(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072269
(43)【公開日】2024-05-27
(54)【発明の名称】窒化処理方法、窒化処理装置及び表面改質処理方法
(51)【国際特許分類】
C23C 8/38 20060101AFI20240520BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20240520BHJP
【FI】
C23C8/38
H05H1/24
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023192250
(22)【出願日】2023-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2022182545
(32)【優先日】2022-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】菊池 将一
(72)【発明者】
【氏名】中澤 謙太
(72)【発明者】
【氏名】大橋 龍生
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 翔太郎
【テーマコード(参考)】
2G084
4K028
【Fターム(参考)】
2G084AA07
2G084CC03
2G084CC19
2G084CC34
2G084DD12
2G084DD14
2G084DD18
2G084DD21
2G084DD22
2G084FF14
4K028BA02
4K028BA12
4K028BA21
(57)【要約】
【課題】大気圧及び室温環境下にて被処理材の表面を改質する。
【解決手段】窒化処理方法は、窒化処理装置1を準備する工程S1と、ガラス管21を挟んで電極メッシュ22と重複するように被処理材5を配置する工程S2と、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に窒素ガスを供給すると共に、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に大気圧プラズマを発生させることにより、窒化処理を実施する工程S3と、を有する。基準電位を基準とした被処理材5の電位は、基準電位を基準とした電源モジュール4が出力する基準電位を基準とした電圧の電位と同電位である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置を準備する工程であり、前記窒化処理のための改質元素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、前記改質元素を含む改質ガスを前記処理領域形成部に供給するガス供給部と、前記大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を前記処理領域形成部に供給する電源部と、を備える窒化処理装置において、前記処理領域形成部は、誘電体により形成されると共に前記被処理材から離間して配置されて、前記被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、前記電源部に接続されると共に前記誘電体部材の前記主面とは逆側の裏面に配置され、前記対面領域と重複する電極部材と、を有する、前記窒化処理装置を準備する工程と、
前記誘電体部材を挟んで前記電極部材と重複するように前記被処理材を配置する工程と、
前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記改質ガスを供給すると共に前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記大気圧プラズマを発生させることにより、窒化処理を実施する工程と、を有し、
基準電位を基準とした前記被処理材の電位は、前記基準電位を基準とした前記電源部が出力する前記基準電位を基準とした電圧の電位と同電位である、窒化処理方法。
【請求項2】
前記被処理材を配置する工程は、
前記被処理材を前記処理領域形成部に配置する工程と、
前記電源部又は基準電位を与える接地部を前記被処理材へ直接に接続する工程と、を含む、請求項1に記載の窒化処理方法。
【請求項3】
前記処理領域形成部は、前記電源部又は基準電位を与える接地部に電気的に接続されたテーブルを有し、
前記被処理材を配置する工程は、前記被処理材を前記テーブルに載置する工程を含む、請求項1に記載の窒化処理方法。
【請求項4】
前記電極部材は、金属線によって形成されたメッシュ状の形状である、請求項1に記載の窒化処理方法。
【請求項5】
前記被処理材は、鉄を主成分として含む材料により形成されている、請求項1に記載の窒化処理方法。
【請求項6】
前記誘電体部材は、ガラス材料により形成された筒状の部材である、請求項1に記載の窒化処理方法。
【請求項7】
導電性を有する被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置であって、
前記窒化処理のための窒素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、
前記窒素を含む改質ガスを前記処理領域形成部に供給するガス供給部と、
前記大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を前記処理領域形成部に供給する電源部と、を備え、
前記処理領域形成部は、
誘電体により形成されると共に前記被処理材から離間して配置されて、前記被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、
前記電源部に接続されると共に前記誘電体部材の前記主面とは逆側の裏面に配置され、前記対面領域と重複する電極部材と、を有し、
前記ガス供給部は、前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記改質ガスを供給し、
前記電源部は、前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記大気圧プラズマを発生させる、窒化処理装置。
【請求項8】
導電性を有する被処理材の被処理面を、大気圧プラズマによって活性化された第1改質元素によって第1改質処理する表面改質処理装置を準備する工程と、
前記表面改質処理装置において前記大気圧プラズマを生じさせる改質領域に前記被処理材を配置する工程と、
前記改質領域に前記第1改質元素である窒素を含む改質ガスを供給すると共に前記改質領域に前記大気圧プラズマを発生させることにより、表面改質処理を実施する工程と、を有し、
前記表面改質処理を実施する工程では、前記改質ガスの流れを基準として前記改質領域の上流側に前記被処理材とは異なる種類の金属材料により形成された追加改質部材が配置されており、
前記改質処理を実施する工程では、前記改質ガスに含まれる前記第1改質元素である窒素に起因する前記第1改質処理である窒化処理と、前記追加改質部材に含まれる第2改質元素に起因する第2改質処理と、が行われる、表面改質処理方法。
【請求項9】
前記被処理材を配置する工程の前に、前記被処理材に前記追加改質部材を取り付ける工程をさらに有し、
前記被処理材を配置する工程では、前記追加改質部材が前記被処理面よりも上流側に位置するように、前記表面改質処理装置に前記追加改質部材を取り付けた前記被処理材を配置する、請求項8に記載の表面改質処理方法。
【請求項10】
前記追加改質部材は、金属製のシートであり、
前記被処理材は、棒状の部材であり、
前記追加改質部材を取り付ける工程では、前記追加改質部材を前記被処理材の一方の端部側に巻き付ける、請求項9に記載の表面改質処理方法。
【請求項11】
前記改質処理を実施する工程の前に、前記表面改質処理装置の前記改質領域に前記追加改質部材を配置する工程をさらに有し、
前記被処理材を配置する工程では、前記追加改質部材が前記被処理材よりも上流側に位置するように、前記表面改質処理装置に前記追加改質部材を取り付けていない前記被処理材を配置する、請求項8に記載の表面改質処理方法。
【請求項12】
前記追加改質部材に含まれる前記第2改質元素は、ニッケル、クロム又はアルミニウムのいずれかである、請求項8~11のいずれか一項に記載の表面改質処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化処理方法及び窒化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
窒化処理は、材料表面を硬化させる表面改質法の一種である。窒化処理は、機械製品の摩擦摩耗特性の向上及び疲労特性の向上に寄与する。窒化処理の一つにガス窒化が挙げられる。ガス窒化は、人体や環境に有害なアンモニアガス雰囲気で金属を加熱する。窒素を活性化させる従来技術として、プラズマ窒化が挙げられる。プラズマ窒化は、減圧雰囲気中にアーク放電を発生させることによって、材料表面に窒化層を形成する。例えば、特許文献1は、材料表面を窒化させる窒化処理を開示する。特許文献1の窒化処理は、大気圧プラズマジェットを材料に照射することにより、その材料の表面を窒化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属材料といった被処理材の表面を窒化する改質技術は、適用範囲が広いため、簡易に実施できることが望まれている。しかし、窒化処理は、いくつかの要因によって簡易的な実施が妨げられる。例えば、窒化処理にアンモニアガスを用いる場合には、アンモニアが人体や環境に与える影響を抑制する必要がある。また、窒化処理が真空環境で実施される場合には、真空環境を実現する装置の準備を要求されることもある。さらに、窒化処理を実施する場合には、被処理材を加熱するために、加熱装置の準備を要求されることもある。
【0005】
本発明は、大気圧及び室温環境下にて被処理材の表面を窒化処理することが可能な被処理材の窒化処理方法及び窒化処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態である窒化処理方法は、被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置を準備する工程であり、窒化処理装置は、窒化処理のための窒素原子を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、窒素原子を含む改質ガスを処理領域形成部に供給するガス供給部と、大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を処理領域形成部に供給する電源部と、を備える窒化処理装置において、処理領域形成部は、誘電体により形成されると共に被処理材から離間して配置されて、被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、電源部に接続されると共に誘電体部材の主面とは逆側の裏面に配置され、対面領域と重複する電極部材と、を有する、窒化処理装置を準備する工程と、誘電体部材を挟んで電極部材と重複するように被処理材を配置する工程と、誘電体部材の主面と被処理材との間に改質ガスを供給すると共に誘電体部材の主面と被処理材との間に大気圧プラズマを発生させることにより、窒化処理を実施する工程と、を有し、基準電位を基準とした被処理材の電位は、基準電位を基準とした電源部が出力する基準電位を基準とした電圧の電位と同電位である。
【0007】
この窒化処理方法は、大気圧プラズマを利用して窒素原子を活性化させる。その結果、窒素原子の活性種を発生させることができる。さらに、窒化処理方法は、誘電体部材の主面と被処理材との間に大気圧プラズマを発生させる。その結果、被処理材の表面から被処理材を構成する元素が遊離する。遊離した元素と窒素原子の活性種とが反応して、反応の結果生じた反応元素が再び被処理材に堆積する。従って、この窒化処理方法は、大気圧環境であって且つ加熱処理を要することなく被処理材の表面を窒化処理することができる。
【0008】
上記の窒化処理方法の被処理材を配置する工程は、被処理材を処理領域形成部に配置する工程と、電源部又は基準電位を与える接地部を被処理材へ直接に接続する工程と、を含んでもよい。この構成によれば、大気圧プラズマを発生させるための電極として被処理材を用いることができる。
【0009】
上記の窒化処理方法において、処理領域形成部は、電源部又は基準電位を与える接地部に電気的に接続されたテーブルを有してもよい。被処理材を配置する工程は、被処理材をテーブルに載置する工程を含んでもよい。この構成によれば、任意の形状の被処理材を窒化処理することができる。
【0010】
上記の窒化処理方法において、電極部材は、金属線によって形成されたメッシュ状の形状であってもよい。この構成によれば、被処理材の表面における広い範囲を容易に窒化することができる。
【0011】
上記の窒化処理方法において、被処理材は、鉄を主成分として含む材料により形成されてもよい。この構成によれば、鉄を主成分として含む材料により形成された被処理材を改質することができる。
【0012】
上記の窒化処理方法において、誘電体部材は、ガラス材料により形成された筒状の部材であってもよい。この構成によれば、誘電体バリア放電によって大気圧プラズマを発生させることができる。
【0013】
本発明の別の形態は、被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置である。窒化処理装置は、窒化処理のための改質元素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、改質元素を含む改質ガスを処理領域形成部に供給するガス供給部と、大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を処理領域形成部に供給する電源部と、を備える。処理領域形成部は、誘電体により形成されると共に被処理材から離間して配置されて、被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、電源部に接続されると共に誘電体部材の主面とは逆側の裏面に配置され、対面領域と重複する電極部材と、を有する。ガス供給部は、誘電体部材の主面と被処理材との間に改質ガスを供給する。電源部は、誘電体部材の主面と被処理材との間に大気圧プラズマを発生させる。
【0014】
この窒化処理装置は、大気圧プラズマを利用して窒素原子を活性化させる。その結果、窒素原子の活性種を発生させることができる。さらに、窒化処理装置は、誘電体部材の主面と被処理材との間に大気圧プラズマを発生させる。その結果、被処理材の表面から被処理材を構成する元素が遊離する。遊離した元素と窒素原子の活性種とが反応して、反応の結果生じた反応元素が再び被処理材に堆積する。従って、この窒化処理装置は、大気圧環境であって且つ加熱処理を要することなく被処理材の表面を窒化することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、大気圧及び室温環境下にて被処理材の表面を改質することが可能な被処理材の窒化処理方法及び窒化処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、被処理材の窒化処理方法及び窒化処理装置の原理を説明するための図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の窒化処理装置の断面斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2に示す窒化処理装置を用いて実施する被処理材の窒化処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図4】
図4は、第2施形態の窒化処理装置の断面斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4に示す窒化処理装置を用いて実施する被処理材の窒化処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図6】
図6は、第1実施形態の窒化処理装置及び被処理材の窒化処理方法によって被処理材を窒化させる実験の結果を示す図である。
【
図7】
図7(a)は、窒化処理前の被処理材の表面に存在する窒素の分析の結果である。
図7(b)は、窒化処理を10分間実施した被処理材の表面に存在する窒素の分析の結果である。
図7(c)は、窒化処理を60分間実施した被処理材の表面に存在する窒素の分析の結果である。
図7(d)は、窒化処理を180分間実施した被処理材の表面に存在する窒素の分析の結果である。
【
図8】
図8は、変形例の窒化処理方法を説明するための図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態の表面改質処理方法に用いる表面改質処理装置を示す断面図である。
【
図10】
図10は、
図9に示す表面改質処理装置を用いて実施する被処理材の表面改質処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、第4実施形態の表面改質処理方法に用いる表面改質処理装置を示す断面図である。
【
図12】
図12は、
図11に示す表面改質処理装置を用いて実施する被処理材の表面改質処理方法の主要な工程を示すフロー図である。
【
図13】
図13、実験例における評価領域を説明するための図である。
【
図14】
図14(a)~(l)は、実験によって得た画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0018】
まず、
図1を参照しながら、窒化処理方法及び窒化処理装置1の原理について説明する。窒化処理方法及び窒化処理装置1は、いわゆる大気圧プラズマを用いて被処理材5の表面を改質する。
【0019】
ここでいう改質とは、被処理材5の表面5aを含む領域に所定の元素を拡散させる処理をいう。本実施形態では、被処理材5の表面を含む領域に窒素を拡散させる処理(窒化処理)を例示する。また、被処理材5は、導電性を有する金属材料である。例えば、被処理材5を形成する材料として、鉄鋼材料が例示できる。なお、被処理材5を形成する材料は、マグネシウム合金といった融点が低い材料であってもよい。
【0020】
窒化処理装置1は、いわゆる大気圧プラズマを用いる。窒化処理装置1は、処理空間に大気圧プラズマを発生させる。さらに、窒化処理装置1は、大気圧プラズマが発生している処理空間に窒素ガスを供給する。その結果、まず、大気圧プラズマによって被処理材5の表面5aから被処理材5を構成する原子である鉄原子58が遊離する。さらに、窒素原子48が活性化した窒素活性種49が生じる。そして、遊離した鉄原子58と、窒素活性種49とが反応する。その結果、窒化鉄原子59(FexN)が生成される。これら遊離した鉄原子58、窒素活性種49及び反応によって生じた窒化鉄原子59は、被処理材5上の空間に存在する。そして、窒化鉄原子59は、被処理材5の表面5aに堆積する。
【0021】
<第1実施形態>
図2に示す窒化処理装置1は、棒状の被処理材5の表面を窒化処理する。窒化処理装置1は、処理領域形成モジュール2(処理領域形成部)と、ガス供給モジュール3(ガス供給部)と、電源モジュール4(電源部)と、を有する。
【0022】
処理領域形成モジュール2は、窒化処理のための改質元素(窒素)を活性化する大気圧プラズマを発生させる。処理領域形成モジュール2は、ガラス管21(誘電体部材)と、電極メッシュ22(電極部材)と、を有する。ガラス管21は、ガラス材料により形成されている。ガラス材料は、絶縁材料であると同時に誘電体材料でもある。従って、電場に配置されたガラス管21は、いわゆる分極を生じる。ガラス管21の形状は、円筒である。ガラス管21は、第1ガラス管端21aと、第2ガラス管端21bと、ガラス管内周面21c(誘電体部材の主面)と、ガラス管外周面21d(誘電体部材の裏面)と、を有する。第1ガラス管端21a及び第2ガラス管端21bは、それぞれ開口を含む。第1ガラス管端21aは、ガス供給モジュール3から改質ガスを受け入れる。第2ガラス管端21bは、処理空間を通過した改質ガスを排出する。
【0023】
棒状の被処理材5は、ガラス管21の中心軸線AXの近傍に配置される。換言すると、被処理材5は、被処理材5の表面5aからガラス管内周面21cまでの距離に偏りがなく、等距離となる位置に配置される。
【0024】
ガラス管内周面21cは、被処理材5と対面する対面領域を含む。ガラス管内周面21cの対面領域と被処理材5の表面5aとの間には、隙間が形成されている。つまり、被処理材5は、ガラス管内周面21cから離間して配置される。この隙間は、処理空間である。つまり、ガラス管内周面21cに囲まれた空間は、処理空間を含む。つまり、処理空間とは、ガラス管内周面21cに囲まれた空間の全体と規定してもよいし、ガラス管内周面21cに囲まれた空間の一部として規定してもよい。厳密には、処理空間とは、ガラス管内周面21cに囲まれた空間と、後述する電極メッシュ22に囲まれた空間とが重複する領域である。
【0025】
電極メッシュ22は、金属線といった導電体材料によって形成された網状の部材である。
図2の例示では、電極メッシュ22の形状は、筒状である。つまり、電極メッシュ22は、ガラス管外周面21dの全周を覆う。なお、電極メッシュ22は、必ずしもガラス管外周面21dの全周を覆う必要はない。電極メッシュ22は、ガラス管外周面21dの一部(例えば半周)を覆う構成であってもよい。
【0026】
図2の例示では、電極メッシュ22の軸方向の長さは、ガラス管21の軸線方向の長さよりも短い。その結果、ガラス管21は、電極メッシュ22に覆われない部分221a、221bと、電極メッシュ22に覆われる部分222と、を含む。電極メッシュ22に覆われる部分222は、処理空間に対応する。
【0027】
ガス供給モジュール3は、改質元素(窒素)を含む改質ガス(窒素ガス)を処理領域形成モジュール2に供給する。具体的には、ガス供給モジュール3は、ガラス管内周面21cと被処理材5の表面5aとの間に改質ガスを供給する。ガス供給モジュール3は、ガスボンベ31と、ガス管32と、を有する。ガスボンベ31は、改質ガスである窒素ガスを収容する。ガス管32の基端は、ガスボンベ31に接続されている。ガス管32の先端は、ガラス管21の内部に差し込まれている。
図2の例示では、ガス管32の先端は、被処理材5の表面5aとガラス管内周面21cとの間の隙間に配置されている。さらに、詳細には、ガス管32の先端は、鉛直方向AVに沿って被処理材5よりも上側における隙間に配置されている。ガス管32には、ガスフローメータ33が設けられてもよい。
【0028】
電源モジュール4は、大気圧プラズマを発生させるための電圧を与える。
図2に示す窒化処理装置1は、いわゆる誘電体バリア放電によって大気圧プラズマを発生させる。誘電体バリア放電は、ガラス管21の外側(ガラス管外周面21d)に配置された電極メッシュ22と、ガラス管21の内側(処理領域)に配置された被処理材5と、の間に電位差を生じさせることによって発生する。
図2の例示では、電位差の基準は、被処理材5の電位である。
【0029】
電源モジュール4は、大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を処理領域形成モジュール2に供給する。電源モジュール4は、電源41と、第1電源ライン42と、第2電源ライン43と、第3電源ライン44と、を有する。電源41は、高周波の交流電圧を出力する。例えば、交流電圧の周波数は、数キロヘルツ程度である。また、交流電圧の大きさは、数キロボルト程度である。第1電源ライン42は、電源41と電極メッシュ22と、を接続する。第2電源ライン43は、電源41と接地部45と電源41とを接続する。第3電源ライン44は、被処理材5と接地部45とを接続する。
【0030】
なお、
図2の例示では、高周波の交流電圧を電極メッシュ22に与える接続構成を例示した。高周波の交流電圧を被処理材5に与える接続構成を採用してもよい。この場合には、電極メッシュ22は接地部45に接続される。
【0031】
次に、
図2に示す窒化処理装置1を用いた窒化処理方法について、
図3を参照しながら説明する。
【0032】
まず、窒化処理装置1を準備する(工程S1)。窒化処理装置1の詳細は上述のとおりであるので、説明を省略する。
【0033】
次に、被処理材5を配置する(工程S2)。まず、被処理材5をガラス管21の内部に配置する(S21)。被処理材5は、図示しない保持部材などによって保持され、ガラス管21の略中央に配置される。なお、被処理材5には電圧が供給されるから、被処理材5は、絶縁部材を介して保持部材に保持される。次に、被処理材5に第3電源ライン44を接続する(S22)。被処理材5と第3電源ライン44との間で電気的な接続が確保されていればよく、具体的な接続の構成には特に制限はない。
【0034】
なお、上述の説明では、ガラス管21への配置を実施(S21)した後に、第3電源ライン44を被処理材5に接続する(S22)手順を例示した。例えば、第3電源ライン44を被処理材5に接続した(S22)後に、ガラス管21への配置(S21)を実施してもよい。
【0035】
次に、窒化処理を行う(工程S3)。まず、ガス供給モジュール3から窒素ガスの供給を開始する(工程S31)。次に、電源モジュール4から高周波の交流電圧の印加を開始する(工程S32)。その結果、処理空間に大気圧プラズマが発生すると共に、当該処理空間に窒素ガスが供給される。その結果、
図1に示すように、大気圧プラズマによって被処理材5からの鉄原子58の遊離が発生すると共に、窒素活性種49が発生する。鉄原子58と窒素活性種49とが反応した結果、窒化鉄原子59が生成される。窒化鉄原子59は、被処理材5の表面5aに堆積する。
【0036】
所定の処理時間が経過したことを条件として、電源モジュール4から高周波の交流電圧の印加を停止する(工程S41)。そして、ガス供給モジュール3から窒素ガスの供給を停止する(工程S42)。以上の工程を経て、被処理材5の表面窒化処理が完了する。
【0037】
<第1実施形態の作用効果>
ところで、窒化処理は、材料表面を硬化させる表面改質法の一種である。窒化処理は、各種機械製品の摩擦摩耗特性や疲労特性の向上に寄与する。窒化法の1つにガス窒化法が挙げられる。しかし、ガス窒化法は、アンモニアガス雰囲気で金属を加熱しなければならないので、人体や環境への影響が懸念される。
【0038】
活性化させた窒素を用いる窒化処理技術として、プラズマ窒化法が挙げられる。プラズマ窒化法は、減圧雰囲気中にアーク放電させることにより、材料表面に窒化層を形成させる。プラズマ窒化法は、アンモニアガスは使用しない。しかし、プラズマ窒化は、真空装置が必要である。従って、プラズマ窒化のコストは、ガス窒化のコストより高い。
【0039】
また、プラズマ窒化は、活性化した窒素を用いているものの、加熱は依然として必要である。プラズマ窒化は、この加熱処理を要するという理由によって、低融点材料には適用できないという課題が残されている。例えば、実用構造金属の中で最軽量なマグネシウム合金がある。マグネシウム合金の発火点は窒化処理温度よりも低い。従って、従来の窒化法は、マグネシウムを材料とする部材に対して適用できない。そこで発明者らは、大気環境で加熱することなく材料表面を窒化させる発想に至った。加熱しないという特徴を利用すれば、低融点材料への適用も可能となる。さらに、近年のSDGsも鑑みると、「加熱しない表面改質プロセス」の需要は高い。
【0040】
そこで発明者らは、アンモニアを使用せずに被処理材5の表面5aを窒化させる発想に至った。具体的には、大気環境下で活性化させた窒素を被処理材5の表面5aに照射することによって、被処理材5の表面に窒化層を付与する狙いである。
【0041】
第1実施形態の窒化処理方法は、被処理材5の表面を含む領域を窒化処理する。窒化処理方法は、窒化処理装置1を準備する工程S1と、ガラス管21を挟んで電極メッシュ22と重複するように被処理材5を配置する工程S2と、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に窒素ガスを供給すると共に、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に大気圧プラズマを発生させることにより、窒化処理を実施する工程S3と、を有する。基準電位を基準とした被処理材5の電位は、基準電位を基準とした電源モジュール4が出力する基準電位を基準とした電圧の電位と同電位である。
【0042】
第1実施形態の窒化処理装置1は、被処理材5の表面を含む領域を窒化処理する。窒化処理装置1は、窒化処理のための窒素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成モジュール2と、窒素を含む窒素ガスを処理領域形成モジュール2に供給するガス供給モジュール3と、大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を処理領域形成モジュール2に供給する電源モジュール4と、を備える。処理領域形成モジュール2は、ガラスにより形成されると共に被処理材5から離間して配置されて、被処理材5に対面する対面領域を含む主面を有するガラス管21と、電源モジュール4に接続されると共にガラス管21のガラス管内周面21cとは逆側のガラス管外周面21dに配置され、対面領域と重複する電極メッシュ22と、を有する。ガス供給モジュール3は、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に窒素ガスを供給する。電源モジュール4は、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材5との間に大気圧プラズマを発生させる。
【0043】
第1実施形態の窒化処理方法及び窒化処理装置1は、大気圧プラズマを利用して窒素を活性化させる。その結果、窒素活性種を発生させることができる。さらに、窒化処理方法は、ガラス管21のガラス管内周面21cと被処理材との間に大気圧プラズマを発生させる。その結果、
図1に示すように、被処理材5の表面から被処理材5を構成する鉄原子58が遊離する。遊離した鉄原子58と窒素活性種49とが反応して、反応の結果生じた窒化鉄原子59が再び被処理材5に堆積する。従って、この窒化処理方法及び窒化処理装置1は、大気圧環境であって且つ加熱処理を要することなく被処理材5の表面5aを窒化することができる。
【0044】
さらに、この窒化処理方法では、大気圧プラズマが発生している領域に被処理材5を配置しているので、小さなノズルからプラズマを照射する方式と比べると、広範囲の領域に窒化層を付与することができる。
【0045】
要するに、第1実施形態の窒化処理方法及び窒化処理装置1は、(1)アンモニアガスを用いない、(2)加熱しない、(3)真空装置を用いない及び(4)広い範囲に窒化処理が可能、という4つの特徴を有する窒化処理技術である。つまり、第1実施形態の窒化処理方法及び窒化処理装置1は、「大気圧・室温下での広域窒化」とも称することができる。
【0046】
第1実施形態の窒化処理方法及び窒化処理装置1は、丸棒である被処理材5の全周の表面5aに窒化層を形成することができる。また、第1実施形態の窒化処理方法及び窒化処理装置1は、丸棒や平板といった単純な形状の被処理材5に限定されず、電極形状を工夫することにより歯車やクランクシャフト等への適用することもできる。窒化処理方法及び窒化処理装置1は、被処理材5の形状によらず、あらゆる機械製品への窒化処理に利用できる。
【0047】
窒化処理方法の被処理材5を配置する工程S2は、被処理材5を処理領域形成モジュール2に配置する工程S21と、電源モジュール4又は基準電位を与える接地部45を被処理材5へ直接に接続する工程S22と、を含む。この構成によれば、大気圧プラズマを発生させるための電極として被処理材5を用いることができる。
【0048】
<第2実施形態>
図4及び
図5を参照しながら、第2実施形態の改質する方法及び窒化処理装置1Aについて説明する。第1実施形態では、被処理材5に対して第3電源ライン44を直接に接続していた。第2実施形態では、被処理材5に対して第3電源ライン44を直接に接続しない。
【0049】
図4に示すように、第2実施形態の窒化処理装置1Aは、テーブル25を有する。テーブル25は、ガラス管21の内部に配置されている。
図4に例示するテーブル25は、矩形の板材である。テーブル25は、導電性を有する材料によって構成されている。さらに、テーブル25には、第3電源ライン44が電気的に接続されている。従って、テーブル25の電位は、基準電位である。テーブル25は、処理面25aを有する。処理面25aは、ガラス管内周面21cに対面する。さらに、処理面25aは、ガラス管内周面21cを介して電極メッシュ22にも対面する。被処理材5は、テーブル25の処理面25aに載置される。
図4の例示では、被処理材5は、処理面25aに直接に接触する。この物理的な接触は、電気的な接続をもたらす。従って、テーブル25に基準電位が与えられたとき、被処理材5の電位も基準電位となる。その結果、被処理材5と電極メッシュ22との間に誘電体であるガラス管21を介して所定の電位差が生じるので、大気圧プラズマが発生する。
【0050】
次に、
図4に示す窒化処理装置1を用いた窒化処理方法について
図5を参照しながら説明する。
【0051】
まず、窒化処理装置1を準備する(工程S1)。窒化処理装置1の詳細は上述のとおりである。従って、テーブル25には、第3電源ライン44がすでに接続された状態である。
【0052】
次に、被処理材5を配置する(工程S2A)。この工程S2Aでは、被処理材5をテーブル25の処理面25aに載置する(工程S21A)。上述したように、第3電源ライン44は、すでにテーブル25に接続されているから、工程S2Aでは、第1実施形態の工程S22に相当する作業を実施しなくてよい。なお、この工程S2Aにおいて、被処理材5が処理面25aに直接に接することは必須の要件ではない。工程S2Aは、被処理材5の電位がテーブル25の電位と同じとみなせる状態となるように、被処理材5が配置されればよい。従って、被処理材5の電位がテーブル25の電位と同じとみなせるという条件を満たしていれば、処理面25aと被処理材5との間に隙間が存在していてもよい。
【0053】
次に、窒化処理を行う(工程S3)。この工程S3は、第1実施形態の工程S3と同じであるから、詳細な説明は省略する。さらに、工程S41及び工程S42も第1実施形態の工程S41及び工程S42と同じであるから、詳細な説明は省略する。以上の工程を経て、被処理材5の表面窒化処理が完了する。
【0054】
<第2実施形態の作用効果>
第2実施形態の窒化処理装置1Aの処理領域形成モジュール2Aは、電源モジュール4又は基準電位を与える接地部45に電気的に接続されたテーブル25を有する。被処理材5を配置する工程S2Aは、被処理材5をテーブル25に載置する工程S21Aを含む。この構成によれば、任意の形状の被処理材5を窒化処理することができる。
【0055】
<実験例>
第1実施形態の窒化処理装置及び被処理材の窒化処理方法によって被処理材5を改質する実験を行った。まず、実験の条件を以下に列記する。
・被処理材:鋼材丸棒(SCM435)
・改質ガス:窒素ガス
・改質ガスの流量:1L/min
・電力:30W程度
・処理時間:10分(第1条件)、60分(第2条件)、180分(第3条件)
【0056】
そして、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて処理後の被処理材5の表面5aにおける窒素を評価した。電子線マイクロアナライザの評価条件を以下に列記する。
・加速電圧:15。0kV
・照射電流:5。0×10-7A
・測定間隔:3。0μm
・測定点数:100×100
【0057】
図6は、処理時間と窒素検出強度の平均値との関係を示す。横軸は、処理時間を示す。縦軸は、窒素検出強度の平均値を示す。さらに、
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)は、鋼材丸棒の表面における所定領域の窒素検出強度の分布を示すコンター図である。コンター図において白は窒素検出強度が高いことを示す。
図7(a)は、所持時間がゼロ(未処理)の結果R1である。
図7(b)は、所持時間が10分間の結果R2である。
図7(c)は、所持時間が60分間の結果R3である。
図7(d)は、所持時間が180分間の結果R4である。
【0058】
図6のグラフにおいて、所持時間がゼロ(未処理)の結果R1と、10分間の処理を行った結果R2とを比較すると、明らかに窒素検出強度の平均値が増加していることがわかった。これは、
図7(a)のコンター図と
図7(b)のコンター図とを比較した場合にも、
図7(b)のコンター図において窒素検出強度が高い白色の領域が拡大していることからも明らかである。つまり、鋼材丸棒の表面が窒化されていることがわかった。所持時間が10分間の結果R2と、60分間の処理を行った結果R3とを比較すると、窒素検出強度の平均値がさらに増加することもわかった。一方、所持時間が60分間の結果R3と、180分間の処理を行った結果R4とを比較すると、窒素検出強度の平均値が増加していないことがわかった。これは、
図7(c)のコンター図と
図7(d)のコンター図とを比較した場合に、窒素検出強度が高い白色の領域の面積がほぼ同じであるように見えることからも明らかである。つまり、上述の条件の下では、処理時間が60分を超えると、窒素検出強度の平均値が飽和することがわかった。
【0059】
本発明である窒化処理方法及び窒化処理装置は、前述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0060】
図8に示すように被処理材5に追加被膜61を設けてもよい。追加被膜61は、例えばニッケルフィルムである。このような被処理材5によれば、追加被膜61の下流側において、被処理材5の表面5aに、窒化鉄原子59に加えてニッケル原子68も堆積させることができる。つまり、追加被膜61の構成元素を選択することによって、窒化層とは別の表面改質層を選択的に設けることができる。
【0061】
また、上記の実施形態では、メッシュ状の電極部材を例示した。電極部材の形状はメッシュに限定されない。電極部材の形状は、誘電体部材の表面の広い範囲を覆うことができる形状であればよい。例えば、誘電体部材がガラス板の場合には、電極部材の形状は薄板状であってもよい。
【0062】
〔付記〕
本開示は、以下の構成を含む。
【0063】
本開示の窒化処理方法は、[1]「導電性を有する被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置を準備する工程であり、前記窒化処理のための改質元素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、前記改質元素を含む改質ガスを前記処理領域形成部に供給するガス供給部と、前記大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を前記処理領域形成部に供給する電源部と、を備える窒化処理装置において、前記処理領域形成部は、誘電体により形成されると共に前記被処理材から離間して配置されて、前記被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、前記電源部に接続されると共に前記誘電体部材の前記主面とは逆側の裏面に配置され、前記対面領域と重複する電極部材と、を有する、前記窒化処理装置を準備する工程と、前記誘電体部材を挟んで前記電極部材と重複するように前記被処理材を配置する工程と、前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記改質ガスを供給すると共に前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記大気圧プラズマを発生させることにより、窒化処理を実施する工程と、を有し、基準電位を基準とした前記被処理材の電位は、前記基準電位を基準とした前記電源部が出力する前記基準電位を基準とした電圧の電位と同電位である、窒化処理方法。」である。
【0064】
本開示の窒化処理方法は、[2]「前記被処理材を配置する工程は、前記被処理材を前記処理領域形成部に配置する工程と、前記電源部又は基準電位を与える接地部を前記被処理材へ直接に接続する工程と、を含む、上記[1]に記載の窒化処理方法。」である。
【0065】
本開示の窒化処理方法は、[3]「前記処理領域形成部は、前記電源部又は基準電位を与える接地部に電気的に接続されたテーブルを有し、前記被処理材を配置する工程は、前記被処理材を前記テーブルに載置する工程を含む、上記[1]に記載の窒化処理方法。」である。
【0066】
本開示の窒化処理方法は、[4]「前記電極部材は、金属線によって形成されたメッシュ状の形状である、上記[1]~[3]の何れか一項に記載の窒化処理方法。」である。
【0067】
本開示の窒化処理方法は、[5]「前記被処理材は、鉄を主成分として含む材料により形成されている、上記[1]~[4]の何れか一項に記載の窒化処理方法。」である。
【0068】
本開示の窒化処理方法は、[6]「前記誘電体部材は、ガラス材料により形成された筒状の部材である、上記[1]~[5]の何れか一項に記載の窒化処理方法。」である。
【0069】
本開示の窒化処理装置は、[7]「導電性を有する被処理材の表面を含む領域を窒化処理する窒化処理装置であって、前記窒化処理のための窒素を活性化する大気圧プラズマを発生させる処理領域形成部と、前記窒素を含む改質ガスを前記処理領域形成部に供給するガス供給部と、前記大気圧プラズマを発生させるための交流電圧を前記処理領域形成部に供給する電源部と、を備え、前記処理領域形成部は、誘電体により形成されると共に前記被処理材から離間して配置されて、前記被処理材に対面する対面領域を含む主面を有する誘電体部材と、前記電源部に接続されると共に前記誘電体部材の前記主面とは逆側の裏面に配置され、前記対面領域と重複する電極部材と、を有し、前記ガス供給部は、前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記改質ガスを供給し、前記電源部は、前記誘電体部材の前記主面と前記被処理材との間に前記大気圧プラズマを発生させる、窒化処理装置」である。
【0070】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態である表面改質処理方法について説明する。
【0071】
本発明の第3実施形態である表面改質処理方法は、導電性を有する被処理材の被処理面を、大気圧プラズマによって活性化された第1改質元素によって第1改質処理する表面改質処理装置を準備する工程と、表面改質処理装置において大気圧プラズマを生じさせる改質領域に被処理材を配置する工程と、改質領域に第1改質元素である窒素を含む改質ガスを供給すると共に改質領域に大気圧プラズマを発生させることにより、表面改質処理を実施する工程と、を有し、表面改質処理を実施する工程では、改質ガスの流れを基準として改質領域の上流側に被処理材とは異なる種類の金属材料により形成された追加改質部材が配置されており、改質処理を実施する工程では、改質ガスに含まれる第1改質元素である窒素に起因する第1改質処理である窒化処理と、追加改質部材に含まれる第2改質元素に起因する第2改質処理と、が行われる。
【0072】
上記の表面改質処理方法は、第1改質処理である窒化処理に加えて、さらに、追加改質部材に含まれる第2改質元素に起因する第2改質処理を行うことができる。
【0073】
上記の表面改質処理方法は、被処理材を配置する工程の前に、被処理材に追加改質部材を取り付ける工程をさらに有し、被処理材を配置する工程では、追加改質部材が被処理面よりも上流側に位置するように、表面改質処理装置に追加改質部材を取り付けた被処理材を配置してもよい。この工程によれば、大気圧プラズマが発生する改質領域に追加改質部材を容易に配置することができる。
【0074】
上記の表面改質処理方法において、追加改質部材は、金属製のシートであり、被処理材は、棒状の部材であり、追加改質部材を取り付ける工程では、追加改質部材を被処理材の一方の端部側に巻き付けてもよい。この工程によれば、追加改質部材を被処理材に容易に取り付けることができる。
【0075】
上記の表面改質処理方法において、追加改質部材に含まれる第2改質元素は、ニッケル又はクロムであってもよい。この工程によれば、ニッケル又はクロムを含む改質膜を形成することができる。
【0076】
図9は、第3実施形態である表面改質処理方法のための表面改質処理装置1Bを示す図である。表面改質処理装置1Bの物理的な構成は、第1実施形態の窒化処理装置1と同じである。第3実施形態では、追加改質部材7Bが被処理材5Bに取り付けられている点において、第1実施形態と相違する。第3実施形態では、被処理材5Bは、第1実施形態と同様にその表面を窒化することができる。さらに、第3実施形態では、被処理材5Bの表面を窒化物とは別の材料によって、改質することができる。
【0077】
改質ガスが含む窒素(N)を第1改質元素とした場合に、追加改質部材7Bは、被処理材5Bを構成する金属とは異なる種類の金属を第2改質元素として含む。例えば、第2改質元素は、ニッケル(Ni)が例示できる。追加改質部材7Bの表面に窒素活性種49が衝突すると、追加改質部材7Bの表面から第2改質元素であるニッケル原子71が放出される。このニッケル原子71は、大気圧プラズマの流れに乗って下流側に流れる。そして、ニッケル原子71は、被処理材5Bの被処理面5aSに積もる。その結果、窒化処理に加えて、さらに追加の表面改質処理が行われることになる。
【0078】
なお、追加改質部材7Bが含む第2改質元素は、ニッケルに限定されない。追加改質部材7Bが含む第2改質元素として、窒素活性種49の衝突によって弾き出されるような原子を採用することができる。例えば、追加改質部材7Bが含む第2改質元素として、クロムを採用してもよい。クロムを選択することによれば、いわゆる窒化クロム膜を被処理材5Bの被処理面5aSに形成することが可能になる。
【0079】
クロムを含む表面改質層は、クロムめっきなど耐食性に優れることが知られている。現在のクロムメッキを形成する手法は、溶液を用いるウェットプロセスである。これに対して、第3実施形態の表面改質処理方法によれば、溶液を用いないドライプロセスによってクロムを含む表面改質層を材料表面に形成することができる。また、クロムを含む表面改質層の形成と、窒化の改質効果と組み合わせによれば、硬質なクロム窒化物(CrN)を材料表面に形成することも可能である。
【0080】
追加改質部材7Bが含む第2改質元素として、アルミニウムを採用してもよい。アルミニウムを含む表面改質層の形成と、窒化の改質効果と組み合わせによれば、硬質なアルミニウム窒化物(AlN)を材料表面に形成することも可能である。
【0081】
追加改質部材7Bは、例えば、金属シート又はフィルムである。金属シート又はフィルムである追加改質部材7Bは、丸棒である被処理材5Bの一方の端部側に巻き付けられている。そして、追加改質部材7Bが巻き付けられた被処理材5Bは、処理領域形成モジュール2において、電極メッシュ22に覆われる部分222に配置される。この電極メッシュ22に覆われる部分222は、換言すると、大気圧プラズマが発生する改質領域222Sである。さらに、追加改質部材7Bは、改質ガスの流れを基準として、被処理面5aSよりも上流側に配置されている。換言すると、追加改質部材7Bは、ガス管32の先端32aと、被処理面5aSとの間に配置されている。
【0082】
なお、追加改質部材7Bは、被処理面5aSよりも上流側にあればよいので、被処理材5Bにおいて改質領域222Sに存在する部分のうち、上流側の端に配置されてもよいし、中央部分に配置されてもよいし、下流側に配置されてもよい。例えば、追加改質部材7Bを上流側の端に配置した場合には、被処理材5Bにおいて改質領域222Sに存在する部分の全体に追加の改質層を形成することができる。例えば、追加改質部材7Bを中央部分に配置した場合には、追加改質部材7Bより上流側を窒化処理のみ行う部分とし、追加改質部材7Bより下流側を窒化処理及び追加改質処理を行う部分とすることができる。
【0083】
さらに、被処理材5Bには、2以上の追加改質部材7Bを取り付けてもよい。2以上の追加改質部材7Bは、それぞれ同じ材料からなるものであってもよい。例えば、2以上の追加改質部材7Bは、すべてニッケルを主成分とする部材であってもよい。2以上の追加改質部材7Bは、互いに異なる材料からなるものであってもよい。例えば、第1の追加改質部材7Bはニッケルを主成分とする部材であり、第2の追加改質部材7Bはクロムを主成分とする部材であってもよい。
【0084】
続いて、
図10に示すフローチャートを参照しながら、第3実施形態である表面改質処理方法について説明する。
【0085】
まず、表面改質処理装置1Bを準備する(S1B)。
【0086】
次に、被処理材5Bを配置する(S2B)。まず、被処理材5Bに追加改質部材7Bを取り付ける(S20)。前述したように、被処理材5Bが金属シートである場合には、丸棒である被処理材5Bの端部に追加改質部材7Bを巻き付ける。次に、追加改質部材7Bを巻き付けた被処理材5Bをガラス管21の内部に配置する(S21)。具体的には、追加改質部材7Bが被処理面5aSよりも上流側に位置するように、被処理材5Bを配置する。換言すると、追加改質部材7Bがガス管32の先端32a側に位置するように被処理材5Bを配置する。さらに、追加改質部材7Bが改質領域222Sに位置するように配置する。そして、被処理材5Bに第3電源ライン44を接続する(S22)。
【0087】
そして、表面改質処理(S3B)を行った後に、交流電圧の印加を停止(S41)すると共に窒素ガスの供給を停止(S42)する。
【0088】
<作用効果>
表面改質処理方法は、導電性を有する被処理材5Bの被処理面5aSを、大気圧プラズマによって活性化された窒素活性種49によって窒化処理する表面改質処理装置1Bを準備する工程S1Bと、表面改質処理装置1Bにおいて大気圧プラズマを生じさせる改質領域222Sに被処理材5Bを配置する工程S2Bと、改質領域222Sに窒素ガスを供給すると共に改質領域222Sに大気圧プラズマを発生させることにより、表面改質処理を実施する工程S3Bと、を有する。表面改質処理を実施する工程S3Bでは、改質ガスの流れを基準として改質領域222Sの上流側に被処理材5Bとは異なる種類の金属材料により形成された追加改質部材7Bが配置されている。改質処理を実施する工程S3Bでは、改質ガスに含まれる窒素に起因する窒化処理と、追加改質部材7Bに含まれる第2改質元素に起因する第2改質処理と、が行われる。
【0089】
上記の表面改質処理方法は、窒化処理に加えて、さらに、追加改質部材に含まれる第2改質元素に起因する第2改質処理を行うことができる。
【0090】
被処理材5Bを配置する工程S21の前に、被処理材5Bに追加改質部材7Bを取り付ける工程S20をさらに有する。被処理材5Bを配置する工程S21では、追加改質部材7Bが被処理面5aSよりも上流側に位置するように、表面改質処理装置1Bに追加改質部材7Bを取り付けた被処理材5Bを配置する。この工程によれば、大気圧プラズマが発生する改質領域222Sに追加改質部材7Bを容易に配置することができる。
【0091】
追加改質部材7Bは、金属製のシートである。被処理材5Bは、棒状の部材である。追加改質部材7Bを取り付ける工程S20では、追加改質部材7Bを被処理材5Bの一方の端部側に巻き付ける。この工程によれば、追加改質部材7Bを被処理材5Bに容易に取り付けることができる。
【0092】
追加改質部材7Bに含まれる第2改質元素は、ニッケルである。これによれば、ニッケルを含む改質膜を形成することができる。ニッケルを含む表面改質層は、ニッケルめっきなど耐食性に優れることが知られている。現在のニッケルメッキ形成手法は浴液を用いるウェットプロセスである。しかし、第3実施形態に係る表面改質方法によれば、溶液を用いないドライプロセスによってニッケルを含む表面改質層を材料表面に形成することができる。
【0093】
要するに、誘電体バリア放電を利用した大気圧プラズマ窒化システムは、窒素ガスボンベ、交流電源、ガラス管、金網及び被処理材により構成される。大気圧プラズマ窒化システムを用いて表面処理を行うことにより、被処理材5Bである丸棒全周の表面に窒化層を形成することができる。さらに、窒素ガスの流入口の近傍において、ニッケル箔を被処理材5Bに張り付けている。その結果、被処理材5Bの表面にニッケルを含む表面改質層を形成することができる。
【0094】
<第4実施形態>
第3実施形態では、追加改質部材7Bを取り付けた被処理材5Bを処理領域形成モジュール2に配置した。追加改質部材7Bは、被処理材5Bに必ずしも取り付けられる必要はない。
【0095】
図11は、第4実施形態である表面改質処理方法のための表面改質処理装置1Cを示す図である。第4実施形態で用いる表面改質処理装置1Cは、第2実施形態で用いる窒化処理装置1Aとおおむね同じ構成を有する。第4実施形態で用いる表面改質処理装置1Cは、処理領域形成モジュール2の内部に追加改質部材7Cが配置されている点において、第2実施形態で用いる窒化処理装置1Aと異なっている。
【0096】
つまり、本発明の第4実施形態である表面改質処理方法は、改質処理を実施する工程の前に、表面改質処理装置の改質領域に追加改質部材を配置する工程をさらに有し、被処理材を配置する工程では、追加改質部材が被処理材よりも上流側に位置するように、表面改質処理装置に追加改質部材を取り付けていない被処理材を配置してもよい。この工程によっても、大気圧プラズマが発生する改質領域に追加改質部材を容易に配置することができる。
【0097】
図11に示すように、追加改質部材7Cは、処理領域形成モジュール2の内部に配置されている。具体的には、追加改質部材7Cは、改質領域222Sにおいて被処理材5Cよりも上流側に配置されている。換言すると、追加改質部材7Cは、被処理材5Cとガス管32の先端32aとの間に配置されている。より詳細には、改質ガスが流れる方向(処理領域形成モジュール2の軸線方向)を基準として、追加改質部材7Cは被処理材5Cとガス管32の先端32aとの間に位置する。また、追加改質部材7Cは、被処理材5Cよりも鉛直方向に沿って上側に配置されている。この場合、ガス管32の先端32aは、追加改質部材7Cよりも上側であってもよいし、下側であってもよい。
【0098】
続いて、
図12に示すフローチャートを参照しながら、第4実施形態である表面改質処理方法について説明する。
【0099】
まず、表面改質処理装置1Cを準備する(S1C)。ここで、工程S1Cは、追加改質部材7Cを配置する工程S10を含む。次に、被処理材5Cを配置する(S2C)。この工程S2Cでは、追加改質部材7Cを取り付けていない被処理材5Cをガラス管21の内部に配置する(S21C)。そして、表面改質処理(S3C)を行った後に、交流電圧の印加を停止(S41)すると共に窒素ガスの供給を停止(S42)する。
【0100】
<作用効果>
表面改質処理方法は、改質処理を実施する工程S2Cの前に、表面改質処理装置1Cの改質領域222Sに追加改質部材7Cを配置する工程S10をさらに有する。被処理材5Cを配置する工程S10では、追加改質部材7Cが被処理材5Cよりも上流側に位置するように、表面改質処理装置1Cに追加改質部材7Cを取り付けていない被処理材5Cを配置する。この工程S10によっても、大気圧プラズマが発生する改質領域222Sに追加改質部材7Cを容易に配置することができる。
【0101】
<実験例>
追加改質部材7Dに含まれる第2改質元素が表面5aに堆積することを実験により確認した。実験の条件を以下に列記する。
・被処理材:鋼材丸棒(クロムモリブデン鋼)
・改質ガス:窒素ガス
・改質ガスの流量:1L/min
・電力:30W程度
・処理時間:60分
【0102】
処理後の被処理材5Dの表面5aを走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を用いて画像(以下、「SEM画像」と称する)を得た。さらに、電子線マイクロアナライザ(EPMA)を用いて処理後の被処理材5Dの表面5aにおける鉄、ニッケル及び窒素を評価する画像(以下、「EPMA画像」と称する)を得た。電子線マイクロアナライザの評価条件を以下に列記する。
・加速電圧:15kV
・照射電流:5×10-7A
・測定間隔:3μm
・測定点数:10000
【0103】
図13は、実験に用いた被処理材5Dにおける評価箇所の位置を示す。被処理材5Dには、3つの評価領域A、B、Cを設定した。評価領域Aの位置は、大気圧プラズマを生じさせる改質領域222S内であって、且つ、追加改質部材7Dよりも下流側である。評価領域Bの位置は、大気圧プラズマを生じさせる改質領域222S内であって、且つ、追加改質部材7Dよりも上流側である。評価領域Cの位置は、大気圧プラズマを生じさせる改質領域222Sの外側であって、改質ガスの流れを基準として評価領域Bよりも上流側である。
【0104】
図14(a)、(b)、(c)は、SEM画像である。
図14(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)は、EPMA画像である。それぞれの詳細は以下のとおりである
図14(a):評価領域AのSEM画像
図14(b):評価領域BのSEM画像
図14(c):評価領域CのSEM画像
図14(d):評価領域AのEPMA画像(鉄)
図14(e):評価領域BのEPMA画像(鉄)
図14(f):評価領域CのEPMA画像(鉄)
図14(g):評価領域AのEPMA画像(ニッケル)
図14(h):評価領域BのEPMA画像(ニッケル)
図14(i):評価領域CのEPMA画像(ニッケル)
図14(j):評価領域AのEPMA画像(窒素)
図14(k):評価領域BのEPMA画像(窒素)
図14(l):評価領域CのEPMA画像(窒素)
【0105】
図14(d)、(e)、(f)を参照すると、それぞれの評価領域のほとんどの部分が鉄であることがわかった。
図14(g)、(h)、(i)を参照すると、評価領域A(
図14(g))にニッケルが存在する(符号G14g参照)ことが確認されたが、評価領域B、C(
図14(h)、(i))にはニッケルの存在が確認されなかった。
図14(j)、(k)、(l)を参照すると、大気圧プラズマが形成される改質領域222Sに位置する評価領域A、B(
図14(j)、(k))では、全体に概ね均質に中程度の窒素が存在していることがわかった。一方、改質領域222Sに位置していない評価領域C(
図14(l))については、評価領域A、Bと比べると窒素の量がわずかであることがわかった。
【0106】
さらに、追加改質部材7Dの効果に注目する。
図14(g)によれば、ニッケルを改質元素として含む追加改質部材7Dの下流側(評価領域A)には、ニッケル(符号G14g参照)が存在していることが確認できた。
【0107】
なお、
図14(g)において、ニッケルが検出された領域は画像中央部分のみとなっている。つまり、画像の上側部分及び画像の下側部分では、ニッケルが検出されていない。これは、被処理材5Dが円柱であり、画像中央部分の位置に対して、画像の上側部分及び画像の下側部分の位置が異なっている。その結果、画像中央部分に焦点を合わせた場合に、画像の上側部分及び画像の下側部分が焦点の外に存在してしまう。つまり、画像の上側部分及び画像の下側部分は、測定範囲から外れているためにニッケルが検出されていないだけである。
【符号の説明】
【0108】
1…窒化処理装置、1B,1C…表面改質処理装置、2…処理領域形成モジュール(処理領域形成部)、3…ガス供給モジュール(ガス供給部)、4…電源モジュール(電源部)、5…被処理材、5a…表面、21…ガラス管(誘電体部材)、21c…ガラス管内周面(誘電体部材の主面)、21d…ガラス管外周面(誘電体部材の裏面)、22…電極メッシュ(電極部材)、25…テーブル、25a…処理面、31…ガスボンベ、32…ガス管、33…ガスフローメータ、41…電源、42…第1電源ライン、43…第2電源ライン、44…第3電源ライン、45…接地部、48…窒素原子、49…窒素活性種、58…鉄原子、59…窒化鉄原子、7B,7C…追加改質部材、AV…鉛直方向、AX…中心軸線。