(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072396
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/098 20060101AFI20240521BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61M25/098
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183170
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】深澤 左興
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB16
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG22
4C267GG23
4C267GG34
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】補強体の異なる構造の境界部において破断やキンクを生じにくく、また、放射線透視下における視認性を有するカテーテルを提供する。
【解決手段】内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26を含む複数の素線25で形成された補強体20と、を備える管体2を有するカテーテル1であって、補強体20は、管体2の基端側に配置され、複数の素線25を互いに交差するように編組した編組部21と、編組部21より先端側で、編組部21を形成する放射線不透過性素線26同士が離隔するように巻回されたコイル部22と、コイル部22より先端側で、コイル部22を形成する放射線不透過性素線26同士が密接するように巻回されたマーカー部23と、を有するカテーテル1である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線で形成された補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、
前記補強体は、前記管体の基端側に配置され、複数の前記素線を互いに交差するように編組した編組部と、前記編組部より先端側で、前記編組部を形成する前記放射線不透過性素線同士が離隔するように巻回されたコイル部と、前記コイル部より先端側で、前記コイル部を形成する前記放射線不透過性素線同士が密接するように巻回されたマーカー部と、を有するカテーテル。
【請求項2】
前記コイル部は、基端側の前記放射線不透過性素線のピッチが先端側の前記放射線不透過性素線のピッチより大きい請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記外層は、長さ方向に沿って剛性が変化する剛性境界部を有する請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記放射線不透過性素線は、表面に絶縁被膜を有する請求項1または2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記放射線不透過性素線は、前記補強体の同一巻き方向に2本以上設けられる請求項1または2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管などの管腔内で使用されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管に生じた病変に対し、放射線透視下で血管に経皮的にデバイスを挿入して診断や治療を行う血管内治療が行われている。血管内治療では、病変に薬剤やガイドワイヤを到達させるためのデバイスとして、カテーテルが使用されている。
【0003】
カテーテルは、細い血管の分岐や湾曲を通過して抹消まで到達する必要があるため、先端部の小径化と柔軟性の向上、ならびに高い押し込み性が求められている。また、カテーテルは、放射線透視下における血管内での位置を把握する必要があるため、先端部の高い視認性が求められている。
【0004】
カテーテルは、剛性を高くするため中間部に補強体を有する。補強体は、主に素線を編組したものと、素線をコイル状に巻回したものがある。素線を編組した補強体は、トルク伝達性、押し込み性、破断強度、および剛性が高い点において優れており、ガイディングカテーテルの内部や太い血管などにカテーテルを挿入するのに適している。一方、素線をコイル状に巻回した補強体は、柔軟性が高く、外径が小さい点において優れており、細い血管や屈曲する血管、および分岐が急な血管などにカテーテルを挿入するのに適している。術者は、症例に応じて最適な補強体を有するカテーテルを選択する。
【0005】
特許文献1には、基端側に素線を編組した補強体を有し、先端側に素線をコイル状に巻回した補強体を有するカテーテルが開示されている。このようなカテーテルは、長さ方向に沿って異なる構造の補強体を有しているため、1本のカテーテルで様々な症例に対応することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長さ方向に沿って異なる構造の補強体を有するカテーテルは、補強体の異なる構造の境界部において、急激な物性変化を有する可能性がある。急激な物性変化を有するカテーテルは、境界部での破断やキンクを生じやすい。また、カテーテルは、放射線透視下における視認性のために、放射線不透過性の材料で形成されたマーカー部を別途設ける必要がある。
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、補強体の異なる構造の境界部において破断やキンクを生じにくく、また、放射線透視下における視認性を有するカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成する(1)カテーテルは、内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線で形成された補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、前記補強体は、前記管体の基端側に配置され、複数の前記素線を互いに交差するように編組した編組部と、前記編組部より先端側で、前記編組部を形成する前記放射線不透過性素線同士が離隔するように巻回されたコイル部と、前記コイル部より先端側で、前記コイル部を形成する前記放射線不透過性素線同士が密接するように巻回されたマーカー部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
上記のように構成したカテーテルは、編組部とコイル部との間の境界部と、コイル部とマーカー部との間の境界部とのそれぞれにおいて、放射線不透過性素線が連続している。このため、カテーテルは、境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテルの破断やキンクを生じにくい。また、カテーテルは、マーカー部が放射線不透過性素線で形成されたコイル部より小さいピッチの密巻きコイルであるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。
【0011】
(2)上記(1)のカテーテルにおいて、前記コイル部は、基端側の前記放射線不透過性素線のピッチが先端側の前記放射線不透過性素線のピッチより大きくてもよい。これにより、カテーテルは、管体の剛性を長さ方向に沿って多段階化することができ、長さ方向に沿う管体の急激な物性変化を緩和できる。
【0012】
(3)上記(1)または(2)のカテーテルにおいて、前記外層は、長さ方向に沿って剛性が変化する剛性境界部を有してもよい。これにより、カテーテルは、管体の剛性を長さ方向に沿って多段階化することができ、長さ方向に沿う管体の急激な物性変化を緩和できる。
【0013】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのカテーテルにおいて、前記放射線不透過性素線は、表面に絶縁被膜を有してもよい。これにより、カテーテルは、補強体を編組した後、放射線不透過性素線以外の素線を電解加工により除去できるので、補強体およびマーカー部の製造を容易にすることができる。
【0014】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテルにおいて、前記放射線不透過性素線は、前記補強体の同一巻き方向に2本以上設けられてもよい。これにより、カテーテルは、放射線透視下における管体全長の視認性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るカテーテルの全体図である。
【
図2】カテーテルの管体の一部を拡大して示す断面図である。
【
図5】管体の先端付近および中間部における補強体の拡大正面図である。
【
図6】内層チューブに素線を巻き付ける編組機の概念的な構造図である。
【
図7】編組部の先端部において素線を切断する工程を説明する図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を、それぞれ表した図である。
【
図8】第1変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図9】第2変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図10】第3変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
【
図11】管体の先端付近および中間部における第1変形例に係る補強体の拡大正面図である。
【
図12】管体の先端付近および中間部における第2変形例に係る補強体の拡大正面図である。
【
図13】管体の先端付近および中間部における第3変形例に係る補強体の拡大正面図である。
【
図14】管体の先端付近および中間部における第4変形例に係る補強体の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、カテーテルの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0017】
本明細書の説明では、自然状態(外力を付加せず、真っ直ぐな状態)でカテーテルが延びている方向を「長軸方向」とする。カテーテルの長軸方向を基準軸にした回転方向を「周方向」とする。また、カテーテルにおいて血管内に挿入される側を先端側とし、先端側と反対の端部側を基端側とする。また、先端(最先端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0018】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0019】
本実施形態に係るカテーテル1は、経皮的に血管内に挿入されて、血管内で治療や診断を行うために用いられるデバイスである。カテーテル1は、
図1に示すように、先端部および基端部を有する長尺な管体2と、管体2の基端に連結されるハブ3と、管体2およびハブ3の連結部位を囲む耐キンクプロテクタ4とを有している。
【0020】
図2に示すように、管体2は、可撓性を有する管状の部材であり、基端から先端にかけて内部にルーメン5が形成されている。ルーメン5は、カテーテル1の血管への挿入時に、ガイドワイヤが挿通される。また、ルーメン5は、造影剤や治療薬、塞栓物質、医療器具の通路として用いることができる。
【0021】
管体2の有効長は、特に限定されないが、例えば1300mm~1500mmである。なお、管体2の有効長は、血管やシース内へ挿入可能な部位の長さである。本実施形態において、有効長は、耐キンクプロテクタ4の最先端から管体2の最先端までの長さである。
【0022】
ハブ3は、管体2の基端部に、接着剤、熱融着または止具(図示せず)などにより液密に固着されている。ハブ3は、ルーメン5内へのガイドワイヤや医療器具の挿入口、ルーメン5内への造影剤や治療薬、塞栓物質の注入口として機能する。また、ハブ3は、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。
【0023】
ハブ3は、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体などの樹脂により形成される。
【0024】
耐キンクプロテクタ4は、管体2とハブ3との連結部位を囲むように設けられ、管体2とハブ3との連結部位における管体2のキンクを抑制する。耐キンクプロテクタ4は、天然ゴム、シリコーン樹脂などの弾性材料で形成される。
【0025】
図2、
図3に示すように、管体2は、内層10と、内層10の外側に配置される補強体20と、内層10および補強体20の外側に配置される外層30とを備えている。外層30の外表面は、親水性ポリマーなどの低摩擦材料がコーティングされていてもよい。
【0026】
内層10は、内部にルーメン5が形成される。内層10は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)などの低摩擦材料により形成される。
【0027】
外層30は、内層10および補強体20の外周を覆う管状の部材である。外層30は、先端から基端に向かって硬さが段階的に、または漸次的に変化する。
【0028】
外層30は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂などの高分子材料あるいはこれらの混合物などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で形成される。
【0029】
図2~4に示すように、補強体20は、内層10の外周に、複数の素線25が隙間を有するように管状に編組された編組部21を有している。編組部21は、管体2の基端側に配置される。編組部21は、16本の素線25が編組されている。編組部21において、素線25は他の素線25と交差するように網目状に編組されている。編組部21を構成する素線25は、16本のうち1本が放射線不透過性素線26である。放射線を透過する素線25は、ステンレス鋼などの金属線、樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維などにより形成される。放射線を透過しない放射線不透過性素線26は、金、白金、銀、イリジウム、タングステン、タンタル、またはこれらの合金からなる金属線や、硫酸バリウム、酸価ビスマスなどの放射線不透過性の粒子を含む樹脂繊維などにより形成される。
【0030】
編組部21は、編組ピッチが50μm以上500μm以下である。放射線不透過性素線26を含む素線25の断面形状は、円形、矩形などとすることができ、複数の形状を併用してもよい。素線25は、断面が円形の場合、外径が10μm以上100μm以下、より好ましくは30μm以上60μm以下である。素線25は、断面が矩形の場合、幅が30μm以上60μm以下、厚みが10μm以上20μm以下である。
【0031】
図5に示すように、補強体20は、編組部21より先端側にコイル部22を有している。コイル部22は、編組部21を形成する素線25のうち、放射線不透過性素線26を編組部21よりも先端側の内層10の外側に巻回することによって形成される。コイル部22は、放射線不透過性素線26同士が離隔するように巻回され、疎巻きコイルを形成している。コイル部22において、放射線不透過性素線26は、互いに交差することなく、編組部21のピッチP1より大きいピッチP2で巻回されることで、疎巻きコイルを形成している。コイル部22は、放射線不透過性素線26のピッチP2が○○以上○○以下である。
【0032】
補強体20は、コイル部22よりも先端側にマーカー部23を有している。マーカー部23は、コイル部22を形成する素線25のうち、放射線不透過性素線26をコイル部22のピッチP2より小さいピッチP3で互いに密接するように巻回して形成される。マーカー部23において、放射性不透過性素線26は、互いに交差することなく巻回され、密巻きコイルを形成している。編組部21を形成する放射線不透過性素線26以外の素線25は、編組部21の先端で終端する。放射線不透過性素線26は、編組部21からマーカー部23まで連続して設けられる。
【0033】
補強体20は、編組部21とコイル部22との境界部の位置が、管体2の先端から10mm以上300mm以下である。管体2は、基端側が編組部21を有するので、トルク伝達性、押し込み性、剛性が高い。また、管体2は、先端側がコイル部22を有するので、柔軟性が高く、外径が小さい。このため、カテーテル1は、これらの性質を併せ持つことができる。
【0034】
カテーテル1は、編組部21とコイル部22との境界部と、コイル部22とマーカー部23との境界部において、放射線不透過性素線26が連続している。そのため、各境界部が樹脂のみとなることがなく、各境界部でのカテーテル1の破断やキンクを生じにくい。また、マーカー部23は、放射線不透過性素線26で形成されたコイル部22より小さいピッチの密巻きコイルであるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。
【0035】
編組部21の除去端部を結ぶ先端面21aは、周方向に沿って傾斜する螺旋状面である。このため、補強体20は、放射線不透過性素線26がコイル状に巻回されるコイル部22の基端側端面と編組部21の先端面21aとの隙間を小さくすることができる。なお、編組部21の先端面21aは、周方向に沿って傾斜しない垂直面であってもよい。
【0036】
次に、補強体20の製造方法について説明する。まず、内層10を管状にして内層チューブ45を形成し、内層チューブ45と放射線不透過性素線26を含む素線25を編組機40にセットする。
【0037】
図6に示すように、補強体20の編組部21は、編組機40によって内層チューブ45の外表面に編組される。編組機40は、リング状で回転中心軸が共通する第1回転体41と第2回転体42とを有し、第1回転体41と第2回転体42の回転中心軸に沿って内層チューブ45を送出できるように構成されている。内層チューブ45は、内層10が管状に形成された状態のチューブである。第1回転体41と第2回転体42は、それぞれ周方向に沿って8つずつのボビン43を有している。16本の素線25は、それぞれボビン43に保持されている。第1回転体41と第2回転体42は、互いに逆方向に回転し、第1回転体41と第2回転体42の各ボビン43は、内層チューブ45に対して近づく動作と離れる動作を交互に繰り返す。これにより、素線25は、送出される内層チューブ45の外表面に他の素線25と交差するように編組され、編組部21を形成する。放射線不透過性素線26は、16個のボビン43のうち1つのボビン43に保持されており、内層チューブ45の外表面に編組される編組部21は、放射線不透過性素線26を含むことができる。
【0038】
内層チューブ45の外表面に編組された編組部21は、内層チューブ45の先端部において放射線不透過性素線26以外の素線25が除去される。素線25は、端部が径方向外側に広がろうとするため、放射線不透過性素線26以外の素線25を除去する前に、編組部21の端部が広がらないようにする処理が必要となる。編組部21の端部が広がらないようにする処理は、
図7(a)において一点鎖線で囲んだ編組部21の先端領域Tに対して、熱を加えて焼鈍することで行われる。これによって、素線25は、弾性を失い、編組部21の端部が広がらないようにすることができる。また、編組部21の端部が広がらないようにする処理は、先端領域Tへの接着剤の塗布であってもよい。これにより、編組部21は、端部が広がらないようにすることができる。
【0039】
編組部21の端部が広がらないようにする処理は、
図8に示すように、編組部21の端部より基端側への外層30の被覆であってもよい。編組部21が外層30で被覆されていることで、編組部21は、端部が広がらないようにすることができる。
【0040】
編組部21の端部が広がらないようにする処理は、
図9に示すように、編組部21の端部において、切断した素線25同士を溶接により接合するようにしてもよい。溶接点Rは、素線25同士が重なり合う位置に形成される。素線25同士が溶接により接合されていることで、編組部21は、端部が広がらないようにすることができる。
【0041】
編組部21の端部が広がらないようにする処理を行ったら、
図7(b)に示すように、放射線不透過性素線26以外の素線25の編組部21より先端側を除去する。素線25は、はさみやカッターなどで切断して除去することができる。また、素線25は、切断する箇所を繰り返し折り曲げることで金属疲労を生じさせ、除去することができる。また、素線25は、切断する箇所に対し局所的に電流を流して溶断することで、除去することができる。
【0042】
放射線不透過性素線26以外の素線25を除去する方法は、編組部21の端部を電解加工するものであってもよい。
図10に示すように、電解加工装置50は、電解液53を貯留する電解槽51と、補強体20を保持する保持部52とを有している。補強体20のうち、放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有している。放射線不透過性素線26以外の素線25は、表面に絶縁被膜を有していない。この編組部21の先端部を電解液53に浸漬し、補強体20を陰極とし、電解液53内の電極(図示しない)を陽極として、電解液53に通電することで、放射線不透過性素線26以外の素線25の電解液53に浸漬された部分が除去される。放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有しているため、通電されず、除去されない。これにより、放射線不透過性素線26以外の素線25のみ除去することができる。なお、放射線不透過性素線26以外の素線25の除去方法はこれら以外であってもよい。
【0043】
放射線不透過性素線26以外の素線25を除去したら、残った放射線不透過性素線26を編組部21より先端側の内層チューブ45の外表面にピッチP2で巻回し、コイル部22を形成する。コイル部22を形成したら、放射線不透過性素線26をコイル部22より先端側の内層チューブ45の外表面にピッチP3で巻回し、マーカー部23を形成する。補強体20の編組部21とコイル部22およびマーカー部23を形成したら、補強体20の外側を外層30で被覆する。これにより、管体2を形成することができる。
【0044】
カテーテル1の変形例について説明する。外層30は、長さ方向に沿って剛性が異なる複数の領域を有していてもよい。
図11に示すように、外層30は、編組部21を覆う第1領域30aと、コイル部22の基端側の部分を覆う第2領域30bと、コイル部22の先端側の部分を覆う第3領域30cとを有している。第1領域30aは、中程度の剛性を有する。第2領域30bは、第1領域30aより剛性が高い。第3領域30cは、第2領域30bより剛性が低い。外層30は、第1領域30aと第2領域30bとの間に第1剛性境界部32を有し、第2領域30bと第3領域30cとの間に第2剛性境界部33を有する。第1剛性境界部32は、編組部21とコイル部22との境界部に位置する。第2剛性境界部33は、第1剛性境界部32より先端側に位置する。
【0045】
管体2の剛性は、補強体20の剛性と外層30の剛性によって定まる。外層30の第1領域30aにおける管体2の剛性は、高剛性である補強体20の編組部21と、中程度の剛性である外層30の第1領域30aにより、高くなる。外層30の第2領域30bにおける管体2の剛性は、編組部21と比較して低剛性である補強体20のコイル部22と、高剛性である外層30の第2領域30bにより、中程度となる。外層30の第3領域30cにおける管体2の剛性は、編組部21と比較して低剛性である補強体20のコイル部22と、低剛性である外層30の第3領域30cにより、低剛性となる。このように、カテーテル1は、外層30が剛性の異なる複数の領域を有していることで、管体2の長さ方向に沿って剛性を多段階に変化させることができる。
【0046】
第1剛性境界部32は、編組部21とコイル部22との境界部以外の位置にあってもよい。
図12に示すように、外層30は、編組部21とコイル部22との境界部より基端側に第1剛性境界部32を有している。外層30は、コイル部22の部分に第2剛性境界部33を有している。外層30は、第1剛性境界部32より基端側の第1領域30aと、第1剛性境界部32から第2剛性境界部33までの第2領域30bと、第2剛性境界部33より先端側の第3領域30cとを有している。第1領域30aは、剛性が高い。第2領域30bは、第1領域30aより剛性が低い。第3領域30cは、第2領域30bよりさらに剛性が低い。
【0047】
外層30の第1領域30aにおける管体2の剛性は、高剛性である補強体20の編組部21と、高剛性である外層30の第1領域30aにより、高くなる。外層30の第2領域30bのうち、補強体20が編組部21である部分における管体2の剛性は、高剛性である補強体20の編組部21と、第1領域30aと比較して低剛性である外層30の第2領域30bにより、第1領域30aよりは低くなる。外層30の第2領域30bのうち、補強体20がコイル部22である部分における管体2の剛性は、補強体20が編組部21と比較して低剛性であるコイル部22であることから、外層30の第2領域30bのうち、補強体20が編組部21である部分に比べて低くなる。外層30の第3領域30cにおける管体2の剛性は、補強体20が低剛性であるコイル部22であり、外層30の第3領域30cの剛性が第2領域30bより低いことから、さらに低くなる。このように、カテーテル1は、編組部21とコイル部22との境界部以外の位置に第1剛性境界部32を有することで、編組部21の部分における剛性変化をより多段階化することができる。
【0048】
コイル部22は、長さ方向に沿ってピッチが変化してもよい。
図13に示すように、コイル部22は、基端側のピッチP4が先端側のピッチP5より小さい。このように、カテーテル10は、コイル部22のピッチが長さ方向に沿って変化することで、長さ方向に沿う剛性変化を多段階化することができる。
【0049】
コイル部22およびマーカー部23を形成する放射線不透過性素線26は、2本以上であってもよい。
図14に示すように、補強体20は、同方向に巻回された第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27を有してもよい。この場合、第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27は、それぞれ編組部21の先端側に連続して延び、コイル部22とマーカー部23を形成する。コイル部22は、第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27とが、交互に巻かれた疎巻きコイルである。マーカー部23は、第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27とが、交互に巻かれた密巻きコイルである。
【0050】
以上のように、本実施形態に係る(1)カテーテル1は、内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26を含む複数の素線25で形成された補強体20と、を備える管体2を有するカテーテル1であって、補強体20は、管体2の基端側に配置され、複数の素線25を互いに交差するように編組した編組部21と、編組部21より先端側で、編組部21を形成する放射線不透過性素線26同士が離隔するように巻回されたコイル部22と、コイル部22より先端側で、コイル部22を形成する放射線不透過性素線26同士が密接するように巻回されたマーカー部23と、を有する。このように構成したカテーテル1は、編組部21とコイル部22との間の境界部と、コイル部22とマーカー部23との間の境界部とのそれぞれにおいて、放射線不透過性素線26が連続している。これにより、カテーテル1は、境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテル1の破断やキンクを生じにくい。また、カテーテル1は、マーカー部23が放射線不透過性素線26で形成されたコイル部22より小さいピッチの密巻きコイルであるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。
【0051】
(2)上記(1)のカテーテル1において、コイル部22は、基端側の放射線不透過性素線26のピッチが先端側の放射線不透過性素線26のピッチより大きくてもよい。これにより、カテーテル1は、管体2の剛性を長さ方向に沿って多段階化することができ、長さ方向に沿う管体2の急激な物性変化を緩和できる。
【0052】
(3)上記(1)または(2)のカテーテル1において、外層30は、長さ方向に沿って剛性が変化する剛性境界部32を有してもよい。これにより、カテーテル1は、管体2の剛性を長さ方向に沿って多段階化することができ、長さ方向に沿う管体2の急激な物性変化を緩和できる。
【0053】
(4)上記(1)~(3)のいずれかのカテーテル1において、放射線不透過性素線26は、表面に絶縁被膜を有してもよい。これにより、カテーテル1は、補強体20を編組した後、放射線不透過性素線26以外の素線25を電解加工により除去できるので、補強体20およびマーカー部23の製造を容易にすることができる。
【0054】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテル1において、放射線不透過性素線26は、補強体20の同一巻き方向に2本以上設けられてもよい。これにより、カテーテル1は、放射線透視下における管体2全長の視認性を向上させることができる。
【0055】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 カテーテル
2 管体
3 ハブ
4 耐キンクプロテクタ
5 ルーメン
10 内層
20 補強体
21 編組部
22 コイル部
23 マーカー部
25 素線
26 放射線不透過性素線
27 放射線不透過性素線
30 外層
30a 第1領域
30b 第2領域
30c 第3領域
32 第1剛性境界部
33 第2剛性境界部
40 編組機
41 第1回転体
42 第2回転体
43 ボビン
45 内層チューブ
50 電解加工装置
51 電解槽
52 保持部
53 電解液