(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007228
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】正極スラリーの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/139 20100101AFI20240111BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M4/139
H01M4/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108562
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【弁理士】
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【弁理士】
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100130605
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 浩治
(72)【発明者】
【氏名】上原 幸俊
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA19
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA07
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA11
5H050DA18
5H050EA08
5H050EA24
5H050GA10
5H050HA04
(57)【要約】
【課題】二次電池に優れた初期抵抗特性およびサイクル特性を付与できる正極を製造可能にする正極スラリーを提供する。
【解決手段】ここに開示される正極スラリーの製造方法は、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ分散剤と、第1分散媒とを含み、前記カーボンナノチューブが前記第1分散媒に分散した第1混合物を準備する工程、前記第1混合物と、ポリフッ化ビニリデンとを混合して、第2混合物を準備する工程、および前記第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る工程を、包含する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ分散剤と、第1分散媒とを含み、前記カーボンナノチューブが前記第1分散媒に分散した第1混合物を準備する工程、
前記第1混合物と、ポリフッ化ビニリデンとを混合して、第2混合物を準備する工程、および
前記第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る工程を、包含する
正極スラリーの製造方法。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記単層カーボンナノチューブの平均長さが、1.0μm以上5.0μm以下である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記第2混合物を得る工程において、前記第1混合物に、前記ポリフッ化ビニリデンと第2分散媒とを添加する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブ分散剤が、多核芳香族を含む、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極スラリーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン二次電池等の二次電池は、パソコン、携帯端末等のポータブル電源や、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両駆動用電源などに好適に用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池等の二次電池に用いられる正極は、一般的に、正極集電体上に正極活物質層が設けられた構成を有する。正極活物質層は、典型的には、正極活物質、導電材、バインダ等を含有する。この導電材としてカーボンナノチューブを用いることにより、正極の導電性を向上できることが知られている(例えば、特許文献1~3参照)。特許文献1~3では、正極活物質層の形成には、正極活物質層の構成成分が溶媒(言い換えると、分散媒)に分散した正極スラリーが用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2018-501602号公報
【特許文献2】特開2015-153714号公報
【特許文献3】特表2021-506064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者が鋭意検討した結果、従来技術においては、正極スラリーのカーボンナノチューブの分散状態が悪く、それが初期抵抗特性、サイクル特性といった電池特性の低下を招いているという問題があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、二次電池に優れた初期抵抗特性およびサイクル特性を付与できる正極を製造可能にする正極スラリーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示される正極スラリーの製造方法は、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ分散剤と、第1分散媒とを含み、前記カーボンナノチューブが前記第1分散媒に分散した第1混合物を準備する工程、前記第1混合物と、ポリフッ化ビニリデンとを混合して、第2混合物を準備する工程、および前記第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る工程を、包含する。
【0008】
このような構成によれば、二次電池に優れた初期抵抗特性およびサイクル特性(特に充放電を繰り返した際の容量劣化耐性)を付与できる正極を製造可能にする正極スラリーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係る製造方法により得られる正極スラリーを用いて作製される正極の一例の模式断面図である。
【
図3】
図2の正極を用いて構築されるリチウムイオン二次電池の構成を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図3のリチウムイオン二次電池の捲回電極体の構成を示す模式分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明に係る実施の形態を説明する。なお、本明細書において言及していない事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面においては、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明している。また、各図における寸法関係(長さ、幅、厚み等)は実際の寸法関係を反映するものではない。なお、本明細書において「A~B」として表現される数値範囲には、AおよびBが含まれる。
【0011】
なお、本明細書において「二次電池」とは、繰り返し充放電可能な蓄電デバイスをいい、いわゆる蓄電池、および電気二重層キャパシタ等の蓄電素子を包含する用語である。また、本明細書において「リチウムイオン二次電池」とは、電荷担体としてリチウムイオンを利用し、正負極間におけるリチウムイオンに伴う電荷の移動により充放電が実現される二次電池をいう。
【0012】
なお、本明細書において「スラリー」とは、固形分の一部またはすべてが分散媒に分散した混合物のことをいい、いわゆる「ペースト」、「インク」等を包含する。
【0013】
以下、例として、ここに開示される製造方法によって得られる正極スラリーが、リチウムイオン二次電池用の正極スラリーである実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係る正極スラリーの製造方法は、カーボンナノチューブ(CNT)と、CNT分散剤と、第1分散媒とを含み、当該カーボンナノチューブが当該第1分散媒に分散した第1混合物を準備する工程S101(以下、「第1混合物準備工程」ともいう);当該第1混合物と、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)とを混合して、第2混合物を準備する工程S102(以下、「第2混合物準備工程」ともいう);および当該第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る工程S103(以下、「活物質混合工程」ともいう)を、包含する。
【0015】
まず、第1混合物準備工程S101について説明する。当該工程S101では、CNTと、CNTの分散剤と、第1分散媒とを含み、CNTが第1分散媒に分散した第1混合物を準備する。
【0016】
使用されるCNTの種類は特に限定されず、例えば、単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)などを用いることができる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。正極活物質間の導電パスをより多く形成できることから、CNTとしては、SWCNTが好ましい。CNTは、アーク放電法、レーザアブレーション法、化学気相成長法等により製造されたものであってよい。
【0017】
CNTの平均長さは特に限定されない。CNTの平均長さが長過ぎると、CNTが凝集して分散性が低下する傾向にある。そのため、CNTの平均長さは、15μm以下が好ましく、8.0μm以下がより好ましく、5.0μm以下がさらに好ましく、3.0μm以下が最も好ましい。一方、CNTの平均長さが短過ぎると、正極活物質間の導電パスが形成され難くなる傾向にある。そのため、CNTの平均長さは、0.3μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、0.8μm以上がさらに好ましく、1.0μm以上が最も好ましい。
【0018】
CNTの平均直径は、特に限定されず、例えば0.1nm以上10nm以下であり、好ましくは0.3nm~5.0nmであり、さらに好ましくは0.5nm~3.0nmであり、最も好ましくは1.0nm~2.0nmである。
【0019】
なお、CNTの平均長さおよび平均直径は、例えば、CNTの電子顕微鏡写真を撮影し、100個以上のCNTの長さおよび直径の平均値として、それぞれ求めることができる。具体的に例えば、CNT分散液を希釈した後乾燥して、測定試料を調製する。この試料について走査型電子顕微鏡(SEM)観察を行い、100個以上のCNTの長さおよび直径を求め、平均値を算出する。このとき、CNTが再凝集している場合には、凝集したCNTの束に対して、長さおよび直径を求める。
【0020】
CNTは容易に凝集を起こす材料である。CNT分散剤は、CNTを分散媒に安定に分散または可溶化させる添加剤であり、可溶化剤とも呼ばれるものもある。CNT分散剤としては、例えば、界面活性剤型分散剤(低分子型分散剤とも呼ばれる)、高分子型分散剤、無機型分散剤等を用いることができる。CNT分散剤は、アニオン性、カチオン性、両性または非イオン性のいずれであってもよい。よって、CNT分散剤は、その分子構造中に、アニオン性基、カチオン性基、およびノニオン性基からなる群より選ばれる少なくとも1種の官能基を有していてもよい。なお、界面活性剤とは、分子構造内に親水性部位と親油性部位を備え、これらが共有結合で結合した化学構造を有する両親媒性物質をいう。
【0021】
CNT分散剤の具体例としては、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物アンモニウム塩、メチルナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩等の重縮合系の芳香族系界面活性剤;ポリアクリル酸およびその塩、ポリメタクリル酸およびその塩等のポリカルボン酸およびその塩;トリアジン誘導体系分散剤(好ましくはカルバゾリル基、またはベンゾイミダゾリル基を含むもの);ポリビニルピロリドン(PVP);ピレン、アントラセン等の多核芳香族を側鎖に有するポリマー;ピレンアンモニウム誘導体(例、ピレンにアンモニウムブロマイド基が導入された化合物)、アントラセンアンモニウム誘導体等の多核芳香族アンモニウム誘導体;などが挙げられる。これらのCNT分散剤は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。CNT分散剤としては、多核芳香族を含むものが好ましい。具体的には、CNT分散剤としては、多核芳香族を側鎖に有するポリマー、および多核芳香族アンモニウム誘導体が好ましい。
【0022】
CNTに対するCNT分散剤の割合は、CNTおよびCNT分散剤の種類に応じて適宜決定してよい。ここで、CNT分散剤の割合が小さ過ぎると、分散性が不十分となるおそれがある。一方、CNT分散剤の割合が大き過ぎると、CNT表面に過剰にCNT分散剤が付着して、抵抗増加を起こし得る。CNTがSWCNTである場合には、CNT分散剤の使用量は、CNT100質量部に対して、例えば1質量部~400質量部であり、好ましくは20質量部~200質量部である。CNTがMWNTである場合には、CNT分散剤の使用量は、CNT100質量部に対して、例えば1質量部~100質量部であり、好ましくは4質量部~40質量部である。
【0023】
分散媒は、当該技術分野では「溶媒」とも称される。第1分散媒としては、リチウムイオン二次電池用の公知の正極スラリーに採用されている分散媒(特に、有機溶媒)を用いることができる。第1分散媒の好適な例としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)が挙げられる。
【0024】
第1分散媒の使用量は、CNTが分散できる限り特に限定されない。好適には、第1混合物の25℃における粘度が100mPa・s~10,000mPa・s(特に、1,000mPa・s~5,000mPa・s)となるような量で、第1分散媒を使用する。なお、この粘度は、例えば、E型粘度計を用いて、25℃、せん断速度10秒-1の条件で測定して求めることができる。
【0025】
当該工程S101では、通常、PVdFおよび活物質を混合しない。よって、当該工程S101では、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒のみを使用してよい。しかしながら、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、当該工程に、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒以外の成分を使用してもよい。
【0026】
第1混合物準備工程S101では、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒を混合して、CNTを第1分散媒中で分散させる。混合方法は、CNTが第1分散媒中に分散する限り特に限定されない。また、予備混合を行ってもよい。
【0027】
予備混合は、典型的には、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒の接触を目的として行われる。予備混合は、例えば、撹拌翼を備えた撹拌装置(例、ホモディスパー等)を用いて、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒を混合することにより行うことができる。
【0028】
CNTを第1分散媒中で分散させるための混合に関し、CNTは凝集を起こしやすいため、第1混合物準備工程S101の初期においては、通常は、CNTが凝集している。そのため、当該混合は、CNTの凝集体が解砕されるように、CNTに物理的な力を作用させながら行うことが好ましい。このような混合は、例えば、湿式微粒化装置(例、スギノマシン社製のスターバーストラボシリーズなど)、超高圧ホモジナイザー等を用いて行うことができる。このような装置によれば、CNT、CNT分散剤、および第1分散媒の混合物を加圧し、加圧した混合物同士を衝突させることで、CNTの凝集体を解砕しながら、CNTを第1分散媒中に分散させることができる。
【0029】
好適には、第1混合物の25℃における粘度が100mPa・s~10,000mPa・s(特に、1,000mPa・s~5,000mPa・s)となるようにCNTを分散させる。以上のようにして、CNTが第1分散媒中に分散した第1混合物を得ることができる。第1混合物は、通常、黒色の懸濁液である。
【0030】
次に、第2混合物準備工程S102について説明する。当該工程S102では、上記工程S01で得られた第1混合物と、PVdFとを混合する。
【0031】
第1混合物はその全量を、当該工程S102に用いてもよいし、一部を当該工程S102に用いてもよい。当該工程S102において、CNTの量は、特に限定されないが、正極スラリーの全固形分中(すなわち、正極スラリーの固形分の合計質量に対し)、例えば、0.01質量%~3.0質量%であり、好ましくは0.05質量%~2.0質量%であり、より好ましくは0.05質量%~1.0質量%である。
【0032】
PVdFは、正極のバインダ成分である。工程S102に使用されるPVdFの分子量は、二次電池の正極に用いられる公知のバインダ用PVdFと同じであってよい。PVdFは、典型的にはホモポリマーであるが、本発明の効果を阻害しない範囲内(例えば、全モノマー単位中、10モル%以下)で、他のフッ化ビニリデン以外のモノマー単位が共重合されていてもよい。
【0033】
PVdFの使用量は、特に限定されないが、正極スラリーの全固形分中(すなわち、正極スラリーの固形分の合計質量に対し)、例えば、0.1質量%~10質量%であり、好ましくは0.2質量%~5質量%であり、より好ましくは0.3質量%~2質量%である。
【0034】
工程S102では、PVdF以外に、第2分散媒を添加してもよい。第2分散媒としては、第1分散媒として例示されたものを使用することができる。第2分散媒の種類は、第1分散媒と同じであっても異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。第2分散媒の使用により、得られる正極スラリーの固形分濃度の調整や、PVdFの第2混合物への溶解が容易になる。
【0035】
第2分散媒の使用量は特に限定されない。第2分散媒の使用量は、第1分散媒に対して、例えば0.05質量%~10質量%であり、好ましくは0.1質量%~5質量%である。
【0036】
当該工程S102では、通常、活物質を添加しない。よって、当該工程S102では、第1混合物、PVdFおよび必要に応じ第2分散媒のみを混合してよい。しかしながら、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、当該工程S102において、第1混合物、PVdF、および第2分散媒以外の成分を混合してもよい。
【0037】
第1混合物、PVdF、および必要に応じ第2分散媒の混合は、公知方法に従い行うことができる。工程S102は、典型的には、第2混合物においてPVdFが完全に溶解しているように行われる。混合は、公知の撹拌装置(例、プラネタリーミキサー等)を用いて行うことができる。
【0038】
次に、活物質混合工程S103について説明する。当該工程S103では、上記工程S102で得られた第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る。
【0039】
第2混合物はその全量を、当該工程S103に用いてもよいし、一部を当該工程S103に用いてもよい。
【0040】
工程S103に用いられる正極活物質としては、リチウムイオン二次電池に用いられる公知の正極活物質を用いてよい。具体的に例えば、正極活物質として、リチウム複合酸化物、リチウム遷移金属リン酸化合物等を用いることができる。正極活物質の結晶構造は、特に限定されず、層状構造、スピネル構造、オリビン構造等であってよい。
【0041】
リチウム複合酸化物としては、遷移金属元素として、Ni、Co、Mnのうちの少なくとも1種を含むリチウム遷移金属複合酸化物が好ましく、その具体例としては、リチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等が挙げられる。これらの正極活物質は、1種単独で用いてよく、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。正極活物質としては、リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物が好ましい。
【0042】
なお、本明細書において「リチウムニッケルコバルトマンガン系複合酸化物」とは、Li、Ni、Co、Mn、Oを構成元素とする酸化物の他に、それら以外の1種または2種以上の添加的な元素を含んだ酸化物をも包含する用語である。かかる添加的な元素の例としては、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Y、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、W、Na、Fe、Zn、Sn等の遷移金属元素や典型金属元素等が挙げられる。また、添加的な元素は、B、C、Si、P等の半金属元素や、S、F、Cl、Br、I等の非金属元素であってもよい。このことは、上記したリチウムニッケル系複合酸化物、リチウムコバルト系複合酸化物、リチウムマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルマンガン系複合酸化物、リチウムニッケルコバルトアルミニウム系複合酸化物、リチウム鉄ニッケルマンガン系複合酸化物等についても同様である。
【0043】
リチウム遷移金属リン酸化合物としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO4)、リン酸マンガン鉄リチウム等が挙げられる。
【0044】
上記の正極活物質は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
正極活物質の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、0.05μm以上25μm以下であり、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは3μm以上15μm以下である。なお、本明細書において、「平均粒子径」とは、メジアン径(D50)を指し、したがって、レーザー回折・散乱法に基づく体積基準の粒度分布において、粒径が小さい微粒子側からの累積頻度50体積%に相当する粒径を意味する。よって、平均粒子径(D50)は、公知のレーザー回折・散乱式の粒度分布測定装置等を用いて求めることができる。
【0046】
正極活物質の使用量は、特に限定されないが、正極スラリーの全固形分中(すなわち、正極スラリーの固形分の合計質量に対し)、87質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは96質量%以上である。
【0047】
当該工程S103では、第2混合物、および正極活物質のみを混合してよい。しかしながら、本発明の効果を顕著に阻害しない範囲内で、当該工程S103において、第2混合物および正極活物質以外の成分(例えば、第1分散媒および第2分散媒と同じまたは類似の第3分散媒、固体電解質等)を混合してもよい。
【0048】
第2混合物と、正極活物質との混合は、公知方法に従い行うことができる。例えば、これらの混合は、公知の撹拌装置(例、プラネタリーミキサー等)を用いて行うことができる。
【0049】
以上のようにして、正極スラリーを得ることができる。当該正極スラリーにおいては、CNTが高度に分散している。よって、当該正極スラリーを用いて正極を作製し、当該正極を用いて二次電池を構築した場合には、初期抵抗が小さく、サイクル特性が高い(具体的には、充放電を繰り返した際の容量劣化が小さい)二次電池を得ることができる。
【0050】
正極の作製は、公知方法に従い行うことができる。例えば、
図2示す正極を作製する場合について説明する。
図2は、正極の幅方向および厚さ方向に沿った断面図である。
【0051】
図2に示す正極50は、正極集電体52と、正極集電体52上に支持された正極活物質層54とを備える。図示例では、正極活物質層54は、正極集電体52の両面上に設けられているが、片面上に設けられていてもよい。正極活物質層54は、好ましくは正極集電体52の両面上に設けられる。
【0052】
正極50は、図示例のように、少なくとも一端部に、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した、正極活物質層非形成部分52aを有していてもよい。正極活物質層非形成部分52aは、集電部として機能する。正極活物質層非形成部分52a上に、正極活物質層54に隣接する保護層をさらに設けてもよい。保護層は、例えば、セラミック粒子等を含む絶縁性の層である。
【0053】
正極集電体52としては、アルミニウム、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属製のシートまたは箔状体を用いることができ、好適にはアルミニウム箔が用いられる。正極集電体52としてアルミニウム箔を用いる場合には、その厚みは、特に限定されないが、例えば5μm以上35μm以下であり、好ましくは7μm以上20μm以下である。
【0054】
正極活物質層54の片面あたりの厚みは、特に限定されないが、例えば、10μm以上300μm以下であり、好ましくは20μm以上200μm以下である。
【0055】
正極50は、得られた正極スラリーを、正極集電体52上に塗布する工程と、塗布された正極スラリーを乾燥して正極活物質層54を形成する工程と、必要に応じ、正極活物質層54をプレス処理する工程を行うことにより、作製することができる。これらの工程は、公知方法に従って、実施することができる。
【0056】
ここに開示される製造方法によって得られるスラリーを用いて作製される正極50は、公知方法に従い、二次電池(特にリチウムイオン二次電池)の正極として用いることができる。以下、正極50を用いた二次電池の例として、当該正極50を用いたリチウムイオン二次電池の構成例を、図面を参照しながら説明する。
【0057】
図3に示すリチウムイオン二次電池100は、扁平形状の捲回電極体20と非水電解質80とが扁平な角形の電池ケース(即ち外装容器)30に収容されることにより構築される密閉型電池である。電池ケース30には外部接続用の正極端子42および負極端子44と、電池ケース30の内圧が所定レベル以上に上昇した場合に該内圧を開放するように設定された薄肉の安全弁36とが設けられている。また、電池ケース30には、非水電解質80を注入するための注入口(図示せず)が設けられている。正極端子42は、正極集電板42aと電気的に接続されている。負極端子44は、負極集電板44aと電気的に接続されている。電池ケース30の材質としては、例えば、アルミニウム等の軽量で熱伝導性の良い金属材料が用いられる。なお、
図3は、非水電解質80の量を正確に表すものではない。
【0058】
捲回電極体20は、
図3および
図4に示すように、正極シート50と、負極シート60とが、2枚の長尺状のセパレータシート70を介して重ね合わされて長手方向に捲回された形態を有する。正極シート50は、長尺状の正極集電体52の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って正極活物質層54が形成された構成を有する。負極シート60は、長尺状の負極集電体62の片面または両面(ここでは両面)に長手方向に沿って負極活物質層64が形成されている構成を有する。
【0059】
正極50は、正極活物質層54が形成されずに正極集電体52が露出した、負極活物質層非形成部分52aを有している。負極60は、負極活物質層64が形成されずに負極集電体62が露出した、負極活物質層非形成部分62aを有している。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aは、捲回電極体20の捲回軸方向(すなわち、上記長手方向に直交するシート幅方向)の両端から外方にはみ出すように形成されている。正極活物質層非形成部分52aおよび負極活物質層非形成部分62aには、それぞれ正極集電板42aおよび負極集電板44aが接合されている。
【0060】
正極シート50は、上述の実施形態に係る製造方法によって得られる正極スラリーを用いて作製されている。
【0061】
負極シート60を構成する負極集電体62としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質層64は、負極活物質を含む。負極活物質としては、例えば黒鉛、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素材料を使用し得る。負極活物質層64は、バインダ、増粘剤等をさらに含み得る。バインダとしては、例えばスチレンブタジエンラバー(SBR)等を使用し得る。増粘剤としては、例えばカルボキシメチルセルロース(CMC)等を使用し得る。
【0062】
セパレータ70としては、従来からリチウムイオン二次電池に用いられるものと同様の各種微多孔質シートを用いることができ、その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂から成る微多孔質樹脂シートが挙げられる。かかる微多孔質樹脂シートは、単層構造であってもよく、二層以上の複層構造(例えば、PE層の両面にPP層が積層された三層構造)であってもよい。セパレータ70は、耐熱層(HRL)を備えていてもよい。
【0063】
非水電解質80は、典型的には、非水溶媒と電解質塩(言い換えると、支持塩)とを含有する。非水溶媒としては、一般的なリチウムイオン二次電池の電解質に用いられる各種のカーボネート類、エーテル類、エステル類、ニトリル類、スルホン類、ラクトン類等の有機溶媒を、特に限定なく用いることができる。なかでも、カーボネート類が好ましい。
【0064】
電解質塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)等のリチウム塩を用いることができ、なかでも、LiPF6が好ましい。電解質塩の濃度は、特に限定されないが、0.7mol/L以上1.3mol/L以下が好ましい。
【0065】
なお、上記非水電解質80は、本発明の効果を著しく損なわない限りにおいて、上述した成分以外の成分、例えば、オキサラト錯体、ビニレンカーボネート(VC)等の被膜形成剤、ビフェニル(BP)、シクロヘキシルベンゼン(CHB)等のガス発生剤;増粘剤;等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
リチウムイオン二次電池100は、初期抵抗特性およびサイクル特性(特に充放電を繰り返した際の容量劣化耐性)に優れる。リチウムイオン二次電池100は、各種用途に利用可能である。好適な用途としては、電気自動車(BEV)、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等の車両に搭載される駆動用電源が挙げられる。また、リチウムイオン二次電池100は、小型電力貯蔵装置等の蓄電池として使用することができる。リチウムイオン二次電池100は、典型的には複数個を直列および/または並列に接続してなる組電池の形態でも使用され得る。
【0067】
なお、一例として扁平形状の捲回電極体20を備える角形のリチウムイオン二次電池100について説明した。しかしながら、ここに開示されるリチウムイオン二次電池は、積層型電極体(すなわち、複数の正極と、複数の負極とが交互に積層された電極体)を備えるリチウムイオン二次電池として構成することもできる。また、ここに開示される非水電解質二次電池は、円筒形リチウムイオン二次電池、ラミネートケース型リチウムイオン二次電池、コイン型リチウムイオン二次電池等として構成することもできる。
【0068】
また、公知方法に従い、上記の正極を用いて、リチウムイオン二次電池以外の非水電解質二次電池を構築することもできる。さらに、公知方法に従い、非水電解質80に代えて固体電解質を用いて全固体二次電池(特に全固体リチウムイオン二次電池)を構築することができる。
【0069】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0070】
〔実施例1〕
0.1質量部のSWCNT(平均長さ1.0μm、平均直径2.0nm)と、0.1質量部のCNT分散剤(ピレンアンモニウムを側鎖に有するポリマー)と、19.8質量部のN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とを秤量した。これを、撹拌装置(ホモディスパー)を用いて液状にまるまで予備混合した。予備混合物を、湿式微粒化装置「スターバーストラボ HJP-17007」(スギノマシン社製)を用いて、20回、パス式分散処理を行った。
【0071】
次に、第1混合物に0.4質量部のPVdFを添加した。なお、PVdFとしては、分子量が約140万のコポリマーを用いた。さらに得られる正極スラリーの固形分濃度が83質量%となるように、NMPを0.68質量部添加した。プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合して、第2混合物を得た。
【0072】
第2混合物に、正極活物質としてのLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を、99.4質量部加え、プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合した。このようにして実施例1の正極スラリーを得た。
【0073】
〔比較例1〕
実施例1と同じ方法で、第1混合物を得た。第1混合物に、99.4質量部のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、0.4質量部のPVdFと、11.09質量部のNMPとを添加して、プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合した。このようにして、比較例1の正極スラリーを得た。
【0074】
〔比較例2〕
実施例1と同じ方法で、第1混合物を得た。第1混合物に添加するNMPの量を11.09質量部から10.97質量部に変更した以外は、比較例1と同様にして、比較例2の正極スラリーを得た。
【0075】
〔比較例3〕
NMPの量を19.8質量部から9.8質量部に変更した以外は、実施例1と同様にして第1混合物を得た。この第1混合物に、第1混合物に、99.4質量部のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、0.4質量部のPVdFと、11.09質量部のNMPとを添加して、プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合した。このようにして、比較例3の正極スラリーを得た。
【0076】
〔比較例4〕
SWCNT(平均長さ1.0μm、平均直径2.0nm)からSWCNT(平均長さ0.5μm、平均直径2.0nm)に変更し、NMPの量を19.8質量部から9.8質量部に変更し、分散処理条件を変更した以外は、実施例1と同様にして第1混合物を得た。この第1混合物に、99.4質量部のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、0.4質量部のPVdFと、11.09質量部のNMPとを添加して、プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合した。このようにして、比較例4の正極スラリーを得た。
【0077】
〔比較例5〕
実施例1と同じ方法で、第1混合物を得た。第1混合物に、99.4質量部のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2と、0.4質量部のPVdFとを添加して、プラネタリーミキサーを用いてこれらを混合した。このようにして、比較例5の正極スラリーを得た。
【0078】
〔比較例6〕
0.1質量部のSWCNT(平均長さ1.0μm、平均直径2.0nm)と、0.1質量部のCNT分散剤と、0.4質量部のPVdFと、20.48質量部のNMPとを秤量した。これを、撹拌装置(ホモディスパー)を用いて液状になるまで予備混合した。予備混合物を、湿式微粒化装置「スターバーストラボ HJP-17007」(スギノマシン社製)を用いて、20回、パス式分散処理を行った。これにより、第1混合物を得た。この第1混合物の粘度は、1000mPa・sであった。
【0079】
第1混合物に、99.4質量部のLiNi1/3Co1/3Mn1/3O2を添加して、プラネタリーミキサーを用いて混合した。このようにして、比較例6の正極スラリーを得た。
【0080】
実施例1および比較例1~6の内容を、表1にまとめる。また、第1混合物の粘度および得られた正極スラリーの粘度を表1に示す。なお、当該粘度は、E型粘度計を用いて25℃、せん断速度10秒-1の条件で測定した。さらに、得られた正極スラリーの固形分濃度を表1に示す。
【0081】
【0082】
<評価用リチウムイオン二次電池の作製>
実施例1および各比較例の正極スラリーを、正極集電体としてのアルミニウム箔の両面に塗布した。このとき、リード接続部として、アルミニウム箔上に、正極スラリー未塗工部を設けた。塗布したスラリーを乾燥して正極活物質層を形成した。得られたシートに対してローラーを用いてプレス処理を行った後、所定の寸法に裁断して、正極集電体の両面に正極活物質層が形成された正極を得た。正極の目付量は、45mg/cm2、正極活物質層の充填密度は、3.60g/cm3であった。
【0083】
炭素系負極活物質としての黒鉛と、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩(CMC-Na)と、スチレンブタジエンラバー(SBR)のディスパージョンとを、固形分の質量比として黒鉛:CMC-Na:CMC=98:1:1で混合した。さらにイオン交換水を適量加えて、負極スラリーを調製した。負極スラリーを、負極集電体としての銅箔の両面に塗布した。このとき、リード接続部として、銅箔上に、負極スラリー未塗工部を設けた。塗布したスラリーを乾燥して負極活物質層を形成した。得られたシートに対してローラーを用いてプレス処理を行った後、所定の寸法に裁断して、負極集電体の両面に負極活物質層が形成された負極を得た。負極活物質層の充填密度は、1.50g/cm3であった。
【0084】
上記作製した正極および負極のそれぞれに、リードを取り付けた。単層のポリプロピレン製のセパレータを用意した。正極と、負極とをセパレータを介して交互に1枚ずつ積層して、積層型電極体を作製した。
【0085】
エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)とエチルメチルカーボネート(EMC)とを30:40:30の体積比で含む混合溶媒を用意した。この混合溶媒に、ビニレンカーボネートを2質量%の濃度で溶解させ、リチウムビス(オキサレート)ボレートを0.8質量%の濃度で溶解させ、支持塩としてのLiPF6を1.15mol/Lの濃度で溶解させた。これにより、非水電解液を得た。
【0086】
上記作製した積層型電極体と非水電解液とを、角型の電池ケースに収容し、封止して、角型の評価用リチウムイオン二次電池を得た。
【0087】
<出力抵抗測定>
各評価用リチウムイオン二次電池を、定電流定電圧(CC-CV)充電によって、SOC(State of charge)50%に調製した後、25℃の環境下に置いた。5Cの電流値で10秒間放電を行い、このときの電圧降下量ΔVを取得した。この電圧降下量ΔVと電流値とを用いて、各評価用二次電池の出力抵抗値を算出した。結果を表2に示す。
【0088】
<サイクル特性評価>
各評価用リチウムイオン二次電池を、25℃の環境下に置き、充電電圧4.2V、充電電流0.5CでのCC-CV充電を3時間行った。その後、放電電流0.5Cで、3.0Vまで定電流(CC)放電した。このときの放電容量を測定して、初期容量とした。
【0089】
次に、各評価用リチウムイオン二次電池に対して、上記のCC-CV充電とCC放電とを1サイクルとする充放電を、500サイクル繰り返した。その後、初期容量と同様にして放電容量を測定した。(500サイクル目の放電容量/初期容量)×100より、容量維持率を算出した。結果を表2に示す。
【0090】
【0091】
実施例1と比較例1~5の比較より、CNT、分散剤、および分散媒を含有する第1混合物に、正極活物質とPVdFとを同時に添加および混合した場合には、出力抵抗が高く、サイクル特性が低いことがわかる。実施例1と比較例6との比較より、また、CNT、分散剤、PVdF、および分散媒を含有する第1混合物に、正極活物質を混合した場合でも、出力抵抗が高く、サイクル特性が低いことがわかる。
【0092】
以上のことから、CNT、分散剤、および分散媒を含有する第1混合物に、PVdFを混合して第2混合物を得、さらに正極活物質を混合する場合には、出力抵抗が低く、サイクル特性が高いことがわかる。すなわち、ここに開示される正極スラリーの製造方法によれば、二次電池に優れた初期抵抗特性およびサイクル特性を付与できる正極を製造可能であることがわかる。
【0093】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0094】
すなわち、ここに開示される正極スラリーの製造方法は、以下の項[1]~[5]である。
[1]カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブ分散剤と、第1分散媒とを含み、前記カーボンナノチューブが前記第1分散媒に分散した第1混合物を準備する工程、
前記第1混合物と、ポリフッ化ビニリデンとを混合して、第2混合物を準備する工程、および
前記第2混合物と、正極活物質とを混合して、正極スラリーを得る工程を、包含する
正極スラリーの製造方法。
[2]前記カーボンナノチューブが、単層カーボンナノチューブである、項[1]に記載の製造方法。
[3]前記単層カーボンナノチューブの平均長さが、1.0μm以上5.0μm以下である、項[1]または[2]に記載の製造方法。
[4]前記第2混合物を得る工程において、前記第1混合物に、前記ポリフッ化ビニリデンと第2分散媒とを添加する、項[1]~[3]のいずれかに1項に記載の製造方法。
[5]前記カーボンナノチューブ分散剤が、多核芳香族を含む、項[1]~[4]のいずれかに1項に記載の製造方法。
【符号の説明】
【0095】
20 捲回電極体
30 電池ケース
36 安全弁
42 正極端子
42a 正極集電板
44 負極端子
44a 負極集電板
50 正極シート(正極)
52 正極集電体
52a 正極活物質層非形成部分
54 正極活物質層
60 負極シート(負極)
62 負極集電体
62a 負極活物質層非形成部分
64 負極活物質層
70 セパレータシート(セパレータ)
80 非水電解質
100 リチウムイオン二次電池