(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072320
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】車載表示装置
(51)【国際特許分類】
B60K 35/23 20240101AFI20240521BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B60K35/00 A
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183024
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 健朗
(74)【代理人】
【識別番号】100104329
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 卓治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 悠樹
【テーマコード(参考)】
3D344
5G435
【Fターム(参考)】
3D344AA03
3D344AC04
3D344AC25
3D344AD01
5G435HH05
5G435LL17
(57)【要約】
【課題】車両へ搭載し易い車載表示装置を提供する。
【解決手段】車載表示装置100は、表示器10と、カバーガラス30と、を備える。表示器10は、車両1のダッシュボード2の内部に設けられる。表示器10は、車両1のフロントガラス3の下端領域に設けられたセラミック形成部3aに向け、画像を表す表示光Lを発する。カバーガラス30は、ダッシュボード2に形成された開口部20aに設けられる。カバーガラス30は、セラミック形成部3aで反射した表示光Lを透過させる。車載表示装置100は、開口部20aを有し、ダッシュボード2の一部によって形成された筒状体20をさらに備える。筒状体20は、表示器10が発した表示光Lをセラミック形成部3aに通過させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のダッシュボードの内部に設けられ、前記車両のフロントガラスの下端領域に設けられたセラミック形成部に向け、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記ダッシュボードに形成された開口部に設けられ、前記セラミック形成部で反射した前記表示光を透過させるカバーガラスと、を備える、
車載表示装置。
【請求項2】
前記カバーガラスは、前記フロントガラスに近接する端部である近接端部を除く、任意の端部において前記ダッシュボードに固定される、
請求項1に記載の車載表示装置。
【請求項3】
前記カバーガラスの前記近接端部は、前記セラミック形成部の上端よりも低い位置にある、
請求項2に記載の車載表示装置。
【請求項4】
前記カバーガラスは、前記車両の前後方向において前記近接端部の反対側に位置する後端部を有し、前記近接端部が前記後端部よりも上方に位置するように傾いて前記開口部に設けられる、
請求項2又は3のいずれか1項に記載の車載表示装置。
【請求項5】
前記開口部を有し、前記ダッシュボードの一部によって形成され、前記表示器が発した前記表示光を前記セラミック形成部に通過させる筒状体をさらに備える、
請求項4に記載の車載表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載表示装置として、例えば特許文献1には、車両のフロントガラスのうち、運転者等のユーザが前方風景を視認する領域に向け、画像を表す表示光を発するHUD(Head-Up Display)が記載されている。このHUDは、各部材を収容するケースと、表示光をフロントガラスへと透過させるカバーガラスとが一体に形成されて成る筐体を備える。そして、このHUDは、筐体を備えたアセンブリーとして、ダッシュボードの内部に設置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フロントガラスに向けて表示光を発する物として、HUDの他に、フロントガラスの下端領域に設けられたセラミック形成部(通称、黒セラ部)に向けて表示光を発する装置も存在する。この装置は、HUDが表示光を向けるフロントガラスの領域よりも下方の領域に向けて表示光を発する必要があるため、ダッシュボード内の設置スペースが限定され易い。この装置を、上記HUDのように筐体を備えたアセンブリーとしてダッシュボードの内部に設置しようとすると、筐体のサイズ及び形状の制約により、車両への搭載が困難である虞がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、車両へ搭載し易い車載表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示に係る車載表示装置は、
車両のダッシュボードの内部に設けられ、前記車両のフロントガラスの下端領域に設けられたセラミック形成部に向け、画像を表す表示光を発する表示器と、
前記ダッシュボードに形成された開口部に設けられ、前記セラミック形成部で反射した前記表示光を透過させるカバーガラスと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、車両へ搭載し易い車載表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る車載表示装置の車両への搭載態様を示す図。
【
図2】同上実施形態に係るダッシュボードの一部をカバーガラスの面直方向から見た概略平面図。
【
図3】同上実施形態に係る車載表示装置の
図2に示すB-B線に沿う概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0010】
本実施形態に係る車載表示装置100は、
図1に示すように、車両1のダッシュボード2(インストルメントパネルを含む)に設けられ、車両1のフロントガラス3(ウインドシールド)の下端領域に設けられたセラミック形成部3aに向けて画像を表す光(以下、表示光L)を発する。
【0011】
セラミック形成部3aは、フロントガラス3のうち、黒色のセラミックが焼付塗装によって形成された部分であり、通称、黒セラ部と呼ばれる。フロントガラス3におけるセラミック形成部3aの内面には、表示光Lをユーザ4に向けて反射させる反射鏡面が形成される。ユーザ4は、例えば、車両1の運転者である。
【0012】
なお、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内面(ユーザ4に向く面)に設けられていてもよいし、フロントガラス3の外面に設けられていてもよい。また、フロントガラス3が複数枚のガラスの合わせガラスから構成される場合、セラミック形成部3aは、フロントガラス3の内部に設けられていてもよい。
【0013】
セラミック形成部3aで反射した表示光Lは、ユーザ4側へと向かう。ユーザ4は、自身の視点をアイボックス5内におくことで、表示光Lが表す画像の虚像を視認することができる。当該画像は、ユーザ4にとって、セラミック形成部3aに表示されているように見える。当該画像は、例えば、車両1に関する各種情報(以下、車両情報と言う)を示す。車両情報は、車両1自体の情報だけでなく、車両1の周囲の情報などの車両1の外部情報を含んでいてもよい。
【0014】
車載表示装置100は、
図1~
図3に示すように、表示器10と、筒状体20と、カバーガラス30と、カバー部材40と、を備える。
【0015】
図1は、車載表示装置100の車両1への搭載態様を示す図であって、車載表示装置100の
図2に示すA-A線に沿う概略断面図である。
図2は、ダッシュボード2の一部をカバーガラス30の面直方向から見た概略平面図である。
図3は、車載表示装置100の
図2に示すB-B線に沿う概略断面図である。なお、
図2及び
図3では、見易さを考慮して断面を示すハッチングを適宜省略した。各図では、車両1の方向として、前方Fd、後方Bd、左方Ld、右方Rd、上方Ud、下方Ddを示した。以下の説明で用いる、前、後、左、右、上、下の各方向は、特に断りがない場合は、図示の方向に従う。
【0016】
表示器10は、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等からなり、ダッシュボード2の内部に設けられる。表示器10は、上方に向く表示面10aに車両情報を示す画像を表示する。つまり、表示面10aからセラミック形成部3aに向けて、当該画像を表す表示光Lが発せられる。なお、表示器10は、車両1に搭載されたECU(Electronic Control Unit)等の図示せぬコントローラによって、その動作が制御される。
【0017】
筒状体20は、ダッシュボード2の一部によって形成され、
図1に示すように、表示器10が発した表示光Lをセラミック形成部3aに通過させる。つまり、筒状体20は、表示器10とセラミック形成部3aの間に位置する。表示器10は、筒状体20の下端の下方に位置し、筒状体20の内部に表示光Lを発する。例えば、表示器10は、筒状体20の下端に固定及び保持される。筒状体20は、セラミック形成部3aで反射した表示光Lをユーザ4に向けて通過させる開口部20aを有する。
【0018】
ここで、開口部20aの近傍のダッシュボード2の構造について説明する。ダッシュボード2は、台部2aと、台部2aからフロントガラス3に向かって上方に傾斜する傾斜部2bと、を備える。本実施形態では、
図2に示すように、傾斜部2bに、ユーザ4に向かって開口する開口部20aが設けられている。この開口部20aは、
図2に示す平面視では、フロントガラス3に向く部分が開放された切り欠き状、つまり略U字状に形成されている。以下に、筒状体20と開口部20aの関係について説明する。
【0019】
筒状体20は、
図1に示すように、車両1の前後方向において互いに対向する第1壁部21及び第2壁部22と、
図3に示すように、車両1の左右方向において互いに対向する第3壁部23及び第4壁部24と、を備える。第2壁部22は、第1壁部21よりも車両1の後方に位置する。第3壁部23は、第4壁部24よりも左方に位置する。
【0020】
図示しないが、本実施形態では、第2壁部22の左端は第3壁部23の後端と繋がり、第2壁部22の右端は第4壁部24の後端と繋がる。このように繋がる第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24の上端によって、前述の略U字状の開口部20aが形成される。
【0021】
一方、第1壁部21は、フロントガラス3の下端の下方に位置する。そして、図示しないが、第1壁部21の左端は第3壁部23の前端と繋がり、第1壁部21の右端は第4壁部24の前端と繋がるものの、第1壁部21の上端は、第3壁部23及び第4壁部24の上端よりも低い。このため、傾斜部2bに設けられた開口部20aは、第1壁部21に相当する部分が無い、切り欠き状に形成される。
【0022】
なお、本実施形態では、筒状体20のうち、完全に筒状の部分は、第1壁部21の下端から上端までの範囲に相当する部分、つまり、第1~第4壁部21~24の全てで囲むことができる部分である。しかしながら、開口部20aは、筒状体20を構成する第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24の上端によって形成される部分であるため、筒状体20が開口部20aを有すると言える。
【0023】
筒状体20は、黒色等の吸光部材で構成される、又は、反射を低減するための表面処理が施されて構成される。これにより、筒状体20の内部に入り込んだ後に反射する太陽光、セラミック形成部3a以外の箇所で反射する表示光Lなどの迷光が、アイボックス5に到達することを抑制することができる。
【0024】
カバーガラス30は、開口部20aに設けられ、セラミック形成部3aで反射した表示光Lを透過させる板状の部材である。カバーガラス30は、平板状であっても湾曲した板状であってもよい。
【0025】
本実施形態のカバーガラス30は、
図2に示すように平面視で、前方に向かって徐々に拡幅する台形状をなす。カバーガラス30は、台形を構成する各辺に対応する端部として、フロントガラス3に近接する近接端部31と、車両1の前後方向において近接端部31の反対側に位置する後端部32と、左端部33と、右端部34と、を有する。
【0026】
近接端部31は、フロントガラス3(より具体的にはセラミック形成部3a)と接触せずに近接しているため、
図2に示すように、近接端部31とフロントガラス3の間には、隙間Gが生じる。これにより、カバーガラス30とフロントガラス3との接触による異音の発生、及び、双方の破損を防止することができる。なお、隙間Gに、スポンジ等の公知の緩衝材を充填してもよい。
【0027】
カバーガラス30の後端部32、左端部33及び右端部34は、ダッシュボード2の傾斜部2bに載置され、且つ、固定される。つまり、本実施形態では、カバーガラス30は、近接端部31を除く、後端部32、左端部33及び右端部34においてダッシュボード2の傾斜部2bに固定される。なお、カバーガラス30は、ダッシュボード2の傾斜部2bに対し、ネジ、接着、両面テープ等の公知の固定手法によって固定されればよい。
【0028】
このように、カバーガラス30は、傾斜部2bに固定されるため、
図1に示すように、近接端部31が後端部32よりも上方に位置するように傾いて、開口部20aに設けられる。
【0029】
また、
図1に示す、車両1の上下方向における位置Pc,Pbから分かるように、カバーガラス30の近接端部31は、セラミック形成部3aの上端よりも低い位置にある。なお、位置Pcは近接端部31の位置であり、位置Pbはセラミック形成部3aの上端の位置である。この位置関係による効果は後に述べる。
【0030】
カバー部材40は、カバーガラス30のうち、ダッシュボード2の傾斜部2bに載置された部分を覆い隠すと共に、ダッシュボード2に固定される部材である。本実施形態のカバー部材40は、開口部20aに沿う形状をなし、カバーガラス30の後端部32、左端部33及び右端部34を覆い隠す。例えば、カバー部材40は、図示せぬフック機構を用いてダッシュボード2に固定される。なお、カバー部材40は、ダッシュボード2と同様の素材で形成され、且つ、ダッシュボード2に施された表面処理と同様の表面処理が施されていることが好ましい。こうすれば、見栄えの観点として、ダッシュボード2とカバーガラス30の間のシームレス性を向上させることができる。
【0031】
なお、本発明は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜、変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0032】
上記実施形態では、カバーガラス30が台形状の例を示したが、カバーガラス30の形状は、近接端部31と後端部32を有していれば任意に変更可能であり、他の多角形状であってもよい。
【0033】
上記実施形態では、カバーガラス30は、後端部32、左端部33及び右端部34においてダッシュボード2に固定される例を示したが、近接端部31を除く、一以上の任意の端部においてダッシュボード2に固定されていればよい。
【0034】
(効果)
以下、車載表示装置100が奏する主な効果について纏めて述べる。
【0035】
(1)車載表示装置100は、車両1のダッシュボード2の内部に設けられ、車両1のフロントガラス3の下端領域に設けられたセラミック形成部3aに向け、画像を表す表示光Lを発する表示器10と、ダッシュボード2に形成された開口部20aに設けられ、セラミック形成部3aで反射した表示光Lを透過させるカバーガラス30と、を備える。
この構成によれば、ダッシュボード2の構成を利用することで、装置を、筐体を備えたアセンブリーとしてダッシュボード2の内部に設置せずとも済むため、省スペースで車載表示装置100を構成することができ、車両1へ搭載し易い。
【0036】
(2)車載表示装置100において、カバーガラス30は、フロントガラス3に近接する端部である近接端部31を除く、任意の端部(後端部32、左端部33及び右端部34の少なくともいずれか)においてダッシュボード2に固定される。
この構成によれば、カバーガラス30におけるフロントガラス3に近い部分に、固定する部材を設けずに済むため、カバーガラス30とフロントガラス3の境界が目立たなくなり、ユーザ4が画像を視認する箇所の近傍の見栄えを向上させることができる。
【0037】
(3)車載表示装置100において、カバーガラス30の近接端部31は、セラミック形成部3aの上端よりも低い位置にある。
この構成によれば、アイボックス5に視点をおくことで画像を視認するユーザ4から見て、常に、黒セラ部(セラミック形成部3a)の中にカバーガラス30のエッジ(近接端部31)が存在することになり、当該エッジの存在を目立たなくすることができる。結果として、画像が表示される領域と、フロントガラス3におけるセラミック形成部3aよりも上の領域(つまり、ユーザ4が前方風景を透かして視認可能な領域)との見栄え上のシームレス性が向上する。
【0038】
(4)車載表示装置100において、カバーガラス30は、車両1の前後方向において近接端部31の反対側に位置する後端部32を有し、近接端部31が後端部32よりも上方に位置するように傾いて開口部20aに設けられる。
この構成によれば、カバーガラス30の上にユーザ4が、画像の表示を妨げる、鍵、カード、コイン等の障害物を落とす、又は、置いてしまったとしても、カバーガラス30の傾斜によって当該障害物を取り除き易い、又は、当該障害物の存在を認識し易い。
【0039】
(5)車載表示装置100は、ダッシュボード2の一部によって形成され、表示器10が発した表示光Lをセラミック形成部3aに通過させる筒状体20をさらに備える。
この構成によれば、ダッシュボード2の一部をあたかも、車載表示装置100の筐体のように用いることができるため、より省スペースで車載表示装置100を構成することができる。
【0040】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0041】
この発明は、この発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、この発明の範囲を限定するものではない。すなわち、この発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0042】
100…車載表示装置
1…車両
2…ダッシュボード、2a…台部、2b…傾斜部
3…フロントガラス、3a…セラミック形成部、G…隙間
4…ユーザ、5…アイボックス
10…表示器、10a…表示面、L…表示光
20…筒状体
20a…開口部、21~24…第1~第4壁部
30…カバーガラス
31…近接端部、32…後端部、33…左端部、34…右端部
40…カバー部材