(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072390
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】活性エネルギー線硬化型墨インキ、及び印刷物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/101 20140101AFI20240521BHJP
【FI】
C09D11/101
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183160
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】artience株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原口 滉生
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB08
4J039AC01
4J039AD02
4J039BA04
4J039BA16
4J039BA21
4J039BA23
4J039BE01
4J039BE02
4J039BE27
4J039EA04
4J039EA44
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA08
4J039GA09
4J039GA10
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】中性のカーボンブラックを使用しながらも酸性のカーボンブラックと同等のインキ分散性、流動性を有し、かつ、酸性のカーボンブラックに比べ網点の汚れを軽減する事が出来る活性エネルギー線硬化型墨インキを提供すること、並びに、これを用いた印刷物を提供すること。
【解決手段】中性のカーボンブラックと、ジアリルイソフタレート樹脂を含む樹脂2種以上と、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物を含む(メタ)アクリレート化合物と、体質顔料とを含有する、活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤と、樹脂2種以上と、(メタ)アクリレート化合物と、体質顔料とを含有する、活性エネルギー線硬化型墨インキであって、
着色剤が、pH値7.0~8.5であるカーボンブラック顔料を含み、
樹脂が、ジアリルイソフタレート樹脂を、樹脂全量中13~30質量%含み、
(メタ)アクリレート化合物が、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物を含む、活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項2】
前記樹脂が、ジアリルオルソフタレート樹脂を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項3】
前記樹脂が、ロジン変性樹脂を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項4】
前記ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)およびα、β―不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応物と、ポリオール(C)との反応物である、請求項3記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項5】
前記樹脂の合計含有量が、インキ全量中8~20質量%である、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項6】
体質顔料が、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び、タルクからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項7】
さらにシリカを含む請求項1記載の活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【請求項8】
基材に、請求項1~7いずれか記載の活性エネルギー線硬化型墨インキを印刷し、活性エネルギー線で硬化した印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性エネルギー線硬化型墨インキ、及び、これを用いた印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油性インキに代わり活性エネルギー線硬化型インキの需要が拡大している。この要因としては、活性エネルギー線硬化型インキが、印刷の高速化、省人化のために重要な高速乾燥性(高い硬化性)を有していること、および、印刷物における重要な物性である溶剤耐性といった塗膜耐性に優れていること、などが挙げられるが、一方で、油性インキと同等の印刷物の品質が要求されている。
【0003】
また、活性エネルギー線硬化型墨インキにおいては、インキ分散性、流動性の観点から、カーボンブラックの選定において、酸性のカーボンブラックの使用が主流となっている(特許文献1参照)。この要因としては、酸性のカーボンブラックが、製造工程における酸化処理に伴い酸性の極性基を有することで、インキ中での分散性や流動性が向上することが挙げられる。しかしながら、酸性の極性基を有する事から、親水性であることでインキが水を含みやすく印刷における網点の汚れ等を発生させ易いという問題点がある。加えて、酸化処理を行う為、製造コストが高くなってしまうという問題点もある。
【0004】
一方、中性のカーボンブラックは、酸化処理を行わないことから、製造コストを低く抑えることができる為、油性インキでは中性のカーボンブラックの使用が主流となっている(特許文献2参照)。極性基を持たない中性のカーボンブラックに対して、溶剤や天然樹脂と混合することでインキ分散性、流動性を保持する事を可能にしているが、中性のカーボンブラックは活性エネルギー線硬化型インキで用いられる(メタ)アクリレート化合物とは相性が悪く、インキ分散性、流動性が著しく低下する為、活性エネルギー線硬化型インキでは中性のカーボンブラックを使用してのインキ化が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-081264号公報
【特許文献2】特開2019-119749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、中性のカーボンブラックを使用しながらも酸性のカーボンブラックと同等のインキ分散性、流動性を有し、かつ、酸性のカーボンブラックに比べ網点の汚れを軽減する事が出来る活性エネルギー線硬化型墨インキを提供すること、並びに、これを用いた印刷物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、以下に示す活性エネルギー線硬化型墨インキ、並びにこれを用いた印刷物により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、着色剤と、樹脂2種以上と、(メタ)アクリレート化合物と、体質顔料とを含有する、活性エネルギー線硬化型墨インキであって、
着色剤が、pH値7.0~8.5であるカーボンブラック顔料を含み、
樹脂が、ジアリルイソフタレート樹脂を、樹脂全量中13~30質量%含み、
(メタ)アクリレート化合物が、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物を含む、活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0009】
また本発明は、前記樹脂が、ジアリルオルソフタレート樹脂を含む、上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0010】
また本発明は、前記樹脂が、ロジン変性樹脂を含む、上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0011】
また本発明は、前記ロジン変性樹脂が、ロジン酸類(A)およびα、β―不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応物と、ポリオール(C)との反応物である、上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0012】
また本発明は、前記樹脂の合計含有量が、インキ全量中8~20質量%である、上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0013】
また本発明は、体質顔料が、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、及び、タルクからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0014】
また本発明は、さらにシリカを含む上記活性エネルギー線硬化型墨インキ。
【0015】
また本発明は、基材に、上記活性エネルギー線硬化型墨インキを印刷し、活性エネルギー線で硬化した印刷物。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、中性カーボンブラックを用いても、酸性カーボンブラックと同等のインキ分散性、流動性を有し、かつ、網点の汚れを軽減することができる活性エネルギー線硬化型墨インキを提供すること、並びに、これを用いた印刷物を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではなく、その趣旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
また、特にことわりのない限り、「部」とは「質量部」、「%」とは「質量%」を表す。
また、本明細書において、「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」といった記載は、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシ」を意味する。また、「PO」は「プロピレンオキサイド」を、「EO」は「エチレンオキサイド」を表す。
【0018】
<活性エネルギー線硬化型墨インキ>
本発明の活性エネルギー線硬化型墨インキ(以下、単に「インキ」とも言う)は、着色剤、樹脂、(メタ)アクリレート化合物、及び体質顔料を含む。
【0019】
<着色剤>
本発明のインキは、着色剤として、pH値7.0~8.5である中性のカーボンブラック顔料(以下、「中性カーボンブラック」とも称する)を含む。
【0020】
ここで、カーボンブラックには、表面処理を行いカーボン表面に酸性の極性基を持たせた酸性カーボンブラック(なお本発明における酸性カーボンブラックは、カーボンブラックのpH値が7.0未満であるものを指す)と、表面処理を行わずカーボン表面に極性基を持たない中性カーボンブラック(pH値7.0~8.5)の2種類が存在しており、酸性カーボンブラックは、活性エネルギー線硬化型墨インキの分散性及び流動性を向上させる目的で開発され、現在では、活性エネルギー線硬化型墨インキで主流のカーボンブラックである。一方、中性カーボンブラックは、表面処理を行わない為に製造コストが安価であることから、油性墨インキで主流のカーボンブラックである。
【0021】
本発明のインキでは、中性カーボンブラックを用いることができるようになることで、インキのコストを低くでき、かつ、網点の汚れを軽減することができる。
【0022】
なお、カーボンブラックのpH値とは、カーボンブラック3gと蒸留水20gとを混合したのち5分間煮沸し、室温まで冷却した混合物について、ガラス電極法によって測定した値である。
【0023】
本発明における中性カーボンブラック顔料の含有量は、インキ全量中14~18質量%であることが好ましい。
中性カーボンブラック顔料の含有量をインキ全量中14~18質量%とすることで、印刷適性と印刷物の物性(濃度など)を両立することができる。
【0024】
<樹脂>
本発明のインキは、樹脂として、ジアリルイソフタレート樹脂を含む2種以上を含有する。
【0025】
本発明における樹脂の合計含有量は、インキ全量中8~20質量%であり、10~15質量%であることが好ましく、12~13質量%であることがより好ましい。
樹脂の合計含有量をインキ全量中8~20質量%含有することで、インキの粘弾性や流動性のバランスが保たれる。
【0026】
<ジアリルイソフタレート樹脂>
本発明は、樹脂としてジアリルイソフタレート樹脂を含む。ジアリルイソフタレート樹脂を含むことで、分散性の良くない中性カーボンブラック顔料を用いても、高い顔料分散性が得られる。これにより、インキの分散性、流動性が著しく向上する。
ジアリルイソフタレート樹脂としては、市販品としては、大阪ソーダ社製 ダイソーイソダップが挙げられる。
【0027】
本発明におけるジアリルイソフタレート樹脂の含有量は、樹脂全量中13~30質量%であり、15~25質量%であることが好ましく、17~20質量%であることがより好ましい。
【0028】
本発明におけるジアリルイソフタレート樹脂は、重量平均分子量が2,000~30,000であることが好ましく、3,000~15,000であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000~30,000であることで、耐摩擦性と密着性が良好となり、また、着色剤への濡れ性が高くなることで分散性が向上する。
【0029】
<ジアリルイソフタレート樹脂以外の樹脂>
本発明のインキは、樹脂として、ジアリルイソフタレート樹脂以外(以下、「その他の樹脂」と称する)の樹脂を少なくとも1種含む。その他の樹脂としては、目的物性に合わせ適宜選択することができるが、(メタ)アクリレート化合物との相溶性が良好で溶解可能な樹脂が好ましい。
【0030】
その他の樹脂として具体的には、ジアリルオルソフタレート樹脂、ロジン変性樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0031】
その他の樹脂としては、ジアリルオルソフタレート樹脂及びロジン変性樹脂からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ジアリルオルソフタレート樹脂及びロジン変性樹脂を含む事がより好ましい。
【0032】
ジアリルオルソフタレート樹脂を含むことで、インキ硬化性を阻害することなく、流動性のバランスを保つことができる。また、ロジン変性樹脂を含むことで、インキ乳化率を向上させることができる。
【0033】
本発明におけるジアリルオルソフタレート樹脂としては、市販品としては、大阪ソーダ社製ダイソーダップが挙げられる。
【0034】
本発明におけるジアリルオルソフタレート樹脂は、重量平均分子量が2,000~30,000であることが好ましく、3,000~15,000であることがより好ましい。重量平均分子量が2,000~30,000であることで、耐摩擦性と密着性が良好となる。
【0035】
本発明におけるロジン変性樹脂とは、樹脂骨格中に、ロジン由来の骨格を含有する樹脂のことである。ロジン由来の骨格を含有することで、高速印刷時でのUV照射による硬化収縮を抑えることができ、乾燥被膜の平滑性を維持することができるため、光沢性と密着性が向上する。
【0036】
また、本発明におけるロジン変性樹脂は、ロジン酸類(A)およびα、β―不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の付加反応物と、ポリオール(C)との反応物であることが好ましい。
さらに具体的には、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸、およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸とポリオール(C)との反応によってエステル結合を形成した化合物が有する水酸基と反応しエステル結合を形成したロジン変性樹脂が好ましい。
【0037】
<ロジン酸類(A)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)とは、環式ジテルペン骨格を有する一塩基酸を指す。ロジン酸、不均化ロジン酸、水添ロジン酸、または前記化合物のアルカリ金属塩等を表し、具体的には、共役二重結合を有するアビエチン酸、およびその共役化合物である、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、レボピマル酸や、共役二重結合を有さないピマル酸、イソピマル酸、サンダラコピマル酸、およびデヒドロアビエチン酸等が挙げられる。またこれらのロジン酸類(A)を含有する天然樹脂として、ガムロジン、ウッドロジン、トール油ロジン等が挙げられる。
【0038】
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるロジン酸類(A)の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。ロジン酸類(A)の配合量が20質量%以上であれば、その樹脂を含む活性エネルギー線硬化型コーティングニスの光沢性が良好になり、配合量が70質量%以下であると、活性エネルギー線硬化型コーティングニスの耐摩擦性が良好となる。
【0039】
<α,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(B)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために用いるα,β-不飽和カルボン酸またはその酸無水物(B)としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸等およびこれらの酸無水物が例示される。ロジン酸類(A)との反応性を鑑みると、好ましくはマレイン酸またはその酸無水物である。
【0040】
本発明における、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の配合量は、ロジン酸類(A)に対して、60~200の範囲であることが好ましく、70~180モル%の範囲であることがより好ましく、80~155モル%の範囲であることが特に好ましい。α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)の配合量を上記範囲内に調整した場合、対摩擦性、および密着性に優れるロジン変性樹脂を得ることが容易である。
【0041】
<(A)、および(B)以外のカルボン酸(以下「その他の有機酸類」ともいう)>
本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、ロジン酸類(A)、α,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)に加えて、その他の有機酸類を、単独または2種類以上用いることもできる。
その他の有機酸類の配合量は、樹脂原料の全配合量を基準として0~30質量%であることが好ましく、0~20質量%であることが更に好ましい。
【0042】
その他の有機酸類の具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0043】
<有機一塩基酸>
安息香酸、メチル安息香酸、ターシャリーブチル安息香酸、ナフトエ酸、オルトベンゾイル安息香酸等の芳香族一塩基酸、
共役リノール酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸、カレンジン酸等の共役二重結合を有するが環式ジテルペン骨格を有さない化合物
等が挙げられる。
【0044】
<脂環式多塩基酸またはその酸無水物>
1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、3-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、4-メチル-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,3-シクロヘキサンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0045】
(その他の有機多塩基酸またはその酸無水物)
シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸などのアルケニルコハク酸、o-フタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらの酸無水物等が挙げられる。
【0046】
<ポリオール(C)>
ポリオール(C)は、ロジン酸類(A)に含まれる共役二重結合を有する有機酸とα,β-不飽和カルボン酸又はその酸無水物(B)とのディールスアルダー反応によって得られる化合物、ロジン酸類(A)のうち共役二重結合を有さない有機酸およびその他の有機酸、それぞれにおけるカルボン酸との反応によってエステル結合を形成する。本発明におけるロジン変性樹脂を得るために、以下に記載のポリオールを、単独または2種類以上用いることもできる。ポリオールの具体的な例としては以下が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
(直鎖状アルキレン2価ポリオール)
1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,2-ヘキサデカンジオール等。
【0048】
<分岐状アルキレン2価ポリオール>
2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオ-ル、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ジメチロールオクタン、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール等。
【0049】
<環状2価ポリオール>
1,2-シクロヘプタンジオール、トリシクロデカンジメタノール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールS、水添カテコール、水添レゾルシン、水添ハイドロキノン等の環状アルキレン2価ポリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン等の芳香族2価ポリオール。
【0050】
<その他の2価のポリオール>
ポリエチレングリコール(n=2~20)、ポリプロピレングリコール(n=2~20)、ポリテトラメチレングリコール(n=2~20)等の2価のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等。
【0051】
<3価のポリオール>
グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、3-メチルペンタン-1,3,5-トリオール、ヒドロキシメチルヘキサンジオール、トリメチロールオクタン等。
【0052】
<4価以上のポリオール>
ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロ-ルプロパン、ジペンタエリスリト-ル、ソルビトール、イノシトール、トリペンタエリスリトール等の直鎖状、分岐状、および環状の4価以上のポリオール。
【0053】
本発明におけるロジン変性樹脂は、重量平均分子量が3,000~30,000であることが好ましく、3,000~15、000であることがより好ましい。重量平均分子量が3,000~30,000であることで、光沢性と密着性が良好となる。
【0054】
本発明におけるロジン変性樹脂は、酸価が20~80mgKOH/gが好ましく、30~80mgKOH/gがより好ましく、40~80mgKOH/gがさらに好ましく、50~80mgKOH/gが特に好ましい。ロジン変性樹脂の酸価が上記範囲内である場合、優れた密着性を有する。
【0055】
また、ロジン変性樹脂の融点は50℃以上であることが好ましく、60~100℃の範囲がより好ましい。なお融点は、BUCHI社製のMeltingPointM-565を用い、昇温速度0.5℃/分の条件下で測定できる。
【0056】
<(メタ)アクリレート化合物>
本発明のインキは、(メタ)アクリレート化合物を含む。本発明における(メタ)アクリレート化合物は、(メタ)アクリロイル基有する化合物であれば、特に限定されない。また、本発明において、(メタ)アクリレート化合物は、1種でも2種以上組み合わせても良いが、インキ粘度と硬化性の観点から、2種以上組み合わせることが好ましく、3種以上組み合わせることがより好ましい。
【0057】
本発明のインキは、(メタ)アクリレート化合物として、分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物を含む。分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物を含むことで、硬化性と流動性を両立することができる。中でも硬化性の観点から、分子中に(メタ)アクリロイル基を3~6個含む(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
【0058】
分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物の含有量の合計は、(メタ)アクリレート化合物の全質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0059】
本発明において、(メタ)アクリレート化合物の含有量は、インキ全量中30~60質量%であることが好ましく、35~50質量%であることがより好ましい。
【0060】
分子中に(メタ)アクリロイル基を3個以上含む(メタ)アクリレート化合物として具体的には、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する(メタ)アクリレート化合物、
ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートなどの分子内にアクリロイル基を4つ有する(メタ)アクリレート化合物、
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する(メタ)アクリレート化合物、
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する(メタ)アクリレート化合物、などが挙げられる。
【0061】
また、(メタ)アクリレート化合物として、(メタ)アクリロイル基を1~2個有する(メタ)アクリレート化合物を併用することもできる。
【0062】
また、(メタ)アクリレート化合物として、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレート、芳香族ウレタンア(メタ)クリレートなどのウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなども用いることができる。
【0063】
<体質顔料>
本発明のインキは、体質顔料を含む。体質顔料を含むことで、インキタックや粘度のバランスを保ち、耐ミスチング性が向上する。
体質顔料としては、クレー、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、ベントナイトなどが挙げられる。
【0064】
本発明のインキにおける体質顔料の含有量は、インキ全量中0.5~3.0質量%であることが好ましく、1.0~2.5質量%であることがより好ましい。
【0065】
本発明における体質顔料は、炭酸マグネシウム、及び、タルクからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。これらを含むことで、インキタックや粘度のバランスを保ち、耐ミスチング性が向上する。
【0066】
<その他成分>
本発明のインキは、必要に応じて上記成分以外に、光重合開始剤、シリカ、増感剤、重合禁止剤などを含有することができる。
【0067】
<光重合開始剤>
本発明のインキは、光重合開始剤を含んでもよい。本発明に用いることができる光重合開始剤としては、特に制限はなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物などが挙げられる。
また、光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノンなどが挙げられる。
【0069】
上記ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノンなどが挙げられる。
【0070】
上記α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オンなどが挙げられる。
【0071】
上記α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノンなどが挙げられる。
【0072】
上記のアシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドなどが挙げられる。
【0073】
上記チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントンなどが挙げられる。
【0074】
前記光重合開始剤の含有量は、インキ全量中1~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0075】
<シリカ>
本発明のインキは、シリカを含んでもよい。本発明のインキにおけるシリカの含有量は、インキ全量中0.5~1.5質量%であることが好ましい。シリカを含むことで網点の汚れを軽減することができる。
【0076】
<増感剤>
本発明のインキは、増感剤を含んでもよい。増感剤を含むことで、硬化性を一層向上することができる。増感剤としては、具体的に、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0077】
<重合禁止剤>
本発明のインキは、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤としては、具体的には、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩などが挙げられる。
【0078】
重合禁止剤の含有量は、硬化性を維持しつつ、インキの安定性を高める観点から、インキインキ全量中0.01~2質量%であることが好ましい。
【0079】
本発明の墨インキは、水を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、インキ全量中2質量%以下である。
【0080】
本発明の墨インキは、有機溶剤を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、インキ全量中1質量%以下である。
【0081】
<印刷物>
本発明の印刷物は、基材に本発明のインキを印刷し、活性エネルギー線で硬化させることによって得られる。
【0082】
本発明における基材は、紙基材であれば特に制限がなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙、上質紙、中質紙、新聞用紙などの更紙、ユポ紙などの合成紙が挙げられる。
【0083】
本発明のインキを、基材上に印刷する方法としては、オフセット印刷(湿し水を使用する通常の平版及び湿し水を使用しない水無し平版)、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷等が挙げられ、中でも平版印刷用に用いることが好ましい。
【0084】
本発明において、インキを硬化する方法は、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光などを照射することで硬化することができる。中でも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。紫外線のピーク波長は、200~600nmであることが好ましく、より好ましくは350~420nmである。
【0085】
活性エネルギー線源としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザーなどが挙げられる。この中でも、紫外線発光ダイオード(UV-LED)が好ましい。
【実施例0086】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0087】
<樹脂ワニスAの作製>
ジアリルイソフタレート樹脂(大阪ソーダ株式会社製 ダイソーイソダップ)30部を、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート70部に溶解させて昇温加熱混合(80℃)し、樹脂ワニスAを作成した。
<樹脂ワニスBの作製>
ジアリルオルソフタレート樹脂(大阪ソーダ株式会社製 ダイソーダップA)28部を、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート60部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート12部に溶解させて昇温加熱混合(80℃)し、樹脂ワニスBを作成した。
<樹脂ワニスCの作製>
ロジン変性樹脂1(国際公開第2017/164246号の段落番号0076に記載の樹脂4)を40部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート60部に溶解させて昇温加熱混合(80℃)し、樹脂ワニスCを作成した。
<樹脂ワニスDの作製>
ロジン変性樹脂2(国際公開第2017/164246号の段落番号0076に記載の樹脂5)を40部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート60部に溶解させて昇温加熱混合(80℃)し、樹脂ワニスDを作成した。
【0088】
<活性エネルギー線硬化型墨インキの作成>
実施例1
pH値7.0~8.5のカーボンブラックとして#85Lを15部、EO(3)変性トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP(EO)TA)を10部、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート(DiTMPTA)を10部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)を10部、ОmniradDETXを2.5部、OmniradEMKを3部、Omnirad930を5部、シリカを1部、炭酸マグネシウムを2.5部、タルクを0.5部、重合禁止剤を0.5部、及び、樹脂ワニスAを10部、樹脂ワニスBを15部、樹脂ワニスCを15部混合し、バタフライミキサーを用いて攪拌混合した後、3本ロールにて最大粒径が7.5μm以下になるように分散してインキを作製した。
【0089】
実施例2~14比較例1~11
表1に記載した原料と量を変更した以外は、実施例1と同様の方法で実施例2~14、比較例1~11のインキを得た。なお、空欄は配合していないことを表す。
【0090】
【0091】
【0092】
表1中、表記の説明は以下の通りである。
[顔料]
・#85L:三菱化学株式会社製、カーボンブラック(pH値7.5)
・#25:三菱化学株式会社製、カーボンブラック(pH値8.0)
・#2600:三菱化学株式会社製、カーボンブラック(pH値6.5)
・MA-14:三菱化学株式会社製、カーボンブラック(pH値2.4)
・MA-11:三菱化学株式会社製、カーボンブラック(pH値2.4)
[(メタ)アクリレート化合物]
・TMP(EO)TA:MIRAMER M3130(MIWON社製)
・DiTMPTA:EBECRYL 1142(ダイセル・オルネクス株式会社製)
・DPHA:MIRAMER M600(MIWON社製)
[光重合開始剤]
・OmniradDETX:IGM RESINS社製、チオキサントン
・OmniradEMK:IGM RESINS社製、ベンゾフェノン
・Оmnirad930:IGM RESINS社製、αアミノアセトフェノン
(体質顔料)
・炭酸マグネシウム:ナイカイ塩業株式会社製炭酸マグネシウム
・炭酸カルシウム:ネオライト EG―290(竹原化学工業株式会社製)
・タルク:松村産業株式会社製、ハイフィラー5000PJ
[その他]
(シリカ)
・シリカ:ニップシールLP(東ソー・シリカ株式会社製)、親水性湿式シリカ
(重合禁止剤)
・Q-1301:N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム(富士フィルム和光純薬社製)
【0093】
得られたインキを、以下の方法により性能評価を行った。結果を表2に示す。
[分散性]
得られたインキとジトリメチロールプロパンテトラアクリレートを2:1の質量比でそれぞれ混合し、JIS K5600-2-5に従って分散粒子径測定器(グラインドメーター)で分散性を測定した。4、3が実用上問題ないレベルであると評価する。
4:粒子径が5.0ミクロン以下
3:粒子径が7.5ミクロン以下
2:粒子径が10.0ミクロン以下
1:粒子径が12.5ミクロン以下
【0094】
[流動性]
得られたインキを、25℃雰囲気下で60°に傾けた真鍮製の傾斜板の上に3g垂らし、インキの着地点から10分間に流動した距離(静置流動)を測定し流動性として評価した。5、4、3が実用上問題ないレベルであり、5、4が実用上好ましいレベルであると評価する。
5:静置流動が120mm以上である
4:静置流動が90mm以上、120mm未満である
3:静置流動が60mm以上、90mm未満である
2:静置流動が30mm以上、60mm未満である
1:静置流動が30mm未満である
【0095】
[硬化性]
得られたインキ組成物について、RIテスター(テスター産業株式会社製)4分割ロール、インキ量0.75mlの条件にて展色物(基材:非吸収原反)を作成した。その後アイグラフィックス社製紫外線硬化装置(160W/cm2 メタルハライドランプ)を用いてコンベア速度60m/minにて紫外線を照射し、印刷面を完全に乾燥させた。綿布を用い印刷面を擦り評価した。擦れが少ない程、硬化性が良好であると判断ができる。4、3が実用上問題ないレベルであると評価する。
4:印刷面への擦れがない
3:印刷面表層まで擦れる
2:印刷面の中間部まで擦れる
1:印刷面底部まで擦れる
【0096】
[網点の汚れ]
印刷試験は、小森コーポレーション社製LITHRONE26を用いて、一般的な絵柄、濃度にて以下の条件にて5000部連続印刷を実施した。印刷中は紙面の汚れを適時確認し、汚れを確認したら都度水ダイヤルを上げて湿し水の供給量を調整、稼働終了後の水ダイヤルの上がり幅を評価する。5、4、3が実用上問題ないレベルであり、5、4が実用上好ましいレベルであると評価する。
なお「水巾の下限」とは、正常な印刷が可能である湿し水の最低供給量を意味し、「水ダイヤル」とは、下記湿し水の供給量を調整するために、上記印刷機に備えられたダイヤルを意味する。
5:稼働終了後の水上がり幅が3未満である
4:稼働終了後の水上がり幅が5未満である
3:稼働終了後の水上がり幅が7未満である
2:稼働終了後の水上がり幅が9未満である
1:稼働終了後の水上がり幅が10以上である
(印刷条件)
印刷機 :LITHRONE26 (小森コーポレーション社製)
CTP版:富士フィルム株式会社製XP-F
用紙:王子製紙株式会社製ОKトップコート+
湿し水:水道水/PRESSMAX W-P1(FFGS社製)を、98/2の質量比率で混合したもの
印刷速度:10000枚/時
ランプ :LEDランプ(アイグラフィックス社製、出力100%、2灯使用)
チラー設定温度:25℃
水ダイヤル値:水巾下限より2高い値からスタート
【0097】
[耐ミスチング性]
上記の印刷試験時に印刷機の安全カバーの内側に白紙を張り付け、5000部通し後に白紙を取り出し、インキ飛散の程度を以下の基準に従い、3段階で評価した。3、2が実用上好ましい。
3:白紙の一部分に微量のインキミストが飛散している
2:白紙全面にインキミストが飛散している
1:白紙全面にベッタリとインキミストが飛散している
【表2】
【0098】
以上より、本発明の活性エネルギー線硬化型墨インキによって、中性カーボンブラックを用いても酸性カーボンブラックと同等のインキ分散性、流動性を有し、かつ、網点の汚れを軽減することができる活性エネルギー線硬化型墨インキを提供すること、並びに、これを用いた印刷物を提供することができることが分かった。