(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072395
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/098 20060101AFI20240521BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61M25/098
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183169
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】深澤 左興
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB16
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG34
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】管体の先端部の小径化および柔軟性を確保しつつ補強体とマーカーとの境界部の強度を大きくすることのできるカテーテルを提供する。
【解決手段】内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26を含む複数の素線25を互いに交差するように編組した補強体20と、を備える管体2を有するカテーテル1であって、管体2は、補強体20より先端側の内層10の外側に、補強体20を形成する放射線不透過性素線26が互いに交差することなく補強体20より小さいピッチで巻回されたマーカー部23を有するカテーテル1である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線を互いに交差するように編組した補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、
前記管体は、前記補強体より先端側の内層の外側に、前記補強体を形成する前記放射線不透過性素線が互いに交差することなく前記補強体より小さいピッチで巻回されたマーカー部を有するカテーテル。
【請求項2】
前記マーカー部は、前記放射線不透過性素線同士が密接するように巻回された密巻きコイルである請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記補強体は、先端面が周方向に沿って傾斜する螺旋状面である請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記放射線不透過性素線は、表面に絶縁被膜を有する請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記放射線不透過性素線は、前記補強体の同一巻き方向に2本以上設けられる請求項1または2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管などの管腔内で使用されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管に生じた病変に対し、放射線透視下で血管に経皮的にデバイスを挿入して診断や治療を行う血管内治療が行われている。血管内治療では、病変に薬剤やガイドワイヤを到達させるためのデバイスとして、カテーテルが使用されている。
【0003】
カテーテルは、細い血管の分岐や湾曲を通過して抹消まで到達する必要があるため、先端部の小径化と柔軟性の向上、ならびに高い押し込み性が求められている。また、カテーテルは、放射線透視下における血管内での位置を把握する必要があるため、先端部の高い視認性が求められている。
【0004】
カテーテルは、剛性を高くするため中間部に補強体を有する。また、カテーテルは、視認性を確保するため、先端部に放射線不透過性のマーカーを有する。特許文献1には、補強体としてコイルあるいは編組体を有し、マーカーとしてピッチの小さいコイルを有するカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のカテーテルは、補強体の先端よりも先端側にマーカーを配置している。マーカーが補強体の先端よりも先端側に配置されたカテーテルは、マーカーと補強体との境界部が樹脂層のみとなるため、境界部でのカテーテルの破断やキンクが生じやすくなる。マーカーは、補強体の先端外周部に重なるように配置することもできるが、このように構成したカテーテルは、マーカーが配置された部分の外径が大きくなり、かつ、剛性が高くなるため、抹消到達性が阻害される。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、管体の先端部の小径化および柔軟性を確保しつつ補強体とマーカーとの境界部の強度を大きくすることのできるカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する(1)カテーテルは、内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線を互いに交差するように編組した補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、前記管体は、前記補強体より先端側の内層の外側に、前記補強体を形成する前記放射線不透過性素線が互いに交差することなく前記補強体より小さいピッチで巻回されたマーカー部を有する。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したカテーテルは、マーカー部を形成する放射線不透過性素線が、補強体からマーカーまで連続して配置されている。これにより、カテーテルは、マーカーと補強体との境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテルの破断やキンクが生じにくい。また、マーカー部と補強体とは、互いに重ならないので、カテーテルは、先端部が小径かつ柔軟となる。さらに、マーカー部は、放射線不透過性素線が互いに交差することなく補強体より小さいピッチで巻回されて形成されている。これにより、カテーテルは、放射線透視下における高い視認性が得られる。したがって、カテーテルは、先端部の小径化および柔軟性を確保しつつ補強体とマーカーとの境界部の強度を大きくすることができる。
【0010】
(2)上記(1)のカテーテルにおいて、前記マーカー部は、前記放射線不透過性素線同士が密接するように巻回された密巻きコイルであってもよい。これにより、カテーテルは、放射線透視下におけるマーカー部の視認性をより向上させることができる。
【0011】
(3)上記(1)または(2)のカテーテルにおいて、前記補強体は、先端面が周方向に沿って傾斜する螺旋状面であってもよい。これにより、カテーテルは、コイル状に巻回されるマーカー部の基端面と補強体の先端面との隙間を小さくし、マーカーと補強体との境界部において急激な物性変化を生じにくくすることができる。
【0012】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのカテーテルにおいて、前記放射線不透過性素線は、表面に絶縁被膜を有してもよい。これにより、カテーテルは、補強体を編組した後、放射線不透過性素線以外の素線を電解加工により除去できるので、補強体およびマーカー部の製造を容易にすることができる。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテルにおいて、前記放射線不透過性素線は、前記補強体の同一巻き方向に2本以上設けられてもよい。これにより、カテーテルは、放射線透視下における管体全長の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態に係るカテーテルの全体図である。
【
図2】カテーテルの管体の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
【
図6】内層チューブに素線を巻き付ける編組機の概念的な構造図である。
【
図7】補強体の先端部において素線を切断する工程を説明する図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を、それぞれ表した図である。
【
図8】第1変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図9】第2変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図10】第3変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図11】放射線不透過性素線を2本とした場合の管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、カテーテルの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0016】
本明細書の説明では、自然状態(外力を付加せず、真っ直ぐな状態)でカテーテルが延びている方向を「長軸方向」とする。カテーテルの長軸方向を基準軸にした回転方向を「周方向」とする。また、カテーテルにおいて血管内に挿入される側を先端側とし、先端側と反対の端部側を基端側とする。また、先端(最先端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0017】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0018】
本実施形態に係るカテーテル1は、経皮的に血管内に挿入されて、血管内で治療や診断を行うために用いられるデバイスである。カテーテル1は、
図1に示すように、先端部および基端部を有する長尺な管体2と、管体2の基端に連結されるハブ3と、管体2およびハブ3の連結部位を囲む耐キンクプロテクタ4とを有している。
【0019】
図2に示すように、管体2は、可撓性を有する管状の部材であり、基端から先端にかけて内部にルーメン5が形成されている。ルーメン5は、カテーテル1の血管への挿入時に、ガイドワイヤが挿通される。また、ルーメン5は、造影剤や治療薬、塞栓物質、医療器具の通路として用いることができる。
【0020】
管体2の有効長は、特に限定されないが、例えば1300mm~1500mmである。なお、管体2の有効長は、血管やシース内へ挿入可能な部位の長さである。本実施形態において、有効長は、耐キンクプロテクタ4の最先端から管体2の最先端までの長さである。
【0021】
ハブ3は、管体2の基端部に、接着剤、熱融着または止具(図示せず)などにより液密に固着されている。ハブ3は、ルーメン5内へのガイドワイヤや医療器具の挿入口、ルーメン5内への造影剤や治療薬、塞栓物質の注入口として機能する。また、ハブ3は、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。
【0022】
ハブ3は、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体などの樹脂により形成される。
【0023】
耐キンクプロテクタ4は、管体2とハブ3との連結部位を囲むように設けられ、管体2とハブ3との連結部位における管体2のキンクを抑制する。耐キンクプロテクタ4は、天然ゴム、シリコーン樹脂などの弾性材料で形成される。
【0024】
図2、
図3に示すように、管体2は、内層10と、内層10の外側に配置される補強体20と、内層10および補強体20の外側に配置される外層30とを備えている。外層30の外表面は、親水性ポリマーなどの低摩擦材料がコーティングされていてもよい。
【0025】
内層10は、内部にルーメン5が形成される。内層10は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)などの低摩擦材料により形成される。
【0026】
外層30は、内層10および補強体20の外周を覆う管状の部材である。外層30は、先端から基端に向かって硬さが段階的に、または漸次的に変化する。
【0027】
外層30は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂などの高分子材料あるいはこれらの混合物などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で形成される。
【0028】
図2~4に示すように、補強体20は、内層10の外周に、複数の素線25を、隙間を有するように管状に編組して形成される。補強体20は、16本の素線25が編組されている。補強体20において、素線25は、他の素線25と交差するように網目状に編組されている。補強体20を構成する素線25は、16本のうち1本が放射線不透過性素線26である。放射線を透過する素線25は、ステンレス鋼などの金属線、樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維などにより形成される。放射線を透過しない放射線不透過性素線26は、金、白金、銀、イリジウム、タングステン、タンタル、またはこれらの合金からなる金属線や、硫酸バリウム、酸価ビスマスなどの放射線不透過性の粒子を含む樹脂繊維などにより形成される。
【0029】
補強体20は、編組ピッチが50μm以上500μm以下である。放射線不透過性素線26を含む素線25の断面形状は、円形、矩形などとすることができ、複数の形状を併用してもよい。素線25は、断面が円形の場合、外径が10μm以上100μm以下、より好ましくは30μm以上60μm以下である。素線25は、断面が矩形の場合、幅が30μm以上60μm以下、厚みが10μm以上20μm以下である。
【0030】
図5に示すように、管体2は、補強体20の先端側にマーカー部23を有している。マーカー部23は、補強体20を形成する素線25のうち、放射線不透過性素線26を補強体20よりも先端側の内層10の外側に巻回することによって形成されたコイル状の部分である。補強体20を形成する素線25のうち、マーカー部23を形成する放射線不透過性素線26は、補強体20の先端から管体2の先端側に延び、内層10の外側に巻回されてコイルを形成する。一方、マーカー部23を形成しない他の素線25は、補強体20の先端で終端する。これにより、放射線不透過性素線26は、補強体20からマーカー部23まで連続して設けられる。マーカー部23において、放射線不透過性素線26は、互いに交差することなく、補強体20のピッチP1より小さいピッチP2で巻回されることで、放射線不透過性素線26同士が密接する密巻きコイルを形成している。
【0031】
カテーテル1は、マーカー部23と補強体20との境界部において、放射線不透過性素線26が連続している。これにより、カテーテル1は、マーカー部23と補強体20との境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテル1の破断やキンクを生じにくくなる。また、マーカー部23は、補強体20より小さいピッチの密巻きコイルであるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。
【0032】
マーカー部23は、マーカー部23の基端と補強体20の先端が隣接するように配置されている。マーカー部23と補強体20とは、互いに重ならず、同層に配置されている。これにより、カテーテル1は、先端部が小径かつ柔軟となる。
【0033】
補強体20の除去端部を結ぶ先端面20aは、周方向に沿って傾斜する螺旋状面である。このため、カテーテル1は、放射線不透過性素線26がコイル状に巻回されるマーカー部23の基端側端面と補強体20の先端面との隙間を小さくすることができる。なお、補強体20の先端面20aは、周方向に沿って傾斜しない垂直面であってもよい。
【0034】
次に、補強体20およびマーカー部23の製造方法について説明する。まず、内層10を管状にして内層チューブ45を形成し、内層チューブ45と放射線不透過性素線26を含む素線25を編組機40にセットする。
【0035】
図6に示すように、補強体20は、編組機40によって内層チューブ45の外表面に編組される。編組機40は、リング状で回転中心軸が共通する第1回転体41と第2回転体42とを有し、第1回転体41と第2回転体42の回転中心軸に沿って内層チューブ45を送出できるように構成されている。内層チューブ45は、内層10が管状に形成された状態のチューブである。第1回転体41と第2回転体42は、それぞれ周方向に沿って8つずつのボビン43を有している。16本の素線25は、それぞれボビン43に保持されている。第1回転体41と第2回転体42は、互いに逆方向に回転し、第1回転体41と第2回転体42の各ボビン43は、内層チューブ45に対して近づく動作と離れる動作を交互に繰り返す。これにより、素線25は、送出される内層チューブ45の外表面に他の素線25と交差するように編組され、補強体20を形成する。放射線不透過性素線26は、16個のボビン43のうち1つのボビン43に保持されており、内層チューブ45の外表面に編組される補強体20は、放射線不透過性素線26を含むことができる。
【0036】
内層チューブ45の外表面に編組された補強体20は、内層チューブ45の先端部において放射線不透過性素線26以外の素線25が除去される。素線25は、端部が径方向外側に広がろうとするため、放射線不透過性素線26以外の素線25を除去する前に、補強体20の端部が広がらないようにする処理が必要となる。補強体20の端部が広がらないようにする処理は、
図7(a)において一点鎖線で囲んだ補強体20の先端領域Tに対して、熱を加えて焼鈍することで行われる。これによって、素線25は、弾性を失い、補強体20の端部が広がらないようにすることができる。また、補強体20の端部が広がらないようにする処理は、先端領域Tへの接着剤の塗布であってもよい。これにより、補強体20は、端部が広がらないようにすることができる。
【0037】
補強体20の端部が広がらないようにする処理は、
図8に示すように、補強体20の端部より基端側への外層30の被覆であってもよい。補強体20が外層30で被覆されていることで、補強体20は、端部が広がらないようにすることができる。
【0038】
補強体20の端部が広がらないようにする処理は、
図9に示すように、補強体20の端部において、切断した素線25同士を溶接により接合するようにしてもよい。溶接点Rは、素線25同士が重なり合う位置に形成される。素線25同士が溶接により接合されていることで、補強体20は、端部が広がらないようにすることができる。
【0039】
補強体20の端部が広がらないようにする処理を行ったら、
図7(b)に示すように、放射線不透過性素線26以外の素線25の補強体20より先端側を除去する。素線25は、はさみやカッターなどで切断して除去することができる。また、素線25は、切断する箇所を繰り返し折り曲げることで金属疲労を生じさせ、除去することができる。また、素線25は、切断する箇所に対し局所的に電流を流して溶断することで、除去することができる。
【0040】
放射線不透過性素線26以外の素線25を除去する方法は、補強体20の端部を電解加工するものであってもよい。
図10に示すように、電解加工装置50は、電解液53を貯留する電解槽51と、補強体20を保持する保持部52とを有している。補強体20のうち放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有している。放射線不透過性素線26以外の素線25は、表面に絶縁被膜を有していない。この補強体20を電解液53に浸漬し、補強体20を陰極とし、電解液53内の電極(図示しない)を陽極として、電解液53に通電することで、放射線不透過性素線26以外の素線25の電解液53に浸漬された部分が除去される。放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有しているため、通電されず、除去されない。これにより、放射線不透過性素線26以外の素線25のみ除去することができる。なお、放射線不透過性素線26以外の素線25の除去方法はこれら以外であってもよい。
【0041】
放射線不透過性素線26以外の素線25を除去したら、残った放射線不透過性素線26を補強体20より先端側の内層チューブ45の外表面にコイル状に巻回する。これにより、マーカー部23を形成することができる。補強体20とマーカー部23を形成したら、補強体20およびマーカー部23の外側を外層30で被覆する。これにより、管体2を形成することができる。
【0042】
マーカー部23を形成する放射線不透過性素線26は、2本以上であってもよい。
図11に示すように、補強体20は、同方向に巻回された第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27を有してもよい。この場合、第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27は、それぞれ補強体20の先端側に連続して延び、マーカー部23を形成する。マーカー部23は、第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27とが、交互に巻かれた密巻きコイルである。
【0043】
以上のように、本実施形態に係る(1)カテーテル1は、内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26を含む複数の素線25を互いに交差するように編組した補強体20と、を備える管体2を有するカテーテル1であって、管体2は、補強体20より先端側の内層10の外側に、補強体20を形成する放射線不透過性素線26が互いに交差することなく補強体20より小さいピッチで巻回されたマーカー部23を有する。このように構成したカテーテル1は、マーカー部23を形成する放射線不透過性素線26は、補強体20からマーカーまで連続して配置されている。これにより、カテーテル1は、マーカーと補強体20との境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテル1の破断やキンクが生じにくい。また、マーカー部23と補強体20とは、互いに重ならないので、カテーテル1は、先端部が小径かつ柔軟となる。さらに、マーカー部23は、放射線不透過性素線26が互いに交差することなく補強体20より小さいピッチで巻回されて形成されている。これにより、カテーテル1は、放射線透視下における高い視認性が得られる。したがって、カテーテル1は、先端部の小径化および柔軟性を確保しつつ補強体20とマーカーとの境界部の強度を大きくすることができる。
【0044】
(2)上記(1)のカテーテル1において、マーカー部23は、放射線不透過性素線26同士が密接するように巻回された密巻きコイルであってもよい。これにより、カテーテル1は、放射線透視下におけるマーカー部23の視認性をより向上させることができる。
【0045】
(3)上記(1)または(2)のカテーテル1において、補強体20は、先端面が周方向に沿って傾斜する螺旋状面であってもよい。これにより、カテーテル1は、コイル状に巻回されるマーカー部23の基端面と補強体20の先端面との隙間を小さくし、マーカーと補強体20との境界部において急激な物性変化を生じにくくすることができる。
【0046】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのカテーテル1において、放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有してもよい。これにより、カテーテル1は、補強体20を編組した後、放射線不透過性素線26以外の素線25を電解加工により除去できるので、補強体20およびマーカー部23の製造を容易にすることができる。
【0047】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテル1において、放射線不透過性素線26は、補強体20の同一巻き方向に2本以上設けられてもよい。これにより、カテーテル1は、放射線透視下における管体2全長の視認性を向上させることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 カテーテル
2 管体
3 ハブ
4 耐キンクプロテクタ
5 ルーメン
10 内層
20 補強体
21 マーカー部
22 素線
23 放射線不透過性素線
24 放射線不透過性素線
30 外層
40 編組機
41 第1回転体
42 第2回転体
43 ボビン
45 内層チューブ
50 電解加工装置
51 電解槽
52 保持部
53 電解液