(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072378
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】スイッチ装置
(51)【国際特許分類】
H01H 19/56 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01H19/56 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183133
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴志
(72)【発明者】
【氏名】田沼 和泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 恒行
【テーマコード(参考)】
5G219
【Fターム(参考)】
5G219GS21
5G219HT02
5G219MS13
(57)【要約】
【課題】ユーザのスイッチ動作における行き過ぎの誤操作を低減できるスイッチ装置を提供する。
【解決手段】所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、第1操作ストロークから第2操作ストロークに移動する方向に対して、第2操作ストロークの第2節度山を乗り越えるための仕事量が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定してスイッチ装置1を構成する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、
第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、前記第1操作ストロークから前記第2操作ストロークに移動する方向に対して、前記第2操作ストロークの前記第2節度山を乗り越えるための仕事量が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されている、スイッチ装置。
【請求項2】
前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの前記第2節度山における荷重が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の前記初期設定値よりも大きく、かつ、前記第1操作ストロークの前記第1節度山における荷重値よりも小さく設定されることによりなされている、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項3】
前記第2節度山における荷重値は、前記第1節度山における荷重値の0.5から0.7の範囲に設定されている、請求項2に記載のスイッチ装置。
【請求項4】
前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの前記第2節度山の位置が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の前記初期設定値の初期位置から操作ストロークの方向に所定の伸延量だけ引き延ばされていることによりなされている、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項5】
前記伸延量は、前記第2操作ストロークの0.02から0.3の値に設定されている、請求項4に記載のスイッチ装置。
【請求項6】
前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの第2操作ストローク量が、前記初期設定値の操作ストローク量よりも大きく設定されることによりなされている、請求項1に記載のスイッチ装置。
【請求項7】
前記第2操作ストローク量は、前記初期設定値の操作ストローク量の0.02から0.3の値に設定されている、請求項6に記載のスイッチ装置。
【請求項8】
前記第1操作ストロークから前記第2操作ストロークと逆方向の第3の操作ストロークに移動する方向に対して、前記第3の操作ストロークの節度山を乗り越えるための仕事量が前記第3の操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されている、請求項1から7のいずれか1項に記載のスイッチ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、ロータリスイッチに関し、操作時の操作感触によって回転位置が容易に識別可能なものを提供することを目的とスイッチ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のスイッチ装置は、固定体と、この固定体に回転可能に装着された回転体と、この回転体の回転操作によって電気的接離を行うスイッチ接点と、上記固定体または回転体の対向する面のいずれか一方に設けられた凹凸状のカム部と、いずれか他方に装着され上記カム部に弾接する節度部材からなり、上記カム部及び節度部材を複数個設けると共に、複数のカム部の形状を各々異なるものとした構成とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のスイッチ装置は、固定体に凹凸状で各々形状の異なる複数のカム部を設けると共に、回転体にコイルバネに付勢され、これらのカム部に弾接する複数の節度ピンを装着してロータリスイッチを構成することによって、回転体の回転位置毎に操作荷重が大きく異なり、操作感触により回転位置が容易に識別可能なロータリスイッチを得ることができるとされている。しかし、操作荷重の大小(大節度、小節度)でユーザに機能を識別させる場合、操作荷重の重い機能から、操作荷重の軽い機能の1段目に操作意図があるときに、ユーザが操作ノブに力をかけすぎてしまい、操作荷重の軽い機能の1段目で止まらず、2段目まで行き過ぎてしまう現象が懸念される、という問題があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、ユーザのスイッチ動作における行き過ぎの誤操作を低減できるスイッチ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明は、上記目的を達成するために、所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、前記第1操作ストロークから前記第2操作ストロークに移動する方向に対して、前記第2操作ストロークの前記第2節度山を乗り越えるための仕事量が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されている、スイッチ装置を提供する。
[2]前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの前記第2節度山における荷重が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の前記初期設定値よりも大きく、かつ、前記第1操作ストロークの前記第1節度山における荷重値よりも小さく設定されることによりなされてもよい。
[3]また、前記第2節度山における荷重値は、前記第1節度山における荷重値の0.5から0.7の範囲に設定されていてもよい。
[4]また、前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの前記第2節度山の位置が前記第2操作ストロークの荷重-操作量特性の前記初期設定値の初期位置から操作ストロークの方向に所定の伸延量だけ引き延ばされていることによりなされてもよい。
[5]また、前記伸延量は、前記第2操作ストロークの0.02から0.3の値に設定されてもよい。
[6]また、前記大きな仕事量は、前記第2操作ストロークの第2操作ストローク量が、前記初期設定値の操作ストローク量よりも大きく設定されることによりなされてもよい。
[7]また、前記第2操作ストローク量は、前記初期設定値の操作ストローク量の0.02から0.3の値に設定されてもよい。
[8]また、前記第1操作ストロークから前記第2操作ストロークと逆方向の第3の操作ストロークに移動する方向に対して、前記第3の操作ストロークの節度山を乗り越えるための仕事量が前記第3の操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されていてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ユーザのスイッチ動作における行き過ぎの誤操作を低減できるスイッチ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の外観図であり、
図1(b)は、本スイッチ装置の操作ノブを回転操作してモード切替をした場合の節度を示す節度機構のF-A(荷重-角度)特性図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の節度機構を、節度溝と節度ピースで構成する場合を示す図であり、
図2(b)は、
図2(a)の節度山、節度谷を横軸角度A、縦軸荷重Fで図示したF-A(荷重-角度)特性図であり、
図2(c)は、
図2(b)のF-A(荷重-角度)特性を、操作ノブの回転半径を考慮して横軸を距離Xにして展開し、F-X(荷重-操作量)特性に描き替えた荷重-操作量特性図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図3(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図3(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【
図4】
図4(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図4(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図4(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【
図5】
図5(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図5(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図5(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【
図6】
図6(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図6(b)は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図6(c)は、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本発明の実施の形態)
図1(a)は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の外観図であり、
図1(b)は、本スイッチ装置の操作ノブを回転操作してモード切替をした場合の節度を示す節度機構のF-A(荷重-角度)特性図である。
図1(a)に示すように、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置は、一例として、車両に搭載されるワイパ装置である。ワイパ装置としてのスイッチ装置1は、車両のステアリングの周辺に搭載され、操作者であるユーザ(運転手)が手指で操作ノブ10を右方向R、又は、左方向Lに回転させることにより、ワイパの動作モードを切り替えることにより使用される。操作ノブ10の回転は、各モード毎に節度感を有し、これにより、ユーザが操作ノブを回転させて、所望のワイパ動作モードに回転操作することができる。
【0011】
図1(b)に示すように、荷重-操作量特性としてのF-A(荷重-角度)特性図は、横軸を角度A[deg]、縦軸を荷重F[N]とし、1つの操作ストロークは節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までの区間である。ワイパ装置としてのスイッチ装置1は、一例として、大節度、小節度、大節度のモード切替による節度感で操作ストロークが構成されている。
図1(b)に示すように、例えば、節度谷P1でワイパOFF、節度谷P2でINT1動作(AUTO1)、節度谷P3でINT2動作(AUTO2)、節度谷P4でINT3動作(AUTO3)、節度谷P5でINT4動作(AUTO4)、節度谷P6でLO動作、節度谷P7でHI動作とされている。ワイパOFF、LO動作、HI動作において、大節度の節度感を呈示し、INT1動作(AUTO1)~INT4動作(AUTO4)において、小節度の節度感を呈示する。複数のINT動作をそれぞれ小節度の節度感とすることにより、ユーザが細かにモード切替調整をできるようにしている。
【0012】
上記のように、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置1は、節度山が大の大節度と、節度山が小の小節度の少なくとも2種類の節度感を備えて構成されている。
【0013】
なお、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置は、ユーザが操作ノブを回転させて操作するロータリスイッチには限られず、スライドスイッチ装置にも適用が可能である。スライドスイッチ装置の場合は、荷重-操作量特性として、F-X(荷重-距離)特性を使用することができる。
【0014】
図2(a)は、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置の節度機構を、節度溝と節度ピースで構成する場合を示す図であり、
図2(b)は、
図2(a)の節度山、節度谷を横軸角度A、縦軸荷重Fで図示したF-A(荷重-角度)特性図であり、
図2(c)は、
図2(b)のF-A(荷重-角度)特性を横軸を距離Xにして、F-X(荷重-操作量)特性に描き替えた荷重-操作量特性図である。
【0015】
図2(a)に示すように、スイッチ本体側20(固定側)には、節度溝22が形成され、節度溝22にバネ14により荷重Fで付勢されて当接する節度ピース12を備えた操作ノブ10により、スイッチ装置1が構成されている。節度ピース12は、各節度谷の位置で安定し、操作ノブ10を操作してR方向(角度A方向)に移動させることにより、隣接する節度山を越えて、次の節度谷に到達する。なお、
図2(a)では、スイッチ本体側20(固定側)及び操作ノブ10等は、回転方向Rに展開して平面的に図示している。
【0016】
図2(b)に示すように、節度ピース12が節度溝22の節度谷P1等に位置する場合は、節度ピース12に作用する荷重が極小値をとり安定点となる。一方、節度ピース12が節度溝22の節度山Q1等に位置する場合は、節度ピース12に作用する荷重が極大値をとり不安定点となる。したがって、
図2(b)に示すように、節度ピース12がR方向(角度A方向)に、角度位置P1から隣接する節度山Q1を越えて次の節度谷P2までにより1つの操作ストロークが規定される。また、節度ピースが逆方向、すなわち、L方向(角度-A方向)に、角度位置P2から隣接する節度山Q1を越えて次の節度谷P1までにより逆方向の1つの操作ストロークが規定される。このような操作ストロークの連続により、
図2(b)に示すような荷重-操作量特性としてのF-A(荷重-角度)特性を有するスイッチ装置1が構成されている。
【0017】
図2(b)において、操作ノブ10に対して、節度谷P1からR方向(角度A方向)に操作力を付与して、隣接する節度山Q1まで所定の仕事量を与える。この操作力によりなされる仕事量が、節度谷P1から隣接する節度山Q1を乗り越えるまでの仕事量を超えると、節度ピース12は、隣接する節度山Q1を乗り越えて、安定点である次の節度谷P2に到達する。すなわち、角度A1からA2までの区間において操作ノブ10に対して荷重関数f(A)にしたがって仕事量を与えると、次の節度に移行する。
【0018】
図2(b)における荷重-操作量特性としてのF-A(荷重-角度)特性図が、荷重F[N]、角度A[deg]の単位で規定されている場合に、これに対応する
図2(c)に示すF-X(荷重-操作量)特性図は、荷重F[N]、距離X[m]の単位として展開した図である。操作ノブ10の回転半径をr[m]とすると、
図2(b)における角度A[deg]は、
図2(c)の距離X[m]に変換すると、距離X=A[deg]×π/180×r[m]
=πrA/180[m]
となる。簡単のため、πr/180=a
と置くと、距離X=aA[m]と表される。
【0019】
したがって、
図2(c)において、節度谷P1からR方向(距離X方向)に隣接する節度山Q1を乗り越えるための仕事量Wは、荷重関数g(X)、積分区間X1/aからX2/aまでの積分値となる。
以上から、節度山を乗り越えるための仕事量Wは、
上の式において、X/a=sとおくと、f(X/a)=f(s)、
dX=ads、積分区間は、s1からs2となる。
よって、
図2(c)にハッチング領域で示す積分値が節度山を乗り越えるための仕事量Wであり、
となる。
【0020】
上記の右式によれば、
図2(b)における荷重-操作量特性としてのF-A(荷重-角度)特性図において、節度谷P1から隣接する節度山Q1までの区間A1からA2で荷重関数f(A)を積分し、この値に、横軸を角度から距離に変換するために、換算係数a (=πr/180)を掛けることにより、節度山を乗り越えるための仕事量W[Nm]が求まることがわかる。
【0021】
上記の仕事量W[Nm]は、
図2(b)におけるF-A(荷重-角度)特性図の節度谷P1から隣接する節度山Q1までの区間A1からA2までの積分値、
図2(c)におけるF-X(荷重-操作量)特性図の節度谷P1から隣接する節度山Q1までの区間X1/aからX2/aまでの積分値である。この仕事量Wを超える仕事量を操作ノブ10に与えることより、隣接する節度山を乗り越えて、操作ノブ10(節度ピース12)は次の節度谷に到達する。
【0022】
(本発明の第1の実施の形態)
図3(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図3(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図3(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【0023】
上記示したように、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置1は、所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、第1操作ストロークから第2操作ストロークに移動する方向に対して、第2操作ストロークの第2節度山を乗り越えるための仕事量が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されて構成されている。
【0024】
ここで、
図3(a)に示すように、節度機構が、大節度と小節度の組み合わせにより構成され、小節度が連続して2以上設定されているF-A(荷重-角度)特性図において、小節度の節度山、節度谷がすべて同じレベルに設定されているものを荷重-操作量特性の初期設定値とする。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置1は、大きな仕事量は、
図3(b)、(c)に示すように、第2操作ストロークの第2節度山における荷重F’が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値F
0よりも大きく、かつ、第1操作ストロークの第1節度山における荷重値F
1よりも小さく設定されることによりなされている。
【0026】
このような設定により、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合において、
図3(c)に示すように、節度山Q2’が初期設定値の節度山Q2よりも高く設定されているので、第2節度山を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0027】
一例として、
図3(b)、(c)に示す第2節度山におけるQ2’の荷重値F’を、第1節度山における荷重値F
1の0.5から0.7の範囲に設定するのが好ましい。これにより、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合においても、第2節度山を乗り越える行き過ぎの誤操作をより効果的に抑制できる。
【0028】
(本発明の第2の実施の形態)
図4(a)は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図4(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図4(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【0029】
上記示したように、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置1は、所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、第1操作ストロークから第2操作ストロークに移動する方向に対して、第2操作ストロークの第2節度山を乗り越えるための仕事量が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されて構成されている。
【0030】
ここで、
図4(a)に示すように、節度機構が、大節度と小節度の組み合わせにより構成され、小節度が連続して2以上設定されているF-A(荷重-角度)特性図において、小節度の節度山、節度谷がすべて同じレベルに設定されているものを荷重-操作量特性の初期設定値とする。
【0031】
本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置1は、大きな仕事量は、
図4(b)、(c)に示すように、第2操作ストロークのフルストローク量をTとした場合、第2操作ストロークの第2節度山の位置Q2’が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値の初期位置Q2から操作ストロークの方向に所定の伸延量ΔTだけ引き延ばされていることによりなされている。すなわち、第2節度山のピーク荷重が一定期間ΔTだけ維持された荷重-操作量特性とされている。
【0032】
このような設定により、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合において、
図4(c)に示すように、節度山Q2’が初期設定値の節度山Q2よりも角度A方向に所定の伸延量ΔTだけ引き延ばされて設定されているので、第2節度山を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0033】
一例として、
図4(b)、(c)に示す第2節度山におけるQ2からQ2’までの伸延量ΔTを、操作ストロークTの0.02から0.3の範囲に設定するのが好ましい。これにより、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合においても、第2節度山を乗り越える行き過ぎの誤操作をより効果的に抑制できる。
【0034】
(本発明の第3の実施の形態)
図5(a)は、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチ装置のF-A(荷重-角度)特性の初期設定値を示すF-A(荷重-角度)特性図であり、
図5(b)は、第2節度山の部分をF-A(荷重-角度)特性の初期設定値から変更して改善した場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図5(c)は、第2節度山の部分の改善前と改善後を拡大して説明する拡大詳細図である。
【0035】
上記示したように、本発明の実施の形態に係るスイッチ装置1は、所定の荷重-操作量特性を有する節度機構を備え、スイッチ操作の1つの操作ストロークが節度谷から隣接する節度山を越えて次の節度谷までにより規定されたスイッチ装置であって、第1操作ストロークの第1節度山が第2操作ストロークの第2節度山よりも大のとき、第1操作ストロークから第2操作ストロークに移動する方向に対して、第2操作ストロークの第2節度山を乗り越えるための仕事量が第2操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されて構成されている。
【0036】
ここで、
図5(a)に示すように、節度機構が、大節度と小節度の組み合わせにより構成され、小節度が連続して2以上設定されているF-A(荷重-角度)特性図において、小節度の節度山、節度谷がすべて同じレベルに設定されているものを荷重-操作量特性の初期設定値とする。
【0037】
本発明の第3の実施の形態に係るスイッチ装置1は、大きな仕事量は、
図5(b)、(c)に示すように、第2操作ストロークの第2操作ストローク量が第2操作ストロークの初期設定値の操作ストローク量よりも大きく設定されていることによりなされている。
【0038】
このような設定により、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合において、
図5(c)に示すように、第2操作ストロークのフルストローク量をTとした場合、第2操作ストロークのストローク量が第2操作ストロークの初期設定値の操作ストローク量よりもΔTだけ大きく設定されているので、第2節度山を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0039】
一例として、
図5(b)、(c)に示す第2節度山における操作ストロークの増加量ΔTを、操作ストロークTの0.02から0.3の範囲に設定するのが好ましい。これにより、第1操作ストロークの節度谷P1から隣接する節度山Q1を越えて節度谷P2に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第2操作ストロークに至った場合においても、第2節度山を乗り越える行き過ぎの誤操作をより効果的に抑制できる。
【0040】
(本発明の第4の実施の形態)
図6(a)は、本発明の第1の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図6(b)は、本発明の第2の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図であり、
図6(c)は、本発明の第3の実施の形態に係るスイッチ装置の操作ノブが両方向に回転可能な場合のF-A(荷重-角度)特性図である。
【0041】
本発明の第4の実施の形態に係るスイッチ装置は、第1~3の実施の形態で示した第1操作ストロークから第2操作ストロークと逆方向の第3の操作ストロークに移動する方向に対して、第3の操作ストロークの節度山を乗り越えるための仕事量が第3の操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値による仕事量よりも大きな仕事量に設定されている。
【0042】
スイッチ装置1は、操作ノブ10を第1の実施の形態で示した場合と逆方向のL方向(
図1(a)参照)の回転操作をすることができる。
図6(a)~(c)に示すように、F-A(荷重-角度)特性図において、第1操作ストロークは、節度谷P6から隣接する節度山Q5を越えて節度谷P5に至るまでとする。また、第1~3の実施の形態で示した第1操作ストロークから逆方向の第3の操作ストロークを、節度谷P5から隣接する節度山Q4を越えて節度谷P4に至るまでとする。
【0043】
(第1の実施の形態と逆方向(L方向)に操作ノブが回転する場合)
第3の操作ストロークの節度山Q4を乗り越えるための大きな仕事量は、
図6(a)に示すように、第3の操作ストロークの節度山Q4’における荷重F’が第3の操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値F
0よりも大きく、かつ、第1操作ストロークの節度山Q5における荷重値F
1よりも小さく設定されることによりなされている。
【0044】
このような設定により、第1の実施の形態と同様に、第1操作ストロークの節度谷P6から隣接する節度山Q5を越えて節度谷P5に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第3の操作ストロークに至った場合において、
図6(a)に示すように、節度山Q4’が初期設定値の節度山Q4よりも高く設定されているので、節度山Q4’を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0045】
(第2の実施の形態と逆方向(L方向)に操作ノブが回転する場合)
第3の操作ストロークの節度山Q4を乗り越えるための大きな仕事量は、
図6(b)に示すように、第3の操作ストロークの節度山Q4’の位置が第3の操作ストロークの荷重-操作量特性の初期設定値の初期位置Q4から操作ストロークの方向(L方向)に所定の伸延量ΔTだけ引き延ばされていることによりなされている。すなわち、節度山Q4’のピーク荷重が一定期間ΔTだけ維持された荷重-操作量特性とされている。
【0046】
このような設定により、第1操作ストロークの節度谷P6から隣接する節度山Q5を越えて節度谷P5に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第3の操作ストロークに至った場合において、
図6(b)に示すように、節度山Q4’が初期設定値の節度山Q4よりも角度-A方向に所定の伸延量ΔTだけ引き延ばされて設定されているので、節度山Q4’を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0047】
(第3の実施の形態と逆方向(L方向)に操作ノブが回転する場合)
第3の操作ストロークの節度山Q4を乗り越えるための大きな仕事量は、
図6(c)に示すように、第3の操作ストロークのストローク量が第1操作ストロークの初期設定値の操作ストローク量よりも大きく設定されていることによりなされている。
【0048】
このような設定により、第1操作ストロークの節度谷P6から隣接する節度山Q5を越えて節度谷P5に到達した後に、行き過ぎの誤操作により、第3の操作ストロークに至った場合において、
図6(c)に示すように、第3の操作ストロークのストローク量が第1操作ストロークの初期設定値の操作ストローク量よりもΔTだけ大きく設定されているので、節度山Q4を乗り越えることを抑制して、行き過ぎの誤操作を低減できることになる。
【0049】
(本発明の実施の形態の効果)
上記のような構成により、次のような効果を有する。すなわち、操作荷重の大小(大節度、小節度)でユーザに機能を識別させる場合、操作荷重の重い機能Aから、荷重の軽い機能Bの1段目に操作意図があるときに、ユーザが操作ノブに力をかけすぎてしまい、機能Bの1段目で止まらず、2段目に行き過ぎてしまう現象が懸念される。しかし、本発明の実施の形態に示したように、荷重-操作量特性としてのF-A波形を工夫することでユーザの誤操作を低減させることが可能になる。これにより、ユーザのスイッチ動作における行き過ぎの誤操作を低減できるスイッチ装置を提供することができる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、この実施の形態は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更等を行うことができる。
【0051】
本発明の実施の形態に係るスイッチ装置1は、上記示したロータリスイッチの他に、スライドスイッチ装置にも適用が可能である。また、節度溝とバネにより荷重Fを付勢して当接する節度ピースを備えた機械式の節度機構に限られず、例えば、電磁方式により節度力を制御することにより荷重Fを付勢する節度機構にも適用可能である。
【0052】
なお、節度溝とバネにより荷重Fを付勢して当接する節度ピースを備えた機械式の節度機構に限れば、荷重-操作量特性図における節度山の大小でのみ荷重-操作量特性を規定してもよい。
【0053】
また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、実施の形態は、発明の範囲及び要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0054】
1…スイッチ装置
10…操作ノブ
12…節度ピース
14…バネ
20…スイッチ本体側
22…節度溝