(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072413
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】開閉弁、水栓装置、及び洗面化粧台
(51)【国際特許分類】
F16K 47/02 20060101AFI20240521BHJP
A47B 67/02 20060101ALI20240521BHJP
A47K 1/00 20060101ALI20240521BHJP
E03C 1/042 20060101ALI20240521BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16K47/02 D
A47B67/02
A47K1/00 A
E03C1/042 B
F16K1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183201
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 太久馬
(72)【発明者】
【氏名】成海 洋輔
【テーマコード(参考)】
2D060
3H052
3H066
【Fターム(参考)】
2D060BA03
3H052AA01
3H052BA14
3H052CA22
3H052CA34
3H052CB02
3H052CC01
3H052CD09
3H052EA02
3H066AA01
3H066BA05
(57)【要約】
【課題】ウォータハンマー現象によって発生する異音を好適に低減できる開閉弁、水栓装置、及び洗面化粧台を提供する。
【解決手段】洗面化粧台100は水栓装置1を備える。水栓装置1は、開閉弁(プッシュ式開閉弁30)を備える。開閉弁は、内部に通水路(収納空間50A、上流側通水路50B、下流側通水路50C)を形成する本体部50と、通水路を開閉する弁体部60と、通水路における弁体部60よりも下流側に配置される緩衝部70と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通水路を形成する本体部と、
前記通水路を開閉する弁体部と、
前記通水路における前記弁体部よりも下流側に配置される緩衝部と、
を備える開閉弁。
【請求項2】
前記緩衝部は、ゴム製の緩衝材を有する、請求項1に記載の開閉弁。
【請求項3】
前記緩衝部は、樹脂製の緩衝材を有する、請求項1に記載の開閉弁。
【請求項4】
前記通水路は、前記弁体部の下流側において屈曲する屈曲部を有し、
前記緩衝部は、前記屈曲部に隣接して配置される、請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の開閉弁。
【請求項5】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の開閉弁を備える水栓装置。
【請求項6】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の開閉弁を有する水栓装置と、
前記水栓装置における吐水部の下方に配置されるボウル部を有する洗面台と、
前記洗面台の上方に配置されるミラーキャビネットと、
を備えている、洗面化粧台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、開閉弁、水栓装置、及び洗面化粧台に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には従来の水栓装置が開示されている。この水栓装置は開閉弁を備えている。開閉弁は、流路を開閉することによって、水栓装置における吐水及び止水を切り替える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
開閉弁において、吐水から止水への切り替え時には、いわゆるウォータハンマー現象が生じることが知られている。ウォータハンマー現象は異音の発生を伴う。このようなウォータハンマー現象による異音の発生を低減する技術が求められている。
【0005】
本開示は、ウォータハンマー現象によって発生する異音を好適に低減できる開閉弁、水栓装置、及び洗面化粧台を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る開閉弁は、内部に通水路を形成する本体部と、前記通水路を開閉する弁体部と、前記通水路における前記弁体部よりも下流側に配置される緩衝部と、を備える。
【0007】
本開示の一実施形態に係る水栓装置は、上記開閉弁を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係る洗面化粧台は、上記水栓装置と、上記水栓装置における吐水部の下方に配置されるボウル部を有する洗面台と、前記洗面台の上方に配置されるミラーキャビネットと、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の水栓装置が備えられた洗面化粧台を示す斜視図である。
【
図2】実施形態1に係る水栓装置を示す正面図である。
【
図3】実施形態1に係る水栓装置を斜め上後方から見た斜視図である。
【
図4】実施形態1に係る開閉弁を示す平面断面図であり、開閉弁が閉じた状態を示す。
【
図5】実施形態1に係る開閉弁を示す平面断面図であり、開閉弁が開いた状態を示す。
【
図6】実施形態1に係る開閉弁を示す側面断面図であり、
図4のVI-VI線相当断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<実施形態1>
実施形態1に係る水栓装置1は、
図1に示すように、洗面化粧台100に備えられている。洗面化粧台100は、水栓装置1の他、洗面台110、ミラーキャビネット120、カバー130等を備えて構成されている。水栓装置1は、洗面台110の上部であって、ミラーキャビネット120の下方に取り付けられている。
【0011】
以下の説明において、水栓装置1の前後の方向については、使用者が水栓装置1を備えた洗面化粧台100に正対した場合に、使用者から見て手前側を前方、使用者から見て奥側を後方とそれぞれ定義する。水栓装置1の左右及び上下の方向については、使用者が洗面化粧台100に正対した場合に、使用者から見た向きをそのまま左右方向及び上下方向と定義する。各図におけるX軸の正方向は前方である。各図におけるY軸の正方向は左方である。各図におけるZ軸の正方向は上方である。
【0012】
図1に示すように、洗面台110は、箱形の下側収納部111と、下側収納部111の上面に配置された天板112と、天板112に取り付けたボウル部113と、天板112の後端縁から上方へ立ち上がった立壁114とを有する。
【0013】
図1及び
図2に示すように、水栓装置1は、吐水部10と、混合弁20と、プッシュ式開閉弁30と、ソケット40と、を備えている。吐水部10、混合弁20、及びプッシュ式開閉弁30は、立壁114の上端部において左右方向に並んで配置されている。具体的には、水栓装置1は、吐水部10を立壁114の左右方向の中央部に配置し、プッシュ式開閉弁30及び混合弁20を吐水部10の右側に配置している。ソケット40は、混合弁20及びプッシュ式開閉弁30の下方に配置されている。
【0014】
図1及び
図2に示すように、吐水部10、混合弁20、及びプッシュ式開閉弁30は、カバー130によって前方から覆われている。水栓装置1は、吐水部10における後述する吐水ヘッド11、及び混合弁20における後述する調節用操作部材21のみがカバー130から露出している。吐水ヘッド11、及び調節用操作部材21は、それぞれカバー130の下端から下方に突出している。カバー130の前面にはプッシュ式操作部材131が設けられている。プッシュ式操作部材131は、プッシュ式開閉弁30を操作する際に使用者によって操作される。
【0015】
図2及び
図3に示すように、吐水部10は、吐水ヘッド11と、ベース部12と、ホースガイド13と、を有している。吐水ヘッド11は円柱状に形成されている。吐水ヘッド11は、後端においてベース部12に着脱自在に保持され、先端に向けて斜め下方に延びている。吐水ヘッド11は、先端に吐水口10Aを有している。吐水ヘッド11の後端には、可撓性を有する給水ホース11Aの一端が接続される。給水ホース11Aの他端はソケット40に接続されている。ベース部12は、上方に開放された箱状をなしている。ベース部12は立壁114の前面に固定されている。ベース部12は、吐水ヘッド11を着脱自在に取り付ける。
【0016】
ホースガイド13はアーチ状の筒体である。ホースガイド13はベース部12に固定されている。ホースガイド13の一端は、吐水ヘッド11の後端に向けて開口している。ホースガイド13の他端は、立壁114の開口114Aを貫通して下方に開口している。ホースガイド13は給水ホース11Aを通している。ホースガイド13は、吐水ヘッド11がベース部12から取り外された際に引き出される給水ホース11Aの出入りをガイドする。
【0017】
図2及び
図3に示すように、混合弁20は、立壁114を前後に貫通して固定されている。混合弁20は湯水混合弁である。混合弁20は、固定ディスクや可動ディスク等を内蔵したディスクバルブとして構成されている。混合弁20の後部には、給水配管2、給湯配管3、第1混合水配管4、及び第2混合水配管5がそれぞれ接続されている。給水配管2、給湯配管3、第1混合水配管4、及び第2混合水配管5は、いずれも立壁114の後方に配管されている。給水配管2と給湯配管3を通して混合弁20に供給された水は、混合弁20の下流側となる第1混合水配管4及び第2混合水配管5へ吐出される。第1混合水配管4は、混合弁20から下方に延び、ソケット40に接続されている。第2混合水配管5は、混合弁20から左方に延び、プッシュ式開閉弁30に接続されている。
【0018】
混合弁20の前部には調節用操作部材21が連結されている。混合弁20は、使用者が調節用操作部材21を操作することによって、吐止水の切り替え、給水配管2から供給される水と給湯配管3から供給される湯との混合比の調節、及び吐水時における吐水量の調節を行う。混合弁20から吐出される水は、第1混合水配管4、ソケット40、及び給水ホース11Aを流通して吐水口10Aに至る。
【0019】
プッシュ式開閉弁30は、本開示に係る開閉弁の例示である。
図2及び
図3に示すように、プッシュ式開閉弁30は、吐水部10と混合弁20の間において、立壁114を前後に貫通して固定されている。プッシュ式開閉弁30はダイヤフラム弁である。
図3に示すように、プッシュ式開閉弁30の後部には、第2混合水配管5、及び第3混合水配管6がそれぞれ接続されている。第2混合水配管5及び第3混合水配管6は、いずれも立壁114の後方に配管されている。
【0020】
プッシュ式開閉弁30には、第2混合水配管5から水が供給される。第2混合水配管5は、混合弁20から延びる配管である。プッシュ式開閉弁30に供給される水は、混合弁20において混合比の調節された水である。第3混合水配管6は、プッシュ式開閉弁30の下方に延び、ソケット40に接続されている。プッシュ式開閉弁30から吐出される水は、第3混合水配管6、ソケット40、及び給水ホース11Aを流通して吐水口10Aに至る。プッシュ式開閉弁30は、吐水時における吐水量の調節機能を有していない。プッシュ式開閉弁30は、ソケット40に設けられた定流量弁によって、開状態において略一定の流量(例えば4L/min)で水を吐出する。
【0021】
図4から
図6に示すように、プッシュ式開閉弁30は、被操作部31及び機構部32を有している。被操作部31は、プッシュ式開閉弁30の前部に設けられている。機構部32は、被操作部31の後方であってプッシュ式開閉弁30の内部に設けられている。被操作部31は、カバー130前面のプッシュ式操作部材131からの操作力を受けて後方に移動する。被操作部31は、プッシュ式操作部材131からの操作力が解除されると、機構部32内のばね32Aの弾性反発力によって前方に押し戻される。機構部32は公知のオルタネイト機構である。機構部32は、被操作部31が後方への操作力を受ける度に、被操作部31の前後の位置を交互に切り換えて移動させる。プッシュ式開閉弁30は、プッシュ式操作部材131の操作に伴う被操作部31の前後方向の移動に応じて、吐水可能な開状態と、止水する閉状態とを切り替える。被操作部31は、プッシュ式開閉弁30の閉状態において、前後2位置のうちの後方に位置する。被操作部31は、プッシュ式開閉弁30の開状態において、前後2位置のうちの前方に位置する。
【0022】
プッシュ式開閉弁30は、
図4から
図6に示すように、本体部50と、弁体部60と、制御軸33と、を有する。本体部50は円筒状をなしている。本体部50の内部には、収納空間50Aと、上流側通水路50Bと、下流側通水路50Cと、が形成されている。これら収納空間50A、上流側通水路50B、及び下流側通水路50Cは、本開示に係る通水路の例示である。収納空間50Aは、機構部32の後方に形成されている。上流側通水路50B及び下流側通水路50Cは、収納空間50Aの後方に形成されている。上流側通水路50B及び下流側通水路50Cは、収納空間50Aを介して連通可能である。上流側通水路50B及び下流側通水路50Cは、収納空間50A内の弁体部60の位置に応じて、連通状態と非連通状態とのいずれかの状態にされる。上流側通水路50Bと下流側通水路50Cとが連通状態である場合、プッシュ式開閉弁30は開状態である。上流側通水路50Bと下流側通水路50Cとが非連通状態である場合、プッシュ式開閉弁30は閉状態である。
【0023】
収納空間50Aは、本体部50の中心部において前後方向に延びる円筒状の空間である。収納空間50Aには、後述する弁体部60、制御軸33等が収納される。上流側通水路50B及び下流側通水路50Cは、それぞれ収納空間50Aの後方に形成されている。上流側通水路50Bは、収納空間50Aの外周部に連通する環状の空間である。上流側通水路50Bは、第2混合水配管5に接続されている。下流側通水路50Cは、収納空間50Aの中心部に連通する円筒状の空間である。下流側通水路50Cは、管状をなす仕切部51に隔てられて、上流側通水路50Bの中心側に形成されている。下流側通水路50Cは第3混合水配管6に接続されている。仕切部51の前端部は、後述する弁体部60が接触する弁座51Aとして機能する。
【0024】
図6に示すように、下流側通水路50Cは屈曲部Bを有している。屈曲部Bは、下流側通水路50Cにおいて、収納空間50Aとの接続部の後方で前後方向に延びる第1部分50Eと、第1部分50Eの後端から下方に延びる第2部分50Fと、の接続部である。屈曲部Bは、前後方向に延びる第1部分50Eから上下方向に延びる第2部分50Fに向けてL字状に略直角に屈曲している。
【0025】
図4から
図6に示すように、プッシュ式開閉弁30は緩衝部70を有している。緩衝部70は、プッシュ式開閉弁30の下流側通水路50Cにおいてウォータハンマー現象が発生した場合に、その衝撃を緩衝して異音の発生を抑制する。緩衝部70は、弁体部60の下流側の通水路である下流側通水路50Cに配置されている。具体的には、本実施形態の場合、緩衝部70は、下流側通水路50Cにおける屈曲部Bに隣接して配置されている。緩衝部70は、下流側通水路50Cに連通する空間70Aを有している。空間70Aは、下流側通水路50Cにおける第1部分50Eから後方に連続して延びる円柱状の空間である。
【0026】
図4から
図6に示すように、本実施形態の場合、緩衝部70は、ホルダ71と、緩衝材72と、を有している。ホルダ71は緩衝材72を保持する。ホルダ71は、円筒体71A、軸体71B、及び円板体71Cを前後方向に同軸上で連結して構成されている。円筒体71Aは、後端において開放され、前端において底部を有する有底の円筒状である。円筒体71Aは、空間70Aの内径と同等の外径を有している。円筒体71Aの底部には、水が内部に進入可能なように、前後方向に貫通する孔が形成されている。軸体71Bは、円筒体71Aの底部と円板体71Cとを連結している。円板体71Cは、円筒体71Aの外径と同等の外径を有している。円板体71Cには、水が流通可能なように、前後方向に貫通する孔が形成されている。ホルダ71は、円筒体71Aにおいて空間70A内に収納され、軸体71Bにおいて空間70A内から前方の屈曲部B内に突出し、円板体71Cにおいて屈曲部Bを越えた前方の第1部分50E内に配置される。
【0027】
緩衝材72は円筒体71A内に収納されている。緩衝材72は、円筒体71Aの内形状に合わせた円柱状をなしている。緩衝材72は弾性に優れる材料からなる。緩衝材72は、例えば、EPDM、シリコーンゴム等のゴム製、ポリエチレン(PE)等の樹脂製であることができる。緩衝材72は、独立気泡型、連続気泡型、独立気泡型と連続気泡型とが組み合わされた半独立気泡型等の発泡体であることが好ましい。
【0028】
図4から
図6に示すように、弁体部60は収納空間50A内に収納されている。弁体部60は円板状をなしている。弁体部60は、前後方向を板厚方向として、本体部50の中心軸に沿って配置されている。弁体部60は、
図4に示す弁座51Aに接触した閉位置と、
図5に示す閉位置よりも前方に移動して弁座51Aから離れた開位置と、の間で移動自在である。弁体部60の前方の収納空間50A内にはコイルばね52が配置されている。弁体部60は、開位置から閉位置に移動する方向、すなわち後方に移動する方向の弾性反発力をこのコイルばね52から常時受けている。弁体部60が閉位置にある状態はプッシュ式開閉弁30における閉状態である。弁体部60が開位置にある状態は、プッシュ式開閉弁30の開状態である。
【0029】
図4から
図6に示すように、弁体部60は、ダイヤフラム61及びダイヤフラム板62を有している。ダイヤフラム61は、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等のゴムやエラストマ-等、弾性を有する材料からなる。ダイヤフラム61は、外周部において収納空間50Aの内周壁に接続され、収納空間50Aを前後に仕切る。ダイヤフラム61によって仕切られた収納空間50Aの前後の空間のうち、前側の空間は背圧室50Dである。
【0030】
図4から
図6に示すように、ダイヤフラム板62は、ダイヤフラム61の前面に接触してダイヤフラム61を保持する。ダイヤフラム板62は、例えばポリアセタール(POM)等、ダイヤフラム61よりも硬質な材料からなる。ダイヤフラム板62は凸部62Aを有している。凸部62Aは、ダイヤフラム板62の中心部から後方に突出している。凸部62Aは、ダイヤフラム61を貫通して後方に突出している。凸部62Aは、弁体部60が閉位置にある状態において、仕切部51内に挿入される。
【0031】
図4から
図6に示すように、弁体部60には、貫通孔60A、及び小孔60Bが形成されている。貫通孔60Aは、弁体部60の中心部において前後方向に貫通して形成されている。貫通孔60Aには、後述する制御軸33が貫通して配置される。小孔60Bは、弁体部60の中心部から径方向にオフセットした位置において前後方向に貫通し形成されている。小孔60Bは、弁体部60における仕切部51との接触部位よりも径方向外側に形成されている。これによって、小孔60Bは、弁体部60の後方の上流側通水路50Bと、弁体部60の前方の背圧室50Dと、を連通する。小孔60B内にはコイルばね52の一方の端部52Aが摺動自在に貫通している。小孔60Bは、端部52Aが挿入されていることによって、異物等による詰まりを抑制されている。
【0032】
図4から
図6に示すように、制御軸33は棒状をなしている。制御軸33は、本体部50の中心軸に沿って配置される。制御軸33の前端は被操作部31に接続されている。制御軸33は、被操作部31の前後方向への移動に伴って前後に移動する。制御軸33の後端部は、弁体部60の貫通孔60Aを貫通して下流側通水路50Cに至る。制御軸33の後端部には括れ部33Aが形成されている。
図4に示すように、括れ部33Aは、プッシュ式開閉弁30の閉状態において、弁体部60の後面側に配置される。
図5に示すように、括れ部33Aは、プッシュ式開閉弁30の開状態において、弁体部60の後面側と前面側とを跨ぐようにして配置される。
【0033】
上記構成の水栓装置1の作用について、水栓装置1の動作と併せて説明する。水栓装置1は、混合弁20における調節用操作部材21を使用者が操作することによって、混合弁20の開閉と、湯と水の混合比の調節と、を行うことができる。混合弁20が開状態になった場合、混合弁20では、湯と水とが混合された水が第1混合水配管4に流出する。第1混合水配管4に流入した水は、ソケット40を経て給水ホース11Aを流通し、吐水部10の吐水口10Aから吐出される。混合弁20から吐出される水は、調節用操作部材21の操作量に応じた吐水量、及び混合比で吐出される。
【0034】
水栓装置1は、カバー130前面のプッシュ式操作部材131を使用者が操作することによって、プッシュ式開閉弁30の開閉を行うことができる。プッシュ式開閉弁30が開状態になった場合、プッシュ式開閉弁30には、第2混合水配管5から水が流入する。第2混合水配管5から流入する水は、混合弁20を経由する水であり、調節用操作部材21を使用者が操作することによって混合比の調節された水である。プッシュ式開閉弁30に流入した水は、第3混合水配管6、及びソケット40を経て給水ホース11Aを流通し、吐水部10の吐水口10Aから吐出される。プッシュ式開閉弁30から吐出される水は、ソケット40内に配置された定流量弁の作用によって、一定の流量で吐水口10Aから吐出される。
【0035】
プッシュ式開閉弁30の動作について具体的に説明する。プッシュ式開閉弁30を閉状態から開状態に切り替える際、使用者は、プッシュ式操作部材131を押圧操作したのち放す。これによって、プッシュ式開閉弁30の被操作部31は、一旦閉状態の位置よりも後方に移動したのち、機構部32のオルタネイト動作によって閉状態の位置よりも前方の開位置に移動する。制御軸33は、被操作部31に接続されていることによって、被操作部31の移動に伴って前方に移動する。制御軸33が前方に移動すると、制御軸33の括れ部33Aは、弁体部60の前面側と後面側とを跨ぐように配置される。これによって、背圧室50Dは、下流側通水路50Cと連通状態にされ、内部の圧力が低下する。背圧室50D内の圧力は、弁体部60の前面側に作用している。このため、上流側通水路50Bに面している弁体部60の後面側に作用している圧力が、弁体部60の前面側に作用する圧力よりも、相対的に高くなる。弁体部60は、相対的に高くなった後面側の圧力によって押圧されて前方に移動し、弁座51Aから離れる。このようにして、プッシュ式開閉弁30は、閉状態から開状態に切り替わる。
【0036】
プッシュ式開閉弁30を開状態から閉状態に切り替える際、使用者は、閉状態から開状態に切り替える際と同様に、プッシュ式操作部材131を押圧操作したのち放す。これによって、プッシュ式開閉弁30の被操作部31は、一旦閉状態の位置よりも後方に移動したのち、機構部32のオルタネイト動作によって閉状態の位置に移動する。制御軸33は、被操作部31に接続されていることによって、被操作部31の移動に伴って後方に移動する。制御軸33が後方に移動すると、制御軸33の括れ部33Aは、弁体部60を貫通して弁体部60の後面側に移動する。これによって、下流側通水路50Cと背圧室50Dとの連通状態が遮断される。下流側通水路50Cとの連通状態が遮断されると、背圧室50Dの圧力は、小孔60Bによって連通している上流側通水路50Bと同等の圧力まで上昇する。これによって、弁体部60には、前面側と後面側の両面側において上流側通水路50B内の圧力が作用する。しかし、弁体部60の前面側と後面側とでは受圧面積が異なるため、作用する力の大きさが異なる。この力の大きさの差によって、弁体部60は後方に移動し、弁座51Aに接触して押し付けられる。このようにして、プッシュ式開閉弁30は、開状態から閉状態に切り替わる。
【0037】
プッシュ式開閉弁30が開状態から閉状態に切り替わる際、水栓装置1では、ウォータハンマー現象の発生が懸念される。本実施形態に係る水栓装置1において、プッシュ式開閉弁30は、弁体部60よりも下流側の通水路である下流側通水路50Cに緩衝部70を配置した構成である。このため、プッシュ式開閉弁30は、弁体部60よりも下流側の通水路においてウォータハンマー現象が生じた場合でも、その衝撃を好適に吸収し得る。このため、プッシュ式開閉弁30は、ウォータハンマー現象に起因する異音の発生を好適に低減し得る。
【0038】
本実施形態に係る水栓装置1において、プッシュ式開閉弁30は、吐水状態から止水状態への急激な切り替わりが生じ得るダイヤフラム弁である。この種の弁に起因するウォータハンマー現象への対策としては、一般的に、小孔の断面積の大きさを調整するなどして弁が開状態から閉状態へ急激に切り替わるのを抑制することによって衝撃の大きさを低減する構成を採用することが考えられる。しかし、このような構成を採用した弁の場合、操作部を操作してから止水するまでのタイムラグの増大、いわゆる止水応答性の低下という新たな課題が懸念される。
【0039】
これに対し、プッシュ式開閉弁30は、弁体部60よりも下流側の通水路である下流側通水路50Cに緩衝部70を配置している。緩衝部70は、ウォータハンマー現象によって生じた衝撃を直接的に吸収する。このため、プッシュ式開閉弁30は、ウォータハンマー現象によって生じる衝撃の大きさはそのままに、その衝撃を吸収することができる。その結果、プッシュ式開閉弁30は、止水応答性の低下を招くことなく、ウォータハンマー現象によって発生する異音の発生を好適に低減し得る。
【0040】
プッシュ式開閉弁30において、下流側通水路50Cは屈曲部Bを有している。本願発明者らは、このような弁体の下流側の通水路の屈曲部において、屈曲部の上流側と下流側の水が分離するいわゆる水柱分離型のウォータハンマー現象が発生し易い、という知見を得た。プッシュ式開閉弁30において、緩衝部70は、この屈曲部Bに隣接して配置されている。このため、緩衝部70は、屈曲部Bにおいて発生し得るウォータハンマー現象による衝撃を好適に吸収し得る。
【0041】
水栓装置1において、プッシュ式開閉弁30から流出する水は、下流側通水路50Cの第2部分50Fから、第3混合水配管6へと下向きに比較的長い距離を流通する。第3混合水配管6を流通した水は、ソケット40から給水ホース11Aを流通して吐水ヘッド11の先端の吐水口10Aに至る。水栓装置1は、プッシュ式開閉弁30の下流側において、流路長に比して流路径の極めて小さい流路を形成している。このような構成は、開閉弁の直後において吐水する水栓装置と比較して弁体の下流側を流通する水の慣性力が比較的大きくなるため、水柱分離型のウォータハンマー現象の生じ易い構成であるといえる。しかし、水栓装置1では、プッシュ式開閉弁30に緩衝部70を設けたことによって、ウォータハンマー現象が生じた場合でも、その衝撃を好適に吸収し、異音の発生を好適に抑制し得る。
【0042】
以上のように、本実施形態に係る開閉弁としてのプッシュ式開閉弁30は、本体部50と、弁体部60と、緩衝部70と、を備えている。本体部50は、内部に通水路としての上流側通水路50B、収納空間50A、及び下流側通水路50Cを形成する。弁体部60は通水路を開閉する。具体的には、弁体部60は、収納空間50A内の位置に応じて、上流側通水路50Bと下流側通水路50Cとを連通状態及び非連通状態のいずれかの状態にする。緩衝部70は、弁体部60よりも下流側の下流側通水路50Cに配置される。
【0043】
このような構成によって、プッシュ式開閉弁30は、下流側の通水路においてウォータハンマー現象が生じた場合でもその衝撃を吸収することができる。したがって、プッシュ式開閉弁30は、ウォータハンマー現象によって発生する異音を好適に低減できる。
【0044】
プッシュ式開閉弁30において、緩衝部70は緩衝材72を有する。緩衝材72は弾性に優れる材料からなる。このため、緩衝部70は、ウォータハンマー現象によって発生する衝撃を好適に吸収することができる。
【0045】
プッシュ式開閉弁30において、下流側通水路50Cは屈曲部Bを有する。緩衝部70は、この屈曲部Bに隣接して配置されている。このため、緩衝部70は、屈曲部Bの影響によって発生するウォータハンマー現象による衝撃を好適に吸収することができる。
【0046】
本実施形態に係る水栓装置1は、プッシュ式開閉弁30を備えている。このため、水栓装置1は、プッシュ式開閉弁30における弁体部60の下流側において発生するウォータハンマー現象による衝撃を好適に吸収することができる。したがって、水栓装置1は、ウォータハンマー現象によって発生する異音を好適に低減できる。
【0047】
本実施形態に係る洗面化粧台100は、プッシュ式開閉弁30を有する水栓装置1を備えている。このため、洗面化粧台100は、プッシュ式開閉弁30における弁体部60の下流側において発生するウォータハンマー現象による衝撃を好適に吸収することができる。したがって、洗面化粧台100は、ウォータハンマー現象によって発生する異音を好適に低減できる。
【0048】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0049】
本開示に係る開閉弁の種類は、上記実施形態において例示したダイヤフラム弁に限定されず、例えば、仕切弁、ボール弁、バタフライ弁等、如何様な種類の開閉弁であってもよい。本開示に係る開閉弁の構成は、吐水状態から止水状態へ急激に切り替わり得る開閉弁において特に有用である。
【0050】
本開示に係る緩衝部の構成は、上記実施形態に限定されない。緩衝部は、ゴム製、樹脂製等の弾性体からなる緩衝材を有して衝撃を吸収する形態に限らず、例えばコイルばね等の弾性体の弾性力を利用して衝撃を吸収する形態等、種々の形態を採用し得る。本開示に係る緩衝部は、通水路における弁体部よりも下流側に配置される限り、その位置は特に限定されない。
【0051】
本開示に係る通水部が屈曲部を有することは必須ではない。通水部が屈曲部を有する場合、屈曲部における屈曲角度、曲率等は特に限定されない。通水部が屈曲部を有する場合、緩衝部の配置形態は上記実施形態に限定されない。
【0052】
本開示に係る水栓装置の構成は、本開示に係る開閉弁を備える限り特に限定されない。水栓装置は、例えば、ミラーキャビネットを備えないいわゆる洗面台に備えられていてもよい。
【0053】
本開示に係る洗面化粧台の構成は、本開示に係る水栓装置を備える限り特に限定されない。
【0054】
<実験1>
本開示に係る開閉弁の効果を確認するために実験を行った。実験では、上記実施形態1のプッシュ式開閉弁30を用いて、開閉時に発生する異音の大きさを測定した。実験では、材質、発泡種類等の異なる複数種類の緩衝材を用いた場合のそれぞれについての測定を行った。実験では、比較例として、緩衝部70を備えない以外は上記実施形態1のプッシュ式開閉弁30と同様の構成の開閉弁の異音の大きさについても測定を行った。実験では、給水圧力([MPa])を0.2、0.3、及び0.4の3段階に変化させて測定を行った。各測定は、プッシュ式開閉弁30及び比較例の開閉弁のそれぞれにおいて、異音発生箇所と考えられる屈曲部の上方であって、各開閉弁の前後方向に沿った中心軸から100mmの位置にマイクロホンを配置して行った。マイクロホンで集音した音は、FFTアナライザ(株式会社小野測器製 DS2104A)によって解析し、異音に相当する成分を音質評価ソフトウェア(株式会社小野測器製 OS-2740)を用いて音の大きさ(ラウドネス[sone])として定量化した。実験に用いた各緩衝材の主な物性については以下の表1の通りである。なお、表1において、厚さとは、各緩衝材を緩衝部70のホルダ71内に配置した際の前後方向の寸法である。
【0055】
【0056】
実験1の結果を
図7に示す。
図7のグラフにおいて、縦軸は、異音の大きさ(ラウドネス)[sone]、横軸は、給水圧力[MPa]をそれぞれ示す。実験結果によれば、
図7に示すように、緩衝部を設けた各実験例は、緩衝部のない比較例と比較して異音低減効果が得られることが確認できた。特に、給水圧力0.4MPa時において、実験例1を除く各実験例では、最大45%の異音低減効果が得られることが確認できた。実験結果によれば、緩衝材は、非発泡体よりも発泡体のほうが、異音低減効果が大きいことが分かった。実験結果によれば、実験例2、及び実験例5の緩衝材を用いた場合に、特に優れた異音低減効果が得られた。なお、緩衝材の耐久性といった観点では、実験例7で用いた緩衝材が最も有効であった。
【符号の説明】
【0057】
1…水栓装置、30…プッシュ式開閉弁(開閉弁)、50…本体部、50A…収納空間(通水路)、50B…上流側通水路(通水路)、50C…下流側通水路(通水路)、60…弁体部、70…緩衝部、72…緩衝材