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特開2024-7240多孔質ポリイミド膜、ポリイミド前駆体溶液
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  • 特開-多孔質ポリイミド膜、ポリイミド前駆体溶液 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007240
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】多孔質ポリイミド膜、ポリイミド前駆体溶液
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/26 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
C08J9/26 102
C08J9/26 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108605
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 啓
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 英一
(72)【発明者】
【氏名】吉村 耕作
(72)【発明者】
【氏名】清徳 滋
(72)【発明者】
【氏名】中田 幸佑
(72)【発明者】
【氏名】吉田 聡
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA74
4F074AB01
4F074CB04
4F074CB06
4F074CB17
4F074DA02
4F074DA03
4F074DA10
4F074DA23
4F074DA43
(57)【要約】
【課題】ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜を提供すること。
【解決手段】断面平均細孔径と、一方の面における第一表面細孔径との比(第一表面細孔径/断面平均細孔径)が5以上10以下である多孔質ポリイミド膜である。また、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有し、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上10倍モル以下であり、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上18倍モル以下であるポリイミド前駆体溶液である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上10以下である、多孔質ポリイミド膜。
【請求項2】
前記第一表面細孔径は50nm以上2μm以下である、請求項1に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項3】
前記第一表面細孔径は50nm以上1.8μm以下である、請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項4】
前記断面平均細孔径は250nm以上20μm以下である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項5】
前記断面平均細孔径は250nm以上18μm以下である、請求項4に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項6】
透気度が20秒以下である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項7】
空孔率が40%以上である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項8】
断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2以上5以下である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項9】
前記第二表面細孔径は100nm以上15μm以下である、請求項8に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項10】
単層である、請求項1又は請求項2に記載の多孔質ポリイミド膜。
【請求項11】
水を含む水性溶剤と、
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、
樹脂粒子と、
イミダゾール化合物と、
前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、
を含有し、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上10倍モル以下であり、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上18倍モル以下である、
ポリイミド前駆体溶液。
【請求項12】
前記イミダゾール化合物の沸点と前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物の沸点との差が30℃以上200℃以下である、請求項11に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項13】
前記イミダゾール化合物の沸点と前記樹脂粒子の融点との差が20℃以上50℃以下である、請求項11又は請求項12に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項14】
前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%以上である、請求項11又は請求項12に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項15】
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上6倍モル以下である、請求項11又は請求項12に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項16】
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上15倍モル以下である、請求項15に記載のポリイミド前駆体溶液。
【請求項17】
請求項11に記載のポリイミド前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程(P-1)と、
前記塗膜を乾燥させて、乾燥膜を形成する工程(P-2)と、
前記乾燥膜を基材から剥離する工程(P-3)と、
前記乾燥膜を焼成し、前記乾燥膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化して多孔質ポリイミド膜を形成する工程(P-4)と、
を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、孔質ポリイミド膜及びポリイミド前駆体溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「表面層、表面層、及び前記表面層と前記表面層との間に挟まれたマクロボイド層、を有する多孔質ポリイミド膜であって、前記マクロボイド層は、前記表面層及びに結合した隔壁と、前記隔壁並びに前記表面層及びに囲まれた、膜平面方向の個数平均孔径が10μm~500μmである複数のマクロボイドとを有し、前記マクロボイド層の前記隔壁の厚みが、0.1μm~50μmであり、前記表面層及びの各々の厚みが、0.1μm~50μmであり、前記表面層及びがそれぞれ、面積平均開口径20μm以上の複数の細孔を有し、前記表面層及びの前記細孔が前記マクロボイドに連通しており、前記表面層の面積平均開口径Aと前記表面層の面積平均開口径Bとが、下記の関係:0.80≦A/B≦1.25を満たし、前記表面層の表面開口率が5%以上であり、かつ前記表面層の表面開口率が10%以上である、多孔質ポリイミド膜。」が開示されている。
【0003】
特許文献2には、「ポリイミド前駆体と、イミダゾール化合物、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物及び水を含む水性溶剤と、を含有し、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が0.2倍モル以上1.6倍モル未満であり、前記イミダゾール化合物のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が0.3倍モル以上6.0倍モル以下であり、前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%以上である、ポリイミド前駆体溶液」が開示されている。
【0004】
特許文献3には、「対向する第1および第2の面を有する多孔質中間層、中間層の第1の面上に配置された第1の繊維含有フィルタ層、および中間層の第2の面上に配置された第2の繊維含有フィルタ層を含み、第1および第2の繊維含有フィルタ層の繊維は異なる繊維径を有し、各繊維含有フィルタ層は異なる細孔径等級を有し、中間層は第1または第2の繊維含有フィルタ層のいずれかよりも粗い細孔径を有する複合媒体。」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-147685号公報
【特許文献2】特開2021-095558号公報
【特許文献3】特開2019-217501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、透気性に優れる多孔質ポリイミド膜を得ようとすると、ろ過性が低下する傾向にあった。そこで本開示では、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5未満又は10超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜を提供することを課題とする。
更に、本開示では、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満、又は、前記イミダゾール化合物のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が4倍モル未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液、及び、多孔質ポリイミド膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> 断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上10以下である、多孔質ポリイミド膜。
<2> 前記第一表面細孔径は50nm以上2μm以下である、前記<1>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<3> 前記第一表面細孔径は50nm以上1.8μm以下である、前記<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<4> 前記断面平均細孔径は250nm以上20μm以下である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<5> 前記断面平均細孔径は250nm以上18μm以下である、前記<4>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<6> 透気度が20秒以下である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<7> 空孔率が40%以上である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<8> 断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2以上5以下である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<9> 前記第二表面細孔径は100nm以上15μm以下である、前記<8>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<10> 単層である、前記<1>又は<2>に記載の多孔質ポリイミド膜。
<11> 水を含む水性溶剤と、
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、
樹脂粒子と、
イミダゾール化合物と、
前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、
を含有し、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上10倍モル以下であり、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上18倍モル以下である、
ポリイミド前駆体溶液。
<12> 前記イミダゾール化合物の沸点と前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物の沸点との差が30℃以上200℃以下である、前記<11>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<13> 前記イミダゾール化合物の沸点と前記樹脂粒子の融点との差が20℃以上50℃以下である、前記<11>又は<12>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<14> 前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%以上である、前記<11>又は<12>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<15> 前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上6倍モル以下である、前記<11>又は<12>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<16> 前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上15倍モル以下である、前記<15>に記載のポリイミド前駆体溶液。
<17> 前記<11>に記載のポリイミド前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程(P-1)と、
前記塗膜を乾燥させて、乾燥膜を形成する工程(P-2)と、
前記乾燥膜を基材から剥離する工程(P-3)と、
前記乾燥膜を焼成し、前記乾燥膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化して多孔質ポリイミド膜を形成する工程(P-4)と、
を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5未満又は10超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
【0009】
<2>に係る発明によれば、前記第一表面細孔径が50nm未満又は2μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<3>に係る発明によれば、前記第一表面細孔径が50nm未満又は1.8μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<4>に係る発明によれば、前記断面平均細孔径が250nm未満又は20μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<5>に係る発明によれば、前記断面平均細孔径が250nm未満又は18μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<6>に係る発明によれば、透気度が20秒超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<7>に係る発明によれば、空孔率が40%未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<8>に係る発明によれば、断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2未満又は5超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<9>に係る発明によれば、前記第二表面細孔径は100nm未満又は15μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<10>に係る発明によれば、積層体である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
<11>に係る発明によれば、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満、又は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<12>に係る発明によれば、前記イミダゾール化合物の沸点と前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物の沸点との差が30℃未満又は200℃超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<13>に係る発明によれば、前記イミダゾール化合物の沸点と前記樹脂粒子の融点との差が20℃未満又は50℃超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<14>に係る発明によれば、前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<15>に係る発明によれば、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満又は6倍モル超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<16>に係る発明によれば、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満又は15倍モル超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
<17>に係る発明によれば、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満、又は、ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る多孔質ポリイミド膜における断面細孔径の求め方の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
【0014】
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本実施形態において、「膜」は、一般的に「膜」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「フィルム」及び「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
【0016】
本実施形態に係る多孔質ポリイミド膜は、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上10以下である。
【0017】
従来、多孔質ポリイミド膜のろ過性を向上させるために、表面細孔径を小さくする技術が知られている。しかし、多孔質ポリイミド膜の表面細孔径が小さくすると、多孔質ポリイミド膜の厚み方向における断面の平均細孔径(以下、「断面平均細孔径」とも称す。)も合わせて小さくなる傾向にあった。断面平均細孔径が小さくなると、多孔質ポリイミド膜の透気性が低下する。このように、従来の多孔質ポリイミド膜は、ろ過性と透気性とを両立することが困難であった。
【0018】
一方、本実施形態に係る多孔質ポリイミド膜は、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上10以下ある。つまり、第一表面細孔径に対して断面平均細孔径が大きい傾向にある。そのため、ろ過性を維持しながらも透気性に優れる。
【0019】
-多孔質ポリイミド膜の特性-
多孔質ポリイミド膜は、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が、5以上10以下であり、5以上9.5以下であることがより好ましく、5以上9以下であることがより好ましい。
前記比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上であると、第一表面細孔径よりも断面平均細孔径が適度に大きいことから、ろ過性と透気性の両方に優れる。
前記比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が10以下であると、粒子同士の癒着が進行して膜内の細孔径を大きくなる際に、独立孔を形成し、多孔質ポリイミド膜の前記一方の面と、前記一方の面の多面との間を貫通する連結孔が形成され難くなることが抑制される。その結果、断面平均細孔径が過度に大きくなることが抑制されるため、ろ過性により優れる。
【0020】
前記一方の面とは、多孔質ポリイミドにおける膜厚方向に対向する一対の面のうち、一方の面のことを指す。
【0021】
前記第一表面細孔径は、50nm以上2μm以下であることが好ましく、50nm以上1.8μm以下であることがより好ましく、50nm以上1.6μm以下であることがさらに好ましい。
前記第一表面細孔径が50nm以上であると、表面細孔径が過度に小さいことによる目詰まりが抑制され易く、透気性により優れる。また、除去対象の吸着性が向上し、ろ過性により優れる。また、迅速なろ過性が得られやすい。
前記第一表面細孔径が2μm以下であると、一定のサイズ以下の分子を優先的に透過させる効果(以下「分子ふるい効果」とも称す。)が向上し、ろ過性により優れる
【0022】
前記断面平均細孔径は、250nm以上20μm以下であることが好ましく、250nm以上18μm以下であることがより好ましく、250nm以上16μm以下であることがさらに好ましく、400nm以上10μm以下であることがさらに好ましい。
前記断面平均細孔径が250nm以上であると、分子ふるい効果が向上するため、透気性により優れる。
前記断面平均細孔径が20μm以下であると、除去対象の吸着性が低下することが抑制され、ろ過性により優れる。また、膜の強度が低下することが抑制される。
【0023】
多孔質ポリイミド膜は、断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面(いわゆる裏面)における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が、2以上5以下であることが好ましく、2以上4.5以下であることがより好ましく、2以上4以下であることがさらに好ましい。
前記比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2以上であると、分子ふるい効果がより向上しやすく、透気性により優れる。
前記比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が5以下であると、除去対象の吸着性が低下することが抑制され、ろ過性により優れる。また、膜の強度が低下することが抑制される。
【0024】
前記第二表面細孔径は、100nm以上15μm以下であることが好ましく、100nm以上13μm以下であることがより好ましく、100nm以上11μm以下であることがさらに好ましい。
前記第二表面細孔径が100nm以上であると、表面細孔径が過度に小さいことによる目詰まりが抑制され易く、透気性により優れる。また、除去対象の吸着性が向上し、ろ過性により優れる。また、迅速なろ過性が得られやすい。
前記第二表面細孔径が15μm以下であると、分子ふるい効果が向上し、ろ過性により優れる。
【0025】
第一表面細孔径及び第二表面細孔径の測定は、次のようにして行う。
多孔質ポリイミド膜の表面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4100)により観察して画像を撮影する。この際、走査型電子顕微鏡を多孔質ポリイミド膜の細孔が複数個所観察できる倍率に調整して画像を撮影する。得られた画像から確認できる任意の10点の細孔について、各細孔の円相当径をもとめ、その算術平均値を、表面細孔径とする。
【0026】
断面平均細孔径の測定は、次のようにして行う。
多孔質ポリイミド膜を厚み方向に切断し、その切断面を走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、S-4100)により観察して画像を撮影する。この際、走査型電子顕微鏡を多孔質ポリイミド膜の細孔が複数個所観察できる倍率に調整して画像を撮影する。得られた画像から確認できる任意の10点の細孔について、観察する細孔において、細孔の縁Eから粒状に認識できる領域に沿って、連通している個所に仮想線Lを引き、細孔の縁E及び仮想線で囲まれる領域を1つの細孔P1として認識する(図1参照)。そして、この細孔P1の最長これの円相当径を求め、各細孔の円相当径の算術平均値を、断面平均細孔径とする。
【0027】
断面平均細孔径、第一表面細孔径、及び、第二表面細孔径を上記の好ましい範囲に調整する手法は特に制限されないが、例えば、多孔質ポリイミド膜を製造する際に用いるポリイミド前駆体溶液を、後述する本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液とする手法などが挙げられる。
【0028】
多孔質ポリイミド膜は、透気度が20秒以下であることが好ましく、1秒以上18秒以下であることがより好ましく、1秒以上16秒以下であることがさらに好ましい。
前記透気度が20秒以下であると、一定のサイズ以下の分子を優先的に透過させる効果(以下「分子ふるい効果」とも称す。)が向上し、ろ過性により優れる。
前記透気度が1秒以上であると、分子ふるい効果が向上するため、透気性により優れる。
【0029】
透気度の測定は、以下のようにして行う。
多孔質ポリイミド膜を、1cm角に切りだし(厚さは、測定対象の多孔質ポリイミド膜の厚さとする)、試験片を得る。試験片を、減圧濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製、KGS-04)のファンネルとベース部との間に挟み込んでセットする。そして、試験片を挟み込んだフィルターホルダーを、逆さに向けて水中に漬け、ファンネル内の予め決められた位置まで水を満たし、ベース部のファンネルとベース部とが接していない側分から0.5気圧(0.05MPas)の空気圧を負荷した。そして、50mlの空気が通過する時間(秒)を測定し、透気度とした。
【0030】
多孔質ポリイミド膜は、空孔率が40%以上であることが好ましく、40%以上65%以下であることがより好ましく、40%以上60%以下であることがさらに好ましい。
空孔率が40%以上であると、分子ふるい効果が向上するため、透気性により優れる。
空孔率が65%以下であると、除去対象の吸着性が低下することが抑制され、ろ過性により優れる。また、膜の強度が低下することが抑制される。
【0031】
空孔率は、多孔質ポリイミド膜の見かけ密度及び真密度から求める。見かけの密度dとは、多孔質ポリイミド膜の質量(g)を、空孔を含めた多孔質ポリイミド膜の体積(cm)で除した値である。見かけ密度dは、多孔質ポリイミド膜の単位面積当たりの質量(g/m)を、多孔質ポリイミド膜の厚み(μm)で除して求めてもよい。真密度ρとは、多孔質ポリイミド膜の質量(g)を、多孔質ポリイミド膜から空孔を除いた体積(即ち、樹脂による骨格部のみの体積)(cm)で除した値である。
【0032】
空孔率は、下記式(II)にて算出される。
・式(II) 空孔率(体積%)={1-(d/ρ)}×100=[1-{(w/t)/ρ)}]×100
d:多孔質ポリイミド膜の見かけ密度(g/cm
ρ:多孔質ポリイミド膜の真密度(g/cm
w:多孔質ポリイミド膜の単位面積当たりの質量(g/m
t:多孔質ポリイミド膜の厚み(μm)
【0033】
多孔質ポリイミド膜は、積層体であっても単層であってもよいが、単層であることが好ましい。多孔質ポリイミド膜が単層であると、積層体に比べて、焼成され空孔となる前の樹脂粒子が膜形成の際に接着しやすくなる。そのため、多孔質ポリイミド膜の一方の面と前記一方の面の対面とを連通する連結孔を形成するため、ろ過性と透気度がより好適な範囲に調整され易い。
【0034】
多孔質ポリイミド膜の平均膜厚は、特に限定されず、用途に応じて選択される。
多孔質ポリイミド膜の平均膜厚は、例えば、10μm以上1000μm以下であってもよく、20μm以上500μm以下であってもよく、30μm以上400μm以下であってもよい。
【0035】
例えば、多孔質ポリイミド膜をろ過膜として用いる場合、多孔質ポリイミド膜の平均膜厚は、ろ過性により優れたものとする観点から、1μm以上500μm以下であることが好ましく、1μm以上250μm以下であることがより好ましく、1μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。
【0036】
多孔質ポリイミド膜の平均膜厚は、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR-1500Eを使用し、5点の多孔質ポリイミド膜の膜厚を測定し、その算術平均で算出する。
【0037】
(多孔質ポリイミド膜の用途)
多孔質ポリイミド膜の用途は特に制限されないが、例えば、気体又は液体の分離膜、ろ過膜等のろ材;絶縁電線における被覆膜である絶縁被膜;リチウム電池等の電池セパレータ;電解コンデンサー用のセパレータ;燃料電池等の電解質膜;電池電極材;気体又は液体の分離膜;低誘電率材料などが挙げられる。上記の中でも、本実施形態に係る多孔質ポリイミド膜は、気体又は液体の分離膜、ろ過膜等のろ材に有用である。
【0038】
<ポリイミド前駆体溶液>
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有し、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上10倍モル以下であり、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上18倍モル以下である。
【0039】
多孔質ポリイミド膜は、フィルタ等のろ材として着目されている。多孔質ポリイミド膜は、例えば、ポリイミド前駆体溶液を基盤等に塗布した後に、これを加熱乾燥し、樹脂粒子が存在していた領域の一部分を樹脂粒子の熱分解により空孔とすることで、多孔質化する工程を経て作製することができる。
多孔質ポリイミド膜のろ過性を制御する手段の一つとして多孔質ポリイミド膜の表面細孔径を小さく微細化する技術が知られている。しかしながら、従来のポリイミド前駆体溶液を用いて多孔質ポリイミド膜の表面細孔径を小さくしようとすると、表面に露出していない膜内部における細孔のサイズも小さくなり、透気性が低下する傾向にあった。
【0040】
一方、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、上記構成を有することにより、これを用いて多孔質ポリイミド膜を形成した際に、表面細孔径は小さくなる一方で、膜内部における細孔のサイズが小さく制御され易くなり、ろ過性と透気性の両方に優れた多孔質ポリイミド膜が得られる。この作用機序は必ずしも明らかではないが、次のように推察される。
【0041】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上である。イミダゾール化合物は、ポリイミド前駆体をイミド化(脱水閉環)してポリイミドにする際の触媒作用を有し、かつ、樹脂粒子に対するポリイミド前駆体の親和性を高める役割を有する。そのため、テトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物の割合を多く含有させることで、膜形成の際に、塗膜内部で樹脂粒子とポリイミド前駆体とが融着しながらイミド化が進行し易くなる。その結果、多孔質ポリイミド膜内部の細孔が、多孔質ポリイミド膜の表面の細孔径よりも大きくなり、多孔質ポリイミド膜の透気性に優れる。
また、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が10倍モル以下であることで、膜形成の際に、塗膜内部で樹脂粒子とポリイミド前駆体とが過度に融着して膜内部の細孔が大きくなりすぎることが抑制されるため、多孔質ポリイミド膜のろ過性に優れる。
【0042】
さらに、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上と、比較的多く含む仕様としている。3級アミン化合物は、水を含む水性溶剤と共に、塗膜表面から揮発しやすく、かつ、イミダゾール化合物と比べて樹脂粒子に対する親和性が低い性質を有する。そのため、膜形成の際に、塗膜表面から、相対的に多い量の3級アミン化合物が揮発し易い。また、塗膜表面に3級アミン化合物の割合が多くなることで、相対的に樹脂粒子は塗膜内部に局在化され易くなる。その結果、樹脂粒子の存在量が相対的に少ない塗膜表面では表面の細孔径が小さくなり、樹脂粒子の存在量が相対的に多い塗膜内部では細孔が大きくなり易い。その結果、表面の細孔径が小さいためろ過性に優れ、かつ、膜内部の細孔径が大きいため透気性に優れた多孔質ポリイミド膜が得られると考えられる。
また、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率が18倍モル以下であることで、塗膜表面における樹脂粒子の存在量が過度に少なくなり表面細孔径が過度に小さくなることが抑制され、透気性に優れる。また、塗膜内部における樹脂粒子の存在量が過度に多くなり膜内部の細孔径が過度に大きくなることが抑制され、ろ過性に優れる。
【0043】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液によれば、多孔質ポリイミド膜における断面平均細孔径(μm)、一方の面における第一表面細孔径(μm)、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)及びこれらの比を先述の公的な範囲とすることができる。
【0044】
ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数とは、ポリイミド前駆体を製造するときの、テトラカルボン酸二無水物のモル数である。
また、イミダゾール化合物のモル数とは、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、イミダゾール化合物のモル数である。
また、3級アミン化合物のモル数とは、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、3級アミン化合物のモル数である。
【0045】
(ポリイミド前駆体溶液の特性)
ポリイミド前駆体溶液は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が、2倍モル以上10倍モル以下であり、2倍モル以上6倍モル以下であることが好ましく、2倍モル以上5倍モル以下であることがより好ましい。
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上であると、膜形成の際に、塗膜内部で樹脂粒子とポリイミド前駆体とが融着しながらイミド化が進行し易く、多孔質ポリイミド膜内部の細孔が、多孔質ポリイミド膜の表面の細孔径よりも大きくなり、多孔質ポリイミド膜の透気性により優れる。
また、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率10倍モル以下であると、膜形成の際に、塗膜内部で樹脂粒子とポリイミド前駆体とが過度に融着して膜内部の細孔が大きくなりすぎることが抑制されるため、多孔質ポリイミド膜のろ過性により優れる。
【0046】
ポリイミド前駆体溶液は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数Bの比率が、4倍モル以上18倍モル以下であり、4倍モル以上15倍モル以下であることが好ましく、4倍モル以上12倍モル以下であることがより好ましい。
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上であると、膜形成の際に、樹脂粒子の存在量が相対的に少ない塗膜表面では表面の細孔径が小さくなり、樹脂粒子の存在量が相対的に多い塗膜内部では細孔が大きくなり易い。その結果、ろ過性と透気性の両方により優れる。
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率が18倍モル以下であると、膜形成の際に、塗膜表面における樹脂粒子の存在量が過度に少なくなり表面細孔径が過度に小さくなることが抑制され、透気性により優れる。また、塗膜内部における樹脂粒子の存在量が過度に多くなり膜内部の細孔径が過度に大きくなることが抑制され、ろ過性により優れる。
【0047】
ポリイミド前駆体溶液は、前記イミダゾール化合物のモル数Aに対する前記3級アミン化合物のモル数Bの比率(B/A)が、0.4倍モル以上9倍モル以下であり、0.6倍モル以上8.5倍モル以下であることが好ましく、0.7倍モル以上8倍モル以下であることがより好ましい。
前記比率(B/A)が0.4以上であると、膜形成の際に、樹脂粒子の存在量が相対的に少ない塗膜表面では表面の細孔径が小さくなり、樹脂粒子の存在量が相対的に多い塗膜内部では細孔が大きくなり易い。その結果、ろ過性と透気性の両方により優れる。
前記比率(B/A)が9倍モル以下であると、膜形成の際に、塗膜表面における樹脂粒子の存在量が過度に少なくなり表面細孔径が過度に小さくなることが抑制され、透気性により優れる。また、塗膜内部における樹脂粒子の存在量が過度に多くなり膜内部の細孔径が過度に大きくなることが抑制され、ろ過性により優れる。
【0048】
ポリイミド前駆体溶液は、前記イミダゾール化合物の沸点IBPと前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物ABPの沸点との差(IBP-ABP)が、30℃以上200℃以下であることが好ましく、30℃以上180℃以下であることがより好ましく、30℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
前記差(IBP-ABP)が、30℃以上であると、膜形成の際に、3級アミン化合物よりもイミド化の触媒活性の高いイミダゾール化合物が先に揮発することから、塗膜表面におけるポリイミド前駆体のイミド化が過度に進行し難く、表面の細孔径が適度に小さく抑制されるため、多孔質ポリイミド膜のろ過性により優れる。
前記差(IBP-ABP)が、200℃以下であると、膜形成の際に、イミド化の触媒活性の高いイミダゾール化合物が、塗膜表面及び内部の両方でイミド化を十分に進行させる前に揮発することが抑制され易く、多孔質ポリイミド膜のろ過性と透気性の両方により優れる。
【0049】
ポリイミド前駆体溶液は、前記イミダゾール化合物の沸点IBPと前記樹脂粒子の融点PMPとの差(IBP-PMP)が30℃以上160℃以下であることが好ましく、30℃以上140℃以下であることがより好ましく、30℃以上120℃以下であることがさらに好ましい。
前記差(IBP-PMP)が、30℃以上であると、膜形成の際に、イミダゾール化合物が先に揮発することから、塗膜表面におけるポリイミド前駆体のイミド化が過度に進行し難く、表面の細孔径が適度に小さく抑制されるため、多孔質ポリイミド膜のろ過性により優れる。
前記差(IBP-PMP)が、160℃以上であると、膜形成の際に、イミダゾール化合物と樹脂粒子との癒着がより高まり、多孔質ポリイミド膜の膜内部の細孔径が大きくなり易く、透気性により優れる。
【0050】
(水性溶剤)
水性溶剤は、水を含む水性溶剤である。
水としては、例えば、蒸留水、イオン交換水、限外濾過水、純水等が挙げられる。
【0051】
水の含有量は、水性溶剤全体に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上100質量%以下がより好ましく、80質量%以上100質量%以下が更に好ましい。水の含有量を上記数値範囲内とすることで、水性溶剤の沸点がより低下する。そのため、ポリイミド前駆体同士の隙間において更に水性溶剤が沸騰しやすくなる。これにより、水性溶剤が揮発することにより形成される空孔がより多数形成され、透気性により優れる。
【0052】
水性溶剤は、水以外の溶剤を含んでもよい。
【0053】
水以外の溶剤としては水溶性であることが好ましい。ここで、水溶性とは、25℃において、対象物質が水に対して1質量%以上溶解することを意味する。
【0054】
水以外の溶剤としては、例えば、水溶性有機溶剤、非プロトン性極性溶剤が挙げられる。水以外の溶剤としては、非プロトン性極性溶剤が好ましい。
【0055】
水溶性有機溶剤としては、水溶性エーテル系溶剤、水溶性ケトン系溶剤、水溶性アルコール系溶剤等が挙げられる。
【0056】
水溶性エーテル系溶剤は、一分子中にエーテル結合を持つ水溶性の溶剤である。水溶性エーテル系溶剤としては、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、トリオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、水溶性エーテル系溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等が好ましい。
【0057】
水溶性ケトン系溶剤は、一分子中にケトン基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。これらの中でも、水溶性ケトン系溶剤としては、アセトンが好ましい。
【0058】
水溶性アルコール系溶剤は、一分子中にアルコール性水酸基を持つ水溶性の溶剤である。水溶性アルコール系溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテル、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、グリセリン、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール等が挙げられる。これらの中でも、水溶性アルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2-プロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールのモノアルキルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールのモノアルキルエーテルが好ましい。
【0059】
非プロトン性極性溶剤としては、沸点150℃以上300℃以下で、双極子モーメントが3.0D以上5.0D以下の溶剤が挙げられる。非プロトン性極性溶剤として具体的には、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサメチレンホスホルアミド(HMPA)、N-メチルカプロラクタム、N-アセチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N’-ジメチルプロピレン尿素、テトラメチル尿素、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル等が挙げられる。
【0060】
水性溶剤は、水以外の溶剤として、非プロトン性極性溶剤を含むことが好ましい。水性溶剤は、前記非プロトン性極性溶剤の含有量が、前記ポリイミド前駆体溶液中で溶解しな
い粒子の総量(樹脂粒子及び必要に応じて含まれる無機粒子)100質量部に対し1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。
【0061】
水性溶剤が、水以外の溶剤として、非プロトン性極性溶剤を含む場合、非プロトン性極性溶剤の含有量は粒子100質量部に対し、3質量部以上45質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上45質量部以下であることが更に好ましい。
【0062】
水性溶剤は、例えば、ポリイミド前駆体溶液の製造工程で準備される樹脂粒子分散液中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合する際に用いた樹脂粒子分散液中の水性溶剤をそのまま利用してもよい。
【0063】
水性溶剤は、例えば、ポリイミド前駆体溶液がその他の粒子として無機粒子を更に含む場合、前記製造工程で準備される無機粒子分散液中の水性溶剤をそのまま利用してもよい。
【0064】
(ポリイミド前駆体)
ポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
ポリイミド前駆体は、例えば、一般式(I)で表される繰り返し単位を有する樹脂(ポリイミド前駆体)であってもよい。
【0065】
【化3】
【0066】
(一般式(I)中、Aは4価の有機基を示し、Bは2価の有機基を示す。)
ここで、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基としては、原料となるテトラカルボン酸二無水物より4つのカルボキシル基を除いたその残基である。
【0067】
一方、Bが表す2価の有機基としては、原料となるジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基である。
【0068】
つまり、一般式(I)で表される繰り返し単位を有するポリイミド前駆体は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体である。
【0069】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物、脂肪族系テトラカルボン酸二無水物が挙げられるが、芳香族系テトラカルボン酸二無水物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Aが表す4価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
テトラカルボン酸二無水物としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,4’-オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(2,3-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、p-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、m-フェニレンビス(トリメリテート無水物)、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-2,3,6,7-テトラカルボン酸二無水物、9,9-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、4,4’-ジフェニルエーテルビス(トリメリテート無水物)、4,4’-ジフェニルメタンビス(トリメリテート無水物)、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルエーテル二無水物、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンビス(トリメリテート無水物)、p-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、m-ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、等が挙げられる。
【0070】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテ
トラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0071】
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、2,3,3’,4’- ビフェニルテトラカルボン酸ニ無水物、がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
【0072】
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
【0073】
また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
【0074】
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物、脂肪族ジアミン化合物が挙げられるが、芳香族ジアミン化合物であることがよい。つまり、一般式(I)中、Bが表す2価の有機基は、芳香族系有機基であることがよい。
【0075】
ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミ
ノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0076】
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミンがよい。
【0077】
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。また、2種以上を組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0078】
また、得られるポリイミドの取扱い性や機械物性を調節するため、テトラカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物を2種以上用いて共重合することが好ましい場合もある。
【0079】
共重合の組み合わせとしては、例えば、化学構造中に芳香環を1つ有するテトラカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物と、化学構造中に芳香環を2つ以上有するテトラカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物との共重合や、芳香族テトラカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物と、アルキレン基、アルキレンオキシ基、及びシロキサン基などの柔軟な連結基を有するカルボン酸二無水物および/またはジアミン化合物との共重合などが挙げられる。
【0080】
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、好ましくは5000以上300000以下であり、より好ましくは10000以上150000以下である。
【0081】
ポリイミド前駆体の数平均分子量を上記範囲とすると、ポリイミド前駆体の溶媒に対する溶解性の低下が抑制され、製膜性が確保され易くなる。
【0082】
ポリイミド前駆体の数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα-M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0083】
ポリイミド前駆体の含有量(つまり、濃度)は、全ポリイミド前駆体溶液に対して、0.1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%以上25質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下である。
【0084】
(樹脂粒子)
樹脂粒子は、特に限定されないが、ポリイミド以外の樹脂からなる樹脂粒子である。例えば、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の重合性単量体を重縮合して得られた樹脂粒子、ビニル樹脂、オレフィン樹脂、フッ素樹脂等の重合性単量体をラジカル重合して得られた樹脂粒子が挙げられる。ラジカル重合して得られた樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂の樹脂粒子等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、樹脂粒子としては、(メタ)アクリル樹脂、(メタ)アクリル酸エステル樹脂、スチレン・(メタ)アクリル樹脂、及びポリスチレン樹脂からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0086】
なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および「メタクリル」のいずれをも含むことを意味するものである。
【0087】
また、樹脂粒子は、架橋されていてもよく、架橋されていなくてもよい。ポリイミド前駆体のイミド化工程において、残留応力の緩和に有効に寄与する点で、架橋されていない樹脂粒子が好ましい。さらに、ポリイミド前駆体溶液は、ポリイミド前駆体溶液を製造する工程を簡略化する点で、樹脂粒子として乳化重合によって得られたビニル樹脂粒子を含有することがより好ましい。
【0088】
樹脂粒子がビニル樹脂粒子である場合、単量体を重合して得られる。ビニル樹脂の単量体としては、以下に示す単量体が挙げられる。例えば、スチレン、アルキル置換スチレン(例えば、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン等)、ハロゲン置換スチレン(例えば2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン等)、ビニルナフタレン等のスチレン骨格を有するスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)等のビニル基を有するエステ
ル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類;ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ケイ皮酸、フマル酸、ビニルスルホン酸等の酸類;エチレンイミン、ビニルピリジン、ビニルアミン等の塩基類;等の単量体を重合体させたビニル樹脂単位が挙げられる。
【0089】
その他の単量体として、酢酸ビニルなどの単官能単量体、エチレングリコールジメタクリレート、ノナンジアクリレート、デカンジオールジアクリレートなどの二官能単量体、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能単量体を併用してもよい。
【0090】
また、ビニル樹脂は、これらの単量体を単独で用いた樹脂でもよいし、2種以上の単量体を用いた共重合体である樹脂であってもよい。
【0091】
樹脂粒子は、分散性が向上し、ピンホールの発生が抑制される点で、表面に酸性基を有することが好ましい。樹脂粒子の表面に存在する酸性基は、ポリイミド前駆体を水性溶剤に溶解するために用いた有機アミン化合物等の塩基と塩を形成することで、樹脂粒子の分散剤として機能すると考えられる。そのため、ポリイミド前駆体溶液中での樹脂粒子の分散性が向上するものと考えられる。
【0092】
樹脂粒子の表面に有する酸性基は、特に限定されるものではないが、カルボキシ基、スルホン酸基、フェノール性水酸基からなる群から選ばれる少なくとも一つであることがよい。これらの中でも、カルボキシ基が好ましい。
【0093】
樹脂粒子の表面に酸性基を有するための単量体としては、酸性基を有する単量体であれば特に限定されない。例えば、カルボキシ基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、フェノール性水酸基を有する単量体、及びそれらの塩が挙げられる。
【0094】
具体的には、例えば、p-スチレンスルホン酸、4-ビニルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;4-ビニルジヒドロケイヒ酸、4-ビニルフェノール、4-ヒドロキシ-3-メトキシ-1-プロペニルベンゼン等のフェノール性水酸基を有する単量体;アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3-メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルイソクロトン酸、2,4-ヘキサジエン二酸、2-ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2-ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等のカルボキシ基を有する単量体;及びそれらの塩;が挙げられる。これら酸性基を有する単量体は、酸性基を有さない単量体と混合して重合してもよいし、酸性基を有さない単量体を重合、粒子化した後に、表面に酸性基を有する単量体を重合してもよい。また、これらの単量体は1種単独、又は2種以上を併用してもよい。
【0095】
これらの中でも、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3-メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルイソクロトン酸、2,4-ヘキサジエン二酸、2-ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2-ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等、及びそれらの塩のカルボキシ基を有する単量体が好ましい。カルボキシ基を有する単量体は、1種単独でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0096】
つまり、表面に酸性基を有する樹脂粒子は、アクリル酸、クロトン酸、メタクリル酸、3-メチルクロトン酸、フマル酸、マレイン酸、2-メチルイソクロトン酸、2,4-ヘキサジエン二酸、2-ペンテン酸、ソルビン酸、シトラコン酸、2-ヘキセン酸、フマル酸モノエチル等、及びそれらの塩からなる群から選ばれる少なくとも一つのカルボキシ基
を有する単量体に由来する骨格を持つことが好ましい。
【0097】
酸性基を有する単量体と、酸性基を有さない単量体を混合して重合する場合、酸性基を有する単量体の量は特に限定されるものではないが、酸性基を有する単量体の量が少なすぎると、ポリイミド前駆体溶液での樹脂粒子の分散性が低下する場合があり、酸性基を有する単量体の量が多すぎると、乳化重合するときに、重合体の凝集体が発生する場合がある。そのため、酸性基を有する単量体は、単量体全体の0.3質量%以上20質量%以下が好ましく、0.5質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.7質量%以上10質量%以下であることが特に好ましい。
【0098】
一方、酸性基を有さない単量体を乳化重合した後に、さらに酸性基を有する単量体を追加して、重合する場合、上記と同様の点で、酸性基を有する単量体の量は、単量体全体の0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.05質量%以上7質量%以下がより好ましく、0.07質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0099】
前述のように、樹脂粒子は架橋されていないほうが好ましいが、樹脂粒子を架橋するとき、単量体成分の少なくとも一部として架橋剤を用いる場合には、全単量体成分に占める架橋剤の割合は、0質量%以上20質量%以下が好ましく、0質量%以上5質量%以下がより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
【0100】
ビニル樹脂粒子を構成する樹脂に使用される単量体がスチレンを含有する場合、全単量体成分に占めるスチレンの割合は20質量%以上100質量%以下が好ましく、40質量%以上100質量%以下が更に好ましい。
【0101】
なお、樹脂粒子は、市販品の表面にさらに酸性基を有するモノマーを重合したものでもよい。具体的には、架橋された樹脂粒子としては、例えば、架橋ポリメタクリル酸メチル(MBX-シリーズ、積水化成品工業社製)、架橋ポリスチレン(SBX-シリーズ、積水化成品工業社製)、メタクリル酸メチルとスチレンの共重合架橋樹脂粒子(MSX-シリーズ、積水化成品工業社製)等が挙げられる。
【0102】
また、架橋されていない樹脂粒子としては、ポリメタクリル酸メチル(MB-シリーズ、積水化成品工業社製)、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体(FS-シリーズ:日本ペイント社製)等が挙げられる。
【0103】
樹脂粒子の体積平均粒径としては、0.1μm以上1μm以下であることが好ましく、0.25μm以上0.98μm以下であることがより好ましく、0.25μm以上0.95μm以下であることが更に好ましい。
【0104】
樹脂粒子の体積粒度分布指標(GSDv)は、1.30以下であることが好ましく、1.25以下であることがより好ましく、1.20以下であることが更に好ましい。
【0105】
樹脂粒子の体積平均粒径及び体積粒度分布は、レーザ回折式粒度分布測定装置(例えば、既述のコールターカウンターLS13、ベックマン・コールター社製)の測定によって体積粒度分布を得る。得られた粒度分布を用い、分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、体積について小粒径側から累積分布を引き、粒子径分布曲線が得られる。なお、粒子径分布曲線は、50nm刻みで粒子の数を数えて分布曲線を描く。また、全粒子に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとして測定される。
【0106】
樹脂粒子の体積粒度分布指標は、ポリイミド前駆体溶液中の粒子の粒度分布から、(D84v/D16v)1/2として算出される。なお、粒子の体積の小径側から描いた体積累積分布のうち、累積16%となる粒径を体積粒径D16v、累積50%となる粒径を体積平均粒径D50v、とする。
【0107】
樹脂粒子とポリイミド前駆体との体積含有量比(粒子/ポリイミド前駆体)は、40/60以上80/20以下であることが好ましく、45/55以上78/22以下であることがより好ましく、50/50以上74/26以下であることが更に好ましい。
【0108】
樹脂粒子の含有量は、ポリイミド前駆体と粒子の合計量に対して30質量%以上85質量%以下であることが好ましく、ポリイミド前駆体と粒子の合計量に対して35質量%以上80質量%以下であることがより好ましく、40質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0109】
(イミダゾール化合物)
本実施形態のポリイミド前駆体溶液はイミダゾール化合物を含む。
イミダゾール化合物とは、イミダゾール骨格を有するアミン化合物をいう。
【0110】
イミダゾール化合物としては、下記式(0)で表される化合物が好ましい。ただし、下記式(0)において、R11、R12、R13、及びR14は、各々独立に、水素原子、又はアルキル基を示す。
【0111】
【化2】
【0112】
式(0)で表されるイミダゾール化合物において、R11、R12、R13、及びR14が示すアルキル基は、直鎖状、又は分岐状の炭素数1以上5以下のアルキル基(具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等)がよい。
【0113】
イミダゾール化合物は、2個以上のアルキル基で置換されたイミダゾール化合物が好ましい。つまり、イミダゾール化合物は、式(0)において、R11、R12、R13、及びR14のうち、2つ以上がアルキル基を示すイミダゾール化合物であることが好ましい。
【0114】
イミダゾール化合物として具体的には、例えば、1,2-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、4-エチル-2-メチルイミダゾール、1-メチル-4-エチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0115】
上記のイミダゾール化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0116】
(イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物)
本実施形態における3級アミン化合物とは、イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物のことをいう。
3級アミン化合物としては、例えば、非環状アミン化合物及び環状アミン化合物が挙げられる。
【0117】
非環状アミン化合物としては、例えば、トリアルキルアミン(アルキル基を有する3級アミン化合物)、3級アミノアルコール(アルキル鎖とヒドロキシ基を有する3級アミン化合物)等が挙げられる。
環状アミン化合物としては、例えば、N-置換ピペラジン(ピペラジン骨格を有するアミン化合物)、N-置換モルホリン(モルホリン骨格を有するアミン化合物)、イソキノリン類(イソキノリン骨格を有するアミン化合物)、ピリジン類(ピリジン骨格を有するアミン化合物)、ピリミジン類(ピリミジン骨格を有するアミン化合物)、ピラジン類(ピラジン骨格を有するアミン化合物)、トリアジン類(トリアジン骨格を有するアミン化合物)、ポリピリジン等が挙げられる。
【0118】
非環状アミン化合物の炭素数は、特に限定されないが、3以上18以下が好ましく、3以上15以下がより好ましく、3以上12以下が更に好ましい。
環状アミン化合物の炭素数は、特に限定されないが、3以上10以下が好ましく、3以上9以下がより好ましく、3以上8以下が更に好ましい。
【0119】
3級アミン化合物は、ろ過性及び透気性の両方により優れた多孔質ポリイミド膜を得る観点から、N-置換モルホリン、トリアルキルアミン及び3級アミノアルコールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0120】
N-置換モルホリンの置換基としては、アルキル基が好ましい。
アルキル基の炭素数としては、1以上6以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましい。
N-置換モルホリンとしては、具体的には、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-プロピルモルホリン、N-ブチルモルホリン等が挙げられる。
【0121】
トリアルキルアミンが有するアルキル基の炭素数としては、1以上6以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましい。
トリアルキルアミンとしては、具体的には、トリエチルアミン、トリメチルアミン、N,N-ジメチルエチルアミン、N,N-ジメチルプロピルアミン、N,N-ジメチルブチルアミン、N,N-ジエチルメチルアミン、N,N-ジプロピルエチルアミン、N,N-ジメチルイソプロピルアミン等が挙げられる。
【0122】
3級アミノアルコールが有するアルコールの炭素数としては、1以上6以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましい。
3級アミノアルコールがアルキル基を有する場合、アルキル基の炭素数としては、1以上6以下が好ましく、1以上5以下がより好ましく、1以上4以下が更に好ましい。
3級アミノアルコールとしては、具体的には、N,N-ジメチルエタノールアミン、N,N-ジメチルプロパノールアミン、N,N-ジメチルイソプロパノールアミン、N,N-ジエチルエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。
【0123】
3級アミン化合物は、高い強度のポリイミド前駆体の乾燥膜及びポリイミド膜を得る観点から、N-置換モルホリンであることが更に好ましい。
【0124】
上記の3級アミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0125】
ろ過性及び透気性の両方により優れた多孔質ポリイミド膜を得る観点から、イミダゾール化合物のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率は、0.3倍モル以上6.0倍モル以下であり、0.5倍モル以上3.0倍モル以下であることが好ましく、0.5倍モル以上2.0倍モル以下であることが更に好ましい。
【0126】
ろ過性及び透気性の両方により優れた多孔質ポリイミド膜を得る観点から、ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する3級アミン化合物のモル数の比率は、0.5倍モル以上3.0倍モル以下であることが好ましく、0.6倍モル以上2.5倍モル以下であることがより好ましく、0.7倍モル以上2.0倍モル以下であることが更に好ましい。
【0127】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液に含まれるイミダゾール化合物及び3級アミン化合物の合計の含有量(イミダゾール化合物の質量+3級アミン化合物の質量)は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる水性溶剤の全質量に対して、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、2質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上20質量%以下であることが更に好ましい。
【0128】
イミダゾール化合物のモル数とは、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、イミダゾール化合物のモル数である。
また、3級アミン化合物のモル数とは、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、3級アミン化合物のモル数である。
ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数とは、ポリイミド前駆体を製造するときの、テトラカルボン酸二無水物のモル数である。
【0129】
3級アミン化合物の沸点は、イミダゾール化合物の沸点よりも低いことが好ましい。
3級アミン化合物の沸点がイミダゾール化合物の沸点よりも低いと、膜形成の際に3級アミン化合物が先に揮発しやすくなり、これにより塗膜表面と塗膜内部とで濃度勾配が生じやすく、3級アミン化合物と親和性の低い樹脂粒子が塗膜内部でポリイミド前駆体とより癒着しやすい。その結果、ろ過性及び透気性の両方により優れた多孔質ポリイミド膜が得られやすくなる。
【0130】
イミダゾール化合物と3級アミン化合物との沸点の差(イミダゾール化合物の沸点-3級アミン化合物の沸点)は、30℃以上200℃以下であることが好ましく、30℃以上150℃以下であることがより好ましい。
【0131】
3級アミン化合物の沸点は150℃以下であることが好ましく、140℃以下であることがより好ましく、135℃以下であることが更に好ましい。
【0132】
3級アミン化合物の沸点は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることが更に好ましい。
【0133】
(その他の添加剤)
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液には、ポリイミド前駆体、水性溶剤、イミダゾール化合物、3級アミン化合物及び樹脂粒子以外のその他の添加剤を含んでいてもよい。その他の添加剤としては、例えば、イミド化反応促進のための触媒や、製膜品質向上のためのレベリング材などが挙げられる。
【0134】
イミド化反応促進のための触媒には、酸無水物など脱水剤、フェノール誘導体、スルホン酸誘導体、安息香酸誘導体などの酸触媒などを使用してもよい。
【0135】
<多孔質ポリイミド膜の製造方法>
本実施形態に係る多孔質ポリイミド膜の製造方法は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程(P-1)と、前記塗膜を乾燥させて、乾燥膜を形成する工程(P-2)と、前記乾燥膜を基材から剥離する工程(P-3)と、前記乾燥膜を焼成し、前記乾燥膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化して多孔質ポリイミド膜を形成する工程(P-4)と、を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法である。
【0136】
本実施形態に係る製造方法によれば、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られる。
【0137】
ポリイミド膜に含有されるポリイミドは、具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成し、ポリイミド前駆体の溶液を得て、イミド化反応させて得られる。
以下に、本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法について、具体的に説明するが、この例に限定されるものではない。
【0138】
(ポリイミド前駆体溶液の製造方法)
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下に示す製造方法が挙げられる。
【0139】
本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液の製造方法は、例えば、
イミダゾール化合物、3級アミン化合物及び水を含む水性溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成してポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
この方法によれば、水性溶剤を適用するため、生産性も高く、ポリイミド前駆体溶液が1段階で製造される点で工程の簡略化の点で有利である。
【0140】
他の例としては、非プロトン性極性溶剤等(例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等)の有機溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを重合してポリイミド前駆体を生成した後、水や、アルコール等の水性溶剤に投入してポリイミド前駆体を析出させる。その後、析出させたポリイミド前駆体を、イミダゾール化合物、3級アミン化合物及び水を含む水性溶剤中に溶解させ、ポリイミド前駆体溶液を得る方法が挙げられる。
【0141】
以下、本実施形態に係るポリイミド膜の好適な製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法は、下記に挙げる第1の工程である工程(P-1)、第2の工程である工程(P-2)、第3の工程である工程(P-3)及び第4の工程である工程(P-4)を有する。
以下、第1の工程を工程(P-1)、第2の工程を工程(P-2)、第3の工程を工程(P-3)及び第4の工程を工程(P-4)と称する。
【0142】
(工程(P-1))
工程(P-1)は、ポリイミド前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程である。
第1の工程は、本実施形態に係るポリイミド前駆体溶液を準備する。
次に、ポリイミド前駆体溶液を、基材上に塗布して塗膜を形成する。
【0143】
ポリイミド前駆体及び粒子を含む塗膜が形成される基材としては、特に制限されない。例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂製基材;ガラス製基材;セラミック製基材;鉄、ステンレス鋼(SUS)等の金属基材;これらの材料が組み合わされた複合材料基材等が挙げられる。また、基材には、必要に応じて、例えば、シリコーン系やフッ素系の剥離剤等による剥離処理を行って剥離層を設けてもよい。
【0144】
基材上に、ポリイミド前駆体溶液を塗布する方法としては、特に限定されない。例えば、スプレー塗布法、回転塗布法、ロール塗布法、バー塗布法、スリットダイ塗布法、インクジェット塗布法等の各種の方法が挙げられる。
【0145】
(工程(P-2))
工程(P-2)は、工程(P-1)で得られた塗膜を乾燥させて、乾燥膜を形成する工程である。
具体的には、工程(P-1)で得られた塗膜を、例えば、加熱乾燥、自然乾燥、真空乾燥等の方法により乾燥させて、乾燥膜を形成する。より具体的には、乾燥膜に残留する溶剤が、乾燥膜の固形分に対して50%以下(好ましくは30%以下)となるように、乾燥させて乾燥膜を形成する。
【0146】
(工程(P-3))
工程(P-3)は、工程(P-2)で得られる乾燥膜を基材から剥離する工程である。
乾燥膜を剥離する方法は、特には限定されず、例えば、乾燥膜の下側又は上側に設置された、トルクモーター等の駆動軸を備えた巻取機に乾燥膜を巻き取らせ、基材から乾燥膜を剥離させる等の方法が挙げられる。
【0147】
なお、上述の説明では、乾燥膜をロール状に巻き取る場合について説明したが、これに限るものではない。乾燥膜をロール状に巻き取らずに、例えば、剥離後に所定の長さ毎に切断してもよい。
【0148】
(工程(P-4))
工程(P-4)は、工程(P-3)において基材から剥離された乾燥膜を焼成し、乾燥膜に含まれるポリイミド前駆体をイミド化してポリイミド膜を形成する工程である。
【0149】
工程(P-3)において基材から剥離された乾燥膜を焼成して、イミド化を進行させてポリイミド膜を得るための加熱方法としては、特に限定されない。例えば、2段階以上の多段階で加熱する方法が挙げられる。例えば、以下に示す加熱条件が挙げられる。
【0150】
第1段階の加熱条件としては、例えば、50℃以上150℃以下の範囲がよく、60℃以上140℃以下の範囲が好ましい。また、加熱時間としては、10分間以上60分間以下の範囲がよい。加熱温度が高いほど加熱時間は短くてよい。
【0151】
第2段階以降の加熱条件としては、例えば、150℃以上450℃以下(好ましくは200℃以上400℃以下)で、20分間以上120分間以下の条件で加熱することが挙げられる。この範囲の加熱条件とすることで、イミド化反応がさらに進行し、ポリイミド膜が形成され得る。加熱反応の際、加熱の最終温度に達する前に、温度を段階的、又は一定速度で徐々に上昇させて加熱することがよい。
【0152】
なお、加熱条件は上記の2段階以上の加熱方法に限らず、例えば、1段階で加熱する方法を採用してもよい。1段階で加熱する方法の場合、例えば、上記の第2段階以降の加熱条件のみによってイミド化を完了させてもよい。
【0153】
以上、本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法について説明したが、本実施形態に係るポリイミド膜の製造方法は、これに限定されるものではない。
例えば、ポリイミド前駆体溶液中に粒子を含有させた状態で、(P-4)工程中又は(P-4)工程後に粒子を除去し、多孔質ポリイミド膜を得てもよい。
【実施例0154】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例により限定されるものではない。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。なお、特に断りがない限り「部」は「質量部」を意味する。
【0155】
-樹脂粒子分散液の準備-
スチレン670質量部、界面活性剤Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)12.1質量部、イオン交換水670質量部を混合し、ディゾルバーにより、1,500回転で30分間攪拌、乳化を行い、単量体乳化液を作製した。
反応容器に、Dowfax2A1(47%溶液、ダウ・ケミカル社製)1.10質量部、イオン交換水1500質量部を投入した。窒素気流下、75℃に加熱した後、単量体乳化液のうち70質量部を添加した後に、過硫酸アンモニウム15質量部をイオン交換水98質量部に溶解させた重合開始剤溶液を10分かけて滴下した。滴下後50分間反応させた後に、残りの単量体乳化液を220分かけて滴下し、さらに50分間反応させた後、冷却して、樹脂粒子分散液を得た。この樹脂粒子の平均粒径は0.81μmであった。
【0156】
<実施例1~18、比較例1~2>
(ポリイミド前駆体溶液1の作製)
イオン交換水780部を窒素気流下で50℃に加熱し、撹拌しながらp-フェニレンジアミン(以下、「PDA」とも称す。)18.81部、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、「BPDA」とも称す。)51.19部を添加した。続いて、イミダゾール化合物、3級アミン化合物、及びイオン交換水を、それぞれ表1に示す種類、量、及びモル数で、窒素気流下、50℃で、撹拌しながら120分かけて添加した。なお、前記イオン交換水の添加は、水の含有量が水性溶剤全体に対して表1に示す量となるようにイオン交換水を添加した。そして、この混合物を、50℃で15時間反応させることでポリイミド前駆体溶液1~18、c1~c2を得た。
【0157】
各例のポリイミド前駆体溶液は、樹脂粒子の含有率が60質量%であった。また、ポリイミド前駆体溶液に含まれるポリイミド前駆体の重量平均分子量は40000であった。
得られたポリイミド前駆体溶液の下記の性質を表1に示す。
【0158】
(多孔質ポリイミド膜の作製)
各例で得られたポリイミド前駆体溶液を、厚さ1.0mmのガラス基板上に、アプリケーターを用いて10cm×10cmの面積で塗布し、80℃のオーブンで30分乾燥することで皮膜を得た。なお、アプリケーターのギャップを、乾燥後の皮膜における膜厚の平均値が30μmになるように調整した。皮膜が形成されたガラス基板を、400℃に加熱したオーブンの中で2時間静置することで皮膜を焼成した後、イオン交換水に浸漬してガラス基板から剥離し、乾燥することで、多孔質ポリイミド膜を得た。
【0159】
各例の多孔質ポリイミド膜について、断面平均細孔径、第一表面細孔径、第二表面細孔径、比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)、比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)、空孔率、透気度のそれぞれの値を表2に示す。また、各例の多孔質ポリイミド膜の層構成を表2に示す。各性質は先述の測定方法によって測定した。
【0160】
<ろ過性の評価>
各例の多孔質ポリイミド膜を、2cm×2cm×厚み40μmに切削し、試験片とした。得られた試験片を減圧濾過用フィルターホルダー(ADVANTEC社製、KGS-04)のファンネルとベース部との間に挟み込んでセットした。そして、粒子を含有した液20mLが通過するまでのろ過速度を、透過時間(min)として測定した。得られた透過時間を、ろ過性の評価結果として表2に示す。
【0161】
表1中のイミダゾール化合物の種類及び3級アミン化合物の種類の欄に記載された略称の、化合物名は下記の通りである。
・4MZ:4-メチルイミダゾール
・DMZ:1,2-ジメチルイミダゾール
・2E4MZ:2-エチル-4-メチルイミダゾール
【0162】
・MMO:N-メチルモルホリン
・TEA:トリエチルアミン
・MDEA:N-メチル-ジエタノールアミン
・Py:ピリジン
・DMAP:4-ジメチルアミノピリジン
【0163】
表2中、評価項目における「-」は、透気性が著しく低く、透気度の測定及びろ過性の評価が不可能であったことを示す。
【0164】
表1中に記載された、イミダゾール化合物の「部」は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、イミダゾール化合物の質量部である。
表1中に記載された、イミダゾール化合物の「モル数」は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、イミダゾール化合物の質量部をgとしたときのモル数である。
表1中に記載された、イミダゾール化合物の「モル数の比率(対酸二無水物)」は、テトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率である。
【0165】
表1中に記載された、3級アミン化合物の「部」は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、3級アミン化合物の質量部である。
表1中に記載された、3級アミン化合物の「モル数」は、ポリイミド前駆体溶液に含まれる、3級アミン化合物の質量部をgとしたときのモル数である。
表1中に記載された、3級アミン化合物の「モル数の比率(対酸二無水物)」は、テトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率である。
表1中に記載された、3級アミン化合物の「モル数の比率」は、イミダゾール化合物のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率である。
【0166】
【表1】
【0167】
【表2】
【0168】
表に示された結果から、実施例のポリイミド前駆体溶液を用いて作製された多孔質ポリイミド膜は、比較例のポリイミド前駆体溶液を用いて作製された多孔質ポリイミド膜に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れることがわかった。
【0169】
(((1))) 断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5以上10以下である、多孔質ポリイミド膜。
(((2)))前記第一表面細孔径は50nm以上2μm以下である、前記(((1)))に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((3))) 前記第一表面細孔径は50nm以上1.8μm以下である、前記(((2)))に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((4))) 前記断面平均細孔径は250nm以上20μm以下である、前記(((1)))~(((3)))のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((5))) 前記断面平均細孔径は250nm以上18μm以下である、前記(((4)))に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((6))) 透気度が20秒以下である、前記(((1)))~(((5)))のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((7))) 空孔率が40%以上である、前記(((1)))~(((6)))のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((8))) 断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2以上5以下である、前記(((1)))~(((7)))のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((9))) 前記第二表面細孔径は100nm以上15μm以下である、前記(((8)))に記載の多孔質ポリイミド膜。
(((10))) 単層である、前記(((1)))~(((9)))のいずれか1項に記載の多孔質ポリイミド膜。
【0170】
(((11))) 水を含む水性溶剤と、
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、
樹脂粒子と、
イミダゾール化合物と、
前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、
を含有し、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上10倍モル以下であり、
前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上18倍モル以下である、
ポリイミド前駆体溶液。
(((12))) 前記イミダゾール化合物の沸点と前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物の沸点との差が30℃以上200℃以下である、前記(((11)))に記載のポリイミド前駆体溶液。
(((13))) 前記イミダゾール化合物の沸点と前記樹脂粒子の融点との差が20℃以上50℃以下である、前記(((11)))又は(((12)))に記載のポリイミド前駆体溶液。
(((14))) 前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%以上である、前記(((11)))~(((13)))のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(((15))) 前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル以上6倍モル以下である、前記(((11)))~(((14)))のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体溶液。
(((16))) 前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル以上15倍モル以下である、前記(((15)))に記載のポリイミド前駆体溶液。
(((17))) 前記(((11)))に記載のポリイミド前駆体溶液を基材上に塗布して塗膜を形成する工程(P-1)と、
前記塗膜を乾燥させて、乾燥膜を形成する工程(P-2)と、
前記乾燥膜を基材から剥離する工程(P-3)と、
前記乾燥膜を焼成し、前記乾燥膜に含まれる前記ポリイミド前駆体をイミド化して多孔質ポリイミド膜を形成する工程(P-4)と、
を有する多孔質ポリイミド膜の製造方法。
【0171】
(((1)))に係る発明によれば、断面平均細孔径(μm)と、一方の面における第一表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第一表面細孔径)が5未満又は10超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
【0172】
(((2)))に係る発明によれば、前記第一表面細孔径が50nm未満又は2μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((3)))に係る発明によれば、前記第一表面細孔径が50nm未満又は1.8μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((4)))に係る発明によれば、前記断面平均細孔径が250nm未満又は20μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((5)))に係る発明によれば、前記断面平均細孔径が250nm未満又は18μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((6)))に係る発明によれば、透気度が20秒超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((7)))に係る発明によれば、空孔率が40%未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((8)))に係る発明によれば、断面平均細孔径(μm)と、前記一方の面の対面における第二表面細孔径(μm)との比(断面平均細孔径/第二表面細孔径)が2未満又は5超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((9)))に係る発明によれば、前記第二表面細孔径は100nm未満又は15μm超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((10)))に係る発明によれば、積層体である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が提供される。
(((11)))に係る発明によれば、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満、又は、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((12)))に係る発明によれば、前記イミダゾール化合物の沸点と前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物の沸点との差が30℃未満又は200℃超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((13)))に係る発明によれば、前記イミダゾール化合物の沸点と前記樹脂粒子の融点との差が20℃未満又は50℃超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((14)))に係る発明によれば、前記水の含有量が前記水性溶剤に対して50質量%未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((15)))に係る発明によれば、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満又は6倍モル超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((16)))に係る発明によれば、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満又は15倍モル超えである場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜が得られるポリイミド前駆体溶液が提供される。
(((17)))に係る発明によれば、水を含む水性溶剤と、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリイミド前駆体と、樹脂粒子と、イミダゾール化合物と、前記イミダゾール化合物以外の3級アミン化合物と、を含有するポリイミド前駆体溶液において、前記ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記イミダゾール化合物のモル数の比率が2倍モル未満、又は、ポリイミド前駆体のテトラカルボン酸二無水物成分のモル数に対する前記3級アミン化合物のモル数の比率が2倍モル未満である場合に比べて、ろ過性と透気性の両方に優れる多孔質ポリイミド膜の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0173】
L 仮想線
E 細孔の縁
P1 円相当径をもとめる細孔
図1