IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社テイエルブイの特許一覧

<>
  • 特開-バケット式自動弁 図1
  • 特開-バケット式自動弁 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072336
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】バケット式自動弁
(51)【国際特許分類】
   F16T 1/30 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
F16T1/30 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183055
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(72)【発明者】
【氏名】福田 剛士
(57)【要約】
【課題】確実に閉弁を行うことができるバケット式自動弁の提供。
【解決手段】
流入口13から弁室10に向けて矢印91方向にドレンが流入した場合、バケット3の内側空間30とバケット3の外側の弁室10にドレンが充満するため、バケット3及びボールフロート2は自重によって図1に示す開弁状態を維持する。このため、ドレンは流出口14から排出される。そして、この状態から弁室10に蒸気が流入した場合、バケット3の内側空間30の上部に蒸気が滞留して浮力を生じさせ、バケット3及びボールフロート2は矢印95方向に浮上し、ボールフロート2が弁座50に着座して弁口51を閉弁する。バケット3の支持凹部32の曲率は、ボールフロート2の球外面の曲面の曲率よりも小さく構成されているため、ボールフロート2は揺動しながら弁座50に密着し、確実に弁口51を閉弁することができる。なおガイド33によって、ボールフロート2は矢印97、98方向にのみ揺動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに連通する入口部、弁室空間及び出口部が形成された本体であって、当該入口部から対象液体又は対象気体が当該弁室空間に向けて流入する本体、
前記本体に設けられた弁座手段であって、前記弁室空間の上部又は上部近傍と前記出口部とを連通させる弁口部が形成された弁座手段、
前記弁室空間に浮動可能に配置され、内部にバケット空間が形成され、上面側に載置面が形成されたバケット手段であって、前記弁室空間に前記対象液体が滞留した状態において、当該バケット空間に前記対象液体が滞留したとき、前記弁室空間の下部に位置する下降状態となり、当該バケット空間に前記対象気体が滞留したとき、当該下降状態から浮上した浮上状態となるバケット手段、
自由に動作可能な状態で前記バケット手段の前記載置面に載置された弁体手段であって、前記バケット手段が前記下降状態にあるとき前記弁座手段から離れて前記弁口部を開放し、前記バケット手段が前記浮上状態にあるとき前記弁座手段に接して前記弁口部を閉塞する弁体手段、
を備えたことを特徴とするバケット式自動弁。
【請求項2】
請求項1に係るバケット式自動弁において、
前記弁体手段は、球形状に形成されており、
前記バケット手段の前記載置面は、前記弁体手段の球形状の曲面よりも曲率が小さい湾曲凹部として形成されており、
前記弁体手段は、前記バケット手段の載置面上で湾曲凹部の湾曲に沿って揺動自在である、
ことを特徴とするバケット式自動弁。
【請求項3】
請求項2に係るバケット式自動弁において、
前記弁体手段を一定の揺動方向にのみ揺動させる案内手段、
を備えたことを特徴とするバケット式自動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に係るバケット式自動弁は、弁室内に配置したバケットの下降・浮上動作を利用して開閉する自動弁の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
産業プラントには、ボイラーで生成された蒸気を供給先に向けて高温・高圧で移送する配管系統が設置されていることがある。この配管内で蒸気が液化しドレン(蒸気の凝縮水)が発生した場合、蒸気の移送の障害になるため、適宜、ドレンを配管外に排出する必要がある。
【0003】
このために、配管系統の随所にスチームトラップが設けられている。スチームトラップは配管内のドレンを適宜、自動的に外部に排出する。スチームトラップとしては、種々のタイプ、構造のものが知られており、バケット式やフロート式等のメカニカルスチームトラップがある。この中のバケット式スチームトラップは、弁室内に逆向きに配置したバケットの下降・浮上動作を利用して自動的に開閉するスチームトラップである。
【0004】
バケット式スチームトラップに関する技術として後記特許文献1に開示されたフリーバケットフロート式スチームトラップがある。このフリーバケットフロート式スチームトラップの弁ケーシング内には、互いに連通する入口5、弁室4及び出口14が形成されている。弁室4の上部には弁口16が形成された弁座18が固定されており、弁口16を通じて弁室4と出口14とは連通している。
【0005】
また、弁室4の底壁には導入管7が固定されており、導入管7は弁室4内で直立している。この導入管7には内部に導入孔8が形成され、さらに先端部分に通孔9が形成されている。そして、弁室4内にはバケットフロート22が自由状態で収容されている。このバケットフロート22は外表面に球面状の弁面を形成する球殻23を有しており、下部には開口25が形成されている。この開口25を導入管7が貫通する状態でバケットフロート22は配置されている。
【0006】
弁室4の頂壁には案内棒27が取り付けられている。案内棒27の上端28は球形状に形成されており、この上端28は弁室4の頂壁の球受け29に回転自在に嵌合している。案内棒27の下端は導入管7の先端近傍まで伸びて配置されており、案内棒27はバケットフロート22の上部に形成された貫通孔30を貫通している。
【0007】
入口5からドレンが流入した場合、バケットフロート22内部や弁室4にはドレンが充満し、バケットフロート22は自重によって下降し弁口16を開弁する。これによって、ドレンは出口14から排出される。そして、入口5から蒸気等の気体が流入した場合、この気体はバケットフロート22内部に滞留してバケットフロート22を浮上させる。これによって、バケットフロート22の外表面である弁面が弁座18に着座して弁口16を閉弁し、蒸気の流出を遮断する。
【0008】
バケットフロート22の浮上又は下降の動きは案内棒27で案内される。案内棒27は上端28を支点として自由に揺動可能であるため、弁座18の一点を支点に回転し、弁口16を開閉するバケットフロート22の動作を妨げない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平2-29398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前述の特許文献1に開示されたフリーバケットフロート式スチームトラップにおいては、バケットフロート22の動きが、上端28を支点に揺動する案内棒27に規制される。このため、バケットフロート22の外表面である球殻23によって、弁口16を十分に閉弁することができない場合がある。弁口16の閉弁が不十分な場合、弁口16から蒸気が漏れ出し、蒸気ロスを生じる虞がある。
【0011】
そこで本願に係るバケット式自動弁は、これらの問題を解決するため、確実に閉弁を行うことができるバケット式自動弁の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願に係るバケット式自動弁は、
互いに連通する入口部、弁室空間及び出口部が形成された本体であって、当該入口部から対象液体又は対象気体が当該弁室空間に向けて流入する本体、
前記本体に設けられた弁座手段であって、前記弁室空間の上部又は上部近傍と前記出口部とを連通させる弁口部が形成された弁座手段、
前記弁室空間に浮動可能に配置され、内部にバケット空間が形成され、上面側に載置面が形成されたバケット手段であって、前記弁室空間に前記対象液体が滞留した状態において、当該バケット空間に前記対象液体が滞留したとき、前記弁室空間の下部に位置する下降状態となり、当該バケット空間に前記対象気体が滞留したとき、当該下降状態から浮上した浮上状態となるバケット手段、
自由に動作可能な状態で前記バケット手段の前記載置面に載置された弁体手段であって、前記バケット手段が前記下降状態にあるとき前記弁座手段から離れて前記弁口部を開放し、前記バケット手段が前記浮上状態にあるとき前記弁座手段に接して前記弁口部を閉塞する弁体手段、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本願に係るバケット式自動弁においては、弁体手段は、バケット手段が下降状態にあるとき弁座手段から離れて弁口部を開放し、バケット手段が浮上状態にあるとき弁座手段に接して弁口部を閉塞する。そして、この弁体手段は、自由に動作可能な状態でバケット手段の載置面に載置されている。
【0014】
このため、バケット手段が浮上状態に至る際、弁体手段はバケット手段の載置面上で自由に移動しながら弁座手段に密着することが可能である。したがって、確実に弁口部を閉塞して閉弁することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本願に係るバケット式自動弁の第1の実施形態を示すバケット式スチームトラップ1の断面図であり、開弁状態を示す断面図である。
図2図1に示すバケット式スチームトラップ1の閉弁状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態における用語説明]
実施形態において示す主な用語は、それぞれ本願に係るバケット式自動弁の下記の要素に対応している。
【0017】
バケット式スチームトラップ1・・・バケット式自動弁
ボールフロート2・・・弁体手段
バケット3・・・バケット手段
弁室10・・・弁室空間
ケーシング本体11及びケーシング蓋12・・・本体
流入口13・・・入口部
流出口14・・・出口部
内側空間30・・・バケット空間
支持凹面32・・・載置面
ガイド33・・・案内手段
弁座50・・・弁座手段
弁口51・・・弁口部
矢印97、98方向・・・揺動方向
ドレン・・・対象液体
蒸気又はエアー・・・対象気体
開弁状態・・・下降状態
閉弁状態・・・浮上状態
【0018】
[第1の実施形態]
本願に係るバケット式自動弁の第1の実施形態を説明する。本実施形態では、バケット式自動弁としてバケット式スチームトラップ1を例示する。バケット式スチームトラップ1は、産業プラント等に設置された蒸気移送の配管系統に接続される。そして、バケット式スチームトラップ1が自動的に開弁することによって。蒸気の凝縮によって発生するドレンを配管系統の外部に排出し、自動的に閉弁することによって蒸気漏れを防止する。
【0019】
(バケット式スチームトラップ1の構成の説明)
バケット式スチームトラップ1は、上部が開口したケーシング本体11とケーシング蓋12とを備えている。ケーシング本体11とケーシング蓋12とは、ガスケット81を挟んで接続され、ボルト(図示せず)によって固定される。ケーシング本体11及びケーシング蓋12の内部に形成された空間が弁室10として構成される。そして、ケーシング本体11の側面には、弁室10に連通する流入口13と流出口14とが設けられている。流入口13と流出口14とは、同軸上に形成された開口である。
【0020】
流入口13は配管系統の支管(図示せず)に接続され、ここから蒸気又はエアーやドレンが弁室10に向けて流入する。そして、流入したドレンは弁室10を通過して流出口14から排出される。流出口14にはドレン回収管(図示せず)が接続される。
【0021】
ケーシング本体11には、流入口13に連続する流入路15及び接続路17が形成されており、流入口13は流入路15及び接続路17を介して弁室10に連通している。また、ケーシング本体11及びケーシング蓋12には流出口14に連続する流出路16が形成されており、流出口14は流出路16を介して弁室10に連通している。
【0022】
ケーシング本体11に形成された接続路17は側方向に開口しており、この開口部を通じて外部からスクリーン19が挿入されて取り付けられる。スクリーン19には蒸気やドレン等が透過し、ドレン等に混入した異物を補足する。開口部はプラグ85の螺入によって塞がれ、スクリーン19の取り付けが保持される。なお、プラグ85は図において断面ではなく側面図として表されている。
【0023】
ケーシング蓋12に形成された流出路16と弁室10との接続部分には、ガスケット83を挟んで略円筒形状の弁座50がネジ結合によって取り付けられている。この弁座50には、弁室10側である先端部に弁口51が形成されており、弁口51は弁座50内の円筒空間60に連通している。この円筒空間60の後端側は開口しており、この後端部に絞り部材55が接続されている。絞り部材55の後端には小径のオリフィス56が形成されている。そして絞り部材55の後端側の流出路16にはブッシュ57が圧入して取り付けられており、弁座50の円筒空間60を流出路16に連通させている。
【0024】
弁室10の底面にはガスケット82を挟んで細長い円筒形状の導入管4がネジ結合によって固定されている。この導入管4は弁室10の略中央部に直立して配置されている。導入管4内には下部が開口した空間である導入路41が形成されており、この導入路41は接続路17に連通している。また、導入管4の上部先端には、水平面上の十字方向の4箇所に通孔42が形成されている。4箇所の通孔42は、導入管4の先端の側方向に開口し、この通孔42を通じて導入管4の導入路41は弁室10に開放されている。
【0025】
弁室10には、バケット3が配置されている。このバケット3は開口した下側の近傍に底板31が固定されており、この底板31に形成された中心孔を導入管4が貫通した状態で取り付けられる。これによって、バケット3の内側空間30内に導入管4が直立して配置されることになる。底板31の中心孔の直径は導入管4の外径よりもやや大きく形成されているため、バケット3は導入管4に沿って矢印95、96方向に移動自在である。
【0026】
そして、底板31には平面上における十字方向の4箇所に開口部34が形成されており、開口部34を通じて内側空間30が弁室10に連通する。また、バケット3の上面の外周近傍には、平面上における十字方向の4箇所に小径の逃し孔35が形成されており、内側空間30はこの逃し孔35を通じて上方に開放されている。バケット3の上面には中央が湾曲して凹んだ支持凹部32が形成されている。
【0027】
この支持凹部32には、球形状を有するボールフロート2が載置された状態で配置される。ボールフロート2は中空であるが肉厚に形成されており、ある程度の重量を備えている。図1に示すように、支持凹部32の曲率は、ボールフロート2の球外面の曲面の曲率よりも小さく、曲がりが緩やかに形成されている。このため、ボールフロート2は支持凹部32上で、転がりながら自在に揺動することが可能である。
【0028】
バケット3の上面部の両側端には、対向した状態で2つのガイド33が直立方向に固定されており、2つのガイド33の間にボールフロート2が位置している。この2つのガイド33の間隔はボールフロート2の外面直径よりもやや大きく構成されている。これによって、ボールフロート2はガイド33に当接する側方向への揺動が規制され、図に示す矢印97、98方向にのみ揺動可能に案内される。
【0029】
また、バケット3に載置されたボールフロート2は、弁室10内においてバケット3の矢印95、96方向への浮上、下降に一体となって移動する。バケット3が矢印95方向に浮上したとき、ボールフロート2も上昇して弁座50に着座し、弁口51を閉塞して閉弁する(図2の閉弁状態参照)。また、この閉弁状態からバケット3が矢印96方向に下降したとき、ボールフロートも一体的に自重によって下降して弁座50から離座し、弁口51を開放して開弁する(図1の開弁状態参照)。
【0030】
弁室10の上面に相当するケーシング蓋12の内面には、カーブを描くように屈曲させたバイメタル86がボルト87によって固定されている。ボルト87は図において断面ではなく側面図として表されている。バイメタル87は、膨張係数の異なる2枚の合金薄板を貼り合わせた感温部材であり、周辺温度が高温のときは屈曲して図1に示す状態に収まる。これに対し、周辺温度が低温になったときはこの低温状態に反応して形状が変化し、屈曲が伸びて先端部が弁室10内に向けて突出する(図示せず)。
【0031】
すなわち、配管系統のシステムが稼働する前の状態においては、バケット式スチームトラップ1も低温状態であるためバイメタル87は伸びて先端部が弁室10内に向けて突出している。このため、システムの稼働直後、弁室10に低温のドレンや空気が流入してバケット3及びボールフロート2が浮上した場合であっても、弁座50へのボールフロート2の着座をバイメタル87の先端部が阻止し、強制的に開弁状態を維持する。これによって、初期のドレンや空気を流出口14から排出することができる。その後、弁室10に高温の蒸気やドレンが流入した場合、バイメタル87は屈曲して図1に示す状態に収まり、以後、システムの稼働中、ボールフロート2による開弁及び閉弁にバイメタル87は干渉しない。
【0032】
(バケット式スチームトラップ1の動作の説明)
次に、バケット式スチームトラップ1の動作を説明する。まず図1に示す開弁状態において、流入口13から弁室10にドレンが矢印91方向に流入した場合、ドレンは導入管4の先端部に形成された通孔42からバケット3の内側空間30に流れ込む。このとき、内側空間30には蒸気又はエアーが充満しているため、バケット3は矢印95方向にやや浮き上がり、バケット3と弁室10の底面との間に生じた隙間からドレンは弁室10に流れ出す。そして、弁室10に滞留するドレンの水位は徐々に上昇する。
【0033】
また、バケット3の内側空間30に滞留していた蒸気又はエアーはドレンの流入圧に押し出され、バケット3の上面に形成された小径の逃し孔35から少しずつ流出する。このため、内側空間30にも徐々にドレンが蓄積され、やがて内側空間30にもドレンが充満する。
【0034】
こうして、バケット3の内側空間30とバケット3の外側の両側において弁室10にドレンが充満する。これによって、バケット3は自重によって矢印96に下降し、弁室10の底面に着地した状態で安定する。ここで、ボールフロート2は水中で浮上せず、自重によって下降するような重量に調整されて構成されている。このため、ボールフロート2はバケット3の支持凹面32に当接した状態を維持しながら、バケット3と一体的に矢印96方向に自重によって下降する。
【0035】
図1はこの開弁開弁状態を示している。図1に示すように、ボールフロート2が弁座50から離れて弁口51を開放して開弁していることによって、弁室10に充満したドレンは弁口51を通過し、流出路16を介して流出口14から矢印92方向に排出される。
【0036】
続いて、流入口13から弁室10に蒸気が矢印91方向に流入した場合、蒸気は導入管4の先端部に形成された通孔42からバケット3の内側空間30に流出する。このとき、内側空間30にはドレンが充満しているため、蒸気は内側空間30の上部に滞留する。バケット3の上面には小径の逃し孔35が形成されており、ここから内側空間30の上部に滞留した蒸気は少しずつ流出するが、逃し孔35からの流出量よりも導入管4の通孔42からの流入量の方が圧倒的に多いため、内側空間30の上部に滞留する蒸気量は徐々に増加する。なお、バケット3の逃し孔35から流出した蒸気は弁室10内のドレン中に気泡となって流出するが、ドレンに熱を奪われて凝縮しドレンに変化する。
【0037】
バケット3の外側には弁室10に充満したドレンが存在するため、バケット3には内側空間30に滞留した蒸気によって浮力が生じ、バケット3は矢印95方向に浮上する。これに従って、バケット3の支持凹面32に載置されたボールフロート2も一体的に浮上して弁座50に着座し、弁口51を閉塞して閉弁する。図2はこの閉弁状態を示している。
【0038】
ここで、前述のようにバケット3の支持凹部32の曲率は、ボールフロート2の球外面の曲面の曲率よりも小さく、曲がりが緩やかに構成されているため、ボールフロート2は支持凹部32上で、転がりながら揺動することが可能である。また、前述のようにバケット3の上面部の両側端に直立している2つのガイド33によって、ボールフロート2はガイド33に当接する側方向への揺動が規制され、図に示す矢印97、98方向にのみ揺動可能に案内される。
【0039】
このため、ボールフロート2が弁座50に着座する際、ボールフロート2はバケット3の支持凹部32上で矢印97、98方向に揺動しながら弁座50に密着することが可能である。したがって、確実に弁口51を閉塞して閉弁することができる。図2は、ボールフロート2が図1に示す状態から、支持凹面32上で矢印98方向に揺動して弁座50に着座した状態を表している。ガイド33がボールフロート2の側方向への揺動を規制することによって、ボールフロート2が側方向にずれ、弁口51の閉塞が不十分になる事態を防止することができる。
【0040】
なお、弁口51に対するボールフロート2の側方向における位置決めは、バケット式スチームトラップ1の組み立て時に正確に調整されているため、ボールフロート2は弁口51を確実に閉塞することができる。ボールフロート2が弁座50に密着して着座し、弁口51を閉塞して閉弁することによって、バケット式スチームトラップ1からの蒸気漏れを防止し、蒸気ロスを回避することができる。
【0041】
図2に示す閉弁状態から弁室10に再びドレンが流入した場合、バケット3の内側空間30内の蒸気は逃し孔35から押し出され、内側空間30には徐々にドレンが滞留してやがて充満する。これによってバケット3は浮力を失い、自重によって矢印96方向に下降して弁室10の底面に着地し、これに従ってボールフロート2も自重によって下降する。この下降によってボールフロート2は弁座50から離座し、弁口51を開放して開弁する。弁口51の開弁によって、弁室10内のドレンは流出口14から排出される。
【0042】
バケット式スチームトラップ1は以上のような動作を繰り返して開弁又は閉弁を行い、ドレンを配管系統から外部に向けて排出しつつ、蒸気漏れを防止する。
【0043】
[その他の実施形態]
前述の実施形態においては、対象液体、対象気体、本体、入口部、弁室空間、出口部、弁座手段、弁口部、バケット手段、バケット空間、載置面、弁体手段、案内手段、下降状態又は浮上状態のそれぞれについて例を掲げたが、これらは単なる例示であり、各々について異なる構成を採用することもできる。
【0044】
すなわち、たとえば前述の実施形態においては、バケット式自動弁としてバケット式スチームトラップ1を例示したが、弁室内に配置したバケットの下降・浮上動作を利用して開閉する自動弁であれば、スチームトラップ以外の自動弁に本願に係るバケット式自動弁を適用することができる。
【0045】
また、前述の実施形態においては、弁体手段として球形状を有するボールフロート2を例示したが、自由に動作可能な状態でバケット手段(バケット3等)の載置面(支持凹面32等)に載置されたものであれば他の形状、構造を採用してもよい。
【0046】
さらに、前述の実施形態においては、バケット手段としてバケット3を例示したが、弁室空間(弁室10等)に浮動可能に配置され、内部にバケット空間(内側空間30等)が形成されたものであれば他の形状、構造を採用してもよい。
【0047】
また、前述の実施形態においては、バケット手段の載置面としてバケット3の上面の中央が湾曲して凹んだ支持凹面32を例示したが、他の形状、構造を採用することもできる。たとえば、載置面として平面を採用した上、弁体手段(ボールフロート2等)が離脱しないように、載置面上にストッパーとしての突起部を設けた構成を採用することもできる。
【0048】
また、前述の実施形態においては、案内手段としてバケット3の上面部の両側端に直立した2つのガイド33を例示したが、異なる形状、構造を採用することができる。たとえば、案内手段(ガイド33等)を弁室空間(弁室10等)の内壁側に固定してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1:バケット式スチームトラップ 2:ボールフロート 3:バケット 10:弁室
11:ケーシング本体 12:ケーシング蓋 13:流入口 14:流出口
30:内側空間 32:支持凹面 33:ガイド 50:弁座 51:弁口
図1
図2