(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072266
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】タイヤシーラント
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240520BHJP
C09K 3/12 20060101ALI20240520BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C09K3/10 A
C09K3/10 C
C09K3/12
B60C1/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191317
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】17/987,573
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】ハーファ カヤ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイド ウォーレン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン シュピンドラー
【テーマコード(参考)】
3D131
4H017
【Fターム(参考)】
3D131AA28
3D131BC23
3D131LA13
4H017AA02
4H017AC07
4H017AD06
4H017AE01
(57)【要約】
【課題】 高い安定性、良好な加工性、及び安全な活用を特徴とする、環境に優しい又は環境に与える害が少ない効果的なタイヤシーラントを提供する。
【解決手段】 本発明のタイヤシーラントは、およそ5重量%~およそ50重量%の生物由来の脂肪族ジオールと、およそ5重量%~およそ70重量%の天然ゴムラテックスと、およそ0.001重量%~およそ10重量%のタイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての水溶性ポリマーとを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤシーラントであって、
およそ5重量%~およそ50重量%の生物由来の脂肪族ジオールと、
およそ5重量%~およそ70重量%のゴムラテックスと、
およそ0.001重量%~およそ10重量%の、前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての水溶性ポリマーと、
を含む、タイヤシーラント。
【請求項2】
前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する前記水溶性ポリマーは、凍結防止剤として機能する前記生物由来の脂肪族ジオールとは異なり、前記タイヤシーラントの凍結点をその濃度とは不釣り合いに低減するように構成される、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項3】
前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する前記水溶性ポリマーは、部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコール及び/又は少なくとも1種のポリビニルアルコールオリゴマーを含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項4】
前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する前記水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、その誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ポリホスフェート、特に低分子量を有するポリグリセリン、ヒドロキシエチルデンプン、ポリアミド、特にポリ-L-ヒドロキシプロリン、及び親水性多糖類又はスクロースエピクロロヒドリンコポリマーの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項5】
前記生物由来の脂肪族ジオールは、1,3-プロパンジオール及び/又はその組合せ、及び/又はエチレングリコール及び/又はその組合せ、及び/又はエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール及び/又はグリセロールを含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項6】
前記タイヤシーラントは、およそ2重量%~およそ70重量%の合成ゴムラテックスを更に含み、ここで、前記合成ゴムラテックスは、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴム、及びそれらのカルボキシル化物の少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項7】
前記タイヤシーラントは、好ましくはおよそ20重量%からおよそ70重量%の間、より好ましくはおよそ40重量%からおよそ50重量%の間の乾燥ゴムを含むカルボキシル化されたスチレンブタジエンゴム分散液を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項8】
前記タイヤシーラントは、およそ2.5重量%からおよそ10重量%の間の乾燥ゴム含有量を有する、請求項7に記載のタイヤシーラント。
【請求項9】
前記タイヤシーラントは、およそ2重量%~およそ30重量%の追加の水を更に含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項10】
前記タイヤシーラントは、およそ5重量%までの少なくとも1種の界面活性剤を更に含み、ここで、前記少なくとも1種の界面活性剤は、好ましくは、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン樹脂エステル、脂肪アルコールエトキシレート、及び脂肪アルコールポリグリコールエーテルの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項11】
前記タイヤシーラントは、およそ15重量%までの粘着付与剤を更に含み、ここで、前記粘着付与剤は、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペンフェノール樹脂、コロホニウム樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルエステル、ポリビニルアルコール、及びポリビニルピロリドンの少なくとも1種を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項12】
前記粘着付与剤は、およそ40重量%からおよそ70重量%の間の乾燥含有量、より好ましくはおよそ50重量%からおよそ60重量%の間の乾燥含有量を有する樹脂ベースの樹脂エマルジョンを含む、請求項11に記載のタイヤシーラント。
【請求項13】
前記タイヤシーラントは、およそ0.1重量%~およそ5重量%の充填剤及び/又は繊維を更に含み、ここで、前記充填剤は、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸バリウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群から選択され、及び/又は前記タイヤシーラントは、以下:劣化防止剤、酸化防止剤、顔料、可塑剤、チキソトロピー剤、UV吸収剤、難燃剤、分散剤、脱水剤、帯電防止剤、及びゲル化剤の少なくとも1種を更に含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項14】
前記タイヤシーラントは、
およそ15重量%~およそ50重量%のエチレングリコールと、およそ0.001重量%~およそ10重量%の、前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む、又は、
およそ15重量%~およそ50重量%のプロピレングリコールと、およそ0.001重量%~およそ10重量%の、前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む、又は、
およそ5重量%~およそ25重量%の1,3-プロパンジオールと、およそ0.001重量%~およそ10重量%の、前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む、又は、
およそ15重量%~およそ50重量%のグリセロールと、およそ0.001重量%~およそ10重量%の、前記タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項15】
前記タイヤシーラントは、
およそ25重量%~およそ40重量%、好ましくはおよそ30重量%~およそ34重量%、更により好ましくはおよそ31重量%~およそ33重量%の特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及び/又は1,3-プロパンジオールと、
およそ0.001重量%~およそ0.2重量%、特におよそ0.05重量%~およそ0.1重量%、好ましくはおよそ0.07重量%~およそ0.08重量%のポリビニルアルコールと、
およそ23重量%~およそ30重量%、好ましくはおよそ25重量%~およそ29重量%の追加の水と、
およそ25重量%~およそ35重量%、好ましくはおよそ25重量%~およそ32重量%のゴム、特にゴム分散液と、
を含む、請求項1に記載のタイヤシーラント。
【請求項16】
少なくとも1種の添加剤を更に含む、請求項15に記載のタイヤシーラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い安定性、良好な加工性、及び安全な活用を特徴とする、環境に優しい又は環境に与える害が少ない効果的なタイヤシーラントに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空気入りタイヤの場合に、これらは尖った物体に乗り上げると損傷を受けて(運が良ければ徐々に)タイヤの空気圧を失うことにつながるという問題がある。車両用空気入りタイヤを交換することができるまでの期間、そのような損傷を可能な限り安全に密封するのにタイヤシーラントが知られており、これらは必要に応じて、特にタイヤのエアバルブを介して車両用空気入りタイヤに注入される。
【0003】
一方、自己密封式に構成された車両用空気入りタイヤが、例えば特許文献1から知られている。この場合、標準的なタイヤ設計にシーラント層が後付けされている。自己密封性シーラントは自己接着性の粘性のシーリングコンパウンドであり、これはベルトパッケージの半径方向内側の投影領域から半径方向の最も内側のタイヤ層、つまり主として気密な内層上に層として塗布される。このシーラント層は5mmまでの直径のパンクを自己密封することができる。パンクが走行ストリップを貫いて内層まで達した後、シーラントは入り込んだ異物を完全に包み込み、内部空間を環境に対して密封するため、タイヤから圧縮空気が失われるのを防ぐ。車両の運転者は、破損したタイヤを直ちに本格的なスペアタイヤ又は応急用ホイールと交換することを強いられない。
【0004】
しかしながら、本発明は、必要に応じてタイヤの空気入口を介してタイヤ内に注入されるタイヤシーラントに関する。このようなタイヤシーラントは、タイヤ内のゴム粒子を凝集させ、それによって穴を塞ぎ、走行の継続を可能にする。
【0005】
このようなタイヤシーラントは、例えば特許文献2から知られている。この従来技術は、当業者に凍結防止剤であるグリコール含有量を増加させるよう教示している。しかしながら、ラテックス含有量は低い。ラテックス含有量は相対的に減少するため密封性能が低下する。
【0006】
別のタイヤシーラントは特許文献3から知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許出願公開第102006059286号
【特許文献2】日本国特許第4553712号
【特許文献3】日本国特許第7028042号
【発明の概要】
【0008】
従来のタイヤシーラントには、プロピレングリコール、グリセロール、又はエチレングリコール等の凍結防止剤が含まれている。凍結防止剤は、低温でのタイヤシーラントの粘度を決定するため重要な成分である。タイヤシーラントがタイヤ及びパンク穴に容易に入ることができるには、零下温度での低い粘度が重要である。
【0009】
既知の凍結防止剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセロールだけでなく、グリセロールを含む又は含まない酢酸カリウムの溶液、トリメチルグリシン、ジメチルスルホキシド、並びにそれらの誘導体及び組合せも挙げられる。
【0010】
エチレングリコールは、その低い粘度及び優れた凍結挙動のため、零下温度で使用されることが多い。
【0011】
しかしながら、エチレングリコールは有毒である。より厳格な規制により、タイヤシーラントにおけるエチレングリコールの使用は急速に減っている。その高級同族体であるプロピレングリコールはより環境に優しく、一部のタイヤシーラントではエチレングリコールに取って代わっている。しかしながら、プロピレングリコールはエチレングリコールよりも粘性が高いため、プロピレングリコールベースのタイヤシーラントは、零下温度でエチレングリコールベースのタイヤシーラントよりも高い粘度を有する。プロピレングリコールベースのタイヤシーラントに十分な水を添加するとその粘度は下がるが、タイヤシーラントの凍結温度が上昇するため、その使用温度が限定される。
【0012】
水に対するプロピレングリコールの割合を増やすと、タイヤシーラントの凍結温度が下がるが、より高い粘度のおかげで、使用可能なゴムの量が減少し、今度はタイヤシーラントの密封性能が損なわれる。
【0013】
繊維及び超微細充填剤を使用すると、パンク穴を密封するのに用いられる凝固の強さは増加するが、プロピレングリコールによって引き起こされるより高い粘度と比較して、タイヤシーラントの粘度が増加する。
【0014】
一部のタイヤシーラントでは、エチレングリコール及びプロピレングリコールの組合せを使用して、タイヤシーラントがパンクした箇所へとより容易に排出される助けとなるように、適切な粘度と使用温度との間の平衡を達成している。
【0015】
高性能で環境に優しいタイヤシーラント組成物には、タイヤシーラントがパンク穴に容易に導入され、-40℃までの温度で自由流動性を維持し、厳格な法的要件を満たし、最小限のシーラントの量で高い密封力をもってパンク穴の密封をもたらし得ることが望ましい。したがって、注入が容易であり、-40℃までの温度で容易にパンク穴に注入することができ、高い密封強さを有する、改善された高性能かつ環境に優しいタイヤシーラントが求められている。
【0016】
特に、環境上の理由から、最適な密封作用及び最適な冷間貯蔵可能性及び冷間使用可能性を確保しつつタイヤシーラント中の凍結防止剤の割合を減らすべきである。凍結防止剤の割合の減少にもかかわらず、低温(特に-30℃~-40℃まで)でもタイヤシーラントの低い粘度が与えられるべきである。
【0017】
特に、高い安定性、良好な加工性、及び安全な活用を特徴とする、環境に優しい又は環境に与える害が少ない効果的なタイヤシーラントを提供することが望ましい。
【0018】
本発明の基礎をなすこの課題は、本発明に従って独立形式請求項1に記載のタイヤシーラントによって解決され、ここで、本発明によるタイヤシーラントの有利な更なる発展形態は従属形式請求項において明記されている。
【0019】
したがって、本発明によるタイヤシーラントは特に、およそ5重量%からおよそ50重量%の間の特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオールと、およそ5重量%からおよそ70重量%の間のゴムラテックス、特に天然ゴムラテックスと、およそ0.001重量%からおよそ10重量%の間のタイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤としての水溶性ポリマーとを含む。
【0020】
本発明によるタイヤシーラントは、-40℃まで又はそれを下回る温度で使用可能であり、かつ様々な従来のタイヤシーラントよりも低い粘度を有する、高性能な、特に環境に優しいタイヤシーラント組成物である。
【0021】
特に、本発明によるタイヤシーラントは、限定されるものではないが、欧州REACH規則(化学品の規制、認可及び制限(Regulation, Authorization and Restriction of Chemicals))、カリフォルニア州プロポジション65規則、カナダWHMIS(作業場危険有害性物質情報システム(Workplace Hazardous Materials Information System))、米国TSCA(有害物質規制法(Toxic Substance Control Act))、及びCPSC(消費者製品安全委員会(Consumer Product Safety Commission))の規則、香港のCLP規則、GADSL規則(世界自動車要申告物質リスト(Global Automotive Declarable Substance List))、及び自動車OEMの制限化学物質規則(Auto OEM Restrict-ed Chemicals List regulations)を含む様々な環境基準に対応する。
【0022】
タイヤシーラント組成物中に存在する水溶性ポリマーは、タイヤシーラントの凍結点に効果的に影響を与えることができ、その結果、凍結防止剤の割合、特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオールの割合を、従来のタイヤシーラント組成物と比較して大幅に減らすことができる。したがって、水溶性ポリマーは、タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する。この水溶性ポリマーは、特に、凍結防止剤又は脂肪族ジオール、特にタイヤシーラントのグリコールと混合された氷成長抑制性添加剤である。
【0023】
タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する水溶性ポリマーは、特に、凍結防止剤として機能する特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオールとは異なり、タイヤシーラントの凍結点をその濃度とは不釣り合いに低減するように構成される。
【0024】
言い換えれば、少量、特におよそ0.001重量%~およそ10重量%の水溶性ポリマーであっても、凍結防止剤によって可能となるよりもタイヤシーラントの凍結点に大幅により効果的に影響を与え、又はタイヤシーラントの凍結点を大幅により効果的に低下させる。
【0025】
したがって、タイヤシーラントの凍結点を調整する及び/又は凍結点に影響を与える添加剤として機能する水溶性ポリマーは、「凍結防止」添加剤と見なされる。
【0026】
エチレングリコール等の従来使用される凍結防止剤とは異なり、「凍結防止」添加剤は、タイヤシーラントの凍結点をその濃度とは不釣り合いに低減する。この理由から、この添加剤は300分の1~500分の1の濃度で早くも効果を発揮する。
【0027】
「凍結防止」添加剤のこの並外れた特性は、これが最小の氷結晶の表面に不可逆的に結合する能力に起因すると考えられる。過冷却された水又はタイヤシーラントにおいては、結晶が成長し続けることとなるが、氷は2つの隣接した「凍結防止」ポリマーの間から押し出されざるを得ないため湾曲表面を呈することが余儀なくされる。高度に湾曲した表面により氷水滴内部の圧力が増加し、凍結点の低下が引き起こされる(ギブス-トムソン効果)。
【0028】
特に、本発明は、脂肪族ジオールの割合及び水溶性ポリマーの割合を-40℃以下の凍結温度を達成するように選択した上述のタイヤシーラントに関する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
好ましい実施形態の説明
本発明によるタイヤシーラントの実施形態によれば、「凍結防止」添加剤は、特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコール及び/又は少なくとも1種のポリビニルアルコールオリゴマーを含む。
【0030】
当然ながら、他の凍結防止ポリマーも同様に可能である。これに関して、ポリエチレングリコール(PEG)又はその誘導体を用いても良好な結果が得られている。ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾリン、ポリホスフェート、特に低分子量を有するポリグリセリン、ヒドロキシエチルデンプン、ポリアミド、特にポリ-L-ヒドロキシプロリン及び/又は親水性多糖類、特にスクロースエピクロロヒドリンコポリマーに換えた解釈においても同じことが当てはまる。
【0031】
凍結防止剤として機能する特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオールには、好ましくは、1,3-プロパンジオール及び/又はその組合せ、及び/又はエチレングリコール及び/又はプロピレングリコール及び/又はグリセロールが考慮される。
【0032】
特に好ましくは生物由来の脂肪族ジオールは、タイヤシーラント中に特に50重量%未満、好ましくは45重量%未満の量で含まれ得る。上記説明のように、適切な脂肪族ジオールは、プロパン-1,3-ジオール及びその組合せ、特に1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、及びそれらの組合せを含み、ここで、1,3-プロパンジオールが特に適している。実施形態によれば、プロパン-1,3-ジオール等の好ましくは生物由来の脂肪族ジオールがタイヤシーラント中の唯一の凍結防止剤である。
【0033】
タイヤシーラントは、メチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、グリコールエーテル、酢酸カリウム、トリメチルグリシン、ジメチルスルホキシド、及び他の代替的な凍結防止剤を含み得ないか、又は実質的に含み得ない。「実質的に含まない」という用語は、凍結防止剤が少なくともおよそ95重量部の好ましくは生物由来の脂肪族ジオールと、およそ5重量%以下の別の凍結防止成分とを含むことを意味する。代替的な実施形態によれば、このような代替的な凍結防止剤を、好ましくは生物由来の脂肪族ジオールと組み合わせて使用することができる。
【0034】
ゴムラテックス、特に天然ゴムラテックスは、タイヤシーラント中におよそ5重量%~およそ70重量%で含まれ得る。ゴムラテックス、特に天然ゴムラテックスは、凝固剤を実質的に含み得ず、好ましくはおよそ400μm以下の平均粒度を有する。これは、ゴムラテックスを、メッシュスクリーンを通して濾過することで、高度に濾過されたゴムラテックスを製造することによって達成され得る。メッシュスクリーンは、およそ300μm~500μm、好ましくはおよそ400μmの孔を有し得る。特に、天然ゴムラテックスはまた生分解性であり得る。
【0035】
本発明によるタイヤシーラントの実施形態によれば、タイヤシーラントは、およそ2重量%からおよそ70重量%の間の合成ゴムラテックスを含む。合成ゴムラテックスは、好ましくは、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、クロロプレンゴム、ビニルピリジンゴム、ブチルゴム、及び/又はそれらのカルボキシル化物を含む。天然ゴムラテックスと同様に、合成ゴムラテックスは、ラテックスを形成するのに必要とされる量の水を含み得る。
【0036】
好ましくは、タイヤシーラントは、特におよそ20重量%からおよそ70重量%の間、より好ましくはおよそ40重量%からおよそ50重量%の間の乾燥ゴムを含むカルボキシル化されたスチレンブタジエンゴム分散液を含む。特に、タイヤシーラントは、およそ2.5重量%からおよそ10重量%の間の乾燥ゴム含有量を有し得る。
【0037】
タイヤシーラントは、好ましくは追加の水も含む。特に、タイヤシーラントは、およそ2重量%からおよそ30重量%の間、好ましくはおよそ2重量%からおよそ25重量%の間の追加の水を有する。この文脈において、「追加の水」とは、もはやゴムラテックス、特にゴムラテックス分散液の成分ではない水を意味する。
【0038】
さらに、タイヤシーラントは、およそ5%までの少なくとも1種の界面活性剤を含み得る。これは、特に、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、及び/又は両性界面活性剤であり得る。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレン樹脂エステル、脂肪アルコールエトキシレート、及び/又は脂肪アルコールポリグリコールエーテルが界面活性剤として考慮される。
【0039】
代替的に又は追加的に、タイヤシーラントは、およそ0.1重量%~およそ5重量%の充填剤及び/又は繊維を更に含み得る。充填剤は、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸バリウム、二酸化ケイ素、二酸化チタン、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0040】
代替的に又は追加的に、タイヤシーラントは、劣化防止剤、酸化防止剤、顔料、可塑剤、チキソトロピー剤、UV吸収剤、難燃剤、分散剤、脱水剤、帯電防止剤、及び/又はゲル化剤を含み得る。
【0041】
タイヤシーラントの好ましい実装形態によれば、タイヤシーラントは、およそ15重量%からおよそ50重量%の間のエチレングリコール、又は好ましくはおよそ15重量%からおよそ25重量%の間の1,2-プロパンジオール若しくは1,3-プロパンジオールと、およそ0.001重量%からおよそ10重量%の間の「凍結防止」添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む。
【0042】
代替的な組成物によれば、タイヤシーラントは、およそ15重量%からおよそ50重量%の間のプロピレングリコールと、およそ0.001重量%からおよそ10重量%の間の「凍結防止」添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む。およそ15重量%~およそ50重量%のプロピレングリコールの代わりに、タイヤシーラントは、およそ5重量%~およそ25重量%の1,3-プロパンジオールと、およそ5重量%~およそ20重量%のグリセリンとを含み得る。
【0043】
更なる代替的な実施形態において、タイヤシーラントは、およそ5重量%からおよそ25重量%の間の1,3-プロパンジオール、好ましくはおよそ2重量%からおよそ35重量%の間の1,3-プロパンジオールと、およそ0.001重量%からおよそ10重量%の間の「凍結防止」添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む。
【0044】
タイヤシーラントの更に別の実装形態において、タイヤシーラントは、およそ15重量%からおよそ50重量%の間のグリセロールと、およそ0.001重量%からおよそ10重量%の間の「凍結防止」添加剤としての特に部分加水分解された低分子量ポリビニルアルコールとを含む。
【0045】
研究により、上述の設計別形の全てにおいて、凍結防止剤が従来のタイヤシーラントと比べて減少しているにもかかわらず、-45℃まででも粘度の低下が達成され得ることが明らかになった。
【0046】
タイヤシーラントの特に好ましい設計別形において、タイヤシーラントは、およそ25重量%~およそ40重量%、好ましくはおよそ30重量%~およそ34重量%、更により好ましくはおよそ31重量%~およそ33重量%の特に生物由来の脂肪族ジオール、特にエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、及び/又は1,3-プロパンジオールを含む。
【0047】
このタイヤシーラント組成物中の「凍結防止」添加剤として、およそ0.001重量%~およそ0.2重量%、特におよそ0.05重量%~およそ0.1重量%、好ましくはおよそ0.07重量%~およそ0.08重量%のポリビニルアルコールが使用される。
【0048】
さらに、タイヤシーラント組成物は、およそ23重量%~およそ30重量%、好ましくはおよそ25重量%~およそ29重量%の追加の水と、およそ25重量%~およそ35重量%、好ましくはおよそ25重量%~およそ32重量%のゴム、特にゴム分散液とを含む。
【0049】
上述のタイヤシーラント組成物を用いると、(「凍結防止」添加剤の割合に応じて)-30℃未満、それどころか-40℃未満の凍結点さえも達成され得る。