(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072227
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】柱と横積材の結合構造
(51)【国際特許分類】
E04B 2/70 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
E04B2/70
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022193824
(22)【出願日】2022-11-15
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】518100926
【氏名又は名称】ウッドリッチ有限会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 俊則
【テーマコード(参考)】
2E002
【Fターム(参考)】
2E002EB12
2E002FA03
2E002LB03
2E002LB05
2E002LC02
2E002MA32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】通称ピース・エン・ピースタイプのログハウスは、横積材は長期間になると下部が腐食しやすく、メンテナンスの際、柱に形成された溝に差し込み係合させている落とし込み式の横長材であれば長さ方向をカットしなければ取り外しができず又、交換の際には、後で横から柱溝に係合させて縦方向の壁に貫通する通しボルトなどの金物を連結させることが難しい構造なので部分補修が難しい構造といえる。また後付けでレール式の横積材用ガイド金物の方法もあるが、ガイド金物が一体であれば、寒冷地等の結露が多い地域では、建物の断熱性能の低下が懸念される。
【解決手段】柱側縦溝と横積材側縦溝との間にまたがって上方から差し込まれて配置される平板状でかつ縦長状の連結材とを備え、連結材は上下方向の途中に柱の縦面と、横積材の端面との間に延びる舌片と、上端で横積材の上面に当接する位置決め舌片が形成される柱と横積材の結合構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の左右の柱と、この左右の柱間に配置される横長状の複数の横積材との結合構造であって、前記柱で前記横積材側の縦面に形成される少なくとも1つの柱側縦溝と、前記横積材の前記柱側端面で前記柱側縦溝と対向する位置に形成される横積材側縦溝と、前記柱側縦溝と前記横積材側縦溝との間にまたがって上方から差し込まれて配置される平板状でかつ縦長状の連結材とを備え、前記連結材は、上下方向の途中に前記柱の縦面と、前記横積材の端面との間に延びる舌片と、上端で前記横積材の上面に当接する位置決め舌片が形成されていることを特徴とする柱と横積材の結合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本考案は、木造建築物の柱と横積材の結合構造に関するものである。
【従来の技術課題】
【0002】
従来から、木造建築物において、柱の壁形成の面に加工した溝に沿って柱と柱の間(内法)に横長状の横積材を落とし込んで壁にする形式の通称ピース・エン・ピースタイプのログハウスがあるが、横積材は、長期間になると下部が腐食しやすく、メンテナンスの際、柱溝に差し込み係合させている横長材であれば長さ方向をカットしなければ取り外しができず又、交換の際には、後で横から柱溝に係合させて縦方向の壁に貫通する通しボルトなどの金物を連結させることが難しい構造なので、結果的に部分補修が難しい構造といえる。また柱に溝を形成する形式代わりに後付けでレール式の横積材用ガイド金物の方法もあるが、ガイド金物が一体であれば、寒冷地等の結露が多い地域では、建物の断熱性能の低下が懸念される。
【解決手段の概要】
【0003】
細長状の横積材cを柱へ留付けるあたり、横積材の長さのカット断面部に形成したd-1やd-2の溝が、平板状の薄板で形成した留付け部材eを介して、柱の1本以上の溝bに係合し支持させたことを特徴とする壁の結合構造を提案する。
【0004】
そして留付け部材eは差し込み過程において、斜めに差し込まれることもあるので、その先端が柱側溝の底面に当たることで発生する食い込みや引っ掛かりなどでスライドしにくくなるので、そのために柱の溝b底面にあたる部分は曲面の形状を有する。
【0005】
そしてそこからさらに差し込むと柱の壁面形成面と横積材カット面があわさる境界面に沿って留付け部材のスライド面の縦中央部に1か所以上の舌状突起の舌片e-3、e-4が形成されていて、その突起e-3、e-4があることで柱と横積材カット面の双方に形成された溝での留付け部材eが中央配置に決まる形状になっている。
【考案の効果】
【0006】
柱と柱の内法に1本ずつはめ込む横積材cは長さカット部分に縦溝d-1、d-2が形成されていて、それを柱側の縦溝部bの位置にあわせ、両方の溝に沿って留付け部材eを差し込んで組付けるので軽い作業が可能である。
【0007】
また留付け部材eは、1本ないしは数本程度のログを組付けできる長さになっているので、ログの組付け時において旧来の落とし込み形式の溝に沿ってはめ込むための上下移動の作業が不要となり、省力化に貢献できる。
【0008】
そしてこの留付け部材eは平板形状であり、相手の溝巾が例えば丸鋸程度で形成できる細い溝なので、例えば、室内の間仕切り形成においても、分解組み立てが容易なのでその際に出るごみの減量に貢献し、壁位置を変えるリフォーム等の間取り変更にも安価に変更できる。
【0009】
さらにログ材は無垢であることが多いので、分解後も良質に乾燥した材料は、付加価値の上がった中古の材料にもなる。
【0010】
また、外気に接した外壁には、内外の2本の溝に留付け部材を係合させるので、留付け部材そのものによる室内外の熱伝導が小さく、寒冷地等での断熱効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】は、平板状留付け部材を含んだ柱や横積材周辺の関係を表した図面。
【
図2】は、平板状留付け部材を含んだ柱と横積材の組立断面図と一部拡大図。
【
図4】は、組立工法の比較用ガイド部材を用いた柱や横積材の断面図。
【
図5】は、組立工法の比較用ガイド部材を用いた柱や横積材の斜視図。
【実施例の説明】
【0012】
本発明の実施例について図面に基づいて説明する。従来から、在来工法で建てられた建物の壁の形成において、柱の壁形成の面に溝を加工して柱と柱の間(内法)に横積材を落とし込む形式の通称ピース・エン・ピースタイプのログハウスがある。
【0013】
恒温多湿の気候において、横積材c,gを積み重ねて形成された壁は、下部になるほど乾きが遅く、また経年で発生する木材のヒビや横積材積み重ね部に水分が侵入して、比較的短期に腐食発生がみられるようになる。
【0014】
多くの場合、下部が腐食すると、その部分の横積材は交換が難しく、放置されるケースが多々見られ、その場合の交換において、落とし込みの場合は、一旦上部に横積材を移動させて取り外す手間がかかり、さらに横積材と柱に形成された係合部の柱溝部までもが隙を伝った水によって腐食してしまうケースが多く、この対策として
図5のレール式ガイド部材hの形式も考案している。
【0015】
しかし、
図4のようにこのレール式ガイド部材hのタイプは室内外でそれぞれの空気に触れて熱を移動する役目になり断熱効果を低下させることもある。
【0016】
ここで柱と横積材の接続部を小さくし、断熱性の効果を下げないために、前記落とし込みの形式以外の横積材の壁中央部で簡素に柱と係合させるために空気に触れにくい位置の柱の中央部で差し込み固定する平板状の留付け部材eを考案した。
【0017】
そしてさらに外壁の場合、留付け部材eが薄いので柱の壁面に断熱性の向上に寄与するため、例えば2本の溝を形成させ、室内側と室外側をそれぞれの平板状留付け部材eを差し込む方法で内部の温度を外部に伝達させる熱量を遮断できることにより断熱性の低下の問題を解決できた。
【0018】
さらに、平板状留付け部材eの高さ方向の長さは、横積材cに少なくとも1本から数本程度の長さになっていて、縦方向の差し込みは、平板状留付け部材e上部の舌片e-2で横積材天端に当接して、1本ないしは数本の横積材単位で壁を組立できる。
【0019】
それは、横積材が将来乾燥収縮して、横積材c同士の重ね部に隙間ができて、寒い乾燥時期に全体の積み上げられた横積材を通しボルトなどで締めるメンテナンス時でも、縦に差し込まれ連続配置された平板状留付け部材e同志が互いに干渉することのないように、留付け部材間には、隙間がもうけられている。
【0020】
細溝b、d-1、d-2に係合する差し込み平板状留付け材eは、柱側と横積材側の中央に位置するように、わずかな柱と横積材の溝に形成される面取りb-1部分のわずかなすき間でも位置決めが可能なように少しの、舌状突起(舌片)e-3が1か所以上形成されていて、整然と配列される形状である。
【0021】
またこの形式は、在来工法の住宅の中古市場において、既存柱に丸のこ等で溝を加工するだけで、強固な耐力壁を横積材で組み立てられ、そのことは解体による古材の再利用の観点からも有効である。
【符号の説明】
【0022】
a 建物の柱
b 柱側溝
b-1 溝の面取り例
c 横積材の形状例
d-1 寒冷地仕様に必要な外壁用横積用材の複数溝の内の1つの溝
d-2 寒冷地仕様に必要な外壁用横積用材の複数溝の内の其他の溝
e 平板状(薄板状)留付け部材
e-1 留付け部材の柱溝の底部への引っ掛かり防止形状例の曲面
e-2 横積材上部の止め位置決め舌片部
e-3 柱と横積材に係合する留付け部材の溝間での中央配置を決める舌片形状例
e-4 e-3 を複数か所にした位置決め形状例
f 参考図の柱
g 参考図の横積材
h 参考図の柱への横積材のガイド部材例