(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072302
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 58/20 20060101AFI20240521BHJP
D06F 58/22 20060101ALI20240521BHJP
D06F 58/02 20060101ALI20240521BHJP
D06F 105/34 20200101ALN20240521BHJP
【FI】
D06F58/20
D06F58/22
D06F58/02 K
D06F58/02 F
D06F105:34
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022182991
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今成 正雄
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】藤井 崇博
(72)【発明者】
【氏名】額賀 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】河原崎 駿
(72)【発明者】
【氏名】佐野 壮一
【テーマコード(参考)】
3B166
【Fターム(参考)】
3B166AA02
3B166AA04
3B166AB23
3B166AB30
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3B166JM01
3B166JM02
3B166JM03
(57)【要約】
【課題】フィルタの目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保する。
【解決手段】洗濯乾燥機100は、外槽20と戻り風路252とを接続する接続部253と、リントを捕集するフィルタ258と、を備えている。戻り風路は、外槽の背面上部に設けられ、フィルタは、接続部に設けられている。フィルタの外周部分の形状は、前記外槽の背面の外周部分に沿うように、略円弧形状になっている。排気口257は、接続部におけるフィルタの出口直後の場所に設けられるとよい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯溜可能な外槽と、
前記外槽内に回転自在に支持され、洗濯物が収容される略円筒型のドラムと、
圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、を有するヒートポンプと、
前記外槽と前記ヒートポンプとを接続する戻り風路と、
前記外槽と前記戻り風路とを接続する接続部と、
リントを捕集するフィルタと、を備え、
前記接続部は、前記外槽の背面上部に設けられ、
前記フィルタは、前記接続部に設けられ、
前記フィルタの外周部分の形状は、前記外槽の背面の外周部分に沿うように、略円弧形状になっている
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯乾燥機において、
排気口は、前記接続部における前記フィルタの出口直後の場所に設けられる
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯乾燥機において、
前記排気口には、排気量を変更する可変排気手段が設けられている
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項3に記載の洗濯乾燥機において、
前記可変排気手段は、前記フィルタの洗浄後に開放される
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1に記載の洗濯乾燥機において、
前記フィルタは、空気の流れ方向に対して複数枚設けられている
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項5に記載の洗濯乾燥機において、
複数枚の前記フィルタのうち、少なくとも1枚のフィルタは、周囲に枠体が設けられ、前記接続部に設けられたフィルタ取付部から前記枠体と一緒に取り外すことができる
ことを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
衣類等の洗濯から乾燥までを連続して行える洗濯乾燥機は、乾燥運転時に、送風ファンと熱源により高温・低湿度の空気を作り、これを洗濯槽内に吹き込み、衣類の温度を高くし、衣類から水分を蒸発させ、蒸発した水分を除湿する温風乾燥方式により行う。蒸発した水分の除去方法としては、循環空気を冷却除湿する方式と、循環空気を周囲の低湿な空気と入れ替える方式がある。さらに冷却除湿の冷熱源としては、ヒートポンプを用いる方式と冷却水を用いる方式がある。
【0003】
ヒートポンプ方式では,循環空気から冷却媒体で除湿してくみ上げた熱を、同じ循環空気の加熱に用いる際に圧縮機仕事分が加えられるため、循環空気の温度レベルが上がっていく。除湿と加熱をバランスさせてヒートポンプを安定運転させるために、圧縮機入力相当の冷却を行うが、通常では、循環空気の一部を周囲空気と吸排気させて、除湿の一部も兼ねて排熱している。
【0004】
この排気量は、時短コースと省エネルギーコースで異なってくる。時短コースでは、大風量とし、ヒートポンプの出力を上げて、除湿と加熱を促進させる運転となる。一方、省エネルギーコースでは風量を抑えてヒートポンプの出力も低くしてCOP(Coefficient of Performance)の高い運転とする。このため、排気量は基本的には圧縮機仕事分の排熱量に相当するため、二つのコースで異なってくる。
【0005】
さらに乾燥運転終了時の洗濯物のしわの少ない状態を得るには、送風ファンの循環空気をドラムのドア側開口部から直接洗濯物に吹き付ける構成とするため、ドラムの内圧は風量の影響を受け易い。さらには戻り風路の圧損も風量が大きいと風速の2乗で増加するため、風路内圧力降下は大きくなる。
【0006】
従来、排気機構に関連する技術として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には「外郭を構成する筐体と、前記筐体内に設けられ、衣類を収容する乾燥槽と、圧縮機、凝縮器、減圧器、蒸発器を有するヒートポンプ機構と、前記乾燥槽に設けられている空気流出口と空気流入口との間を接続する風路であって、前記空気流出口側に前記蒸発器が収容され、前記空気流入口側に前記凝縮器が収容されている乾燥風路と、前記乾燥風路のうち前記蒸発器よりも前記空気流出口側に設けられている導通口に接続されている圧縮機収容部と、前記凝縮器の温度を検知する温度検知部と、前記乾燥風路のうち前記導通口よりも前記空気流出口側に設けられている排気口と、前記導通口の開閉および前記排気口の開閉を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が所定温度を超えていない場合には、前記導通口を閉塞するとともに前記排気口を閉塞することにより、前記乾燥槽内の空気を前記乾燥風路を通して循環させ、前記温度検知部によって検知される前記凝縮器の温度が前記所定温度を超えた場合には、前記導通口を開放するとともに前記排気口を開放することにより、前記筐体内の空気を前記圧縮機収容部内に吸い込み、その吸い込んだ空気を前記導通口から前記乾燥風路内に導入し、その導入した空気を前記排気口から排出する」衣類乾燥機が開示されている。
【0007】
また、従来、排気機構に関連する技術として、特許文献2に記載されたものがある。特許文献2には「筐体内に支持した外槽と、前記外槽内に支持した内槽と、圧縮機及び圧縮した冷媒の熱を放熱する放熱器及び高圧の冷媒の圧力を減圧する絞り手段及び減圧した冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器とを冷媒が循環するように管路で連結したヒートポンプ装置と、前記外槽、吸熱器、放熱器の順に空気が循環する循環風路と、前記循環風路内で空気を循環させる送風手段と、前記外槽内に貯められる洗濯水が所定の水位以上になると洗濯水を外槽外へ排出する溢水口とを備え、前記循環風路から前記外槽への空気の入口と、前記外槽から循環風路への空気の出口を前記溢水口より上方に設けた」洗濯乾燥機が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2022-91428号公報
【特許文献2】特開2005-46414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1,2に開示された従来技術は、以下に説明するように、フィルタの目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保することが望まれている。
【0010】
例えば、特許文献1に記載された従来技術は、排気口に排気用のフィルタを設けている。このような特許文献1に記載された従来技術は、乾燥工程時にフィルタが目詰まりしてくると、湿った空気の一部を排気口から外部に排気する際に、排気量が減ってしまい、乾燥時間を長期化させてしまう可能性がある。
【0011】
また、例えば、特許文献1に記載された従来技術は、乾燥工程時に戻り風路側のダクト内を流れる湿った空気の主流から支流に空気を分岐させ、ダクト内の静圧に加えて主流の動圧を利用することで、湿った空気の一部を外部に排気する。このような特許文献1に記載された従来技術は、排気する際に、主流の動圧の依存が大きくなり、排気量が変動し易くなる。そして特許文献1に記載された従来技術は、乾燥工程時に主流の空気量が減ると、排気量が減ってしまい、乾燥時間を長期化させてしまう可能性がある。
【0012】
また、例えば、特許文献2に記載された従来技術は、排気口がドラムの側壁に面するように設けられている。このような特許文献2に記載された従来技術は、洗浄時や脱水時にドラムの高速回転で飛ばされた水が排気口を直接湿らせる。これにより、特許文献2に記載された従来技術は、その後の乾燥運転時に排気とともに流出してくるリント(塵埃)が排気口に付着して固着するため、湿った空気の一部を排気口から外部に排気する際に、排気量が減ってしまい、乾燥時間を長期化させてしまう可能性がある。また、特許文献2に記載された従来技術は、排気口に付着したリントの洗浄手段を持たないため、運転を続けると、排気口を閉塞させてしまう可能性がある。
【0013】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、フィルタの目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保する洗濯乾燥機を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため、本発明は、洗濯乾燥機であって、内部に液体を貯溜可能な外槽と、前記外槽内に回転自在に支持され、洗濯物が収容される略円筒型のドラムと、圧縮機と、凝縮器と、蒸発器と、膨張手段と、を有するヒートポンプと、前記外槽と前記ヒートポンプとを接続する戻り風路と、前記外槽と前記戻り風路とを接続する接続部と、リントを捕集するフィルタと、を備え、前記接続部は、前記外槽の背面上部に設けられ、前記フィルタは、前記接続部に設けられ、前記フィルタの外周部分の形状は、前記外槽の背面の外周部分に沿うように、略円弧形状になっている構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、フィルタの目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る洗濯乾燥機の外観斜視図である。
【
図2】実施形態に係る洗濯乾燥機の内部の概略断面図である。
【
図3】実施形態に係る洗濯乾燥機の循環風路の構造を示す斜視図である。
【
図4】実施形態に係る洗濯乾燥機の外槽と戻り風路とを接続する接続部の拡大図である。
【
図5】実施形態に係る洗濯乾燥機の吹出ノズルと散水ノズルの模式図である。
【
図6】実施形態に係る洗濯乾燥機の可変抵抗具の拡大図である。
【
図7】実施形態に係る洗濯乾燥機の風路抵抗と送風ファンの回転速度に対する静圧上昇と風量の関係を示す模式図である。
【
図8A】実施形態に係る洗濯乾燥機におけるヒートポンプユニットの外観図である。
【
図8B】実施形態に係る洗濯乾燥機におけるヒートポンプユニットの内部構成図である。
【
図9】実施形態に係る洗濯乾燥機の制御装置の構成を示すブロック図である。
【
図10】実施形態に係る洗濯乾燥機の運転工程を説明する工程図である。
【
図11】変形例の洗濯乾燥機の外槽と戻り風路とを接続する接続部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0018】
本実施形態では、前記した従来技術の課題だけでなく、以下のような課題を解決することができる洗濯乾燥機を提供することも意図している。
【0019】
例えば、特許文献1に記載された従来技術は、時短コースと省エネルギーコースの2つのコースの運転において風量が大きく異なる。このような特許文献1に記載された従来技術は、排気口をどちらかのコースの運転に合わせた面積にすると、もう一方のコースの運転時に排気口の口径や、排気抵抗、排気量等を調整しなければならない。このような特許文献1に記載された従来技術は、排気口の口径や、排気抵抗、排気量等の調整を少なくしたり削減したりすることが望まれるという課題がある。
【0020】
また、特許文献1に記載された従来技術は、時短コースと省エネルギーコース以外の他のコースの運転や、温風脱水運転等で、風路を絞って風路抵抗を調整するとともに、ファンの回転速度条件を変えて送風温度や吹き出し風速を変える場合に、戻り風路側の静圧勾配が極端に変わる。このような特許文献1に記載された従来技術は、戻り風路側の静圧勾配が変わることで、排気量が減ってしまい、乾燥時間を長期化させてしまう可能性があるという課題がある。
【0021】
また、特許文献1に記載された従来技術は、風量の異なるコースに対して、風路の途中で排気する場合に、風路の圧損が風速の2乗で増加するため、仮に風量に対して同じ排気割合を得るには、排気の抵抗を大幅に変えなければならない。このような特許文献1に記載された従来技術は、排気の抵抗を簡単に変更できることが望まれるという課題がある。
【0022】
また、例えば、特許文献2に記載された従来技術は、外槽に排気口を直接設けており、乾燥工程時に外槽の内圧と周囲の外気圧との差を推進力に利用して排気口から湿った空気を排気する。このような特許文献2に記載された従来技術は、排気口を絞るような構成になっている。そのため、特許文献2に記載された従来技術は、排気量に応じた排気風路のみでは、排気用のフィルタを設けるための十分なスペースを確保することができないという課題がある。
【0023】
<洗濯乾燥機の構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の外観斜視図である。
図2は、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の内部の概略断面図である。本実施形態では、洗濯乾燥機100がドラム式洗濯乾燥機であるものとして説明する。
【0024】
まず、
図1を参照して、本実施形態に係る洗濯乾燥機100の外観について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、ベース1hの上部に、筐体1を備えている。筐体1は、主に鋼板と樹脂成形品で作られた側板1a,1bと、背面カバー1dと、補強材(図示せず)をベース1hの上部に組み合わせて骨格を構成し、さらに、前面に前面カバー1cを取り付けるとともに、上面に上面カバー1eを取り付けることで形成される。上面カバー1eには、洗剤投入部7が設けられている。前面カバー1cの上方部分には、洗濯乾燥機100を操作するための操作スイッチ12が設けられている。また、前面カバー1cの中央部には、布類等の洗濯物30(
図2参照)を出し入れするためのドア9が設けられている。ドア9は、樹脂製のドア枠9bに、ドアガラス9aを固定したものであり、ヒンジによって筐体1に開閉自在に取り付けられている。
【0025】
次に、
図2を参照して、洗濯乾燥機100の内部の概略構造について説明する。
図2に示すように、洗濯乾燥機100は、内部に外槽20を備えている。外槽20は、下部に設けられた複数個のサスペンション5(ただし、
図2は複数のうちの1つのサスペンション5のみを示している)により支持されている。外槽20には、略円筒型のドラム29が内包される。ここで、「略円筒型」とは、円筒と円筒に近い形状の筒を含むものである。ドラム29には、洗濯物30が収容される。ドラム29の開口部の外周には、脱水時の洗濯物30のアンバランスによる振動を低減するための流体バランサー31が設けられている。また、ドラム29の内側には洗濯物30を掻き揚げるための複数個のリフター33が設けられている。ドラム29は、ドラム用の金属製のフランジ34に連結された主軸35を介してドラム駆動用のモータM10に直結されている。ただし、ドラム29は、主軸に固定されたプーリと外槽20に固定したモータとをベルトを介して連結させた、いわゆるベルト駆動方式の構成であってもよい。
【0026】
外槽20の開口部には、ベローズ10が取り付けられている。ベローズ10は、弾性体からなるゴム系のパッキンである。このベローズ10は、外槽20の内部とドア9との水密性を維持する役割を果たしている。洗濯乾燥機100は、ベローズ10により、洗い工程、すすぎ工程、及び、脱水工程時の水漏れを防止することができる。ドラム29は、側壁に遠心脱水及び通風用の多数の小孔(図示せず)を有する。
【0027】
外槽20の背面上部には、リント(塵埃)を捕集するためのフィルタ258とフィルタ258を洗浄するための散水機構271が設けられている。フィルタ258と散水機構271の詳細については、後記する。外槽20の上方には、給水するための給水電磁弁が設けられている。また、外槽20の下方には、水を受け止めるための水受け部54が設けられ、水受け部54の底部には、水受け部54内の水を排水のための排水口21が設けられている。排水口21は、排水弁V1を介して排水ホース26に接続される。また外槽20の前面には、オーバーフローホース17が取り付けられている。オーバーフローホース17は、排水弁V1よりも下流側で排水ホース26と合流している。したがって、オーバーフローホース17は、排水弁V1の開閉状態に関係なく排水ホース26と連通される構成となっている。このような洗濯乾燥機100は、オーバーフローホース17が取り付けてられている所定の水位よりも水量が増えてしまった場合に強制的に排水することができる。ただし、洗濯乾燥機100は、排水弁V1よりも上流でオーバーフローホース17と排水ホース26と合流させる構成としてもよい。
【0028】
洗濯乾燥機100は、下部に循環ポンプ18を備えている。循環ポンプ18は、洗濯水を外槽20の上部までくみ上げて、ドラム29内の洗濯物30に散布するための揚水手段である。循環ポンプ18は、好ましくは、外槽20よりも下方に配置されたベース1h(
図1参照)側に固定されているとよい。洗濯水は、
図10に示す洗剤溶かし工程、前洗い工程、本洗い工程、第1すすぎ工程、及び、第2すすぎ工程(
図10のステップS5,S6,S7,S8,S9参照)時に、外槽20の下方に設けられた水受け部54の排水口21から、糸くずフィルタ222を通して循環ポンプ18の吸込口側に入り、循環ポンプ18で昇圧される。
図10に示す洗剤溶かし工程(ステップS5)時に、循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18と連通するように設けられた循環吐出口54bから再び水受け部54に戻される。また、
図10に示す前洗い工程、本洗い工程、第1すすぎ工程、及び、第2すすぎ工程(ステップS6,S7,S8,S9参照)時に、循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18と連通するように設けられた散水ノズル223(
図5参照)からドラム29の内部に向けて散水される。
【0029】
洗濯乾燥機100は、乾燥工程時に、ドラム29とヒートポンプユニット300との間を、送風ファン2(
図3参照)により空気を循環させて乾燥させる温風乾燥方式の構成になっている。ヒートポンプユニット300は、圧縮機307(
図8B参照)と、凝縮器301(
図8B参照)と、膨張手段308(
図8B参照)と、蒸発器302(
図8B参照)と、を有するヒートポンプを内蔵するユニットである。洗濯乾燥機100は、空気を循環させるための送風ファン2と、循環空気を除湿して加熱するためのヒートポンプユニット300と、加熱された循環空気(温風)をドラム29の内部に導くための温風ダクト251(
図3参照)と、ドラム29から外槽20に排出された湿った空気をヒートポンプユニット300に戻すための戻り風路252(
図3参照)と、を備える。洗濯乾燥機100は、循環空気(温風)を循環させるために、送り側の循環風路としての温風ダクト251(
図3参照)と、戻り側の循環風路としての戻り風路252(
図3参照)と、を備えている。ヒートポンプユニット300の詳細については、後記する。洗濯乾燥機100は、ヒートポンプユニット300で除湿され加熱された循環空気(温風)を温風ダクト251(
図3参照)に送り、吹出ノズル203からドラム29の内部に噴出させて、洗濯物30を乾燥させる。また、洗濯乾燥機100は、洗濯物30を乾燥させた後にドラム29から外槽20に排出された湿った空気を戻り風路252(
図3参照)に送り、ヒートポンプユニット300に戻す。
【0030】
図3は、洗濯乾燥機100の循環風路(温風ダクト251と戻り風路252)の構造を示す斜視図である。
図3は、右斜め後方から見た洗濯乾燥機100の内部構成を示している。
図4は、洗濯乾燥機100の外槽20と戻り風路252とを接続する接続部253の拡大図である。
【0031】
図3に示すように、洗濯乾燥機100は、温風ダクト251と、戻り風路252と、を備えている。温風ダクト251は、一端がヒートポンプユニット300に接続され、他端が外槽20の前部に設けられた吹出ノズル203に接続された構成になっている。一方、戻り風路25は、一端が外槽20の背面上部に設けられた接続部253に接続され、他端がヒートポンプユニット300に接続された構成になっている。ヒートポンプユニット300の出口側には、送風ファン2が設けられている。
【0032】
洗濯乾燥機100は、外槽20の背面上部に設けられた接続部253にフィルタ258を備えている。洗濯乾燥機100は、空気の流れ方向に対して、複数枚のフィルタ258を備えているとよい。本実施形態では、洗濯乾燥機100は、上流側から順番に1次フィルタとしてのフィルタ258aと2次フィルタとしてのフィルタ258bとの2枚のフィルタ258を備えているものとして説明する。
【0033】
洗濯乾燥機100は、空気の流れ方向に対して、複数枚のフィルタ258を設けることで、各フィルタ258のメッシュ(網目)を平面状に重ねて配置することができる。このような洗濯乾燥機100は、フィルタ258が1枚だけの場合よりも、1枚のフィルタ258におけるメッシュの密度を粗くすることができるとともに、複数枚のフィルタ258でリントを捕集するため、1枚のフィルタ258にリントが緻密に密集して捕集されることを回避することができ、その結果、安定した排気を持続することができる。
【0034】
図4に示すように、複数枚のフィルタ258のうち、少なくとも1枚のフィルタは、周囲に枠体259が設けられ、接続部253に設けられたフィルタ取付部254から枠体259と一緒に取り外すことができる構成になっているとよい。本実施形態では、2次フィルタであるフィルタ258bの周囲に枠体259が設けられ、フィルタ258bがフィルタ取付部254から枠体259と一緒に取り外すことができる構成になっているものとして説明する。このような洗濯乾燥機100は、枠体259が設けられたフィルタをフィルタ取付部254から取り外すことができるため、使用者が手動でこのフィルタを洗浄することができる。
【0035】
また、本実施形態では、洗濯乾燥機100は、1次フィルタであるフィルタ258aの上流側に、フィルタ258aを洗浄するための散水機構271(
図2参照)を備えており、洗濯工程の途中や乾燥工程前において散水機構271で水をフィルタ258aに噴出することでフィルタ258aを洗浄するものとして説明する。また、洗濯乾燥機100は、2次フィルタであるフィルタ258bをフィルタ取付部254から取り外し可能な構成にすることで、使用者が手動でフィルタ258bを洗浄することができるものとして説明する。
【0036】
なお、フィルタ258aの洗浄は、乾燥工程の終了後に行うようにしてもよい。また、散水機構271(
図2参照)から噴出された水は、フィルタ258aを透過してフィルタ258bに到達するようにしてもよい。これにより、洗濯乾燥機100は、フィルタ258aだけでなくフィルタ258bも洗浄することができる。
【0037】
フィルタ258aの洗浄で使用された水は、外槽20の背面を流下して外槽20の下方に設けられた排水口21(
図2参照)に導かれる。なお、2次フィルタであるフィルタ258bに到達した水は、戻り風路252を介してヒートポンプユニット300の底部まで導かれ、最終的にはヒートポンプユニット300内に設けられた蒸発器302(
図8B参照)で発生するドレン水(凝縮水)とともに機外へ排出される。
【0038】
戻り風路252は、接続部253において外槽20の背面中央に設けられたモータM10(
図2参照)を回り込んで回避しながら、外槽20の背面上部に設けられた接続部253からヒートポンプユニット300までを連結する形状となっている。このような戻り風路252は、接続部253において外槽20の外周に沿うように、外周部の形状が略円弧形状あるいは扇形状の形状になっている。ここで、「略円弧形状」とは、円弧形状と円弧形状に近い形状を含むものである。また、接続部253と外槽20の背面との境界に設けられている複数枚のフィルタ258のうちの少なくとも一部は、このような接続部253における戻り風路252の形状に合わせて、外周側が略円弧形状(あるいは扇形状)に形成されるとよい。このような形状とすることにより、ドラム29の回転による外槽20内の空気の流れがフィルタ258の外周側の略円弧形状をトレースする流れとなるため、空気の流れによってフィルタ258に付着したリントを効率よく取り除くことができる。なお、複数枚のフィルタ258のうちの少なくとも一部は、好ましくは、内周側がモータM10(
図2参照)を回避しながら広い面積を確保できるように、凹状に形成されるとよい。
【0039】
接続部253におけるフィルタ258の出口直後の場所には、排気口257が設けられている。排気口257は、接続部253における戻り風路252内での空気の流れの方向に対して反対方向に位置する壁面に設けられているとよい。本実施形態では、排気口257が接続部253において温風ダクト251に近い側の戻り風路252の壁面に設けられているものとして説明する。洗濯乾燥機100は、このような場所に排気口257を設けることで、戻り風路252内の静圧を外槽20の内圧とほぼ等しい圧力にして、戻り風路252内の静圧と大気圧との差圧を推進力にして排気口257から外部に空気を排気できる。このような洗濯乾燥機100は、戻り風路252内における空気の主流の動圧による影響をほとんど受けずに、排気口257から外部に空気を排気できるので、安定して排気できる。
【0040】
排気口257には、排気量を変更するための可変排気手段306が設けられている。可変排気手段306は、ヒンジを中心にして回動する扉状の部材と、扉状の部材を回動させる電動回動機構と、を有する構成になっている。洗濯乾燥機100は、可変排気手段306の開閉量(つまり、扉状の部材による排気口257の開閉量)を調整することで、排気量を調整することができる。
【0041】
図5に示すように、洗濯乾燥機100は、外槽20の前方上部に、循環空気(温風)をドラム29の内部に噴出させるための吹出ノズル203と、洗濯水をドラム29の内部に噴出させるための散水ノズル223と、を備えている。
図5は、洗濯乾燥機100の吹出ノズル203と散水ノズル223の模式図である。
図5に示すように、吹出ノズル203は、外槽20の円周上において散水ノズル223とは対向する位置に設けてられている。
【0042】
図3及び
図6に示すように、温風ダクト251の途中部分には、可変抵抗具256が設けられている。
図6は、可変抵抗具256の拡大図である。可変抵抗具256は、温風ダクト251を流れる空気の抵抗を変更する可変抵抗手段である。
図6は、可変抵抗具256に設けられたカバー261の一部分を透過して、可変抵抗具256の構成を示している。
図6に示すように、可変抵抗具256は、ヒンジを中心にして回動する扉状の形状を呈している。洗濯乾燥機100は、温風ダクト251を流れる空気の抵抗を弱める場合に、
図6に実線で示すように、可変抵抗具256の扉(フラップ)を上昇させて、温風ダクト251を開放する。また、温風ダクト251を流れる空気の抵抗を強める場合に、
図6に破線で示すように、可変抵抗具256の扉(フラップ)を下降させて、温風ダクト251を部分的に閉鎖する。洗濯乾燥機100は、例えば、高温の温風を要する乾燥コースや乾燥コースの途中で高温を要する場合等において、可変抵抗具256の扉(フラップ)を下降させて、風路(温風ダクト251)を閉じる方向に駆動させる。これにより、洗濯乾燥機100は、温風ダクト251を半分程度閉鎖して、風路(温風ダクト251)の抵抗を増やす。同時に、洗濯乾燥機100は、送風ファン2(
図3参照)の回転速度を速くする。これにより、洗濯乾燥機100は、温風ダクト251内の空気を圧縮させて、ヒートポンプユニット300で上昇された空気(乾燥空気)の温度をさらに上昇させる。
【0043】
図7は、循環風路の抵抗曲線と送風ファン2の回転速度に対する静圧と風量の関係を示す模式図である。
図7において、線L11は可変抵抗具256を開いた状態(温風ダクト251を全部開放した状態)の循環風路の抵抗曲線を示しており、線L12は可変抵抗具256を閉じた状態(温風ダクト251を部分的に閉鎖した状態)の循環風路の抵抗曲線を示している。例えば、可変抵抗具256の風路抵抗を増加させると、循環風路の抵抗曲線が線L11の状態から線L12の状態に移行する。そのため、送風ファン2の回転速度N1、風量q1、風路損失p1の動作点から、可変抵抗具256の風路抵抗を増加させた後に、可変抵抗具256の風路抵抗を増加させる前と同じ風量p2を得るためには、洗濯乾燥機100は、送風ファン2の回転速度を、回転速度N1から回転速度N2に上昇させる。これにより、送風ファン2による空気の断熱圧縮が強化されるため、洗濯乾燥機100は、送風ファン2の出口においてより高い空気温度を得ることができる。
【0044】
吹出ノズル203は、外槽20の開口部のベローズ10に隣接する形で、開口部からドラム29内の洗濯物30へ直接吹き出すように設けられている(
図5参照)。吹出ノズル203の断面積は、温風ダクト251の断面積よりも小さいため、温風は洗濯物30へ吹き出される際に高風速で吹き出されるので、伝熱性能を向上できる。
【0045】
図8Aは、ヒートポンプユニット300の外観図である。また、
図8Bは、ヒートポンプユニットの内部構成図である。
図8Aに示すように、ヒートポンプユニット300は、ヒートポンプユニットケース310によって内部の機器がカバーされている。ヒートポンプユニットケース310の上部中央付近には、給気口260が設けられている。給気口260は、ヒートポンプユニット300内部に設けられた蒸発器302(
図8B参照)と凝縮器301(
図8B参照)との間の空間に通じる位置に設けられている。また、ヒートポンプユニットケース310には、戻り風路252(
図3参照)と連結される流入口(図示せず)と、温風ダクト251(
図3参照)と連結される流出口(図示せず)が設けられている。
【0046】
図8Bに示すように、ヒートポンプユニット300は、内部に、圧縮機307と、凝縮器301と、膨張手段308と、蒸発器302と、を有するヒートポンプを備えている。本実施形態では、膨張手段308として可変膨張弁を使用する場合を想定して説明するが、膨張手段308はキャピラリチューブのような固定の膨張手段であってもよい。
【0047】
循環空気の流れとしては、蒸発器302を通過した後に凝縮器301に流入して、送風ファン2(
図3参照)の吸い込み口に至る基本構成となる。蒸発器302と凝縮器301の間には給気口260が設けられている。そのため、蒸発器302に流入する風量は、送風ファン2の吹出量から排気口257にて排気される排気量を差し引いた量となる。凝縮器301に空気が流入する際に給気口260から排気量と同量の空気が流入する。そのため、凝縮器301を通過する風量は送風ファン2の吹出量に等しい。蒸発器302では、循環空気が低温の冷却媒体と熱交換されるため、除湿されてドレン水(凝縮水)が生じる。
【0048】
ドレン水を外部へ排水するために、必要に応じて排水ポンプ(図示せず)を設けて置き、ドレン水の貯水状況を検知して駆動させる方式や予め決めた時間間隔において駆動させる方式が通常採用される。
【0049】
蒸発器302や凝縮器301のフィン間隔は、熱交換性能を確保するために1~2mmほどの間隔としており、フィルタ258でとり切れなかったリントが付着する場合がある。この不測の事態に対処するために、洗濯乾燥機100は、散水機構271(
図2参照)を予め設けておき、前もって洗浄する方式や付着して風量の変化を検知して洗浄する方式等を採用するとよい。
【0050】
図9は、洗濯乾燥機100の制御装置90の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、制御装置90は、マイクロコンピュータ110を備える。マイクロコンピュータ110は、使用者の操作によって操作スイッチ12で発生する操作信号や、洗濯工程及び乾燥工程で各種センサ(水位センサ22、排水温度センサSN1、風路温度センサSN2、外気温度センサSN3、温風温度センサSN4、電導度センサ4)で発生する各種情報信号を取得する。
【0051】
マイクロコンピュータ110は、運転パターンデータベース111、工程制御部112、回転速度算出部113、衣類重量算出部114、電導度測定部115、洗剤量・洗い時間決定部116、濁度判定部117、閾値記憶部118を備える。運転パターンデータベース111は、運転パターンデータを記憶する。工程制御部112は、各工程における各部位の動作を制御する。回転速度算出部113は、ドラム29の回転速度を算出する。衣類重量算出部114は、ドラム29内の衣類の重量を算出する。衣類の重量は、ドラム29内に投入された後、洗濯運転時に洗濯水に浸かることで重くなり、その後、乾燥運転時に乾燥されることで軽くなり、ドラム29内に投入されたときの重量に近づいていく。電導度測定部115は、洗濯水の電導度を測定する。洗濯水の電導度は、洗濯水に溶け込んだ洗剤の濃度が低下するにつれて小さくなっていく。洗剤量・洗い時間決定部116は、洗剤量と洗い時間を決定する。濁度判定部117は、洗濯水の濁度を判定する。洗濯水の濁度は、洗濯物30から洗濯水に溶け込む汚れの量が低下して、洗濯水の透明度が向上するにつれて小さくなっていく。閾値記憶部118は、各部位の動作を制御するための閾値を記憶する。
【0052】
マイクロコンピュータ110は、駆動回路を介して、給水電磁弁16、排水弁V1、モータM10、可変排気手段306、可変抵抗具256、送風ファン2、循環ポンプ18、圧縮機307、膨張手段308、給水ポンプ86の動作を制御する。また、マイクロコンピュータ110は、使用者に洗濯乾燥機100に関する情報を知らせるために、表示器14やブザー(図示せず)等を制御する。
【0053】
マイクロコンピュータ110は、電源スイッチ47が押されて電源が投入されると起動し、洗濯及び乾燥の基本的な制御処理プログラムを実行して、例えば
図10に示す工程の処理を実行する。
図10は、洗濯乾燥機100における洗濯乾燥運転(洗い~乾燥)の動作を説明するフローチャートである。以下、洗濯乾燥機100における洗濯から乾燥までの工程について説明する。
【0054】
図10に示すように、制御装置90は、ステップS1において、洗濯乾燥機100の運転工程のコース選択の入力を受け付ける(コース選択)。ここで、使用者は、ドア9を開けて、ドラム29内に洗濯する洗濯物30を投入し、ドア9を閉じる。そして、使用者は、操作スイッチ12を操作することにより、運転工程のコースを選択し入力する。操作スイッチ12が操作されることにより、選択された運転工程のコースが制御装置90に入力される。制御装置90は、入力された運転工程のコースに基づいて、運転パターンデータベース111から対応する運転パターンを読み込み、ステップS2に進む。なお、以下の説明において、洗濯乾燥の標準コース(洗い~すすぎ2回~脱水~乾燥)が選択されたものとして説明する。
【0055】
ステップS2において、制御装置90は、ドラム29に投入された洗濯物30の重量(布量)を検出する工程を実行する(布量センシング)。具体的には、工程制御部112が、モータM10を駆動してドラム29を回転させるとともに、衣類重量算出部114が注水前の洗濯物30の重量(布量)を算出する。
【0056】
ステップS3において、制御装置90は、洗剤量・運転時間を算出する工程を実行する。電導度測定部115は、給水された水の電導度(硬度)を検出する。また、外槽20の下部(例えば、排水口21)に設けた排水温度センサSN1で、給水された水の温度を検出する。洗剤量・洗い時間決定部116は、検出した布量、電導度測定部115において電導度センサ4からの検出値を用いて求めた水の電導度(硬度)、水の温度に基づいてマップ検索により、投入する洗剤量と運転時間を決定する。そして、工程制御部112は、決定された洗剤量・運転時間を表示器14に表示する。
【0057】
ステップS4において、制御装置90は、所定時間待機して(洗剤投入待ち工程)、ステップS5に進む。使用者は、待機中に表示器14に表示された洗剤量を参考に、洗剤類投入部(図示せず)内に洗剤類を投入する。もし洗剤自動投入が設定されていれば、洗剤の投入動作は省ける。
【0058】
洗濯工程は、洗剤溶かし工程(ステップS5)、前洗い工程(ステップS6)、本洗い工程(ステップS7)に大別される。さらに、本洗い工程は、第1本洗い工程とそれにつづく第2本洗い工程に分けられるが、運転経過に対して各々の工程に明確に区別されていなくても機能上はなんら差し支えない。また、後述する工程中の動作の一部を省略しても洗濯工程全体としての機能に変わりはない。
【0059】
ステップS5において、制御装置90は、洗剤溶かし工程を実行する。給水電磁弁16の所定の電磁弁が開かれ、給水される。給水は洗剤投入口に導かれたのち、外槽20に投入される。外槽20に投入された洗剤液は、給水経路(図示せず)を通って、ドラム29の底部に位置する水受け部54(
図2、
図4参照)に供給される。洗剤液が投入された後、循環ポンプ18(
図2、
図4参照)を駆動すると、水受け部54の水は、排水口21から糸くずフィルタ222を介して循環ポンプ18の吸込口(図示せず)に入る。循環ポンプ18で昇圧された洗濯水は、循環ポンプ18の出口と連通する循環吐出口54b(
図2参照)から再び水受け部54に戻される(洗剤溶かし工程の循環経路)。
【0060】
制御装置90は、この時点で水受け部54内にある電導度センサ4(判別手段)において、電導度を検出し、高濃度洗剤水溶液のときの電導度データベースと柔軟剤水溶液のときの電導度データベースとの照合を行う。
【0061】
循環を繰り返すことで、少ない水で洗剤を溶かした均一な高濃度洗剤液を生成する。高濃度洗剤液は衣類に散布される。このときドラム29を回転させて、洗濯物30を攪拌させながら循環ポンプ18にて満遍なく散布する。
【0062】
ステップS6において、制御装置90は、前洗い工程を実行する。この工程では、通常、外槽20内には洗剤液のしみこんだ洗濯物30と、外槽20の底部の水受け部54に少量の洗剤液が存在する。ドラム29を回転させることで、洗濯物30をドラム29の上部に持ち上げた後、重力により底部まで落下させるタンブリング動作に基づくたたき洗いを行う。これにより、洗濯物30に浸み込んだ洗剤液が搾り出てくるので、必要に応じて間欠的に循環ポンプ18を駆動させて、再び洗濯物30に洗剤液を散布する。この動作中においても、洗濯水と洗濯物のいわゆる洗浄温度を上げると、洗浄性能を向上できるので、必要に応じて送風ファン2からの気流を、ヒートポンプユニット300にて温めた後に吹き付ける。洗浄温度レベルを上げることで、洗濯物30への高濃度洗剤液の浸透を促進させることもできる。
図5に示すように、吹出ノズル203は、外槽20の円周上において散水ノズル223とは対向する位置に設けてられている。洗濯乾燥機100は、高濃度洗剤液(洗濯水)の散布と洗濯物30への高濃度洗剤液(洗濯水)の浸み込みとを促進させるために、散水ノズル223から噴出される高濃度洗剤液(洗濯水)に対する吹出ノズル203から噴出される温風の干渉を防ぐように制御する。これにより、洗濯乾燥機100は、洗濯物30を効率よく洗浄できる。洗濯物30は高濃度洗剤液を保水した状態であるため、洗濯物30の繊維隙間を空気が占めるよりも熱伝導は良く、効率よく加熱できる。これにより繊維から、より多くの汚れを短時間で分離できる。分離できた汚れは、保水された高濃度洗剤液内に迅速に分散されるので、再び凝集して再付着することを防ぐことができる。
【0063】
また、循環ポンプ18よりも小流量の循環ポンプ(図示せず)を別に設置してもよい。この場合、水受け部54から汲み上げて送風機出口近傍にて温風内に散布することで、温風に液滴を混ぜて、洗濯物30に散布させてもよい。洗濯工程の途中で、通常の循環量レベルを確保できるまで追加給水して、循環ポンプ18にて散布させると、洗濯物30の温度は急激に低下する。そこで、前記のような構成にして、より少量の循環水を温風にのせて散布させれば、洗濯物30に含まれる水を満遍なくかつ僅かずつ入れ替えることができる。このため、洗濯物30の急激な温度低下も抑えることができるので、より洗浄性能を向上させることができる。
【0064】
前洗い工程からその後の本洗い工程に向けてのどこかのタイミングにおいて、フィルタ258の洗浄工程を重ねてもよい。これまでの乾燥工程中にドラム29の回転による旋回流で取り切れなかったリントや洗濯運転のみを重ねた際に堆積した糸くずを取り除くために、散水機構271(
図2参照)からフィルタ258へ散水するが、散水はそのまま洗い工程の洗浄水に流用できる。無駄なく散水できるため、2次フィルタであるフィルタ258bの洗浄を含めた散水が好ましい。洗浄後は、可変排気手段306を開ける。本実施形態では、可変排気手段306として排気トビラを設けた構成としている。フィルタ258のメッシュ内に落下しきれなかった細かな水滴は、周囲の外気へ温風ダクト251内の空気を拡散させることで除去でき、これにより、循環風路内の湿気を低下させることができる。乾燥開始時にフィルタ258が乾いていれば、リントの付着が抑えられ安定して排気できる。
【0065】
ステップS7において、制御装置90は、本洗い工程を実行する。本洗い工程では、前洗い工程が終了した時点で追加給水して、水受け部54の水量を増やして、水位を上げる。この水位は、循環ポンプ18により水受け部54から洗濯水をくみ上げて、外槽20の上部の散水ノズル223から連続して散布するのに十分な水位を保つものとする。
【0066】
散水ノズル223からの散布は、連続であっても間欠であってもよい。具体的には、洗濯物30の裏側等に多くの汚れがまだ付着している間は、連続で散布して洗濯水の攪拌を促進する。これにより、洗濯物30が保水する洗濯水を、常に汚れ濃度の低い洗濯水に入れ替えることができる。その後、汚れがほとんど落ちた後は、たたき洗いの機械力を主として、残りの汚れを落とすほうが洗浄効率がよい。よって、後半の散布は、機械力を妨げないように間欠散布とするのが好ましい。また、循環ポンプ18の駆動力を間欠とすることで、消費電力量を抑えられるので、省エネルギーの面からも好ましい。
【0067】
なお、散水ノズル223は、外槽20に、洗濯乾燥機100の正面からみて回転可能なドラム29の中心軸よりも上側、かつ、洗濯乾燥機100の側面からみて、正面寄りの前側に位置している。これにより、散水ノズル223からの噴出範囲を、ドラム29の半径方向に対して広角にして散布する構造としている(
図5参照)。この第1本洗い工程では、広範囲の散布とともに、ドラム29の回転によってドラム29の下方に溜まった洗濯物30を持ち上げて、ドラム29内の上方から落下させることにより、洗濯物30に機械的な力を与えてたたき洗いをする。ドラム径が大きいほど、広範囲の散布とたたき洗いの相乗効果が得られ、本洗い工程の時間を短縮できる。
【0068】
また必要に応じて制御装置90は第2本洗い工程を実行する。前述の第1本洗い工程の終了時に給水することで、第2本洗い工程の水量を、第1本洗い工程の水量よりも多くする。また、第2本洗い工程の循環ポンプ18の循環流量は、第1本洗い工程での循環ポンプ18の循環流量よりも多くする。さらに、第2本洗い工程のドラム29のモータM10の回転速度は、第1本洗い工程のモータM10の回転速度よりも低くする。第1本洗い工程と第2本洗い工程の組み合わせは、洗濯物30の黒ずみ、ごわつきを抑制させる運転アルゴリズムとしている。
【0069】
第1本洗い工程もしくは第2本洗い工程の一部もしくは全行程において、循環ポンプ18にてくみ上げた洗濯水を散水ノズル223から散水しつつ、ドラム29を洗濯物30がタンブリング動作に至らずにドラム29の側内壁に張り付いた状態にて回転させる洗い動作としてもよい。このような動作により、洗濯物30に含まれる洗濯水は遠心力にて押し出されるとともに、散水ノズル223からの散水で常に振りかけられて供給されるような洗濯水の繊維内流動による洗いとすれば、洗濯物30どうしのこすれあいによるリントの発生を抑えることができ、乾燥工程における循環空気に伴うリントの循環量を減らせることができ、蒸発器の洗浄工程を軽減できる。
【0070】
以上のように洗濯乾燥機100の場合、ドラム29の回転に伴って、リフター33により洗濯物30をドラム29の上部に持ち上げた後、重力によりドラム29の底部に落とすたたき洗いが主流となる。オーバーフローホース17が外槽20の前部に接続されているため、場合によってはオーバーフローホース17の位置まで洗濯水は流入してくる。
【0071】
ステップS8において、制御装置90は、第1すすぎ工程を実行する。この工程では、排水弁V1を開けて、洗濯水を排出した後、排水弁V1を閉じて、外槽20内に所定の水位まですすぎ水を供給する。その後、ドラム29を回転させて、洗濯物30とすすぎ水を攪拌してすすぐ。
【0072】
ステップS9において、制御装置90は、第2すすぎ工程を実行する。第2すすぎ工程では、第1すすぎ工程と同様にして、排水弁V1を開けて、すすぎ水を排出した後、排水弁V1を閉じて、外槽20内に所定の水位まですすぎ水を供給する。その後、ドラム29を回転させて、洗濯物30とすすぎ水を攪拌してすすぐ。
【0073】
第1すすぎ工程もしくは第2すすぎ工程の一部もしくは全行程において、循環ポンプ18にてくみ上げたすすぎ水を散水ノズル223から散水しつつ、ドラム29を洗濯物30がタンブリング動作に至らずにドラム29の内壁に張り付いた状態にて回転させるすすぎ動作としてもよい。このような動作により、洗濯物30に含まれるすすぎ水は遠心力にて押し出されるとともに、散水ノズルからの散水で常に振りかけられて供給されるすすぎとすれば、洗濯物30どうしのこすれあいによるリントの発生を抑えることができ、乾燥工程における循環空気に伴うリントの循環量を減らせることができ、蒸発器302の洗浄工程を軽減できる。
【0074】
ステップS10において、制御装置90は、脱水工程を実行する。この工程では、排水弁V1を開いて外槽20内のすすぎ水を排水した後、ドラム29を回転させて洗濯物30を遠心脱水する。脱水の回転速度は、洗濯物30のバランスがとれずにモータM10の電流値が上限を超える等の不具合がない限り、負荷に応じた設定回転速度まで上昇させる。脱水の回転速度を上げて、ドラム29が高速回転すると、外槽20にも振動が伝わり、外槽20自身も僅かながら振動する。また、ドラム29の高速回転に伴って、振動がドア9側にも伝わることをベローズ10にて吸収できる。温風ダクト251も、各々ベローズ10により外槽20の吹出口と接続されているため、振動を吸収できる。
【0075】
またこの脱水工程内において、フィルタ258の洗浄工程を重ねることもできる。前回までの乾燥工程中にドラム29の回転による旋回流で取り切れなかったリントや洗濯運転のみを重ねた際に堆積した糸くずを取り除くために、散水機構271(
図2参照)からフィルタ258へ散水する。洗浄後は、可変排気手段である排気ファンを駆動させる。フィルタ258のメッシュ内に落下しきれなかった細かな水滴は、周囲の外気へ温風ダクト251内の空気を拡散させることで除去でき、これにより、循環風路内の湿気を低下させることができる。
【0076】
さらに必要に応じて、脱水工程中は可変排気手段306を開け続けて、周囲の外気との連通を確保する。脱水工程ではドラム29の高速回転による内圧の上昇により、外槽20が後傾にあるが、可変排気手段306により、周囲の外気と連通させて後傾となるのを軽減できるので、ベローズ10等の信頼性を高めることができる。
【0077】
また、脱水を促進させるためにドラム29内に温風を吹き出して洗濯物30を温めて、繊維を膨張させるとともに、含水の粘性を下げることで、水を抜け易くして脱水を強化することもできる。この場合、ヒートポンプユニット300を駆動してもよいが圧縮機307が温まるのに時間を要する場合は、可変抵抗具256で風路を絞ることで、断熱圧縮により空気の温度を上げてもよい。風路抵抗が増すため、送風ファン2を高回転として循環風量を確保するのがよい。送風ファン2の吸い込み圧が低下し、戻り風路252の圧力も低下するが、排気の推進力は外槽20の内圧と大気との差をベースにできるため、安定した排気量を確保することができる。これに伴い、湿った戻り空気の一部を排気して、給気口260(
図8A参照)から外気を補充することで、比熱を小さく抑えられるので、より高温とした空気をドラム29内に供給し続けられるので、より脱水を促進できる。
【0078】
脱水工程において送風ファン2により送風した際、ドラム29内に吹出ノズル203から直接吹き出させるため、ドラム29の内圧が上がり易いが、本実施形態では、可変排気手段306を開けることで、ドラム29の内圧上昇に対して抵抗なく外気と排気口257を通して連通できるため、ドラム29が後傾になりすぎるのを抑えることができる。これにより、ベローズ10を保護できる。
【0079】
ステップS11において、制御装置90は、乾燥工程を実行する。乾燥工程では、
図2から
図4に示したように、まず送風ファン2を駆動し、つづいてヒートポンプユニット300内の圧縮機307を駆動させる。膨張手段308は一度全開状態として原点調整をした後、圧縮機307の吸込配管に設けたサーミスタ(図示せず)が低温とならないように、開度が調整される。圧縮機307の回転速度は、吐出配管に設けたサーミスタ(図示せず)と送風ファン2出口に設けた温風サーミスタとの差が所定の温度以上となるように調整される。このようにヒートポンプユニット300で高温となった空気を送風ファン2により昇圧した後、ドラム29内へ吹出ノズル203を通して送風して、洗濯物30と熱交換させるとともに洗濯物30から水分を蒸発させる。洗濯物30から蒸発した水分を含む循環空気は、外槽20のから戻り風路252を介してヒートポンプユニット300へ戻される。ヒートポンプユニット300では、風上側に配置された蒸発器302により、循環空気は冷却され露点温度以下となり、除湿される。つづけて凝縮器301において昇温されて、低湿な温風とされる。
【0080】
本実施形態では、外槽20から戻り風路252へ流入する際に一部の空気を排気口257から排気し、同量の空気をヒートポンプユニット300の給気口260から周囲の外気を取り入れる。このため、高湿な空気を排気して、それよりも低湿な空気を取り入れるので、より除湿を強化した運転なる。このときフィルタ258で補集されるリントは、ドラム29の回転に伴い、ドラム29と外槽20の隙間で生じる空気流がフィルタ258の略円弧状をトレースするように流れるため、フィルタ258にリントが堆積するのを防ぐことができる。これにより乾燥工程を通して、安定した排気と空気循環が得られる。
【0081】
また、乾燥終盤において、温風温度を上げて洗濯物30の温度を上げることで、除菌を兼ねたり、生乾きの臭い対策を施す場合がある。この場合、圧縮機の回転速度は高めとして、風量もどちらかというと抑えるが可変抵抗具を絞ることで温風温度を上げる。すなわち、風路抵抗を上げて送風ファン2の回転速度を上げるので、
図7のp2、q2に値する。送風ファン2の前後の静圧ΔPを上昇させるので、送風ファンの吸い込み側は低圧となり、戻り風路252からヒートポンプユニット300に至る循環経路の静圧レベルを下げる。本実施形態では、戻り風路252の静圧や主流の動圧に影響されない、戻り風路252と外槽20との接続部253に排気口257を向けているため、安定した排気量が確保できる。
【0082】
乾燥判定は、乾燥開始時もしくはある運転開始からの規定時間において外槽20と戻り風路252との接続部253に設けた風路温度センサSN2によって外槽20の排気温度T1aと送風ファン2の出口側に設けた温風温度センサSN4によって温風温度T4aを測定する(初期温度の設定)。その後、負荷に見合った規定時間経過後に終了判定のための外槽20の排気温度T1bと温風温度T4bを測定し、各々初期温度と終了判定温度との差を求める(ΔT1=T1a-T1b、ΔT4=T4a-T4b)。さらにそれらの温度差(ΔT1-ΔT4)が規定温度以上であるかどうかを確認して乾燥終了を判定する。
【0083】
乾燥工程の終了時にフィルタ258の洗浄工程を実施する。乾燥工程中にドラム29の回転による旋回流で取り切れなかったリントを取り除くのが主目的のため、散水量は絞り気味として、ドラム29内の湿度に影響を与えないレベルとするのが好ましい。乾燥の終盤において洗濯物30の温度を上げて除菌する工程が設定されていれば、それよりも前に洗浄工程を行い、その後に可変排気手段306を開ける。温度を上げて除菌する際にも、外槽20の出口で高湿となりえる循環空気の一部を排気口257から排気できるため、循環空気の湿度を効率よくさげることができる。
【0084】
フィルタ258の洗浄工程は、乾燥工程とは別に実施できる設定でもよく、例えば洗濯コースのみ運転後に選択できる等、リント付着具合を反映しての実施が選択できるのが好ましい。
【0085】
なお、コース選択工程(ステップS1)において乾燥工程が設定されていない場合は、ステップS10において運転を終了する。
【0086】
洗濯乾燥機100は、戻り風路252と接続される外槽20の背面上部に設けた接続部253にフィルタ258を設けるので、フィルタ258の面積を十分確保することができる。また、洗濯乾燥機100は、ドラム29の回転によって生じる外槽20内の空気の流れがフィルタ258の略円弧形状をトレースしていくため、フィルタ258に付着したリントを運転中に効率よく除去できる。これにより洗濯乾燥機100は、恒常的に安定した排気量を確保することができる。
【0087】
また、洗濯乾燥機100は、循環空気の主流の動圧に影響されずに排気できるので、コースの違いやコース過程における送風条件の違いに対する排気量の調整が容易にできる。これによっても洗濯乾燥機100は、恒常的に安定した排気量を確保することができる。
【0088】
また、洗濯乾燥機100は、必要に応じてフィルタ258を流れ方向に対して2枚構成とすることで、メッシュを平面状に重ねて配置することができる。このような洗濯乾燥機100は、フィルタ258が1枚だけの場合よりも、1枚当たりのフィルタ258のメッシュの目(密度)を粗くすることができる。つまり、洗濯乾燥機100は、2枚構成の目の粗いフィルタ258で、1枚構成の目の細かいフィルタと同様のリント除去機能を得ることができる。このような洗濯乾燥機100は、2枚構成のフィルタ258でリントを捕集する際に、1枚のフィルタ258にリントが緻密に密集して捕集されることを回避することができ、その結果、恒常的に安定した排気を確保することができる。つまり、洗濯乾燥機100は、2枚構成のフィルタ258でリントを捕集とすることができ、リントが1枚のフィルタ258(特に1次フィルタであるフィルタ258a)に緻密に堆積していくことを回避できる。このような洗濯乾燥機100は、大風量の条件においてもリントを効率よく回収することができるため、これによっても、恒常的に安定した排気を確保することができる。
【0089】
なお、洗濯乾燥機100は、ヒートポンプユニット300に設けた給気口260(
図8A参照)と排気口257(
図4参照)とを連通させるとよい。このような洗濯乾燥機100は、運転停止中に、給気口260(
図8A参照)と排気口257(
図8A参照)とを介して、外槽20と戻り風路252とヒートポンプユニット300とを含む循環風路を周囲の外気に連通できる。このような洗濯乾燥機100は、外槽20及び戻り風路252のどちらにおいてもヒートポンプユニット300から排気口257(
図4参照)に繋がる経路を確保することができ、外槽20及び戻り風路252の内部に湿気を溜めないため、カビの発生を抑制することができる。
【0090】
また、洗濯乾燥機100は、戻り風路252と接続される外槽20の背面上部に設けた接続部253の壁面に排気口257(
図4参照)を設けている。このような洗濯乾燥機100は、洗濯水や脱水時の水が排気口257(
図4参照)まで飛散し難く、リントの固着が起こり難くすることができるため、これによっても、恒常的に安定した排気を確保することができる。
【0091】
また、洗濯乾燥機100は、フィルタ258を洗浄した後、可変排気手段306(
図4参照)を開ることで、排気とともに、フィルタ258に残留する水滴を周囲の外気に放出できる。このような洗濯乾燥機100は、フィルタ258の湿り具合を低減でき、外槽20内の空気の流れによりフィルタ258からリントを剥離され易くすることができるため、恒常的に安定した排気を確保することができる。
【0092】
また、洗濯乾燥機100は、循環空気の主流の動圧に影響されることなく排気することができるため、運転条件に対するドラム29の内圧の影響のみで排気できる。このような洗濯乾燥機100は、可変排気手段306(
図4参照)による排気調節量を極力小さくできる。
【0093】
<洗濯乾燥機の主な特徴>
(1)
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、外槽20の背面上部に設けた接続部253に戻り風路252を接続固定し、接続部253にフィルタ258を設け、フィルタ258の外周部分が外槽20の外周部分に沿うように、フィルタ258の外周部分を円弧状に形成する構成になっている。
【0094】
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、戻り風路252の接続部253との接続部分が円弧形状になっているので、戻り風路252内を流れる乾燥空気の風速を速くすることができる。これにより、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、乾燥空気の風圧を利用してフィルタ258を清掃することで、フィルタ258の清掃性を向上させることができる。つまり、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、乾燥空気の風速が速いので、フィルタ258に付着するリントを効率よく除去することができる。したがって、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、フィルタ258の目詰まりを抑制することができる。また、乾燥工程においてフィルタ258の目詰まりを抑制することで、恒常的に安定した排気量を確保することができる。
【0095】
また、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、戻り風路252内を流れる乾燥空気の風速を速くし、その空気の風圧を利用して排気する構成になっている。このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、特許文献1に記載の従来技術のように、ダクト内を流れる空気の主流から支流に空気を分岐させ、ダクト内の静圧に加えて主流の動圧を利用して排気する構成になっていないので、この点でも安定した排気量を確保することができる。
【0096】
(2)
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、接続部253におけるフィルタ258の出口直後の場所に、排気口257を設けた構成にするとよい。
【0097】
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、特許文献1に記載の従来技術と異なり、戻り風路252の途中で乾燥空気の流量を変えないようにしている。乾燥空気の流量が安定しているので、排気口257の口径や、排気抵抗、排気量等の調整を少なくしたり削減したりすることができる。
【0098】
(3)
図4に示すように、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、排気口257に、排気量を変更する可変排気手段306を設けた構成にするとよい。また、可変排気手段306は、フィルタ258の洗浄後に開放されるとよい。
【0099】
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、可変排気手段306により、複数の乾燥コースに対する排気量の調節を少なくすることができ、これによっても、安定した排気量を確保することができる。
【0100】
(4)可変排気手段306は、フィルタ258の洗浄後に開放されるとよい。
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、フィルタ258を洗浄した後に必要に応じて可変排気手段306を開放することで、フィルタ258に残留する水滴を周囲の外気に効率よく放出することができる。
【0101】
(5)
図4に示すように、フィルタ258は、空気の流れ方向に対して複数枚設けられているとよい。
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、1枚当たりのフィルタ258のメッシュの目(密度)を粗くすることができる。そのため、洗濯乾燥機100は、1枚のフィルタ258にリントが緻密に密集して捕集されることを回避することができ、その結果、恒常的に安定した排気を確保することができる。
【0102】
(6)
図4に示すように、複数枚のフィルタ258のうち、少なくとも1枚のフィルタ(特に、2次フィルタであるフィルタ258b)は、周囲に枠体259が設けられ、フィルタ取付部254から枠体259と一緒に取り外すことができる構成であるとよい。
【0103】
このような本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、枠体259が設けられたフィルタ(特に、2次フィルタであるフィルタ258b)をフィルタ取付部254から取り外すことができるため、使用者が手動でこのフィルタを洗浄することができる。
【0104】
以上の通り、本実施形態に係る洗濯乾燥機100は、フィルタ258の目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保することができる。また、洗濯乾燥機100は、安定した排気量と循環空気量を確保できるため、乾燥効率の良い、消費電力量を抑えた洗濯乾燥運転を行うことができる。また、洗濯乾燥機100は、使用頻度に対して、ヒートポンプユニット300へのリントの堆積を抑制することができるので、乾燥性能を低下させることなく、継続的に運転を行うことができる。
【0105】
[変形例]
図4に示すように、前記した実施形態に係る洗濯乾燥機100は、排気口257に可変排気手段306を備える構成になっている。これに対し、変形例では、排気口257に排気ファン263を備える構成になっている洗濯乾燥機100Aを提供する。
【0106】
以下、
図11を参照して、変形例の洗濯乾燥機100Aの構成について説明する。
図11は、変形例の洗濯乾燥機100Aの構成を示す図である。
図11に示すように、変形例の洗濯乾燥機100Aは、実施形態に係る洗濯乾燥機100(
図4参照)と比較すると、可変排気手段306(
図4参照)の代わりに、排気ファン263を排気口257に備える点で相違している。排気ファン263は、戻り風路252を通過する空気の一部を強制的に外部に排気する手段である。洗濯乾燥機100は、排気ファン263の回転速度を調整することで、排気量を調整することができる。このような洗濯乾燥機100は、排気ファン263によって空気を強制的に排気とすることができるため、前記した実施形態に係る洗濯乾燥機100(
図4参照)よりも排気量をより積極的に調整することができる。
【0107】
以上の通り、変形例の洗濯乾燥機100Aによれば、実施形態に係る洗濯乾燥機100(
図4参照)と同様に、フィルタ258の目詰まりを抑制するとともに、安定した排気量を確保することができる。
しかも、変形例の洗濯乾燥機100Aによれば、実施形態に係る洗濯乾燥機100(
図4参照)に比べて、排気量をより積極的に調整することができる。
【0108】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0109】
1 筐体
20 外槽
29 ドラム
30 洗濯物
251 温風ダクト(送り側の循環風路)
252 戻り風路(戻り側の循環風路)
253 接続部
254 フィルタ取付部
256 可変抵抗具
257 排気口
258,258a,258b フィルタ
259 枠体
263 排気ファン
271 散水機構
300 ヒートポンプユニット(ヒートポンプ)
301 凝縮器
302 蒸発器
306 可変排気手段
307 圧縮機
308 膨張手段(可変膨張弁)