(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072403
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
F01M 1/16 20060101AFI20240521BHJP
F01M 1/02 20060101ALI20240521BHJP
F01M 11/03 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F01M1/16 A
F01M1/02 E
F01M11/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183180
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】504223536
【氏名又は名称】株式会社スペシャルパーツ武川
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】武川 豪
(72)【発明者】
【氏名】古川 潤一郎
【テーマコード(参考)】
3G015
3G313
【Fターム(参考)】
3G015BA03
3G015BG01
3G015CA06
3G313AB04
3G313BB04
3G313BB08
3G313BB19
3G313BB25
3G313BD42
3G313FA01
3G313FA10
(57)【要約】 (修正有)
【課題】クランクケースの端部とクラッチカバーとの間に既に形成されている空間を利用しつつ、既設のクランクケースの端部に対して、リリーフバルブを有するオイルポンプを容易に交換することを課題とする。
【解決手段】ポンプボディ11に、インナロータ14およびアウタロータ13を収容するロータ室にそれぞれ通じる吸入油路および吐出油路が形成され、ポンプボディ11に板状のポンプカバー12が重ね合わされ、クランクシャフト6と平行に配置されるポンプシャフト15の回転でインナロータ14およびアウタロータ13を回転させるものであり、吐出油路に接続されるリリーフバルブ16を有し、リリーフバルブ16のバルブボディがロータ室の外周部に位置し、バルブボディがクランクケース3の端部3bとクラッチカバー9との間に既に形成されている空間Sに向かって、ポンプカバー12から離れる方向へ突出する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのクランクシャフトの端部が突出し、クラッチカバーにより覆われているクランクケースの端部に取り付けられ、
ロータ室と、前記ロータ室にそれぞれ通じる吸入油路および吐出油路とが形成され、前記クランクケース側の端部が平坦面であるポンプボディと、
前記ポンプボディの平坦面に重ね合わされる板状のポンプカバーと、
前記ロータ室に収容されるインナロータおよびアウタロータと、
前記クランクシャフトの軸方向と平行に配置され、前記クランクシャフトにより回転駆動されるポンプシャフトと、を有するオイルポンプにおいて、
前記吐出油路に接続されるリリーフバルブをさらに有し、
前記リリーフバルブは、リリーフ孔を有する筒状のバルブボディを有し、所定圧力以上に上昇した前記吐出油路内のエンジンオイルを前記リリーフ孔から排出するものであり、前記バルブボディが前記ロータ室の外周部に位置し、
前記バルブボディが、前記クランクケースの端部と前記クラッチカバーとの間で形成される空間に向かって、前記ポンプカバーから離れる方向へ突出していることを特徴とするオイルポンプ。
【請求項2】
前記吐出油路が前記ポンプボディの平坦面の外周部に形成される吐出孔を有し、
前記ポンプボディがその平坦面の外周部に沿って形成される案内油路を有し、
前記案内油路が、前記吐出孔に隣接する位置に形成される流入孔と、前記ポンプカバーを貫通する流出孔とを有し、
前記吐出孔から吐出されるエンジンオイルが、前記クラッチカバーに装着されるオイルフィルタを介して、前記流入孔へ流入するようになっており、
前記バルブボディが前記オイルフィルタよりも、前記ポンプシャフトの軸方向の内方に位置していることを特徴とする請求項1に記載のオイルポンプ。
【請求項3】
前記吐出油路が前記ポンプボディの前記平坦面の外周部へ向かって延びており、前記バルブボディが前記吐出油路の長さ方向の前記ロータ室寄りの位置に隣接しており、
前記バルブボディの内部と前記吐出油路とを接続する連絡油路を有し、
前記連絡油路が、前記バルブボディの外周部であって前記吐出油路側と反対位置から前記吐出油路に至る貫通孔と、前記貫通孔の前記バルブボディの反対位置側を閉じる栓体とから形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のオイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、クランクシャフトにより駆動されて、エンジンの各潤滑部へオイルを圧送するオイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンの各潤滑部への潤滑は、エンジンの最下部に位置するオイルパンに溜められたエンジンオイルがクランクシャフトに連動して駆動されるオイルポンプにより吸い上げられ、その油圧により、エンジンオイルがエンジンの各潤滑部へ供給されるようになっている。
【0003】
このようなオイルポンプ30としては、例えば、
図7に示すように、二輪車用のエンジン1のクランクシャフト6の端部が突出しているクランクケース3の端部3aに取り付けられているものがある。オイルポンプ30によって、クランクケース3の下部のオイルパン3b内に溜まったエンジンオイルが、ストレーナ3dから下部油路3cを通して吸い上げられ、クラッチ(図示省略)を覆うクラッチカバー9内に配置されたオイルフィルタFに圧送される。オイルフィルタFを通過したエンジンオイルは、クランクケース3の上部に形成される上部油路3eへ導かれて、シリンダヘッド(図示省略)およびクランクシャフト6内部の各潤滑部へ圧送される。
【0004】
このオイルポンプ30は、ポンプボディ31と、ポンプボディ31のクランクケース3側に重ね合わされるポンプカバー32とを有する。ポンプボディ31には、クランクシャフト6と平行に延びるポンプシャフト33が設けられている。ポンプシャフト33は、ポンプカバー32を貫通しており、ポンプシャフト33のポンプカバー32から突出する端部にドリブンギア34が固定されている。ドリブンギア34は、クランクシャフト6に固定されるドライブギア6bに噛み合っている。
【0005】
ポンプボディ31のクランクケース3側と反対側の部分には、ポンプシャフト33の駆動によって回転するインナロータ35およびアウタロータ36が収容されるロータ室37と、ロータ室37にそれぞれ連通する吸入油路38および吐出油路39と、案内油路40が形成されている。吸入油路38がクランクケース3の下部油路3cに接続される。吐出油路39と案内油路40とがオイルフィルタFを介して接続されている。案内油路40の吐出孔40aが上部油路3eに接続されている。
【0006】
一般に、
図7に示すオイルポンプ30を用いて、エンジンの各潤滑部への潤滑を行う際、エンジンの初動時において、クランクシャフトの回転数が高くなったときに、エンジンの各潤滑部へ供給されるエンジンオイルの油圧の上昇が発生する。
【0007】
このようなエンジンオイルの油圧の上昇が生じた際、ハウジング部分(ポンプボディ)にポンプ部分(インナロータとアウタロータ)の吸入部と吐出部を結ぶバイパス通路が形成されており、バイパス通路の途中にリリーフバルブが設けられたオイルポンプが開示されている(例えば、特許文献1参照)。このオイルポンプは、ポンプ部分の吐出側のエンジンオイルの油圧が上昇した際、リリーフバルブにより、ポンプ部分の吐出側から吸入側へエンジンオイルを逃がすようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1に記載のオイルポンプは、ポンプボディに形成されたバイパス通路がポンプシャフトの軸方向に対して直交する方向に沿って配置されている。このため、バイパス通路の途中に設けたリリーフバルブの弁体が、ポンプシャフトの軸方向に対して直交する方向に移動するようになっている。リリーフバルブの弁体の移動距離を確保するために、上記特許文献1に記載のオイルポンプは、ポンプシャフトの軸方向に対して直交する平面内でポンプボディが大型化している。
【0010】
上述のエンジンオイルの油圧の上昇に対応する目的で、
図7に示すエンジンのクランクケース3に対して、特許文献1に記載のオイルポンプに装着しようとする場合等、クランクケース3としては、特許文献1に記載のオイルポンプに接続可能となるように、上部油路3eと下部油路3cの位置を変更したものを別途用意する必要が生じる。このため、部品の共通化、コストの低減の観点から、さらに、改良の余地がある。
【0011】
また、
図7に示すように、クランクケース3とクラッチカバー9との間には、既にクランクシャフト6の軸方向に広がる空間Sが形成されている。しかしながら、特許文献1に記載のオイルポンプは、上述のようにポンプシャフトの軸方向に対して直交する平面内でポンプボディが大型化して、このオイルポンプを収容する新たな空間を形成する必要がある。
【0012】
そこで、この発明は、クランクケースの端部とクラッチカバーとの間に既に形成されている空間を利用しつつ、既設のクランクケースの端部に対して、リリーフバルブを有するオイルポンプを容易に取り替えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、この発明は、以下の構成1~3を備えるものである。
[構成1]
エンジンのクランクシャフトの端部が突出し、クラッチカバーにより覆われているクランクケースの端部に取り付けられ、ロータ室と、前記ロータ室にそれぞれ通じる吸入油路および吐出油路とが形成され、前記クランクケース側の端部が平坦面であるポンプボディと、前記ポンプボディの平坦面に重ね合わされる板状のポンプカバーと、前記ロータ室に収容されるインナロータおよびアウタロータと、前記クランクシャフトの軸方向と平行に配置され、前記クランクシャフトにより回転駆動されるポンプシャフトと、を有するオイルポンプにおいて、
前記吐出油路に接続されるリリーフバルブをさらに有し、前記リリーフバルブは、リリーフ孔を有する筒状のバルブボディを有し、所定圧力以上に上昇した前記吐出油路内のエンジンオイルを前記リリーフ孔から排出するものであり、前記バルブボディが前記ロータ室の外周部に位置し、
前記バルブボディが、前記クランクケースの端部と前記クラッチカバーとの間で形成される空間に向かって、前記ポンプカバーから離れる方向へ突出していることを特徴とするオイルポンプ。
【0014】
この構成では、リリーフバルブがロータ室の外周部に位置し、バルブボディがクランクケースの端部とクラッチカバーとの間で形成される空間に向かって、ポンプカバーから離れる方向へ突出している。このため、リリーフバルブを有していない従来のポンプボディに対して、リリーフバルブを有するこの構成のポンプボディは、その平坦面を大きくならない。
【0015】
[構成2]
前記吐出油路が前記ポンプボディの平坦面の外周部に形成される吐出孔を有し、前記ポンプボディがその平坦面の外周部に沿って形成される案内油路を有し、前記案内油路が、前記吐出孔に隣接する位置に形成される流入孔と、前記ポンプカバーを貫通する流出孔とを有し、前記吐出孔から吐出されるエンジンオイルが、前記クラッチカバーに装着されるオイルフィルタを介して、前記流入孔へ流入するようになっており、前記バルブボディが前記オイルフィルタよりも、前記ポンプシャフトの軸方向の内方に位置していることを特徴とする構成1に記載のオイルポンプ。
【0016】
この構成では、クラッチカバー内にオイルフィルタが装着されている状態において、オイルフィルタに対するバルブボディの干渉を防止することができる。
【0017】
[構成3]
前記吐出油路が前記ポンプボディの前記平坦面の外周部へ向かって延びており、前記バルブボディが前記吐出油路の長さ方向の前記ロータ室寄りの位置に隣接しており、前記バルブボディの内部と前記吐出油路とを接続する連絡油路を有し、前記連絡油路が、前記バルブボディの外周部であって前記吐出油路側と反対位置から前記吐出油路に至る貫通孔と、前記貫通孔の前記バルブボディの反対位置側を閉じる栓体とから形成されていることを特徴とする構成1または構成2に記載のオイルポンプ。
【0018】
この構成では、バルブボディの外周部であって吐出油路側と反対位置から吐出油路に至る貫通孔を形成し、貫通孔のバルブボディの反対位置側を栓体で閉じることにより、容易に連絡油路を形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明は、リリーフバルブがロータ室の外周部に位置し、バルブボディがクランクケースの端部とクラッチカバーとの間で形成される空間に向かって、ポンプカバーから離れる方向へ突出しているため、ポンプボディはその平坦面が大きくならず、クランクケースの端部に対して、リリーフバルブを有していないオイルポンプを、容易にリリーフバルブを有するオイルポンプに取り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明に係る実施形態のオイルポンプを設けたエンジンの側面図
【
図2】同上のオイルポンプを設けるエンジンの前方から見た断面図
【
図4】同上のオイルポンプのポンプカバーを取り外した状態を示す背面図
【
図7】従来のオイルポンプを設けるエンジンの前方から見た断面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明の実施形態に係るオイルポンプを
図1~4に基づいて説明する。
図1~
図5に基づいて、この実施形態のオイルポンプ10を備えたエンジン1について、説明する。なお、オイルポンプ10を除いて、
図2に示すエンジン1は、オイルポンプ30を除いて
図7に示すエンジン1と同じ構造のものであるため、同じ符号を付している。
【0022】
図1に示すように、エンジン1は、単気筒の二輪車用の内燃機関であって、シリンダ2がクランクケース3の上部にやや前傾した姿勢で設けられている。なお、以下において、前後左右の向きは、二輪車乗車時の運転者を基準としたものである。
【0023】
クランクケース3の内部には、クランクシャフト6、メインシャフト7およびカウンタシャフト8がその軸線方向が平行となる状態で配置され、クランクケース3に設けられた軸受によりそれぞれ回転自在に支持されている。メインシャフト7の右端部がクランクケース3から突出している。メインシャフト7の右端部には、断続可能なクラッチCが接続されている。クランクシャフト6の回転駆動力は、クラッチCを介して、メインシャフト7に伝達され、トランスミッション装置(図示省略)を介してカウンタシャフト8に伝達されるようになっている。
【0024】
クランクケース3のクランクシャフト6の左端部には、発電機(図示省略)が配置されており、その発電機はカバーにより覆われている。
【0025】
図2に示すように、クランクシャフト6の右端部6aはクランクケース3から突出している。クランクシャフト6の右端部6aにドライブギア6bが固定されている。クランクシャフト6の右端部6aが突出しているクランクケース3の端部3aには、クラッチCとともにクランクケース3の端部3aを覆うクラッチカバー9が着脱可能に取り付けられている。クラッチカバー9は、オイルフィルタFが装着されるフィルタ室9aと、フィルタ室9aにそれぞれ接続される流入油路9bおよび流出油路9cとが形成されている。クランクケース3の端部3aとクラッチカバー9との間には空間Sが形成されている。
【0026】
クランクケース3の下部には、エンジンオイルを貯留するオイルパン3bと、オイルパン3bからクランクケース3の端部3aへ通じる下部油路3cとが形成されている。オイルパン3b内にストレーナ3dが配置され、ストレーナ3dを介してオイルパン3bと下部油路3cが接続され、下部油路3cは、クランクケース3の端部3aで開口している。
【0027】
クランクケース3の上部には、クランクシャフト6およびシリンダヘッドのそれぞれの潤滑部へエンジンオイルを圧送する上部油路3eが形成されている。上部油路3eは、クランクケース3の端部3aで開口している。
【0028】
オイルポンプ10は、トロコイド型ポンプであり、ポンプボディ11、ポンプカバー12、アウタロータ13、インナロータ14、ポンプシャフト15およびリリーフバルブ16を有している。
図3、
図4に示すように、ポンプボディ11は、クランクシャフト6の軸方向から見た形状が略三角形をなしている金属製の部材である。ポンプボディ11のクランクケース3側の端部が平坦面となっている。ポンプボディ11のほぼ中央部分にはアウタロータ13の外径よりもわずかに大きい内径を有するロータ室17が形成されている。
【0029】
ポンプボディ11のロータ室17の底部には、ポンプシャフト15の端部を回転可能に支持する軸受孔17aが設けられている。ポンプボディ11は、ロータ室17にそれぞれ接続する吸入油路18および吐出油路19と、吐出油路19の端部(ロータ室17に対して反対側の端部)の前側から前方かつ上方に向かって延び出す案内油路20とを有する。ポンプボディ11には、めねじ11aが複数(
図4中では5つ)形成されている。また、ポンプボディ11の前側、後側および下側に、ポンプボディ11を貫通する取り付け孔11bがそれぞれ形成されている。
【0030】
アウタロータ13は外形が肉厚の円柱状である。アウタロータ13の内周面に複数の内歯13aが形成されている。アウタロータ13内には、インナロータ14が配置されている。インナロータ14は、外周面にアウタロータ13の内歯13aと噛み合う複数の外歯14aが形成されている。インナロータ14の回転中心には、ポンプシャフト15が嵌め込まれる嵌入孔14bが形成されている。嵌入孔14bの内周部は、円形断面の一部を切り欠いた形状をなしている。
【0031】
図2に示すように、ポンプシャフト15は、クランクシャフト6の軸方向に対して平行に配置されている。ポンプシャフト15の一端部(クランクケース3に対して反対側の端部)が、軸受孔17aを貫通する状態で、軸受孔17aにより回転可能に支持されている。ポンプシャフト15の一端部に嵌め合わせたCリングにより軸方向の位置決めがなされている。ポンプシャフト15の軸方向の中央部は、インナロータ14の嵌入孔14bの断面形状と同じ断面形状をなしている。インナロータ14の嵌入孔14bにポンプシャフト15の軸方向の中央部が挿通された状態で、ポンプシャフト15の回転がインナロータ14に伝達される。ポンプシャフト15の他端部(クランクケース3側の端部)は、ポンプカバー12から突出しており、その突出部分にドリブンギア21が一体回転可能に固定されている。
【0032】
図3、
図4に示すように、吸入油路18および吐出油路19は、ロータ室17からポンプボディ11の平坦面の外周部に向かって延び出して形成されている。吸入油路18は、ロータ室17の後側寄りの下側から下方に向かうに従い後方に延びて形成されている。吸入油路18の端部(ロータ室17側と反対側の端部)の位置に対応してポンプカバー12を貫通する吸入孔18aが形成されている。
【0033】
吐出油路19は、ロータ室17の前側寄り下側から下方に向うに従い前方に延びて形成されている。吐出油路19の下端部には、ポンプボディ11を貫通する吐出孔19aが形成されている。案内油路20の下端部には流入孔20aが形成されている。流入孔20aは、吐出孔19aに隣接しており、ポンプボディ11を貫通している。案内油路20の流入孔20aと反対側の端部の位置に対応してポンプカバー12を貫通する流出孔20bが形成されている。
【0034】
図6に示すように、リリーフバルブ16は、リリーフ孔22aを有する円筒状のバルブボディ22と、バルブボディ22の内部を筒軸に沿って移動する弁体23と、弁体23をバルブボディ22のクランクケース3側に形成された弁座22bに向かって付勢する弾性部材であるコイルばね24とを有する。
図3に示すように、バルブボディ22は、ポンプボディ11のロータ室17の外周部の下側であって、吐出油路19の長さ方向のロータ室17寄りの位置に隣接している。バルブボディ22は、空間Sに向かって、ポンプカバー12から離れる方向へ突出している。バルブボディ22の筒軸方向がポンプシャフト15の軸方向と平行となっている。バルブボディ22がオイルフィルタFよりも、ポンプシャフト15の軸方向の内方に位置している(
図2参照)。
【0035】
弁体23は、弁座22b側の端部が閉塞する円筒状部材である。弁体23の円筒部分は、リリーフバルブ16が閉弁状態では、リリーフ孔22aを閉塞している。コイルばね24の長さ方向一端部が弁体23内に挿入されている。コイルばね24の長さ方向他端部には環状部材24aが取り付けられている。環状部材24aは、コイルばね24が嵌まる円筒部と、コイルばね24の長さ方向他端部を支持する鍔部とを有している。コイルばね24は、バルブボディ22内において圧縮状態で収納され、バルブボディ22の先端部(ポンプカバー12側と反対側の端部)でCリングにより、環状部材24aが抜け止めされている。
【0036】
バルブボディ22の内部と吐出油路19とを接続する連絡油路25が形成されている。連絡油路25は、バルブボディ22の外周部であって吐出油路19側と反対位置から吐出油路19に至る貫通孔25aと、貫通孔25aにおいて、バルブボディ22の外周部の、吐出油路19と反対位置側を閉じる栓体25bとから形成されている。
【0037】
図5に示すように、ポンプカバー12は、ポンプボディ11の平坦面と同形状の板状部材である。ポンプカバー12は、ポンプボディ11の平坦面に重ね合わされるものである。ポンプカバー12は、ポンプボディ11の平坦面に重ね合わせた状態で、ポンプボディ11の複数のめねじ11aに対応する位置に設けた貫通孔におねじ12aが締め付けられている(
図6参照)。また、ポンプカバー12は、ポンプボディ11の平坦面に重ね合わせた状態で、ポンプボディ11の複数の取り付け孔11bに対応する位置に貫通孔12bが設けられている。
【0038】
この実施形態のオイルポンプ10は以上のように構成される。次に、エンジンのクランクケース3の端部3aに対するオイルポンプ10の取り付けを説明する。
【0039】
まず、リリーフバルブを有していない従来のオイルポンプを、所定の方法によりクランクケース3の端部3aから取り外す。次に、クランクケース3の端部3aにポンプカバー12を対向させた状態で、オイルポンプ10をクランクケース3の端部3aに接触させる。このとき、クランクケース3の下部油路3cとオイルポンプ10の吸入孔18aとを合させる、また、クランクケース3の上部油路3eとオイルポンプ10の流出孔20bとを合致させる。その後、三箇所の取り付け孔11bに挿入したボルト(図示省略)を、クランクケース3の端部3aに締め付ける。
【0040】
エンジン1が駆動されると、クランクシャフト6が回転し、クランクシャフト6からドライブギア6b、ドリブンギア21を介して、オイルポンプ10が稼働される。そして、オイルパンに溜まったエンジンオイルがストレーナ3dを介して下部油路3c、吸入油路18を通りオイルポンプ10に吸引され、加圧される。加圧されたエンジンオイルは、吐出油路19、流入油路9bからオイルフィルタFを介して流出油路9cを通り、案内油路20から、上部油路3eへ吐出される。上部油路3eへ吐出されたエンジンオイルが、クランクシャフト6およびシリンダヘッドなどへ圧送されて、各潤滑部へ供給される。
【0041】
各潤滑部へエンジンオイルの供給時、リリーフバルブ16は、吐出油路19内の圧力が所定圧力以上に上昇した際、エンジンオイルの圧力により弁体23が開弁状態となり、吐出油路19内のエンジンオイルの一部をリリーフ孔22aから排出する。
【0042】
この実施形態のオイルポンプ10は、リリーフバルブ16のバルブボディ22がロータ室17の外周部に位置しており、かつ、バルブボディ22が吐出油路19の長さ方向のロータ室17寄りの位置に隣接している。さらに、バルブボディ22の筒軸方向がポンプシャフト15の軸方向と平行である。バルブボディ22は、既に形成されている空間Sに向かって、ポンプカバー12から離れる方向へ突出する状態となる。この状態のリリーフバルブ16を有するポンプボディ11では、リリーフバルブを有していない従来のポンプボディに対して、ポンプボディ11の平坦面が大きくならない。そして、クランクケース3の端部3aとクラッチカバー9との間でオイルポンプ10を収容するための新たな空間を形成する必要がない。したがって、既に形成されている空間Sを利用することができる。
【0043】
また、上記のように、リリーフバルブ16を有するポンプボディ11では、ポンプボディ11の平坦面が大きくならないので、リリーフバルブ16を有するオイルポンプ10は、リリーフバルブ16の存在によって、吸入油路18、吐出油路19および案内油路20の位置を変更する必要がない。このため、例えば、オイルポンプ10を接続可能とするために、上部油路3eと下部油路3cの位置を変更したクランクケースを別途用意する必要がない。したがって、リリーフバルブを有していないオイルポンプが取り付けられていた既存のクランクケース3の端部に対して、リリーフバルブを有するオイルポンプ10を容易に取り替えることができる。
【0044】
また、オイルポンプ10は、リリーフバルブ16のバルブボディ22が、クラッチカバー9内に装着されているオイルフィルタFよりも、ポンプシャフト15の軸方向内方に位置しているものである。このため、オイルフィルタFに対するバルブボディ22の干渉を防止することができる。
【0045】
さらに、オイルポンプ10は、バルブボディ22の内部と吐出油路19とを接続する連絡油路25は、以下のように形成すればよい。すなわち、まず、バルブボディ22の外周部であって吐出油路19側と反対位置から吐出油路19へ向かって貫通孔25aを形成する。その後、栓体25bにより、貫通孔25aの吐出油路19と反対位置側を閉じる。このようにすることで、連絡油路25を容易に形成することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 エンジン
2 シリンダ
3 クランクケース
6 クランクシャフト
6a 右端部
6b ドライブギア
9 クラッチカバー
9a フィルタ室
9b 流入油路
9c 流出油路
10 オイルポンプ
11 ポンプボディ
12 ポンプカバー
13 アウタロータ
14 インナロータ
15 ポンプシャフト
16 リリーフバルブ
17 ロータ室
18 吸入油路
18a 吸入孔
19 吐出油路
19a 吐出孔
20 案内油路
20a 流入孔
20b 流出孔
21 ドリブンギア
22 バルブボディ
22a リリーフ孔
25 連絡油路
25a 貫通孔
25b 栓体
30 オイルポンプ
31 ポンプボディ
32 ポンプカバー
33 ポンプシャフト
35 インナロータ
36 アウタロータ
37 ロータ室
38 吸入油路
39 吐出油路
40 案内油路
C クラッチ
F オイルフィルタ
S 空間