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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072380
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】緊急排気システム
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/06 20060101AFI20240521BHJP
   F24F 7/007 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F24F7/06 D
F24F7/007 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183137
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100154726
【弁理士】
【氏名又は名称】宮地 正浩
(72)【発明者】
【氏名】尾形 直志
(72)【発明者】
【氏名】石那田 将
(72)【発明者】
【氏名】石垣 泰
【テーマコード(参考)】
3L056
3L058
【Fターム(参考)】
3L056BD01
3L058BE02
3L058BG01
3L058BG04
(57)【要約】
【課題】構成の複雑化や手間のかかる作業の増大を招くことなく、外観の美観性を向上する。
【解決手段】検知対象空間2におけるガスの漏洩を検知するガス漏洩検知部3と、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する排気作動を行う排気ファン4と、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給する圧縮空気供給作動を行う圧縮空気供給部5と、排気ファン4及び圧縮空気供給部5の作動状態を制御する制御部7とが備えられ、制御部7は、ガス漏洩検知部3にてガスの漏洩を検知した場合に、圧縮空気供給部5を圧縮空気供給作動させ且つ排気ファン4を排気作動させて、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する緊急排気処理を実行可能に構成されている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知対象空間におけるガスの漏洩を検知するガス漏洩検知部と、
前記検知対象空間の空気を外部に排気する排気作動を行う排気ファンと、
前記検知対象空間に圧縮空気を供給する圧縮空気供給作動を行う圧縮空気供給部と、
前記排気ファン及び前記圧縮空気供給部の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、前記ガス漏洩検知部にてガスの漏洩を検知した場合に、前記圧縮空気供給部を圧縮空気供給作動させ且つ前記排気ファンを排気作動させて、前記検知対象空間に圧縮空気を供給しながら、前記検知対象空間の空気を外部に排気する緊急排気処理を実行可能に構成されている緊急排気システム。
【請求項2】
前記圧縮空気供給部は、前記検知対象空間に供給する圧縮空気の供給量を調整自在な圧縮空気供給量調整部が備えられ、
前記制御部は、前記緊急排気処理において、前記検知対象空間内の圧力が陰圧の設定圧力になるように、前記圧縮空気供給量調整部による圧縮空気の供給量を調整している請求項1に記載の緊急排気システム。
【請求項3】
前記圧縮空気供給部は、圧縮空気を貯留可能な圧縮空気貯留部が備えられ、前記圧縮空気供給作動において、その圧縮空気貯留部に貯留されている圧縮空気を前記検知対象空間に供給している請求項1又は2に記載の緊急排気システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知対象空間の空気をいち早く排気する緊急排気を行う緊急排気システムに関する。
【背景技術】
【0002】
緊急排気システムは、例えば、研究所、製薬所や工場等に適用されており、検知対象空間にてガスの漏洩が発生すると、その検知対象空間の空気をいち早く排気する緊急排気を行うことで、ガスの漏洩に伴う問題の発生を防止している。
【0003】
このような緊急排気システムとして、検知対象空間におけるガスの漏洩を検知するガス漏洩検知部と、検知対象空間の空気を外部に排気する排気作動を行う排気ファンと、排気ファンの作動状態を制御する制御部とが備えられた緊急排気システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の緊急排気システムでは、ガス漏洩検知部にてガスの漏洩を検知すると、制御部が、排気ファンに対して圧縮空気を供給することで、排気ファンを排気作動させて、検知対象空間の緊急排気を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭55-5014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の緊急排気システムでは、排気ファンの排気作動により、緊急排気用の給気口から外気を検知対象空間内に給気しながら、検知対象空間の空気を外部に排気することで、検知対象空間を緊急排気している。そのために、緊急排気用の給気口を設けることが必須となっているが、検知対象空間を緊急排気するのは、ガスの漏洩が生じた場合だけであり、ほとんど活用機会のない緊急排気用の給気口を設けなければならない。
【0007】
しかも、緊急排気用の給気口を設けるに当たり、単に、緊急排気用の給気口を設けるだけでなく、虫対策や漏水対策のために、フィルターや逆流防止用のダンパー等の部品を緊急排気用の給気口に設けなければならず、それらの部品のメンテナンス作業を定期的に行うことが必要となる。よって、部品点数の増大による構成の複雑化や、メンテナンス作業等の手間のかかる作業の増大を招くものとなっている。
【0008】
また、緊急排気用の給気口を活用するのは、検知対象空間を緊急排気するときであるが、緊急排気をいち早く行うために、排気流量として大きな流量を確保しなければならず、大きな緊急排気用の給気口が求められている。そのために、大きな緊急排気用の給気口を設けなければならず、外観の美観性が低下するものとなっている。
【0009】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、構成の複雑化や手間のかかる作業の増大を招くことなく、外観の美観性を向上することができる緊急排気システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1特徴構成は、検知対象空間におけるガスの漏洩を検知するガス漏洩検知部と、
前記検知対象空間の空気を外部に排気する排気作動を行う排気ファンと、
前記検知対象空間に圧縮空気を供給する圧縮空気供給作動を行う圧縮空気供給部と、
前記排気ファン及び前記圧縮空気供給部の作動状態を制御する制御部とが備えられ、
前記制御部は、前記ガス漏洩検知部にてガスの漏洩を検知した場合に、前記圧縮空気供給部を圧縮空気供給作動させ且つ前記排気ファンを排気作動させて、前記検知対象空間に圧縮空気を供給しながら、前記検知対象空間の空気を外部に排気する緊急排気処理を実行可能に構成されている点にある。
【0011】
本構成によれば、ガス漏洩検知部にてガスの漏洩を検知した場合に、制御部が緊急排気処理を実行するので、検知対象空間に圧縮空気を供給しながら、検知対象空間の空気を外部に排気して、検知対象空間の空気をいち早く排気する緊急排気を行うことができる。これにより、緊急排気用の給気口を設けなくても、圧縮空気供給部を備えるだけで、検知対象空間を緊急排気することができるので、緊急排気用の給気口を削減できるだけでなく、虫対策や漏水対策のために備えなければならない部品も削減することができ、部品点数の増大による構成の複雑化やメンテナンス作業等の手間のかかる作業の増大を防止することができる。しかも、検知対象空間に供給するのが圧縮空気であるので、圧縮空気供給部自体の大きさも大きくならずに、大きな緊急排気用の給気口を削減することができるので、外観の美観性を向上することができる。
【0012】
本発明の第2特徴構成は、前記圧縮空気供給部は、前記検知対象空間に供給する圧縮空気の供給量を調整自在な圧縮空気供給量調整部が備えられ、
前記制御部は、前記緊急排気処理において、前記検知対象空間内の圧力が陰圧の設定圧力になるように、前記圧縮空気供給量調整部による圧縮空気の供給量を調整している点にある。
【0013】
制御部が緊急排気処理を実行する際に、検知対象空間内の圧力が陽圧となると、その陽圧の作用により検知対象空間の空気が排気ファン以外の箇所からも外部に排出しようとして、漏洩ガスが他の部屋等に流入する等、検知対象空間の空気を排気ファンにていち早く且つ適切に排気することが難しくなる。
そこで、本構成によれば、制御部が緊急排気処理を実行する際に、制御部が圧縮空気供給量調整部による圧縮空気の供給量を調整して、検知対象空間内の圧力を陰圧の設定圧力に維持している。これにより、排気ファンの排気作動により、排気ファンにて検知対象空間の空気をいち早く集中して排気させることができるので、漏洩ガスが他の部屋に流入するのを防止しながら、検知対象空間の緊急排気をいち早く且つ適切に行うことができる。
【0014】
本発明の第3特徴構成は、前記圧縮空気供給部は、圧縮空気を貯留可能な圧縮空気貯留部が備えられ、前記圧縮空気供給作動において、その圧縮空気貯留部に貯留されている圧縮空気を前記検知対象空間に供給している点にある。
【0015】
ガスの漏洩が発生する原因として、例えば、停電等が考えられる。停電時には、例えば、圧縮空気を生成する圧縮機等を電力にて作動させることができず、検知対象空間に圧縮空気を供給できなくなる可能性がある。
【0016】
そこで、本構成によれば、圧縮空気供給部は、圧縮空気を貯留可能な圧縮空気貯留部が備えられ、圧縮空気供給作動を行う際に、圧縮空気貯留部に貯留されている圧縮空気を検知対象空間に供給している。これにより、ガスの漏洩の発生原因と考えられる停電時でも、検知対象空間への圧縮空気の供給を適切に行うことができ、検知対象空間の緊急排気を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における緊急排気システムの全体概略構成を示す図
図2】緊急排気システムの動作を示すフローチャート
図3】第2実施形態における緊急排気システムの全体概略構成を示す図
図4】第3実施形態における緊急排気システムの全体概略構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る緊急排気システムの実施形態について図面に基づいて説明する。
この緊急排気システム1は、例えば、研究所、製薬所や工場等の建物に適用されており、図1に示すように、建物の検知対象空間2にて検知対象ガスの漏洩が発生すると、その検知対象空間2の空気A1をいち早く排気する緊急排気を行うことで、検知対象ガスの漏洩に伴う問題の発生を防止するものである。
【0019】
〔第1実施形態〕
緊急排気システム1は、図1に示すように、検知対象空間2における検知対象ガスの漏洩を検知するガス漏洩検知部3と、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する排気作動を行う排気ファン4と、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給する圧縮空気供給作動を行う圧縮空気供給部5と、検知対象空間2内の圧力と検知対象空間2外の圧力との圧力差を検知する圧力差検知部6と、排気ファン4及び圧縮空気供給部5の作動状態を制御する制御部7とが備えられている。
【0020】
ガス漏洩検知部3は、例えば、検知対象空間2における検知対象ガスの濃度を検出するガス検知器にて構成されている。ガス漏洩検知部3は、検知対象空間2における検知対象ガスの濃度を常時検知しており、その検知情報を制御部7に出力している。
【0021】
検知対象空間2には、検知対象空間2の空気A1を排気する排気路41が備えられている。制御部7が排気ファン4を排気作動させることで、排気路41を通して検知対象空間2の空気A1を外部(建物の外部)に強制的に排気可能となっている。
【0022】
圧縮空気供給部5は、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給する圧縮空気配管51と、その圧縮空気配管51にて検知対象空間2に供給する圧縮空気A2の供給量を調整自在な圧縮空気供給量調整部52とが備えられている。圧縮空気配管51は、圧縮空気供給源(図示省略、例えば圧縮機)から供給される圧縮空気A2を検知対象空間2まで導くように配設されている。圧縮空気供給量調整部52は、例えば、圧縮空気配管51を通流する圧縮空気A2の通流量を調整可能な電動弁にて構成されている。
【0023】
圧力差検知部6は、例えば、検知対象空間2内の圧力と検知対象空間2外の隣室や廊下等の圧力との圧力差を検知する差圧計にて構成されている。圧力差検知部6は、検知対象空間2内の圧力と検知対象空間2外の圧力との圧力差を常時検知しており、その検知情報を制御部7に出力している。
【0024】
制御部7には、ガス漏洩検知部3の検知情報、及び、圧力差検知部6の検知情報が入力されており、制御部7が、それらの検知情報に基づいて、排気ファン4の作動状態、及び、圧縮空気供給部5における圧縮空気供給量調整部52の作動状態を制御している。
【0025】
制御部7は、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知した場合に、圧縮空気供給部5を圧縮空気供給作動させ且つ排気ファン4を排気作動させて、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する緊急排気処理を実行する。この緊急排気処理では、制御部7が、圧縮空気供給部5における圧縮空気供給量調整部52を開弁させることで、圧縮空気供給部5を圧縮空気供給作動させており、排気ファン4の排気作動については、例えば、最大の排気流量(最大能力)となるように排気ファン4を作動させている。
【0026】
ガス漏洩検知部3は、検知対象空間2における検知対象ガスの濃度を常時検知しているので、例えば、その検知対象ガスの濃度がガス漏洩用所定濃度以上となると、検知対象ガスの漏洩を示すガス漏洩信号を制御部7に出力することができる。これにより、制御部7は、ガス漏洩検知部3からガス漏洩信号を受信すると、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知したとして、緊急排気処理を実行している。
【0027】
ちなみに、ガス漏洩検知部3から出力する信号は、検知対象ガスの濃度を示す濃度信号とすることもできる。この場合には、制御部7が、濃度信号を用いて検知対象ガスの濃度がガス漏洩用所定濃度以上であるか否かを判断し、検知対象ガスの濃度がガス漏洩用所定濃度以上であると、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知したとして、緊急排気処理を実行することができる。このように、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知しているか否かの判断は、ガス漏洩検知部3側にて行ってもよく、制御部7側にて行ってもよい。
【0028】
緊急排気処理では、単に、検知対象空間2に対して圧縮空気A2を供給するだけでなく、検知対象空間2内の圧力状態に応じて、検知対象空間2への圧縮空気A2の供給量を調整している。緊急排気処理では、制御部7が、圧力差検知部6の検知情報に基づいて、検知対象空間2内の圧力が陰圧の設定圧力になるように、圧縮空気供給量調整部52の開度を調整して、検知対象空間2への圧縮空気A2の供給量を調整している。
【0029】
制御部7は、圧力差検知部6の検知情報に基づいて、検知対象空間2内の圧力が陰圧となっているか又は陽圧となっているか等、検知対象空間2の外部に対して検知対象空間2内の圧力がどのような圧力となっているかを把握することができる。検知対象空間2内の圧力が陰圧の設定圧力に対して陽圧側(大きな圧力)になっていると、制御部7が、圧縮空気供給量調整部52の開度を小開度側に調整して、検知対象空間2への圧縮空気A2の供給量を減少させている。逆に、検知対象空間2内の圧力が陰圧の設定圧力に対して陰圧側(小さな圧力)になっていると、制御部7が、圧縮空気供給量調整部52の開度を大開度側に調整して、検知対象空間2への圧縮空気A2の供給量を増加させている。このようにして、制御部7が、圧力差検知部6の検知情報に基づいて、圧縮空気供給量調整部52の開度を調整して検知対象空間2への圧縮空気A2の供給量を調整することで、検知対象空間2内の圧力を陰圧の設定圧力に維持している。
【0030】
ここで、緊急排気処理の実行当初において、圧縮空気供給量調整部52の開度をどのような開度とするかについては、例えば、検知対象空間2内の圧力が陰圧を維持できるように、排気ファン4を排気作動させたときの排気流量に応じて、圧縮空気供給量調整部52の開度を設定することができる。これにより、緊急排気処理の実行中だけでなく、緊急排気処理の実行当初から、検知対象空間2内の圧力を陰圧状態に維持することができるので、漏洩ガスが検知対象空間2に隣接する部屋や廊下等に流入するのを防止しながら、検知対象空間2の緊急排気をいち早く且つ適切に行うことができる。
【0031】
緊急排気システム1の動作について、図2のフローチャートに基づいて説明する。
この緊急排気システム1では、図示は省略するが、検知対象空間2内に存在する人に対して、警報音や音声等により避難を促すための警報装置が備えられている。そこで、まず、この警報装置を作動させる避難警報処理を行うことで、検知対象空間2内に存在する人を避難させ、その後、緊急排気処理を行う。これにより、検知対象空間2内の人をいち早く避難させながら、検知対象空間2に漏洩した検知対象ガスを建物の外部等に強制的に排気させる緊急排気を行うことができる、よって、例えば、避難した人が検知対象空間2に戻ってきたときに、検知対象空間2に漏洩した検知対象ガスが残存しないようにして、検知対象空間2内に存在する人の安全性を確保している。
【0032】
図2に示すように、まず、制御部7が、避難警報用条件を満たしているか否かを判断し、避難警報用条件を満たしていると、避難警報処理を実行する(ステップ#1のYesの場合、ステップ#2)。
【0033】
避難警報用条件については、例えば、ガス漏洩検知部3にて検知する検知対象ガスの濃度が避難警報用濃度以上となると、避難警報用条件が満たされたとすることができる。避難警報用濃度を、検知対象ガスの漏洩を検知するためのガス漏洩用所定濃度よりも低い濃度に設定することで、検知対象ガスの漏洩を検知して緊急排気処理を行う前に、避難警報用条件が満たされて、避難警報処理を実行することができる。
【0034】
避難警報処理としては、制御部7が、警報装置(図示省略)を作動させて、警報音や音声等により、検知対象ガスの漏洩の可能性があることを、検知対象空間2内に存在する人に伝えて、検知対象空間2の外部に避難することを促している。
【0035】
次に、制御部7は、検知対象ガスの漏洩を検知しているか否かを判断し、検知対象ガスの漏洩を検知していると、緊急排気処理を実行する(ステップ#3のYesの場合、ステップ#4)。緊急排気処理では、図1に示すように、制御部7が、圧縮空気供給部5における圧縮空気供給量調整部52を開弁させ、且つ、排気ファン4を排気作動させて、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部にいち早く排気する緊急排気を行っている。
【0036】
制御部7は、緊急排気処理の終了条件を満たしている否かを判断し、緊急排気処理の終了条件を満たしていると、緊急排気処理を終了する(ステップ#5のYesの場合、ステップ#6)。
【0037】
緊急排気処理の終了条件については、例えば、緊急排気処理の開始から設定時間(検知対象空間2の空気A1を入れ替えて十分な排気が行えるだけの時間)が経過する、又は、ガス漏洩検知部3にて検知する検知対象ガスの濃度が終了用濃度以下となると、緊急排気処理の終了条件が満たされたとすることができる。
【0038】
〔第2実施形態〕
この第2実施形態は、圧縮空気供給部5の別実施形態であるので、図3に基づいて、圧縮空気供給部5について中心に説明する。その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等により、その説明は省略する。
【0039】
第1実施形態では、図1に示すように、圧縮空気供給部5が、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給する圧縮空気配管51が備えられ、圧縮空気配管51は、圧縮空気供給源(図示省略)から供給される圧縮空気A2を圧縮空気配管51にて検知対象空間2まで導いている。
【0040】
それに対して、第2実施形態では、図3に示すように、圧縮空気供給部5が、圧縮空気供給源(図示省略)から供給される圧縮空気A2を貯留可能な圧縮空気貯留部53(レシーバータンク)を備えており、その圧縮空気貯留部53が圧縮空気配管51の途中部位に配設されている。これにより、制御部7が、圧縮空気供給量調整部52を開弁させることで、圧縮空気貯留部53に貯留されている圧縮空気A2を圧縮空気配管51を通して検知対象空間2に供給可能としている。ちなみに、圧縮空気貯留部53に貯留されている圧縮空気A2が検知対象空間2に供給された場合には、圧縮空気供給源(図示省略)から圧縮空気貯留部53に圧縮空気A2が補給されて、圧縮空気貯留部53には所定量の圧縮空気A2が貯留されている状態が維持される。
【0041】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知した場合に、制御部7が、圧縮空気供給部5を圧縮空気供給作動させ且つ排気ファン4を排気作動させて、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する緊急排気処理を実行する。このとき、制御部7は、圧縮空気供給部5における圧縮空気供給量調整部52を開弁させることで、圧縮空気供給部5を圧縮空気供給作動させるので、図3に示すように、圧縮空気貯留部53に貯留されている圧縮空気A2が圧縮空気配管51を通して検知対象空間2に供給される。
【0042】
これにより、例えば、停電等により圧縮空気供給源(図示省略)を作動できない状態でも、圧縮空気貯留部53に貯留されている圧縮空気A2を圧縮空気配管51を通して検知対象空間2に供給することができるので、検知対象空間2の空気A1をいち早く排気する緊急排気を適切に行うことができる。
【0043】
〔第3実施形態〕
この第3実施形態は、圧縮空気供給部5に代えて、別の構成を備えるものであるので、図4に基づいて、その別の構成について中心に説明する。その他の構成については、第1実施形態と同様であるので、同符号を記す等により、その説明は省略する。
【0044】
第1実施形態では、図1に示すように、検知対象空間2に圧縮空気A2を供給する圧縮空気供給部5が備えられている。それに対して、第3実施形態では、図4に示すように、圧縮空気供給部5に代えて、検知対象空間2に酸素A3を供給する酸素供給部8が備えられている。
【0045】
酸素供給部8は、酸素A3を貯留する酸素貯留部81と、その酸素貯留部81に貯留されている酸素A3を検知対象空間2に供給する酸素配管82と、その酸素配管82にて検知対象空間2に供給する酸素A3の供給量を調整自在な酸素供給量調整部83とが備えられている。酸素供給量調整部83は、例えば、酸素配管82を通流する酸素A3の通流量を調整可能な電動弁にて構成されている。
【0046】
制御部7は、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知した場合に、酸素供給部8を酸素供給作動させ且つ排気ファン4を排気作動させて、検知対象空間2に酸素A3を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部に排気する緊急排気処理を実行する。この緊急排気処理では、制御部7が、酸素供給部8における酸素供給量調整部83を開弁させることで、酸素供給部8を酸素供給作動させている。これにより、緊急排気処理では、圧縮空気A2に代えて、検知対象空間2に酸素A3を供給しながら、検知対象空間2の空気A1を外部に排気している。
【0047】
第3実施形態では、第1実施形態と同様に、緊急排気処理において、単に、検知対象空間2に対して酸素A3を供給するだけでなく、検知対象空間2内の圧力状態に応じて、検知対象空間2への酸素A3の供給量を調整している。緊急排気処理では、制御部7が、圧力差検知部6の検知情報に基づいて、検知対象空間2内の圧力が陰圧の設定圧力になるように、酸素供給量調整部83の開度を調整して、検知対象空間2への酸素A3の供給量を調整している。
【0048】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0049】
(1)上記実施形態では、図2に示すように、避難警報処理を行った後に、緊急排気処理を行っているが、例えば、ガス漏洩検知部3にて検知対象ガスの漏洩を検知した場合に、避難警報処理と緊急排気処理とを同時に行うこともでき、避難警報処理と緊急排気処理との関係でどのようなタイミングにて各処理を行うかは適宜変更が可能である。
【0050】
(2)上記実施形態では、緊急排気システム1として、検知対象空間2内に存在する人に対して、警報音や音声等により避難を促すための警報装置が備えられ、緊急排気処理に加えて、避難警報処理を行うようにしているが、警報音や音声等により避難を促すための警報装置を省略して、緊急排気処理のみを行うこともできる。ちなみに、この場合には、検知対象空間2内に存在する人を避難させるための警報システム等を、緊急排気システム1とは別に設けることができる。
【0051】
(3)上記実施形態では、ガス漏洩検知部3が1つ備えられている例を示したが、ガス漏洩検知部3を複数備えることもできる。例えば、ガス漏洩検知部3を複数の領域に分けて配設することで、各領域にて検知対象ガスの漏洩を検知できることから、検知対象空間2内での検知対象ガスの漏洩の発生をいち早く検知することができる。この場合には、制御部7が、複数のガス漏洩検知部3のいずれか1つにて検知対象ガスの漏洩を検知した場合に、緊急排気処理を実行することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 緊急排気システム
2 検知対象空間
3 ガス漏洩検知部
4 排気ファン
5 圧縮空気供給部
7 制御部
52 圧縮空気供給量調整部
53 圧縮空気貯留部
図1
図2
図3
図4