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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072397
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/098 20060101AFI20240521BHJP
   A61M 25/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
A61M25/098
A61M25/00 620
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183171
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141829
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 牧人
(74)【代理人】
【識別番号】100123663
【弁理士】
【氏名又は名称】広川 浩司
(72)【発明者】
【氏名】栗田 朋香
(72)【発明者】
【氏名】深澤 左興
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA04
4C267BB02
4C267BB06
4C267BB13
4C267BB16
4C267BB43
4C267BB63
4C267CC08
4C267GG04
4C267GG05
4C267GG06
4C267GG07
4C267GG08
4C267GG09
4C267GG10
4C267GG22
4C267GG23
4C267HH04
(57)【要約】
【課題】放射線透視下における先端部の視認性が高く、抹消到達性の高いカテーテルを提供する。
【解決手段】内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26、27を含む複数の素線25を編組した補強体20と、を備える管体を有するカテーテル1であって、管体は、補強体20よりも先端側に、放射線不透過性素線26、27を含む少なくとも2本の素線25を並行させた状態でコイル状に巻回した多条コイルを含むマーカー部23を有し、マーカー部23は、素線25のピッチ角が補強体20における素線25のピッチ角より小さいカテーテル1である。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線を編組した補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、
前記管体は、前記補強体よりも先端側に、前記放射線不透過性素線を含む少なくとも2本の前記素線を並行させた状態でコイル状に巻回した多条コイルを含むマーカー部を有し、
前記マーカー部は、前記素線のピッチ角が前記補強体における前記素線のピッチ角より小さいカテーテル。
【請求項2】
前記マーカー部は、前記管体の基端から先端に向かうにつれて、当該マーカー部を形成する前記素線の本数が減少する請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記マーカー部は、当該マーカー部を形成する前記素線同士が密接するように巻回された密巻きコイルである請求項2に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記マーカー部は、それぞれの前記素線のピッチが前記管体の長さ方向に沿って一定である請求項2に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記マーカー部を形成する前記素線は、前記補強体の先端において、前記管体の周方向に沿って等間隔に配置されている請求項1~4のいずれか1項に記載のカテーテル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管などの管腔内で使用されるカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管に生じた病変に対し、放射線透視下で血管に経皮的にデバイスを挿入して診断や治療を行う血管内治療が行われている。血管内治療では、病変に薬剤やガイドワイヤを到達させるためのデバイスとして、カテーテルが使用されている。
【0003】
カテーテルは、細い血管の分岐や湾曲を通過して抹消まで到達する必要があるため、先端部の小径化と柔軟性の向上、ならびに高い押し込み性が求められている。また、カテーテルは、放射線透視下における血管内での位置を把握する必要があるため、先端部の高い視認性が求められている。
【0004】
特許文献1には、編組された線状体からなる補強層の最先端上に、放射線不透過性金属素線を巻回して形成したマーカーを備えたカテーテルが開示されている。特許文献2には、編組された金属素線からなる補強層の先方に隣接させて放射線不透過性素線を巻回することにより形成されたマーカーを備えたカテーテルが開示されている。特許文献3には、少なくとも1本の素線が放射線不透過性である複数の素線が巻回された編組を有し、先端部で編組のピッチを小さくしてマーカー編組部を形成したカテーテルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-229160号公報
【特許文献2】特開2006-218085号公報
【特許文献3】特開2012-196275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マーカーが補強層上に配置されたカテーテルは、マーカーが配置された部分の外径が大きくなり、かつ、剛性が高くなるため、抹消到達性が阻害される。一方で、マーカーが補強層よりも先端側に配置されたカテーテルは、マーカーと補強層との境界部が樹脂層のみとなるため、境界部でのカテーテルの破断やキンクが生じやすくなる。また、素線を編組して形成されたマーカーを有するカテーテルは、コイル状のマーカーと比較して剛性が高くなる。素線を編組して形成されたマーカーは、マーカーに含まれる素線全体に対して放射線不透過性の素線が占める割合が小さいため、コイル状のマーカーと比較して放射線透視下における視認性が劣る。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、放射線透視下における先端部の視認性が高く、抹消到達性の高いカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する(1)カテーテルは、内層と、外層と、前記内層の外側に配置され放射線不透過性素線を含む複数の素線を編組した補強体と、を備える管体を有するカテーテルであって、前記管体は、前記補強体よりも先端側に、前記放射線不透過性素線を含む少なくとも2本の前記素線を並行させた状態でコイル状に巻回した多条コイルを含むマーカー部を有し、前記マーカー部は、前記素線のピッチ角が前記補強体における前記素線のピッチ角より小さい。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成したカテーテルは、マーカー部がコイル状であるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。また、マーカー部と補強体とは、互いに重ならず、同層に配置される。これにより、カテーテルは、先端部が小径かつ柔軟となる。さらに、マーカー部を形成する放射線不透過性素線は、補強体からマーカー部まで連続して配置されている。これにより、カテーテルは、マーカー部と補強体との境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテルの破断やキンクが生じにくい。以上のように、カテーテルは、放射線透視下における先端部の高い視認性と、高い抹消到達性を得ることができる。
【0010】
(2)上記(1)のカテーテルにおいて、前記マーカー部は、前記管体の基端から先端に向かうにつれて、当該マーカー部を形成する前記素線の本数が減少するようにしてもよい。これにより、マーカー部は、基端から先端に向かって柔軟性が増加するため、カテーテルの長軸方向に沿う剛性を滑らかに移行できる。
【0011】
(3)上記(2)のカテーテルにおいて、前記マーカー部は、当該マーカー部を形成する前記素線同士が密接するように巻回された密巻きコイルであってもよい。これにより、マーカー部は、素線の本数が減少した先端側において、それぞれの素線のピッチ角が基端側よりも小さくなる。このため、カテーテルは、マーカー部の先端側の柔軟性が向上する。
【0012】
(4)上記(2)のカテーテルにおいて、前記マーカー部は、それぞれの前記素線のピッチが前記管体の長さ方向に沿って一定であってもよい。これにより、マーカー部は、素線の本数が減少した先端側において、単位長さあたりに含まれる金属量が減少するため、剛性が低くなる。このため、カテーテルは、マーカー部の先端側の柔軟性が向上する。
【0013】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテルにおいて、前記マーカー部を形成する前記素線は、前記補強体の先端において、前記管体の周方向に沿って等間隔に配置されていてもよい。これにより、カテーテルは、補強体が配置されている部分や、補強体とマーカー部との境界部における剛性の異方性が小さくなるため、術者がカテーテルの基端側に加えた押し込み力やトルクがカテーテルの先端側まで偏りなく伝達される。その結果、カテーテルは、良好な操作性が得られるとともに、補強体とマーカー部との境界部でのカテーテルの破断やキンクが生じにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るカテーテルの全体図である。
図2】カテーテルの管体の一部を拡大して示す断面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4】補強体の一部を拡大して示す正面図である。
図5】管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
図6】編組機の概念的な構造図である。
図7】補強体の先端部において素線を切断する工程を説明する図であって、(a)は切断前の状態を、(b)は切断後の状態を、それぞれ表した図である。
図8】第1変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
図9】第2変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
図10】第3変形例に係る素線の切断工程を説明する図である。
図11】第1変形例に係るマーカー部を有する管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
図12】第2変形例に係るマーカー部を有する管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
図13】補強体において放射線不透過性素線を多条巻きとした場合における管体の先端付近における補強体およびマーカー部の拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法は、説明の都合上、誇張されて実際の寸法とは異なる場合がある。また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。本明細書において、カテーテルの血管に挿入する側を「先端側」、操作する側を「基端側」と称することとする。
【0016】
本明細書の説明では、自然状態(外力を付加せず、真っ直ぐな状態)でカテーテルが延びている方向を「長軸方向」とする。カテーテルの長軸方向を基準軸にした回転方向を「周方向」とする。また、カテーテルにおいて血管内に挿入される側を先端側とし、先端側と反対の端部側を基端側とする。また、先端(最先端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「先端部」とし、基端(最基端)から長軸方向における一定の範囲を含む部分を「基端部」とする。
【0017】
本明細書において、範囲を示す「X~Y」は、XおよびYを含み、「X以上Y以下」を意味する。
【0018】
本実施形態に係るカテーテル1は、経皮的に血管内に挿入されて、血管内で治療や診断を行うために用いられるデバイスである。カテーテル1は、図1に示すように、先端部および基端部を有する長尺な管体2と、管体2の基端に連結されるハブ3と、管体2およびハブ3の連結部位を囲む耐キンクプロテクタ4とを有している。
【0019】
図2に示すように、管体2は、可撓性を有する管状の部材であり、基端から先端にかけて内部にルーメン5が形成されている。ルーメン5は、カテーテル1の血管への挿入時に、ガイドワイヤが挿通される。また、ルーメン5は、造影剤や治療薬、塞栓物質、医療器具の通路として用いることができる。
【0020】
管体2の有効長は、特に限定されないが、例えば、1300mm以上1500mm以下である。なお、管体2の有効長は、血管やシース内へ挿入可能な部位の長さである。本実施形態において、有効長は、耐キンクプロテクタ4の最先端から管体2の最先端までの長さである。
【0021】
ハブ3は、管体2の基端部に、接着剤、熱融着または止具(図示せず)などにより液密に固着されている。ハブ3は、ルーメン5内へのガイドワイヤや医療器具の挿入口、ルーメン5内への造影剤や治療薬、塞栓物質の注入口として機能する。また、ハブ3は、カテーテル1を操作する際の把持部としても機能する。
【0022】
ハブ3は、特に限定されないが、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリサルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体などの樹脂により形成される。
【0023】
耐キンクプロテクタ4は、管体2とハブ3との連結部位を囲むように設けられ、管体2とハブ3の連結部位における管体2のキンクを抑制する。耐キンクプロテクタ4は、天然ゴム、シリコーン樹脂などの弾性材料で形成される。
【0024】
図2図3に示すように、管体2は、内層10と、内層10の外側に配置される補強体20と、内層10および補強体20の外側に配置される外層30とを備えている。外層30の外表面は、親水性ポリマーなどの低摩擦材料がコーティングされていてもよい。
【0025】
内層10は、内部にルーメン5を有する管状の部材である。内層10は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)などの低摩擦材料により形成される。
【0026】
外層30は、内層10および補強体20の外側を覆う管状の部材である。外層30は、先端から基端に向かって硬さが段階的に、または漸次的に増加する。このため、管体2の曲げ剛性は、先端部において低く、基端部において高くなっている。
【0027】
外層30は、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物など)、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマー、ポリイミド、フッ素樹脂などの高分子材料あるいはこれらの混合物などの熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂で形成される。
【0028】
図2~4に示すように、補強体20は、内層10の外表面上に、複数の素線25を、隙間を有するように管状に編組して形成される。補強体20は、16本の素線25が編組されている。補強体20において、素線25は、他の素線25と交差するように網目状に編組されている。補強体20を構成する素線25は、16本のうち2本が第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27である。
【0029】
第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27は、補強体20の先端のカテーテル1の長軸方向と垂直な断面において、管体2の周方向に沿って等間隔となるように配置されていることが好ましい。図3に示すように、本実施形態では、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とは、カテーテル1の長軸方向と垂直な断面において、内層10の外表面上に互いに対向するように配置されている。
【0030】
放射線を透過する素線25は、ステンレス鋼などの金属線、樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維などにより形成される。放射線を透過しない第1の放射線不透過性素線26および第2の放射線不透過性素線27は、金、白金、銀、イリジウム、タングステン、タンタル、またはこれらの合金からなる金属線や、硫酸バリウム、酸価ビスマスなどの放射線不透過性の粒子を含む樹脂繊維により形成される。
【0031】
補強体20は、編組を形成する互いに隣り合う素線25の中心距離である編組ピッチP0が50μm以上500μm以下である。放射線不透過性素線26を含む素線25の断面形状は、円形、矩形などとすることができ、複数の断面形状を併用してもよい。素線25は、断面形状が円形の場合、外径が10μm以上100μm以下、より好ましくは30μm以上60μm以下である。素線25は、断面形状が矩形の場合、幅が30μm以上60μm以下、厚みが10μm以上20μm以下である。
【0032】
図5に示すように、管体2は、補強体20の先端側にマーカー部23を有している。マーカー部23は、補強体20を形成する第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とで形成された多条コイルである。多条コイルは、複数の素線25を並行させた状態で螺旋状に巻回することによって形成されたコイルである。補強体20を形成する素線25のうち、マーカー部23を形成する第1放射線不透過性素線26および第2の放射線不透過性素線27は、補強体20の先端から管体2の先端側に延び、内層10の外側に多条コイルを形成する。一方、マーカー部23を形成しない他の素線25は、補強体20の先端で終端する。これにより、第1の放射線不透過性素線26および第2の放射線不透過性素線27は、補強体20からマーカー部23まで連続して設けられる。マーカー部23において、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とは、互いに交差することなく、隣接する第1放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とが密接する密巻きの多条コイルを形成している。そのため、マーカー部23を形成するそれぞれの素線25(第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27)は、マーカー部23におけるピッチP2が、補強体20におけるピッチP1よりも小さい。また、マーカー部23を形成するそれぞれの素線25は、マーカー部23におけるピッチ角D2が補強体20におけるピッチ角D1よりも小さい。
【0033】
マーカー部23の長さは、0.2mm以上1.5mm以下とすることができる。なお、マーカー部23の長さは、この範囲外であってもよい。
【0034】
カテーテル1は、マーカー部23と補強体20との境界部において、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27が連続している。これにより、カテーテル1は、マーカー部23と補強体20の境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテル1の破断やキンクを生じにくくなる。また、第1の放射線不透過性素線26および第2の放射線不透過性素線27は、カテーテル1の長軸方向に垂直な断面において、内層10の外表面上に互いに対向するように配置されている。これにより、カテーテル1は、補強体20が配置されている部分や、マーカー部23と補強体20との境界部における剛性の異方性が小さくなるため、術者がカテーテル1の基端側に加えた押し込み力やトルクがカテーテル1の先端側まで偏りなく伝達される。その結果、カテーテル1は、良好な操作性が得られるとともに、マーカー部23と補強体20との境界部でのカテーテル1の破断やキンクが生じにくくなる。
【0035】
マーカー部23は、放射線不透過性素線26および放射線不透過性素線27のピッチが補強体20よりも小さい密巻きコイルであるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。また、マーカー部23における素線25のピッチ角D2が補強体20における素線25のピッチ角D1より小さいので、カテーテル1は、先端部の高い柔軟性が得られる。
【0036】
マーカー部23は、マーカー部23の基端が補強体20の先端に隣接するように配置されている。マーカー部23と補強体20とは、互いに重ならず、同層に配置されている。これにより、カテーテル1は、先端部が小径かつ柔軟となる。なお、マーカー部23の基端は、補強体20の先端に隣接して配置されなくてもよい。例えば、マーカー部23の基端と補強体20の先端との間に、金属や樹脂で形成された管状体など、別の部材が配置されていてもよい。
【0037】
補強体20を形成する素線25のうち、補強体20の先端で終端する素線25の先端は、周方向に沿って螺旋状に並んで配置されている。すなわち、補強体20を形成する素線25のうち、補強体20の先端で終端する素線25の先端を周方向に沿って結ぶことによって形成される先端面20aは、カテーテル1の長軸方向に対して傾斜している。このため、カテーテル1は、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27が螺旋状に巻回されるマーカー部23の基端側端面と補強体20の先端面との隙間を小さくすることができる。なお、補強体20の先端面20aは、カテーテル1の長軸方向に対して垂直であってもよい。
【0038】
マーカー部23は、隣接する素線25同士が離隔する疎巻きであってもよいし、マーカー部23の先端から基端までの間で密巻きと疎巻きの両方を含んでもよい。マーカー部23を形成する素線25のピッチおよびピッチ角は、マーカー部23の先端から基端までの間で変化していてもよい。
【0039】
補強体20を形成する素線25のうち、マーカー部23を形成する素線25は、3本以上であってもよい。マーカー部23を形成する素線25は、補強体20において同じ方向に巻回される。このため、補強体20を形成する素線25の数が2n本である場合、マーカー部23を形成する素線25は、最大n本までとすることができる。マーカー部23を形成する素線25は、放射線不透過性の素線25を少なくとも1本含んでいればよい。また、マーカー部23を形成する素線25は、全てが放射線不透過性の素線25であってもよい。
【0040】
次に、補強体20およびマーカー部23の製造方法について説明する。まず、内層10が被覆された芯金45と第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27を含む素線25を編組機40にセットする。
【0041】
図6に示すように、補強体20は、編組機40によって内層10の外表面に編組される。編組機40は、リング状で回転中心軸が共通する第1回転体41と第2回転体42とを有し、第1回転体41と第2回転体42の回転中心軸に沿って内層10が被覆された芯金45を送出できるように構成されている。第1回転体41と第2回転体42は、それぞれ周方向に沿って8つずつのボビン43を有している。16本の素線25は、それぞれ各ボビン43に保持されている。第1回転体41と第2回転体42は、互いに逆方向に回転し、第1回転体41と第2回転体42の各ボビン43は、内層10に対して近づく動作と離れる動作を交互に繰り返す。これにより、素線25は、送出される内層10の外表面に他の素線25と交差するように編組され、補強体20を形成する。第1放射線不透過性素線26と第2放射線不透過性素線27は、16個のボビン43のうち2つのボビン43に保持されており、内層10の外表面に編組される補強体20は、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27を含むことができる。
【0042】
内層10の外表面に編組された素線25は、マーカー部23を形成する素線25(第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27)を除いて、補強体20の先端となる位置よりも先端側の部分が除去される。素線25は、端部が径方向外側に広がろうとするため、マーカー部23を形成する素線25以外の素線25の除去前に、補強体20の先端となる位置の素線25の広がりを抑制する処置を施す必要がある。素線25の広がりは、図7(a)において一点鎖線で囲んだ補強体20の先端領域Tに熱を加えて焼鈍し、素線25の弾性を失わせることで抑制できる。また、素線25の広がりを抑制する処置は、補強体20の先端領域Tへの接着剤の塗布であってもよい。
【0043】
素線25の広がりは、図8に示すように、マーカー部23を形成する素線25以外の素線25の除去前に、補強体20の先端となる位置から基端側に外層30を被覆することによって抑制されてもよい。
【0044】
素線25の広がりは、図9に示すように、マーカー部23を形成する素線25以外の素線25の除去前に、補強体20の先端となる位置の素線25同士を溶接することによって抑制されてもよい。溶接点Rは、素線25同士が重なり合う位置に形成される。
【0045】
補強体20の先端となる位置に素線25の広がりを抑制する処置を行った後、素線25は、図7(b)に示すように、マーカー部23を形成する素線25(第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27)を除いて、補強体20の先端となる位置よりも先端側の部分が除去される。素線25は、刃物や金属疲労による切断、熱による溶断など任意の方法によって除去できる。
【0046】
マーカー部23を形成する素線25以外の素線25の除去は、電解加工によって行われてもよい。図10に示すように、電解加工装置50は、電解液53を貯留する電解槽51と、補強体20を保持する保持部52とを有している。補強体20を形成する素線25のうち、マーカー部23を形成する素線25(第1放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27)は、表面に絶縁被膜を有している。一方、マーカー部23を形成しない素線25は、表面に絶縁被膜を有していない。このような素線25によって形成された補強体20を電解液53に浸漬し、補強体20を陰極、電解液53内の電極(図示しない)を陽極として電解液53に通電することで、絶縁被膜を有さない素線25の電解液53に浸漬された部分が除去される。マーカー部23を形成する素線25は、表面に絶縁被膜を有するため、通電されず、除去されない。これにより、マーカー部23を形成する素線25以外の素線25を除去することができる。
【0047】
マーカー部23を形成しない素線25の、補強体20の先端となる位置よりも先端側の部分を除去した後、マーカー部23を形成する素線25を補強体20より先端側の内層10の外表面上にコイル状に巻回して、マーカー部23を形成する。補強体20とマーカー部23を形成した後、補強体20およびマーカー部23の外側を外層30で被覆する。これにより、管体2を形成することができる。
【0048】
マーカー部23は、管体2の基端から先端に向かうにつれて、素線25の本数が減少してもよい。図11に示すように、マーカー部23は、補強体20と隣接する基端側の第1部分23aが、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とで形成された密巻きの多条コイルである。第1の放射線不透過性素線26は、マーカー部23の先端と基端の間の位置で終端している。マーカー部23は、第1の放射線不透過性素線26が終端した位置より先端側の第2部分23bが、第2の放射線不透過性素線27のみを巻回した単条コイルである。マーカー部23は、第2部分23bにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチP3が、第1部分23aにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチP2よりも小さい。
【0049】
マーカー部23は、図11に示すように、第2部分23bが、第2の放射線不透過性素線27同士が密接するように巻回された密巻コイルである。そのため、マーカー部23は、第2部分23bにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチ角D3が、第1部分23aにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチ角D2よりも小さい。これにより、マーカー部23の第2部分23bは、第2部分23bと比較して、柔軟性が高くなる。したがって、カテーテル1は、管体2の先端部の柔軟性をさらに高めることができる。また、マーカー部23は、管体2の先端部における剛性を段階的に変化させることができるため、カテーテル1の先端部における長軸方向に沿う剛性を滑らかに移行できる。
【0050】
マーカー部23において、マーカー部23を形成する各素線25のピッチは、管体2の長さ方向に沿って一定であってもよい。図12に示すように、第1の放射線不透過性素線26は、マーカー部23の先端と基端の間の位置で終端している。第2部分23bにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチP3’は、第1部分23aにおける第2の放射線不透過性素線27のピッチP2’と等しい。このため、マーカー部23の第2部分23bは、第2の放射線不透過性素線27同士が離隔した疎巻きコイルである。マーカー部23の第2部分23bは、第1部分23aよりも単位長さあたりに含まれる金属量が減少するため、剛性が低くなる。このため、カテーテル1は、マーカー部23の先端側の柔軟性が向上する。
【0051】
マーカー部23を形成する素線25が3本以上である場合、マーカー部23を形成する素線25は、管体2の基端から先端に向かうにつれて、素線25の本数が1本ずつ減少してもよいし、複数本が同時に減少してもよい。また、マーカー部23の先端を形成する素線25は、放射線不透過性の素線25であることが好ましい。これにより、カテーテル1は、放射線透視下における先端部の視認性を確保できる。
【0052】
図13に示すように、第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27とは、補強体20において並行した状態で螺旋状に巻回されていてもよい。補強体20において並行した状態で巻回されている第1の放射線不透過性素線26と第2の放射線不透過性素線27は、補強体20の先端よりも先端側において、両者が並行した状態を維持したまま内装10の外表面上に巻回されて、マーカー部23を形成する。
【0053】
以上のように、本実施形態に係る(1)カテーテル1は、内層10と、外層30と、内層10の外側に配置され放射線不透過性素線26、27を含む複数の素線25を編組した補強体20と、を備える管体を有するカテーテル1であって、管体は、補強体20よりも先端側に、放射線不透過性素線26、27を含む少なくとも2本の素線25を並行させた状態でコイル状に巻回した多条コイルを含むマーカー部23を有し、マーカー部23は、素線25のピッチ角が補強体20における素線25のピッチ角より小さい。このように構成したカテーテル1は、マーカー部23がコイル状であるため、放射線透視下における高い視認性が得られる。また、マーカー部23と補強体20とは、互いに重ならず、同層に配置される。これにより、カテーテル1は、先端部が小径かつ柔軟となる。さらに、マーカー部23を形成する放射線不透過性素線26、27は、補強体20からマーカー部23まで連続して配置されている。これにより、カテーテル1は、マーカー部23と補強体20との境界部が樹脂のみとなることがなく、境界部でのカテーテル1の破断やキンクが生じにくい。以上のように、カテーテル1は、放射線透視下における先端部の高い視認性と、高い抹消到達性を得ることができる。
【0054】
(2)上記(1)のカテーテル1において、マーカー部23は、管体の基端から先端に向かうにつれて、当該マーカー部23を形成する素線25の本数が減少するようにしてもよい。これにより、マーカー部23は、基端から先端に向かって柔軟性が増加するため、カテーテル1の先端部において、長軸方向に沿う剛性を滑らかに移行できる。
【0055】
(3)上記(2)のカテーテル1において、マーカー部23は、当該マーカー部23を形成する放射線不透過性素線26、27同士が密接するように巻回された密巻きコイルであってもよい。これにより、マーカー部23は、素線25の本数が減少した先端側において、それぞれの放射線不透過性素線26、27のピッチ角が基端側よりも小さくなる。このため、カテーテル1は、マーカー部23の先端側の柔軟性が向上する。
【0056】
(4)上記(2)のカテーテル1において、マーカー部23は、それぞれの素線25のピッチが管体の長さ方向に沿って一定であってもよい。これにより、マーカー部23は、素線25の本数が減少した先端側において、単位長さあたりに含まれる金属量が減少するため、剛性が低くなる。このため、カテーテル1は、マーカー部23の先端側の柔軟性が向上する。
【0057】
(5)上記(1)~(4)のいずれかのカテーテル1において、マーカー部23を形成する素線25は、補強体20の先端において、管体の周方向に沿って等間隔に配置されていてもよい。これにより、カテーテル1は、補強体20が配置されている部分や、補強体20とマーカー部23との境界部における剛性の異方性が小さくなるため、術者がカテーテル1の基端側に加えた押し込み力やトルクがカテーテル1の先端側まで偏りなく伝達される。その結果、カテーテル1は、良好な操作性が得られるとともに、補強体20とマーカー部23との境界部でのカテーテル1の破断やキンクが生じにくくなる。
【0058】
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 カテーテル
2 管体
3 ハブ
4 耐キンクプロテクタ
5 ルーメン
10 内層
20 補強体
23 マーカー部
23a 第1部分
23b 第2部分
25 素線
26 放射線不透過性素線
27 放射線不透過性素線
30 外層
40 編組機
41 第1回転体
42 第2回転体
43 ボビン
45 芯金
50 電解加工装置
51 電解槽
52 保持部
53 電解液

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13