(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072329
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】動物取出装置
(51)【国際特許分類】
A01K 1/03 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A01K1/03 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183044
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】520065422
【氏名又は名称】有限会社Acty Fоrest
(74)【代理人】
【識別番号】100100170
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 厚司
(72)【発明者】
【氏名】林 英樹
【テーマコード(参考)】
2B101
【Fターム(参考)】
2B101AA13
2B101AA20
2B101FA04
(57)【要約】
【課題】動物病院等の入院用ケージから動物を容易かつ確実に取り出すことができる動物取出装置を提供する。
【解決手段】一面に開口部6が形成された直方体形状の装置本体2と、装置本体2の開口部6の縁に取り付けられ、開口部6を開閉する扉体3と、扉体3を閉じるように操作する操作部4とを備える。装置本体2の開口部6と反対側の面を貫通して扉体3を装置本体2の内側から押さえる押さえ棒5を備える。扉体3に押さえ棒5の先端が抜き差し可能に挿入される支持部16を備える。装置本体2の開口部6と反対側の面に押さえ棒5が挿通可能な挿入孔15を備える。扉体3は装置本体2の開口部6の下縁に回動可能に設けられ、装置本体2の開口部6を上下に開閉する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に開口部が形成された直方体形状の装置本体と、
前記装置本体の前記開口部の縁に取り付けられ、前記開口部を開閉する扉体と、
前記扉体を閉じるように操作する操作部とを備え、
前記装置本体の開口部と反対側の面を貫通して前記扉体を前記装置本体の内側から押さえる押さえ棒を備えることを特徴とする動物取出装置。
【請求項2】
前記扉体に前記押さえ棒の先端が抜き差し可能に挿入される支持部を備えることを特徴とする請求項1に記載の動物取出装置。
【請求項3】
前記装置本体の開口部と反対側の面に前記押さえ棒が挿通可能な挿入孔を備えることを特徴とする請求項1に記載の動物取出装置。
【請求項4】
前記扉体は前記装置本体の開口部の下縁に回動可能に設けられ、前記装置本体の開口部を上下に開閉することを特徴とする請求項1に記載動物取出装置。
【請求項5】
前記操作部は、紐状体からなり、
前記紐状体は、一端が前記扉体の自由端に取り付けられ、他端が前記開口部の反対側から引き操作可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の動物取出装置。
【請求項6】
前記扉体は、前記装置本体の前記開口部を開く方向に付勢する付勢機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の動物取出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動物病院等に設けられた入院用ケージ、動物園の檻、害獣用の箱罠等から動物を取り出すための動物取出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動物病院やペットホテル等には、犬、猫などの動物の病気やケガによる入院、動物の預かり、宿泊を目的として入院用ケージが設置されている。入院用ケージに入れられた動物は、入院用ケージの内外の環境や、他の動物の臭い、吠え声、鳴き声等で怯えてストレスが溜まっている。このため、入院用ケージ内の動物を診察や治療、運動、散歩等のために取り出すとき、動物が暴れて捕まえることが困難であるという問題があった。
【0003】
特許文献1には、ケージ本体の両側に扉枠部を設け、正面の開口部に移動枠を設けて、扉枠部から入れた動物を移動枠によってケージ本体の奥に追い込み、動物の動きを封じて、注射等の処置を施すことができる動物追い込みケージが記載されている。この追い込みケージでは、動物を追い込むことはできるが、動物を取り出すときには、動物物が暴れるのを制止することはできない。
【0004】
特許文献2、特許文献3には、マウス、モルモット等の小動物を飼育ケージから他のケージに入れ替える交換装置が記載されている。この交換装置はケージの上方に設けられ、大掛かりになっているため、動物病院の入院用ケージのような複数のケージを複数段に配設したものには適用できないし、下段のケージの動物を取り出すことはできない。
【0005】
そこで、本発明者は、特許文献4において、一面に開口部が形成された直方体形状の装置本体に、開口部を開閉する扉体と、扉体を閉じるように操作する操作部とを備え、扉体を開けた状態で、装置本体の開口部が入院用ケージの出入口に対向するように入院用ケージに挿入可能である動物取出装置を提案している。この動物取出装置では、扉体とケージの間に動物の一部又は全部が入り込むと、動物を取り出すことが困難になるので、作業中に、扉が閉じないように確実に開いていることが要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-305059号公報
【特許文献2】特開2014-150769号公報
【特許文献3】特開2018-134004号公報
【特許文献4】特開2021-132553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来の問題点に鑑みてなされたもので、動物病院等の入院用ケージから動物を容易かつ確実に取り出すことができる動物取出装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
(1)一面に開口部が形成された直方体形状の装置本体と、
前記装置本体の前記開口部の縁に取り付けられ、前記開口部を開閉する扉体と、
前記扉体を閉じるように操作する操作部とを備え、
前記装置本体の開口部と反対側の面を貫通して前記扉体を前記装置本体の内側から押さえる押さえ棒を備えることを特徴とする。
前記手段(1)では、扉体を開けた状態で押さえ棒を装置本体の開口部と反対側の面から内部に挿入して扉体を装置本体の内側から押さえることにより、扉体を開いた状態に保持できるので、装置本体を入院用ケージに挿入したときに、動物が扉体と入院用ケージの底面との間に入り込むことが無く、装置本体を押し込みながら操作部を操作して扉体を閉じるだけで、動物を装置本体に追い込むことができ、動物が暴れても、容易かつ確実に取り出すことができる。
【0009】
(2)前記手段(1)において、前記扉体に前記押さえ棒の先端が抜き差し可能に挿入される支持部を備える。
前記手段(2)では、押さえ棒の先端を支持部に差し込むことで、扉体を確実に押さえることができる。
【0010】
(3)前記手段(1)又は(2)において、前記装置本体の開口部と反対側の面に前記押さえ棒が挿通可能な挿入孔を備える。
前記手段(3)では、挿通孔により押さえ棒が上方に持ち上がるのを阻止することができ、扉体を有効に押さえることができる。
【0011】
(4)前記手段(1)から(3)のにいずれかにおいて、前記扉体は前記装置本体の開口部の下縁に回動可能に設けられ、前記装置本体の開口部を上下に開閉する。
前記手段(3)では、動物がケージと扉体との間に入り込で扉体が上方に開くのを押さえることができる。
【0012】
(5)前記手段(1)から(4)のにいずれかにおいて、
前記操作部は、紐状体からなり、
前記紐状体は、一端が前記扉体の自由端に取り付けられ、他端が前記開口部の反対側から引き操作可能に設けられていることが好ましい。
前記手段(5)では、紐状体を引き操作するだけで、入院用ケージの外側から扉体を簡単に閉じることができる。
【0013】
(6)前記手段(1)から(5)のにいずれかにおいて、前記扉体は、前記装置本体の前記開口部を開く方向に付勢する付勢機構を備えていることが好ましい。
前記手段(6)では、扉体が開く方向に付勢されるので、装置本体を入院用ケージに挿入するときに、暴れる動物によって扉体が閉じられる恐れがない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、押さえ棒により扉体を装置本体の内側から押さえることにより、扉体を開いた状態に保持できるので、扉体を開けた状態で装置本体を入院用ケージに挿入し、装置本体を押し込みながら操作部を操作して扉体を閉じるだけで、動物が扉体と入院用ケージの底面との間に入り込むことが無く、動物を装置本体に追い込むことができ、動物が暴れても、容易かつ確実に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る動物取出装置の開口部側から見た斜視図。
【
図2】
図1の動物取出装置の開口部と反対側から見た斜視図。
【
図4】動物取出装置を入院用ケージに挿入した状態を示す断面図。
【
図5】動物取出装置の扉体を閉じて動物を追い込む状態を示す断面図。
【
図6】動物取出装置を入院用ケージから引き出して動物を取り出した状態を示す断面図。
【
図7】扉体を上下に開く方向に設けた変形例の動物取出装置の斜視図。
【
図8】扉体を下方に開く方向に設けた他の変形例の動物取出装置の斜視図。
【
図9】扉体を左右に開く方向に設けたさらに他の変形例の動物取出装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を添付図面に従って説明する。
【0017】
図1と
図2は、本発明の実施形態に係る動物取出装置1を示す。動物取出装置1は、装置本体2と、扉体3と、操作部4と、押さえ棒5とを備えている。なお、装置本体2の扉体3が設けられる面を前面、扉体3が設けられる面と反対側を後面、前面の両側の面を側面、前面から見て上側の面を天面、前面から見て下側の面を底面という。
【0018】
装置本体2は、直方体形状の箱型で、内部に動物を収容可能な収容空間Aが形成されている。装置本体2の前面には開口部6が形成されている。装置本体2の開口部6と対向する後面には強化ガラス又はプラスチック製の透明な覗き窓7が設けられている。装置本体2の両側面にはハンドル8が設けられている。装置本体2の側面下部又は底板には、4つの車輪9が設けられ、床面を転動して前後方向に動物取出装置1を移動させることができるようになっている。
【0019】
装置本体2は、動物が好む木製が好ましいが、ステンレス鋼やアルミニウム等の軽量な金属製、プラスチック製、堅牢なプラスチックダンボール製であってもよい。また、底面以外は、ケージ、格子になっていてもよい。
【0020】
装置本体2の縦横寸法は、
図3に示す入院用ケージ101の縦横寸法より小さく、入院用ケージ101に挿入可能な寸法になっている。装置本体2の奥行寸法は、入院用ケージ101の奥行寸法より小さく、扉体を開けた状態で装置本体2を入院用ケージ101に挿入したときに、少なくとも装置本体2の前の車輪9が入院用ケージ101の床面に乗る大きさにすることが好ましい。例えば、入院用ケージ101が縦600mm、横600mm、奥行900mmの場合、装置本体2は、縦530mm、横460mm、奥行320mmが好ましい。
【0021】
扉体3は、装置本体2の前面の開口部6の底の縁にヒンジ10により取り付けられ、開口部6を上下に開閉するようになっている。扉体3は、装置本体2と同様に、動物が好む木製が好ましいが、ステンレス鋼やアルミニウム等の軽量な金属製、プラスチック製、堅牢なプラスチックダンボール製であってもよい。また、扉体3は、動物が暴れて脚が引っ掛からないようにするため、ケージや格子よりも平板であることが好ましい。
【0022】
装置本体の開口部6の外周には、開口部6を補強するために外枠11が設けられている。外枠11は開口部6を強固に補強できる金属製が好ましいが、その形状は任意である。
【0023】
扉体3と装置本体2の間には、付勢手段として、捩じりばね12が設けられ、扉体3を装置本体2の開口部7を開く方向に付勢している。付勢手段としては、捩じりばね12に限らず、板ばね、ゴム等を使用することができる。なお、ヒンジ10として公知のばね蝶番を用いることができるが、この場合、捩じりばね12は不要である。また、扉体3は自重により下方に開くので、開口部7を開く方向に付勢する捩じりばね12は必ずしも設ける必要がない。
【0024】
操作部4は、柔軟な2本の紐状体、具体的にはロープからなっている。2本の紐状体の一端は、扉体3の自由端側の上端に取り付けられ、他端は装置本体2の後面の上部左右に設けられた孔13に通されて、装置本体2の開口部6と反対側から手動で引き操作可能に設けられている。また、2本の紐状体は、装置本体2の後面に設けた金具14に纏めて結び付けておくことができる。
【0025】
押さえ棒5は、真直な丸棒状で、装置本体2の開口部6と反対側の後面の下部中央に設けられた挿入孔15から挿入して貫通させ、扉体3の自由端の近傍に設けられたて支持部16に先端が抜き差し可能に設けられている。
【0026】
次に、本実施形態の動物取出装置1の作用について説明する。
【0027】
図3に示すように、まず、動物取出装置1の扉体3を開いた状態にする。扉体3は、捩じりばね12により開く方向に付勢されているので、簡単に開く。次に、装置本体2の後面の挿入孔15から押さえ棒5を挿入し、先端を扉体3の支持部16に差し込む。これにより、扉体3は、押さえ棒5により自由端が下方及び上方に移動するのを拘束されるので、開いた状態に保持される。
【0028】
2段の入院用ケージ101の上段の動物100を取り出す場合、当該入院用ケージ101のドア102を開く。装置本体2の後面からハンドル8を握って装置本体2を持ち上げ、装置本体2の開口部6を入院用ケージ101の出入口103に向けて挿入する。
【0029】
図4に示すように、開いた扉体3が入院用ケージ101の内部に入ると、動物100は警戒して暴れたり動き回ることがあるが、扉体3は入院用ケージ101の底面に平行に位置し、押さえ棒5で開いた状態に保持されているため、暴れる動物100によって閉じられたり、動物100が扉体3と入院用ケージ101の底面との間に入り込むことはない。
【0030】
また、押さえ棒5の先端が支持部16に差し込まれているので、扉体3を確実に押さえることができる。さらに、挿通孔15により押さえ棒5が上方に持ち上がるのを阻止することができ、扉体を有効に押さえることができる。
【0031】
動物100が扉体3の上に乗ったとき、あるいは、開いた扉体3の自由端が入院用ケージ101の背面に当たると、押さえ棒5を引き抜いて、紐状体の操作部4を装置本体2の背後から引き操作する。これにより、扉体3が操作部4に引っ張られ、捩じりばね12の付勢力に抗して開口部6を閉じる方向に移動する。操作部4を引いて扉体3を閉じながら、装置本体2を前に押し、扉体3の自由端が入院用ケージ101の背面に当たった状態にする。これにより、入院用ケージ101内の動物100は扉体3によって装置本体2の収容空間Aに追い込まれる。動物100が収容空間Aに入ったか否かは、覗き窓7を通して確認することができる。
【0032】
操作部4を引き操作して扉体3を閉じている間に、操作部4を少し戻すと、
図5に示すように、扉体3は捩じりばね12の付勢力に開く方向に戻る。このため、動物100が装置本体2の収容空間Aに入ろうとしないときには、操作部4を引いたり戻したりすることで、扉体3を開けたり閉めたりして動物100を装置本体2に追い立てることができる。
【0033】
動物100が装置本体2の収容空間Aに完全に入ると、操作部4を引いて扉体3を閉じる。操作部4は、装置本体2の後面の金具14に結ぶ等して緩まないようにするとよい。
【0034】
最後に、
図6に示すように、動物100が入った動物取出装置1を入院用ケージ101から取り出し、処置室等の必要な場所に移動し、扉体3を開いて動物100を出させ、注射等の必要な処置を施したり、運動、散歩をさせ、あるいは飼い主に引き渡したりすることができる。
【0035】
以上のように、本実施形態では、扉体3を開けた状態で押さえ棒5を装置本体2の後面の挿入孔15から内部に挿入して扉体3の支持部16に差し込み、扉体3を開いた状態に保持できるので、装置本体2を入院用ケージ101に挿入したときに、動物100が扉体3と入院用ケージ101の底面との間に入り込むことが無く、装置本体2を押し込みながら操作部4を操作して扉体3を閉じるだけで、動物100を装置本体2に追い込むことができ、動物100が暴れても、容易かつ確実に取り出すことができる。
【0036】
本発明は、前記実施形態に限るものではなく、請求の範囲に記載の発明の要旨から逸脱することなく、適宜修正し、変更することができる。
【0037】
例えば、前記実施形態は、扉体3は開口部6を全面閉じるものであるが、
図7に示すように、扉体3を短くして、扉体3を閉じたときに上方に動物が出られない程度の隙間Sを設けてもよい。
【0038】
また、前記実施形態は、扉体3は装置本体2の開口部6を下方に開くものであるが、
図8に示すように、扉体3を開口部6の上縁と下縁に2つ設けて、上下に開閉するようにしてもよい。この場合、上の扉体3には、開く方向に付勢する捩じりばねを設けることが好ましい、
【0039】
さらに、前記実施形態では、扉体3は装置本体2の開口部6を上下に開閉するものであるが、
図9に示すように、左右に開閉するようにしてもよい。この場合、左右に開く扉体3は、開く方向に付勢する捩じりばねを設けることが好ましい。
【0040】
前記実施形態において、扉体3を閉じた状態に保持するために、扉体3と装置本体2との間にマグネットやローラーキャッチを設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
前記実施形態の動物病院用入院ケージから動物を取り出す動物取出し装置について説明したが、本発明は、動物園の檻、害獣用の箱罠等から動物を取り出す動物取出装置としても利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 動物取出装置
2 装置本体
3 扉体
4 操作部
5 押さえ棒
6 開口部
7 覗き窓
8 ハンドル
9 車輪
10 ヒンジ
11 外枠
12 捩じりばね
13 孔
14 金具
15 挿入孔
16 支持部
100 動物
101 入院用ケージ
102 ドア
103 出入口