(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072401
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
H01L21/304 651Z
H01L21/304 648A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183178
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】本野 智大
(72)【発明者】
【氏名】安藤 幸嗣
(72)【発明者】
【氏名】墨 周武
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 圭
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AB02
5F157AB14
5F157AB33
5F157AC03
5F157AC15
5F157CB14
5F157CB26
5F157CB27
5F157CF22
5F157CF24
5F157CF66
5F157CF92
5F157CF93
5F157DB37
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止する。
【解決手段】本発明に係る基板処理装置は、支持トレイと、基板を支持する支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、基板の上面に沿って内部空間の一方端側から他方端側に処理流体を流す流体供給部と、を備えている。この支持トレイは、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、基板対向面を取り囲むようにトレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有しており、支持部材により基板対向面から基板を上方に離間させた状態で基板を支持する。トレイ部材は、複数の支持部材により支持された基板の下流側、つまり内部空間の他方端側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設される下流側立設部位を有し、下流側立設部位の上面が、上下方向において、複数の支持部材により支持された基板の上面よりも低くなっている。
【選択図】
図2C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置であって、
前記基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、前記基板対向面を取り囲むように前記トレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有し、前記支持部材により前記基板対向面から前記基板を上方に離間させた状態で前記基板を支持する支持トレイと、
前記基板を支持する前記支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、
前記内部空間の一方端側から前記内部空間に前記処理流体を供給することで、前記支持トレイに支持された前記基板の上面に沿って前記内部空間の他方端側に流れる前記処理流体の層流を形成する流体供給部と、を備え、
前記基板対向面の中心を通過するとともに前記層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、前記内部空間の他方端側を下流側としたとき、
前記トレイ部材は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の前記下流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設される下流側立設部位を有し、
前記下流側立設部位の上面が、上下方向において、前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面よりも低いことを特徴とする、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記下流側立設部位の上面は、前記流れ方向に進むにしたがって低くなる傾斜面である、基板処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記基板対向面の中心を通過するとともに前記流れ方向と平行に延びる第2仮想線に対して前記第1仮想線の一方側および他方側をそれぞれ左側および右側としたとき、
前記傾斜面は、前記第2仮想線から左側に進むにしたがって低くなる左側傾斜領域と、前記第2仮想線から右側に進むにしたがって低くなる右側傾斜領域と、を有する、基板処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の基板処理装置であって、
前記左側傾斜領域のうち最も低い部位に対して上下方向に貫通する左側貫通孔が設けられるとともに、前記右側傾斜領域のうち最も低い部位に対して上下方向に貫通する右側貫通孔が設けられる、基板処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記下流側立設部位に対して上下方向に貫通する下流側貫通孔が設けられる、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記トレイ部材のうち前記基板対向面を有する領域に対して前記下流側立設部位に近接して上下方向に貫通する基板対向側貫通孔が設けられる、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記下流側立設部位の上面と、前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面との上下方向におけるギャップは0.5mm以上である、基板処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の基板処理装置であって、
前記下流側立設部位と前記複数の支持部材により支持された前記基板との隣接領域において、前記下流側立設部位の上面と、前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面との上下方向におけるギャップは1.0mm以下である、基板処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし6のいずれか一項に記載の基板処理装置であって、
前記第1仮想線に対し、前記内部空間の一方端側を上流側としたとき、
前記トレイ部材は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の前記上流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設される上流側立設部位を有し、
前記上流側立設部位の上面が、上下方向において、前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面と同じ高さである、基板処理装置。
【請求項10】
その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理方法であって、
前記基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材に対して前記基板対向面を取り囲むように取り付けられた複数の支持部材により前記基板を前記基板対向面から上方に離間して支持する、支持トレイをチャンバーの内部空間に収容する収容工程と、
前記内部空間の一方端側から前記内部空間に前記処理流体を供給することで、前記支持トレイに支持された前記基板の上面に沿って前記内部空間の他方端側に流れる前記処理流体の層流を形成する供給工程と、
前記層流により前記基板の上面から前記処理流体とともに前記液体を前記内部空間の他方端側に排出する排出工程と、を備え、
前記基板対向面の中心を通過するとともに前記層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、前記内部空間の他方端側を下流側としたとき、
前記排出工程は、前記複数の支持部材により支持された前記基板の前記下流側の周面に近接しながら前記基板対向面よりも上方に立設され、その上面が上下方向において前記複数の支持部材により支持された前記基板の上面よりも低くなっている下流側立設部位を経由して行われる、
ことを特徴とする基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板を液体により湿式処理すると、当該基板の表面に液体が付着する。この湿式処理後に、当該基板を乾燥させる基板処理装置として、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。この装置では、平板状の支持トレイに浅い窪みが設けられている。そして、その窪みの中で、その表面を上方に向けたフェースアップ姿勢のまま基板が支持トレイの上面との間に微小な隙間を持ちつつ水平に支持される。この状態で支持トレイが処理チャンバーに搬入され、チャンバー内が超臨界状態の処理流体により満たされることで基板が処理(超臨界処理)される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
搬入時に基板を覆っていた液膜を構成する液体は、処理流体によって置換され、基板表面から除去されると想定されている。しかしながら、液体の一部が基板下面と支持トレイ上面との間の狭い隙間に入り込んでしまうことがある。隙間に残留した液体、つまり残液が基板の表面に逆流することがある。その結果、残液が基板の上面に再付着するという問題が生じ得る。
【0005】
このことから、超臨界処理において、残液が基板の上面に逆流するのを防止することが求められる。この点において、上記従来技術には改良の余地が残されていると言える。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを防止することができる基板処理装置および基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理装置であって、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材と、基板対向面を取り囲むようにトレイ部材に取り付けられた複数の支持部材とを有し、支持部材により基板対向面から基板を上方に離間させた状態で基板を支持する支持トレイと、基板を支持する支持トレイを収容可能な内部空間を有するチャンバーと、内部空間の一方端側から内部空間に処理流体を供給することで、支持トレイに支持された基板の上面に沿って内部空間の他方端側に流れる処理流体の層流を形成する流体供給部と、を備え、基板対向面の中心を通過するとともに層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、内部空間の他方端側を下流側としたとき、トレイ部材は、複数の支持部材により支持された基板の下流側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設される下流側立設部位を有し、下流側立設部位の上面が、上下方向において、複数の支持部材により支持された基板の上面よりも低いことを特徴としている。
【0008】
また、本発明の他の態様は、その上面に液体が付着する基板を超臨界状態の処理流体により処理する基板処理方法であって、基板の下面と対向する基板対向面を有するトレイ部材に対して基板対向面を取り囲むように取り付けられた複数の支持部材により基板を基板対向面から上方に離間して支持する、支持トレイをチャンバーの内部空間に収容する収容工程と、内部空間の一方端側から内部空間に処理流体を供給することで、支持トレイに支持された基板の上面に沿って内部空間の他方端側に流れる処理流体の層流を形成する供給工程と、層流により基板の上面から処理流体とともに液体を内部空間の他方端側に排出する排出工程と、を備え、基板対向面の中心を通過するとともに層流の流れ方向と直交する水平方向に延びる第1仮想線に対し、内部空間の他方端側を下流側としたとき、排出工程は、複数の支持部材により支持された基板の下流側の周面に近接しながら基板対向面よりも上方に立設され、その上面が上下方向において複数の支持部材により支持された基板の上面よりも低くなっている下流側立設部位を経由して行われる、ことを特徴としている。
【0009】
このように構成された発明では、支持トレイがその基板対向面から上方に基板を離間しながら支持している。また、支持トレイでは、基板の下流側の周面に近接して下流側立設部位が設けられている。本発明では、下流側立設部位の上面が支持トレイに支持された基板の上面よりも低くなっている。したがって、基板の下面と基板対向面との間に進入した液体の一部、いわゆる残液が逆流したとき、当該残液は下流側立設部位の上面側に流れる。このため、基板の上面への残液の再付着は防がれる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明では、下流側立設部位の上面が上下方向において基板の上面よりも低くなるように、支持トレイが構成されている。そのため、処理流体によって基板から液体を除去した際に、当該液体が基板に再付着するのを効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。
【
図2A】支持トレイの第1実施形態を示す斜視図である。
【
図3】従来技術における支持トレイの構造を模式的に示す図である。
【
図4】支持トレイの第2実施形態を示す斜視図である。
【
図5A】支持トレイの第3実施形態を示す平面図である。
【
図6】支持トレイの第4実施形態を示す斜視図である。
【
図7A】支持トレイの第5実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る基板処理装置のいくつかの実施形態について説明するが、各実施形態の間では後述する支持トレイの構造が一部異なるものの、基本的な装置構成は共通である。そこで、まず基板処理装置の全体構成について説明し、その後に、各実施形態の特徴部分について分説する。
【0013】
<装置の全体構成>
図1は本発明を適用可能な基板処理装置の全体構成を示す図である。この基板処理装置1は、例えば半導体基板のような各種基板の上面を超臨界流体により処理するための装置である。例えば、基板に付着する液体(
図2、
図4、
図6中の符号L)を超臨界処理流体により置換して基板を乾燥させる超臨界乾燥処理を、この基板処理装置1は実行可能である。以下の各図における方向を統一的に示すために、
図1に示すようにXYZ直交座標系を設定する。ここで、XY平面は水平面であり、Z方向は上下方向を表す。より具体的には、(-Z)方向が下向きを表す。
【0014】
ここで、本実施形態における「基板」としては、半導体ウエハ、フォトマスク用ガラス基板、液晶表示用ガラス基板、プラズマ表示用ガラス基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板などの各種基板を適用可能である。以下では主として半導体ウエハの処理に用いられる基板処理装置を例に採って図面を参照して説明するが、上に例示した各種の基板の処理にも同様に適用可能である。また、以下の説明において、一方主面のみに回路パターン等が形成されている基板Sを例として用いる。ここで、回路パターン等が形成されている主面の側を「表面」と称し、その反対側の回路パターン等が形成されていない主面を「裏面」と称する。また、下方に向けられた基板Sの面を「下面」と称し、上方に向けられた基板Sの面を「上面」と称する。尚、以下においては基板Sの表面が上方に向けられた姿勢、つまり当該表面を上面とした姿勢の基板Sに対して処理する場合を例示して説明する。
【0015】
基板処理装置1は、処理ユニット10、移載ユニット30、供給ユニット50および制御ユニット90を備えている。処理ユニット10は、超臨界乾燥処理の実行主体となるものであり、移載ユニット30は、図示しない外部の搬送装置により搬送されてくる未処理基板を受け取って処理ユニット10に搬入し、また処理後の基板を処理ユニット10から外部の搬送装置に受け渡す。供給ユニット50は、処理に必要な化学物質および動力を処理ユニット10および移載ユニット30に供給する。
【0016】
制御ユニット90は、これら装置の各部を制御して所定の処理を実現する。この目的のために、制御ユニット90には、各種の制御プログラムを実行するCPU91、処理データを一時的に記憶するメモリ92、CPU91が実行する制御プログラムを記憶するストレージ93、およびユーザーや外部装置と情報交換を行うためのインターフェース94などを備えている。後述する装置の動作は、CPU91が予めストレージ93に書き込まれた制御プログラムを実行し装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。
【0017】
処理ユニット10は、台座11の上に処理チャンバー12が取り付けられた構造を有している。処理チャンバー12は、いくつかの金属ブロックの組み合わせにより構成され、その内部が空洞となって内部空間SPを構成している。処理対象の基板Sは内部空間SP内に搬入されて処理を受ける。処理チャンバー12の(-Y)側側面には、X方向に細長く延びるスリット状の開口121が形成されており、開口121を介して内部空間SPと外部空間とが連通している。
【0018】
処理チャンバー12の(-Y)側側面には、開口121を閉塞するように蓋部材13が設けられている。蓋部材13の(+Y)側側面には平板状の支持トレイ15が水平姿勢で取り付けられており、支持トレイ15の上面は基板Sを載置可能な支持面となっている。蓋部材13は図示を省略する支持機構により、Y方向に水平移動自在に支持されている。
【0019】
蓋部材13は、供給ユニット50に設けられた進退機構53により、処理チャンバー12に対して進退移動可能となっている。具体的には、進退機構53は、例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構を有しており、このような直動機構が蓋部材13をY方向に移動させる。進退機構53は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0020】
図1に点線で示すように、蓋部材13が(-Y)方向に移動することにより、支持トレイ15が内部空間SPから開口121を介して外部へ引き出されると、支持トレイ15へのアクセスが可能となる。すなわち、支持トレイ15への基板Sの載置、および支持トレイ15に載置されている基板Sの取り出しが可能となる。一方、蓋部材13が(+Y)方向に移動することにより、
図1に実線で示すように、支持トレイ15は内部空間SP内へ収容される。支持トレイ15に基板Sが載置されている場合、基板Sは支持トレイ15とともに内部空間SPに搬入される。
【0021】
蓋部材13が(+Y)方向に移動し開口121を塞ぐことにより、内部空間SPが密閉される。なお、図示を省略しているが、蓋部材13の(+Y)側側面と処理チャンバー12の(-Y)側側面との間にはシール部材が設けられ、内部空間SPの気密状態が保持される。また、図示しないロック機構により、蓋部材13は処理チャンバー12に対して固定される。このようにして内部空間SPの気密状態が確保された状態で、内部空間SP内で基板Sに対する処理が実行される。
【0022】
液体の表面張力に起因するパターン倒壊を防止しつつ基板を乾燥させることを主たる目的とする超臨界乾燥処理においては、基板Sは、その上面Saが露出してパターン倒壊が発生するのを防止するために、上面Saが液膜で覆われた状態で搬入される。液膜を構成する液体としては、例えばイソプロピルアルコール(IPA)、アセトン等の表面張力が比較的低い有機溶剤を好適に用いることができる。
【0023】
この実施形態では、供給ユニット50に設けられた流体供給部57から、超臨界処理に利用可能な物質の流体、例えば二酸化炭素が、気体または液体の状態で処理ユニット10に供給される。二酸化炭素は比較的低温、低圧で超臨界状態となり、また基板処理に多用される有機溶剤をよく溶かす性質を有するという点で、超臨界乾燥処理に好適な化学物質である。
【0024】
流体は内部空間SPに充填され、内部空間SP内が適当な温度および圧力に到達すると、流体は超臨界状態となる。こうして基板Sが処理チャンバー12内で超臨界流体により処理される。供給ユニット50には流体回収部55が設けられており、処理後の流体は流体回収部55により回収される。流体供給部57および流体回収部55は制御ユニット90により制御されている。
【0025】
移載ユニット30は、外部の搬送装置と支持トレイ15との間における基板Sの受け渡しを担う。この目的のために、移載ユニット30は、本体31と、昇降部材33と、ベース部材35と、それぞれが複数設けられたリフトピン37とを備えている。昇降部材33はZ方向に延びる柱状の部材であり、本体31によりZ方向に移動自在に支持されている。
【0026】
昇降部材33の上部には略水平の上面を有するベース部材35が取り付けられており、ベース部材35の上面から上向きに、複数のリフトピン37が立設されている。リフトピン37の各々は、その上端部が基板Sの下面に当接することで基板Sを下方から水平姿勢に支持する。基板Sを安定的に支持するために、上端部の高さが互いに等しい3以上のリフトピン37が設けられることが望ましい。
【0027】
昇降部材33は、供給ユニット50に設けられた昇降制御部51により制御されて昇降移動可能となっている。具体的には、移載ユニット30の本体31には例えばリニアモーター、直動ガイド、ボールねじ機構、ソレノイド、エアシリンダー等の直動機構(図示省略)が設けられており、このような直動機構が昇降制御部51に制御されて昇降部材33をZ方向に移動させる。昇降制御部51は制御ユニット90からの制御指令に応じて動作する。
【0028】
昇降部材33の昇降によりベース部材35が上下動し、これと一体的に複数のリフトピン37が上下動する。これにより、移載ユニット30と支持トレイ15との間での基板Sの受け渡しが実現される。具体的は以下の通りである。
【0029】
後述するように、支持トレイ15には、移載ユニット30のリフトピン37に対応する貫通孔が設けられている。すなわち、支持トレイ15が処理チャンバー12から引き出されたときに各リフトピン37の真上に対応する位置のそれぞれに、貫通孔が形成されている。昇降部材33の昇降によりベース部材35が上昇すると、リフトピン37は支持トレイ15の貫通孔を通ってその先端が支持トレイ15の上面よりも高い位置まで到達する。この状態で、外部の搬送手段、例えば基板を保持可能なハンドを有する搬送ロボットにより搬送されてきた未処理の基板Sがリフトピン37に受け渡される。
【0030】
基板Sを支持するリフトピン37が下降すると基板Sも下降し、基板Sが支持トレイ15の上面に接触した状態からさらにリフトピン37が下降することで、基板Sはリフトピン37から支持トレイ15に受け渡されて、支持トレイ15により支持された状態となる。このようにして、基板処理装置1への基板Sの搬入が実現される。最終的にリフトピン37は、蓋部材13の開閉動作に干渉しない位置まで下降する。
【0031】
基板処理装置1からの処理済み基板Sの搬出は、上記とは逆の動作により実現される。すなわち、基板Sが支持トレイ15に支持された状態でリフトピン37が上昇し、基板Sを持ち上げる。こうしてできた基板Sの下面と支持トレイ15の上面との間に搬送ロボットのハンドを進入させて、基板Sをリフトピン37から搬送ロボットに受け渡すことができる。
【0032】
以上のように、この基板処理装置1では、基板Sに対する超臨界乾燥処理が行われる。この処理の一連の流れは以下の通りである。まず、上面Saが液膜で覆われた基板Sが外部から搬入され、支持トレイ15に載置される。支持トレイ15が処理チャンバー12の内部空間SPに進入することで、基板Sが内部空間SPに収容される(収容工程)。そして、蓋部材13により内部空間SPが閉塞された状態で、流体供給部57から気体または液体状の処理流体が内部空間SPに供給される(供給工程)。処理流体は、支持トレイ15に支持された基板Sの上面Saに沿って(+Y)方向側から(-Y)方向側に流れる。この層流状態の処理流体が内部空間SPで加圧されて超臨界状態となり、これにより基板S上の液体が超臨界処理流体により置換される。流体供給部57からの処理流体の供給および流体回収部55による排出を一定期間継続することで、基板Sから離脱した液体は排出される(排出工程)。最終的に、処理流体が超臨界状態から液相を介さずに気相に相転移し排出されることで、基板Sは乾燥状態となる。
【0033】
次に、上記した基板処理装置1における支持トレイ15のいくつかの実施形態(支持トレイ15A~15E)について説明する。各実施形態の間では支持トレイ15の構造が部分的に異なっているが、その他の点では共通しており、その動作も上記した通りのものである。なお、以下の各実施形態の説明において、構造や機能が共通または類似する構成については共通のまたは対応する符号を付し、それらについては説明を繰り返さないこととする。また、複数の図面間で相互に対応関係が明らかな構成については、一部の図面における符号の記載を省略することがある。
【0034】
<第1実施形態>
図2Aは支持トレイの第1実施形態を示す斜視図である。
図2Bは
図2Aに示す支持トレイの平面図である。
図2Cおよび
図2Dは、それぞれ
図2BのC-C線断面図およびD-D線断面図である。第1実施形態の支持トレイ15Aは、トレイ部材151と、複数の支持ピン152とを有している。トレイ部材151は、例えば平板状の構造体の水平かつ平坦な上面に、基板Sの平面サイズに対応した、より具体的には円形の基板Sの直径より僅かに大きい直径を有する窪み153を設けた構造を有している。窪み153の底面153aは水平面となっており、本発明の「基板対向面」の一例に相当する。
【0035】
窪み153は部分的にトレイ部材151の側面154まで延びている。つまり、窪み153の側壁面は円形ではなく、部分的に切り欠かれている。このため、この切り欠き部分153bでは、窪み153の底面153aの一部は直接側面154に接続している。この例では、支持トレイ15AのX側両端部および(+Y)側端部にこのような切り欠き部分153bが設けられており、これらの部位において、底面153aが側面154に直接接続している。また、切り欠き部分153bを設けたことで、トレイ部材151において、3つの立設部位155~157が存在している。なお、トレイ部材151は平板状のベースプレートであり、立設部位155~157は、トレイ部材(ベースプレート)151上に設置または一体的に形成された平板状のプレートであるが、その詳しい構造および機能については、後で詳述する。
【0036】
また、底面153aのうち移載ユニット30のリフトピン37に対応する位置には、リフトピン37を挿通させるための貫通孔158が穿設されている。貫通孔158を通ってリフトピン37が昇降することで、基板Sが窪み153に収容された状態と、これより上方へ持ち上げられた状態とが実現される。
【0037】
窪み153の周縁部には複数の支持ピン152が配置されている。支持ピン152の配設数は任意であるが、基板Sを安定的に支持するという点からは3以上であることが望ましい。本実施形態では、3つの支持ピン152が、上方からの平面視で底面153aを取り囲むように、それぞれ立設部位155~157に取り付けられている。
図2A中の部分拡大図に示すように、支持ピン152は高さ規制部位152aと水平位置規制部位152bとを有している。
【0038】
高さ規制部位152aは、上面が平坦となっており、基板Sの下面Sbの周縁部に当接することで、基板Sを支持するとともにその上下方向Zにおける位置(以下「高さ位置」という)を規制する。一方、水平位置規制部位152bは、高さ規制部位152aの上端よりも上方まで延びており、基板Sの側面に当接することで、基板Sの水平方向(XY方向)における位置を規制する。このような支持ピン152により、
図2Cおよび
図2Dに示すように、基板Sは窪み153の底面153aと対向しながら底面153aから上方に離間した水平姿勢で支持される。なお、こうして支持された基板Sの上面Saは、
図2Cおよび
図2Dに示すように、高さ位置H1に位置している。
【0039】
次に、立設部位155~157の構成および機能について、
図2Aないし
図2Dを参照しつつ説明する。ここで、立設部位155~157の位置関係を明確にするため、
図2Bに示すように、本明細書では、第1仮想線VL1および第2仮想線VL2を定義する。すなわち、第1仮想線VL1は、底面153aの中心153cを通過するとともに処理液の層流の流れ方向Yと直交する水平方向Xに延びる線を意味する。第2仮想線VL2は、底面153aの中心153cを通過するとともに流れ方向Yと平行に延びる線を意味する。
【0040】
立設部位155、156は、第1仮想線VL1に対し、ともに内部空間SPの(+Y)方向側に位置するとともに、第2仮想線VL2に対し、それぞれ(+X)方向側および(-X)方向側に振り分けられている。また、上下方向Zにおいて、それらの上面155a、156aがともに支持ピン152により支持された基板Sの上面Saの高さ位置H1と一致するように、立設部位155、156は当該基板Sの周面に近接して設けられている。このため、立設部位155、156の上面155a、156aを経由して基板Sの上面Saに処理流体が流れたとき、処理流体により形成される層流において乱れが発生することなく、基板S上の液体Lが超臨界処理流体により効率よく置換される。なお、本明細書では、処理流体の流れ方向Yにおいて、第1仮想線VL1に対して内部空間SPの(+Y)方向側および(-Y)方向側をそれぞれ「上流」および「下流」と称する。
【0041】
これに対し、立設部位157は、第1仮想線VL1に対し、内部空間SPの(-Y)方向側、つまり下流側に位置する。また、上下方向Zにおいて、その上面157aが支持ピン152により支持された基板Sの上面Saの高さ位置H1よりも低い位置H2に位置するように、立設部位157は当該基板Sの周面に近接して設けられている。すなわち、
図2Cおよび
図2Dに示すように、立設部位157の上面157aはギャップGPだけ基板Sの上面Saよりも低くなっている。このため、次のような作用効果が得られる。ここでは、従来技術のように、立設部位157の上面157aを基板Sの上面Saと一致させた構成を従来例として
図3に示すとともに、従来例と比較しながら作用効果について説明する。
【0042】
図3は従来技術における支持トレイの構造を模式的に示す図である。
図3に示す従来技術では、第1実施形態の立設部位157に相当する立設部位159は、支持ピン152により支持された基板Sの上面Saの高さ位置H1と一致するように、当該基板Sの周面に近接して設けられている。このため、基板Sの下面Sbと支持トレイ15の底面153aとの間の狭いギャップに入り込んで残留した残液Laが逆流すると、基板Sの上面Saと立設部位159の上面159aとが上下方向Zにおいて同一高さであることから、残液Laの一部が基板Sの上面Saに再付着することがあった。
【0043】
これに対し、第1実施形態では、
図2Cおよび
図2Dに示すように、立設部位157の上面157aは、基板Sの上面Saよりも低くなっている。そのため、逆流してきた残液Laは立設部位157の上面157aに流れ、基板Sへの残液Laの逆流が効果的に防止される。その結果、基板処理装置1により基板Sを良好に乾燥することができる。
【0044】
上記逆流防止効果を効果的に発揮するためには、
図2Cおよび
図2Dに示すように、立設部位157と支持ピン152により支持された基板Sとの隣接領域Rにおいて、立設部位157の上面157aと、基板Sの上面Saとの上下方向ZにおけるギャップGP(=H1-H2)が0.5mm以上であることが好ましい。ただし、本願発明者の知見では、ギャップGPが1.0mmを超えると、上記隣接領域Rで処理流体の乱流が発生する可能性が高くなり、隣接領域Rでの超臨界処理流体による液体Lの置換効率を低下させることがある。したがって、ギャップGPについては、0.5mm以上1.0mm以下に設定するのが好適である。
【0045】
このように第1実施形態では、支持ピン152が本発明の「支持部材」の一例に相当している。また、内部空間SPの(+Y)方向側および(-Y)方向側が、それぞれ本発明の「内部空間の一方端側」および「内部空間の他方端側」に相当している。立設部位155、156が本発明の「上流側立設部位」の一例に相当する一方、立設部位157が本発明の「下流側立設部位」の一例に相当している。
【0046】
<第2実施形態>
図4は支持トレイの第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態が第1実施形態と大きく相違する点は、立設部位157の上面157aの形状である。つまり、第1実施形態の支持トレイ15Aでは、上面157aはいずれの領域も高さ位置H2を有する単一の水平面である。これに対し、第2実施形態の支持トレイ15Bでは、上面157aは傾斜面で構成されている。この傾斜面は、第1実施形態と同様に隣接領域Rで高さ位置H2であるものの、処理流体の流れ方向Y、つまり(+Y)方向側から(-Y)方向側に進むにしたがって低くなっている。しかも、上記第2仮想線VL2に対して第1仮想線VL1の(+X)方向側および(-X)方向側をそれぞれ左側および右側としたとき、立設部位157の上面157aは、第2仮想線VL2から左側に進むにしたがって低くなる左側傾斜領域157a1と、第2仮想線VL2から右側に進むにしたがって低くなる右側傾斜領域157a2と、を有している。このため、基板Sの上面Saを通過してきた処理流体はもちろんのこと、逆流してきた残液La(
図2C、
図2D参照)を、
図4中の2点鎖線で示すように、左右に振り分けながら支持トレイ15の(+X)側端面および(-X)側端面から効率的に排出することができる。その結果、第1実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。
【0047】
<第3実施形態>
図5Aは支持トレイの第3実施形態を示す平面図である。また、
図5Bは
図5AのB-B線断面図である。第3実施形態の支持トレイ15Cが第1実施形態の支持トレイ15Aと大きく相違する点は、立設部位157の(-Y)側端部を上下方向Zに貫通する貫通孔157b、157cが追加されている点である。一方の貫通孔157bは第2仮想線VL2に対して左側、つまり(+X)方向側に設けられる一方、他方の貫通孔157cは第2仮想線VL2に対して右側、つまり(-X)方向側に設けられている。このため、基板Sの上面Saを通過してきた処理流体はもちろんのこと、逆流してきた残液La(
図2C、
図2D参照)も、
図5Bに示すように、貫通孔157bから効率的に排出することができる。また、上記貫通孔157bと同様に、貫通孔157cからも処理流体および残液Laが排出される。その結果、第1実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。
【0048】
この第3実施形態では、貫通孔157b、157cが本発明の「下流側貫通孔」の一例に相当しており、第2仮想線VL2に対して(+X)方向側の貫通孔157bが「左側貫通孔」に相当し、(-X)方向側の貫通孔157cが「右側貫通孔」に相当している。
【0049】
<第4実施形態>
図6は支持トレイの第4実施形態を示す斜視図である。第4実施形態の支持トレイ15Dは、第1実施形態の支持トレイ15Aに対し、第2実施形態で採用した傾斜面構成と、第3実施形態で採用した下流側貫通孔とを追加したものである。この第4実施形態の支持トレイ15Dでは、
図6に示すように、左側傾斜領域157a1のうち(+X)方向側でかつ(-Y)方向側に位置する部位(以下「左側低位部位」という)が上下方向Zにおいて最も低くなっており、当該部位に左側貫通孔157bが設けられている。また、右側傾斜領域157a2のうち(-X)方向側でかつ(-Y)方向側に位置する部位(以下「右側低位部位」という)が上下方向Zにおいて最も低くなっており、当該部位に右側貫通孔157cが設けられている。隣接領域Rに流れてきた処理流体および残液Laは立設部位157の上面157aに沿って左側低位部位および右側低位部位に集められた後、貫通孔157b、157cを介して支持トレイ15の下方に排出される。その結果、第1実施形態ないし第3実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。
【0050】
<第5実施形態>
図7Aは支持トレイの第5実施形態を示す平面図である。また、
図7Bは
図7AのB-B線断面図である。第5実施形態の支持トレイ15Eが第1実施形態の支持トレイ15Aと大きく相違する点は、隣接領域Rにおいて底面153aを上下方向Zに貫通する貫通孔153dが追加されていることである。底面153aは本発明の「基板対向面」に相当し、その一部にはリフトピン37を挿通させるための貫通孔158(
図7A)が設けられている。したがって、残液Laの一部は当該貫通孔158を介して支持トレイ15Eの下方に排出される。このような排液機構が備わっている点については、従来技術(
図3)と同様であるが、第5実施形態では貫通孔158以外に、貫通孔153dも排液機構として機能する。したがって、貫通孔153dを追加設置した分だけ、逆流する残液Laの量が従来技術よりも減少する。その結果、第1実施形態よりもさらに効果的に基板Sへの残液Laの逆流を防止することができる。この効果を高めるためには、本発明の「基板対向側貫通孔」の一例に相当する貫通孔153dを貫通孔158よりも立設部位157に近い位置に設けるのが好適である。
【0051】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば、第5実施形態で採用した基板対向側貫通孔153dについては、第2実施形態ないし第4実施形態に追加適用してもよい。
【0052】
また、上記各実施形態では、支持ピン152により、基板Sを支持トレイ15の底面153aから離間させた状態で支持している。しかしながら、支持ピン152の設置に代えて、底面153aに突起部を設けて基板を支持するようにしてもよい。この場合、当該突起部が本発明の「支持部材」に該当することとなる。
【0053】
また、上記実施形態では、支持トレイ15にリフトピン37を挿通させるための貫通孔158が設けられているが、このようなリフトピン昇降用の貫通孔を設けない基板処理装置に対して本発明を適用してもよい。
【0054】
また、上記実施形態における各種の化学物質、例えばIPAおよび二酸化炭素は、使用され得る物質の代表的な事例として挙げたものであり、本発明の適用対象がこれらの物質を使用した技術に限定されることを意味するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、表面に液体が付着した基板を超臨界状態の処理流体によって処理する基板処理技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…基板処理装置
12…処理チャンバー
15,15A,15B,15C,15D,15E…支持トレイ
57…流体供給部
151…トレイ部材
152…支持ピン(支持部材)
153a…底面(基板対向面)
153c…(底面の)中心
153d…基板対向側貫通孔
155,156…(上流側)立設部位
157…(下流側)立設部位
157a…(下流側立設部位)の上面
157a1…左側傾斜領域
157a2…右側傾斜領域
157b…左側貫通孔
157c…右側貫通孔
GP…ギャップ
H1…(基板の上面の)高さ位置
H2…(下流側立設部位の上面の)高さ位置
L…液体
La…残液
R…隣接領域
S…基板
Sa…(基板の)上面
Sb…(基板の)下面
SP…内部空間
VL1…第1仮想線
VL2…第2仮想線
X…水平方向
Y…流れ方向
Z…上下方向