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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072220
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】扉閉鎖順位調整器及び両開き扉
(51)【国際特許分類】
   E05F 5/12 20060101AFI20240520BHJP
   E05F 17/00 20060101ALI20240520BHJP
   E05C 7/06 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
E05F5/12
E05F17/00 A
E05C7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182969
(22)【出願日】2022-11-15
(71)【出願人】
【識別番号】592114703
【氏名又は名称】株式会社ベスト
(71)【出願人】
【識別番号】312010696
【氏名又は名称】株式会社ジェネラルハードウェア
(74)【代理人】
【識別番号】100160299
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 卓
(72)【発明者】
【氏名】堀 英樹
(57)【要約】
【課題】 簡易な構造であり、かつ、取付後において美観を損なうことがない扉閉鎖順位調整器を提供する。
【解決手段】
第1アーム31及び第2アーム32の各動作に応じて、スライド自在に支持されている第1スライド部材40及び第2スライド部材50と、扉上枠4に揺動自在に取り付けられている揺動部材11と、トーションばね23と、を備え、先閉扉の開放時において、揺動部材の一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成するとともに、第1スライド部材を揺動部材の一方の端部に当接させることにより、一方の端部を上方に移動させることが可能であり、当該動作により、揺動部材の他方の端部と第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成した。
【選択図】 図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直軸線回りに回動する先閉扉及び後閉扉の閉鎖順位を調整する扉閉鎖順位調整器において、
前記先閉扉に取り付けられる第1アーム部材と、前記後閉扉に取り付けられる第2アーム部材と、
前記第1アーム部材及に取り付けられ、前記第1アーム部材の動作に応じてスライド自在となるように、扉支持構造体に支持されている第1スライド部材と、前記第2アーム部材に取り付けられ、前記第2アーム部材の動作に応じてスライド自在となるように、前記扉支持構造体に支持されている第2スライド部材と、
前記扉支持構造体に、支軸を中心として所定範囲内で揺動自在に取り付けられている揺動部材と、
前記第1スライド部材が押圧する側の前記揺動部材の一方の端部に対して、所定の回転方向に作用する付勢力を付与するための付勢手段と、を備え、
前記先閉扉の開放時において、前記揺動部材の前記一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、前記揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成されているとともに、
前記第1スライド部材を前記揺動部材の前記一方の端部に当接させることにより、前記揺動部材の前記一方の端部を、前記所定の回転方向と逆の回転方向に回転させることが可能であり、当該動作により、前記揺動部材の他方の端部と前記第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成されていることを特徴とする扉閉鎖順位調整器。
【請求項2】
前記揺動部材における前記第1スライド部材側の端部には、回動自在に転動体が取り付けられているとともに、
前記第1スライド部材における前記揺動部材の一方の端部側の先端が、L字形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の扉閉鎖順位調整器。
【請求項3】
鉛直軸線回りに回動する前記先閉扉及び前記後閉扉と、
請求項1又は請求項2に記載の扉閉鎖順位調整器と、を備え、
前記前記先閉扉及び前記後閉扉にそれぞれ、前記第1アーム部材及び前記第2アーム部材が取り付けられていることを特徴とする両開き扉。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両開き式の二つの扉を閉鎖順序通りに閉鎖させるための扉閉鎖順位調整器、及び当該扉閉鎖順位調整器を使用した両開き扉に関する。
【背景技術】
【0002】
防火戸等の両開き扉において、左右の閉まる順番を調整する為に扉閉鎖順位調整器が使用されている。
従来、上枠に固定設置されるベースと、当該ベースが有する軸体に対して回動自在に設置されるアームと、当該アームが上枠側から扉の開く方向に突出するようアームに対して付勢力を及ぼす弾性体とを有し、2枚扉が開いた状態のときにアームが突出状態となることによって2枚扉の閉鎖順位を調整する扉閉鎖順位調整器が知られている(以下、「第1扉閉鎖順位調整器」という。)(特許文献1)。
【0003】
また、建物の出入り口の上框に取り付けられる長尺状の本体ケースと、本体ケースの一端側に設けられ先閉まり側の扉の内面に当接するローラを一端に枢結して本体ケースに収納された状態と本体ケースから所定角度で突出した状態との間で回動自在な第1のレバーと、本体ケースの他端側に設けられ後閉まり側の扉の内面に当接するローラを一端に枢結して本体ケースに収納された状態と本体ケースから所定角度で突出し先閉まり側の扉の閉動の邪魔にならない角度で後閉まり側の扉の動きを停止させる状態との間で回動自在でキックばねにより本体ケースから前方に突出する方向に付勢された第2のレバーと、第1のレバーに連結杆を介して繋がれ第1のレバーの回動と連動して摺動し、ばねにより本体ケースの他端側に付勢され本体ケースの他端側への移動がストッパー手段により所定位置で停止されるように構成された摺動ブロックと、第2のレバーの爪部に当接して第2のレバーの一端が本体ケースから前方に突出する状態を保持するために本体ケースに回動自在に取り付けられた当たり金具と、を備える扉閉鎖順位調整器(以下、「第2扉閉鎖順位調整器」という。)が存在する(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-249842号公報
【特許文献2】特開2002-47860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、第1扉閉鎖順位調整器は、美観上の観点から問題がある。また、第2扉閉鎖順位調整器は、美観上の問題は一定程度向上しているが、改良の目的が美観の向上を意図していないため、複雑な構造となる。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、簡易な構造であり、かつ、取付後において美観を損なうことがない扉閉鎖順位調整器及び両開き扉を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、鉛直軸線回りに回動する先閉扉及び後閉扉の閉鎖順位を調整する扉閉鎖順位調整器において、上記先閉扉に取り付けられる第1アーム部材と、上記後閉扉に取り付けられる第2アーム部材と、上記第1アーム部材及に取り付けられ、上記第1アーム部材の動作に応じてスライド自在となるように、扉支持構造体に支持されている第1スライド部材と、上記第2アーム部材に取り付けられ、上記第2アーム部材の動作に応じてスライド自在となるように、上記扉支持構造体に支持されている第2スライド部材と、上記扉支持構造体に、支軸を中心として所定範囲内で揺動自在に取り付けられている揺動部材と、上記第1スライド部材が押圧する側の上記揺動部材の一方の端部に対して、常時、所定の回転方向に作用する付勢力を付与するための付勢手段と、を備え、上記先閉扉の開放時において、上記揺動部材の上記一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、上記揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成されているとともに、上記第1スライド部材を上記揺動部材の上記一方の端部に当接させることにより、上記揺動部材の上記一方の端部を、上記所定の回転方向と逆の回転方向に回転させることが可能であり、当該動作により、上記揺動部材の他方の端部と上記第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成されていることを特徴とする扉閉鎖順位調整器を提供するものである。
【0008】
ここで、上記揺動部材は、上記扉支持構造体に、水平方向の支軸を中心として、上下にシーソー状に、所定範囲内で揺動自在に取り付けられており、付勢手段は、常時、下方又は上方に作用する付勢力を付与することにより、上記先閉扉の開放時において、上記揺動部材の上記一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、上記揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成されているとともに、上記第1スライド部材を上記揺動部材の上記一方の端部に当接させることにより、上記揺動部材の上記一方の端部を、上記上方又は下方に移動させることが可能であり、当該動作により、上記揺動部材の他方の端部と上記第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成されていることとするものであってもよい。
【0009】
また、上記揺動部材は、上記扉支持構造体に、鉛直方向の支軸を中心として、時計回り及び反時計回りとなるように、所定範囲内で揺動自在に取り付けられており、付勢手段は、常時、反時計回り及び時計回り方向に作用する付勢力を付与することにより、上記先閉扉の開放時において、上記揺動部材の上記一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、上記揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成されているとともに、上記第1スライド部材を上記揺動部材の上記一方の端部に当接させることにより、上記揺動部材の上記一方の端部を、時計回り及び反時計回りとなるように移動させることが可能であり、当該動作により、上記揺動部材の他方の端部と上記第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成されていることとするものであってもよい。
【0010】
さらに、本発明の扉閉鎖順位調整器において、上記揺動部材における上記第1スライド部材側の端部には、回動自在に転動体(ローラ等)が取り付けられているとともに、上記第1スライド部材における上記揺動部材の一方の端部側の先端が、L字形状に形成されていることとすれば、第1スライド部材と揺動部材の当接時の動作をスムーズに行わせ、当該揺動部材の揺動動作等を円滑に行わせることができるため好適である。
なお、上記揺動部材における上記第2スライド部材側の端部に、回動自在に転動体が取り付けられているとともに、上記第2スライド部材における上記揺動部材の他方の端部側の先端が、L字形状に形成されていることとするものであってもよい。
【0011】
ここで、L字形状とは、寸法を問わず、上面視又は側面視等で略L字形状に形成されていればよく、L字形の他、L字形を所定角度回転した形状、L字形を上下及び左右等に反転した形状などであってもよい。また、L字形状の部位の最先端部を、円弧部、複数段階で傾斜角度が異なる(先端方向に向かうにしたがって、傾斜角度が緩やかになることが好ましい)ように形成すれば、さらに好適である。
【0012】
さらに、本発明は、鉛直軸線回りに回動する上記先閉扉及び上記後閉扉と、上記本発明の扉閉鎖順位調整器と、を備え、上記先閉扉及び上記後閉扉にそれぞれ、上記第1アーム部材及び上記第2アーム部材が取り付けられていることを特徴とする両開き扉(観音開き式扉)を提供するものである。
【0013】
ここで、本発明の扉閉鎖順位調整器は、相じゃくり加工が施され、扉が閉まる順序が決まっている2枚の扉に使用されることが前提になっており、先に閉まる扉を先閉扉、後に閉まる扉を後閉扉と称している。
なお、先閉扉及び後閉扉の構造、材質、形状、寸法等に関して制限はない。
【0014】
また、扉支持構造体は、先閉扉と後閉扉を開閉可能に設置するための扉開口の上側に設けられる扉上枠等の構造体である。なお、本発明の両開き扉では、先閉扉と後閉扉は、扉開口の左右の鉛直方向の扉縦枠に取り付けられ、左右の各端部が鉛直軸線回りに回動可能に支持されており、両開き可能となっている。
【0015】
また、各アーム部材は、先閉扉及び後閉扉と各スライド部材とを連結させ、連動させるための部材であり、その形態は問わないものである。加えて、先閉扉と後閉扉の動作に伴い各スライド部材が適切に動作する態様であれば、取付構造及び取付位置等に関して制限はない。
【0016】
また、各スライド部材の形状に制限はなく、円滑にスライドさせることができる態様であれば、取付態様も問わない。例えば、扉枠(扉上枠)に敷設されているガイドレールに懸架する等の方法により、当該ガイドレールに沿って、移動自在に構成することが可能である。
【0017】
また、揺動部材は、支軸を中心として揺動自在に取り付けられていればよく、その形状は問わないものである。
【0018】
また、付勢手段は、第1スライド部材が押圧する側の揺動部材の一端部に対して、常時、所定の回転方向(鉛直面、水平面、傾斜面等、回転面の態様は問わない)に作用する付勢力を付与するために設けられる手段であり、トーションばね等、その種類及び取付位置等は問わないものである。
【0019】
本発明によれば、扉支持構造体に、揺動自在に取り付けられている揺動部材と、当該扉支持構造体にスライド自在に支持されている第1スライド部材及び第2スライド部材と、先閉扉及び第1スライド部材に取り付けられる第1アーム部材と、後閉扉及び第2スライド部材に取り付けられる第2アーム部材とを備えているため、美観を損なうことがない扉閉鎖順位調整器及び両開き扉とすることができる。
【0020】
また、本発明の扉閉鎖順位調整器によれば、先閉扉の開放時において、揺動部材の一方の端部側からのみ第1スライド部材の移動を許容し、当該揺動部材の他方の端部側から第2スライド部材の移動を阻害することができるように構成されている。加えて、第1スライド部材を揺動部材の一方の端部と当接させることにより、当該揺動部材の一方の端部を、付勢力の作用による所定の回転方向と逆の回転方向に回転させることが可能であり、当該動作により、揺動部材の他方の端部と第2スライド部材の移動阻害状態を解除可能となるように構成されている。
そのため、先閉扉が閉鎖されるまで後閉扉の移動が阻害されることにより先閉扉が先に閉鎖され、当該先閉扉が閉止されることにより後閉扉の移動が可能となり、後閉扉が閉鎖される。このように、先閉扉が閉鎖された後に、後閉扉を閉鎖させることが可能となるため、適切に先閉扉及び後閉扉の閉鎖順位を調整することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、簡易な構造であり、かつ、取付後において美観を損なうことがない扉閉鎖順位調整器及び両開き扉を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の両開き扉を示す図であり、(a)は、上面図であり、(b)は、正面図である。
図2】本発明の扉閉鎖順位調整器及を示す斜視図である。
図3】本発明の扉閉鎖順位調整器及び本発明の両開き扉を示す図であり、(a)は、上面図であり、(b)は、同図(a)のX-X断面図である。
図4】本発明の両開き扉及び閉鎖順位調整器の動作(1)を模式的に示す斜視図である。
図5】本発明の両開き扉及び扉閉鎖順位調整器の動作(2)を模式的に示す斜視図である。
図6】本発明の両開き扉及び扉閉鎖順位調整器の動作(3)を模式的に示す斜視図である。
図7】本発明の両開き扉及び扉閉鎖順位調整器の動作(4)を模式的に示す斜視図である。
図8】本発明の両開き扉及び扉閉鎖順位調整器の動作(5)を模式的に示す斜視図である。
図9】本発明の両開き扉及び扉閉鎖順位調整器の変形例を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の扉閉鎖順位調整器R(以下、「本順位調整器」という場合がある。)及び本順位調整器Rが設けられている本発明の両開き扉D(以下、「本両開き扉」という場合がある。)の一実施形態について、詳細に説明する。図面の説明においては、同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各構成要素は適宜、変更が可能であり、本発明に直接的に関係しない細部の構造については、その説明を省略する。
なお、説明の便宜上、図1(a)を基準として、上側から下側に向かう向きに先閉扉F及び後閉扉Sが回転し、下記扉開口3を閉鎖する場合を例とし、左右の向きを説明する場合にも、同図を基準とする。
【0024】
(1)本両開き扉の構造
本実施形態の本両開き扉Dは、先閉扉F及び後閉扉Sと、本順位調整器Rと、を備えている(図1(a)、(b))。
先閉扉F及び後閉扉Sは、矩形形状の開口である扉開口3(先閉扉F及び後閉扉Sの取付部)に取付けられている。扉開口3の四周には、先閉扉F及び後閉扉Sを支持するための構造体(扉支持構造体)である水平方向の扉上枠4及び扉下枠5と、鉛直方向の扉左縦枠6及び扉右縦枠7が設けられている。
また、扉上枠4には、長手方向に細溝(図示せず)が形成されており、当該細溝に沿って、本順位調整器Rの第1スライド部材40及び第2スライド部材50をスライド移動させるためのガイドレール9が設けられている。
【0025】
先閉扉F及び後閉扉Sは、それぞれ矩形形状であり、当該先閉扉F及び後閉扉Sの戸尻側における鉛直方向の木口面の上下の2箇所にヒンジ部材(図示せず)が取り付けられている。このヒンジ部材を介して、先閉扉F及び後閉扉Sの左右の端部が、扉左縦枠6及び扉右縦枠7に取り付けられており、当該先閉扉F及び後閉扉Sは、鉛直軸周りに回動自在となり、両開き(観音開き)可能となっている。
また、先閉扉F及び後閉扉Sは、上面視で、戸先側がカギ状に形成されている相じゃくり加工がなされている。なお、先閉扉Fのカギ状部F1は、扉開放部(両扉が開放される側をいう。以下同様)と反対側の長さが長く形成されており、後閉扉Sのカギ状部S1は、扉開放部側の長さが長く形成されている。
【0026】
(2)本順位調整器の構造
本順位調整器Rは、本体部10と、第1アーム31(第1アーム部材)及び第2アーム32(第2アーム部材)と、第1スライド部材40及び第2スライド部材50とを主要部としており(図2図3(a),(b))、扉上枠4における細溝内の中央部に挿設されている。
【0027】
本体部10は、揺動部材11と、第1ローラ21(転動体)及び第2ローラ22(転動体)(2体のローラ)と、トーションばね23(付勢手段)と、収容体25とを主要部としている。
【0028】
揺動部材11は、中央部の上下が円弧状に形成されており、両端部が半円状に形成されている2枚の矩形端板12と、中心軸13(支軸)と、ローラ支持体14,15とを主要部としている。
各矩形端板12の中央部には中心孔12aが形成されている。この中心孔12aと、下記収容体25の長手方向の各側面(以下、「長側面25a」という。)に設けられている円孔(図示せず)を一致させた状態で、軸心が水平方向に位置する態様となるようにして、両孔に中心軸13が挿通されており、当該中心軸13が両側の長側面25a間において軸支されている。
【0029】
また、揺動部材11の両端部において、当該揺動部材11の2枚の矩形端板12の間に、第1ローラ21及び第2ローラ22が枢支されている。すなわち、第1ローラ21及び第2ローラ22は、軸心が水平方向に位置する態様で、棒状のローラ支持体14,15により、回動自在に軸支されている(以下、揺動部材11の第1ローラ21が設けられている側の端部を「第1端部11a」、第2ローラ22が設けられている側の端部を「第2端部11b」という場合がある。)。
【0030】
2枚の矩形端板12における中心孔12aと第1端部11b(本実施形態では、扉左縦枠6側の端部であるが、付勢手段の種類に応じて、所望の端部を選択することができる)の間には、棒状の係止体16が架設されている。そして、中心軸13と係止体16の間には、トーションばね23が巻架されており、揺動部材11の扉左縦枠6側の第1端部11a(第1スライド部材40が当接する側端部)に対して、常時、鉛直下方に作用する付勢力を付与できる構造となっている。
なお、先閉扉F及び後閉扉Sの開放時において、揺動部材11は第1端部11aが下方に位置するように傾斜しており、揺動部材11の第2端部11bに、第2スライド部材50が当接した場合であっても、揺動部材11を第1端部11a側に回転(図2の反時計回り)させることができないようになっている。
【0031】
収容体25は、中空である細長の略直方体であり、その各長側面は、扉上枠4の細溝の内面における中央部の側面に取り付けられている。この収容体25は、短手方向における扉左縦枠6側の側面及び当該側面側の下側隅角部から一定の範囲に開口部が形成されているとともに、短手方向における扉右縦枠7側の側面及び当該側面側の上側隅角部から一定の範囲に開口部が形成されている。
【0032】
そして、収容体25の両長側面25a間において、中心軸13の下方には、水平方向に円柱状の支持体26が懸架されており、揺動部材11の円弧部は支持体26と摺接しながら、中心軸13を回動中心として所定角度の範囲内で揺動部材11が、シーソー状に上下に揺動可能(回動可能)となっている。
【0033】
上記下面の開口部において、第1ローラ21が収容体25の外面に露出し、後記するように第1スライド部材40の先端部43におけるL字形状部45と当接可能となっている。また、上記上面の開口部において、第2ローラ22が収容体25の外面に露出し、後記するように第2スライド部材50の先端部53における回転L字形状部55と当接可能となっている。
【0034】
また、収容体25の両長側面25a間において、支持体26の扉右縦枠7方向に近接して、揺動部材11の回動を規制するための円筒状の規制体27が懸架されており、揺動部材11が規制体27に当接することにより、当該規制体27の下方に回動することができないようになっている。
【0035】
さらに、収容体25の両長側面25a間において、扉左縦枠6側の上端縁部近傍には、第1ローラ21と摺接する円筒体28が水平方向に設けられている。また、収容体25の両長側面25a間において、扉右縦枠7側の上端縁部近傍には、第2ローラ22と摺接する円筒体29が水平方向に設けられている。
【0036】
第1スライド部材40は扉左縦枠6側において、第2スライド部材50は扉右縦枠7側において、それぞれガイドレール9に沿ってスライド自在に設けられている。
第1スライド部材40は、細長板状である接続体41と、当該接続体41の両端に設けられている基端部42及び先端部43を主要部としている(図4)。基端部42(扉左縦枠6側の端部)は直方体形状に形成されている。また、先端部43は、直方体形状部44と、その先端のL字形状部45から形成されている。L字形状部45は、側面視で略L字形状に形成されているとともに、最先端は、下方に傾斜面が形成されるようにテーパ部45aが形成されている。このテーパ部45aは、先端に向かうにしたがって、傾斜角度が緩やかになるように、2つの異なる傾斜角度の傾斜面が組み合わされることにより形成されている。
【0037】
第2スライド部材50は、細長板状である接続体51と、当該接続体51の両端に設けられている基端部52(扉右縦枠7側の端部)及び先端部53を主要部としている(図4)。基端部52は直方体形状に形成されている。また、先端部53は、直方体形状部54と、その先端の回転L字形状部55から形成されており、当該回転L字形状部55は、側面視でL字形状を180度回転させた態様に形成されている。
【0038】
第1アーム31の一端部は、先閉扉Fの戸尻側における上面縁端部の近傍に、ピン34により回動自在に取り付けられており、他端部は、第1スライド部材40の接続体41における基端部42側に、ピン34により回動自在に取り付けられている。この構成により、第1スライド部材40が、先閉扉F及び第1アーム31の動作に応じて、ガイドレール9に沿ってスライド自在となっている。
【0039】
第2アーム32の一端部は、後閉扉Sの戸尻側における上面縁端部の近傍に、ピン35により回動自在に取り付けられており、他端部は、第2スライド部材50の接続体51における基端部52側に、ピン35により回動自在に取り付けられている。この構成により、第2スライド部材50が、後閉扉F及び第2アーム32の動作に応じて、ガイドレール9に沿ってスライド自在となっている。
【0040】
上記構造により、先閉扉Fの開放時においては、揺動部材11の第2端部11bと、第2スライド部材50の回転L字形状部55の先端部が当接することにより、当該第2スライド部材50のスライド移動が阻害されている(揺動部材11の第1端部11a側からのみ第1スライド部材40の移動を許容し、揺動部材11の第2端部11b側から第2スライド部材50の移動を阻害することができるように構成されている)。加えて、第1スライド部材40が揺動部材11の第1端部11aに当接し、L字形状部45が揺動部材11に上向き(時計回り)の回転力を付与することにより、揺動部材11の第1端部11aを上方に回転することができるようになっている。そして、この回転動作により、揺動部材11の第2端部11bと第2スライド部材50の当接状態を解除することができるようになっている。
【0041】
なお、第1スライド部材40がスライドすることにより、第1ローラ21が当該第1スライド部材40の先端部43におけるテーパ部45aと当接し、その後、テーパ部45aの上面に沿って移動しながらL字形状部45の上面に至り、先閉扉Fが閉止状態となるように構成されている。
【0042】
また、第2スライド部材50の先端部53における回転L字形状部55の先端と、揺動部材11の第2端部11bとの当接状態が解除され、当該第2スライド部材50が所定距離だけスライドした後に、後閉扉Sが閉止状態となるように構成されている。
【0043】
(3)本両開き扉の閉鎖時における本順位調整器の動作
本両開き扉Dを閉鎖する際において、後閉扉Fが先閉扉Sより先に閉鎖されようとする場合(両扉が同時に閉鎖される場合も含む)と、先閉扉Fが後閉扉Sより先に閉鎖されようとする場合が存在する。以下に、各場合における本順位調整器Rの動作について説明する。
【0044】
[後閉扉が先閉扉より先に閉鎖されようとする場合]
後閉扉Sが先閉扉Fより先に閉鎖されようとする場合には、後閉扉Sの戸先が、扉開口3の近傍にまで回動する。そして、後閉扉Sに取り付けられている第2アーム32の移動に連動して、当該第2アーム32に取り付けられている第2スライド部材50もガイドレール9に沿って、扉開口3の中央側(後開扉Sの戸先側)にスライド移動する(図4)。
【0045】
このとき、揺動部材11の第2端部11bが上方に位置しているため、第2スライド部材50の先端部53における回転L字形状部55が、揺動部材11の第2端部11bに当接する。揺動部材11の第2端部11bは、第1端部11a側への回転が規制されており、かつ、第2端部11bを下方に揺動(回転・移動)させることもできないため、第2スライド部材50のスライド移動が阻害される。そのため、第2スライド部材50に取り付けられている第2アーム32及び当該第2アーム32が取り付けられている後閉扉Sの移動も阻害されることになり、当該位置で待機する状態となる(図5)。
【0046】
この状態で先閉扉Sの閉鎖動作を継続すると、その戸先が扉開口3の近傍にまで回動する。そして、先閉扉Fに取り付けられている第1アーム31の移動に連動して、当該第1アーム31に取り付けられている第1スライド部材40もガイドレール9に沿って、扉開口3の中央側(先開扉の戸先側)にスライド移動する(図6)。
【0047】
そして、第1スライド部材40の先端が、下方に位置している揺動部材11の第1端部11aと当接し、そのまま中央部にまで移動して先閉扉Fを閉鎖するとともに、揺動部材11を上方に回転(移動)させる。この回転動作により、揺動部材11の第2端部11bが下方に移動し、第2揺動部材11の当接(移動阻害)状態が解除される。
【0048】
その後、揺動部材11の第1端部11aが、第1スライド部材40のテーパ部45aの上面に沿って移動してL字形状部45の上面に至り、先閉扉Fが閉鎖される(図7)。
そして、先閉扉Fが閉鎖されたことにより、第2スライド部材50が中央部にスライドし、当該第2スライド部材50に取り付けられている第2アーム32及び第2アーム32が取り付けられている後閉扉Sが閉鎖される(図8)。
【0049】
[先閉扉が後閉扉より先に閉鎖されようとする場合]
先閉扉Fが後閉扉Sより先に閉鎖されようとする場合には、本順位調整器Rは、後閉扉Sが待機している状態と同様の動作をすることになる。したがって、先に先閉扉Fが閉鎖されることにより、後から閉鎖動作を開始する後閉扉Sの第2スライド部材50のスライド動作が規制されることがないため、後閉扉Sは障害なく閉鎖されることになる。
【0050】
なお、後閉扉S及び先閉扉Fが開放された場合には、第2スライド部材50及び第1スライド部材40が、扉右縦枠7及び扉左縦枠6の方向に移動することにより、第1スライド部材40の先端部43と揺動部材11の第1端部11aとの接触状態が解除されるため、トーションばね23の付勢力により、当該第1端部11aが下方に位置する状態に戻ることになる。
【0051】
(4)本両開き扉及び本順位調整器の作用効果
本順位調整器Rによれば、先閉扉Fの開放時において、揺動部材11の第2端部11bと第2スライド部材50が当接することにより、当該第2スライド部材50のスライド移動が阻害されている。加えて、第1スライド部材40が揺動部材11の第1端部11aと当接する(第1端部11aに上向きの押圧力を付与する)ことにより、揺動部材11の第1端部11aを上方に回転(移動)させることが可能であり、当該回転動作により、揺動部材11の第2端部11bと第2スライド部材50の当接状態を解除可能となるように構成されている。
【0052】
そのため、先閉扉Fが閉鎖されるまで、後閉扉Sの移動が阻害され、先に先閉扉Fが閉鎖されることになる。そして、先閉扉Fが閉鎖されることにより、後閉扉Sの移動可能となり、後閉扉Sが閉鎖されることになる。このように、先閉扉Fが閉鎖された後に、後閉扉Sが閉鎖するようにすることができるため、適切に先閉扉F及び後閉扉Sの閉鎖順位を調整することが可能となる。
【0053】
また、本順位調整器Rにおいて、上記揺動部材11の両端部には、回動自在に第1ローラ21及び第2ローラ22(転動体)が取り付けられているため、揺動部材11との接触時において第1スライド部材40及び第2スライド部材50のスライド動作をスムーズに行わせることができる。
また、揺動部材11の上記第1スライド部材40の一端部側の先端にL字形状部45が設けられており、その最先端部において、先端方向に向かうにしたがって傾斜角度が緩やかとなるように2段階で傾斜角度が異なるテーパ部45aが形成されている。そのため、第1スライド部材40が揺動部材11の第1端部11aのL字形状部45に当接し、第1ローラ21がL字形状部45の上面を転動しやすくなることにより、円滑かつ効果的に揺動部材11に上向きの回動力を付与させることが可能となる。
【0054】
さらに、扉上枠4の細溝内に挿設されている揺動部材11と、当該扉上枠4のガイドレール9にスライド自在に支持されている第1スライド部材40及び第2スライド部材50と、先閉扉F及び第1スライド部材40に取り付けられる第1アーム31と、後閉扉S及び第2スライド部材50に取り付けられる第2アーム32とを備えているため、美観を損なうことがない本順位調整器R及び両開き扉Dを提供することができる。
【0055】
(5)本順位調整器及び本両開き扉の変形例
本順位調整器R’及び当該本順位調整器R’を取り付けた本両開き扉D’の変形例について説明する(図9)。変形例の本順位調整器R’は、第1スライド部材40’及び第2スライド部材50’のみが異なっているとともに、本順位調整器R’の扉上枠4の細溝への取付態様が異なっている。
【0056】
第1スライド部材40’及び第2スライド部材50’は、細長板状である接続体41’,51’と、当該接続体41’,51’の両端に設けられている基端部42,52及び先端部43,53を主要部としている。接続体41’,51’の中間部には、第1アーム31及び第2アーム32の取付部41a’,51a’が突設されている。
本順位調整器R’の本体部10の構造は、上記実施形態と同様であるが、収容体25を90度回転させた状態で、その上面部が扉上枠4の細溝の側面に取り付けられており、中心軸13が鉛直方向に向いている。
【0057】
第1スライド部材40’及び第2スライド部材50’も上記実施形態の第1スライド部材40及び第2スライド部材50を90度回転させた態様となっており、L字形状部45’の下辺が先閉扉Fの開放部と反対側に位置し、回転L字形状部55’の上辺が後閉扉Sの開放部側に位置するようになっている。
そして、揺動部材11は、トーションばね23により、常時、反時計の付勢力が付与されるようになっている。また、第1アーム31及び第2アーム32は、第1スライド部材40’の取付部41a’及び第2スライド部材50’の取付部51a’において、ピン34,35により回動自在に取り付けられている。
【0058】
上記構成により、第1スライド部材40’は扉左縦枠側(図示せず)において、第2スライド部材50’は扉右縦枠側(図示せず)において、それぞれガイドレール9に沿ってスライド自在に設けられている。
なお、先閉扉F及び後閉扉Sを含めた他の構成要素は、上記実施形態の本順位調整器R及び両開き扉Dと同様である。
【0059】
本順位調整器R’及び本両開き扉D’によっても、上記実施形態の本順位調整器R及び本両開き扉Dと同様の作用効果を奏させることができる。
【0060】
以上、本発明について、好適な実施形態についての一例を説明したが、本発明は当該実施形態に限られず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜設計変更が可能である。
【0061】
本実施形態の本順位調整器では、第1スライド部材が当接する側の揺動部材の一方の端部に対して、鉛直下方に付勢力を付与する構造に関して説明した。しかし、第1スライド部材が当接する側の揺動部材の一方の端部に対して、鉛直上方に付勢力を付与する構造とすることもできる。但し、この場合には、第1スライド部材及び第2スライド部材の先端部の構造に関し、第1スライド部材の先端部を上下に反転した反転L字形状部とし、第2揺動部材の先端部を左右に反転した反転L字形状部(それぞれ、側面視)とする等、揺動部材に対して適切に当接できるように構成する必要がある。
【0062】
また、上記変形例の本順位調整器では、第1スライド部材が当接する側の揺動部材の一方の端部に対して、揺動部材が反時計回りとなる向きに付勢力を付与する構造に関して説明した。しかし、第1スライド部材が当接する側の揺動部材の一方の端部に対して、時計回りとなる向きに付勢力を付与する構造とすることもできる。但し、この場合には、第1スライド部材及び第2スライド部材の先端部の構造に関し、第1スライド部材の先端部を上下に反転した反転L字形状部とし、第2揺動部材の先端部を左右に反転した反転L字形状部(それぞれ、上面視)とする等、揺動部材に対して適切に当接できるように構成する必要がある。
【0063】
さらに、本発明は、必要最小限の構成要素を例示したものであり、その作用効果を阻害しない限り、必要となる他の構成要素を付加するものであってもよい。さらに、請求項に記載する先閉扉及び後閉扉、第1アーム部材及び第2アーム部材、第1スライド部材及び第2スライド部材、揺動部材、付勢手段及び転動体等は、基本的な構成を備え、その作用効果を奏するものであれば、種々の構成要素を用いることができる。
【符号の説明】
【0064】
D,D’ 両開き扉
F 先閉扉
S 後閉扉
R,R’ 扉閉鎖順位調整器(順位調整器)
3 扉開口
4 扉上枠
5 扉下枠
6 扉左縦枠
7 扉右縦枠
9 ガイドレール
10 本体部
11 揺動部材
11a 第1端部
11b 第2端部
13 中心軸(支軸)
21 第1ローラ(転動体)
22 第2ローラ(転動体)
23 トーションばね(付勢手段)
25 収容体
31 第1アーム(第1アーム部材)
32 第2アーム(第2アーム部材)
40,40’ 第1スライド部材
41,41’ 接続体
43 先端部
45 L字形状部
45a テーパ部
50,50’ 第2スライド部材
51,51’ 接続体
53 先端部
55 回転L字形状部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9