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特開2024-72404ステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072404
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】ステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 3/12 20060101AFI20240521BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
B62D3/12 509A
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183181
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】黒川 祥史
(72)【発明者】
【氏名】ルンワシラア キッティポン
(72)【発明者】
【氏名】今関 太一
【テーマコード(参考)】
3D333
【Fターム(参考)】
3D333CB02
3D333CB13
3D333CD09
3D333CE12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造を提供する。
【解決手段】ステアリング装置のハウジングは、収容部と、ボルト4を用いてフレーム3に結合されるマウント部17とを有する。マウント部17は、ボルト4の軸力によってフレーム3に備えられたフレーム座面35に押し付けられるマウント座面25、および、該マウント座面25に開口しかつボルト4の軸部37が挿通されるマウント側ボルト孔26を有する。マウント座面25は、フレーム座面35と対向する縁部を有する。マウント座面25において、縁部は、周方向に凹凸形状となっている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフレームに支持されるハウジングを備え、
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有し、
前記マウント部は、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面、および、該マウント座面に開口しかつ前記ボルトの軸部が挿通されるマウント側ボルト孔を有し、
前記マウント座面は、前記フレーム座面と対向する縁部を有し、
前記縁部は、周方向に凹凸形状を有する、
ステアリング装置。
【請求項2】
前記マウント座面は平坦面となっている、請求項1に記載のステアリング装置。
【請求項3】
前記縁部は、前記マウント座面の内周縁部と外周縁部とのうちの少なくとも一方である、請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項4】
前記縁部は、谷埋め部を有する、請求項1または2に記載のステアリング装置。
【請求項5】
ステアリング装置のハウジングと、車両のフレームと、前記ハウジングと前記フレームとを結合するためのボルトとを備え、
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、マウント座面および該マウント座面に開口するマウント側ボルト孔を有し、前記収容部に固定されたマウント部とを備え、
前記フレームは、台座部を備え、該台座部は、フレーム座面および該フレーム座面に開口する台座側ボルト孔を有し、
前記ボルトは、前記フレーム座面と前記マウント座面とを接触させた状態で前記マウント側ボルト孔および前記台座側ボルト孔に挿通または螺合される軸部を有し、かつ、自身の軸力によって前記マウント座面を前記フレーム座面に押し付けており、
前記マウント座面は、前記フレーム座面に対向する縁部を有し、
前記縁部は、前記縁部は、周方向に凹凸形状を有する、
ハウジングとフレームとの結合構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ステアリング装置、および、ステアリング装置のハウジングと車両のフレームとの結合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のステアリング装置は、運転者が操作するステアリングホイールの回転運動を、ステアリングシャフト、中間シャフトなどを介して、ステアリングギヤユニットのピニオンシャフトに伝達し、さらに、ピニオンシャフトの回転運動を、ステアリングギヤユニットのラックシャフトの直線運動に変換することに基づいて、左右の操舵輪に舵角を付与するように構成されている。
【0003】
すなわち、ラックシャフトの軸方向両側の端部に、1対のタイロッドの基端部が揺動可能に連結されており、1対のタイロッドの先端部に、左右の操舵輪が組み付けられるナックルが揺動可能に連結されている。これにより、ラックシャフトが直線運動することに伴い、1対のタイロッドが押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0004】
ステアリングギヤユニットは、ハウジングを備える。該ハウジングは、直動シャフトであるラックシャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、該収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて車両のフレームに結合されるマウント部とを備える。すなわち、ステアリングギヤユニットは、ボルトを用いてマウント部を車両のフレームに結合することにより、該フレームに支持される。
【0005】
マウント部は、ボルトの軸部が挿通されるボルト孔と、該ボルト孔の端部が開口し、かつ、ボルトの軸力によってフレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面とを有する。なお、ボルトの軸力とは、ボルトを雌ねじ孔に螺合すること、あるいは、ボルトにナットを螺合することにより、軸方向に関して弾性的に伸びたボルトの軸部が元に戻ろうとする力をいう。
【0006】
フレームに対するマウント部の結合作業を容易にする観点から、マウント部のボルト孔の内径は、ボルトの軸部の外径よりも大きく設定されている。このため、ボルト孔の内周面とボルトの軸部の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、マウント部がフレームに対してボルトの中心軸に直交する方向に移動することが可能となり、フレームに対するマウント部のがたつきの発生の原因となる。しかしながら、このようなフレームに対するマウント部の移動は、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力によって抑制される。
【0007】
特開2021-185069号公報には、フレーム座面とマウント座面との間に作用する摩擦力を増大させるために、マウント座面の全面に微細な凹凸形状を形成した構造が記載されている。この構造では、凹凸形状を構成する突条、突部などの微細な凸部を、フレーム座面に施された皮膜に食い込ませている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2021-185069号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特開2021-185069号公報に記載された従来構造では、マウント座面に設けられた微細な凹凸形状は、加工により形成されており、かつ、該凹凸形状を含むマウント座面の表面粗さ(算術平均粗さRa)が製品仕様として要求される表面粗さとなるように設定されており、かつ、該凹凸形状を構成する凸部をフレーム座面の皮膜に食い込ませている。このため、前記凸部の幅や高さは、数μmから数十μm程度であると考えられる。
【0010】
この従来構造では、凹凸形状が小さいため、摩擦力を増大させる効果はあるものの、ステアリング装置の製造過程における、その管理を適切に行うことは困難である。通常、マウント部を含むハウジングは、軽量化のためにアルミニウム合金などの軽合金製であるのに対し、車両のフレームは、十分な強度および剛性を確保するために鋼製である。かかる場合、微細な凹凸形状は、締結時にボルトの軸力により潰れる可能性が高いと考えられる。このように、微細な凹凸形状が潰れて、マウント座面の全体が平滑な平坦面に変化することによって、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を十分に確保できないと考えられる。
【0011】
本開示は、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすいステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様のステアリング装置は、車両のフレームに支持されるハウジングを備える。前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、前記収容部に固定され、かつ、ボルトを用いて前記フレームに結合されるマウント部とを有する。
【0013】
前記マウント部は、前記ボルトの軸力によって前記フレームに備えられたフレーム座面に押し付けられるマウント座面、および、該マウント座面に開口しかつ前記ボルトの軸部が挿通されるマウント側ボルト孔を有する。
【0014】
前記マウント座面は、前記フレーム座面と対向する縁部を有し、前記縁部は、周方向に凹凸形状を有している。
【0015】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記マウント座面は平坦面となっている。
【0016】
本開示の一態様のステアリング装置では、前記縁部は、前記マウント座面の内周縁部と外周縁部とのうちの少なくとも一方である。
【0017】
本開示の一態様のステアリング装置では、谷埋め部を有する。
【0018】
本開示の一態様のハウジングとフレームとの結合構造は、ステアリング装置のハウジングと、車両のフレームと、前記ハウジングと前記フレームとを結合するためのボルトとを備える。
【0019】
前記ハウジングは、軸方向両側の端部に1対のタイロッドが揺動可能に連結される直動シャフトを軸方向の移動可能に収容する収容部と、マウント座面および該マウント座面に開口するマウント側ボルト孔を有し、前記収容部に固定されたマウント部とを備える。
【0020】
前記フレームは、台座部を備える。該台座部は、フレーム座面および該フレーム座面に開口する台座側ボルト孔を有する。
【0021】
前記ボルトは、前記フレーム座面と前記マウント座面とを接触させた状態で前記マウント側ボルト孔および前記台座側ボルト孔に挿通または螺合される軸部を有し、かつ、自身の軸力によって前記マウント座面を前記フレーム座面に押し付けている。
【0022】
前記マウント座面面は、前記フレーム座面に対向する縁部を有する。前記縁部は、周方向に凹凸形状を有している。
【0023】
本開示のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造は、上述した各態様の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示の一態様のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造によれば、フレーム座面に対するマウント座面の保持力を確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本開示の実施の形態の第1例におけるステアリング装置の斜視図である。
図2図2は、第1例におけるステアリング装置を構成するハウジングおよびその周辺部分を上方から見た平面図である。
図3図3は、図2のA-A断面図である。
図4図4は、第1例のハウジングとフレームとの接続部についての図2のB-B断面に相当する図である。
図5図5は、図4のマウント部を取り出して下から見た図である。
図6図6は、本開示の実施の形態の第1例の変型例についての図5に相当する図である。
図7図7は、本開示の実施の形態の第2例についての図5に相当する図である。
図8図8は、本開示の実施の形態の第3例についての図5に相当する図である。
図9図9(a)から図9(d)は、本開示の実施の形態の第4例についての図5に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1例]
本開示の実施の形態の第1例のハウジングとフレームとの結合構造について、図1図5を用いて説明する。
【0027】
本開示のステアリング装置、および、ハウジングとフレームとの結合構造(以下、単に「結合構造」という場合がある)は、各種方式のステアリング装置に適用可能であるが、本例では、操舵力伝達経路の全体が機械的につながっているマニュアル式のステアリング装置に、本開示のステアリング装置および結合構造を適用する場合について説明する。
【0028】
本例のハウジングとフレームとの結合構造は、ステアリング装置1(図1参照)のハウジング2と、車両のフレーム3(図4参照)と、ハウジング2とフレーム3とを結合するためのボルト4(図4参照)とを備える。
【0029】
本例では、ステアリング装置1が備えるハウジング2は、直動装置であるステアリングギヤユニット5(図1図3参照)を構成する部材である。
【0030】
本例では、ステアリング装置1は、ハウジング2を含んで構成されるステアリングギヤユニット5のほか、ステアリングホイール6と、ステアリングシャフト7と、ステアリングコラム8と、1対の自在継手9a、9bと、中間シャフト10と、1対のタイロッド11とを備える。なお、以下の説明中、ステアリング装置1において、前後方向は、車両の前後方向を意味する。図2では、下側が前側であり、上側が後側である。
【0031】
ステアリングホイール6は、ステアリングシャフト7の後端部に取り付けられている。ステアリングシャフト7は、車体に支持されたステアリングコラム8の内側に、回転自在に支持されている。ステアリングシャフト7の前端部は、自在継手9a、中間シャフト10、および別の自在継手9bを介して、ステアリングギヤユニット5を構成するピニオンシャフト12に接続されている。ピニオンシャフト12は、ステアリングギヤユニット5を構成する直動シャフトであるラックシャフト13に噛合している。1対のタイロッド11を構成するそれぞれのタイロッド11の基端部は、ラックシャフト13の軸方向両側の端部に、ボールジョイント14を介して揺動可能に連結されている。該タイロッド11の先端部は、左右の操舵輪が組み付けられるナックルに揺動可能に連結される。
【0032】
運転者がステアリングホイール6を回転操作すると、ステアリングホイール6の回転は、ステアリングシャフト7と、自在継手9aと、中間シャフト10と、自在継手9bとを介して、ピニオンシャフト12に伝達される。そして、ピニオンシャフト12の回転が、ラックシャフト13の直線運動に変換されることにより、1対のタイロッド11が押し引きされることで、左右の操舵輪に舵角が付与される。
【0033】
本例のステアリング装置1は、電動パワーステアリング装置であり、運転者がステアリングホイール6を操作するのに要する力を軽減するための電動アシスト装置15をさらに備える。本例では、電動アシスト装置15は、ステアリングシャフト7に補助動力を付与する。ただし、電動アシスト装置により、ステアリングギヤユニットを構成するピニオンシャフトやラックシャフトに補助動力を付与することもできる。
【0034】
本開示のステアリング装置および結合構造は、運転者が操作する上流側操舵部と操舵輪に舵角を付与する下流側操舵部とが機械的に切り離されて電気的に接続されたステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用することもできる。この場合、ハウジングおよび直動シャフトを備えた直動装置は、前記下流側操舵部に組み込まれる。
【0035】
ハウジング2は、収容部16と、少なくとも1つ(本例では2つ)のマウント部17とを備える。収容部16は、ラックシャフト13を軸方向の移動可能に収容する部分である。マウント部17は、収容部16に固定され、かつ、ボルト4(図4参照)を用いて車両のフレーム3に結合される部分である。すなわち、ステアリングギヤユニット5は、ボルト4を用いてマウント部17をフレーム3に結合することにより、該フレーム3に支持される。
【0036】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、ハウジング2に必要とされる強度および剛性を確保できる限り、ハウジング2の材質として、各種金属を採用可能である。本例では、軽量化の観点から、ハウジング2の材質として、アルミニウム合金などの軽合金を採用している。より具体的には、本例では、ハウジング2は、アルミニウム合金などの軽合金をダイキャスト成形することにより一体的に造られている。
【0037】
本例では、収容部16は、ラック収容部18と、ピニオン収容部19と、ガイド収容部20とを備える。
【0038】
ラック収容部18は、円筒形状を有しており、その内側にラックシャフト13の軸方向中間部を収容する。ラック収容部18は、車両の幅方向に伸長するように配置される。ラックシャフト13は、ラック収容部18に対し、軸方向に離隔して配置されたラックガイド21(図3参照)およびラックブッシュ22により、径方向のがたつきを防止された状態で軸方向の移動可能に支持されている。
【0039】
ピニオン収容部19は、上端部が開口した有底円筒形状を有しており、その内側にピニオンシャフト12の先半部を収容する。ピニオン収容部19は、ラック収容部18の前側かつ上側で、ラック収容部18の軸方向一方側(図2の左側)に寄った位置に配置されている。ピニオン収容部19の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して、ねじれの位置に配置されている。ピニオンシャフト12は、ピニオン収容部19に対し、軸方向に離隔して配置された1対の軸受23a、23bにより、回転可能に支持されている。
【0040】
ガイド収容部20は、円筒形状を有しており、その内側にラックガイド21を収容する。ガイド収容部20は、ラック収容部18のうち、ピニオン収容部19に対して径方向反対側に位置する箇所に配置されている。ガイド収容部20の中心軸は、ラック収容部18の中心軸に対して直交している。ラックガイド21は、ラックシャフト13の外周面のうち、ピニオンシャフト12が噛合した部分に対して径方向反対側に位置する部分を、ピニオンシャフト12に向けて押圧する。これにより、ピニオンシャフト12とラックシャフト13との噛合状態が適正に維持される。
【0041】
本開示のステアリング装置および結合構造を、直動シャフトに補助動力を付与する電動パワーステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して補助動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。本開示のステアリング装置および結合構造を、ステアバイワイヤ式のステアリング装置に適用する場合には、ハウジングの収容部に、直動シャフトに対して動力を付与する機構を収容する部分を設けることができる。
【0042】
本例では、マウント部17は、ラック収容部18の軸方向両側の端部に1つずつ固定されている。具体的には、それぞれのマウント部17は、ラック収容部18の軸方向両側の端部の前側部に、連結部24を介して固定されている。なお、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合、マウント部の個数、および、収容部に対するマウント部の固定箇所は、任意に設定することができる。
【0043】
マウント部17は、ボルト4の軸力によってフレーム3に備えられたフレーム座面35に押し付けられる一方の座面であるマウント座面25、および、該マウント座面25に開口しかつボルト4の軸部37が挿通されるマウント側ボルト孔26を有する。
【0044】
マウント座面25は、マウント部17がフレーム3に結合された状態でフレーム座面35と対向する縁部である、内周縁部27および外周縁部28を有する。
【0045】
本例では、マウント部17は、柱状であり、かつ、その中心軸が上下方向に伸長するように配置されている。マウント部17のマウント座面25を軸方向下側から見ると、外周縁部28は一定の径方向長さを有さない凹凸部32(図示の例では、セレーションの如き周方向凹凸)であり、内周縁部27は一定の径方向長さを有する円形である。本例では、マウント座面25は、マウント部17の下端面により構成されている。本例では、マウント側ボルト孔26は、マウント部17の径方向中央部を軸方向に貫通する円孔により構成されている。なお、図示(図3、4)のマウント部17は、簡略化のため円柱で表現しているが、全体として凹凸部32が軸方向に連続して有していても良いし、フレーム座面と対向するマウント部のみが凹凸部32を有していても良い。
【0046】
マウント座面25において、内周縁部27および外周縁部28は、自由状態で周囲の部分よりもマウント側ボルト孔26の軸線方向、すなわちボルト4(図4参照)の軸線方向に張り出していない。すわなち、マウント座面25は、平坦面31となっている。本例では、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30が、シャープなエッジ形状を有している。
【0047】
具体的には、本例では、マウント部17のマウント座面25の外周縁部28を軸方向下側から見た形状を、セレーションの如き凹凸形状としている。すなわち、本例では、単位周方向長当たりの外周縁部28の長さを、外周縁部28を一定の半径を有する円筒形状にする場合と比べて、長くしている。本例では、該凹凸形状は周方向に連続して均等間隔に並んでおり、かつ、歯の高さHは全て同じ高さになっている。なお、図5において、一点鎖線で描いた円は、歯の根元を示す仮想円(歯底円)である。ただし、歯の高さを一部異ならせてもよいし、歯の形状をセレーションの如き形状でなく、スプライン形状としてもよいし、矩形としてもよい。いずれにしても、外周縁部28が、一定の半径を有する円筒形状になっている場合に比べて、単位周方向長さが長くなっているような凹凸形状となっている。図示の例では、凸部が20か所、凹部が20か所の20歯である。歯の数を増やすほど、単位当たりの周方向長さが増すため、保持力を向上させることができる。外周縁部28の径方向端である径方向外端縁30は、いわゆるピン角(シャープエッジ)となっている。径方向外端縁30は、意図的なR面取りがついていなければよく、本発明の課題が解決できれば、製造時に生ずる不可避のバリや、使用時にエッジが多少丸くなるような形状を含むものとする。
【0048】
本例のように、ダイキャスト成形のみによってマウント座面25を完成させる場合には、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30が、シャープなエッジ形状ではなく、R形状になりやすい。一方、内周縁部27の径方向内端縁29、および、外周縁部28の径方向外端縁30は、シャープなエッジ形状を有していた方が、フレーム座面35との接触部に作用するエッジロードが大きくなりやすく、該接触部においてタイロッド11からの反力を受けやすい。そこで、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、ダイキャスト成形後のマウント座面25の表層部を切削により除去することによって、シャープなエッジ形状を有する径方向内端縁29および径方向外端縁30を備えたマウント座面25を完成させることもできる。
【0049】
本例では、一つの歯あたりの歯の高さH(凸部の高さ)を例えば0.5mm以上とできるが、所望のエッジロードが発生すればよく、これに限らない。
【0050】
フレーム3は、台座部34を備える。台座部34の数は任意であるが、本例では、台座部34の数は、マウント部17と同数の2つである。本例では、それぞれの台座部34は、それぞれのマウント部17を結合する箇所に配置されている。本例では、フレーム3は、鋼製である。
【0051】
台座部34は、他方の座面であるフレーム座面35、および、該フレーム座面35に開口する台座側ボルト孔36を有する。
【0052】
本例では、台座部34は、円筒形状を有し、かつ、その中心軸が上下方向に伸長するように配置されている。本例では、フレーム座面35は、台座部34の上端面により構成されており、円輪形状を有する。本例では、台座側ボルト孔36は、台座部34の径方向中央部を軸方向に貫通する雌ねじ孔により構成されている。
【0053】
本例では、フレーム座面35は、台座側ボルト孔36の軸線方向、すなわちボルト4(図4参照)の軸線方向に対して直交する平面により構成されている。本例では、フレーム座面35の内径は、マウント座面25の内径よりも小さく、フレーム座面35の外径は、マウント座面25の外径よりも大きい。すなわち、フレーム座面35は、マウント座面25の内周縁部27および外周縁部28のそれぞれと対向可能な径方向幅を有する。
【0054】
本例では、フレーム座面35に皮膜が施されていない。すなわち、フレーム座面35は、フレーム3の材質である鋼の表面により構成されている。ただし、本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、フレーム座面に、カチオン電着塗装などによる皮膜を施すこともできる。
【0055】
ボルト4の数は任意であるが、本例では、ボルト4の数は、マウント部17と同数の2本である。ボルト4は、図4に示すように、フレーム座面35とマウント座面25とを接触させた状態で、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36に挿通または螺合される軸部37を有し、かつ、自身の軸力によってマウント座面25をフレーム座面35に押し付けている。
【0056】
具体的には、本例では、マウント部17を台座部34に結合する際には、マウント部17のマウント座面25を、台座部34のフレーム座面35に接触させた状態で、ボルト4の軸部37を、マウント部17のマウント側ボルト孔26に上方から挿通し、かつ、台座部34の台座側ボルト孔36に螺合して、ボルト4の頭部38を、マウント部17の上端面に接触させる。そして、ボルト4を締め付けることにより、ボルト4の軸力を発生させることで、フレーム座面35とマウント座面25との接触圧を増大させて、マウント部17を台座部34に結合する。この状態で、本例では、図5に示すように、マウント座面25のうち、外周縁部28のみが、フレーム座面35と接触することにより、エッジロードを発生させる。
【0057】
ステアリング装置1の操舵操作を行う際に、それぞれのマウント部17には、該マウント部17に近い側のタイロッド11から、該タイロッド11の伸長方向に沿う方向の反力が作用する。したがって、このような反力に起因して、該マウント部17が台座部34に対して、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、該タイロッド11の伸長方向に沿う方向へ移動しようとする。なお、マウント部17に近い側のタイロッド11とは、図1および図2において、左側のマウント部17に対する左側のタイロッド11であり、右側のマウント部17に対する右側のタイロッド11である。一方、台座部34に対するマウント部17の結合作業を容易にする観点から、該マウント部17のマウント側ボルト孔26の内径は、ボルト4の軸部37の外径よりも大きく設定されている。このため、マウント側ボルト孔26の内周面と軸部37の外周面との間には隙間が存在する。したがって、該隙間の存在に基づいて、該マウント部17が台座部34に対して、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見て、該タイロッド11の伸長方向に沿った方向へ移動する可能性がある。
【0058】
この点に関して、本例の構造では、フレーム座面35とマウント座面25との接触部において、径方向外他端縁28により確実にエッジロードを発生させている。外周縁部28は、数μmから数十μm程度の微細な凹凸などと比して十分に大きな形状を有することから、エッジロードの管理を適切に行うことが可能である。よって、フレーム座面35に対するマウント座面25の保持力を確保しやすく、フレーム3に対してマウント部17が移動してがたつくことを抑制しやすい。本例では、単周方向長当たりの外周縁部28がセレーションの如き凹凸形状になっていることから、外周縁部28を一定の半径を有する円筒形状にする場合と比べて単位周方向長が長くなる。これにより、確実にエッジロードを発生させることができる。さらに本例では、該凹凸形状は周方向で均等間隔に並んでおり、歯の高さは全て同じ高さになっているから、タイロッドエンドの伸長方向との位相を問わずマウント部17を組付けできるため、組付け性が向上する。
【0059】
本例では、外周凹凸部が周方向に連続して設けられていることから、マウントの位相を問わずに、タイロッド11の伸長方向に沿う方向の反力を、より効率良く受けることができる。
【0060】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合には、フレーム3の台座側ボルト孔36を、ボルト4の軸部37を挿通するための通孔とすることもできる。この場合には、ボルト4の軸部37を、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36に上側または下側から挿通し、かつ、マウント側ボルト孔26および台座側ボルト孔36から突出した軸部37の先端部にナットを螺合し、さらに締め付けることによって、マウント部17を台座部34に結合することができる。
【0061】
本例では、ハウジング2を製造する際に、ダイキャスト成形のみによって、マウント座面25を完成させる。このため、ハウジング2の製造コストを抑えることができる。ただし、ダイキャスト成形以外の方法で製造することもできる。
【0062】
[第1例の変型例]
本開示の実施の形態の第1例の変型例について、図6を用いて説明する。
【0063】
本例では、マウント部17aのマウント座面25aの外周縁部28aの軸方向下側から見た形状を、凸部と凹部とをR形状でつないだ波状の凹凸形状としている。これによっても、外周縁部28aの単位周方向長さを、円筒形状とする場合と比べて増大しているため、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25aの保持力を確保しやすくしている。本例では、マウント部17の全体として軸方向に凹凸部32を有している場合でも、R形状が付いているため、ハウジングの輸送時の安全性を向上しやすい。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0064】
[第2例]
本開示の実施の形態の第2例について、図7を用いて説明する。
【0065】
本例では、マウント部17bのマウント座面25bの内周縁部27aの軸方向下側から見た形状を、セレーションの如き凹凸形状としている。これによっても、内周縁部27aの単位周方向長さを、円筒形状とする場合と比べて増大させることできるため、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25bの保持力を確保しやすくすることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0066】
[第3例]
本開示の実施の形態の第3例について、図8を用いて説明する。
【0067】
本例では、マウント部17cのマウント座面25cの内周縁部27aおよび外周縁部28aの軸方向下側から見た形状を、いずれも、セレーションの如き凹凸形状としている。これによって、内周縁部27aおよび外周縁部28aの単位周方向長さを、円筒形状とする場合と比べて増大しているため、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25cの保持力を確保しやすくしている。本例では、第1例や第2例のように内周縁部27aおよび外周縁部28aのいずれか片方を円筒形状にする場合よりも、確実に保持力を発生させることができる。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0068】
[第4例]
本開示の実施の形態の第4例について、図9(a)から図9(d)を用いて説明する。
【0069】
本例では、マウント部17dのマウント座面25dの内周縁部27、27bおよび/または外周縁部28、28a、28b、28cの軸方向下側から見た形状を、セレーションの如き凹凸形状および/または凸部と凹部とをR形状でつないだ波状形状としている。本例では、谷埋め部33を設けた点で、他の実施例と異なっている。谷埋め部33は、径方向先端の位置を凸部の歯先と同じ位置としたまま、凹部に溝を設けない(歯の谷を設けずに埋めた)部分のことをいう。本例では、内周縁部27、27bおよび/または外周縁部28、28a、28b、28cの単位周方向長さを、一定の半径を有する円筒形状とする場合と比べて増大しているため、フレーム座面35(図4参照)に対するマウント座面25dの保持力を確保しやすくしている。
【0070】
本例では、谷埋め部33は、外周側谷埋め部33aおよび/または内周側谷埋め部33bからなる。例えば、図9(a)では外周縁部28cの周方向3箇所に外周側谷埋め部33aが設けられており、図9(b)から図9(d)では内周縁部27bの周方向3箇所に内周側谷埋め部33bが設けられている。この例に限らず、凹凸部32と谷埋め部33a、33bとの個数や配置は、所望の保持力により適宜変更することができる。例えば、図示はしないが、内周縁部27bと外周縁部28bの両方に谷埋め部33a、33bを設けることもできる。これにより、ハウジング2の全体が路面などから受ける荷重を考慮して、マウント部が受ける荷重を設計・コントロールしやすい。谷埋め部33は、製造時の寸法測定がしやすいので、エッジロード発生が管理しやすい。
【0071】
さらに、本例では、谷埋め部33とタイロッド11の伸長方向の延長線とを略直交させることにより、確実に保持力を発生させることができる。具体的には、マウント側ボルト孔26の軸線方向から見た場合に、マウント座面25の谷埋め部33の仮想円の接線と、マウント座面25に最も近いタイロッド11の伸長方向とを、互いに略直交させることにより、路面等から入力されるタイロッド11の伸長方向に沿う方向の荷重を、谷埋め部33が効率良く受けることができる。この場合、凹凸部32もタイロッド11の伸長方向に沿う方向と直交する成分を有するため、谷埋め部33に加えて凹凸部32があることで保持力が向上する。本例についてのその他の構成および作用効果は、第1例と同様である。
【0072】
本開示のステアリング装置および結合構造は、上述した各実施の形態の構成を、矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせて実施することができる。
【0073】
本開示のステアリング装置および結合構造を実施する場合、ハウジングが備えるマウント部の個数は、2個に限らず、3個以上とすることもできる。例えば、デュアルピニオン式電動パワーステアリング装置の場合は、ハンドルと連結する側のハウジング(ラックハウジング)に1つのマウントを設けるとともに、相対的に高い荷重のかかるモータ等のアシスト機構と連結する側のハウジング(ラックハウジング)に2つのマウントを設けてもよい。本開示の特徴となる形状は、ハウジング全体の剛性バランスを考えて、少なくとも1個のマウント部とフレームとの結合部に適用されればよく、必ずしもすべてのマウント部とフレームとの結合部に適用される必要はない。
【符号の説明】
【0074】
1 ステアリング装置
2 ハウジング
3 フレーム
4 ボルト
5 ステアリングギヤユニット
6 ステアリングホイール
7 ステアリングシャフト
8 ステアリングコラム
9a、9b 自在継手
10 中間シャフト
11 タイロッド
12 ピニオンシャフト
13 ラックシャフト
14 ボールジョイント
15 電動アシスト装置
16 収容部
17、17a、17b、17c、17d マウント部
18 ラック収容部
19 ピニオン収容部
20 ガイド収容部
21 ラックガイド
22 ラックブッシュ
23a、23b 軸受
24 連結部
25、25a、25b、25c、25d マウント座面
26 マウント側ボルト孔
27、27a、27b 内周縁部
28、28a、28b、28c 外周縁部
29 径方向内端縁
30、30a 径方向外端縁
31 平面部
32 凹凸部
33 谷埋め部
33a 外周側谷埋め部
33b 内周側谷埋め部
34、34a 台座部
35、35a フレーム座面
36 台座側ボルト孔
37 軸部
38 頭部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9