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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072402
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】釣竿
(51)【国際特許分類】
   A01K 87/00 20060101AFI20240521BHJP
【FI】
A01K87/00 630N
A01K87/00 610A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183179
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(72)【発明者】
【氏名】小澤 知之
(72)【発明者】
【氏名】松本 聖比古
【テーマコード(参考)】
2B019
【Fターム(参考)】
2B019AA05
2B019AD01
2B019AD05
2B019AD10
2B019AE02
(57)【要約】
【課題】夜間でも竿先部が容易に視認されるコスト安価な釣竿を提供すること。
【解決手段】この釣竿10は、元竿12及び穂先竿11と、元竿12に取り付けられる上栓21とを有する。上栓21は、発光部22を有する。釣竿10の収納状態において、穂先竿11は、元竿12内に収容される。上栓21が発元竿12に装着された状態で、前記発光部22が穂先竿11に光を発する。元竿12の内周面は、クロムメッキされている。前記発光部22は、前記光を拡散する拡散レンズを有する。上栓12は、弾性体からなる栓本体31を有し、発光部22は、栓本体31の内部に挿入される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿と、
前記元竿内に収容され、表面に蓄光部を有する被収容竿と、
前記元竿の先端部に着脱自在に設けられ、前記元竿内に向けて光を発する発光部を有する上栓と、
を備える釣竿。
【請求項2】
前記元竿は、内周面に前記光を鏡面反射させる鏡面部を有する、請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記鏡面部は、竿軸方向と非平行な第1面を有し、
前記光は、前記第1面に反射して前記被収容竿の少なくとも一部を照射する、請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記鏡面部は、クロムメッキを含む、請求項2に記載の釣竿。
【請求項5】
前記元竿は、内周面に前記光を拡散反射させる拡散部を有する、請求項1に記載の釣竿。
【請求項6】
前記発光部は、前記光を拡散する拡散レンズを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記発光部は、前記光を集光する集光レンズを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項8】
前記上栓は、前記元竿の先端部に嵌め込まれる弾性体を含む筒体を有し、
前記発光部は、前記筒体の内部に挿入される、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項9】
前記光は紫外線を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項10】
前記光は、可視光線を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項11】
前記発光部は、光源を有し、
前記光源は、エレクトロルミネセンス素子を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項12】
前記発光部に電力を供給する電源制御部をさらに備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項13】
前記電源制御部は、電池を有する、請求項12に記載の釣竿。
【請求項14】
前記被収容竿は、穂先竿を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の釣竿。
【請求項15】
前記穂先竿は、トップガイドを有し、
前記トップガイドは、前記蓄光部を含む、請求項14に記載の釣竿。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣竿の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
釣場に釣竿を固定し、仕掛けを水中に投入した状態で魚が掛かるのを待つ釣りにおいては、釣人にとって竿先部分が視認できることが重要である。ところが、夜間における釣りでは、釣竿の視認が困難であることから、いわゆるフッキングのタイミングを計ることが難しい。このため、夜間における釣竿の視認性を向上させる提案がなされている(たとえば、特許文献1及び特許文献2)。
【0003】
特許文献1に開示された釣竿は、穂先竿の内部に光源部が設けられ、且つこの穂先竿の先端に、前記光源部からの光を受けて発光する発光部が設けられている。前記光源部から発せられた光により前記発光部が光るので、釣人は、夜間でも竿先部を視認することができる。
【0004】
特許文献2に開示された釣竿は、元竿の後端部に光源が設けられ、且つ、穂先竿の先端部に、前記光源が発する光を受けて発光する発光部が設けられると共に、この釣竿の内面にクロームメッキが施されている。光源から発せられた光は、前記釣竿の内面を反射して前記発光部に達する。この発光部により前記穂先竿の先端部が光り、釣人は、夜間でも竿先部を視認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-125706号公報
【特許文献2】実開昭62-102371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された釣竿では、穂先竿のうち前記光源部が配置された部位における剛性が極端に高くなり、釣糸の張力の変化による穂先竿の変位が小さくなる。その結果、釣人は、いわゆるフッキングのタイミングが計りにくい。しかも、穂先竿に光源部を常時作動させる電源が必要であり、穂先竿の構造が複雑化して重量が増加し、釣竿の操作性が悪化する。
【0007】
特許文献2に開示された釣竿は、穂先竿の重量増加は抑えられるが、光源からの光を穂先竿まで伝播させるために釣竿全体にクロームメッキが必要であり、釣竿の製造コストが上昇するという問題がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、夜間でも竿先部が容易に視認されるコスト安価で操作性に優れた釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1) 本発明の第1側面に係る釣竿は、元竿と、前記元竿内に収容され、表面に蓄光部を有する被収容竿と、前記元竿の先端部に着脱自在に設けられ、前記元竿内に向けて光を発する発光部を有する上栓と、を備える。
【0010】
この釣竿の収納状態では、元竿に被収容竿が収容され、上栓が元竿に設けられる。この状態で、発光部が発した光は、被収容竿の表面に照射される。被収容竿は、その表面に蓄光部を有するから、前記光は前記蓄光部に蓄光される。被収容竿は元竿内で前記光を受けるので、前記光は効率的に前記蓄光部に蓄光される。
【0011】
(2) 本発明の第1側面に従う第2側面に係る釣竿においては、前記元竿は、内周面に前記光を鏡面反射させる鏡面部を有する。
【0012】
この構成では、前記発光部が発した光は、元竿内で反射し、効率的に前記被収容竿の表面に照射される。このため、前記光はより効率的に前記蓄光部に蓄光される。
【0013】
(3) 本発明の第2側面に従う第3側面に係る釣竿においては、前記鏡面部は、竿軸方向と非平行な第1面を有し、前記光は、前記第1面に反射して前記被収容竿の少なくとも一部を照射する。
【0014】
この構成では、前記第1面が竿軸方向に対して所定の角度で傾斜する。したがって、前記発光部が発した光は、元竿内で反射し、前記被収容竿の少なくとも一部の表面に効率的に照射される。
【0015】
(4) 本発明の第2側面又は第3側面に従う第4側面に係る釣竿においては、前記鏡面部は、クロムメッキを含む。
【0016】
この構成では、前記発光部が発した光は、元竿内できわめて高い反射率で反射し、前記被収容竿の表面に照射される。このため、前記光は、なお一層効率的に前記蓄光部に蓄光される。
【0017】
(5) 本発明の第1側面から第4側面のいずれか一つに従う第5側面に係る釣竿においては、前記元竿は、内周面に前記光を拡散反射させる拡散部を有する。
【0018】
この構成では、前記発光部が発した光は、前記拡散部によって元竿内で拡散される。これにより、前記光は、効率的に前記被収容竿の表面に照射され、前記蓄光部は、より効率的に蓄光される。
【0019】
(6) 本発明の第1側面から第5側面のいずれか一つに従う第6側面に係る発明においては、前記発光部は、前記光を拡散する拡散レンズを有する。
【0020】
この構成では、前記発光部が発した光は、元竿内で広範囲に拡散する。このため、前記蓄光部の全体が均等に蓄光される。
【0021】
(7) 本発明の第1側面から第5側面のいずれか一つに従う第7側面に係る釣竿においては、前記発光部は、前記光を集光する集光レンズを有する。
【0022】
この構成では、前記発光部が発した光は、元竿内で所定の領域に集中する。このため、前記被収容竿の表面のうち意図する部位が効率的に蓄光される。
【0023】
(8) 本発明の第1側面から第7側面のいずれか一つに従う第8側面に係る釣竿においては、前記上栓は、前記元竿の先端部に嵌め込まれる弾性体を含む筒体を有し、前記発光部は、前記筒体の内部に挿入される。
【0024】
この構成では、前記上栓は、前記元竿に弾性変形しつつ容易に装着されると共に、この弾性変形に伴う弾性力により確実に前記元竿に取り付けられる。前記発光部が発した光は、被収容竿の表面に照射され、前記蓄光部に蓄光される。
【0025】
(9) 本発明の第1側面から第8側面のいずれか一つに従う第9側面に係る釣竿においては、前記光は、紫外線を含む。
【0026】
この構成では、前記発光部は紫外線を発するので、前記蓄光部は、短時間で効率的にコスト安価に蓄光される。
【0027】
(10)本発明の第1側面から第9側面のいずれか一つに従う第10側面に係る釣竿においては、前記光は、可視光線を含む。
【0028】
この構成では、前記発光部は可視光線を発するので、光の照射及び動作の目視が可能である。
【0029】
(11)本発明の第1側面から第10側面のいずれか一つに従う第11側面に係る釣竿においては、前記発光部は、光源を有し、前記光源はエレクトロルミネセンス素子を含む。
【0030】
この構成では、光源として、LED(Light Emitting Diode)素子、有機EL(Organic-Electro-Luminescence)素子、無機EL(Inorganic-Electro-Luminescence)素子が採用される。これにより、前記発光部は軽量で安価に構成される。
【0031】
(12)本発明の第1側面から第11側面のいずれか一つに従う第12側面に係る釣竿においては、前記発光部に電力を供給する電源制御部をさらに備えているのが好ましい。
【0032】
(13)本発明の第12側面に従う第13側面に係る釣竿においては、前記電源制御部は、電池を有するのが好ましい。
【0033】
(14)本発明の第1側面から第13側面のいずれか一つに従う第14側面に係る釣竿においては、前記被収容竿は、穂先竿を含む。
【0034】
この構成では、前記光は、釣竿のうち竿先部分に蓄光され、夜間の実釣において特に穂先が光るので、釣人にとって釣竿の操作がしやすい。
【0035】
(15)本発明の第14側面に従う第15側面に係る釣竿においては、前記穂先竿は、トップガイドを有し、前記トップガイドは、前記蓄光部を含む。
【0036】
この構成では、前記光がトップガイドに蓄光されるので、夜間の実釣において特に竿先部分が光るので、釣人にとって釣竿の操作が一層しやすくなる。
【発明の効果】
【0037】
この発明によれば、釣竿の未使用時に被収容竿の表面に蓄光されるから、夜間の実釣時において、上栓が取り外され、元竿に被収容竿が連結されると、直ちに被収容竿の表面が光る。このように、本発明は、釣竿の収納時を利用して被収容竿の表面に蓄光するので、釣竿を積極的且つ持続的に発光させる装置が不要である。したがって、夜間における被収容竿の視認性がコスト安価に向上し、操作性に優れた釣竿が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の外観斜視図である。
図2図2は、図1における要部拡大斜視図である。
図3図3は、釣竿10の要部分解斜視図である。
図4図4は、元竿12の先端部の内部構造を示す模式図である。
図5図5は、上栓21の取付要領を示す斜視図である。
図6図6は、上栓21の取付要領を示す斜視図である。
図7図7は、上栓21の分解斜視図である。
図8図8は、収納状体における元竿12の内部の様子を模式的に示す図である。
図9図9は、本発明の一実施形態の変形例に係る元竿42の内部の様子を模式的に示す図である。
図10図10は、元竿42の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の好ましい実施形態が、適宜図面が参照されつつ説明される。なお、本実施の形態は、本発明に係る釣竿の一態様にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で実施態様が変更されてもよいことは言うまでもない。
【0040】
1.釣竿の構造
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣竿10の外観斜視図である。図2は、図1における要部拡大斜視図であり、釣竿10の先端部の外観を示している。図3は、釣竿10の要部分解斜視図である。
【0042】
図1及び図3が示すように、釣竿10は、複数の竿体及び上栓21を備えている。各竿体は並継ぎ等の既知の継ぎ形式で長手方向に継がれ、所定長さの釣竿10が組み立てられる。各竿体のうち外径が最も大きいものは「元竿」と称され、最も細径のものは「穂先竿」と称される。同図において、元竿12に継がれる竿体は「元上竿」(同図では不図示)と称される。本実施形態では、釣竿10は、5本の竿体を有し、穂先竿11が継がれる竿体は「第2番竿」、この第2番竿が継がれる竿体は「第3番竿」と称される。竿体は、一般に筒状に形成されるが、本実施形態では、穂先竿11は中実構造であってもよい。釣竿10が使用されないときは、これら元竿12及び元上竿以外の他の竿体(元竿12及び元上竿よりも細径)は、元竿12又は元上竿の内部に収容される。このように元竿12や元上竿の内部に収容される竿体は「被収容竿」とも称される。なお、釣竿10を構成する竿体の数は特に限定されるものではない。
【0043】
図1では、元竿12のみが図示され、図3では、元竿12から穂先竿11が引き出された状態が図示されている。本実施形態では、図3が示すように、穂先竿11が第3番竿(不図示)に収容され、この第3番竿が元竿12に収容される。なお、第2番竿は、元上竿に収容されるようになっている。
【0044】
穂先竿11、元竿12及び他の竿体は、既知の要領で構成される。たとえばカーボン繊維に樹脂が含浸されたシート(プリプレグ)が所定形状に裁断され、マンドレルの周囲に巻回される。これに所定の熱処理が施され、マンドレルが引き抜かれることによって、円筒状の元竿12が焼成される。その他の竿体についても同様である。
【0045】
図4は、元竿12の先端部18の内部構造を示す模式図である。
【0046】
本実施形態では、元竿12の先端部18の内周面に鏡面部22が設けられている。この鏡面部22は、元竿12の内周面にたとえばクロムメッキされることにより形成される。具体的には、元竿12の成形時に、マンドレルにいわゆるクロムテープ(基材テープに転写用クロムが積層されたテープ)が巻き付けられ、これに重ねてプリプレグが巻き付けられる。所定の熱処理後に前記基材テープが除去されると、前記転写用クロムが元竿12の内周面に転写され、前記鏡面部22が形成される。本実施形態では、鏡面部22は、元竿12の先端23から所定の領域に設けられている。鏡面部22の竿軸方向50に沿う長さL1は、800mmに設定されているが、100mm~1000mmの範囲で設定され得る。また、本実施形態では、鏡面部22は、元竿12の先端23から形成されているが、これに限定されるものではなく、鏡面部22が前記先端23に達していなくてもよい。
【0047】
図3が示すように、穂先竿11の表面に蓄光部24が設けられている。具体的には、穂先竿11の先端から所定の領域に蓄光部24が形成されている。本実施形態では、蓄光部24の長さL2は、500mmに設定されているが、100mm~1200mmの範囲で設定され得る。本実施形態では、蓄光部24は、穂先竿11にのみ設けられているが、第2番竿その他の被収容竿に設けられていてもよい。この蓄光部24は、本実施形態では、穂先竿11の表面に蓄光塗料が塗布されることにより形成されている。蓄光塗料は、既知のものが採用されるが、本実施形態では、硫化亜鉛、アルミン酸ストロンチウム等を含む顔料が用いられる。
【0048】
図1が示すように、元竿12の後端部に石突13が設けられ、この石突13の近傍に固定リング14が設けられている。これら石突13及び固定リング14の構造は既知であるので、その詳しい説明は省略される。元竿12はリールシート15を備えており、固定フード16及び可動フード17が釣糸リールの脚を挟み込んで固定する。なお、リールシート15の構造も既知であるので、その詳しい説明は省略される。
【0049】
元竿12の先端部18に釣糸ガイド19が設けられており、元竿12以外の穂先竿11その他の竿体にも釣糸ガイド20が設けられている(図3参照)。図3が示すように、穂先竿11の先端に設けられている釣糸ガイドは、特にトップガイド25と称される。本実施形態では、このトップガイド25にも前記蓄光塗料が塗布されている。もっとも、トップガイド25に蓄光塗料が塗布されていなくてもよい。釣糸ガイド19、20及びトップガイド25の構造は既知であるので、その詳しい説明は省略される。
【0050】
図2が示すように、元竿12の先端部18に上栓21が着脱自在に取り付けられている。図5及び図6は、この上栓21の取付要領を示す斜視図である。
【0051】
図5が示すように、元竿12に穂先竿11及び前記第3番竿が挿入され、元竿12に蓋をするように上栓21が元竿12の先端部18の内側に押し込まれる(図6及び図2参照)。
【0052】
図7は、上栓21の分解斜視図である。
【0053】
上栓21は、栓本体31(特許請求の範囲に記載された「筒体」に相当)と、発光部32とを有する。
【0054】
栓本体31は、円筒状に形成されている。栓本体31は、シリコーンゴムその他のゴムや樹脂(特許請求の範囲に記載された「弾性体」に相当)からなり、弾性を備える。同図及び図6が示すように、栓本体31の外径は、元竿12の先端部18の内径に対応している。栓本体31の先端部33の外径は、先端側に向かって漸次大きくなっており、この先端部33の最大外径は、元竿12の先端部18の内径よりも大きい。図6が示すように、栓本体31の長さL3は、110mmに設定されているが、20mm~150mmの範囲で設定され得る。図7が示すように、栓本体31の後端に壁面34が形成されている。この壁面34に貫通孔35が設けられており、この貫通孔35の内径は、栓本体31の内径よりも小さい。
【0055】
発光部32は、光源36及びレンズ37を有し、光源36に電源を共有する電源供給部(不図示)を内蔵している。本実施形態では、発光部32は、市販されている汎用の携帯ライトが採用され得る。本実施形態では、光源36は、エレクトロルミネセンス素子を有し、光源36は、紫外線その他のブラックライトを発する。エレクトロルミネセンス素子として、LED(Light Emitting Diode)素子、有機EL(Organic-Electro-Luminescence)素子、無機EL(Inorganic-Electro-Luminescence)素子が採用される。これらの素子が採用されることにより、前記光源36を含む発光部32は、軽量で安価なものとなる。もっとも、光源36は、可視光線を発するものであってもよい。
【0056】
本実施形態では、発光部32は円柱状に形成されている。これは、発光部32の外形形状を栓本体31の内壁面形状に対応させたものである。発光部32は、光源36が設けられた側から栓本体31の先端部33に挿入される。発光部32の外径は、栓本体31の内径に対応しており、発光部32は、栓本体31に嵌め合わされて保持される。本実施形態では、発光部32の中央部分の外径が小さくなっているが、これにより、発光部32を栓本体31に挿抜する作業が容易になる。もっとも、発光部32の外径は一様であってもよい。
【0057】
本実施形態では、前記電源供給部は、電池を備えており、光源36を安全且つ安定的に発光させる制御回路が設けられている。この制御回路はスイッチ38を備えており(図2及び図6参照)、このスイッチ38が手動操作されることによって、光源36への電源供給がON/OFFされる。つまり、光源36が点灯し、消灯する。前記制御回路は、スイッチ38が操作され、光源36が点灯した後、所定時間経過時に消灯するように構成されていてもよい。また、光源36が点灯していても上栓21が元竿12から外れたときに消灯するように前記制御回路が構成されていてもよい。また、前記制御回路は、所定の通信回路を内蔵し、遠隔操作により光源36の点灯、消灯を行えるように構成されていてもよい。
【0058】
レンズ37は、光源36の前方に配置されている。本実施形態では、レンズ37は、拡散レンズである。したがって、光源36から発せられた光は拡散される。もっとも、レンズ37は集光レンズであってもよい。
【0059】
図7が示すように、発光部32が栓本体31に挿入されると、栓本体31の壁面34に当接する。これにより、前記光源36は、前記レンズ37を挟んで栓本体31の貫通孔35から外部を臨む。この状態で図6及び図2が示すように、上栓21が元竿12の先端部18に嵌め込まれる。前述のとおり、栓本体31の先端部33の外径は漸次大きくなっているから、図2が示すように上栓21が元竿12に嵌め込まれると、前記先端部33が弾性変形し、元竿12の先端部18に圧入された状態となる。これにより、上栓21は、一定の保持力で元竿12に固定される。なお、この保持力に抗して上栓21が元竿12から引っ張られると、上栓21は元竿12から抜ける。
【0060】
2.作用効果
【0061】
この釣竿10は、特に夜間の釣りに供される場合に以下のような効果を発揮する。
【0062】
釣竿10が収納状態であるとき、元竿12に前記第3番竿及び穂先竿11が収容され、前記元上竿に前記第2番竿が収容される。前記上栓21は、図1及び図2が示すように元竿12の先端部18に嵌め込まれる。
【0063】
図8は、収納状体における元竿12の内部の様子を模式的に示す図である。
【0064】
釣人が釣場に到着するまでの間、釣人は上栓21のスイッチ38を操作し(図2参照)、光源36(図7参照)を点灯させる。図8が示すように、光源36から発せられた光51は、穂先竿11の表面に照射され、蓄光部24に蓄光される。このように、上栓21が発光部32を備えているから、釣竿10の収納状態において前記蓄光部24に効率的に蓄光される。
【0065】
釣場に到着した釣人が釣竿10を準備する際には、既に前記蓄光部24に十分に蓄光されている。したがって、上栓21が元竿12から取り外され、元竿12に元上竿その他の被収容竿が連結されると、直ちに穂先竿11の表面が光る(図3参照)。すなわち、従来のように釣竿を積極的且つ持続的に発光させる装置が不要である。その結果、夜間における釣竿10、特に穂先竿11の視認性がコスト安価に向上し、釣竿10は、操作性に優れたものとなる。
【0066】
もっとも、穂先竿11以外の被収容竿に前記蓄光部24が設けられていてもよい。その場合であっても、同様に、夜間における釣竿10の視認性がコスト安価に向上し、釣竿10は、操作性に優れたものとなる。
【0067】
本実施形態では、穂先竿11の先端に設けられたトップガイド25(図3及び図5参照)に蓄光塗料が塗布されているから、図8が示すように、前記光源36から発せられた光51は、トップガイド25に蓄光される。すなわち、夜間の実釣において、釣竿10の竿先部分が光るので、釣人にとって釣竿10の操作が一層しやすくなる。
【0068】
図4及び図8が示すように、本実施形態では、元竿12の内周面に鏡面部22が設けられているから、前記光源36から発せられた光51は、元竿12の内部で鏡面反射し、効率的に穂先竿11の表面に照射される。したがって、前記蓄光部24は、より効率的に蓄光することができ、夜間において穂先竿11は、持続的に安定して光る。
【0069】
特に、前記鏡面部22は、クロムメッキされた領域からなるので、前記光源36から発せられた光は、元竿12の内部できわめて高い反射率で反射する。その結果、前記蓄光部24は、なお一層効率的に蓄光される。
【0070】
本実施形態では、発光部32がレンズ37(図7参照)を備えており、このレンズ37は拡散レンズである。したがって、前記光源36が発せられた光は、元竿12の内部で広範囲に拡散する。その結果、前記蓄光部24の全体が均等に蓄光され、穂先竿11は均等に光る。ただし、前記レンズ37が集光レンズであってもよい。この場合、前記光源36から発せられた光は、元竿12の内部の所定の領域に集光する。レンズ37を適切に設計することにより、穂先竿11の蓄光部24のうち特定の部位(レンズ設計者が意図する部位)に効率的に蓄光される。
【0071】
本実施形態では、前記光源36は紫外線その他のブラックライトを発する。したがって、前記蓄光部24は、短時間で効率的に蓄光される。また、前記光源36が可視光線を発する場合には、前記蓄光部24への光の照射を目視にて確認できるという利点がある。
【0072】
3.変形例
【0073】
図9は、本実施形態の変形例に係る元竿42の内部の様子を模式的に示す図である。図10は、元竿42の要部拡大図である。
【0074】
本変形例に係る元竿42が前記元竿12と異なるところは、前記元竿12の内周面は、平坦な鏡面部22を備えていたのに対し(図8参照)、本変形例に係る元竿42の内周面は、傾斜面43(特許請求の範囲に記載された「第1面」に相当)を有する鏡面部44を備えている点である。なお、元竿42のその他の構成は、前記元竿12と同様である。
【0075】
図10は、鏡面部44の構造を詳細に示している。同図において参照符合52は、元竿42の中心軸を示している。元竿42の内周面に形成された鏡面部44は、前記元竿12の鏡面部22と同様に、元竿12の内周面にクロムメッキされることにより形成される。具体的には、元竿42の成形時に、マンドレルにいわゆるクロムテープが巻き付けられ、これに重ねてプリプレグが巻き付けられる。熱処理後に前記基材テープが除去されると、転写用クロムが元竿42の内周面に転写され、前記鏡面部44が形成される。本変形例においても、鏡面部44は、元竿42の先端45から所定の領域に設けられている。鏡面部44の竿軸方向50に沿う長さL1は、800mmに設定されているが、100mm~1000mmの範囲で設定され得る。前記元竿12と同様に、鏡面部44は、元竿42の先端45から形成されているが、これに限定されるものではなく、鏡面部44が前記先端45に達していなくてもよい。
【0076】
この鏡面部44は、複数の傾斜面43が元竿42の竿軸方向50に沿って並んでいる。隣り合う傾斜面43の間に段差46が形成される。前記クロムテープが巻回される際の引張力、すなわち締付力が調整されることにより、前記段差46の寸法47が決定される。なお、傾斜面43の長さ48は、クロムテープの幅寸法に対応する。前記寸法47が決定されることにより、傾斜面43の傾斜角度θが決定する。本変形例では、傾斜角度θ=0.5°(degree)に設定されているが、0.1°~2.0°の範囲で設定され得る。
【0077】
本変形例に係る元竿42では、前記傾斜面43は、竿軸方向50と非平行である。したがって、前記発光部32から発せられた光51は、図9が示すように元竿42内で反射し、穂先竿11の一部の表面に効率的に照射される。前記傾斜角度θが変更されると、前記光51は、前記穂先竿11の他の一部の表面に効率的に照射される。これにより、穂先竿11の少なくとも一部が、より強く光ることになる。
【0078】
本変形例では、前記傾斜面43は平面であるが、湾曲面として形成されていてもよい。この場合、前記傾斜面43は凸面でもあってもよいし凹面であってもよい。このように湾曲された傾斜面43(特許請求の範囲に記載された「拡散部」に相当)は、前記光51を拡散させることができる。したがって、前記光51は、元竿42内で拡散され、効率的に穂先竿11の表面に照射され、効率良く蓄光される。
【符号の説明】
【0079】
10・・・釣竿
11・・・穂先竿
12・・・元竿
18・・・先端部
20・・・釣糸ガイド
21・・・上栓
22・・・鏡面部
23・・・先端
24・・・蓄光部
31・・・栓本体
32・・・発光部
33・・・先端部
36・・・光源
37・・・レンズ
38・・・スイッチ
42・・・元竿
43・・・傾斜面
44・・・鏡面部
45・・・先端
46・・・段差
47・・・段差寸法
48・・・傾斜面の長さ
50・・・竿軸方向
51・・・光

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10