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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072371
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】半導体装置、および通信システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 11/07 20060101AFI20240521BHJP
   G06F 13/38 20060101ALI20240521BHJP
   G06F 15/78 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
G06F11/07 175
G06F13/38 350
G06F15/78 513
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183123
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 圭
【テーマコード(参考)】
5B042
5B062
【Fターム(参考)】
5B042GA36
5B042GB08
5B042GC05
5B042KK09
5B062EE05
(57)【要約】
【課題】シリアル通信によって異常状態を効果的に送信することが可能となる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置(1)は、シリアルデータである受信データ(RX)を入力するための受信データ入力端子(1A)と、シリアルデータである送信データ(TX)を出力するための送信データ出力端子(1B)と、前記受信データにWriteコマンドが含まれている場合に、前記送信データ出力端子から異常状態を示す異常データ(FL)を出力するように構成される異常出力部(11B)と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリアルデータである受信データを入力するための受信データ入力端子と、
シリアルデータである送信データを出力するための送信データ出力端子と、
前記受信データにWriteコマンドが含まれている場合に、前記送信データ出力端子から異常状態を示す異常データを出力するように構成される異常出力部と、
を備える、半導体装置。
【請求項2】
前記異常出力部は、前記異常データの出力を実行するか否かを示す異常出力フラグを格納可能な第1レジスタを有する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記異常出力部は、前記異常データを出力するときに誤り検出用データを出力しないように構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記異常出力部は、前記異常データを出力するときに誤り検出用データを出力するように構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記異常出力部は、前記異常データを出力するときに前記誤り検出用データを出力するか否かを示す異常モードフラグを格納可能な第2レジスタを有する、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記受信データに設定された対象デバイスが自己の半導体装置であった場合に、前記異常出力部は前記異常データを出力し、前記受信データに設定された対象デバイスが自己以外の半導体装置であった場合に、前記異常出力部は前記異常データを出力しない、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記異常出力部は、前記受信データに設定された対象デバイスが自己の半導体装置であるか否かに関わらず、前記異常データを出力するように構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記異常出力部は、前記異常データを出力する出力インタフェースとして、オープンドレイン構成の前記出力インタフェースを有する、請求項7に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記異常出力部は、前記受信データの受信期間に関わらず、前記異常データを常時出力するように構成される、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記異常データの常時出力状態において、前記異常出力部が前記異常データを出力しないモードに変更された後、Readコマンドを含んだ前記受信データの受信により読み出しデータが前記送信データとして送信されるように構成される、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
MCUと、差動電圧方式により通信を行うように構成される第1通信装置および第2通信装置と、請求項1に記載の半導体装置と、を備え、
前記MCUは、前記第1通信装置および前記第2通信装置を介して前記半導体装置との間で通信を行うように構成され、
前記MCUおよび前記第1通信装置は、第1基板に設けられ、
前記第2通信装置および前記半導体装置は、前記第1基板とは異なる第2基板に設けられる、通信システム。
【請求項12】
MCUと、請求項9に記載の半導体装置と、を備え、
前記MCUは、前記半導体装置との間で直接的に通信を行うように構成され、
前記MCUおよび前記半導体装置は、同一基板に設けられる、通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置、および通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル通信機能を備えた半導体装置が種々のアプリケーションで利用されている。
【0003】
なお、シリアル通信に関する回路技術の一例は、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-224946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、半導体装置には、異常状態を例えばMCU(Micro Controller Unit)に送信する機能が要望される。
【0006】
本開示は、シリアル通信によって異常状態を効果的に送信することが可能となる半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
例えば、本開示の一態様に係る半導体装置は、
シリアルデータである受信データを入力するための受信データ入力端子と、
シリアルデータである送信データを出力するための送信データ出力端子と、
前記受信データにWriteコマンドが含まれている場合に、前記送信データ出力端子から異常状態を示す異常データを出力するように構成される異常出力部と、を備える構成としている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の例示的な半導体装置によれば、シリアル通信によって異常状態を効果的に送信することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本開示の例示的な実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図2図2は、半導体装置の一部のブロック構成を示す図である。
図3図3は、異常出力動作の第1例を示すタイミングチャートである。
図4図4は、異常出力動作の第2例を示すタイミングチャートである。
図5図5は、通信部の出力インタフェースの第1構成例を示す図である。
図6図6は、通信部の出力インタフェースの第2構成例を示す図である。
図7図7は、異常出力動作の第3例を示すタイミングチャートである。
図8図8は、本開示の別の実施形態に係る通信システムの構成を示す図である。
図9図9は、異常出力動作の第4例を示すタイミングチャートである。
図10図10は、異常出力を行わないモードへの切替えを示すタイミングチャートである。
図11図11は、Read処理時の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
<1.通信システム>
図1は、本開示の例示的な実施形態に係る通信システム101の構成を示す図である。通信システム101は、n個(nは2以上の整数)のデバイス1と、MCU2と、CAN(Controller Area Network)トランシーバ3と、CANバス4と、CANトランシーバ
5と、を備える。通信システム101は、一例として車載用としており、以下説明する他の通信システムについても同様である。なお、半導体装置1は、単数でもよい。
【0012】
MCU2とCANトランシーバ3との間では、UART(Universal Asynchronous Receiver/Transmitter)による通信が行われる。UARTは、2つのデバイス間でシリアルデータを交換するためのプロトコルである。UARTでは、送信側と受信側の間で2本のラインにより双方向の通信が行われる。
【0013】
CANトランシーバ3,5との間では、通信ライン4による通信が行われる。CANは、国際標準規格のISO11898等で標準化されているシリアル通信規格である。CANでは、2本の通信線に発生する電圧差のレベルによってデータを送信する差動電圧方式が用いられる。
【0014】
CANトランシーバ3は、TXD(送信データ入力)端子3AとRXD(受信データ出力)端子3Bを有する。CANトランシーバ3は、TXD端子3Aに入力されたデータを通信ライン4へ出力し、通信ライン4から入力されたデータをRXD端子3Bから出力する。
【0015】
CANトランシーバ5は、RXD端子5AとTXD端子5Bを有する。CANトランシーバ5は、TXD端子5Bに入力されたデータを通信ライン4へ出力し、通信ライン4から入力されたデータをRXD端子5Aから出力する。
【0016】
半導体装置1は、所定機能の回路が集積化されたIC(集積回路)であり、例えばLED(発光ダイオード)ドライバICとして構成される。なお、n個の半導体装置1は、全てが同じ機能のデバイスとは限らない。
【0017】
半導体装置1は、RX(受信データ入力)端子1AとTX(送信データ出力)端子1Bを有する。n個のRX端子1Aは、RXD端子5Aに共通接続される。n個のTX端子1Bは、TXD端子5Bに共通接続される。
【0018】
n個の半導体装置1は同じプロトコルに対応しているため、n個の半導体装置1を同じCANトランシーバ5に共通接続することができる。RXD端子5Aから出力される受信データRXは、n個のRX端子1Aに入力される。受信データRXには、n個の半導体装置1のうちいずれかのデバイスアドレスが指定されている。また、TX端子1Bから出力される送信データTXは、TXD端子5Bに入力される。
【0019】
MCU2およびCANトランシーバ3は、基板6に設けられる。n個の半導体装置1およびCANトランシーバ5は、基板6とは異なる基板7に設けられる。基板6と基板7とは図示しないハーネスにより接続される。通信ライン4は、ハーネスにより構成される。
【0020】
<2.半導体装置の構成>
図2は、半導体装置1の一部のブロック構成を示す図である。半導体装置1は、UART通信を行うための通信部11を備える。なお、半導体装置1は、その他の図2に図示しない機能ブロックを備えてもよい。例えば、半導体装置1がLEDドライバである場合は、LED駆動に関するブロック機能(DC/DCコンバータ機能、電流ドライバなど)を備える。
【0021】
通信部11は、RX端子1Aを介して受信データRXを受信する。通信部11は、TX端子1Bを介して送信データTXを出力する。
【0022】
通信部11は、データを格納するためのレジスタ11Aを有する。また、通信部11は、異常状態を送信データTXとして送信するための異常出力部11Bを有する。
【0023】
<3.受信データの構成>
ここでは、図3を用いて受信データRXのデータ構成について説明する。なお、図3は、後述する後述する異常出力動作の一例を示すタイミングチャートである。
【0024】
UARTでは、フレームと呼ばれるデータ単位により通信が行われる。フレームは、スタートビットからストップビットまでのビットデータで構成される。スタートビットはローレベル、ストップビットはハイレベルとなる。スタートビットとストップビットの間には、所定ビット数のビットデータが配置される。ここでは一例として上記所定ビット数を8ビットとしており、1つのフレームは10ビットのビットデータから構成される。
【0025】
図3に示すように、受信データRXは、同期フレームSYN、デバイスフレームDV、データ数フレームND、レジスタアドレスフレームAD、データフレームDT、CRC(Cyclic Redundancy Check)フレームCRL,CRHを先頭から順に有する。なお、CRCの16ビットデータを2つのフレームCRL(下位8ビット),CRH(上位8ビット)に分けている。
【0026】
同期フレームSYNは、半導体装置1にボーレートを設定するためのビットデータである。
【0027】
デバイスフレームDVは、デバイスアドレスおよびRead/Writeビットなどを含む。デバイスアドレスは、対象デバイス(半導体装置1)のアドレスを示すビットデータである。Read/Writeビットは、ReadあるいはWriteを示すビットデータである。Readは、半導体装置1からのデータ読出しを示し、Writeは、半導体装置1へのデータ書き込みを示す。
【0028】
データ数フレームNDは、データフレームDTのフレーム数を示すビットデータである。レジスタアドレスフレームADは、レジスタ11Aにおけるアドレスを示すビットデータである。データフレームDTは、受信データRXにより送信するデータ本体を示すビットデータである。CRCフレームCRL,CRHは、データフレームDTに対して付加される誤り検出符号を示すビットデータである。
【0029】
<4.異常出力動作>
次に、異常出力部11Bによる異常出力動作の各種形態について図3などの図面を用いて説明する。なお、便宜上、n個の半導体装置1については、n=2であるとする。
【0030】
ここで、レジスタ11Aには、異常出力フラグFAULTOUTおよび異常モードフラグFAULTMODEを格納可能である。異常出力フラグFAULTOUTは、異常出力を行うか否かを示すフラグである。異常モードフラグFAULTMODEは、異常出力の形態を示すフラグである。
【0031】
図3は、Read/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=0の場合の異常出力動作を示すタイミングチャートである。異常出力フラグFAULTOUT=1は、異常出力の実行を示す。また、異常モードフラグFAULTMODE=0は、CRCフレームなしで異常出力を実行するモードを示す。
【0032】
図3に示すように、一例として受信データRXのデバイスフレームDVにおけるデバイスアドレスが2個の半導体装置1のうちデバイス#1を示すとする。すなわち、デバイス#1が対象デバイスである。なお、これは後述する図4,7,9~11でも同様であるとする。
【0033】
図3の場合、受信データRXが受信されている期間は、デバイス#1とデバイス#2それぞれのTX端子1Bから出力される送信データTX(TX#1,TX#2)は、いずれもハイインピーダンス状態である。そして、受信された受信データRXにおいてRead/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=0であるため、対象デバイスであるデバイス#1における異常出力部11Bは、受信データRXの受信終了タイミングで異常フレームFLを送信データTX(TX#1)として出力する。異常フレームFLは、半導体装置1における異常状態を示すフレームである。例えば、複数種類の異常のうち少なくとも1つを検出していれば、異常フレームFLのビットデータ(スタートビットとストップビットを除く)のすべてを1としてもよい。または、異常フレームFLのビットデータの1ビットごとが異常の種類を示してもよい。
【0034】
異常モードフラグFAULTMODE=0であるため、異常出力部11Bは、異常フレームFLの出力後は、送信データTXをハイインピーダンス状態とし、CRCフレームの送信は行わない。なお、対象デバイスでないデバイス#2においては、受信データRXの受信終了後も送信データTXはハイインピーダンス状態を維持され、異常状態の出力は行われない。
【0035】
デバイス#1から送信された異常フレームFLが示す異常状態は、CANトランシーバ5、CANバス4、およびCANトランシーバ3を介してMCU2に伝送される。これにより、MCU2は、デバイス#1の異常状態を取得できる。なお、CRCフレーム送信を行わずに異常フレームFLを送信するため、MCU2は早期に異常状態を取得できる。
【0036】
図4は、Read/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=1の場合の異常出力動作を示すタイミングチャートである。異常モードフラグFAULTMODE=1は、CRCフレームCRL,CRHの送信ありで異常出力を実行するモードを示す。
【0037】
図4の場合、受信データRXが受信されている期間は、デバイス#1とデバイス#2それぞれのTX端子1Bから出力される送信データTX(TX#1,TX#2)は、いずれもハイインピーダンス状態である。そして、受信された受信データRXにおいてRead/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=1であるため、対象デバイスであるデバイス#1における異常出力部11Bは、受信データRXの受信終了タイミングで異常フレームFLを送信データTX(TX#1)として出力する。
【0038】
異常モードフラグFAULTMODE=1であるため、異常出力部11Bは、異常フレームFLの出力後にCRCフレームCRL,CRHをTXデータとして出力する。なお、対象デバイスでないデバイス#2においては、受信データRXの受信終了後も送信データTXはハイインピーダンス状態を維持され、異常状態の出力は行われない。
【0039】
デバイス#1から送信された異常フレームFLが示す異常状態およびCRCフレームCRL,CRHが示す誤り検出符号は、CANトランシーバ5、通信ライン4、およびCANトランシーバ3を介してMCU2に伝送される。これにより、MCU2は、異常フレームFLにより伝送されたデータに対してCRCフレームCRL,CRHによる誤り検出符号により誤り検出を行うことができる。これにより、MCU2は、より正確に異常状態を取得できる。
【0040】
このように、本実施形態では、受信データRXにおけるRead/Writeビット=Writeである場合、すなわち受信データRXにWriteコマンドが含まれる場合に、異常出力部11Bが異常フレームFLにより異常状態を送信するようにしている。図1に示すように異なる基板6,7を用いた構成の場合、ハーネスを用いる必要があり、仮に半導体装置1に異常状態出力の割込み信号用のポートを設けた場合、ハーネスにおける配線が増え、ハーネスのコストが上昇する。そこで、受信データRXにおけるRead/Writeビット=Readの場合に、レジスタ11Aから読み出した異常状態を示すデータを送信データTXとして出力することも考えられる。しかしながら、Write処理に比べてRead処理の頻度が少ないため、本実施形態のように、Write処理時に異常状態を送信したほうが、異常状態を頻繁にMCU2に伝送することができる。
【0041】
<5.通信部の出力インタフェース>
ここで、通信部11における出力インタフェースについて説明する。図5は、上記出力インタフェースとしてバッファを用いた場合の構成例を示す図である。図5においては、デバイス#1,#2(半導体装置1)それぞれの通信部11における出力インタフェースとして、バッファ110が図示される。
【0042】
バッファ110は、複数段のインバータから構成され、最も前段にインバータIV1を有し、最も後段にインバータIV2を有する。各インバータは、電源電圧Vccの印加端と接地端との間に直列に接続されるハイサイドトランジスタPMとローサイドトランジスタNMを有する。ハイサイドトランジスタPMは、pチャネルMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)により構成され、ローサイドトランジスタNMは、nチャネルMOSFETにより構成される。
【0043】
内部信号Sは、インバータIV1に入力され、各インバータにおいて論理反転され、インバータIV2からTX端子1Bを介して送信データTXとして出力される。インバータIV2におけるハイサイドトランジスタPMとローサイドトランジスタNMがともにオフ状態の場合、送信データTXはハイインピーダンス状態となる。インバータIV2においてハイサイドトランジスタPMがオン状態、ローサイドトランジスタNMがオフ状態の場合、送信データTXはハイレベルとなる。インバータIV2においてハイサイドトランジスタPMがオフ状態、ローサイドトランジスタNMがオン状態の場合、送信データTXはローレベルとなる。
【0044】
先述した図3,4のように、デバイス#1,#2のうち一方から異常フレームFLを出力し、他方は送信データTXをハイインピーダンス状態とする場合は、図5に示すバッファ110を用いた構成により、異常フレームFLをCANトランシーバ5に送信できる。
【0045】
しかしながら、デバイス#1,#2の両方から異常フレームFLを同時に出力する場合、図5に示すように一方のデバイスから出力される送信データTXがハイレベル、他方のデバイスから出力される送信データTXがローレベルとなる場合がある。この場合、図5に破線矢印で示す経路のように、電源電圧Vccの印加端から、一方のインバータIV2におけるハイサイドトランジスタPM、一方のTX端子1B、他方のTX端子1B、および、他方のインバータIV2におけるローサイドトランジスタNMを介して接地端へ大電流が流れる。これにより、CANトランシーバ5へ出力される信号が不十分となってしまう。
【0046】
これに対し、図6は、通信部11の出力インタフェースとしてオープンドレイン構成を用いた場合の構成例を示す図である。図6においては、デバイス#1,#2それぞれの通信部11における出力インタフェースとして、バッファ110、およびNMOSトランジスタ111が図示される。
【0047】
NMOSトランジスタ111のゲートは、インバータIV2の出力端に接続される。NMOSトランジスタ111のソースは、接地端に接続される。NMOSトランジスタ111のドレインは、TX端子1Bに接続される。CANトランシーバ5において、TXD端子5Bには、プルアップ抵抗51が接続される。
【0048】
インバータIV2の出力がローレベルの場合、NMOSトランジスタ111はオフ状態となる。インバータIV2の出力がハイレベルの場合、NMOSトランジスタ111はオン状態となる。デバイス#1,#2の両方におけるNMOSトランジスタ111がオフ状態の場合、プルアップ抵抗51により送信データTXはハイレベルとしてCANトランシーバ5に送信される。
【0049】
デバイス#1,#2の少なくとも一方においてNMOSトランジスタ111がオン状態の場合、送信データTXはローレベルとしてCANトランシーバ5に送信される。この場合、一方のデバイスのNMOSトランジスタ111がオン状態で、他方のデバイスのNMOSトランジスタ111がオフ状態の場合、先述した図5に示す構成の場合のような干渉が発生しない。
【0050】
従って、図6に示すようなオープンドレインの構成を出力インタフェースとして用いた場合に、デバイス#1,#2の両方から異常フレームFLを同時に出力することが可能である。
【0051】
図7は、Read/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=2の場合の異常出力動作を示すタイミングチャートである。異常モードフラグFAULTMODE=2は、すべてのデバイス#1,#2で異常出力を実行するモードを示す。すなわち、半導体装置1は、自己が対象デバイスでない場合でも異常出力を実行する。
【0052】
図7の場合、受信データRXが受信されている期間は、デバイス#1,#2の両方のNMOSトランジスタ111がオフ状態であり、デバイス#1とデバイス#2それぞれのTX端子1Bから出力される送信データTX(TX#1,TX#2)は、いずれもハイレベルである。そして、受信された受信データRXにおいてRead/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=2であるため、対象デバイスであるデバイス#1と、対象デバイスでないデバイス#2の両方における異常出力部11Bは、受信データRXの受信終了タイミングで異常フレームFLを送信データTX(TX#1,#2)として出力する。先述した図6に示すような構成であれば、このように異常フレームFLをすべてのデバイスから送信することが可能である。
【0053】
<6.異常状態の常時出力>
ここで、図8は、本開示の別の実施形態に係る通信システム102の構成を示す図である。通信システム102は、MCU2と、n個の半導体装置1と、を備えている。MCU2およびn個の半導体装置1は、同一の基板8に設けられる。すなわち、通信システム102では、CANトランシーバは用いられず、ハーネスは不要である。
【0054】
n個のRX端子1Aは、MCU2のRXD端子2Aに共通接続される。n個のTX端子1Bは、MCU2のTXD端子2Bに共通接続される。
【0055】
このような通信システム102においては、先述した異常モードフラグFAULTMODE=0,1,2に加えて、異常モードフラグFAULTMODE=3のモードを追加することができる。異常モードフラグFAULTMODE=3は、受信データRXの受信に関わらず異常状態を常時出力するモードを示す。
【0056】
図9は、Read/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=3の場合の異常出力動作を示すタイミングチャートである。この場合、受信データRXにおいてRead/Writeビット=Write、異常出力フラグFAULTOUT=1、異常モードフラグFAULTMODE=3である場合、対象デバイス(図9ではデバイス#1)における異常出力部11Bは、異常状態の出力を開始する。異常状態の出力は、異常フレームFLの出力により行う。以降、図9に示すように受信データRXの受信期間に関わらず、異常状態を常時出力する。これにより、MCU2に異常状態を常時伝送することができる。
【0057】
図1に示すようなCANトランシーバを用いる構成の場合、CANトランシーバが差動電圧方式の構成のため、送信データTXでの信号変動がRXデータRXに伝わる現象が生じる。従って、図9に示すように受信データRXの受信期間において送信データTXを出力することが困難である。そこで、CANトランシーバを用いない図8のような構成により、図9に示すような異常状態の常時出力を実現している。また、図8に示す構成であれば、半導体装置1に異常出力用の割込み信号ポートが不要となる。
【0058】
なお、図9に示すように異常状態を常時出力している状態で対象デバイスのRead処理を行う場合は、次のようにすればよい。まず、図10に示すように、異常状態の常時出力をしているデバイス(ここではデバイス#1)を対象デバイスとして、Read/Writeビット=Writeとした受信データRXにおけるデータフレームDTにより、対象デバイスのレジスタ11Aに格納された異常出力フラグFAULTOUTをFAULTOUT=0に書き換える。これにより、異常出力部11Bは異常状態の出力を実行しないモードとなり、送信データTX(TX#1)をハイインピーダンス状態とする。
【0059】
その後、図11に示すように、異常状態の常時出力をしていたデバイス(ここではデバイス#1)を対象デバイスとして、Read/Writeビット=Readとした受信データRXにより、対象デバイスのRead処理を実行する。これにより、対象デバイスにおける通信部11は、レジスタ11Aから読み出したデータを読み出しデータフレームRDTとして、送信データTXを出力する。通信部11は、読み出しデータフレームRDTの後にCRCフレームCRL,CRHを送信データTXとして出力する。
【0060】
<7.その他>
なお、本明細書中に開示されている種々の技術的特徴は、上記実施形態のほか、その技術的創作の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。すなわち、上記実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきであり、本発明の技術的範囲は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内に属する全ての変更が含まれると理解されるべきである。
【0061】
<8.付記>
以上のように、本開示の一態様に係る半導体装置(1)は、
シリアルデータである受信データ(RX)を入力するための受信データ入力端子(1A)と、
シリアルデータである送信データ(TX)を出力するための送信データ出力端子(1B)と、
前記受信データにWriteコマンドが含まれている場合に、前記送信データ出力端子から異常状態を示す異常データ(FL)を出力するように構成される異常出力部(11B)と、を備える構成としている(第1の構成)。
【0062】
また、上記第1の構成において、前記異常出力部(11B)は、前記異常データの出力を実行するか否かを示す異常出力フラグ(FAULTOUT)を格納可能な第1レジスタ(11A)を有する構成としてもよい(第2の構成)。
【0063】
また、上記第1または第2の構成において、前記異常出力部(11B)は、前記異常データを出力するときに誤り検出用データ(CR)を出力しないように構成されることとしてもよい(第3の構成)。
【0064】
また、上記第1から第3のいずれかの構成において、前記異常出力部(11B)は、前記異常データを出力するときに誤り検出用データ(CRL,CRH)を出力するように構成されることとしてもよい(第4の構成)。
【0065】
また、上記第3または第4の構成において、前記異常出力部(11B)は、前記異常データを出力するときに前記誤り検出用データを出力するか否かを示す異常モードフラグ(FAULTMODE)を格納可能な第2レジスタ(11A)を有する構成としてもよい(第5の構成)。
【0066】
また、上記第1から第5のいずれかの構成において、前記受信データ(RX)に設定された対象デバイスが自己の半導体装置(1)であった場合に、前記異常出力部(11B)は前記異常データを出力し、前記受信データに設定された対象デバイスが自己以外の半導体装置であった場合に、前記異常出力部は前記異常データを出力しない構成としてもよい(第6の構成)。
【0067】
また、上記第1から第6のいずれかの構成において、前記異常出力部(11B)は、前記受信データ(RX)に設定された対象デバイスが自己の半導体装置(1)であるか否かに関わらず、前記異常データを出力するように構成されることとしてもよい(第7の構成)。
【0068】
また、上記第7の構成において、前記異常出力部(11B)は、前記異常データを出力する出力インタフェースとして、オープンドレイン構成の前記出力インタフェース(111,112)を有する構成としてもよい(第8の構成)。
【0069】
また、上記第1から第8のいずれかの構成において、前記異常出力部(11B)は、前記受信データ(RX)の受信期間に関わらず、前記異常データを常時出力するように構成されることとしてもよい(第9の構成)。
【0070】
また、上記第9の構成において、前記異常データの常時出力状態において、前記異常出力部(11B)が前記異常データを出力しないモードに変更された後、Readコマンドを含んだ前記受信データ(RX)の受信により読み出しデータが前記送信データ(TX)として送信されるように構成されることとしてもよい(第10の構成)。
【0071】
また、本開示の一態様に係る通信システム(101)は、MCU(2)と、差動電圧方式により通信を行うように構成される第1通信装置(3)および第2通信装置(5)と、上記第1の構成とした半導体装置(1)と、を備え、
前記MCUは、前記第1通信装置および前記第2通信装置を介して前記半導体装置との間で通信を行うように構成され、
前記MCUおよび前記第1通信装置は、第1基板(6)に設けられ、
前記第2通信装置および前記半導体装置は、前記第1基板とは異なる第2基板(7)に設けられる構成としてもよい(第11の構成)。
【0072】
また、本開示の一態様に係る通信システム(102)は、MCU(2)と、上記第9の構成とした半導体装置(1)と、を備え、
前記MCUは、前記半導体装置との間で直接的に通信を行うように構成され、
前記MCUおよび前記半導体装置は、同一基板(8)に設けられる構成としてもよい(第12の構成)。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、例えば、車載用の通信システムに利用することが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 半導体装置
1A 端子
1A RX端子
1B TX端子
2A RXD端子
2B TXD端子
3 CANトランシーバ
3A TXD端子
3B RXD端子
3B 端子
4 通信ライン
5 CANトランシーバ
5A RXD端子
5B TXD端子
51 プルアップ抵抗
6,7,8 基板
11 通信部
11A レジスタ
11B 異常出力部
101,102 通信システム
110 バッファ
111 NMOSトランジスタ
112 ダイオード
IV1,IV2 インバータ
NM ローサイドトランジスタ
PM ハイサイドトランジスタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11