(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072388
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ハードカプセル用皮膜組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 47/38 20060101AFI20240521BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240521BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240521BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240521BHJP
C08B 15/02 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61K47/38
A61K9/48
A61K47/10
A61K47/26
C08B15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183157
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】503315676
【氏名又は名称】中日本カプセル 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 利恭
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 康博
(72)【発明者】
【氏名】坪井 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 智弘
【テーマコード(参考)】
4C076
4C090
【Fターム(参考)】
4C076AA54
4C076BB01
4C076DD38
4C076EE31A
4C076EE32A
4C090AA09
4C090BA24
4C090BD19
4C090DA03
4C090DA23
(57)【要約】
【課題】セルロースナノファイバーを用いたハードカプセル皮膜については、これまでに十分な検討がされておらず、十分なフィルム成形性を備えるための技術開発が求められている。
【解決手段】(A)セルロースナノファイバー、並びに、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有させることで、ハードカプセル用皮膜組成物のフィルム成形性を高めることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セルロースナノファイバー、並びに、
(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ハードカプセル用皮膜組成物。
【請求項2】
前記(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量が、1~80質量部である、請求項1に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【請求項3】
さらに、(C)グリセリン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤を含有する、請求項1に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【請求項4】
前記(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が、12質量部以上である、請求項1に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【請求項5】
内容物と、
該内容物を充填して封入する請求項1~4のいずれか1項に記載のハードカプセル用皮膜組成物と、を含む、ハードカプセル。
【請求項6】
(A)セルロースナノファイバー、及び、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有するハードカプセル皮膜組成物を調製する工程、並びに、
前記ハードカプセル皮膜組成物中に内容物を充填したハードカプセルを調製する工程を含む、ハードカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードカプセル用皮膜組成物、及び、そのハードカプセル用皮膜組成物を利用したハードカプセルを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ハードカプセル製剤では、安全性や製造プロセスの短縮化等の観点から、動物由来のゼラチンが基剤として多く用いられている。
【0003】
しかしながら、ゼラチンを基剤とするハードカプセルでは、ゼラチンの変性が問題となる場合があり、ゼラチンに代わる基剤の開発が求められている。
【0004】
また、近年では、動物性由来原料から、植物由来原料の嗜好が高まっており、ヒプロメロースやプルラン等の非ゼラチンハードカプセルが開発されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】久保田浩敬、田久保貴久、「新しい非ゼラチンハードカプセル」薬剤学,70(3),198-201(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ゼラチンに代わる原料、特に植物由来原料を用いたハードカプセルは、まだ十分な報告がなされておらず、各社にて開発が続いている。
【0007】
植物由来原料の中でも、セルロースナノファイバーを用いたハードカプセル皮膜については、これまでに殆ど検討がされておらず、十分なフィルム成形性を備えるための技術開発が求められている。セルロースナノファイバーは、硬くて丈夫な素材であるものの、単独ではハードカプセル皮膜としては十分なフィルム成形性を備えないことが、本発明者らにおいて、新たに見出された。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を続けた結果、セルロースナノファイバーを特定の素材と併用することで、ハードカプセル皮膜として十分なフィルム成形性が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
具体的には、ハードカプセル用皮膜組成物に、(A)セルロースナノファイバー、並びに、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有させることで、ハードカプセル用皮膜組成物のフィルム成形性を高めることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げるハードカプセル用皮膜組成物、及び、ハードカプセルを提供する。
【0011】
[1]
(A)セルロースナノファイバー、並びに、
(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ハードカプセル用皮膜組成物。
【0012】
[2]
前記(A)成分100質量部に対する(B)成分の含有量が、1~80質量部である、[1]に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【0013】
[3]
さらに、(C)グリセリン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤を含有する、[1]に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【0014】
[4]
前記(A)成分100質量部に対する(C)成分の含有量が、12質量部以上である、[1]に記載のハードカプセル用皮膜組成物。
【0015】
[5]
内容物と、
該内容物を充填して封入する[1]~[4]のいずれか1項に記載のハードカプセル用皮膜組成物と、を含む、ハードカプセル。
【0016】
[6]
(A)セルロースナノファイバー、及び、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有するハードカプセル皮膜組成物を調製する工程、並びに、
前記ハードカプセル皮膜組成物中に内容物を充填したハードカプセルを調製する工程を含む、ハードカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ハードカプセル皮膜のフィルム成形性を高めることができるハードカプセル用皮膜組成物、該ハードカプセル用皮膜組成物を使用したハードカプセル、及び、該ハードカプセル用皮膜組成物を使用したハードカプセルの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態は、(A)セルロースナノファイバー、並びに、
(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有する、ハードカプセル用皮膜組成物を提供する。
【0019】
[ハードカプセル用皮膜組成物]
【0020】
カプセルとしては、食品、美容用品及び医薬品の分野で用いられるハードカプセルであれば、特に制限されない。
【0021】
((A)成分:セルロースナノファイバー)
セルロースナノファイバー(以下、CNFともいう)は、植物の主要成分であるセルロースが原料であり、セルロース繊維を機械的に破砕・せん断処理することでナノメートルサイズまで細かく微細化した繊維素材である。一般に、セルロースナノファイバーは、熱で膨張しにくく、弾性率が高いという性質を有しており、硬くて丈夫という特徴がある。また、セルロースナノファイバーは、石油系原料を使わず、植物由来の素材であることから、再生型資源として環境負荷が小さいという特徴もある。
【0022】
本明細書において、セルロースナノファイバーの平均繊維幅(「平均繊維径」ともいう)は、特に制限はなく、ナノメートルサイズ(すなわち1000nm未満)であれば問題ないが、通常は0.1~500nmの範囲内であり、好ましくは、0.5~450nm、より好ましくは、1~400nm、更に好ましくは、5~350nm、特に好ましくは、10~300nm、最も好ましくは、20~250nmの範囲内である。
【0023】
セルロースナノファイバーの原料は、セルロースが含まれるものであれば特に制限はないが、例えば、木材、竹、わら(麦、稲など)、もみ殻、食品残渣(野菜くず、茶殻、みかん皮など)、茎(とうもろこし、綿花など)、ススキ、サトウキビ、バガス、綿、ケナフ、海藻など植物資源を原料としたものを挙げることができる。これらの中でも、セルロースナノファイバーの原料は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、植物資源であることが好ましく、植物資源のパルプ(植物繊維)であることがより好ましい。
【0024】
セルロースナノファイバーの製造方法は、特に限定されないが、ホモジナイザーや摩砕機などを用いて物理的にミクロフィブリル化する方法や、バクテリアにより生物的に産出する方法などを挙げることができる。なお、ミクロフィブリル化によりセルロースナノファイバーを製造する方法においては、ミクロフィブリル化前に化学的に変性処理を施してもよい。
【0025】
セルロースナノファイバーとしては、市販品を用いてもよく、例えば、フィブリマ(登録商標、増幸産業製)、セナフ(登録商標、服部商店社製)、レオクリスタ(登録商標、第一化学工業社製)、ELLEX-S(登録商標、大王製紙社製)、na noforest-S(登録商標、中越パルプ工業社製)等が挙げられる。
【0026】
(A)成分の含有量は、限定はされないが、皮膜組成物の乾燥固形成分全量に対して、20~99質量%が好ましく、30~99質量%がより好ましく、40~95質量%が更に好ましく、50~95質量%が特に好ましく、60~90質量%が最も好ましい。
【0027】
((B)成分)
(B)成分としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種が用いられる。限定はされないが、(B)成分としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、カルボキシメチルセルロースナトリウムがより好ましい。これらの(B)成分は市販品を用いてもよい。
【0028】
(B)成分の2%水溶液動粘度(20℃)は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、1500mm2/s以下が好ましく、1000mm2/s以下がより好ましく、800mm2/s以下がさらに好ましく、600mm2/s以下が特に好ましい。また、(B)成分の2%水溶液動粘度(20℃)は、5mm2/s以上が好ましく、20mm2/s以上がより好ましく、40mm2/s以上がさらに好ましく、80mm2/s以上が特に好ましい。
粘度の測定方法は、日本食品添加物公定書第9版「一般試験法」に記載の毛細管粘度計法又は回転粘度計法で測定できる。
【0029】
(B)成分の含有量は、限定はされないが、皮膜組成物の乾燥固形成分全量に対して、例えば、10~50質量%とすることができ、15~45質量%が好ましく、20~40質量%がより好ましい。
【0030】
(A)成分に対する(B)成分の含有比率は、限定はされないが、例えば、(A)成分100質量部に対して(B)成分の含有量は、1~80質量部とすることができ、6~70質量部が好ましく、7~60質量部がより好ましく、8~50質量部が更に好ましく、9~40質量部が特に好ましく、10~40質量部が最も好ましい。
【0031】
((C)成分)
ハードカプセル用皮膜組成物には、上記成分の他に、グリセリン及び糖アルコールからなる群より選択される少なくとも1種の可塑剤を含有させることができる。
【0032】
糖アルコールの種類は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。糖アルコールとしては、例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、還元水飴等の食品分野、医薬品分野で利用可能な公知の成分が挙げられる。糖アルコールのうち、例えば、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール等は、単糖類から構成される単糖アルコールであり、ラクチトール等は、二糖から構成される二糖アルコールである。
【0033】
糖アルコールは、本発明の効果を顕著に奏する観点から、複数種類を用いることが好ましい。糖アルコールは、上記の糖アルコールを適宜組み合わせて用いてもよく、又は、複数種類配合する素材として、限定はされないが、例えば、還元水飴を用いることも可能である。還元水飴は、デンプンを酸や酵素等で加水分解して得られる水飴を原料とし、水素添加によって、グルコース末端を還元すること等により製造される単糖、及び、多糖の糖アルコール混合物の総称である。還元水飴は、還元デンプン加水分解物、還元デンプン糖化物、還元オリゴ糖等とも称される。
【0034】
還元水飴は、原料の水飴の糖化度によって分類され、高糖化度還元水飴、中糖化度還元水飴、低糖化度還元水飴等が挙げられる。還元水飴は、特に限定はされないが、本発明の効果を顕著に奏する観点から、高糖化度還元水飴が好ましい。これらの還元水飴は、原料の水飴における糖化度を適宜調整して製造してもよく、市販品を用いてもよい。高糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、エスイー600(物産フードサイエンス社製)、PO-60(三菱商事ライフサイエンス社製)等が挙げられ、中糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、スイートOL(物産フードサイエンス社製)、エスイー57(物産フードサイエンス社製)等が挙げられ、低糖化度還元水飴の市販品としては、例えば、エスイー30(物産フードサイエンス社製)、PO-30(三菱商事ライフサイエンス社製)等が挙げられる。
【0035】
糖アルコールのDE(Dextrose Equivalent)値は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、40~80であり、50~80が好ましく、60~80がより好ましく、65~80が更に好ましく、70~80が特に好ましい。DE(Dextrose Equivalent)値は、ブドウ糖の純度を示す指標であり、結晶ブドウ糖のDE値は100となる。
【0036】
また、糖アルコールにおける糖組成は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、糖アルコールに含まれる単糖アルコールの比率が、25~70%であり、且つ、糖アルコールに含まれる二糖アルコールの比率が、25~70%であることが好ましい。また、糖アルコールに含まれる単糖アルコールの比率は、例えば、30~65%であることがより好ましく、35~60%であることが更に好ましく、40~55%であることが特に好ましい。また、糖アルコールに含まれる二糖アルコールの比率は、例えば、30~65%であることがより好ましく、35~60%であることが更に好ましく、40~55%であることが特に好ましい。
【0037】
これらの中でも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、糖アルコールは、ソルビトール、及び、還元水飴からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、ソルビトール、及び、高糖化度還元水飴からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0038】
(C)成分の含有量は、限定はされないが、皮膜組成物の乾燥固形成分全量に対して、1~15質量%であり、1.5~9質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましく、2.5~7質量%が更に好ましい。
【0039】
(A)成分に対する(C)成分の含有比率は、限定はされないが、例えば、(A)成分の含有量100質量部に対して、前記(C)成分の含有量が、12~160質量部とすることが好ましく、15~150質量部がより好ましく、20~140質量部が更に好ましく、25~130質量部が特に好ましく、30~120質量部が最も好ましい。
【0040】
(他の可塑剤)
カプセル用皮膜組成物には、上記成分の他の可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、本発明の効果を奏する限り、特に限定はされないが、例えば、水、糖類(例えば、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖、オリゴ糖等)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0041】
カプセル用皮膜組成物には、上記成分の他に、増粘多糖類、ゲル化促進剤、pH調整剤、キレート剤、界面活性剤、呈味剤、着色剤、保存剤等を含有させることができる。
【0042】
増粘多糖類としては、特に限定はされないが、例えば、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
着色剤としては、特に限定はされないが、例えば、カラメル、ラック色素、クチナシ色素、トウガラシ色素、二酸化チタン、黄酸化鉄、黄色三二酸化鉄、三二酸化鉄等が挙げられる。
【0044】
ゲル化促進剤としては、特に限定はされないが、例えば、ミョウバン(硫酸カリウムアルミニウム十二水和物)等が挙げられる。
【0045】
pH調整剤としては、特に限定はされないが、例えば、リン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0046】
キレート剤としては、特に限定はされないが、例えば、クエン酸三ナトリウム、メタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
界面活性剤としては、特に限定はされないが、例えば、ポリグリセリン脂肪酸エステル、レシチン等が挙げられる。
【0048】
限定はされないが、本発明のハードカプセル用皮膜組成物は、天然由来、好ましくは、非動物由来、好ましくは、植物由来の成分から本質的に構成されるか、又はそれから完全に構成される。
【0049】
[カプセル内容物]
カプセルの内容物としては、医薬成分、生薬成分、健康食品成分、栄養補助成分などの目的物質であれば特に限定されない。本明細書において、ハードカプセルでは、例えば、これらの目的物質を、粉末状又は顆粒状としたものに賦形剤を添加したもの等を使用することができる。
【0050】
限定はされないが、胃液との接触により死滅する成分や活性を失いやすい成分、胃の組織に刺激を与えやすい成分、腸の組織に作用させたい成分等は、本実施形態のハードカプセルの内容物とする意義が高い。
【0051】
カプセルの内容物としては、限定はされないが、例えば、以下が例示される。
(1)ビタミン類
例えば、ビタミンA、D、E及びK等の脂溶性ビタミン、並びにビタミンC、ビオチン、葉酸塩、ナイアシン、パントテン酸、リボフラビン、チアミン、ビタミンB6、ビタミンB12及びこれらの混合物等の水溶性ビタミン等。
(2)ミネラル
例えば、カルシウム、クロム、銅、フッ化物、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、モリブデン、リン、カリウム、セレン、ナトリウム(塩化ナトリウムを含む)、亜鉛及びこれらの混合物等。
(3)機能性原料
例えば、ハーブ又はその他の生薬、アミノ酸、酵素、臓器組織、分泌腺、代謝産物等の物質の他、食事成分の濃縮物、代謝産物、構成成分、抽出物、オキアミ油等の油及びこれらの混合物等。
(4)菌類
例えば、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・イエンセン、ラクトバチルス・ジョンソニ、ラクトバチルス・ガセリ、エンテロコッカス・フェシウム等の乳酸菌等。
【0052】
カプセルの内容物には、上記で例示される目的物質の他、賦形剤、マスキング剤、抗酸化剤、香料等の公知の添加物を含有させることができる。
【0053】
賦形剤としては、特に限定はされないが、例えば、デキストリン、サイクロデキストリン、セルロース、ポリサッカライド、結晶セルロース、二酸化ケイ素、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ショ脂肪酸エステル、タルク等が挙げられる。
【0054】
マスキング剤としては、特に限定はされないが、例えば、グルコン酸カルシウム、炭酸カルシウム、真珠カルシウム、乳酸カルシウム、ミルクカルシウム、貝カルシウム等のカルシウム誘導体等が挙げられる。
【0055】
抗酸化剤としては、特に限定はされないが、例えば、ビタミンE類、ビタミンC又はその塩、ビタミンB2、及び、それらの誘導体等の抗酸化ビタミン、多価不飽和脂肪酸、カテキン類、エリソルビン酸、ノルジヒドログアセレテン酸、ヒドロキシチロソール、パラヒドロキシアニソール、没食子酸プロピル、セサモール、セサモリン、ゴシポール、プロポリス等が挙げられる。
【0056】
[カプセルの製造方法]
別の実施態様において、本発明は、(A)セルロースナノファイバー、並びに、
(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種を含有するハードカプセル用皮膜組成物を調製する工程、並びに、
前記カプセル用皮膜組成物中に内容物を充填したハードカプセルを調製する工程を含む、ハードカプセルの製造方法に関する。
【0057】
カプセル剤の製造方法は、公知の方法であれば特に制限なく用いることができ、例えば、ハードカプセル皮膜組成物を用いたハードカプセルのボディ部に、内容物(主に粉末原料)を充填し、ハードカプセル皮膜組成物を用いたハードカプセルのキャップ部を嵌合させることによりハードカプセルを調製することが挙げられる。
【0058】
充填方法としては、公知の方法であれば特に制限なく用いることができ、例えば、オーガー式、ダイコンプレス式、ファンネル式、マス式等が挙げられる。
【0059】
ハードカプセルのボディ部とキャップ部を嵌合させ、封入する場合において、必要により継ぎ目にバンドシールを施すこと(バンドシール方式)や、加熱により熱着させること(熱着方式)等で、内容物の継ぎ目からの漏出を防止することが可能である。
【0060】
各種成分の種類や含有量、比率等は、[ハードカプセル用皮膜組成物]の項目の記載に準じる。
【0061】
限定はされないが、本発明におけるハードカプセルは、カプセルフィルムの成形性に優れることから、カプセルの強度が高い、割れにくい等を表示した商品とすることも可能である。
【実施例0062】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。下記の各実施例及び比較例において、使用する原料は特にことわりのない限り、市販品を用いた。
【0063】
[試験方法]
(1.フィルムの成形性の評価)
ハードカプセル皮膜におけるフィルムの成形性は、以下の方法により評価した。
調製したハードカプセル用皮膜組成物をシャーレに10g添加し、50℃の恒温槽にて乾燥させた後、以下の評価項目にてフィルムの成形性を確認した。
○:均一なフィルムになっている
△:不均一であるが、フィルム性が向上している
×:フィルム性に影響がない(フィルムが形成されない)
(2.フィルムの強度の評価)
調製したハードカプセル用皮膜組成物をシャーレに10g添加し、50℃の恒温槽にて乾燥させた後、以下の評価項目にてフィルムの強度を確認した。
○:フィルムを引っ張った際に容易に破れない
×:フィルムを引っ張った際に容易に破れる
(3.フィルムの割れ耐性の評価)
調製したハードカプセル用皮膜組成物をシャーレに10g添加し、50℃の恒温槽にて乾燥させた後、以下の評価項目にてフィルムの割れ耐性を確認した。
○:フィルムを曲げた際に容易に破れない
×:フィルムを曲げた際に容易に破れる
【0064】
[試験例1.ハードカプセル皮膜における(B)成分のフィルム成形性への影響]
下記表1~表6の処方に従い、常法により、ハードカプセル用皮膜組成物を調製した。
具体的には、下記表の処方に示す各原料を、混合及び攪拌し、攪拌を行いながら加熱溶解することにより各皮膜組成物を調製し、ハードカプセル皮膜を得た。フィルム成形性、及び、フィルム強度の評価を行い、結果を各表に示した。
【0065】
セルロースナノファイバーは、以下のものを使用した。
製品名:フィブリマ(増幸産業株式会社製セルロースナノファイバー)
原材料:結晶セルロース(食品添加物グレード)
固形分:5質量%
【0066】
メチルセルロースは、以下のものを使用した。
製品名:MCE-100
粘度範囲:80-120mm2/s
製品名:MCE-400
粘度範囲:280-560mm2/s
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
表1~表6に示される通り、セルロースナノファイバーは、硬くて丈夫な素材であるものの、単独ではハードカプセル皮膜としては十分なフィルム成形性を備えないことが見出された(比較例1-1)。セルロースナノファイバーと併用が可能な成分をスクリーニングした結果、(B)カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びメチルセルロースからなる群より選択される少なくとも1種との併用において、フィルム成形性が向上することが認められた(実施例1-1~実施例1-7)。他のセルロース誘導体では、フィルム成形性が全く向上せず、このような効果は、上記(B)成分に特有の効果であることが示唆された。
【0074】
[試験例2.ハードカプセル皮膜における(C)成分のフィルムの割れ耐性への影響の検討]
下記表7~表11の処方に従い、常法により、ハードカプセル用皮膜組成物を調製した。
具体的には、下記表の処方に示す各原料を、混合及び攪拌し、攪拌を行いながら加熱溶解することにより各皮膜組成物を調製し、ハードカプセル皮膜を得た。フィルム成形性、フィルム強度、及び、フィルムの割れの評価を行い、結果を各表に示した。
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表7~表11に示される通り、本発明の皮膜組成物において(A)成分と(B)成分とを共存させることで、十分なフィルム成形性及び強度を備えることができ、他の成分の配合による影響は見られなかった。一方で、(C)成分を含有させることにより、更に、フィルムの割れを抑制できることが認められた。