(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072248
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】ティシュペーパー及びティシュペーパー製品
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240520BHJP
【FI】
A47K10/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143179
(22)【出願日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】202211437148.2
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ワン ショウシャ
(72)【発明者】
【氏名】ニー シンモン
(72)【発明者】
【氏名】グ リーリー
(72)【発明者】
【氏名】シュウ イツケツ
【テーマコード(参考)】
2D135
【Fターム(参考)】
2D135AA10
2D135AA17
2D135AA18
2D135AB03
2D135AB10
2D135AB11
2D135AC03
2D135AC08
2D135AD15
2D135BA11
2D135DA03
2D135DA06
2D135DA08
2D135DA15
2D135DA16
(57)【要約】
【課題】多プライで手拭き用途に適する厚みと強度を有しつつ、エンボス加工による凹凸がしっかりと形成され、プライ離れがし難く、さらに、肌触りに優れるティシュペーパーを提供する。
【解決手段】3プライ以上のティシュペーパーであって、各層の坪量が17.8g/m
2超26.0g/m
2未満であり、製品プライでの紙厚が350μm超570μm未満であり、縦方向の湿潤引張強度が、750cN/25mm超1250cN/25mm未満、横方向の湿潤引張強度は190cN/25mm超400cN/25mm未満であり、グリセリンが70%以上含む保湿薬液を5.0質量%以上18.0%未満含有し、両表面にエンボス加工による凹部及び凸部を有し、その凹部及び凸部は、一方表面の凹部が他方表面の凸部となっており、凹部及び凸部の平面視におけるパターンは、凹部及び凸部が格子の交点位置に配置されたパターンである、ティシュペーパーにより解決される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3プライ以上のティシュペーパーであって、
各層の坪量が17.8g/m2超26.0g/m2未満であり、
製品プライでの紙厚が350μm超570μm未満であり、
縦方向の湿潤引張強度が、750cN/25mm超1250cN/25mm未満、横方向の湿潤引張強度は190cN/25mm超400cN/25mm未満であり、
グリセリンを70%以上含む保湿薬液を3.5質量%以上16.5質量%未満含有し、
両表面にエンボス加工による凹部及び凸部を有し、その凹部及び凸部は、一方表面の凹部が他方表面の凸部となっており、
凹部及び凸部の平面視におけるパターンは、凹部及び凸部が格子の交点位置に配置されたパターンである、
ことを特徴とする、ティシュペーパー。
【請求項2】
吸水量が612g/m2以上であり、柔軟度が250mN超440mN未満である、請求項1記載のティシュペーパー。
【請求項3】
凹部及び凸部が、一方面に1cm2あたりそれぞれ15~17個ある、請求項1記載のティシュペーパー。
【請求項4】
エンボス加工が、一方のエンボスロールの表面に形成された凹部と、他方のエンボスロールの表面に形成された凸部とが嵌合し、前記一方のエンボスロールの表面に形成された凸部と、前記他方のエンボスロールの表面に形成された凹部とが嵌合する、一対のエンボスロールにより行われる、スチールマッチエンボス加工であり、
それらエンボスロールにおける凹部及び凸部の面積を1.65mm2超2.80mm2未満として形成された、請求項1記載のティシュペーパー。
【請求項5】
エンボスロールの凸部の高さが0.13mm超0.35mm未満である、請求項4記載のティシュペーパー。
【請求項6】
エンボスロールの凹部の面積率が、25%以上である、請求項4又は5記載のティシュペーパー。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載のティシュペーパーが、折り畳み積層しポップアップ式の束とされ、この束が収納箱又は包装フィルム内に納められていることを特徴とするティシュペーパー製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー及びティシュペーパー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
対物の拭き取りや手拭きにティシュペーパーをよく用いる者は、坪量が高く、強度の高い原紙が用いられ、プライ数も3プライ以上の多プライとされている、厚手でしっかりとしたものを好む。
【0003】
他方で、ティシュペーパーにおいては、エンボス加工による凹凸が付与されているものがある。エンボス加工による凹凸によって、幾何学模様や花柄等の図柄をティシュペーパー紙面に形成し、意匠性を高めたり、汚れの掻き取り性と高めたりする。吸水性が高まることもある。このエンボス加工は、シングルエンボス加工と称される形態が多かった。シングルエンボス加工は、一方面に凹部のみ、他方面にその凹部に対応する凸部のみが存在している。
【0004】
また、複数プライのティシュペーパーにおいては、使用時に各プライ同士が分離しないように、プライ同士を圧着するプライ圧着加工をすることが多い。このプライ圧着加工は、ナーリング加工、エッジエンボス加工などとも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002-530170号
【特許文献2】特許5883412号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、対物の拭き取りや手拭きに適するティシュペーパーは、坪量が高く、強度の高い原紙が用いられ、3プライ以上の多プライであるため、エンボス加工による凹凸がしっかりと形成されず、また、エッジエンボス等の圧着加工による圧着も不十分になりやすく、使用時に、プライは離れが発生しやすいという問題があった。
【0007】
他方で、ティシュペーパーの使用形態には、人や国、地域によって相違する点がある。これは生活又は文化様式の相違に基づくものと思われる。例えば、顔拭き用途の柔らかなティシュペーパーと、手拭きや対物用途のしっかりとしたティシュペーパーを使い分けている地域等、顔拭き、手拭き、対物拭き取りの各用途において、さほどティシュペーパーを使い分けせずに、マルチユースで使用している地域等がある。
【0008】
そして、後者のような地域等においても、手拭き用途など、特定の用途に適するティシュペーパーが求められる。特に、このようなマルチユースを前提とした地域等においては、当然に顔拭き、手拭き、対物拭き取りの各用途において不満なく利用できることを前提として、手拭き用途など、特定の用途における使用感を高めることが求められる。例えば、特に中国国内では、マルチユースを前提としつつ、特定の用途においても適することが求められる。
【0009】
そこで、本発明の主たる課題は、手拭き用途に適する厚みと強度を有しつつ、エンボス加工による凹凸がしっかりと形成されて意匠性に優れるとともに、プライ離れがし難く、さらに、顔拭き等に使用した際にも、十分な肌触りと拭き取り性を有し、マルチユースに対応できるティシュペーパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明に係る第一の手段は、
3プライ以上のティシュペーパーであって、
各層の坪量が17.8g/m2超26.0g/m2未満であり、
製品プライでの紙厚が350μm超570μm未満であり、
縦方向の湿潤引張強度が、750cN/25mm超1250cN/25mm未満、横方向の湿潤引張強度は190cN/25mm超400cN/25mm未満であり、
グリセリンを70%以上含む保湿薬液を5.0質量%以上18.0%未満含有し、
両表面にエンボス加工による凹部及び凸部を有し、その凹部及び凸部は、一方表面の凹部が他方表面の凸部となっており、
凹部及び凸部の平面視におけるパターンは、凹部及び凸部が格子の交点位置に配置されたパターンである、
ことを特徴とする、ティシュペーパーである。
【0011】
第二の手段は、
吸水量が612g/m2以上であり、柔軟度が250mN超440mN未満である、上記第一の手段に係るティシュペーパーである。
【0012】
第三の手段は、
凹部及び凸部が、一方面に1cm2あたりそれぞれ15~17個ある、上記第一の手段に係るティシュペーパーである。
【0013】
第四の手段は、
エンボス加工が、一方のエンボスロールの表面に形成された凹部と、他方のエンボスロールの表面に形成された凸部とが嵌合し、前記一方のエンボスロールの表面に形成された凸部と、前記他方のエンボスロールの表面に形成された凹部とが嵌合する、一対のエンボスロールにより行われる、スチールマッチエンボス加工であり、
それらエンボスロールにおける凹部及び凸部の面積を1.65mm2超2.80mm2未満として形成された、上記第一の手段に係るティシュペーパーである。
【0014】
第五の手段は、
エンボスロールの凸部の高さが0.13mm超0.35mm未満である、上記第四の手段に係るティシュペーパーである。
【0015】
第六の手段は、
エンボスロールの凹部の面積率が、25%以上である、上記第四又は第五の手段に係るティシュペーパーである。
【0016】
第七の手段は、
上記第一~第六の手段に係るティシュペーパーが、折り畳み積層しポップアップ式の束とされ、この束が収納箱又は包装フィルム内に納められていることを特徴とするティシュペーパー製品である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、手拭き用途に適する厚みと強度を有しつつ、エンボス加工による凹凸がしっかりと形成されて意匠性に優れるとともに、プライ離れがし難く、さらに、顔拭き等に使用しても肌触りと拭き取り性が十分でマルチユースに対応できるティシュペーパーが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施の形態のティシュペーパーの概要平面図である。
【
図2】実施の形態のティシュペーパーの平面の拡大図である。
【
図5】エンボス加工を説明するための概略図である。
【
図6】エンボス加工を説明するためのエンボスロールの表面図である。
【
図7】エンボス加工を説明するためのエンボスロールの断面図である。
【
図10】ポップアップ式の折り畳み形態の説明図である。
【
図11】好ましい3プライの実施の形態の概要断面図である。
【
図12】好ましい4プライの実施の形態の概要断面図である。
【
図13】他の3プライの実施の形態の概要断面図である。
【
図14】他の4プライの実施の形態の概要断面図である。
【
図21】4プライのさらに別の塗布例の概要図である。
【
図23】スプレー塗布設備例による3プライの塗布例の概要図である。
【
図24】スプレー塗布設備例による3プライの別の塗布例の概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を示しながら本発明をさらに説明する。
3プライ又は4プライが積層されたティシュペーパー2の実施の形態を説明する。
図1にティシュペーパー2の一枚の平面図、
図2に平面の一部拡大図、
図3に3プライの断面図、
図4に4プライの断面図を示す。まず、2プライではなく、3プライ又は4プライであるために、「手拭き」、「対物拭き取り」用途に適する十分な「厚み感」や「しっかり感」を感じられる。さらに、必要な強度を発現させやすくなる。なお、3プライとは、プライ(シート)S1~S3が三枚積層された形態であり、4プライとは、プライ(シート)S1~S4が四枚積層された形態である。各プライ(シート)はクレープ紙である。
【0020】
本実施形態のティシュペーパーの1プライの坪量は、17.8g/m2超26.0g/m2未満、好適には19.8g/m2以上24.0g/m2以下、特に好適には、20.1以上23.6g/m2以下である。この範囲の坪量は、比較的高い坪量である。よって、この坪量の下で「3プライ又は4プライ」であると、「手拭き」、「対物拭き取り」に十部な強度を確保でき、さらに、「厚み感」、「しっかり感」が顕著に感じられるようになる。そのうえで、坪量が高いと紙が固くなり、低いとやわらかくなる傾向があるため、坪量は「柔らかさ」への影響も大きいと考えられる。各層の坪量をこの範囲内として、後述の保湿薬液及びエンボス加工による凹凸とすることで、「柔らかさ」と「滑らかさ」が感じされやすくなり、「顔拭き」に使用しても不満なく使用でき、マルチユースに使用できるものとなる。なお、坪量は、JIS P 8124(1998)に基づいて測定した値である。
【0021】
本実施形態のティシュペーパーの全体(製品プライ)の紙厚が350μm超570μm未満である。好適には360μm以上499μm以下、特に好適には387μm以上472μm以下である。3プライ以上の多プライ構造では、紙厚は、特に「柔らかさ」と「厚み感」に影響を及ぼしやすい。本実施形態のティシュペーパーでは、紙厚がこの範囲内であると「柔らかさ」と「厚み感」とが顕著となり、「手拭き」、「対物拭き取り」用途に適する十分な「厚み感」を感じられる。また、他の構成と相まって「顔拭き」に使用した際に不満のない「柔らかさ」を発現できる。さらに、エンボス加工による凹凸と相まって「滑らかさ」も顕著なものとなる。
【0022】
紙厚は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて測定した値とする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試験片を測定台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。測定時には、金属製のプランジャーの端子(直径10mmの円形の平面)が紙平面に対し垂直に当たるように留意する。なお、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。紙厚は、部位を変えてこの測定を10回行って得られた測定値の平均値とする。試験片は、3プライの製品シートを採取し、折り目やコンタクトエンボス部分等を避けて測定する。
【0023】
また、本実施形態のティシュペーパーは、縦方向の3プライ、もしくは、4プライでの湿潤引張強度が、750cN/25mm超1250cN/25mm未満、横方向の湿潤引張強度は190cN/25mm超400cN/25mm未満である。より好ましくは、767cN/25mm以上1235cN/25mm以下、特に好ましくは、822cN/25mm以上1169cN/25mm以下である。横方向の3プライ、もしくは、4プライでの湿潤引張強度は、150cN/25mm超450cN/25mm未満であるのが望ましい。より好ましくは、205cN/25mm以上381cN/25mm以下、特に好ましくは、224cN/25mm以上329cN/25mm以下である。なお、この値は各プライが積層された状態、すなわち3プライ又は4プライのままの測定値である。湿潤引張強度は、濡れた手の拭き取り、濡れた手でポップアップしてティシュペーパーを取り出す際、物品に付着した水分の拭き取り、洟をかむ際、化粧落としの際における化粧水を吸収した際等、水分を吸収した際における強度に関係する。この範囲であれば、他の構成と相まって、特に、濡れた手の拭き取り、濡れた手でポップアップしてティシュペーパーを取り出す際、における十分な強度である。また、後述する好ましい製造方法であるロータリーインターホルダによって折り畳みが行われたポップアップ式のティシュペーパー製品は、ティシュペーパーの縦方向が引き出し方向となる。上記の縦方向の湿潤引張強度であれば、濡れた手で引き出す操作を行っても破断せずにスムーズな引き出しができる。なお、紙の縦方向とは、MD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向である。紙の横方向は、CD方向とも呼ばれ、抄紙の際の流れ方向(MD方向)に直交する方向である。
【0024】
実施の形態におけるティシュペーパーの湿潤引張強度は、JIS P 8135(1998)に準じて測定した値であり、次のようにして測定した値である。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライの場合は複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は50mm/minに設定する。試験片は、105℃の乾燥機で10分間のキュアリングを行ったものを用いる。試験片の両端を試験機のつかみに締め付けた後、水を含ませた平筆を用い、試験片の中央部に約10mm幅で水平に水を付与し、その後、直ちに紙片に対して上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で測定を行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の湿潤引張強度とする。
【0025】
さらに、本実施形態のティシュペーパーは、縦方向の3プライ、もしくは、4プライでの乾燥引張強度は、好ましくは1958cN/25mm以上2531cN/25mm以下、特に好ましくは、1859cN/25mm以上2353cN/25mm以下である。縦方向の乾燥強度がこの範囲内であると「厚み感」と「しっかり」が顕著となり、特に、「手拭き」、「対物拭き取り」の使用に特に適する高い強度の範囲といえる。なお、本発明の縦方向の乾燥強度とならない、縦方向に繊維を密に配置し高い圧力で圧密したようなプライ原紙を使用すると、後述の本発明に係る保湿薬液やエンボス加工による凹凸形成において繊維間のほぐれが十分となり難く、柔らかさが発現しがたくなる。
【0026】
また、横方向の3プライ、もしくは、4プライでの乾燥引張強度は、好ましくは477cN/25mm以上691cN/25mm以下、特に好ましくは、509cN/25mm以上620cN/25mm以下である。横方向の乾燥強度がこの範囲内であると「手拭き」、「対物拭き取り」に適する強度で「厚み感」と「しっかり感」があり、後述の本発明に係る保湿薬液やエンボス加工による凹凸と相まって、「顔拭き」においても不満のない「や柔らかさ」と「滑らかさ」とすることができる。さらに、定かではないが、「横方向の乾燥引張強度」は、「やわらかさ」、「厚み感」といった個別の官能性ではなく、総括的な「肌ざわり」の官能性に影響がある。被験者に対して「やわらかさ」、「厚み感」といった具体的な評価基準ではなく、試料に対して自由に触れさせた後に「肌ざわり」という総合的な評価基準でティシュペーパーの良い悪いを評価させた際に、この「肌ざわり」の評価と「横方向の乾燥強度」とに一定の相関があることが知見されている。
【0027】
また、実施の形態のティシュペーパーの乾燥(引張)強度は、JIS P 8113に基づいて測定した値であり、次のようにして測定した値である。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。ティシュペーパーは複数プライのまま測定する。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びこれに相当する相当機を用いる。なお、つかみ間隔100mm、引張速度は100mm/minに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。試料の調整は、JIS P 8111(1998)による。
【0028】
乾燥引張強度及び湿潤引張強度の調整は、乾燥紙力増強剤や湿潤紙力増強剤を紙料或いは湿紙に内添することにより行うことができる。乾燥紙力増強剤としては、澱粉、ポリアクリルアミド、CMC(カルボキシメチルセルロース)若しくはその塩であるカルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース亜鉛等を用いることができる。湿潤紙力増強剤としては、ポリアミドポリアミンエピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性塗工PAM等を用いることができる。なお、乾燥紙力増強剤を内添する場合、パルプスラリーに対する添加量は、1.0kg/パルプt以下程度である。また、湿潤紙力増強剤は、カチオン性のものが望ましく、そのパルプスラリーに対する添加量は、5.0~20.0kg/パルプt程度である。
【0029】
本実施形態のティシュペーパーは、保湿のティシュペーパーである。すなわち、吸湿性を高める保湿薬液が含有されている。保湿薬液は、特にグリセリンを70質量%以上含むものである。好ましくは75質量%以上80質量%未満含有するものである。グリセリンは吸湿性のほか保湿性も示す。水分は15~20質量%含まれているのが望ましい。さらに、表面性、特に滑らかさを向上させるために、流動パラフィンを含有させることができる。さらに、必要により1、3-プロパンジオールを6.1質量%以上12.6質量%以下含有させることができる。1、3-プロパンジオールは、グリセリンによる「べたつき感」を軽減する。
【0030】
ティシュペーパー中に、グリセリンなどの保湿剤のほか公知の助剤が含有されてもよい。助剤の例としては、抗菌剤、ソルビトール等の保湿補助成分、ティシュペーパー中の水分の保持性を高めるための、親水性高分子ゲル化剤、界面活性剤や柔軟性向上剤、滑らかさの発現を補助する前記の流動パラフィンなどの油性成分、その他、保湿剤の安定化、塗布性を向上させるための乳化剤、防腐剤、消泡剤等が挙げられる。なお、保湿補助成分、水分の保持性を高める親水性高分子ゲル化剤等の成分の配合量は、「厚み感」、「柔らかさ」及び「滑らかさ」に過度の影響を及ぼさない程度とする。具体的には、1.0質量%以下、好ましくは0.6質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下とするのがよい。
【0031】
保湿薬液の含有率は、3.5質量%以上16.5%未満である。より、好ましくは、3.9質量%以上15.7%以下である。この保湿薬液の含有率は、3プライ又は4プライ全体での含有率である。なお、保湿薬液の塗布形態によって、両表面プライと中間プライとで保湿薬液の含有濃度が変わることがある。例えば、保湿薬液を各プライに塗布した後に積層する場合、積層した後に一方面から保湿薬液を塗布する場合、積層した後に両面から保湿薬液を塗布する場合など、塗布形態において、各プライにおける保湿薬液の含有濃度が変わり得る。この保湿薬液の含有率とするには、必ずしも限定されないが、対原紙質量に対して、5.0~20.0質量%薬液を付与すればよい。
【0032】
なお、保湿薬液の含有率(「薬液含有率」)は、JIS P8111の標準状態23℃50%R.Hで調湿された各シート中に含まれる保湿薬液の割合である。この薬液含有量の測定に際しては、薬液が塗布されたティシュペーパーの各シート(各プライ)を剥がし、JIS P 8111の標準状態で重量(a)を計測し、ソックスレー抽出器でエチルアルコール:アセトンの比率を50:50とした溶媒に試験片を入れ約3時間軽く沸騰した状態に保ち薬液塗布多層衛生薄葉紙に塗布された薬液を溶出させる。試験片を取出し、60℃で恒量である重量(b)となるまで乾燥させた後、重量(a)から重量(b)を差し引いて薬液含有量を算出し、重量(a)と薬液含有量とから薬液含有率を算出する。
【0033】
ここで、保湿ティシュー(ローションティシューとも呼ばれる)においては、使用者が使用時に柔らかさを感じさせるために、ある程度の量の保湿剤を適用する必要がある。実施の形態のティシュペーパーは、塗布形態について限定されないが、好ましくは保湿薬液が各プライにほぼ均等に含有されているのが望ましい。すなわち、製品の乾燥保湿剤(薬液)含有率を100としたとき、各プライの乾燥保湿剤(薬液)含有率が92.0~108.0の範囲内にあるのが望ましい。より望ましくは、プライの乾燥保湿剤(薬液)含有率が95.0~104.0の範囲内にある。
【0034】
保湿薬液が各プライにほぼ均等に含有されているようにするには、各プライに、吸湿性を示す保湿薬液を塗布した後に積層する製造方法が特に望ましい。これについて詳述すると、
図11は3層(1R、2R、3R)の各プライに保湿薬液を塗布した一形態である。
図12は4層(1R、2R、3R、4R)の各プライに保湿薬液を塗布した一形態である。
図13は3層(1R、2R、3R)の積層後に両表面に保湿薬液を塗布した一形態である。
図14は4層(1R、2R、3R、4R)の積層後に両表面に保湿薬液を塗布した一形態である。また、保湿薬液の塗布面Fと非塗布面Wを示した。塗布面Fから非塗布面Wに向かって厚み方向に保湿剤の含有濃度の勾配が少なからず存在するので、その濃度勾配を、グラデーションで図示してある。
【0035】
図13及び
図14に示す形態では、中間プライ(
図13では2R、
図14では2R及び3R)に保湿薬液が直接的に塗布されないため、表面プライに対する保湿薬液の適用量が多くなりがちであり、表面プライの外面にベタツキを生じさせるようになることがある。積層後に保湿薬液を塗布した場合、保湿薬液は、塗布面から時間経過とともに全体に浸透拡散するように挙動する。しかし、保湿薬液の塗布量が少ない場合、隣接するプライへの保湿薬液の移行量が少なくなる場合がある。他方で、保湿薬液の塗布量が多い場合、隣接するプライへの保湿薬液が移行するものの、保湿剤の塗布した表面プライの保湿薬液の含有量と隣接するプライの保湿薬液の含有量との間で高低差が生じることがある。シーズニングによって、この濃度勾配が緩くなることがあるが、ならない場合もある。
図11及び
図12に示す形態では、各プライに保湿薬液を直接的に塗布するため、中間プライにも保湿薬液が塗布される。よって、各プライに保湿薬液を塗布する形態であれば、確実に中間プライ、すなわち(
図11では2R、
図12では2R及び3R)にも水系の保湿薬液を含有させることができ、中間プライに柔らかさに生じさせ、もって積層シート全体が柔らかいものとなる。その結果、外層プライにおける保湿薬液の含有量を少なくでき、表面プライの外面(積層シートの露出面)における保湿薬液による「ベタツキ感」をなくす又は抑制しやすく、特に「手拭き」、「対物拭き取り」時において水分を拭き取りが良好に行われた感じを受けやすくなる。
【0036】
ここで、一般に保湿薬液を含む保湿ティシュペーパーは、保湿薬液の吸湿性によって水分率が高められているため、吸水量が低くなる傾向にある。本実施形態のティシュペーパーは、坪量及び紙厚を高めることで、「手拭き」、「対物拭き取り」用途に適する十分な吸水性を発現できる。ここで、本実施形態のティシュペーパーの吸水性は、必ずしも限定されないが、吸水量が612g/m2以上あれば、「手拭き」、「対物拭き取り」用途に不満なく使用でき、化粧落としなどの肌の拭き取り等の「顔拭き」用途でも十分な吸水量があるといえる。本実施形態のティシュペーパーでは、エンボス加工による凹凸、プライ数、紙厚及び坪量の構成と相まってこの吸水量を達成できる。なお、この吸水量の測定は、次のようにして行う。試験環境は、23℃湿度50%とする。試験片は、縦・横100mm×100mm(±0.5mm)に裁断したものとする。試験液は常温の水道水とする。試験片と試験液を入れるバットを準備する。試験片を置く金網は120mm×120mmの外枠とし、外枠の針金の太さを3.0mm、内枠は10mm格子とし内枠の針金の太さを0.5mmとし取っ手を付けたものとする。裁断した試験片をシャーレ等の測定用の容器の上にのせて容器ごと重量を測定し、小数点第2位まで記録する。試験片を金網上に載せ試験液を吸収させる。このときドブ漬けせずに試験片の下限が試験液に触れる程度を保持する。試験片の表面まで試験液が浸みこんだ後、試験液を入れた容器から垂直に金網を上げ、試験片をピンセットにて4つ折りにたたみ、25~26秒静止する。なお、容器から垂直に上げてから30秒以内とする。その後、ピンセットで試験片をつかみ、金網から平行して滑らせるようにして容器に再度移し容器ごと重量を測定し、小数点第2位まで記録する。浸漬前の重量と浸漬後の重量との差から吸水量を求め少数点第1位まで記録する。同じ試料について3回測定し、その平均値を測定値とする。
【0037】
ティシュペーパーを構成する繊維素材は、パルプ繊維であり、ティシュペーパーに用いられるNBKP(針葉樹クラフトパルプ)及びLBKP(広葉樹クラフトパルプ)であるのが望ましい。古紙パルプが配合されていてもよいが、古紙パルプは「やわらかさ」を発現させがたいことから、バージンパルプのNBKPとLBKPのみから構成されているのが極めて望ましい。配合割合としては、質量比でNBKP:LBKP=35:65~48:52である。この範囲であると特にエンボスによる凹凸の形成に影響し、「手拭き」、「対物拭き取り」用途に必要な紙力と「厚み感」を感じられつつ、「顔拭き」用途においても「柔らかさ」と「滑らかさ」を顕著に感じられるものとすることができる。
【0038】
ここで、本実施形態のティシュペーパー2は、
図1~
図4に示すように、特徴的に、両表面にエンボス加工による凹部20及び凸部21を有し、その凹部20及び凸部21は、一方表面の凹部20が他方表面の凸部21に対応するものとなっている。さらに、その凹部20及び凸部21の平面視におけるパターンは、凹部20及び凸部21が格子の交点位置に配置されたパターンとなっている。なお、このパターンは、
図1に示すように、ティシュペーパー紙面に仮想線Lを格子状に描いた際における交点位置に凹部20及び凸部21が配されたパターンともいえる。なお、格子の交差角度、つまり仮想線同士の交差角度は必ずしも限定されない。60~120°が好ましく、特に好ましくは90±5°である。また、仮想線Lは紙の縦方向に対する角度∠αが30~60°が好ましく、特に好ましくは、45±1°である。
【0039】
この本実施形態のティシュペーパー2は、特に上記の坪量及び紙厚等の紙質物性であるとともに両表面に凹部20と凸部21とが存在しているため、両表面の表面性の差が小さく感じられやすく、両表面において同様の吸水性と柔らかが得られ、しかも凹凸の深さによって、両表面において、ほぼ同じ拭き取り性を有する。このように、両表面を同じ品質で使用できるため、「手拭き」や「顔の拭き」用途など肌に触れた際の感じ方に差がなく特に適する。さらに、具体的に説明すると、まず、本実施形態のティシュペーパーは、使用時に両表面ともに肌と最初に接触する部分が凸部の頂部となるためクッション性を感じやすい。また、肌との接触面積が小さく、保湿薬液の含有と相まって滑り性に優れ、「滑らかさ」も感じやすい。さらに、肌に押し付けた際には凸部のクッション性によって「厚み感」や「ふんわり感」を感じやすい。さらに、この凹部及び凸部の配置のパターンは、両表面の縦方向、横方向において一定に凹部20と凸部21とが交互に位置するため、凸部21によるざらつきが感じ難く、結果として「滑らかさ」をより感じやすい。さらに、両表面の紙面が凹凸となっているため肌以外の物品等の拭き取り時における安心感につながる「厚み感」も感じされやすく、しかも塵や埃の拭き取り性、掻き取り性にも優れる。
【0040】
本実施形態のティシュペーパーのプライ数、坪量及び紙厚の場合、通常は、両表面にエンボス加工による凹部20及び凸部21を有し、その凹部20及び凸部21が、一方表面の凹部20が他方表面の凸部21に対応する特徴的なエンボス加工の形態とするのが難しい。実施の形態のように、グリセリンを70%以上含む、保湿薬液の含有量を、5.0質量%以上18.0%未満とすることで、しっかりとした意匠性のある凹部20、凸部21を形成することができる。すなわち、保湿薬液を含有し柔軟性が高められた状態の積層シートに対してエンボス加工を行うことで、実施の形態の意匠性に優れる凹部20及び凸部21を形成することができる。この際、既述のように各プライに保湿薬液が塗布されているとエンボス加工時に中間プライも柔軟に変形して凹部20、凸部21が形成されやすく、しかも、その凹部20及び凸部21が経時的に平坦に戻り難く、しっかりとした意匠性に優れる凹部20及び凸部21を形成することができる。
【0041】
本実施形態のティシュペーパー2は、両表面に凹部20及び凸部21が存在するとともに、その特徴的な配置と、紙厚、プライ数、坪量の構成、さらに保湿薬液の含有と相まって、「厚み感」、「しっかり感」、強度といった「手拭き」、「物品の拭き取り」に適しつつ、「柔らかさ」、「吸水性」、「滑らかさ」といった肌に触れる用途にも対応でき、マルチユースにも十分に対応できるようになっている。
【0042】
ここで、本実施形態のティシュペーパーの柔軟度は、必ずしも限定されないが、柔軟度が250mN超440mN未満であるのが望ましい。より好ましくは268mN以上410mN以下、特に好ましくは、285mN以上363mN以下である。柔軟度が240mN超440mN未満の範囲であると、特に、マルチユース性と、肌の拭き取り性において優れる柔らかさが十分であるといえる。この柔軟度は、上記のエンボス加工による凹部及び凸部、その特徴的な配置と、紙厚、プライ数、坪量の構成によって達成することができる。なお、この柔軟度は、JAPAN TAPPI No.34に準拠したハンドルオメーター法により測定した値であり、試料長は、100mmとする。また、クリアランスは5mmとする。また、測定は2プライのシートを一旦1プライずつに剥がした後、各シートを重ねて測定する。柔軟度の値は、縦方向及び横方向の表面及び裏面の各5回ずつ合計20回の平均値とする。
【0043】
他方で、本実施形態のティシュペーパー2において凹部20及び凸部21を形成するためのエンボス加工の手段は、必ずしも限定されないが、
図5~
図7に示す、スチールマッチエンボス加工によって形成するのが望ましい。スチールマッチエンボス加工は、
図6に示すように、一方のエンボスロール40Aの表面に形成された凹部30と、他方のエンボスロール40Bの表面に形成された凸部31とが嵌合し、前記一方のエンボスロール40Aの表面に形成された凸部31と、前記他方のエンボスロール40Bの表面に形成された凹部30とが嵌合する、一対の金属等の硬質なエンボスロール40A,40B間に被加工原紙Sを通紙することで紙面に凹凸を形成する。
図7では、3つの原反ロールA1、A2,A3からシートS1、S2、S3を繰り出し、各シートに薬液塗布手段90によって薬液を塗布した後に積層して被加工原紙Sとして、エンボスロール40A,40Bの間に通紙させた3プライの実施の形態を示している。このスチールマッチエンボス加工では、特に
図7に示されるように、一方のエンボスロールの凸部31が、他方のエンボスロールの凹部30に嵌る位置関係となっており、本実施形態に係る両表面にエンボス加工による凹部20及び凸部21を有し、その凹部20及び凸部21が、一方表面の凹部20が他方表面の凸部21に対応するものが形成される。なお、スチールマッチエンボス加工におけるエンボスロール周面の材質は、必ずしもスチールに限定される意味ではない。他の金属等の硬質な素材によって形成されていればよい。
【0044】
そして、このスチールマッチエンボス加工では、加工時に
図3及び
図4に示す、凹部20の底部20B(反対面の凸部21の頂部21t)において繊維が圧密化されやすい一方、斜面部分22は引き延ばされて繊維が祖となりやすい。このため、特に肌に触れる凸部21の頂部21tの滑らかさの向上と、凸部全体のクッション性が得られやすく、既述の「柔らかさ」、「吸水性」、「滑らかさ」といった肌に触れる用途に対する適正が高まる。そして、坪量、紙厚等の紙質物性値から「手拭き」、「対物拭き取り」用途に適する「しっかり感」と「厚み感」が低下することがない。よって、すなわちマルチユースにも十分に対応できる本実施形態のティシュペーパーの作用効果がより顕著となる。特に、このスチールマッチエンボス加工における凹部20(凸部21)の底部20B(頂部21t)と斜面部分22における繊維の粗密によってなされる滑らかさ及びクッション性の作用効果は、既述のNBKP:LBKPとの繊維比率、特にLBKPがやや多い配合割合が多いことも関係する。すなわち、上記のNBKP:LBKPとスチールマッチエンボス加工とでより効果がより発現される。また、既述のとおり、保湿薬液の含有によって繊維の動きが促進され、しっかりと凹部20及び凸部21が形成される。
【0045】
なお、本実施形態のティシュペーパーにおけるエンボス加工によって形成された凹部20又は凸部21の個数は、必ずしも限定されないが、好ましくは、一方面の1cm2あたり7~17個、特に好ましくは15~17個である。この個数であると、「柔らかさ」、「吸水性」、「滑らかさ」といった肌に触れる用途に特に適しつつ、さらに、他の一般的な使用、すなわちマルチユースにも十分に対応できる効果がより発現しやすい。
【0046】
本実施形態のティシュペーパーのエンボス加工による凹部20(凸部21)の形状は、必ずしも限定されないが、円形、楕円形、角取四角形の何れかが望ましい。角部がないため、肌に触れた際に「滑らかさ」を感じやすい。
【0047】
ここで、本実施形態のティシュペーパーに凹部20及び凸部21を形成するための、各エンボスロール40A,40Bに形成された凹部30及び凸部31の面積は、必ずしも限定されないが、好ましくは、1.65mm2超2.80mm2未満であるのが望ましい。このようなエンボスロール40A,40Bにより形成される凹部20及び凸部21を有するティシュペーパーは、特に、「柔らかさ」、「滑らかさ」に優れる。なお、ティシュペーパーにおける凹部及び凸部の面積は、1.65mm2超2.80mm2未満よりも小さい範囲となり、上記範囲よりやや面積の小さい凹部20及び凸部21を有するものであれば、上記エンボスロール40A,40Bによって形成されたものと推測できる。
【0048】
なお、エンボスロール40A,40Bにおける凹部30の面積率は、必ずしも限定されないが、好ましくは、25%以上である。このエンボスロール40A,40Bによりエンボス加工を行い凹部20及び凸部21を形成すると、本実施形態のティシュペーパーの作用効果がより顕著となる。なお、エンボス加工では、エンボスロール40A,40Bの凹凸が紙面に転写されるため、完全一致ではないが、ティシュペーパー紙面の凹部20の面積率を測定することで、概ねエンボスロールの凹部30の面積率も推測される。
【0049】
さらに、本実施形態のティシュペーパーに凹部20及び凸部21を形成するための、各エンボスロール40A,40Bに形成された凸部31の高さは、0.13mm超0.35mm未満であるのが望ましい。このエンボスロールの凸部31の高さにおいて、各エンボスロール40A,40B間のクリアランスを調整して、適宜のエンボス圧力とすることで、紙面に凹部20と凸部21とが転写されて形成される。なお、ティシュペーパーの凹部及び凸部の高低差は、必ずしも限定されないが、エンボスロール40A,40Bの凸部31の高さとほぼ同様の0.13mm超0.35mm未満の範囲とであるのが望ましい。また、特に、この両表面における高低差の差は、30%以内、好ましくは10%以内、特に好ましくは、5%以内である。本実施形態のティシュペーパーは、凹凸による各表面の使用感の差がないことが望ましいため、エンボス加工による凹部20及び凸部21の高低差が各表面において差が小さいほうが望ましい。
【0050】
なお、ティシュペーパーのエンボス加工による凹部20の面積、凹部20と凸部21との高低差は、「ワンショット3D形状測定機 VR-3200(株式会社キーエンス社製)」(以下、「3Dマクロスコープ」ともいう)及びその相当機(非接触三次元測定器)を用いて測定する。「3Dマイクロスコープ」は、投光部より照射された構造化照明光により、モノクロC-MOSカメラに写し出された対象物の縞投影画像から形状を測定することができ、特に、得られた縞投影画像を使って、任意の部分の高さ、長さ、角度、体積、面積などを計測することができる。「3Dマイクロスコープ」により得られた画像の観察・測定・画像解析には、ソフトウェア「VR-H2A」及びその相当ソフトウェアを使用することができる。なお、測定条件は、視野面積24mm×18mm、倍率12倍の条件とする。また、ティシュペーパーの束が包装体内にポップアップ式で収納されたティシュペーパー製品について、測定する場合、ティシュペーパー束から取り出した試料について、その測定面は折りの山側がある面とする。
【0051】
凹部20と凸部21との高低差、隣接する凹部20と凸部21との高低差を測定する。この高低差は、線粗さ測定により求める。高低差は、まず、画像の各点の高さをカラー画像で表示し目視で凹部20、凸部21の位置を確認する。任意の凹部を選出しこの凹部と隣り合う複数の凹部との間にある凸部のうち、選出した凹部に対して最も高い位置にある凸部を選出する。次にその選出した凹部の底部と選出した凸部の頂部とを跨ぐように線分を引いて線分高さプロファイルを得る。この線分高さプロファイルの最高点と最低点の差異を高低差とする。ただし、シートのうねりを考慮して傾斜の補正を「自動補正」として補正後のプロファイル曲線より、高さプロファイルの最高点と最低点の差異からエンボス深さを求める。測定は使い始めの最外端から30%の位置での5点平均値をエンボス高低差の値とする。
【0052】
さらに、各表面における使用感の差が無いようにするため、本実施形態のティシュペーパーは、両表面における凹部20及び凸部21の配置が同様であるのが望ましい。ここで、特に表面性に関し、両表面のMMD(変動値)の差が0.5以下、好ましくは0.1~0.5であるのが望ましい。
【0053】
MMDの測定は次のように行う。摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。なお、MMDの測定には、予めコンタクトエンボス部やシワの部分を含めて測定しないようにする。
【0054】
他方、本実施形態のティシュペーパーは、3プライ以上、特に3プライ又は4プライの多プライ構造であるため、使用時に各プライ同士が分離しないように、プライ同士を圧着するプライ圧着加工をするのが特に望ましい。プライ圧着加工は、ナーリング加工、エッジエンボス加工などとも称される。特に、マルチユース性を考慮すると、製品形態としては、ポップアップ式の製品とするのが望ましく、係るポップアップ式の製品とするのであれば、エッジエンボス加工を行うのが特に望ましい。さらに、このエンジエンボス加工は、本実施形態のティシュペーパーに係る、坪量、紙厚、プライ数からして、従来既知の圧着部の幅よりも幅広に圧着加工部23を形成するのが望ましい。その幅L2は、エッジエンボス加工を行うか否かも含めて限定されないが、好ましくは3~7mm幅で圧着加工部23を形成するのが望ましい。使用時におけるプライ離れのおそれを各段に小さくできる。この圧着加工部23を形成するエンジエンボス加工は、
図5に示すように、薬液付与手段90による薬液付与後、エンボスロール40A,40Bによるスチールマッチエンボス加工の後、エッジエンボスロール50によって行うのが望ましい。
【0055】
本実施形態のティシュペーパーの製品形態は必ずしも限定されないが、折り畳み積層した束を収納箱に納めたり、フィルム包装したりするなどした、ポップアップ式の製品とするのが望ましい。本実施形態のティシュペーパーの作用効果が発揮されやすい。また、化粧や化粧落としがよく行われる鏡のある洗面所や化粧室等においては、ポップアップ式の製品が適することも理由である。すなわち、化粧や化粧落としの際、洗面所や化粧室等では、手を洗ってその濡れた手の拭き取りを行い、その後に物品に付着した水分等の拭き取りを行い、さらに顔の拭きとりを行う操作が行わることがある。このような場面では、濡れた手でティシュペーパーを取り出す必要があるため、ポップアップ式の製品が適する。また、このような場面では、「手拭き」や「物品の拭き取り」を主として、さらに「顔の拭き取り」を行うことがあり、マルチユース性が求められる。よって、本実施形態のティシュペーパーの製品形態は、ポップアップ式の製品とするのがよい。
【0056】
ここで、本実施形態のティシュペーパーの製品形態100についてさらに
図8~
図10に収納箱に納めた形態を参照して、詳述する。ティシュペーパー2の束1が収納される収納箱10は、カートン箱とも呼ばれる直六面体形状の箱体である。この収納箱10は、製品外観をなすものであり、上面10Uに取出口形成部である環状のミシン目線を有する紙箱10Aと、前記ミシン目線により囲まれる範囲を紙箱内側から覆う樹脂製フィルム26とを有する。
【0057】
収納箱10に束として収納されているティシュペーパー2は、前記ミシン目線で囲まれる範囲を切剥がして露出するスリット24を介して取出口25から一枚ずつ取り出される。そして、当該スリット24によって、取出口25から露出されるティシュペーパーの一部2tが支持されてカートン箱内部に落ち込むことが防止されるようになっている。
【0058】
ティシュペーパー2の束1は、ティシュペーパー2が折り畳まれ、積層されてなるものである。より具体的には、
図10からも理解されるように、方形のティシュペーパー2が実質的に二つ折りされ、その折り返し片の縁2eが上下に隣接するティシュペーパーの折り返し内面に位置するようにして、互い違いに重なり合いつつ積層されている。なお、ここで実質的にとは、製造上の形成される縁部の若干の折り返しを許容する意味である。
【0059】
本積層構造のティシュペーパー2の束1は、最上位に位置する一枚の折り返し片を上方に引き上げると、その直下で隣接する他の一枚の折り返し片が、摩擦により上方に引きずられて持ち上げられる。そして、かかる構造のティシュペーパー2の束1は、その最上面が上述の上面10Uに取出口25等を有する収納箱10の当該上面に向かいあって収納され、前記取出口25、特にスリット24から最初の一枚(最上面に位置する一枚)が引き出されたときに、その直近下方に位置する他の一枚の一部が露出される。なお、本発明のおけるティシュペーパー2の積層枚数が限定されないが、この種の製品の一般的な積層枚数を例示すれば、120~240枚である。
【0060】
この束1の折り畳み加工を行うインターフォルダは、マルチスタンド式、スタンド式、折板式とも称される折板によって折り加工を行う設備であってもよいし、ロータリー式とも称される一対のフォールディングロールで折り加工を行う設備であってもよい。実施の形態では、ロータリー式のインターフォルダが望ましく採用される。3プライ以上の多プライ構造のティシュペーパー製品の場合、積層数が多く各層のずれが発生しやすくなるが、ロータリー式のインターフォルダは、連続シートに加わる張力が他の設備に比して弱いことなどから、各層のずれが発生しがたく、折り品質も良好としやすい。よって、特に加工時に「厚み感」が低下することが少ない。なお、ロータリー式のインターフォルダで折り畳み加工を行うと縦方向(MD)方向が引き出し方向となる。したがって、ロータリー式のインターフォルダで折り畳み加工がされた製品を濡れた手で引き出す場合、縦方向の湿潤引張強度が重要となるが、本実施形態のティシュペーパーであれば十分なものとすることができる。
【0061】
[ティシュペーパーの製造方法例]
さらに、本実施形態に係るティシュペーパー、及び、このティシュペーパーを束にして包装体内に収納したティシュペーパーした製品の、好ましい製造方法を、特に
図15~
図24を参照しながら説明する。
【0062】
まず、
図15に示す抄紙設備例Xにより、一次原反ロールJR(ジャンボロールとも称される)を以下のようにして製造する。
【0063】
ヘッドボックス31からパルプスラリーに適宜の薬品を添加して予め調整した紙料をワイヤーパート32のワイヤ32w上に供給して湿紙SWを形成し(フォーミング工程)、次にこの湿紙SWをプレスパート33のフェルト33Fに移送したに後、対をなす脱水ロール34、35によって挟持して脱水する(脱水工程)。
【0064】
次いで、脱水された湿紙をヤンキードライヤー36の表面に付着させて乾燥させた後にドクターブレード37によって掻き剥がしてクレープを有する乾燥原紙P1(後述の一次連続シート)とする(クレープ加工・乾燥工程)。
【0065】
そして、この乾燥原紙P1をワインディングドラム39を有する巻取り手段38によって、前記乾燥原紙P1の裏面が一次原反ロールJRの軸側に対向するようして(巻き取り内面となるようにして)巻き取り、一次原反ロールJRとする(一次原反巻取り工程)。
【0066】
この一次原反ロールJRは、抄紙設備Xの性能によっても相違するが、概ね直径が1000~5000mm、長さ(幅)が1500~9200mm、巻き長さが5000~80000mである。
【0067】
なお、一次原反巻き取り工程の前段にドクターブレード37により掻き剥がした乾燥原紙P1に対してカレンダー工程(図示せず)を設け表裏面の平滑化処理をしてもよい。
【0068】
ここで、乾燥原紙P1の裏面とは、ヤンキードライヤー36のシリンダと接していた面の反対側の面のことを意味する。なお、カレンダー工程の有無にもよるが一般には鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面のほうが滑らかで表面性に優れる。
先に説明したように、少なくとも積層シートの外側層の外側面(露出面)は、鏡面のヤンキードライヤーに接していた表面(滑らかで表面性に優れる)とし、この滑らかで表面性に優れる面に対して保湿剤を塗布するのがよい。これによって、外側層の外側面(露出面)を、滑らかにすることができる。その結果、積層シートは、消費者に滑らかで柔らかい使用感を与える。
【0069】
一次連続シートP1は、クレープ率が10~30%、好ましくは12~25%、より好ましくは13~20%である。クレープ率が10%未満であると、後段の加工時に断紙しやすいとともに伸びの少ないコシのないティシュペーパー2となる。他方、クレープ率が30%超過であると、加工時のシートの張力コントロールが難しく断紙しやすくなり、また、製造後には保湿剤の吸湿も相まって、シワが発生して見栄えの悪いティシュペーパー2となりやすくなる。
【0070】
抄紙工程で製造された一次原反ロールJRを三つ(4プライの場合四つ)、インターフォルダにセットし、各々の一次原反ロールから単層の連続シートを繰り出して、例えば後述する塗布形態によって保湿剤を塗布する。
【0071】
3プライの場合には、単層の連続シートにそれぞれ保湿剤を塗布する、あるいは単層の連続シートを2層に重ね合わせた後、その2層の両面から保湿剤を塗布する、他の層については単層で保湿剤を塗布する。4プライの場合には、単層の連続シートにそれぞれ保湿剤を塗布する、あるいは単層の連続シートを2層に重ね合わせた後、その2層の両面から保湿剤を塗布する、同様に他の単層の連続シートを2層に重ね合わせた後、その2層の両面から保湿剤を塗布することができる。
【0072】
保湿剤の塗布後、他積層連続シートにカレンダー加工することができる。カレンダーの種別は、特に限定されないが、表面の平滑性向上と紙厚の調整の理由からソフトカレンダー又はチルドカレンダーとすることが好ましい。ソフトカレンダーとは、ウレタンゴム等の弾性材を被覆したロールを用いたカレンダーであり、チルドカレンダーとは金属ロールからなるカレンダーのことである。
【0073】
カレンダー部の数は、適宜変更することができる。複数設置すれば加工速度が速くとも十分に平滑化できるという利点を有する一方、一つであるとスペースが狭くとも設置可能であるという利点を有する。カレンダー加工におけるカレンダー種別、ニップ線圧、ニップ数なども制御要因として抄紙を行うようにし、これらの制御要因は、求めるティシュペーパーの品質すなわち紙厚や表面性によって適宜変更することが好ましい。
【0074】
その後に
図6にも示すとおり、スチールマッチエンボス加工を行う。積層シートの一体化を図られるとともに、意匠性が高まるとともに、実施形態の作用効果が発現する。
【0075】
保湿薬液の塗布工程、スチールマッチエンボス加工工程に連続して、折り畳み工程が設けられる。この折り畳み工程においては、得られた積層シートが、順次、公知のロータリーインターフォルダ(図示せず)とも称される折畳み設備などにおいて、積層シートの谷折り部分に対して、先行する積層シートの片側、及び後行する積層シートの片側が挿入される形態で折り畳まれ、束として積層される。
【0076】
積層シートの束は、所定長さごと短い束に切断され、この短い積層シートの束が、収容した包装体(紙製包装箱、プラスチック包装袋など)に収納され、使用時に、その包装体からポップアップ方式で積層シートを順次包装体から取り出せるようにしたものである。
【0077】
保湿薬液の塗布形態は、フレキソ印刷機、グラビア印刷機等のロール転写装置、スプレー塗布装置などにより行うことができる。
【0078】
吸湿性を示すグリセリンを主成分とする水系の保湿薬液を塗布する場合には、そして高速で走行するシートに対して塗布する場合には、フレキソ印刷方式又はスプレー塗布が特に好ましい。
【0079】
薬液塗布をフレキソ印刷方式によって行なえば、刷版ロール(転写ロール)が樹脂製であり加工速度が高速であってもクレープ紙の凹凸に対応し塗布量を安定させることができるという利点や、アニロックスロールの線数やセル容量、フレキソ刷版ロールの線数や頂点面積率を変えることで、容易に幅広い薬液の粘度に対応し塗布量を安定させることができるなどの利点がある。
【0080】
なお、薬液塗布工程における薬液塗布は、特にドクターチャンバーを用いたフレキソ印刷方式とすることが好ましい。ドクターチャンバー方式は、アニロックスロール(転写用凹ロール)の表面に直接、薬液を塗工し皮膜を作るもので、薬液に紙粉やエアーが混入しにくく薬液の物性が安定しやすい特徴があり、且つ、アニロックスロールから転写される薬液が均一であるため、低量塗布の場合であっても好適に塗布することができる。
【0081】
薬液塗布工程において、薬液付与手段90としてフレキソ印刷機を用いた例は図示した。積層連続シートに薬液を付与する場合、フレキソ刷版ロールは、その材質としてシリコンゴムであるのが特に望ましい。フレキソ刷版ロールの線数は10~60線、好ましくは15~40線、特に好ましくは20~35線である。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が60線超過であると紙粉が詰まり易くなる。
【0082】
アニロックスロールの線数は、10~300線とし、好ましくは25~200線、特に好ましくは50~100線とする。線数が10線未満であると塗布ムラが多く生じてしまい、他方、線数が300線超過であると紙粉が詰まり易くなる。アニロックスロールのセル容量は、10~100ccとし、好ましくは15~70cc、特に好ましくは30~60ccとする。セル容量が10cc未満であると所望の塗布量が得られず、他方、セル容量が100cc超過であると薬液の飛散量が多くなってしまう。
【0083】
ここで、薬液付与工程において安定的に薬液が付与できることが重要であり、操業安定性に関わる上記刷版ロール及びアニロックロールの線数は重要である。なお、貯留タンクに貯留した薬液をアニロックスロールへ薬液を移行させる方式としては、ドクターチャンバー形式、タッチロール形式など適宜の方法が採られる。これらのフレキソ印刷の各方式を採用した形態例を詳述する
【0084】
フキレソ印刷におけるドクターチャンバー形式のフレキソ印刷機90は、薬液の入っているドクターチャンバー92が回転可能なアニロックスロール93と対向して配置されおり、ドクターチャンバー92からアニロックスロール93に薬液を受け渡すようになっている。また、このアニロックスロール93と接しかつシートP1又はP2と接する刷版(転写)ロール94が回転可能に設置されていて、このアニロックスロール93から刷版ロール94に薬液を受け渡すようになっている。そして、シートP1又はP2を挟んでこの刷版ロール94と対向する弾性ロール95との間で圧力を付与しつつ、刷版ロール94から積層連続シートに薬液を塗布する。後述するように、弾性ロール95を使用する場合と、これを使用してないで、刷版(転写)ロール94を対向させてそれらの間に圧力を付与しつつ、刷版ロール95から積層連続シートに薬液を塗布することもできる。
【0085】
保湿剤の塗布量の制御には、刷版ロール94に対するアニロックスロール93の周速差の度合いに基づき実施するのが、運転過程で保湿剤の塗布量の制御を行うことができるので、適した例である。
【0086】
<第1の保湿剤塗布形態>
保湿剤塗布形態には種々の形態を採用することができる。
図16は、3プライの保湿剤塗布形態を示したもので、3つの一次原反ロールから繰り出された単層シートは、途中で2層に合流した2層シートP2と、そのままの単層シートP1とが、3つのフレキソ印刷機90をもつ塗布装置に供給される。2層シートP2の各外側面に薬液が塗布される。単層シートP1の外側面にも薬液が塗布される。2層シートP2と単層シートP1とは合流部50で合流され3層の積層シートP3とされる。その後は、前述のように、スチールマッチエンボス加工を経て、インターフォルダに導かれる。
【0087】
図17は、他の3プライの保湿剤塗布形態を示したもので、3つの一次原反ロールから繰り出された単層シートは、途中で3層シートに合流し、分離部51において、2層シートP2と、単層シートP1とに分離され、3つのフレキソ印刷機90をもつ塗布装置に供給される。2層シートP2の各外側面に薬液が塗布される。その後、合流部50で単層シートP1と合流して3層シートとされ、その後、他のフレキソ印刷機90により単層シートP1の外側面にも薬液が塗布され、3層の積層シートP3とされる。
【0088】
図18は、4プライの保湿剤塗布形態を示したもので、4つの一次原反ロールから繰り出された2枚の単層シートは、途中で2層シートとして合流し、2層シートP2の各外側面に薬液が塗布される。同様に、他の2枚の単層シートは、途中で2層シートとして合流し、2層シートP2の各外側面に薬液が塗布される。その後、合流部50で2層シートP2相互が合流して4層の積層シートP4とされる。
【0089】
<第2の保湿剤塗布形態>
吸湿性を示すグリセリンを主成分とする水系の保湿剤(薬液)塗布したシートは、伸びを生じ、また強度が低下する傾向がある。この塗布を特に高速が行う場合には、前記の第1の保湿剤塗布形態では、各塗布位置の間でシートが何にも拘束されない、いわゆるフリーラン部分が存在する。その結果、水系の保湿剤(薬液)塗布したシートは、伸びを生じ、また強度が低下して断紙することが生じる。これに対して、第2の保湿剤塗布形態、すなわち、少なくとも各々のシートは、それぞれの薬液塗布位置から3プライの積層位置までの行程において、シートと同速度で走行するロールに接している塗布形態とするのが望ましい。
【0090】
図19は、3プライの第2の保湿剤塗布形態例を示したもので、各フレキソ印刷機90は、第1の保湿剤塗布形態例のように、弾性ロール95を設けていない。替わりに、第1フレキソ印刷機90Aの刷版(転写)ロール94と、第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成し、第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94と、第3フレキソ印刷機90Cの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成している。2層のシートP2は両面から、第1フレキソ印刷機90A、第2フレキソ印刷機90Bにより薬液が塗布され、その後に、単層シートP1の外面に第3フレキソ印刷機90Cにより薬液が塗布される。
【0091】
図20は4プライの第2の保湿剤塗布形態例を示したものである。図示するように、第1フレキソ印刷機90Aの刷版(転写)ロール94と、第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成し、第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94と、第3フレキソ印刷機90Cの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成し、第3フレキソ印刷機90Cの刷版(転写)ロール94と、第4フレキソ印刷機90Dの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成している。2層のシートP2は両面から、第1フレキソ印刷機90A、第2フレキソ印刷機90Bにより薬液が塗布され、他方で、他方の2層のシートP2は両面から、第4フレキソ印刷機90D、第3フレキソ印刷機90Cにより薬液が塗布され、合流して4層のP4とされる。
【0092】
図21は、4プライの他の第2の保湿剤塗布形態例を示したものである。図示するように、第1フレキソ印刷機90Aの刷版(転写)ロール94と、第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成し;第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94と、第4フレキソ印刷機90Dの刷版(転写)ロール94とでシートをニップすするように構成し;第2フレキソ印刷機90Bの刷版(転写)ロール94と第3フレキソ印刷機90Cの刷版(転写)ロール94とでシートをニップするように構成している。これらのニップ位置において、2層シートP2の両面、中間シートとなる単層シートP1、外層シートとなる単層シートP1にそれぞれ薬液が塗布される。
【0093】
<第3の保湿剤塗布形態>
第3の保湿剤塗布形態としてスプレー塗布も可能である。スプレー塗布は、具体的にはノズル式噴霧方式、ローターダンプニング噴霧方式等を採用することができる。ノズル式噴霧方式における噴霧用ノズルの型式としては、環状に噴霧する空円錐型ノズル、円形状に噴霧する充円錐型ノズル、正方形状に噴霧する充角錐型、充矩型ノズル、扇型ノズル等が挙げられ、薬液が二次連続シートの幅方向に対して均一に噴霧されるように、ノズル径、ノズル数、ノズル配列パターン、ノズル配置数、あるいは噴霧距離、噴霧圧力、噴霧角度、および噴霧液の濃度、粘度などを適宜選択して使用することができる。
【0094】
また、ノズル式噴霧装置において霧化する方法については、一流体方式、または二流体方式の2種類の方式を選択して使用することができる。このうち一流体噴霧方式は、噴霧する薬液に対して圧搾空気を用いて直接圧力をかけてノズルから霧滴噴射する、または噴出口付近のノズル側面に開けた微細な穴からノズル内に空気を吸引して霧滴噴射する方式である。また、二流体噴霧方式は、ノズル内部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する内部混合型、ノズル外部で圧搾空気を噴霧する液体と混合、微粒化する外部混合型、微霧化した霧滴粒子を相互に衝突させて、霧滴粒子をさらに均質化・微粒子化する衝突型等の方式が挙げられる。
【0095】
他方、ローターダンプニング噴霧方式については、高速回転する円盤上に噴霧する液を送り出し、円盤の遠心力によって液を微霧滴化するのであり、円盤の回転数変更によって霧滴粒子径の制御を行い、円盤上への送液量変更によって噴霧液量(付与量)の制御を行なう。ものである。ローターダンプニング塗布装置は、少ない量の噴霧液量を霧滴の飛散を抑えつつ、顔料塗被紙表面に均一に塗布することができ、かつ噴霧速度や霧の粒子径等の調整が容易である利点がある。
【0096】
図22は、ローターダンプニング噴霧装置200の例である。これは必要により設けられる覆い収納室(図示せず)内に、回転ローター200Aを設け、回転ローターの噴出口200Bから薬液を積層連続シートに噴霧付与するようにしたものである。ローターダンプニング噴霧装置200を使用して3プライの積層シートを得る態様を
図23及び
図24に示した。さらに詳しく説明するまでもなく、塗布形態は直ちに分かるであろう。
【実施例0097】
実施の形態のティシュペーパー及び比較例のティシュペーパーに係る試料を作成し、官能試験の欄の各項目について評価項目として、下記官能試験を行なった。比較例1~比較例3は、非保湿ティシューである。比較例4及び比較例5は、保湿薬液を付与した保湿ティシューである。各試料の物性値・組成値等は、下記のとおり測定した。各試料の物性値・組成値及び試験結果は、表1に示されるとおりである。坪量、紙厚、乾燥引張強度、湿潤引張強度、柔軟度、MMD、凹部の面積、高低差の測定方法は、上記のとおりである。
【0098】
各例におけるエンボス加工は、すべて同じエンボスロールによって行った。よって、凹凸の形成配置は、全て同様である。エンボス加工は、スチールマッチエンボス加工である。なお、実施例におけるティシュペーパーの凹部は、面積は1.65mm2超2.80mm2未満、エンボス加工による凹部又は凸部の個数は、一方面1cm2あたり15~17個、凹部と凸部との高低差は各表面ともに、0.13mm超0.35mm未満、一方面における凹部の総面積率は、25%以上に調整した。比較例については、一部の数値が異なるものがある。
【0099】
〔官能試験〕
20名の評価者によって、評点1~評点5段階の評点の平均値である。官能評価試験は、各例に係る試料(ティシュペーパー)を洗面所に置き、被験者が、水に手を濡らしたり、顔周りに当てたり、肌、物の水に濡れた部位を拭き取る等の操作を自由に行い、「柔らかさ」、「しっかり感」、「手の間の拭き取り易さ」の項目について評点する方法で行った。評点は高いほど評価が高い。
【0100】
【表1】
上記結果によれば、実施例1~実施例8は、総合評価が比較例と比して、高い評価となっている。特に「柔らかさ」と「しっかり感」と「手の間の拭き取りやすさ」の評価がバランスよく高くなっており、「手拭き」、「物品の拭き取り」用途に適しつつ、「顔拭き」にも不満なく使用できるといえ、マルチユースに対応できる。特に、実施例2~実施例7の範囲の評価が高い。非保湿の比較例1~比較例2は、4プライの多プライであるが坪量が低い。比較例3は、坪量が本発明と同程度で3プライとなっているが、乾燥引張強度が過度に高い。比較例1~比較例2は、「手の間の拭き取りやすさ」の評価は十分であるが、「柔らかさ」と「しっかり感」が十分ではない。特に「しっかり感」が十分ではない。他方で比較例3は、「しっかり感」は十分であるが「柔らかさ」が十分ではない。つまり、比較例1~比較例3は、「手拭き」用途に適しながらマルチユースに対応できていない。他方で、比較例4及び比較例5は、保湿ティシューであるが、「柔らかさ」は十分であるが「しっかり感」が十分に発現されていない。つまり、「顔拭き」等には適するが「手拭き」や「物品の拭き取り」には不十分であり、マルチユースに適していない。
以上のことから、本発明によれば、「しっかり感」に優れ、強度も十分であり、「手拭き」用途に適しつつ、顔の拭き取りにも十分な「柔らかさ」もあって、マルチユースにも使用しやすいティシュペーパーが提供される。
2…ティシュペーパー、1…束、10…収納箱、10U…上面、S1~S4…シート(プライ)、A1~A3…原反ロール、S…被加工原紙、24…スリット、25…取出口、20…凹部、20B…底部、21…凸部、21t…頂部、22…斜面部分、40A、40B…エンボスロール、L…仮想線、∠α…仮想線Lと紙の縦方向との角度、23…圧着加工部、L2…圧着加工部の幅、50…エッジエンボスロール、100…ティシュペーパー製品。90…薬液塗布手段、200…ローターダンプニング噴霧装置、F…塗布面、P1~P4…シート(プライ)、W…非塗布面。