(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007238
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】炊飯器、および炊飯システム
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
A47J27/00 109A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108597
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】二木 悠介
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA02
4B055BA27
4B055CD73
4B055GB29
4B055GC13
4B055GD04
(57)【要約】
【課題】炊飯動作中に消費電力を低減することが必要となった場合でも、実行している炊飯動作を完遂させてご飯を炊き上げることができる炊飯器を得る。
【解決手段】炊飯器は、内鍋と、前記内鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の出力を制御して炊飯工程を実行する制御手段と、接続されている電気配線の消費電力量情報を受信する受信部とを備え、前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように前記加熱手段の出力制御を行って前記炊飯工程を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内鍋と、
前記内鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段の出力を制御して炊飯工程を実行する制御手段と、
接続されている電気配線の消費電力量情報を受信する受信部とを備え、
前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように前記加熱手段の出力制御を行って前記炊飯工程を実行することを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
前記制御部は、前記加熱手段の出力を低減させたことにより減少する印加熱量が確保されるように当該工程における加熱時間を延長する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項3】
前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて自身の動作状況を判定する機能をさらに有する、請求項1に記載の炊飯器。
【請求項4】
接続されている電気配線の消費電力量を把握して消費電力量情報として送信可能な消費電力検出機構と、
前記消費電力量情報を受信可能な炊飯器とを備え、
前記炊飯器の制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように加熱手段の出力制御を行って炊飯工程を実行することを特徴とする、炊飯システム。
【請求項5】
前記炊飯器が、前記電気配線に接続された他の機器の動作を制御する制御信号を生成し前記電力検出機構に送信する機能をさらに備え、
前記消費電力検出機構は、前記制御信号に基づいて前記電気配線に接続されている前記他の機器の動作を制御する、請求項4に記載の炊飯器システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は炊飯器、および炊飯システムに関し、特に、自身が接続されている電気配線における消費電力量が規定の値を超えないように制御しつつ炊飯を行うことができる炊飯器と、この炊飯器と接続された電気配線の消費電力量を把握する消費電力検出機構とを備えて電気配線の消費電力量が所定の値を超えないように制御できる炊飯システムとに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネット環境の拡充や通信技術の進展によって、IOT(Internet of Things)が広がりを見せている。特に、家庭内の生活家電製品がインターネットに接続されることで、それぞれの機器の動作の制御や状態の確認などが、スマートフォンなどの携帯型情報端末を通じて、外出先からでも容易に行うことができるようになっている。
【0003】
家電製品に関するIoTの別の例として、それぞれの家電製品に電力を供給するコンセントをインターネットに接続することで、接続された家電製品それぞれが通信機能を有していない場合でも、電源のON/OFFを行うことによって複数の家電製品を制御するスマートコンセントが実用化されている。
【0004】
このようなスマートコンセントとして、表示部や制御部、通信部を備え、既設のスイッチやコンセントと取り替え可能なスマート器具が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の技術は、建物に設置された既存のスイッチやコンセントとスマート機器とを取り替え、スマート機器の表示部に設けられたタッチスイッチを操作することによって、スマートコンセントが供給する電気配線に接続された通信制御機能を有さない家電製品の遠隔操作や、各家電製品の動作履歴の確認、全体としての省エネ動作制御などを行うことができる。
【0007】
一方、コンプレッサーを使用する冷蔵庫や、高周波の磁力線を発生するためのマグネトロンを動作させる電子レンジ、電気ヒータにより被調理物を加熱する炊飯器、オーブン、電気ポットなど、キッチンで使用されるいわゆる調理家電製品は基本的に消費電力が高いものが多い。これらの調理家電製品が同時に使用されると、電気配線に一度に大きな電流が流れて定格電力数を超えてしまう場合が生じうる。しかし、上記従来のスマートコンセントによる家電製品の制御は電源のON/OFF操作によるものに留まるため、電気配線の定格値を超えそうな場合であってもその原因となる電気機器の動作を止めるという対応しか取れない。このようなスマートコンセントによる電源のON/OFF制御が行われた場合、所定の調理プログラムによって制御され、所定の時間所定の出力で動作することが前提となっている調理家電製品では、所望する調理が完遂できないという不具合が生じる。特に、比較的調理時間が長く、炊飯量や各種のメニューに対応した詳細な制御を行う炊飯プログラムが設定されていて、プログラム通りの炊飯工程が実行されることが必要な炊飯器の場合は、炊飯動作中にスマートコンセントにより電源が切られてしまうと炊飯動作が途中で停止してしまうなど大きな支障が生じる。
【0008】
本願は、このような従来のスマートコンセントによる電気機器の動作制御における課題を解決するものであり、炊飯動作中に消費電力を低減することが必要となった場合でも、実行している炊飯動作を完遂させてご飯を炊き上げることができる炊飯器を得ること、また、この炊飯器とともに電気配線に接続されている他の機器の動作も併せて制御することができる炊飯器システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願で開示する炊飯器は、内鍋と、前記内鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の出力を制御して炊飯工程を実行する制御手段と、接続されている電気配線の消費電力量情報を受信する受信部とを備え、前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように前記加熱手段の出力制御を行って前記炊飯工程を実行することを特徴とする。
【0010】
また、本願で開示する炊飯システムは、接続されている電気配線の消費電力量を把握して消費電力量情報として送信可能な消費電力検出機構と、前記消費電力量情報を受信可能な炊飯器とを備え、前記炊飯器の制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように加熱手段の出力制御を行って炊飯工程を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本願で開示する炊飯器は、接続されている電気配線における消費電力量情報に基づいて、制御部が加熱手段の出力制御を行って前記炊飯工程を実行する。このため、電気配線における消費電力を最大消費電力量以下に保ちながら、炊飯工程を実行することができる。
【0012】
また、本願で開示する炊飯システムは、接続された電気配線における消費電力量を消費電力量情報として炊飯器に送信可能な消費電力検出機構と、消費電力量情報に基づいて最大消費電力量を超えないように加熱手段を制御する炊飯器とを備えることで、炊飯器以外の機器を含めた電気配線全体における消費電力量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態にかかる炊飯システムの全体構成を示すイメージ図である。
【
図2】実施形態にかかる炊飯システムを構成する各部材の構成を示すブロック図である。
【
図3】実施形態にかかる炊飯システムにおいて全体の消費電力量の変化を示すイメージ図である。
【
図4】実施形態にかかる炊飯器における最大消費電力量を制御した炊飯プログラムでの消費電力量の変化を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願で開示する炊飯器は、内鍋と、前記内鍋内の被炊飯物を加熱する加熱手段と、前記加熱手段の出力を制御して炊飯工程を実行する制御手段と、接続されている電気配線の消費電力量情報を受信する受信部とを備え、前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように前記加熱手段の出力制御を行って前記炊飯工程を実行する。
【0015】
本願で開示する炊飯器は、上記構成を備えることで、接続されている電気配線で使用可能な消費電力量の範囲で炊飯工程を実行することができる。このため、電気配線が最大容量値を超えることを回避しつつ、ユーザに指示された炊飯を完了することができる。
【0016】
上記本願で開示する炊飯器において、前記制御部は、前記加熱手段の出力を低減させたことにより減少する印加熱量が確保されるように当該工程における加熱時間を延長することが好ましい。このようにすることで、電気配線における消費電力量を制限値以下に維持しながら、被炊飯物に必要な加熱量を印加して炊飯工程を実行することができる。
【0017】
また、前記制御部が、前記消費電力量情報に基づいて自身の動作状況を判定する機能をさらに有することが好ましい。このようにすることで、接続されている電気配線の消費電力量に反映される自身の動作電力量から、加熱手段の動作状況を客観的に把握することができる。
【0018】
本願で開示する炊飯システムは、接続されている電気配線の消費電力量を把握して消費電力量情報として送信可能な消費電力検出機構と、前記消費電力量情報を受信可能な炊飯器とを備え、前記炊飯器の制御部が、前記消費電力量情報に基づいて前記電気配線における最大消費電力量を超えないように加熱手段の出力制御を行って炊飯工程を実行する。
【0019】
このようにすることで、炊飯器の動作電力量を制御することによって他の機器を含めた電気配線全体の消費電力量が最大値を超えないように制御することができる。
【0020】
また、本願で開示する炊飯システムにおいて、前記炊飯器が、前記電気配線に接続された他の機器の動作を制御する制御信号を生成し前記電力検出機構に送信する機能をさらに備え、前記消費電力検出機構は、前記制御信号に基づいて前記電気配線に接続されている前記他の機器の動作を制御することが好ましい。このようにすることで、自身が実行する炊飯プログラムに対する消費電力量の制限を最小限に抑えつつ、電気配線に接続された他の機器を含めた消費電力量の制御を行うことができる。
【0021】
以下、本願で開示する炊飯器、および炊飯システムの実施形態について、図面を用いて説明する。
【0022】
(実施の形態)
図1は、本実施形態で説明する炊飯システムの全体構成を示すイメージ図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態にかかる炊飯システムでは、所定の炊飯プログラムを実行してご飯を炊く炊飯器10と、炊飯器10の使用する電力を供給するスマートコンセント20とを含む。また、炊飯器10と同様にスマートコンセント20の電気配線30に接続されてスマートコンセント20からの電力を受けてそれぞれの機能を果たす機器A(40:
図1では電子レンジを図示)、機器B(50:
図1では冷蔵庫を図示)が存在する。
【0024】
なお、
図1では、スマートコンセント20からの電力を受けて動作する炊飯器10以外の他の機器として、機器Aと機器Bとの2つの機器を示したが、スマートコンセント20の電気配線30に接続されて電力の供給を受ける機器の数についての制限はない。スマートコンセント20から供給可能な電力の範囲内で、3つ以上の機器が接続される場合がある。また、動作内容によって動作時の消費電力が大きくなる機器の場合は、炊飯器10以外に1つの機器のみがスマートコンセント20の電気配線30に接続されている場合も考えられる。
【0025】
図2は、本実施形態にかかる炊飯システムに含まれるそれぞれの機器の構成を説明するためのブロック図である。
【0026】
なお、
図2では、炊飯システムに含まれる各機器の構成を各部の動作や機能の観点で切り分けて一つのブロックとして示したものであり、図示されたブロックがそれぞれの機器の実際の部材を示したものではない。このため、
図2に複数のブロックとして示される各部が一つの回路基板上に配置されている場合があり、また、一つの電子回路素子が複数のブロックの機能を果たす場合がある。また、反対に
図2で一つのブロックとして示された機能が複数の部品を組みあわせて実現される場合がある。
【0027】
炊飯器10は、米と水、さらに、具入り炊飯モードでは野菜や豆類、肉類などの各種の具である被炊飯物を入れる内鍋11と、この内鍋11を内鍋収容部に収容することができる炊飯器本体と、炊飯器本体の内鍋収容部の上方を開閉可能に覆う蓋体とを有し、蓋体には、ユーザが炊飯器に各種設定を与えるための入力手段としての各種の操作ボタンや操作ボタンによる操作状況や炊飯器の動作状態等を表示するための表示部が配置されている。
【0028】
炊飯器10の制御手段である制御部13は、ユーザの設定に応じて記憶部14に記憶されている炊飯プログラムに沿って、内鍋11の周囲に配置された温度センサが検知した温度データに基づいてIHヒータなどの加熱手段12に供給する電力量を調整することで内鍋11の温度を制御し、ユーザが所望するご飯を炊き上げる。また、ユーザからの設定に応じて、または、自動的に、炊きあがったご飯が冷めないように保温モードを実行する場合がある。
【0029】
なお、本実施形態の炊飯器10は、炊飯器本体や蓋体などの外観や炊飯機能に関しては従来公知のものをそのまま採用できるため、具体的に各部材を図示しての説明は省略する。また、炊飯器10全体の動作を制御する制御部13は既知のマイコンや電子論理回路により、記憶部14は既知の各種メモリ回路により、いずれも構成することができる。温度センサや必要に応じて配置される内鍋の重量を検出する重量センサなども、既知の部材を用いることができる。
【0030】
炊飯器10の電源部15は、スマートコンセント20に接続された電気配線30を介して商用の100V電源から電力の供給を受け、上述した操作部や表示部、制御部13、記憶部14、加熱手段12へと必要な電力を供給する。電源部15は、特に、炊飯プログラムの実行状況で変化する加熱手段12への電力の供給状況をオンタイムで把握することができ、電源部15で把握された炊飯器10の消費電力量は、制御部11で常に把握されるようになっている。
【0031】
本実施形態で示す炊飯器10は、外部の機器から送信されたデータを受信する受信部16と、外部の機器にデータを送信する送信部17を有している。受信部16と送信部17でのデータの送受信は、Wi-Fiやブルートゥース(Bluetooth:登録商標)などの既知の短距離通信手段を利用して行われる。
【0032】
なお、スマートコンセント20から送信された消費電力量情報の受信部16での受信や、他の機器の制御を行う制御信号の送信部17からの送信といった、受信部16と送信部17での具体的なデータの送受信については後に詳述する。
【0033】
消費電力検出機構であるスマートコンセント20は、炊飯器10とその他の各種機器(
図2では、機器Aと機器Bとを例示)に対して電気配線30を介して商用電源を供給するとともに、制御部21、電力検知部22、受信部23、送信部24を備えている。
【0034】
スマートコンセント20の電力検知部22は、電気配線30に接続されている機器(10、40、50)が使用する全体の消費電力量を検知する。
【0035】
制御部21は、電力検知部22で検知した消費電力量から消費電力量情報を生成する。
【0036】
生成された消費電力量情報は送信部24から炊飯器10の受信部16へと送信される。
【0037】
このようにして、本実施形態の炊飯器10は、自身が接続されている電気配線30において使用されている消費電力量を、消費電力検知機構としてのスマートコンセント20の電力検知部22で検知した値としてオンタイムで把握することができる。
【0038】
スマートコンセント20の電気配線30に接続されている機器A(40)は、電気配線30からの電力を電源部42が受け取り、制御部41によって機器Aの所定の機能、例えば機器Aが電子レンジの場合には、調理内容や調理対象物の量に応じた出力での調理を実行する。
【0039】
スマートコンセント20の電気配線30に接続されている機器B(50)は、電気配線30からの電力を電源部52が受け取り、制御部51によって機器Bの所定の機能、例えば機器Bが冷蔵庫の場合には、ユーザによる扉の開け閉めや庫内収容物の量に応じた温度調整を行いつつ、予め定められた、または、ユーザが設定した庫内温度を維持するように動作する。
【0040】
ここで、スマートコンセント20の電気配線30に接続された各機器の動作により変動する消費電力量について説明する。
【0041】
図3は、本実施形態にかかる炊飯システムにおける消費電力量の変化を説明するイメージ図である。なお、
図3における横軸は、それぞれの機器の動作に応じて区分けしたタイミングを示し、例えば、時間1の期間が1時間であることを示すのではない。また、各ステップの長さ、すなわち各時間における所要時間は一定では無い。
【0042】
図1に例示したように、電気配線30に炊飯器10、第1の機器である電子レンジ40、第2の機器である冷蔵庫50が接続されていて、それぞれが所定の電力量を使用しながら動作している場合を考える。なお、
図3において符号61で示す2000Wのラインが、実施形態として示すスマートコンセント20に接続されている電気配線30での定格容量を表していることとする。この定格容量、一例としての2000Wを超えた電力が電気配線30で使用されると、スマートコンセント20が接続されているブレーカーが切断されてそれ以上の電力供給が停止し、一系統における過電流によって他の電力系統を含めた全体の電力系統で不具合が生じることが防止される。
【0043】
各機器の動作イメージとして、まず冷蔵庫50は、初めて動作させる場合などを除いた通常の動作状態では、消費電力の大きな変動はなく常にほぼ一定の電力量を消費する。
図3では、冷蔵庫50の消費電力を符号62として示し、一例としてその消費電力量は、いずれの時間ステップにおいても常に200Wとしている。
【0044】
電子レンジ40は、動作時には比較的大きな消費電力を必要とするが、動作時間は他の機器と比較すると短い。
図3では、電子レンジ40の消費電力を符号63として表していて、時間2として示す期間と時間4として示す期間に2回動作する状態を示し、一例としてその消費電力量は1300Wとしている。
【0045】
炊飯器10は、炊飯動作が開始すると炊飯プログラムにしたがって、吸水工程、昇温工程、炊き上げ工程、追い炊き工程、むらし工程、さらに保温工程などと称される各工程を経て動作する。
図3では、炊飯器10の消費電力を符号64で表し、時間1と時間2の区間では吸水工程と予熱工程の一例としての100W、時間3から時間5の区間にわたっては昇温、炊き上げ、追い炊きの各工程において炊飯器としての最大消費電力である一例としての1000W、その後のむらし工程は時間6の区間で一例として100W、さらに保温工程は時間7と時間8の区間で一例としての50Wの消費電力で動作することを示している。
【0046】
図3に示した消費電力量の変化から、消費電力量が大きな電子レンジ40(
図3での符号64)と炊飯器10(
図3での符号64)とが同時に動作した場合でも、炊飯器10が消費電力が少ない吸水工程などである時間2の区間では全体の消費電力量が1600Wと定格消費電力量の2000Wに対して余裕がある。一方、電子レンジ40が動作し、かつ、炊飯器10が大きな消費電力を必要とする昇温から炊き上げ工程という高温炊飯工程期間である時間4においては、各機器の消費電力がそのまま加算された場合には、定格の2000Wを超える2500Wとなってしまう。この場合、上述の様にスマートコンセント20に電力を供給する電気系統のブレーカーが切断されてしまい、全ての電気機器の動作が停止してしまう事態となる。
【0047】
そこで、本実施形態に示す炊飯器、および、炊飯システムでは、電子レンジ40の動作時と、炊飯器10が大電力量を必要する炊飯工程とのタイミングが重なった場合には、炊飯器10の制御部13が加熱手段12への電力の投入量を一例として400Wに低減することで、スマートコンセント20に接続されている電気配線30から動作電源を得る各機器(炊飯器10、電子レンジ40、冷蔵庫50)の合計の消費電力量を定格の2000W以下の、一例として1900Wとする。
【0048】
次に、
図3で示したように、他の機器が大きな電力を使用しているために消費電力を低減して動作する炊飯器の炊飯工程での制御内容について説明する。
【0049】
図4は、最大消費電力量が制限された状態で実行される炊飯プログラムを説明するために、炊飯プログラムでの消費電力量の変化を示すイメージ図である。
図4(a)が、消費電力の制御が行われない通常の炊飯プログラムにしたがって炊飯した場合の消費電力量の変化を、
図4(b)が、最大消費電力を抑えるための制御が行われた場合の消費電力量の変化を、それぞれ示している。
【0050】
なお、
図4(a)、
図4(b)において、投入される電力量の大小や投入タイミングである経過時間は、あくまでもイメージであって実際の炊飯プログラムでの動作状況を厳密に表すものではない。
【0051】
図4(a)に示す、他の機器での消費電力量を考慮せずに所定の炊飯プログラムを実行する場合の炊飯器10の消費電力は、動作開始(0分)から一例として12分間の最初の期間では、吸水や予熱などのために加熱手段12に小さな電力が印加されているのに対し、昇温、炊き上げ、追い炊きの各工程となる一例として36分までの期間では、加熱手段12に符号71として示す最大限の電力が印加されて、内鍋11内部のお米と水とを一気に加熱する。その後の追い炊き工程や、保温工程となる36分以降では、既に内鍋内部には余分な水分は残っていないため加熱手段12には再び比較的小さな電力量が印加される。
【0052】
ここで、
図3に示した時間4のように、他の機器が大きな消費電力量を使用する時間と
図4(a)における12分以降の符号71で示す大きな消費電力が印加される時間とが重なった場合には、炊飯器10の加熱手段12に印加される電力が低減される。したがって、炊飯プログラムにおける加熱手段への電力の印加量の推移は、
図4(b)に符号72として示す部分のように電力量が符号71の最大電力量よりも低下する一定の期間、
図4では20分から28分の期間、が生じる。そこで、本実施形態にかかる炊飯器10では、加熱手段への印加電力が減少した分に相当する被炊飯物への印加熱量に相当する熱量を印加する期間として、符号73で示す部分、すなわち、再び最大の電力量71が使用できるようになった後にその印加期間を36分から40分の間延長する。このようにすることで、炊飯工程において途中の加熱量が少なくなった期間が生じた場合でも、正常な炊飯工程で炊飯された状態とほぼ同じレベルでの炊飯を行うことができる。
【0053】
発明者の検討結果では、符号72で示される削減される電力量と符号73で示される追加される電力量とにおいて、「印加される電力量×印加時間」の値がほぼ同じとなるように調整することが好ましいことが確認できた。
【0054】
また、加熱手段12に大きな電力が投入されて内鍋を加熱する炊飯工程として、昇温工程、炊き上げ工程、追い炊き工程などがあるが、可能な範囲において、それぞれの工程において内鍋に対して印加される熱量が当初の値に近づくように、それぞれの工程における印加電力量と印加時間との積の値が一定となるような制御を行うことが好ましい。
【0055】
この場合において、加熱手段12に投入される電力量として当初の炊飯プログラムでの電力量よりも大きな電力量を印加することができる場合には、低減された電力量を回復する補償期間における投入電力量を炊飯器としての上限値近くにまで高くすることによって、より短時間で低減された投入熱量を回復することができる場合がある。
【0056】
なお、上記の昇温工程、炊き上げ工程、追い炊き工程それぞれにおいて、次の工程への移行条件が検出された内鍋の温度に基づいて定まっている場合には、加熱手段に投入された電力量が低減された場合であっても、内鍋が所定の温度になるまで当該工程での加熱を行うように制御することで、当初の炊飯プログラムでの炊飯により近い状態での炊き上がりを実現することができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態にかかる炊飯システムでは、スマートコンセント20が接続された電気配線30で使用されている消費電力量を検知して消費電力量情報を作成し、この消費電力量情報を炊飯器10に送信する。消費電力量情報を受信した炊飯器10は、制御部13が加熱手段12に供給される電力量を制御して、電気配線30において使用される消費電力量が最大定格値を超えないようにすることで、電気配線30への電力供給が停止させる事態を回避して、電気配線30に接続された各機器(10、40、50)が所定の動作を行うことができる。また、炊飯器10では、制御手段13が加熱手段12に供給される電力量の低減分を炊飯工程中に補うことによって、当初予定されていた炊飯プログラムによって炊飯されたご飯とほぼ同じ状態のご飯を炊くことができる。
【0058】
なお、上記実施形態では、電気配線30で使用されている全体の消費電力量をスマートコンセント20の電力検知部22が検知して消費電力量情報を生成する構成を説明したが、スマートコンセントに替えて電気機器の電源プラグが接続することができる接続口を複数個有するスマートタップを用いることができる。スマートタップを用いた場合には、スマートタップの電力検出部によって、炊飯器10と、炊飯器10とともに接続されている他の機器との全体の消費電力量を検出して消費電力量情報を炊飯器に送信する構成とすることができる。この場合は、スマートタップ内の電源ラインが電気配線30に相当し、炊飯器10の受信部12に対して消費電力量情報を送信する送信部をスマートタップが備えることになる。
【0059】
また、スマートタップが本来的に備える、全体の消費電力量が過大となる場合にはいくつかの接続口への電力供給を停止するという消費電力量を一定の値以下に抑える対策を、本願で開示する炊飯器10での電力制御による最大消費電力量を超過しないようにする動作制御と併用することができる。なお、このように特定の電気機器の動作を停止させる電力制御を行う場合には、スマートタップに接続されている各種の電気機器の内、その動作を一時的に停止させた場合でも大きな問題とならない機器、例えば、電気ポットなどへの電力の供給を優先して停止することが好ましい。
【0060】
さらに、炊飯器10の記憶部14に、スマートタップに接続されている他の電気機器の消費電力量とその機器が接続されている接続口の情報を記憶させておくことで、スマートタップから送信される消費電力量情報に基づいて、炊飯器10の制御部13が動作を停止させる電気機器と動作停止のタイミングとを判断し、炊飯器10の送信部17からスマートタップに対して所定の接続口への電力を停止するという制御信号を送信するような設定とすることができる。この場合、特に、炊飯器に設定されている炊飯プログラムにおける消費電力量の変化を事前に把握することができ、炊飯プログラムへの影響を最小限に抑えた他の機器の電力制御を行うことができる。このため、スマートタップ単独での電源のON/OFFによる電力制御よりも、他の機器の動作を含めたより効果的な消費電力低減対策を実施することができる。
【0061】
また、炊飯器10と同じ電気配線30に接続される他の電気機器が、外部との情報のやりとりができる受信部と送信部とを備えたスマート家電機器である場合には、炊飯器10の制御部13と当該他のスマート家電機器の制御手段との間で必要な情報を共有することで、他の電気機器での消費電力量制御を勘案したより高度な全体消費電力の制御を行うことができる可能性がある。
【0062】
なお、消費電力量情報を生成する部材としては、上述のスマートコンセントやスマートタップには限られず、炊飯器10が接続されている電気配線30の消費電力量を制御する他の機器を別途配置することができる。また、炊飯器10が接続されている電気配線30の消費電力量が一定の制限値を超えた場合に電力の供給を遮断するブレーカーとして、消費電力量を把握するとともに消費電力量情報を送信できるスマートブレーカーを採用することもできる。
【0063】
上記説明したように、炊飯器10の制御部13は、自身が制御する加熱手段12への電力投入量の変化と、その結果として表れる電気配線30で使用される機器の消費電力量の変化とをともに把握することができる。このため、例えば、加熱手段12への電力投入量を急速に増大させたにもかかわらず、電気配線30における消費電力量の変化が小さい場合には、加熱手段12が何らかの異常を来している可能性がある。このように、本実施形態にかかる炊飯器10の制御部13は、消費電力量情報に基づいて炊飯器10自身の動作が正常であるか否かを判定する機能を有することができる。
【0064】
さらに、炊飯器が接続されているスマートスイッチやスマートタップの全体電力量を制御するブレーカーに、スマートスイッチやスマートタップ以外のコンセントに接続されている機器の消費電力が加算される場合には、予め炊飯器10の記憶部14に当該他の機器の消費電力量を記憶させておいて、消費電力量情報で把握された消費電力に当該他の機器で使用される消費電力量を加算して、炊飯器10での消費電力の制御を行うことが好ましい。
【0065】
なお、炊飯器10による消費電力量の制御に当たっては、消費電力量の管理対象である電気配線30における最大定格値そのものの値ではなく、最大定格値の5~8%程度ほど小さい値での制御を行うことが好ましい。このように、最大定格値に対して一定のマージンを持って消費電力量の上限制御を行うことで、電気配線30に接続された電気機器の実際の消費電力量に基づいて行われるために後追い的になる炊飯器の動作制御によっても、消費電力量が規定の値を超えてブレーカーが切断されてしまう事態を回避することができる。また、各機器での消費電力量が急変したときにいわゆるオーバーシュートが生じた場合でも、電気配線30の消費電力量が定格の最大値を超えることを回避することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本願で開示する炊飯器、また、この炊飯器を含む炊飯システムは、炊飯プログラムを実行して炊き上げられるご飯の品質を維持したまま、同じ電気配線に接続されている電気器の全体消費電力量の制御を行うことができる点で有用である。
【符号の説明】
【0067】
10 炊飯器
11 内鍋
12 加熱手段
13 制御部(制御手段)
16 受信部
20 スマートコンセント(消費電力量検出機構)
30 電気配線
40 電気機器(電子レンジ)
50 電気機器(冷蔵庫)