特開2024-72231筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するのための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072231
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するのための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/00 20060101AFI20240520BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240520BHJP
【ＦＩ】
A61K33/00
A61P21/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022206053
(22)【出願日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】P 2022193825
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394021270
【氏名又は名称】ＭｉＺ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文武
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 文平
(72)【発明者】
【氏名】市川 祐介
【テーマコード（参考）】
4C086
【Ｆターム（参考）】
4C086AA01
4C086AA02
4C086HA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA12
4C086MA56
4C086NA14
4C086ZA94
(57)【要約】
【課題】
筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状の予防、または、改善のための組成物を提供する。
【解決手段】
水素ガス含有気体を有効成分として含む、ヒトにおいて筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物、並びに、この組成物をこれからＡＬＳを発症したヒトに投与することで筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善する方法。
筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状の予防、または、改善のための組成物を提供する。
【解決手段】
水素ガス含有気体を有効成分として含む、ヒトにおいて筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物、並びに、この組成物をこれからＡＬＳを発症したヒトに投与することで筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善する方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を有効成分として含む、ヒトにおいて、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物。
【請求項2】
前記ＡＬＳに関連する症状が、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下からなる１以上の症状から選択されることを特徴とする請求項１に記載の組成物。
【請求項3】
前記下位運動ニューロン症状が、権力低下、筋萎縮、および、筋繊維束性攣縮から１つ以上選択される症状であり、前記上位運動ニューロン症状が、下顎反射亢進、口尖らし反射、偽性球麻痺、強制泣き・笑い、病的腱反射亢進、腱反射亢進、Ｈｏｆｆｍａｎｎ反射、痙縮、萎縮筋腱反射保持、腹皮反射消失、腹筋反射消失、および、Ｂａｂｉｎｓｋｉ徴候から１つ以上選択される症状であり、前記認知機能障害が、人格変化、行動障害（異常）、言語障害、および、遂行機能障害から１つ以上選択される症状であり、前記陰性徴候が、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡、小脳症状、錐体外路症状、および、自律神経症状から１つ以上選択される症状であることを特徴とする請求項１または２に記載の組成物。
【請求項4】
前記水素の濃度が、０より大きく１８．５体積％以下である、請求項２または３に記載の組成物。
【請求項5】
前記水素の濃度が、０．５体積％以上１８．５体積％以下である、請求項２または３に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、吸入によって前記ヒトに投与される、請求項２または３に記載の組成物。
【請求項7】
前記請求項２または３に記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物に関する。
本発明はまた、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善する方法に関する。
本発明はまた、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ：Ａｍｙｏｔｒｏｐｈｉｃ Ｌａｔｅｒａｌ Ｓｃｌｅｒｏｓｉｓ）は、運動ニューロン疾患のひとつであり、上位運動ニューロンと下位運動ニューロンの両者の細胞体が散発性・進行性に変性脱落する神経変性疾患である。孤発性のＡＬＳの原因は不明である。ＡＬＳの臨床症状は下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候が知られている。また特徴的な症状として解離性小手筋萎縮が知られている。
ＡＬＳは常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはない。体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉（呼吸筋）も働かなくなって大多数の方は呼吸不全におちいる。人工呼吸器を使わない場合、病気になってから死亡までの期間はおおよそ２～５年である。
近年、水素分子が細胞内および細胞のミトコンドリア内部で発生するヒドロキシルラジカルを消去することにより慢性炎症を抑制し、慢性炎症に起因する多くの疾病に対し効果を奏する可能性があることを提唱されている（非特許文献１）。しかしながら、ＡＬＳおよび／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善したことについては報告されていない。
ＡＬＳは常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはない。体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸の筋肉（呼吸筋）も働かなくなって大多数の方は呼吸不全におちいる。人工呼吸器を使わない場合、病気になってから死亡までの期間はおおよそ２～５年である。
近年、水素分子が細胞内および細胞のミトコンドリア内部で発生するヒドロキシルラジカルを消去することにより慢性炎症を抑制し、慢性炎症に起因する多くの疾病に対し効果を奏する可能性があることを提唱されている（非特許文献１）。しかしながら、ＡＬＳおよび／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善したことについては報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するのための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、意外にも、水素ガス含有気体が、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善することを見出した。
従って、本発明は、以下の特徴を包含する。
（１）水素を有効成分として含む、ヒトにおいて、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物である。
（２）前記ＡＬＳに関連する症状が、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下からなる１以上の症状から選択されることを特徴とする（１）に記載の組成物である。
（３）前記下位運動ニューロン症状が、権力低下、筋萎縮、および、筋繊維束性攣縮から１つ以上選択される症状であり、前記上位運動ニューロン症状が、下顎反射亢進、口尖らし反射、偽性球麻痺、強制泣き・笑い、病的腱反射亢進、腱反射亢進、Ｈｏｆｆｍａｎｎ反射、痙縮、萎縮筋腱反射保持、腹皮反射消失、腹筋反射消失、および、Ｂａｂｉｎｓｋｉ徴候から１つ以上選択される症状であり、前記認知機能障害が、人格変化、行動障害（異常）、言語障害、および、遂行機能障害から１つ以上選択される症状であり、前記陰性徴候が、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡、小脳症状、錐体外路症状、および、自律神経症状から１つ以上選択される症状であることを特徴とする（１）または（２）に記載の組成物。
（４）前記水素の濃度が、０より大きく１８．５体積％以下である、（１）から（３）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（５）前記水素の濃度が、０．５体積％以上１８．５体積％以下である、（１）から（４）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（６）前記組成物が、吸入によって前記ヒトに投与される、（１）から（５）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（７）前記（１）から（６）のいずれかひとつに記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする方法である。
従って、本発明は、以下の特徴を包含する。
（１）水素を有効成分として含む、ヒトにおいて、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物である。
（２）前記ＡＬＳに関連する症状が、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下からなる１以上の症状から選択されることを特徴とする（１）に記載の組成物である。
（３）前記下位運動ニューロン症状が、権力低下、筋萎縮、および、筋繊維束性攣縮から１つ以上選択される症状であり、前記上位運動ニューロン症状が、下顎反射亢進、口尖らし反射、偽性球麻痺、強制泣き・笑い、病的腱反射亢進、腱反射亢進、Ｈｏｆｆｍａｎｎ反射、痙縮、萎縮筋腱反射保持、腹皮反射消失、腹筋反射消失、および、Ｂａｂｉｎｓｋｉ徴候から１つ以上選択される症状であり、前記認知機能障害が、人格変化、行動障害（異常）、言語障害、および、遂行機能障害から１つ以上選択される症状であり、前記陰性徴候が、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡、小脳症状、錐体外路症状、および、自律神経症状から１つ以上選択される症状であることを特徴とする（１）または（２）に記載の組成物。
（４）前記水素の濃度が、０より大きく１８．５体積％以下である、（１）から（３）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（５）前記水素の濃度が、０．５体積％以上１８．５体積％以下である、（１）から（４）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（６）前記組成物が、吸入によって前記ヒトに投与される、（１）から（５）のいずれかひとつに記載の組成物である。
（７）前記（１）から（６）のいずれかひとつに記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置を用いて作製されることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、水素ガスによって筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明をさらに詳細に説明する。
１．筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）
ＡＬＳに関連する症状には、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下などが含まれる。
１．筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）
ＡＬＳに関連する症状には、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下などが含まれる。
【0008】
本発明におけるＡＬＳに関連する症状である下位運動ニューロン症状には、権力低下、筋萎縮、および、筋繊維束性攣縮から１つ以上選択される症状が含まれる。
【0009】
本発明におけるＡＬＳに関連する症状である上位運動ニューロン症状には、下顎反射亢進、口尖らし反射、偽性球麻痺、強制泣き・笑い、病的腱反射亢進、腱反射亢進、Ｈｏｆｆｍａｎｎ反射、痙縮、萎縮筋腱反射保持、腹皮反射消失、腹筋反射消失、および、Ｂａｂｉｎｓｋｉ徴候から１つ以上選択される症状が含まれる。
【0010】
本発明におけるＡＬＳに関連する症状である認知機能障害には、人格変化、行動障害（異常）、言語障害、および、遂行機能障害から１つ以上選択される症状が含まれる。
【0011】
本発明におけるＡＬＳに関連する症状である陰性徴候には、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡、小脳症状、錐体外路症状、および、自律神経症状から１つ以上選択される症状が含まれる。
【0012】
本明細書中、本発明の組成物の有効成分である「水素」は分子状水素（すなわち、気体状水素）であり、特に断らない限り、単に「水素」又は「水素ガス」と称する。また、本明細書中で使用する用語「水素」は、分子式でＨ２、Ｄ２（重水素）、ＨＤ（重水素化水素）、又はそれらの混合ガスを指す。Ｄ２は、高価であるが、Ｈ２よりスーパーオキシド消去作用が強いことが知られている。本発明で使用可能な水素は、Ｈ２、Ｄ２（重水素）、ＨＤ（重水素化水素）、又はそれらの混合ガスであり、好ましくはＨ２であり、或いはＨ２に代えて、又はＨ２と混合して、Ｄ２及び／又はＨＤを使用してもよい。
【0013】
水素ガス含有気体は、好ましくは、水素ガスを含む空気又は、水素ガスと酸素ガスを含む混合ガスである。水素ガス含有気体の水素ガスの濃度は、ゼロ（０）より大きく、かつ１８．５体積％以下であり、ゼロ（０）より大きく、かつ１０．０体積％以下がより好ましい。実際に使用するにあたり、例えば、０．５体積％以上１８．５体積％以下、０．５体積％以上１８．５体積％以下、１体積％以上１８．５体積％以下、１体積％以上１０体積％以下、１体積％以上５体積％以下、など、１８．５体積％以下の任意の水素濃度を選択して使用することができる。本発明では、爆発限界以下で水素ガス濃度が高いほど筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善する効果が大きい傾向がある。水素は、可燃性かつ爆発性ガスであるため、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善においては、安全な条件で本発明の組成物に含有させて筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与することが好ましい。水素濃度が０．５体積％など極めて低い濃度の水素であっても、長時間吸入することで、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、および／または、改善させることが期待できる。
【0014】
水素ガス以外の気体が空気であるときには、空気の濃度は、例えば８１．５～９９．５体積％の範囲である。水素ガス以外の気体が酸素ガスを含む気体であるときには、酸素ガスの濃度は、例えば２１～９９．５体積％の範囲である。
その他の主気体として窒素ガスを含有させることができる。空気中に含有する気体である二酸化炭素などのガスを、空気中の存在量程度の量で含有させてもよい。
本発明では、必要に応じて、水素ガス含有気体の投与と併用して水素溶存液体を筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与する、もしくは摂取させることができる。一般的に、種々ある水素の摂取方法において、摂取可能な水素量は、水素ガス吸入のほうが、水素水の飲用よりも多いので、水素が主吸入が主たる摂取方法であり、水素水の飲用など水素を含有する液体による摂取は補助的な摂取方法である。
その他の主気体として窒素ガスを含有させることができる。空気中に含有する気体である二酸化炭素などのガスを、空気中の存在量程度の量で含有させてもよい。
本発明では、必要に応じて、水素ガス含有気体の投与と併用して水素溶存液体を筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与する、もしくは摂取させることができる。一般的に、種々ある水素の摂取方法において、摂取可能な水素量は、水素ガス吸入のほうが、水素水の飲用よりも多いので、水素が主吸入が主たる摂取方法であり、水素水の飲用など水素を含有する液体による摂取は補助的な摂取方法である。
【0015】
水素溶存液体と併用投与する場合には、本発明の組成物は、水素溶存液体の投与の前に、水素溶存液体の投与と同時に、又は水素溶存液体の投与の後に投与されうる。
水素溶存液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水（例えば滅菌水、精製水）、生理食塩水、緩衝液（例えばｐＨ４～７．４の緩衝液）、エタノール含有水（例えばエタノール含有量０．１～２体積％）、点滴液、輸液、注射溶液、飲料などである。水素溶存液体の水素濃度は、例えば１～１０ｐｐｍ、例えば２～８ｐｐｍ、３～７ｐｐｍ、３～６ｐｐｍ、４～６ｐｐｍ、４～５ｐｐｍ、５～１０ｐｐｍ、５～８ｐｐｍ、６～８ｐｐｍ、６～７ｐｐｍなどである。
水素溶存液体は、具体的には、水素ガスを溶存させた水性液体であり、ここで、水性液体は、非限定的に、例えば水（例えば滅菌水、精製水）、生理食塩水、緩衝液（例えばｐＨ４～７．４の緩衝液）、エタノール含有水（例えばエタノール含有量０．１～２体積％）、点滴液、輸液、注射溶液、飲料などである。水素溶存液体の水素濃度は、例えば１～１０ｐｐｍ、例えば２～８ｐｐｍ、３～７ｐｐｍ、３～６ｐｐｍ、４～６ｐｐｍ、４～５ｐｐｍ、５～１０ｐｐｍ、５～８ｐｐｍ、６～８ｐｐｍ、６～７ｐｐｍなどである。
【0016】
水素溶存液体には、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための医薬品を添加してもよい。或いは、当該医薬品は、水素溶存液体又は水素ガス含有気体の投与と別に投与してもよい。
【0017】
水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、所定の水素ガス濃度になるように配合されたのち、例えば耐圧性の容器（例えば、ステンレスボンベ、アルミ缶、好ましくは内側をアルミフィルムでラミネーションした、耐圧性プラスチックボトル（例えば耐圧性ペットボトル）及びプラスチックバッグ、アルミバッグ、等）に充填される。アルミは水素分子を透過させ難いという性質を有している。或いは、水素ガス含有気体又は水素溶存液体は、投与時に、水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置、例えば、公知のもしくは市販の水素ガス供給装置（水素ガス含有気体の生成用装置）、水素添加器具（水素水生成用装置）、非破壊的水素含有器（例えば点滴液などの生体適用液バッグ内部へ非破壊的に水素ガスを添加するための装置）などの装置を用いてその場で作製されてもよい。
【0018】
水素ガス供給装置は、水素発生剤（例えば金属アルミニウム、水素化マグネシウム、等）と水の反応により発生する水素ガスを、希釈用ガス（例えば空気、酸素、等）と所定の比率で混合することを可能にする（日本国特許第５２２８１４２号公報、等）。あるいは、水の電気分解を利用して発生した水素ガスを、酸素、空気などの希釈用ガスと混合する（日本国特許第５５０２９７３号公報、日本国特許第５９００６８８号公報、等）。これによって０．５～１８．５体積％の範囲内の水素濃度の水素ガス含有気体を調製することができる。
【0019】
水素添加器具は、水素発生剤とｐＨ調整剤を用いて水素を発生し、水などの生体適用液に溶存させる装置である（日本国特許第４７５６１０２号公報、日本国特許第４６５２４７９号公報、日本国特許第４９５０３５２号公報、日本国特許第６１５９４６２号公報、日本国特許第６１７０６０５号公報、特開２０１７－１０４８４２号公報、日本国特許第６１５９４６２号公報、等）。水素発生剤とｐＨ調整剤の組み合わせは、例えば、金属マグネシウムと強酸性イオン交換樹脂もしくは有機酸（例えばリンゴ酸、クエン酸、等）、金属アルミニウム末と水酸化カルシウム粉末、などである。これによって１～１０ｐｐｍ程度の溶存水素濃度の水素溶存液体を調製できる（例えば、商品名「セブンウォーター」（ＭｉＺ株式会社）、等）。
【0020】
非破壊的水素含有器は、点滴液などの市販の生体適用液（例えば、ポリエチレン製バッグなどの水素透過性プラスチックバッグに封入されている。）に水素分子をパッケージの外側から添加する装置又は器具であり、例えばＭｉＺ株式会社から市販されている（ｈｔｔｐ：／／ｗｗｗ．ｅ－ｍｉｚ．ｃｏ．ｊｐ／ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｙ．ｈｔｍｌ）。この装置は、生体適用液を含むバッグを飽和水素水に浸漬することによってバッグ内に水素を透過し濃度平衡に達するまで無菌的に水素を生体適用液に溶解させることができる。当該装置は、例えば電解槽と水槽から構成され、水槽内の水が電解槽と水槽を循環し電解により水素を生成することができる。或いは、簡易型の使い捨て器具は同様の目的で使用することができる（特開２０１６－１１２５６２号公報、等）。この器具は、アルミバッグの中に生体適用液含有プラスチックバッグ（水素透過性バッグ、例えばポリエチレン製バッグ）と水素発生剤（例えば、金属カルシウム、金属マグネシウム／陽イオン交換樹脂、等）を内蔵しており、水素発生剤は例えば不織布（例えば水蒸気透過性不織布）に包まれている。不織布に包まれた水素発生剤を水蒸気などの少量の水で濡らすことによって発生した水素がプラスチックバッグを透過し生体適用液に非破壊的かつ無菌的に溶解される。
【0021】
上記の装置又は器具を用いて調製された、水素ガス含有気体や水素飽和生体適用液（例えば滅菌水、生理食塩水、点滴液、等）は、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に経口的に又は非経口的に投与されうる。
本発明の組成物の別の形態には、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に経口投与（もしくは摂取）するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型（例えば、錠剤、カプセル剤、等）が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
本発明の組成物の別の形態には、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に経口投与（もしくは摂取）するように調製された、消化管内で水素の発生を可能にする水素発生剤を含有する剤型（例えば、錠剤、カプセル剤、等）が含まれる。水素発生剤は、例えば食品もしくは食品添加物として承認されている成分によって構成されることが好ましい。
【0022】
３．筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状の予防、または、改善
本発明は、第２の態様により、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に、本発明の組成物を投与することを含む、該患者において筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者を原因とする症状に伴う活動レベルの低下を含む症状を改善および／または症状の悪化を抑制する方法を提供する。
本発明は、第２の態様により、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に、本発明の組成物を投与することを含む、該患者において筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者を原因とする症状に伴う活動レベルの低下を含む症状を改善および／または症状の悪化を抑制する方法を提供する。
【0023】
本発明の組成物は、患者のＱＯＬ（生活の質）の改善を可能にする。
本発明の組成物を筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与する方法としては、水素ガスを有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による経肺投与が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
本発明の組成物を筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与する方法としては、水素ガスを有効成分とするとき、例えば吸入、吸引等による経肺投与が好ましい。ガスを吸入するときには、鼻カニューラや、口と鼻を覆うマスク型の器具を介して口又は鼻からガスを吸入して肺に送り、血液を介して全身に送達することができる。
【0024】
また、水素溶存液体を患者に投与とするときには、経口投与又は静脈内投与もしくは動脈内投与（点滴を含む）が好ましい。経口投与する水素溶存液体については、好ましくは低温下に保存し、冷却した液体、又は常温で保存した液体を筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与してもよい。水素は常温常圧下で約１．６ｐｐｍ（１．６ｍｇ／Ｌ）の濃度で水に溶解し、温度による溶解度差が比較的小さいことが知られている。或いは、水素溶存液体は、例えば上記の非破壊的水素含有器を用いて調製された水素ガスを含有させた点滴液又は注射液の形態であるときには、静脈内投与、動脈内投与などの非経口投与経路によって筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に投与してもよい。
【0025】
上記水素濃度の水素ガス含有気体又は上記溶存水素濃度の水素溶存液体を１日あたり１回又は複数回（例えば２～３回）、１週間～３か月又はそれ以上の期間、例えば１週間～６か月又はそれ以上にわたり筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者の身体に投与することができる。水素ガス含有気体が投与されるときには、１回あたり例えば１０分～２時間もしくはそれ以上、好ましくは２０分～４０分もしくはそれ以上、さらに好ましくは３０分～２時間かけて投与することができる。また、水素ガス含有気体を吸入、吸引等によって経肺投与するときには、大気圧環境下で、或いは、例えば標準大気圧（約１．０１３気圧をいう。）を超える且つ７．０気圧以下の範囲内の高気圧、例えば１．０２～７．０気圧、好ましくは１．０２～５．０気圧、より好ましくは１．０２～４．０気圧、さらに好ましくは１．０２～１．３５気圧の範囲内の高気圧環境下で筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者に当該気体を投与することができる。高気圧環境下での投与によって筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者での水素の体内吸収が促進されうる。
【0026】
上記高気圧環境は、内部に、例えば上記水素ガス含有気体（例えば、水素含有酸素又は空気）を圧入して標準大気圧を超える且つ７．０気圧以下の高気圧を内部に形成することが可能である、十分な強度をもつように設計された高気圧筐体（例えば、カプセル状筐体）の使用によって作ることができる。高気圧筐体の形状は、耐圧性であるため、全体的に角がない丸みを帯びていることが好ましい。また高気圧筐体の材質は、軽量、高強度であることが好ましく、例えば強化プラスチック、炭素繊維複合材、チタン合金、アルミ合金などを挙げることができる。筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を発症した患者は、上記高気圧筐体内で酸素ガスもしくは空気とともに水素ガスを含む、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するのための組成物の投与を受けることができる。
【0027】
本発明の組成物による筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状の処置の際には、十分な治療効果と安全性が確認された水素ガス生成装置、水素水生成装置、又は水素ガス添加装置（例えば、上記の水素ガス供給装置（もしくは気体状水素吸入装置）、水素添加器具（もしくは水素水生成装置）、非破壊的水素含有器（水素透過性バッグに封入された点滴液などの生体適用液に非破壊的に水素ガスを溶解する装置）などの装置）を使用することが望ましい。
【実施例0028】
以下の実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
水素ガス吸入による筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状の抑制
６４歳の日本人男性は２０２１年春に左足のふくらはぎに異変を感じ、同年８月に病院に行ったところＡＬＳと診断され、治療方法はなく医師からは余命が３～４年と宣告された。左足脹脛の麻痺は進行し、左足脹脛は見た目だけでわかるほど同部位が右足と比べて明らかに細くなっていった。歩行も困難となり、杖を用いなければまっすぐに歩けなくなった。
２０２２年１０月より患者は水素ガスの吸入を開始した。使用した水素ガスの吸入機はＭｉＺ株式会社（日本国神奈川県鎌倉市）の商品名Ｊｏｂｓ－α（Ｊｏｂｓとして商標登録）で、Ｊｏｂｓ－αの水素濃度は約４％～５％、１００％水素発生量として水素量は２００ｍｌ／ｍｉｎである。吸入時間は一日当たり７時間から８時間、主に睡眠中に使用した。
２０２２年１１月１０日、見た目でもわかるレベルで脹脛筋肉の張りが戻ってきた。
２０２２年１２月上旬にヨーロッパに出張した。家族からＡＬＳなのに出張なのに行けるのかと心配されたが、出張を決断したのは、水素ガスの吸入により、体調が悪化することなく、ハードスケジュールにも関わらず精力的に仕事ができているためである。ヨーロッパは寒波で気温が低かったけれども歩行に問題がなかった。安全のために杖は手放せないものの、確実に歩行能力が改善している。その他、食欲増進、快便などが挙げられ、血圧、血糖値、肝機能の数値の改善が確認できている。
６４歳の日本人男性は２０２１年春に左足のふくらはぎに異変を感じ、同年８月に病院に行ったところＡＬＳと診断され、治療方法はなく医師からは余命が３～４年と宣告された。左足脹脛の麻痺は進行し、左足脹脛は見た目だけでわかるほど同部位が右足と比べて明らかに細くなっていった。歩行も困難となり、杖を用いなければまっすぐに歩けなくなった。
２０２２年１０月より患者は水素ガスの吸入を開始した。使用した水素ガスの吸入機はＭｉＺ株式会社（日本国神奈川県鎌倉市）の商品名Ｊｏｂｓ－α（Ｊｏｂｓとして商標登録）で、Ｊｏｂｓ－αの水素濃度は約４％～５％、１００％水素発生量として水素量は２００ｍｌ／ｍｉｎである。吸入時間は一日当たり７時間から８時間、主に睡眠中に使用した。
２０２２年１１月１０日、見た目でもわかるレベルで脹脛筋肉の張りが戻ってきた。
２０２２年１２月上旬にヨーロッパに出張した。家族からＡＬＳなのに出張なのに行けるのかと心配されたが、出張を決断したのは、水素ガスの吸入により、体調が悪化することなく、ハードスケジュールにも関わらず精力的に仕事ができているためである。ヨーロッパは寒波で気温が低かったけれども歩行に問題がなかった。安全のために杖は手放せないものの、確実に歩行能力が改善している。その他、食欲増進、快便などが挙げられ、血圧、血糖値、肝機能の数値の改善が確認できている。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状に対し水素を投与するだけで筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善することを可能にする。水素自体に、副作用が知られていないため、患者のＱＯＬを高めることができる。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を有効成分として含む、ヒトにおいて、筋萎縮性側索硬化症（ＡＬＳ）および／またはＡＬＳに関連する症状を予防、または、改善するための組成物であって、
前記組成物が、吸入によって前記ヒトに投与されることを特徴とする組成物。
前記組成物が、吸入によって前記ヒトに投与されることを特徴とする組成物。
【請求項2】
前記ＡＬＳに関連する症状が、下位運動ニューロン症状、上位運動ニューロン症状、球麻痺症状、認知機能障害、陰性徴候、解離性小手筋萎縮、および、これらの症状に伴う生活の質（Ｑｕａｌｉｔｙ ｏｆ Ｌｉｆｅ）の低下からなる１以上の症状から選択されることを特徴とする請求項１に記載の組成物。
【請求項3】
前記下位運動ニューロン症状が、筋力低下、筋萎縮、および、筋繊維束性攣縮から１つ以上選択される症状であり、前記上位運動ニューロン症状が、下顎反射亢進、口尖らし反射、偽性球麻痺、強制泣き・笑い、病的腱反射亢進、腱反射亢進、Ｈｏｆｆｍａｎｎ反射、痙縮、萎縮筋腱反射保持、腹皮反射消失、腹筋反射消失、および、Ｂａｂｉｎｓｋｉ徴候から１つ以上選択される症状であり、前記認知機能障害が、人格変化、行動障害（異常）、言語障害、および、遂行機能障害から１つ以上選択される症状であり、前記陰性徴候が、感覚障害、眼球運動障害、膀胱直腸障害、褥瘡、小脳症状、錐体外路症状、および、自律神経症状から１つ以上選択される症状であることを特徴とする請求項１または２に記載の組成物。
【請求項4】
前記水素の濃度が、０より大きく１８．５体積％以下である、請求項２または３に記載の組成物。
【請求項5】
前記水素の濃度が、０．５体積％以上１８．５体積％以下である、請求項２または３に記載の組成物。
【請求項6】
前記請求項２または３に記載の組成物を作製する方法であって、前記組成物が水素ガス生成装置、または、人工呼吸器を用いて作製されることを特徴とする方法。