51から13mmまでの領域では進行波が検出されず、基端51から13.9mm以降の領域において進行波が検出されている。これは、第2幅広部55を励振させる低音域の音波が第1幅広部53及び第1幅狭部54により完全に吸収されていないことを意味する。即ち、第1幅狭部54に連続する第2幅広部55を形成することで、励振される弾性膜50の領域を特定の周波数帯域毎に区分することができることが分かった。
【実施例0114】
本発明の実施例2について、図7を参照して以下に説明する。図7は、図2に示した弾性膜50を備える周波数選択素子1に音波を入力したときの弾性膜50の変位を示すグラフである。実施例2において、実施例1と同様に、高音域(7000Hz、9000Hz)、及び低音域(1000Hz、3000Hz)の音波をそれぞれ入力した。図7に示すシミュレーション結果は、弾性膜50の寸法を以下のようにして行った。
【0115】
弾性膜50は、長さL1を11.9mmとし、長さL2を2mmとし、長さL3を5mmとし、長さL4を1mmとした。弾性膜50は、幅W1を100μmとし、幅W2を240μmとし、幅W3を80μmとし、幅W4を400μmとし、幅W5を80μmとした。弾性膜50は、厚みT1を30μmとし、厚みT2を23μmとし、厚みT3を4μmとし、厚みT4を4μmとし、厚みT5を2μmとした。図6の条件と比べて、第2幅広部55の長さL3が5mmと長くなっている。
【0116】
7000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50の基端51から5mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から13.9mmの付近で消失した。9000Hzの音波についても、7000Hzの音波と同様に、基端51から5mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から13.9mmの付近で消失した。高音域の音波を入力したときの結果は、図6の条件下におけるシミュレーション結果と同様の結果となった。
【0117】
一方、1000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50の基端51から13.9mmの付近から進行波が検出され、進行波は基端51から19.9mm付近で消失した。3000Hzの音波についても、1000Hzの音波と同様に、基端51から13.9mmの付近から進行波が検出され、進行波は基端51から19.9mm付近で消失した。1000Hz及び3000Hzの音波が入力されたとき、いずれも基端51から13mmまでの領域では、進行波は検出されなかった。図6の条件下におけるシミュレーション結果と比較して、図7の条件下におけるシミュレーション結果では、基端51から13.9mm~19.9mmの間の領域(第2幅広部55と第2幅狭部56の領域)において、進行波の波が明確に検出されていた。
【0118】
上記シミュレーション結果から、第2幅広部55の長さL3を第1幅狭部54の長さL2よりも長くすることにより、第2幅広部55の領域において進行波の波が明確になることが分かった。即ち、第2幅広部55に振動を励振する周波数帯域の音波に応じて、第2幅広部55の最大振動位置を異ならせることが分かった。これにより、解像度の高い周波数スペクトル解析を第2幅広部55の領域において行うことができる。
【実施例0119】
本発明の実施例3について、図8を参照して以下に説明する。図8は、図3に示した弾性膜50Aを備える周波数選択素子1に音波を入力したときの弾性膜50Aの変位を示すグラフである。図8には、高音域(14000Hz、20KHz)、中音域(1000Hz、5000Hz)、低音域(20Hz、100Hz)の音波をそれぞれ入力したときのグラフが示されている。図8に示すシミュレーション結果は、弾性膜50の寸法を以下のようにして行った。
【0120】
弾性膜50Aは、長さL1を8mmとし、長さL2を3mmとし、長さL3を8mmとし、長さL4を3mmとし、長さL5を8mmとし、長さL6を3mmとした。弾性膜50Aは、幅W1を100μmとし、幅W2を200μmとし、幅W3を100μmとし、幅W4を260μmとし、幅W5を160μmとし、幅W6を900μmとし、幅W7を200μmとした。弾性膜50Aは、厚みT1を30μmとし、厚みT2を28μmとし、厚みT3を7μmとし、厚みT4を6μmとし、厚みT5を4μmとし、厚みT6を3.8μmとし、厚みT7を2μmとした。
【0121】
高音域である14000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50Aの基端51から4mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から11mmの付近で消失した。20KHzの音波についても、14000Hzの音波と同様に、基端51から3mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から11mmの付近で消失した。
【0122】
中音域である1000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50Aの基端51から15mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から22mmの付近で消失した。5000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、基端51から11mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から17mm付近で消失した。1000Hz及び5000Hzの音波が入力されたとき、いずれも基端51から11mmまでの領域では、進行波は検出されなかった。
【0123】
低音域である20Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50Aの基端51から24mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から32mmの付近で消失した。100Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、基端51から23mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から29mm付近で消失した。20Hz及び100Hzの音波が入力されたとき、いずれも基端51から22mmまでの領域では、進行波は検出されなかった。
【0124】
上記のシミュレーション結果より、扇形に広がる弾性膜と扇形に狭まる弾性膜とを一つの弾性膜ユニットとし、複数の弾性膜ユニットを有する弾性膜50Aによれば、音波に含まれる周波数成分をより細分化して検出することができる。
【実施例0125】
本発明の実施例4について、図9を参照して以下に説明する。図9は、図4に示した弾性膜50Bを備える周波数選択素子1に音波を入力したときの弾性膜50Bの変位を示すグラフである。図9には、高音域(4000Hz)、低音域(1000Hz)の音波をそれぞれ入力したときのグラフが示されている。図9に示すシミュレーション結果は、弾性膜50Bの寸法を以下のようにして行った。
【0126】
弾性膜50Bは、長さL1を14.9mmとし、長さL2を3mmとし、長さL3を2mmとした。弾性膜50Bは、幅W1を100μmとし、幅W2を137.65μmとし、幅W3を100μmとし、幅W4を137.65μmとした。弾性膜50Bは、厚みT1を30μmとし、厚みT2を21.235μmとし、厚みT3を2μmとし、厚みT4を21.235μmとした。
【0127】
高音域である4000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50Bの基端51から8mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から17mmの付近で消失した。低音域である1000Hzの音波が周波数選択素子1に入力されると、弾性膜50Bの基端51から17mm付近から進行波が検出され、進行波は基端51から20mmの付近で消失した。1000Hzの音波が入力されたとき、基端51から17mm付近までの領域では、進行波は検出されなかった。第2幅狭部56を有していない構成であっても高音域の音波と、低音域の音波とに区別して検出することができていた。
【0128】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0129】
1 周波数選択素子
10 筐体
20 第1筐体
30 第2筐体
27 入力窓
37 反射壁
40 区画部
41 開口
50 弾性膜
51 基端
52 先端
53 第1幅広部
54 第1幅狭部
55 第2幅広部
56 第2幅狭部
57 第3幅広部
58 第3幅狭部
60 センサ
図1
図2
図3
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図5
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図11