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特開2024-72420継手付パイプおよび継手付パイプの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072420
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】継手付パイプおよび継手付パイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/02 20060101AFI20240521BHJP
   F16L 21/00 20060101ALI20240521BHJP
【FI】
F16L21/02
F16L21/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183215
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】前田 龍一
(72)【発明者】
【氏名】八木 孝司
(57)【要約】
【課題】パイプと継手との間に十分なシール性を確保することができ、かつ、簡単な工程でパイプと継手とを接続可能とする。
【解決手段】パイプ2の軸方向における一端2aおよび環状凸部11を含む部分が、継手3の継手内空間12に挿入されている。Oリング4は、パイプ2の外周面2bの、パイプ2の一端2aと環状凸部11との間に位置する部分と、継手3の継手内空間12の径方向の端を画定する壁面12c1との間の隙間13に配置されている。テーパリング5は、パイプ2が挿通され、軸方向における環状凸部11と反対側から継手内空間12に圧入されている。テーパリング5の外周面に形成された係合凸部15と、継手3の継手内空間12の径方向の端を画定する壁面に形成された係合凹部14とが係合している。テーパリング5の外周面と、継手3の継手内空間12の径方向の端を画定する壁面との間に接着剤17が介在している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプと、
前記パイプと接続される継手と、
前記パイプと前記継手との間をシールするシール部材と、
前記パイプと前記継手とを固定する固定部材と、を備え、
前記パイプの外周面にその全周にわたって延びた環状凸部が形成され、
前記継手は、
前記パイプの軸方向における一端および前記環状凸部を含む部分が前記軸方向に挿入され、前記パイプの内部空間であるパイプ内空間と連通する継手内空間を形成し、
前記継手内空間を画定する壁面の一部であり、前記パイプの径方向に延びて前記環状凸部の前記軸方向における前記一端側の端面と接触する接触面、を有し、
前記シール部材は、環状に構成され、前記パイプの外周面の、前記パイプの前記一端と前記環状凸部との間に位置する部分と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間の隙間に配置され、
前記固定部材は、環状に構成され、前記パイプが挿通され、前記パイプの、前記継手内空間内に位置し、かつ、前記軸方向において、前記環状凸部よりも前記パイプの前記一端から離れた部分の外周面と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間の隙間に、前記軸方向における前記環状凸部と反対側から圧入されており、
前記固定部材の前記軸方向における前記環状凸部側の端面が、前記環状凸部に接触し、
前記固定部材の外周面に、前記径方向に突出した係合凸部が形成され、
前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面に、径方向に凹んでおり、圧入された前記固定部材の前記係合凸部と係合する係合凹部が形成され、
前記固定部材の外周面と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間に接着剤が介在していることを特徴とする継手付パイプ。
【請求項2】
前記係合凸部は、前記軸方向において、前記環状凸部から離れるほど、前記固定部材の径方向の外側に位置するように、前記軸方向に対して傾斜した第1テーパ面を有し、
前記係合凹部は、前記第1テーパ面と対向し、前記軸方向において、前記環状凸部から離れるほど、前記継手の径方向の外側に位置するように、前記軸方向に対して傾斜した第2テーパ面を有することを特徴とする請求項1に記載の継手付パイプ。
【請求項3】
前記固定部材の内周面と、前記パイプの外周面との間に接着剤が介在していることを特徴とする請求項1に記載の継手付パイプ。
【請求項4】
前記固定部材の外周面の少なくとも一部が、周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面であることを特徴とする請求項1に記載の継手付パイプ。
【請求項5】
前記固定部材の前記端面の少なくとも一部が、周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面であることを特徴とする請求項1に記載の継手付パイプ。
【請求項6】
前記環状凸部の外周面が、前記継手内空間を径方向の端を画定する壁面に接触しており、
前記環状凸部の外周面の少なくとも一部が、周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面であることを特徴とする請求項1に記載の継手付パイプ。
【請求項7】
請求項1に記載の継手付パイプの製造方法であって、
前記パイプの前記一端と前記環状凸部との間の部分を、前記シール部材に挿通させることによって、前記パイプに前記シール部材を取り付けるシール部材取付工程と、
前記シール部材が取り付けられた前記パイプの、前記一端および前記環状凸部を含む部分を、前記継手内空間に挿入する挿入工程と、
前記パイプの前記軸方向において、前記環状凸部よりも前記一端から離れた部分の外周面と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間の隙間に、外周面に接着剤を塗布した前記固定部材を、前記軸方向における前記環状凸部と反対側から圧入する圧入工程と、を備えていることを特徴とする継手付パイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプと継手とを接続してなる継手付パイプ、および、継手付パイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、接続管と接続される管継手が、接続管が差し込まれる継手本体と、継手本体にねじ込まれる押輪と、継手本体の内部に組み込まれるメタルシール部材とを有する。継手本体は、その両端部に形成されためねじ部と、その終端部から中央部に向って形成された下り勾配のテーパ面と、その終端側に形成された円周溝を有する。押輪は、六角ナット状の頭部と、継手本体のめねじ部にねじ込まれるおねじ部と、その終端側に形成されたリング状の突当部を有する。メタルシール部材は、継手本体のテーパ面が当接するテーパ面を有し、断面が楔形状に形成された部材である。また、メタルシール部材のテーパ面と内周面には、円周方向に沿って突条部が形成されている。
【0003】
特許文献1では、継手本体の内部にメタルシール部材を装着した後、押輪を継手本体にねじ込み、押輪の先端側に形成された突当部をメタルシール部材の端面に突当てる。次いで、押輪を完全に締め込む。これにより、メタルシール部材の先端部が継手本体の円周溝に侵入するとともに、突条部が押し潰されて、継手本体のテーパ面とメタルシール部材のテーパ面が密着し、かつ、メタルシール部材の内周面と接続管の外周面が密着し、所定のシール性能が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-89132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、特許文献1では、上述したように、押輪を継手本体にねじ込み、押輪を締め込むことによって、メタルシール部材の先端部が継手本体の円周溝に侵入するとともに、突条部が押し潰されて、継手本体のテーパ面とメタルシール部材のテーパ面が密着し、かつ、メタルシール部材の内周面と接続管の外周面が密着するようにしている。この場合、ねじ込んだ押輪が、その後緩んでしまうのを防止するために、押輪を締め込むときにトルクの管理が必要であり、作業が煩雑なものとなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、パイプと継手との間に十分なシール性を確保することができ、かつ、簡単な工程でパイプと継手とを接続可能な継手付きパイプ、および、継手付パイプの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の継手付パイプは、パイプと、前記パイプと接続される継手と、前記パイプと前記継手との間をシールするシール部材と、前記パイプと前記継手とを固定する固定部材と、を備え、前記パイプの外周面にその全周にわたって延びた環状凸部が形成され、前記継手は、前記パイプの軸方向における一端および前記環状凸部を含む部分が前記軸方向に挿入され、前記パイプの内部空間であるパイプ内空間と連通する継手内空間を形成し、前記継手内空間を画定する壁面の一部であり、前記パイプの径方向に延びて前記環状凸部の前記軸方向における前記一端側の端面と接触する接触面、を有し、前記シール部材は、環状に構成され、前記パイプの外周面の、前記パイプの前記一端と前記環状凸部との間に位置する部分と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間の隙間に配置され、前記固定部材は、環状に構成され、前記パイプが挿通され、前記パイプの、前記継手内空間内に位置し、かつ、前記軸方向において、前記環状凸部よりも前記パイプの前記一端から離れた部分の外周面と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間の隙間に、前記軸方向における前記環状凸部と反対側から圧入されており、前記固定部材の前記軸方向における前記環状凸部側の端面が、前記環状凸部に接触し、前記固定部材の外周面に、前記径方向に突出した係合凸部が形成され、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面に、径方向に凹んでおり、圧入された前記固定部材の前記係合凸部と係合する係合凹部が形成され、前記固定部材の外周面と、前記継手内空間の前記径方向の端を画定する壁面との間に接着剤が介在している。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、固定部材が圧入されることにより、固定部材の係合凸部と継手の係合凹部とが係合するとともに、パイプの環状凸部が継手の接触面と固定部材とに挟まれ、これにより、パイプと継手とが固定される。このとき、固定部材が圧入されることによってパイプと継手とが固定されるため、固定部材がねじ込まれてパイプと継手とが固定される場合とは異なり、トルクの調整などの煩雑な工程が不要である。したがって、パイプと継手とを簡単に固定することができる。また、固定部材の外周面と、継手内空間の径方向の端を画定する壁面との間に接着剤が介在していることにより、継手とテーパリングとが軸方向および周方向に相対移動してしまうこと、および、固定部材の外周面と、継手内空間の径方向の端を画定する壁面との間から異物が入り込んでしまうのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、本発明の実施形態の継手付パイプの軸方向に沿った断面図であり、(b)は、(a)を部材毎に分解した図である。
図2】(a)は、パイプを径方向の外側から見た図であり、(b)は、テーパリングの径方向の外側から見た図であり、(c)は、テーパリングの軸方向の環状凸部側から見た図であり、(d)は、図1(a)のIIDで示す領域を拡大した図である。
図3】(a)は、パイプにOリングを取り付ける工程を説明するための図であり、(b)は、Oリングが取り付けられたパイプを継手に挿入する工程を説明するための図であり、(c)は、テーパリングを圧入する工程を説明するための図である。
図4】(a)は、鍔部を有するテーパリングを備えた継手付パイプの軸方向に沿った断面図であり、(b)は、鍔部を有するテーパリングの径方向の外側から見た図であり、(c)は、鍔部を有するテーパリングを軸方向の環状凸部側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0011】
<継手付パイプの構造>
図1(a)、(b)に示すように、本実施形態の継手付パイプ1は、パイプ2と、継手3と、Oリング4(本発明のシール部材)と、テーパリング5(本発明の固定部材)とを備えている。
【0012】
パイプ2は、円筒状に構成されている。パイプ2には、環状凸部11が形成されている。環状凸部11は、パイプ2の軸方向の一端2a近傍の部分に形成され、パイプ2の外周面2bからパイプ2の径方向に突出している。また、環状凸部11は、パイプ2の外周面2bの全周にわたって延びている。環状凸部11は、例えば、バルジ加工、紐だし加工などによって形成することができる。なお、本実施形態では、パイプ2、継手3、Oリング4およびテーパリング5の軸方向が同じ方向であるため、以下では、これらの軸方向を単に軸方向と称することがある。また、以下では、パイプ2、継手3、Oリング4およびテーパリング5の径方向を単に径方向と称することがある。
【0013】
継手3は、少なくともパイプ2との接続部分が円筒状に構成されている。なお、以下の説明において、軸方向の外側とは、継手3の軸方向における外側のことを指し、軸方向の内側とは、継手3の軸方向における内側のことを指す。継手付パイプ1のうち、図1(a)、(b)に現れている部分については、図1(a)、(b)の左側が軸方向の外側であり、図1(a)、(b)の右側が軸方向の内側である。
【0014】
継手3の内部空間である継手内空間12には、パイプ2の軸方向の一端2aおよび環状凸部11を含む部分が、軸方向の外側から挿入されている。これにより、パイプ2の内部空間であるパイプ内空間2cと継手内空間12とが連通する。継手内空間12は、第1~第6空間部分12a~12fを有する。第1~第6空間部分12a~12fは、軸方向の内側から外側に向かってこの順に隣接して並んでいる。継手内空間12に挿入されたパイプ2は、第2~第6空間部分12b~12f内に位置している。第1~第6空間部分12a~12fは、いずれも軸方向に見て円形の空間である。
【0015】
第1空間部分12aの直径は、パイプ2の環状凸部11が形成されていない部分の直径よりも小さい。第2空間部分12bの直径は、パイプ2の環状凸部11が形成されていない部分の直径とほぼ同じである。
【0016】
第3空間部分12cの直径は、第2空間部分12bの直径よりも大きく、かつ、環状凸部11の直径よりも小さい。これにより、第3空間部分12cの径方向の端を画定する壁面12c1と、パイプ2の外周面2bとの間に、隙間13が形成される。
【0017】
パイプ2の一端2aと環状凸部11との間の部分は、第2空間部分12bと第3空間部分12cとにわたって軸方向に延びている。パイプ2の一端2aと環状凸部11との間の部分がOリング4に挿通されている。Oリング4は、径方向に弾性変形された状態で隙間13内に配置されていることにより、パイプ2の外周面2bおよび第3空間部分12cの壁面12c1に密着している。これにより、パイプ内空間2cおよび第1空間部分12aを流れる流体が、パイプ2の一端2aと第2空間部分12bの軸方向の内側の端を画定する壁面12b1との隙間、パイプ2の外周面2bと第2空間部分12bの径方向の端を画定する壁面12b2との隙間、および、隙間13を介して外部に漏れだしてしまうことが防止される。
【0018】
第4空間部分12dの直径は、環状凸部11の直径とほぼ同じである。環状凸部11は、第4空間部分12d内に位置する。環状凸部11の軸方向の内側(一端2a側)の端面11aが、第4空間部分12dの軸方向の内側の端を画定する壁面12d1(本発明の接触面)に接触している。また、環状凸部11の外周面11bは、第4空間部分12dの径方向の端を画定する壁面12d2に接触している。また、図2(a)に示すように、環状凸部11の外周面11bは、周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。
【0019】
第5空間部分12eの軸方向の内側の端での直径は、第4空間部分12dの直径と同じである。また、第5空間部分12eの直径は、軸方向の外側に向かうほど大きくなる。これにより、第5空間部分12eの径方向の端を画定する壁面12e1は、軸方向の外側に向かうほど(環状凸部11から離れるほど)径方向の外側に向かうように、軸方向に対して傾いたテーパ面(本発明の第2テーパ面)である。
【0020】
第6空間部分12fの直径は、第4空間部分12dの直径よりも大きく、かつ、第5空間部分12eの軸方向の外側の端での直径よりも小さい。
【0021】
第4~第6空間部分12d~12fの直径が上述したようになっていることにより、第4~第6空間部分12d~12fの径方向の端を画定する壁面に、径方向の外側に凹んでおり、テーパ面である壁面12e1を有する係合凹部14が形成されている。
【0022】
テーパリング5は、環状に構成されている。パイプ2の、環状凸部11よりも軸方向の外側の部分(一端2aから離れた部分)がテーパリング5に挿通されている。また、テーパリング5は、パイプ2の外周面2bのうち、環状凸部11よりも軸方向の外側に位置する部分と、継手3の第4~第6空間部分12d~12fの径方向の端を画定する壁面12d2、12e1、12f1との間の隙間16に圧入されている。また、テーパリング5の外側の端面5dの軸方向の位置と、継手3の外側の端面3aの軸方向の位置とは、ほぼ同じである。
【0023】
テーパリング5の外周面5aのうち、第5空間部分12e内に位置する部分は、軸方向の外側に向かうほど(環状凸部11から離れるほど)径方向の外側に向かうように軸方向に対して傾斜したテーパ面5b(本発明の第1テーパ面)である。これにより、テーパリング5の第5空間部分12e内に配置される部分は、軸方向の外側に向かうほど直径が大きくなっている。また、テーパリング5の第6空間部分12f内に配置される部分の直径は、第6空間部分12fの直径とほぼ同じであり、テーパリング5の、第4空間部分12d内に位置する部分の直径よりも大きく、第5空間部分12e内に位置する部分の軸方向の外側の端での直径よりも小さい。これにより、テーパリング5の外周面5aには、径方向に突出しており、テーパ面5bを有する係合凸部15が形成されている。
【0024】
そして、係合凸部15と係合凹部14とが係合することによって、テーパリング5が継手3に固定されている。また、継手3に固定されたテーパリング5の軸方向の内側の端面5cは、パイプ2の環状凸部11の軸方向における外側の端面11cに接触している。そして、テーパリング5は、パイプ2の環状凸部11を継手3の壁面12d1に向けて押し付けている。これにより、環状凸部11がテーパリング5と継手3の壁面12d1とに挟まれ、軸方向において、パイプ2が継手3に固定される。ここで、図2(b)、(c)に示すように、テーパリング5の端面5cは、テーパリング5の周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。
【0025】
また、係合凸部15のテーパ面5bと、係合凹部14の壁面12e1とが密着している。ここで、図2(b)、(c)に示すように、係合凸部15のテーパ面5bは、テーパリング5の周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。
【0026】
また、図2(d)に示すように、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面(具体的には、壁面12d2、12e1、12f1)との間には、接着剤17が介在している。また、テーパリング5の内周面5eと、パイプ2の外周面2bとの間には、接着剤18が介在している。なお、図2(d)では接着剤17、18をわかりやすくするために、接着剤17、18の厚みを大きく示しており、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面とが、ある程度離れているように見えるが、実際には、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面とは、薄い接着剤17を介して密着している。同様に、図2(d)では、テーパリング5の内周面5eとパイプ2の外周面2bとが、ある程度離れているように見えるが、実際には、テーパリング5の内周面5eとパイプ2の外周面2bとは、薄い接着剤18を介して密着している。
【0027】
<継手付パイプの製造方法>
次に、継手付パイプ1の製造方法について説明する。継手付パイプ1を製造するには、まず、図3(a)に示すように、パイプ2の軸方向の一端2aと環状凸部11との間の部分をOリング4に挿通させることによって、パイプ2にOリング4を取り付ける(シール部材取付工程)。続いて、図3(b)に示すように、Oリング4が取り付けられたパイプ2の軸方向の一端2aおよび環状凸部11を含む部分を、継手内空間12に挿入する(挿入工程)。続いて、パイプ2の軸方向の環状凸部11よりも外側の部分を、外周面5aおよび内周面5eに図示しない接着剤を塗布したテーパリング5に挿通させる。そして、図3(c)に示すように、テーパリング5の軸方向の内側の一部分を隙間16に挿入したうえで、テーパリング5に軸方向の外側から圧力を加えることによって、外周面5aおよび内周面5eに図示しない接着剤を塗布したテーパリング5を隙間16に圧入する(圧入工程)。このとき、テーパリング5の端面5dの軸方向の位置が、継手3の端面3aの軸方向の位置とほぼ同じとなるまで、テーパリング5に圧力を加え続ける。これにより、テーパリング5が、適切な位置まで圧入される。以上の工程により、図1(a)に示すような継手付パイプ1が製造される。
【0028】
<効果>
本実施形態では、パイプ2が挿入された継手3にテーパリング5が圧入されることにより、テーパリング5の係合凸部15と継手3の係合凹部14とが係合し、パイプ2の環状凸部11が継手3の壁面12d1とテーパリング5とに挟まれ、これにより、パイプ2と継手3とが固定される。また、パイプ2が挿入された継手3にテーパリング5を圧入することによってパイプ2と継手3とを固定するため、固定のための部材をねじ込んでパイプ2と継手3とを固定する場合とは異なり、トルクの調整などの煩雑な工程が不要である。したがって、パイプ2と継手3とを簡単に固定することができる。また、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面(壁面12d2、12e1、12f1)との間に接着剤17が介在していることにより、継手3とテーパリング5とが軸方向および周方向に相対移動してしまうこと、テーパリング5と継手3とが相対回転してしまうことが防止されるとともに、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面との間から異物が入り込んでしまうのを防止することができる。
【0029】
また、本実施形態では、係合凸部15が軸方向において、環状凸部11から離れるほど、テーパリング5の径方向の外側に位置するように、軸方向に対して傾斜したテーパ面5bを有する。また、係合凹部14が、係合凸部15のテーパ面5bと対向し、軸方向において、環状凸部11から離れるほど、継手3の径方向の外側に位置するように、軸方向に対して傾斜したテーパ面である壁面12e1を有する。これにより、パイプ2が挿入された継手内空間12にテーパリング5を圧入することによって、係合凸部15と係合凹部14とを係合させて、上述したように、パイプ2と継手3とを固定することができる。
【0030】
また、本実施形態では、テーパリング5の内周面5eと、パイプ2の外周面2bとの間に接着剤18が介在している。これにより、テーパリング5とパイプ2とが軸方向および周方向に相対移動してしまうのを防止することができるとともに、テーパリング5の内周面5eとパイプ2の外周面2bと隙間から異物が入り込んでしまうのを防止することができる。
【0031】
また、本実施形態では、係合凸部15のテーパ面5bと係合凹部14の壁面12e1とが接触しているのに対して、テーパリング5の外周面5aの一部である係合凸部15のテーパ面5bが、テーパリング5の周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。これにより、テーパ面5bが凹凸のない面である場合と比較して、係合凸部15のテーパ面5bと係合凹部14の壁面12e1との摩擦力が大きくなり、継手3とテーパリング5とを相対回転しにくくすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、テーパリング5の端面5cと環状凸部11の端面11cとが接触しているのに対して、テーパリング5の端面5cが、テーパリング5の周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。これにより、テーパリング5の端面5cが凹凸のない面である場合と比較して、テーパリング5と環状凸部11との摩擦力が大きくなり、パイプ2とテーパリング5とを相対回転しにくくすることができる。
【0033】
また、本実施形態では、環状凸部11の外周面11bと第4空間部分12dの壁面12d2とが接触しているのに対して、環状凸部11の外周面11bが、周方向に沿って凹凸が繰り返されるローレット面である。これにより、環状凸部11の外周面11bが凹凸のない面である場合と比較して、環状凸部11の外周面11bと第4空間部分12dの壁面12d2との摩擦力が大きくなり、パイプ2と継手3とを相対回転しにくくすることができる。
【0034】
<変形例>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態には限られず、特許請求の範囲に記載の限りにおいて、様々な変更が可能である。
【0035】
上述の実施形態では、テーパリング5の外周面5aのうち、テーパ面5bの全体がローレット面であったが、これには限られない。例えば、テーパ面5bの軸方向における一部分のみがローレット面であってもよい。あるいは、例えば、テーパ面5bの周方向における一部分のみがローレット面であってもよい。あるいは、例えば、テーパリング5の外周面5aのうち、テーパ面5b以外の部分の少なくとも一部がローレット面であってもよい。
【0036】
また、テーパリング5の外周面5aの全体が周方向に沿って凹凸のない面であり、係合凹部14の壁面12e1の少なくとも一部がローレット面であってもよい。あるいは、テーパリング5の外周面5aの少なくとも一部と、係合凹部14の壁面12e1の少なくとも一部との両方が、ローレット面であってもよい。
【0037】
あるいは、テーパリング5の外周面5aの全体、および、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面のうち、テーパリング5の外周面5aと接触する部分の全体の両方が、周方向に沿って凹凸のない面であってもよい。
【0038】
上述の実施形態では、テーパリング5の端面5c全体がローレット面であったが、これには限られない。例えば、テーパリング5の端面5cの径方向における一部分のみがローレット面であってもよい。あるいは、例えば、テーパリング5の端面5cの周方向における一部分のみがローレット面であってもよい。
【0039】
また、テーパリング5の端面5cの全体が周方向に沿って凹凸のない面であり、環状凸部11の端面11cの少なくとも一部がローレット面であってもよい。あるいは、テーパリング5の端面5cの少なくとも一部と、環状凸部11の端面11cの少なくとも一部との両方が、ローレット面であってもよい。
【0040】
あるいは、テーパリング5の端面5cの全体、および、環状凸部11の端面11cの全体の両方が、周方向に沿って凹凸のない面であってもよい。
【0041】
上述の実施形態では、環状凸部11の外周面11b全体がローレット面であったが、これには限られない。例えば、環状凸部11の外周面11bのうち、軸方向の一部分のみがローレット面であってもよい。あるいは、例えば、環状凸部11の外周面11bのうち、周方向の一部分のみがローレット面であってもよい。
【0042】
また、環状凸部11の外周面11bの全体が周方向に沿って凹凸のない面であり、第4空間部分12dの壁面12d2の環状凸部11の外周面11bと接触する部分の少なくとも一部がローレット面であってもよい。あるいは、環状凸部11の外周面11bの少なくとも一部と、第4空間部分12dの壁面12d2の環状凸部11の外周面11bと接触する部分の少なくとも一部との両方が、ローレット面であってもよい。
【0043】
あるいは、環状凸部11の外周面11bの全体、および、第4空間部分12dの壁面12d2の環状凸部11の外周面11bと接触する部分の全体の両方が、周方向に沿って凹凸のない面であってもよい。
【0044】
上述の実施形態では、テーパリング5の外周面5aと、継手内空間12の径方向の端を画定する壁面(具体的には、壁面12d2、12e1、12f1)との間に接着剤17が介在しているとともに、テーパリング5の内周面5eとパイプ2の外周面2bとの間に接着剤18が介在していいたが、これには限られない。例えば、テーパリング5の内周面5eとパイプ2の外周面2bとの間には、接着剤18が介在していなくてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、軸方向において、テーパリング5の外側の端の位置と継手3の外側の端の位置とがほぼ同じであり、テーパリング5の全体またはほぼ全体が継手内空間12内に収容されるが、これには限られない。
【0046】
図4(a)~(c)に示すように、一変形例の継手付パイプ101は、上述の実施形態の継手付パイプ1において、テーパリング5をテーパリング102に置き換えたものである。テーパリング102は、テーパリング5と同様の構成に加えて、鍔部103を有している。鍔部103は、継手3よりも軸方向の外側に位置する。鍔部103の直径は、第6空間部分12fの直径よりも大きい。そして、鍔部103の軸方向の内側の端面103aが、継手3の軸方向の外側の端面3aに接触している。
【0047】
本変形例においても、上述の実施形態と同様の手順で継手付パイプ101を形成することができる。ただし、本変形例の場合には、テーパリング102を隙間16に圧入する際に、テーパリング102の鍔部103の端面103aが継手3の端面3aに接触するまで、テーパリング102に圧力を加え続ける。これにより、テーパリング102が適切な位置まで圧入される。
【0048】
また、上述の実施形態では、パイプ2と継手3とを固定するための固定部材が、係合凸部15がテーパ面5bを有するテーパリング5であり、係合凹部14がテーパ面である壁面12e1を有していたが、これには限られない。パイプ2が挿入された継手内空間12に固定部材が圧入されたときに、固定部材に形成された係合凸部と継手3の係合凹部とが係合するようになっていれば、固定部材の係合凸部および継手の係合凹部の形状は、上述の実施形態と異なっていてもよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、Oリング4によって、パイプ2と継手3との間をシールしたが、Oリング4以外の環状の部材によって、パイプ2と継手3との間をシールしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1:継手付パイプ
2:パイプ
2a:一端
2c:パイプ内空間
3:継手
4:Oリング
5:テーパリング
5a:外周面
5b:テーパ面
5c:端面
11:環状凸部
11a:端面
12:継手内空間
12d1:壁面
13:隙間
14:係合凹部
15:係合凸部
16:隙間
17、18:接着剤
101:継手付パイプ
102:テーパリング
図1
図2
図3
図4