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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072428
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】チップ状部品転載用両面粘着テープ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20240521BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240521BHJP
   C09J 7/10 20180101ALI20240521BHJP
   H01L 21/50 20060101ALI20240521BHJP
   H01L 33/62 20100101ALI20240521BHJP
【FI】
H01L21/60 311S
C09J7/38
C09J7/10
H01L21/50 C
H01L33/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183233
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】横井 達也
【テーマコード(参考)】
4J004
5F044
5F142
【Fターム(参考)】
4J004AA11
4J004AB01
4J004BA00
4J004CE01
4J004DB02
4J004EA05
4J004FA08
5F044KK01
5F044KK06
5F044LL01
5F044PP16
5F044QQ01
5F142AA42
5F142AA54
5F142AA58
5F142BA32
5F142CA13
5F142CB14
5F142CD02
5F142FA32
5F142FA50
(57)【要約】
【課題】耐熱性、転写位置精度及び粘着安定性に優れ、転写不良が生じ難い、チップ状部品転載用両面粘着テープを提供すること。
【解決手段】第1粘着剤層と該層に積層された第2粘着剤層とを有する両面粘着テープであって、第1粘着剤層に含まれる付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が37/63~58/42であり、第2粘着剤層に含まれる付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が42/58~58/42であり、第1および第2粘着剤層の「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が、第1粘着剤層が0.70~1.50であり、第2粘着剤層が0.90~1.50である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む粘着剤から構成される第1粘着剤層と、該第1粘着剤層に積層された、第1粘着剤層とは異なる付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む粘着剤から構成される第2粘着剤層とを有する、チップ状部品転載用両面粘着テープであって、
前記第1粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が37/63以上58/42以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が42/58以上58/42以下の範囲であり、
前記第1および第2粘着剤層の「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が、前記第1粘着剤層が0.70以上1.50以下の範囲、前記第2粘着剤層が0.90以上1.50以下の範囲である、チップ状部品転載用両面粘着テープ。
【請求項2】
前記第1粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が2.5×10-6mol/g以上1.5×10-5mol/g以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が4.0×10-5mol/g以上1.0×10-4mol/g以下の範囲である、請求項1に記載のチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【請求項3】
前記第1粘着剤層は、23℃貯蔵弾性率が0.07MPa以上1.10MPa以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層は、23℃貯蔵弾性率が0.35MPa以上1.30MPa以下の範囲であり、
前記第1および第2粘着剤層の23℃貯蔵弾性率の差の絶対値が0.70MPa以下である、請求項1又は2に記載のチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【請求項4】
ASTM D2979に準じて測定した粘着剤層のプローブタック値が、前記第1粘着剤層が3.5N/φ5mm以上、前記第2粘着剤層が1.5N/φ5mm以上3.0N/φ5mm以下の値を示す、請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項5】
ASTM D2979に準じて測定した粘着剤層のプローブタック値が、前記第1粘着剤層が3.5N/φ5mm以上、前記第2粘着剤層が1.5N/φ5mm以上3.0N/φ5mm以下の値を示す、請求項3に記載の両面粘着テープ。
【請求項6】
40℃環境下で30日間保存した時の前記プローブタック値の変化率が、前記第1粘着剤層側、前記第2粘着剤層側ともに±10%以下である、請求項4に記載の両面粘着テープ。
【請求項7】
40℃環境下で30日間保存した時の前記プローブタック値の変化率が、前記第1粘着剤層側、前記第2粘着剤層側ともに±10%以下である、請求項5に記載の両面粘着テープ。
【請求項8】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項1又は2に記載の両面粘着テープ。
【請求項9】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項3に記載の両面粘着テープ。
【請求項10】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項4に記載の両面粘着テープ。
【請求項11】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項5に記載の両面粘着テープ。
【請求項12】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項6に記載の両面粘着テープ。
【請求項13】
前記チップ状部品がLED素子である、請求項7に記載の両面粘着テープ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面にチップ状部品を付着させることで、チップ状部品を第1の基板から取得し、第2の基板へ転写する用途に使用する、チップ状部品転載用両面粘着テープ(以下、単に「両面粘着テープ」と称する場合がある)に関し、特に、チップ状部品としてLED発光素子が使用される、チップ状部品転載用両面粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロLEDディスプレイは、従来の液晶ディスプレイ(LCD)又は有機ELディスプレイ(OLED)と比べて、高い彩度、広い視野角、高速な応答時間、高輝度、低消費電力というメリットを持つ。マイクロLEDディスプレイを構成する画素数は非常に多く、発光素子の寸法は、数十~数百μmオーダーと微小なものである。
【0003】
マイクロLEDディスプレイを製造するプロセスにおいては、第1の基板に形成された多数の微小素子を、一度の工程で取得し、要すれば所定の処理を行い、第2の基板に簡便、確実かつ正確に転写する技術が求められている。
【0004】
特許文献1には、各々がチップ側電極12を有するマイクロLEDチップ11を複数有するディスプレイ装置の製造方法であって、チップ側電極12が露出するように、複数のチップ11を中継基板14に保持させる中継段階と、複数のチップ11を、中継基板14から、駆動基板側電極21を有する駆動基板20上に移載して、チップ側電極12と駆動基板側電極21とを接合する接合段階と、を有する、ディスプレイ装置の製造方法が記載されている(要約)。
【0005】
特許文献1のディスプレイ装置の製造方法においては、特許文献1の図5図6図8図9を参照して、中継基板14が、その表面にマイクロLEDチップ11を付着させることで、保持基板112に保持された多数のマイクロLEDチップ11を取得し、保持し、駆動基板20に転写している。中継基板14は、表面にチップ状部品を付着させ、保持するために、ゴム弾性を有するシリコーン樹脂層(即ち、PDMS樹脂31)を有している。マイクロLEDチップ11は、一旦、このシリコーン樹脂層31により中継基板14上に保持された状態で検査され、不良チップが良品チップにリペアーされた後に、駆動基板20に転写される。したがって、完成後の駆動基板20上で検出される不良チップは、従来の製造方法より、極めて少ないため、かかる製造方法は、高品質なディスプレイ装置の製造に適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-110875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のPDMS層31は、中継基板14の表面に、スピンコーティングなどによりシリコーン樹脂液を塗布し、さらに加熱硬化させ所定のゴム硬度になる様調整して形成されている。このように、中継基板の表面に塗布形成するシリコーン樹脂層は、形成するまでの作業が煩雑であり、また加熱硬化に長時間(例えば1時間程度)を要するため、作業工数やタクトタイム短縮の観点から改善の余地がある。また、PDMS層31は単層であり、中継基板に接する側とマイクロLEDチップに接する側とで粘着力に異差がないため、マイクロLEDチップに対する付着力(剥離力)を考慮して、マイクロLEDチップに接する面側の粘着力を微粘着力に調整すると、必然的に中継基板に接する面側の粘着力も微粘着力となる。この場合、マイクロLEDチップの取得時又は転写時や洗浄工程時に中継基板とシリコーン樹脂層が剥離したり、ずれたりして、マイクロLEDチップへの糊残、マイクロLEDチップの位置ずれ、転写不良や次工程移行への障害等の不具合が生じるおそれがある。逆に、中継基板に対する密着性を考慮して、中継基板に接する面側の粘着力を強粘着力に調整すると、必然的にマイクロLEDチップに接する面側の粘着力も強粘着力となる。この場合、シリコーン樹脂層に付着・保持されたマイクロLEDチップを容易に剥離することが困難となり、マイクロLEDチップの取得時におけるチップあるいは中継基板の損傷や転写不良等が生じるおそれがある。
【0008】
シリコーン樹脂層を中継基板の表面に塗布形成する作業が煩雑である問題は、シリコーン樹脂層を両面粘着テープの形態にすることで解決することができる。また、マイクロLEDチップの転写不良が発生する問題は、シリコーン樹脂層を、例えば、2層構造のシリコーン系粘着剤層にして、中継基板に接する第1粘着剤層の粘着力を強く、マイクロLEDチップに接する第2粘着剤層の粘着力を弱く調節することで解決することができる。
【0009】
しかしながら、かかる場合、2層構造のシリコーン系粘着剤層は、特に該粘着剤層間に基材層を有しないと、第1粘着剤層及び第2粘着剤層の粘着力が、時間が経過するか、又は加熱することで、初期の適切な範囲の値から変化して、その適切な範囲から逸脱してしまい、粘着力及び転写性能の安定性に劣る問題が判明した。
【0010】
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、耐熱性、転写位置精度及び粘着力の安定性に優れ、転写不良が生じ難い、チップ状部品転載用両面粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態を以下に記載する。
[形態1]
付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む付加反応型シリコーン系粘着剤から構成される第1粘着剤層と、該第1粘着剤層に積層された、第1粘着剤層とは異なる付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む粘着剤から構成される第2粘着剤層とを有する、チップ状部品転載用両面粘着テープであって、
前記第1粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が37/63以上58/42以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガムとシリコーンレジンの質量比(G)/(R)が42/58以上58/42以下の範囲であり、
前記第1および第2粘着剤層の「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が、
前記第1粘着剤層が0.70以上1.50以下の範囲であり、前記第2粘着剤層が0.90以上1.50以下の範囲である、チップ状部品転載用両面粘着テープ。
【0012】
[形態2]
前記第1粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が2.5×10-6mol/g以上1.5×10-5mol/g以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層の付加反応型シリコーン系樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が4.0×10-5mol/g以上1.0×10-4mol/g以下の範囲である、形態1のチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【0013】
[形態3]
前記第1粘着剤層は、23℃貯蔵弾性率が0.07MPa以上1.10MPa以下の範囲であり、
前記第2粘着剤層は、23℃貯蔵弾性率が0.35MPa以上1.30MPa以下の範囲であり、
前記第1および第2粘着剤層の23℃貯蔵弾性率の差の絶対値が0.70MPa以下である、形態1又は2のチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【0014】
[形態4]
ASTM D2979に準じて測定した粘着剤層のプローブタック値が、前記第1粘着剤層が3.5N/φ5mm以上、前記第2粘着剤層が1.5N/φ5mm以上3.0N/φ5mm以下の範囲の値を示す、形態1~3のいずれか一つのチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【0015】
[形態5]
40℃環境下で30日間保存した時のプローブタック値の変化率が、前記第1粘着剤層側、前記第2粘着剤層側ともに±10%以下である、形態1~4のいずれか一つのチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【0016】
[形態6]
前記チップ状部品がLED素子である、形態1~5のいずれか一つのチップ状部品転載用両面粘着テープ。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐熱性、転写位置精度及び粘着力の安定性に優れ、転写不良が生じ難い、チップ状部品転載用両面粘着テープが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープの一実施形態である両面粘着テープの層構造を示す断面図である。
図2】マイクロLEDチップの形成を説明するための概略断面図である。
図3】ダイシングにより成長基板上で分割されたマイクロLEDチップの状態示す概略断面図である。
図4】成長基板が付いたままのマイクロLEDチップがハンドリング基板に貼り付けられた状態を示す概略断面図である。
図5】ハンドリング基板に貼り付けられたマイクロLEDチップから成長基板の部分が除去された状態を示す概略断面図である。
図6】マイクロLEDチップをハンドリング基板から本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープが貼り付けられたキャリア基板に転載(移載)する過程を説明するための概略断面図である。
図7】レーザーリフト技術によりマイクロLEDチップをハンドリング基板から分離する方法を説明するための概略断面図である。
図8】ハンドリング基板から分離されたマイクロLEDチップが本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープが貼り付けられたキャリア基板に転載された状態を示す概略断面図である。
図9】(a)~(c)は、マイクロLEDチップをキャリア基板から駆動基板に転載(移載)する過程を説明するための概略断面図である。
図10】はんだリフローによりマイクロLEDチップが駆動基板上に接合・実装された状態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<両面粘着テープの構成>
図1を参照して、本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10は、付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む付加反応型シリコーン系粘着剤から構成される第1粘着剤層1と、該第1粘着剤層1に積層された、第1粘着剤層とは異なる付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む粘着剤から構成される第2粘着剤層2とを有する。上記両面粘着テープ10は、使用する前の状態において、第1粘着剤層1の第2粘着剤層2と接する面と反対側の面に剥離シート(フィルム)3を、第2粘着剤層2の第1粘着剤層1と接する面と反対側の面に剥離シート(フィルム)4を、それぞれ備える。上記両面粘着テープ10の使用に際しては、上記剥離シート(フィルム)3および4はそれぞれ剥離される。剥離シート(フィルム)3および4が積層された両面粘着テープ10は、巻き上げられてロール状になっていてもよい。第1粘着剤層1はキャリア基板(中継基板)に接する粘着剤層である。第2粘着剤層2はマイクロLEDチップに接する粘着剤層である。チップ状部品転載用両面粘着テープ10は、好ましくは、基材層を有しない、基材レス両面粘着テープである。ここでいう基材層とは、粘着層に結合し、離型性を有しないシート状部材をいう。
【0020】
基材層は、弾性率が低く変形し易い粘着層に強度を与えるために使用され、一般に、粘着層と比較して非常に弾性率が高いシート(例えばポリイミドやポリエステルのシート)から形成される。第1の基板(例えばハンドリング基板)に保持されたチップ状部品(例えばマイクロLEDチップ)を、キャリア基板(中継基板)上に貼合された両面粘着テープ10の第2粘着剤層2により、第1の基板から取得すべく、チップ状部品にキャリア基板の第2粘着剤層2を接触させるとき又はチップ状部品を第2の基板(例えば駆動基板)に転写すべく、チップ状部品側の電極と駆動基板側の電極とをはんだのマイクロバンプにより仮接合するときに、チップ状部品はキャリア中継基板に押し付けられ、粘着層には局部的に圧力が印加される。それゆえ、粘着層に結合した弾性率が高い基材層が存在する場合、粘着層に印加された局部的な圧力により、弾性率が高い基材層が引っ張られて、隣接するチップ状部品の距離や傾きが変化し、中継基板上におけるチップ状部品の位置がずれてしまう。その結果、第1の基板のチップ状部品の配置を第2の基板へ再現する転写位置精度が低下する。特に後者のチップ状部品側の電極と駆動基板側の電極とをはんだのマイクロバンプにより仮接合する場合に、その影響度が大きく、チップ状部品の位置ずれが起こりやすい。
【0021】
したがって、本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10は、基材層を有しない、基材レス両面粘着テープであることが好ましい。なお、両面粘着テープ10の弾性率が、粘着層と同様に低く維持され、局部的に圧力が印加された場合でも、隣接するチップ状部品の距離が変化しない場合は、両面粘着テープ10は、基材層等の層を、追加して有してもよい。
【0022】
両面粘着テープ10の全体の厚さは、特に限定されないが、両面の粘着特性の制御および経済性の観点から、4μm以上20μm以下が好ましい。その下限値としては、好ましくは8μm、より好ましくは10μmである。また、その上限値としては、好ましくは16μm、より好ましくは14μmである。両面粘着テープ10の全体の厚さが4μm未満である場合は、例えば、第1粘着剤層1のキャリア基板に対する密着力、あるいは第2粘着剤層2のチップ状部品に対する付着力が不十分となるおそれがある。その結果、工程の途中で、両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりして、チップ状部品への転着(糊残)、チップ状部品の位置ずれ、転写不良や次工程への移行困難等の種々の不具合が生じる。また、工程の途中で、チップ状部品が、キャリア基板上の第2粘着剤層2から脱落したり、所定の基板に転写ができなかったりして歩留まりが悪化する。一方、両面粘着テープ10の全体の厚さが20μmを超える場合は、特に特性上の問題はないが、経済的には好ましくない。なお、本発明において、粘着力、密着力や付着力といった粘着テープの粘着特性は、実際のチップ状部品の付着・剥離による転載工程を鑑みた場合、ブローブタック値として捉えることができる。
【0023】
第1粘着層1の厚さは、特に限定されないが、粘着特性の制御および経済性の観点から、2μm以上10μm以下が好ましい。その下限値としては、好ましくは4μm、より好ましくは5μmである。また、その上限値としては、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μmである。さらに、第2粘着層2の厚さは、特に限定されないが、粘着特性の制御および経済性の観点から、2μm以上10μm以下が好ましい。その下限値としては、好ましくは4μm、より好ましくは5μmである。また、その上限値としては、好ましくは8μm以下、より好ましくは7μmである。第1粘着剤層1および第2粘着剤層2のそれぞれの厚さを上記範囲内に設定することで、両層を積層して両面粘着テープ10としたときに、両面における粘着力(プローブタック値)の異差の制御容易となり、キャリア基板に対する十分な密着力を第1粘着剤層1側に付与した上で、チップ状部品に対する適切な付着力(剥離力)を第2粘着剤層2側に付与できる。
【0024】
<粘着剤層>
第1粘着剤層1及び第2粘着剤層2は、共に、付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む付加反応型シリコーン系粘着剤から構成される。主成分として含むとは、粘着剤の粘着機能を奏する成分材料が付加反応型シリコーン系樹脂であることをいう。上記付加反応型シリコーン系粘着剤は、付加反応型シリコーン系樹脂以外に、少なくとも、架橋剤(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)および触媒(ヒドロシリル化反応用触媒)を含有する。上記付加反応型シリコーン系粘着剤全体における上記付加反応型シリコーン系樹脂の含有割合は、特に限定されないが、93.0質量%以上であることが好ましく、95.0質量%以上であることがより好ましく、97.0質量%以上であることが特に好ましい。また、上記付加反応型シリコーン系樹脂の含有割合は、その上限値としては、99.0質量%であることが好ましく、98.8質量%であることがより好ましく、98.6質量%であることが特に好ましい。かかるシリコーン系樹脂は耐熱性、耐薬品性に優れるため、粘着層を付加反応型シリコーン系樹脂から構成することで、キャリア基板(中継基板)に保持した状態のチップ状部品に対して、はんだ付け等の高温処理又は清浄化等の薬品処理することが可能になる。
【0025】
第1粘着剤層1又は第2粘着剤層2を使用してキャリア基板に保持した状態のチップ状部品に対して行われる高温処理としては、例えば100~221℃、好ましくは173~220℃、より好ましくは180~216℃の温度下で、例えば1~10分間、好ましくは2~7分間、より好ましくは3~5分間加熱する処理が例示される。
【0026】
(付加反応型シリコーン系樹脂)
付加反応型シリコーン系樹脂は、ケイ素原子結合アルケニル基を含有するポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンから成るシリコーンガム(G)と、ケイ素原子結合アルケニル基を含有しないポリジメチルシロキサン等のオルガノポリシロキサンから成るシリコーンレジン(R)との混合物から成る樹脂であり、上記シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)とを適切な割合で混合することにより、後述の架橋剤により架橋した後の粘着剤において所望の粘着機能(プローブタック値)を奏する。
【0027】
上記シリコーンガム(G)は、付加反応型シリコーン系粘着剤や付加反応型シリコーン系剥離剤に使用されるもの、すなわち、平均して1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するものであればよく、特に限定されるものではない。
【0028】
上記シリコーンガム(G)のオルガノポリシロキサンの分子構造としては、例えば、主鎖部分がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなる直鎖状構造、該分子構造の一部に分枝鎖を含んだ構造、分岐鎖状構造、または環状体構造が挙げられる。中でも、粘着剤の機械的強度等、物性の点から、直鎖状構造のオルガノポリシロキサンが好ましい。
【0029】
上記シリコーンガム(G)の具体例としては、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体等が挙げられる。
【0030】
上記シリコーンレジン(R)は、RSiO1/2単位(M単位)およびSiO4/2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサンであり、所謂MQレジンと称されるものである。RSiO1/2単位/SiO4/2単位のモル比は、0.5以上1.2以下の範囲が好ましく、0.6以上0.9以下の範囲がより好ましい。シリコーンレジン(R)は、粘着層の特性を損なわない範囲で、RSiO3/2単位(T単位)及び/又はRSiO2/2単位(D単位)を有していてもよい。尚、式中のRは炭化水素基を意味する。Rとしては、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~7の、脂肪族不飽和結合を有さない1価炭化水素基が好ましい。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、及びブチル基などのアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;及びフェニル基、及びトリル基等のアリール基等が挙げられ、特に、メチル基又はフェニル基が好ましい。シリコーンレジン(R)は、基本的には分子内にアルケニル基を有しておらず、従来公知のものを使用することができる。
【0031】
通常、上記シリコーンガム(G)と上記シリコーンレジン(R)とは単純に混合して粘着剤層として使用するが、粘着剤層の特性を損なわない限りにおいては、上記シリコーンガム(G)と上記シリコーンレジン(R)とを予め反応させて得られる(部分)縮合反応物を含む付加反応型シリコーン系樹脂を粘着剤層として使用してもよい。
【0032】
本実施の形態において、詳細は後述するが、上記第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)が37/63以上58/42以下の範囲である。また、上記第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)が42/58以上58/42以下の範囲である。
【0033】
(架橋剤)
本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤は、上記付加反応型シリコーン系樹脂を架橋硬化させるための架橋剤を含有する。上記架橋剤としては、1分子中に平均2個以上のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好適に用いられる。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましく、その結合位置は特に限定されないが、具体的には、分子鎖末端および/または分子鎖側鎖が挙げられる。また、上記ケイ素原子結合水素原子の含有量は、特に限定されないが、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン全体の0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上1.8質量%以下であることがより好ましい。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンが含有するケイ素原子に結合した有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフロロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等のアルケニル基を除く置換もしくは非置換の一価炭化水素基が例示される。特に、メチル基、フェニル基であることが好ましく、その分子構造としては、直鎖状,分岐鎖状,分岐状環状が例示され、直鎖状であることが特に好ましい。直鎖状または分岐鎖状の場合、分子鎖末端基としてはトリメチルシロキシ基,ジメチルハイドロジェンシロキシ基が例示される。上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は、特に限定されないが、1mPa・s以上100,000mPa・s以下であることが好ましく、1mPa・s以上1,000mPa・s以下であることがより好ましい。
【0034】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、式:R SiO1/2で示されるシロキサン単位と式;R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンレジン、式:R HSiO1/2で示されるシロキサン単位と式:SiO4/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンレジン、式:RHSiO2/2で示されるシロキサン単位と式:RSiO3/2で示されるシロキサン単位または式:HSiO3/2で示されるシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサンレジン等が挙げられる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。上式中、Rはアルケニル基を除く置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。
【0035】
上記架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、特に限定されないが、通常は、例えば、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるケイ素原子結合水素原子の全モル数と上記付加反応型シリコーン系樹脂に含まれるアルケニル基の全モル数の比(以下、[SiH]/[アルケニル]とする)が0.20以上50.00以下の範囲となるように調整することが好ましく、[SiH]/[アルケニル]の値が0.50以上20.00以下の範囲となるように調整することがより好ましい。すなわち、それぞれの粘着剤層の所望の粘着力(プローブタック値)に応じて、この範囲内で調整すればよい。上記[SiH]/[アルケニル]の値が0.20未満である場合、特に、付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量が小さいと、得られた粘着剤層の架橋硬化が不十分となるため、粘着剤層の凝集力が低下して、被着体への糊残りや密着不良が発生するおそれがある。また、第1粘着剤層2と第2粘着剤層2の層間でシリコーンレジン(R)の移行が起こりやすくなるため、両面における粘着力(プローブタック値)が初期の値から経時的に変化し、チップ状部品転載用両面粘着テープとして機能しなくなる場合がある。一方、上記[SiH]/[アルケニル]の値が50.00を超えると、特に、付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量が大きいと、得られた粘着剤層が硬くなりすぎて、被着体への密着不良が発生するおそれがある。また、粘着剤層の剥離シート(フィルム)に対する剥離抵抗が大きくなり、さらにこの剥離抵抗が経時的に大きくなり、長期に保存された場合、粘着剤層から剥離シート(フィルム)を剥離することが困難となるおそれがある。
【0036】
ここで、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)のケイ素原子結合水素原子の含有量は、例えば、500MHzのH-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定を行い、ケイ素原子結合水素原子の共鳴シグナル面積(積分値)を求めることにより算出することができる。具体的には、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンを、内部標準試料としてジメチルスルホキシドを含む重クロロホルムに十分に溶解させ、日本電子株式会社製NMR装置“JNM・ECA500”(製品名)を用いてH-NMR(核磁気共鳴)スペクトルを測定する。次いで、測定スペクトルにおける内部標準試料のジメチルスルホキシドの共鳴シグナル面積(積分値)とオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)の共鳴シグナル面積(積分値)を求め、その比率から、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)1g当たりのケイ素原子結合水素原子の含有量(mol/g)を算出することができる。
【0037】
また、上記付加反応型シリコーン系樹脂(シリコーンガム(G)とシリコーンれじん(R)の混合物)のケイ素原子結合アルケニル基の含有量についても、上記と同様にして、500MzのH-NMRスペクトルを測定し、測定スペクトルにおける内部標準試料のジメチルスルホキシドの共鳴シグナル面積(積分値)とケイ素原子結合アルケニル基の共鳴シグナル面積(積分値)を求め、その比率から、付加反応型シリコーン系樹脂1g当たりのケイ素原子結合アルケニル基の含有量(mol/g)を算出することができる。
【0038】
(ヒドロシリル化反応用触媒)
本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤は、上記付加反応型シリコーン系樹脂と上記架橋剤の架橋硬化を促進するためのヒドロシリル化反応用触媒を含む。かかる触媒は、上記付加反応型シリコーン系樹脂中のアルケニル基と上記架橋剤中のケイ素原子結合水素原子のヒドロシリル化反応を促進する。上記ヒドロシリル化反応用触媒としては、特に白金系触媒を好適に使用することができる。特に、上記付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンガム(G)成分との相溶性が良好である観点から、白金のアルケニルシロキサン錯体が好ましい。具体的には、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等が例示される。
【0039】
上記ヒドロシリル化反応用触媒の配合量は、触媒量であれば特に限定されないが、通常、上記付加反応型シリコーン系樹脂と上記架橋剤の合計量に対し、ヒドロシリル化反応用触媒が含有する金属量で1ppm以上1,000ppm以下の範囲となるような量が好ましい。ヒドロシリル化反応用触媒の配合量が1ppm未満であると、粘着剤層の硬化速度が著しく遅くなり、得られた粘着剤層の架橋硬化が不十分となる。そうすると、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の層間でシリコーンレジン(R)の移行が起こりやすくなり、その結果、粘着力が初期の値から経時的に変化し、チップ状部品転載用両面粘着テープとして機能しない場合がある。また、ヒドロシリル化反応用触媒の配合量が1,000ppmを超えると、例えば、得られた粘着剤層の着色等の問題を生じ、マイクロLEDチップ等のチップ状部品がキャリア基板に保持された状態で行う外観検査や電気的検査に支障をきたすおそれがある。また、短時間のうちに粘着剤溶液のゲル化が進行し、粘着剤の均一塗工に支障をきたすおそれがある。
【0040】
(付加反応遅延剤)
本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤は、上記付加反応型シリコーン系樹脂、架橋剤およびヒドロシリル反応触媒以外に、常温下でのゲル化、硬化を抑制して保存安定性を向上させ、加熱硬化性とするために、付加反応遅延剤(ヒドロシリル化反応抑制剤)を含有することが好ましい。上記付加反応遅延剤としては、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物等が例示され、具体的には、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール;3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-イン、ベンゾトリアゾール、1-エチニル-1-シクロヘキサノール、メチルビニルシクロシロキサン等が例示される。この付加反応抑制剤の配合量は、通常、上記付加反応型シリコーン系樹脂100質量部当り0.001質量部以上5質量部以下の範囲となる量が好ましいが、ヒドロシリル化反応触媒の種類、性能、上記付加反応型シリコーン系樹脂中のアルケニル基量、上記架橋剤中のケイ素原子結合水素原子量に応じて適宜決定すればよい。上記付加反応遅延剤の配合量が0.001質量部未満であると、短時間のうちに粘着剤溶液のゲル化が進行し、粘着剤の均一塗工に支障をきたすおそれがある。一方、上記付加反応遅延剤の配合量が5質量部を超えると、得られた粘着剤層の硬化速度が著しく遅くなり、架橋硬化が不十分となるおそれがある。そうすると、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の層間でシリコーンレジン(R)の移行が起こりやすくなり、その結果、両面における粘着力(プローブタック値)が初期の値から経時的に変化し、チップ状部品転載用両面粘着テープとして機能しない場合がある。
【0041】
第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系粘着剤と、第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系粘着剤は、両面粘着テープ10とした時に、両面の粘着力(プローブタック値)において適切な異差を発現させるために、同一ではなく、異なるものとなっている。具体的には、キャリア基板(中継基板)側の第1粘着剤層1の粘着剤は粘着力が強い(プローブタック値が大きい)ものであり、チップ状部品側の第2粘着剤層2の粘着剤は粘着力が弱い(プローブタック値が小さい)ものである。すなわち、第1粘着剤層1は、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板に対する密着力を有する一方で、第2粘着剤層2は、チップ状部品転載時に転写不良を起こしたり、また洗浄工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(剥離力)を有する。そうすることで、ハンドリング基板に保持されたチップ状部品をキャリア基板へ転載する工程、キャリア基板に保持されたチップ状部品を駆動基板へ転載する工程において、チップ状部品の転写不良、位置ずれやチップ状部品への糊残等の不具合が発生し難くなる。さらに、キャリア基板に保持されたチップ状部品を洗浄する工程においても、チップ状部品の脱落、位置ずれ等の不具合が発生し難くなる。
【0042】
一方、本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10は第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の間に基材層を有さず、特に第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の粘着剤組成が異なる場合、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の間で成分が移行しやすい状態になっている。そのために、第1粘着剤層1及び第2粘着剤層2の組成は、時間が経過するか、又は加熱することで、初期に設定された組成から変化してしまい、粘着力及び転写性能の安定性に劣る問題が生じる。より詳細には、基材層を有しない両面粘着テープ10は、時間が経過するか、又は加熱することで、第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の間で、一方の粘着剤層側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)がもう一方の粘着剤層側へ移行してしまい、その結果、両面における粘着力(プローブタック値)が初期の適切な範囲の値から経時的に変化し、その適切な範囲を逸脱した場合には、チップ状部品転載用両面粘着テープ10として機能しなくなる。また、上述の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制しようとすると、逆に第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の粘着力(プローブタック値)をそれぞれの所望の範囲に設定すること、すなわち両面の粘着力(プローブタック値)において適切な異差を発現させることが困難となり、この場合もチップ状部品転載用両面粘着テープ10として機能しなくなる。かかる問題は、それぞれの粘着剤層の特性を、以下に説明する通りに調節することで解決することができる。
【0043】
[第1粘着剤層]
第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)が37/63以上58/42以下の範囲である。上記質量比(G)/(R)がこの範囲にあることで、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板に対する適切な密着力を第1粘着剤層1に付与することができる。上記(G)成分の割合が37未満であると、得られる第1粘着剤層1の剥離シート3に対する剥離性が低下する場合がある。一方、上記(G)成分の割合が58を超えると、得られる第1粘着剤層1のキャリア基板に対する密着力が低下する場合がある。上記質量比(G)/(R)において、その(G)成分の割合の下限値としては、好ましくは37.5である。また、その(G)成分の割合の上限値としては、好ましくは55、より好ましくは50である。上記質量比(G)/(R)において、その(R)成分の割合の下限値としては、好ましくは45、より好ましくは50である。また、その(R)成分の割合の上限値としては、好ましくは62.5である。
【0044】
ここで、上記第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)は、例えば、500MHzの29Si-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定により得られたD単位とQ単位とのピーク面積比(D単位/Q単位=シリコーンガム(G)/シリコーンレジン(R))から算出することができる。
【0045】
なお、上記第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)成分の質量分率は、必ずしも限定されるものではないが、第1粘着剤層1の粘着力(プローブタック値)を第2粘着剤層2の粘着力(プローブタック値)よりも大きくして適切な粘着力(プローブタック値)の異差を付与する観点から、後述する第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン樹脂中のシリコーンレジン(R)成分の質量分率に対して、少なくとも同等の値、好ましくは大きな値となるように設定しておくのが良い。
【0046】
また、上記第1粘着剤層1は、「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が0.70以上1.50以下の範囲である。上記「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」は、粘着剤層の成分が出入りし難いことを表すパラメータである。この数値が大きいほど、その層の成分は隣接した層に移行し難く、また、隣接した層の成分はその層に入り難い。ここで言う「成分」とは、付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)を意味する。上記数値がこの範囲にあることで、上述したキャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)を維持した上で、両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制することができる。
【0047】
通常、アルケニル基を有しないシリコーンレジン(R)は、架橋剤により架橋されることはないため、つまり粘着剤層中で強固に束縛されることはないため、両面粘着テープ10を長期に保存したり、加熱したりすると、特に第1粘着剤層1と第2粘着剤層2の組成が異なる場合に、両粘着剤層間で、一方の粘着剤層側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)がもう一方の粘着剤層側の付加反応型シリコーン系樹脂中へ移行してしまうことがある。一般的には、シリコーンレジン(R)の質量分率が多い粘着剤層からシリコーンレジン(R)の質量分率が少ない粘着剤層へシリコーンレジン(R)が移行する傾向がある。そうすると、両粘着剤層の組成が経時的に変化するため、両面におけるプローブタック値が初期の適切な範囲の値から経時的に変化し、その適切な範囲を逸脱した場合には、チップ状部品転載用両面粘着テープ10として機能しなくなってしまう。しかしながら、上記第1粘着剤層1における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が0.70以上1.50以下の範囲であると、第1粘着剤層1側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)は、適度に架橋されたシリコーンガム(G)の網目構造によりその動きが束縛されるため、第1粘着剤層1側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)が隣接する第2粘着剤層2側の付加反応型シリコーン系樹脂中へ移行する現象を抑制することができる。一方で、第2粘着剤層2側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)が隣接する第1粘着剤層1側の付加反応型シリコーン系樹脂中へ移行する現象も抑制することができる。すなわち、第1粘着剤層1のゲル分率の度合いに応じて、第1粘着剤層1のシリコーンレジン(R)の第2粘着剤層2への移行が抑制され、また第2粘着剤層2のシリコーンレジン(R)の第1粘着剤層への進入が阻止されるので、両粘着剤層の組成の経時的な変化を抑制することができる。そうすると、上述したようにキャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)を維持した上で、両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制することができる。
【0048】
上記第1粘着剤層1の上記パラメータの数値が0.70未満であると、上述のシリコーンレジン(R)の移行現象を抑制することが困難となる。また、得られる第1粘着剤層1の剥離シート3に対する剥離性が低下する場合がある。また、一方、上記第1粘着剤層1の上記パラメータの数値が1.50を超えると、得られる第1粘着剤層1のキャリア基板に対する密着力が低下する場合がある。第1粘着剤層1の上記パラメータの数値は、その下限値としては、好ましくは0.74である。また、その上限値としては、好ましくは1.43、より好ましくは1.27である。
【0049】
本実施の形態において、第1粘着剤層1のゲル分率は以下の方法で測定された値を意味する。まず、作製した基材レス両面粘着テープ10の第1粘着剤層1から所定量(重量A)の粘着剤層を採取し、ガラススクリュー管に入れ、30mLのトルエンを加えた後、ミックスローターにより、温度23℃、ローター回転速度60rpmの条件で24時間攪拌させる。その後、100mm×100mmのサイズに切り出した♯100ステンレスメッシュ(重量B)でろ過し、残った粘着剤層残渣をステンレスメッシュごと130℃で2時間乾燥させ、乾燥重量(重量C)を測定する。第1粘着剤層1のゲル分率は、以下の式により算出する。
ゲル分率(%)=100×(C-B)/A
【0050】
上記第1粘着剤層1における粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、キャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)の確保と両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化の抑制との両立の観点から、40.0%以上60.0%以下の範囲であることが好ましい。上記第1粘着剤層1における粘着剤層のゲル分率は、その下限値としては、より好ましくは44.0%、更に好ましくは44.2%である。また、その上限値としては、より好ましくは58.0%、更に好ましくは52.9%である。
【0051】
なお、上記第1粘着剤層1における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値、および「粘着剤層のゲル分率」は、必ずしも限定されるものではないが、第1粘着剤層1の粘着力(プローブタック値)および第2粘着剤層2の粘着力(プローブタック値)をより好適な範囲とした上で、それら粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制する観点から、後述する第2粘着剤層2における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値、および「粘着剤層のゲル分率」に対して、小さな値となるように設定しておくのが好ましい。
【0052】
本実施の形態において、上記特定のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)を有する付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む付加反応型シリコーン系粘着剤から構成される第1粘着剤層1のゲル分率は、該付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量、および架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量により調整することができる。
【0053】
上記第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂(シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合物)は、上記ゲル分率の調整の観点から、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が2.5×10-6mol/g以上1.5×10-5mol/g以下の範囲であることが好ましい。ケイ素原子結合アルケニル基の含有量がこの範囲にあることで、第1粘着剤層1のゲル分率および後述する23℃貯蔵弾性率(G’)が適切な範囲となり、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)を第1粘着剤層1に付与することが容易となる。上記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、その下限値としては、より好ましくは2.7×10-6mol/gである。また、その上限値としては、より好ましくは7.8×10-6mol/g、更に好ましくは4.1×10-6mol/gである。
【0054】
また、上記第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂に対する上記架橋剤(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)の配合量は、第1粘着剤層1に使用する付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量およびオルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子結合水素原子の含有量との兼ね合いで適切な範囲が変わるので、一概には言えないが、例えば、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるケイ素原子結合水素原子の全モル数と上記付加反応型シリコーン系樹脂に含まれるアルケニル基の全モル数の比(以下、[SiH]/[アルケニル]とする)が1.00以上50.00以下の範囲となるようにその配合量を調整することが好ましい。[SiH]/[アルケニル]の値がこの範囲にあることで、第1粘着剤層1のゲル分率および後述する23℃貯蔵弾性率(G’)が適切な範囲となり、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)を第1粘着剤層1に付与することが容易となる。上記[SiH]/[アルケニル]の値は、その下限値としては、より好ましくは1.50、更に好ましくは5.50である。また、その上限値としては、より好ましくは15.00、更に好ましくは10.00である。
【0055】
さらに、第1粘着剤層1の23℃貯蔵弾性率(G’)は、0.07MPa以上1.10MPa以下であることが好ましい。第1粘着剤層1の上記23℃貯蔵弾性率(G’)がこの範囲にあることで、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板に対する適切な密着力(プローブタック値)を第1粘着剤層1に付与することが容易となる。第1粘着剤層1の上記23℃貯蔵弾性率(G’)は、その下限値としては、より好ましくは0.08MPa、更に好ましくは0.10Mpaである。また、その上限値としては、より好ましくは1.09MPa、更に好ましくは0.55MPaである。
【0056】
またさらに、上記第1粘着剤層1は、好ましくは、ASTM D2979に準じて測定した粘着剤層のプローブタック値が3.50N/φ5mm以上である。第1粘着層1の上記プローブタック値が3.50N/φ5mm未満である場合、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板から剥離したり、ずれたりするおそれがある。第1粘着層1の上記プローブタック値は、その下限値としては、より好ましくは3.53N/φ5mm、更に好ましくは4.50N/φ5mmである。また、その上限値としては、特に限定されないが、例えば、好ましくは7.00N/φ5mm、より好ましくは6.05N/φ5mm、更に好ましくは5.86N/φ5mmである。
【0057】
[第2粘着剤層]
第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)は42/58以上58/42以下である。(G)/(R)がこの範囲にあることで、チップ状部品転載時に転写不良を起こしたり、また洗浄工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)を第2粘着剤層2に付与することが容易となる。上記(G)成分の割合が42未満であると、得られる第2粘着剤層2のチップ状部品に対する付着力が大きくなりすぎて、チップ状部品の取得時におけるチップ状部品あるいはキャリア基板(中継基板)の損傷や転写不良等が生じる場合がある。また、得られる第2粘着剤層2の剥離シート4に対する剥離性が低下する場合がある。一方、上記(G)成分の割合が58を超えると、得られる第2粘着剤層2のチップ状部品に対する付着力が低下する場合がある。上記質量比(G)/(R)において、その(G)成分の割合の下限値としては、好ましくは42.5、より好ましくは45である。また、その(G)成分の割合の上限値としては、好ましくは55である。上記質量比(G)/(R)において、その(R)成分の割合の下限値としては、好ましくは45である。その(R)成分の割合の上限値としては、好ましくは57.5、より好ましくは55である。
【0058】
ここで、上記第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)は、上述したように、500MHzの29Si-NMR(核磁気共鳴)スペクトル測定により算出することができる
【0059】
なお、上記第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)の質量分率は、必ずしも限定されるものではないが、第2粘着剤層2の粘着力(プローブタック値)を第1粘着剤層1の粘着力(プローブタック値)よりも小さくして適切な粘着力(プローブタック値)の異差を付与する観点から、前述した第1粘着剤層1の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)の質量分率に対して、少なくとも同等の値、好ましくは小さな値となるように設定しておくのが良い。
【0060】
また、上記第2粘着剤層2は、「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示されるパラメータの数値が0.90以上1.50以下である。上記数値がこの範囲にあることで、上記のチップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)を維持した上で、両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制することができる。
【0061】
上記第2粘着剤層2における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値が0.90以上1.50以下の範囲であると、第2粘着剤層2側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)は、適度に架橋されたシリコーンガム(G)の網目構造によりその動きが束縛されるため、第2粘着剤層2側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)が隣接する第1粘着剤層1側の付加反応型シリコーン系樹脂中へ移行する現象を抑制することができる。一方で、第1粘着剤層1側の付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)が隣接する第2粘着剤層2側の付加反応型シリコーン系樹脂中へ移行する現象も抑制することができる。すなわち、第2粘着剤層2のゲル分率の度合いに応じて、第2粘着剤層2のシリコーンレジン(R)の第1粘着剤層1への移行が抑制され、また第1粘着剤層1のシリコーンレジン(R)の第2粘着剤層2への進入が阻止されるので、両粘着剤層の組成の変化を抑制することができる。そうすると、上述したようにチップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)を維持した上で、両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制することができる。
【0062】
上記第2粘着剤層2の上記パラメータの数値が0.90未満であると、上述のシリコーンレジン(R)の移行現象を抑制することが困難となる場合がある。また、得られる第2粘着剤層2の剥離シート4に対する剥離性が低下する場合がある。また、一方、上記第2粘着剤層2の上記パラメータの数値が1.50を超えると、得られる第2粘着剤層2のチップ状部品に対する付着力が低下する場合がある。第2粘着剤層2の上記パラメータの数値は、下限値としては、好ましくは0.93、より好ましくは1.07である。また、その上限値としては、好ましくは1.48、より好ましくは1.30である。
【0063】
上記第2粘着剤層2における粘着剤層のゲル分率は、上述した第1粘着剤層1における粘着剤層のゲル分率の測定方法と同様の方法で測定される値を意味する。上記第2粘着剤層2における粘着剤層のゲル分率は、特に限定されるものではないが、チップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)の確保と両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化の抑制との両立の観点から、50.0%以上62.0%以下の範囲であることが好ましい。上記第2粘着剤層2における粘着剤層のゲル分率は、その下限値としては、より好ましくは51.0%、更に好ましくは53.5%である。また、その上限値としては、より好ましくは60.0%、更に好ましくは58.5%である。
【0064】
なお、上記第2粘着剤層2における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値および「粘着剤層のゲル分率」は、必ずしも限定されるものではないが、第1粘着剤層1の粘着力(プローブタック値)および第2粘着剤層2の粘着力(プローブタック値)をより好適な範囲とした上で、それら粘着力(プローブタック値)の経時的な変化を抑制する観点から、前述した第1粘着剤層1における「粘着剤層のゲル分率(%)÷付加反応型シリコーン系樹脂中のシリコーンレジン(R)質量分率(%)」で示される数値および「粘着剤層のゲル分率」に対して、大きな値となるように設定しておくのが好ましい。
【0065】
本実施の形態において、上記特定のシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)を有する付加反応型シリコーン系樹脂を主成分として含む付加反応型シリコーン系粘着剤から構成される第2粘着剤層2のゲル分率は、該付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量、および架橋剤として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量により調整することができる。
【0066】
上記第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂(シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合物)は、上記ゲル分率の調整の観点から、ケイ素原子結合アルケニル基の含有量が4.0×10-5mol/g以上1.0×10-4mol/g以下の範囲であることが好ましい。ケイ素原子結合アルケニル基の含有量がこの範囲にあることで、第2粘着剤層2のゲル分率および後述する23℃貯蔵弾性率(G’)が適切な範囲となり、チップ状部品転載時に転写不良を起こしたり、また洗浄工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)を第2粘着剤層2に付与することが容易となる。上記ケイ素原子結合アルケニル基の含有量は、その下限値としては、より好ましくは4.6×10-5mol/g、更に好ましくは5.6×10-5mol/gである。また、その上限値としては、より好ましくは9.8×10-5mol/gである。
【0067】
また、上記第2粘着剤層2の付加反応型シリコーン系樹脂に対する上記架橋剤(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)の配合量は、第2粘着剤層2に使用する付加反応型シリコーン系樹脂のケイ素原子結合アルケニル基の含有量およびオルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するケイ素原子結合水素原子の含有量との兼ね合いで適切な範囲が変わるので、一概には言えないが、例えば、上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンに含まれるケイ素原子結合水素原子の全モル数と上記付加反応型シリコーン系樹脂に含まれるアルケニル基の全モル数の比(以下、[SiH]/[アルケニル]とする)が0.20以上10.00以下の範囲となるようにその配合量を調整することが好ましい。上記[SiH]/[アルケニル]の値は、その下限値としては、より好ましくは0.50、更に好ましくは0.70である。また、その上限値としては、より好ましくは5.00、更に好ましくは1.50である。
【0068】
さらに、第2粘着剤層2の23℃貯蔵弾性率(G’)は、0.35MPa以上1.30MPa以下であることが好ましい。第2粘着剤層2の上記23℃貯蔵弾性率(G’)がこの範囲にあることで、チップ状部品転載時に転写不良を起こしたり、また洗浄工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(プローブタック値)を第2粘着剤層2に付与することが容易となる。第2粘着剤剤2の上記23℃貯蔵弾性率(G’)は、その下限としては、より好ましくは0.37MPaである。また、その上限値としては、より好ましくは1.25MPa、更に好ましく0.79MPaである。
【0069】
ここで、上記第1粘着剤層1および第2粘着剤層2の23℃貯蔵弾性率の差の絶対値|(G’)-(G’)|は0.70MPa以下であることが好ましい。第1粘着剤層1および第2粘着層2の上記23℃貯蔵弾性率の差の絶対値|(G’)-(G’)|がこの範囲にあることで、両面粘着テープ10の両面における粘着力(プローブタック値)の経時的な変化が抑制されやすくなる。第1粘着剤層1および第2粘着層2の上記23℃貯蔵弾性率の差の絶対値|(G’)-(G’)|は、その上限値としては、より好ましくは0.59MPa、更に好ましくは0.29MPaである。その下限値としては、特に限定されないが、例えば、0.02MPaである。
【0070】
またさらに、第2粘着剤層2は、好ましくは、ASTM D2979に準じて測定した粘着剤層のプローブタック値が1.50N/φ5mm以上3.00N/φ5mm以下である。第2粘着層2の上記プローブタック値が1.50N/φ5mm未満である場合、工程(洗浄、熱圧着など)の際中にチップが剥がれたり、位置ずれが生じるおそれがあり、3.00N/φ5mmを上回ると、目的とする基板にチップを転写する際にキャリア基板(中継基板)にひびが入ったり、割れたりするおそれがある。第2粘着層2の上記プローブタック値は、その下限値としては、より好ましくは1.60N/φ5mm、更に好ましくは1.66N/φ5mmである。また、その上限値としては、より好ましくは、2.80N/φ5mm、更に好ましくは2.30N/φ5mmである。
【0071】
本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10は、40℃の環境下で30日間保存した時のプローブタック値の変化率が、第1粘着剤層1および第2粘着剤層2ともに、±10%以下であることが好ましい。上記プローブタック値の変化率が上記の範囲(±10%)を超える場合、テープを一定期間保管してから使用する場合に、所望のチップ剥離性が得られないおそれがある。また、キャリア基板に対する密着性が不十分となるおそれがある。上記プローブタック変化率は、より好ましくは±9.9%以下、更に好ましくは±6.6%以下、最も好ましくは±0.0%である。
【0072】
<両面粘着テープの製造方法>
両面粘着テープ10は、離型性を有する支持体(剥離シート、フィルム)の上に、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを、この順に又は逆の順に逐次重層形成若しくは同時重層形成することにより、製造することができる。離型性を有する支持体を2枚準備し、一方の支持体の上に第1粘着剤層を形成し、他方の支持体の上に第2粘着剤層を形成し、第1粘着剤層と第2粘着剤層とを貼着することによって、製造してもよい。
【0073】
粘着剤層は、その形成方法としては特に限定されないが、例えば、次のようにして、支持体の上に形成することができる。即ち、シリコーンガム(G)と、シリコーンレジン(R)とが所定の質量比率で混合された付加反応型シリコーン系樹脂をトルエン、キシレン等の有機溶剤に溶解した溶液に、架橋剤を添加、攪拌した後、ヒドロシリル化反応用触媒、必要に応じて付加反応遅延剤、希釈用有機溶剤等を添加、攪拌して粘着剤層形成用の樹脂組成物溶液を作製、準備する。次いで、この樹脂組成物溶液を、支持体の離型性を有する面に対して、乾燥後の厚さが均一となるように、コンマコーターやリップコーター等で塗布する。その後、塗布した粘着剤組成物を所定温度で加熱・乾燥させ、架橋・硬化させる。
【0074】
<チップ状部品転載用両面粘着テープの使用方法>
本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10の使用方法について、マイクロLED素子(以下、単に「チップ」、「マイクロLEDチップ」若しくは「マイクロLEDのチップ」と称する場合がある)の駆動基板上への転載工程を具体例として以下に説明する。
【0075】
図2は、マイクロLED素子の形成を説明するための概略断面図である。まず、図2に示すように、成長基板101にマイクロLED素子となる半導体層102が形成される。
【0076】
上記半導体層102は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の光を発光する発光層であり、色ごとに、成長基板101が用意されて、色ごとに組成の異なる半導体層102が成長基板101に形成される。成長基板101としては、例えば、サファイア基板が用いられる。各色の半導体層102は、それぞれ組成および構造が異なる。これら半導体層の組成および構造は公知であり、その製造方法も公知であるので詳細な説明は省略するが、例えば、赤色マイクロLED用にはAlInGaP系やGaAlAs系の半導体層102が、緑色マイクロLED用にはGaP系の半導体層102が、青色マイクロLED用にはInGaN系の半導体層102が使用される。
【0077】
上記半導体層102の上には、さらに、分割後の各マイクロLEDのチップに対応する位置に、チップ側電極12(素子側電極)が形成される。チップ側電極12は、半導体層102と電気的に接続された金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、半導体層102と直接接する金属パッドとして形成されてもよい。チップ側電極12は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Pt、Ni、Cr、Ti等の金属、ITO、FTO、SnO等の金属酸化物、またはグラフェン(Graphene)等を用いて形成される。これらの中でも、Au、Ag、Cuが好ましい。
【0078】
さらに、チップ側電極12の上には、はんだ13(金属材)によるマイクロバンプが形成されている。はんだ13には、例えば、鉛フリーのSAC(SnAgCu)やSC(SnCu)等が用いられる。
【0079】
続いて、マイクロLEDチップへのダイシングと該マイクロLEDチップのハンドリング基板への転載(移載)が行われる(ハンドリング基板転載段階)。ハンドリング基板への転載段階では、まず、成長基板101ごと半導体層102を、従来公知のダイシング方法等を用いて、マイクロLEDのチップ11の形態に切断・分割しておく。図3は、ダイシングにより成長基板101上で所定の大きさに分割されたマイクロLEDのチップ11の状態を示す概略断面図である。この時、成長基板101は、完全に切断されておらず、ハーフカットされた状態であり、マイクロLEDのチップ11に付着している。
【0080】
続いて、成長基板101が付いたまま分割されたマイクロLEDのチップ11は、チップ側電極12が形成された面がハンドリング基板112側を向くように、樹脂層(接着剤層)111によってハンドリング基板112に貼り付けられる。図4は、成長基板101が付いたままのマイクロLEDのチップ11がハンドリング基板112に貼り付けられた状態を示す概略断面図である。赤色マイクロLEDチップ、緑色マイクロLEDチップ、青色マイクロLEDチップの色ごとにハンドリング基板112が用意され、それぞれのハンドリング基板112に、それぞれの色のマイクロLEDのチップ11が樹脂層(接着剤層)111によって貼り付けられる。また、各色のマイクロLEDチップ11は、一個一個所定の配列ピッチでハンドリング基板112に貼り付けられる。
【0081】
上記ハンドリング基板112としては、例えば、無アルカリガラス基板や石英ガラス基板等が用いられる。また、上記樹脂層(接着剤層)111としては、上記貼り付け工程の後の工程において、ハンドリング基板112を除去できるようにレーザーリフトオフが可能な樹脂であれば、特に限定されないが、例えば、ポリイミド系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポロプロピレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂あるいはABS系樹脂等の樹脂が用いられる。これら樹脂の使用に際しては、熱硬化剤が配合されてもよい。また、樹脂層111としては、紫外線(UV)によって硬化可能なUV硬化型接着剤等の活性エネルギー線硬化型接着剤を使用することもできる。
【0082】
続いて、マイクロLEDのチップ11から成長基板101が分離(剥離)、除去される。図5に、樹脂層111によりハンドリング基板112に保持されたマイクロLEDのチップ11から成長基板101の部分が除去された状態の概略断面図を示す。
【0083】
上記成長基板101の分離は、例えば、レーザーリフトオフ技術を用いて行われる。具体的には、成長基板101の側から、パルス発振の波長の短い紫外線(UV)のレーザー光を成長基板101とマイクロLEDのチップ11との界面の全面を走査するように照射して、成長基板101からマイクロLEDのチップ11をレーザーリフトオフする。成長基板101とマイクロLEDのチップ11との界面において、マイクロLEDチップの構成材料である半導体層102は、このレーザー光を吸収して、極薄層の深さに渡って構成材料の元素に分解され、マイクロLEDのチップ11にダメージを与えることなく、マイクロLEDのチップ11から成長基板101を剥離することができる。レーザー光としては、例えば、波長248nmのKrFエキシマレーザーが使用される。使用する波長はこれに限定されず、成長基板101からマイクロLEDのチップ11を分離できる波長であればよい。このようなレーザー光照射によって、図5に示すように、マイクロLEDのチップ11から成長基板101の部分が分離されて、除去される。
【0084】
マイクロLEDのチップ11は、成長基板101の部分が除去されることで、マイクロLEDとしての形状となる。マイクロLEDのチップ11(成長基板101の部分がない状態)は、例えば、略直方体または略立方体などの立体形状を有していて、四角形の平面形状を有している。四角形の1辺の長さは、例えば、1μm以上100μm以下である。また、マイクロLEDのチップ11は、例えば、円筒形状を有していて、円形の平面形状を有していてもよい。円形の直径は、例えば、1μm以上100μm以下である。四角形や円形の平面形状の部分は、例えば、マイクロLEDの光取り出し面である。なお、マイクロLEDのチップ11は、上記の形状に限定されるものではなく、上記四角形や円形と同程度の大きさの平面形状を有していればよい。
【0085】
マイクロLEDのチップ11は、この段階では、チップ側電極12のある側がハンドリング基板112側となっていて、チップ側電極12とは反対面の底面側が光取り出し面として露出している。
【0086】
続いて、マイクロLEDのチップ11がハンドリング基板112からキャリア基板14に転載(移載)される(中継段階)。図6は、マイクロLEDのチップ11をハンドリング基板112から本発明のチップ状部品転載用両面粘着テープ10が貼り付けられたキャリア基板14に転載(移載)する過程を説明するための概略断面図である。これらの転載(移載)の工程は、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の色ごとに、それぞれの色のマイクロLEDのチップ11が保持されたハンドリング基板112を用いて行われる。
【0087】
上記キャリア基板14は、後述する駆動基板20と同等の熱膨張率であること、かつ、可視光を50%以上透過する材料であることが好ましい。具体的には、例えば、石英ガラス、無アルカリガラス等が用いられる。なお、可視光の透過率は、キャリア基板14上に本実施の形態の基材レスの両面粘着テープ10が貼り付けられた状態で50%以上であることが好ましい。この場合、後述するマイクロLEDのチップ11の電気的検査の際に、マイクロLEDのチップ11の発光状態を容易に観察することができる。
【0088】
上記キャリア基板14の大きさは、特に限定されないが、駆動基板20と同じ大きさか、それより大きいことが好ましい。上記キャリア基板14を、このような大きさとすることで、駆動基板20へのマイクロLEDのチップ11の転載(移載)が一度の操作で済む。なお、キャリア基板14の大きさが駆動基板20の大きさよりも小さい場合、例えば、1枚のキャリア基板14の大きさが駆動基板20の1/10~1/2程度の大きさである場合には、キャリア基板14から駆動基板20へのマイクロLEDのチップ11の転載(移載)を複数回に渡って繰り返せばよい。
【0089】
マイクロLEDのチップ11をハンドリング基板112からキャリア基板14へ転載(移載)する際には、キャリア基板14に対して、マイクロLEDのチップ11の底面側からマイクロLEDのチップ11を付着させる(付着段階)。マイクロLEDのチップ11とキャリア基板14とを付着させるには、本実施の形態の基材レスの両面粘着テープ10を使用する。
【0090】
具体的には、まず、上記基材レスの両面粘着テープ10の第1粘着剤層1側の剥離シート3を剥離して、第1粘着剤層1面側をキャリア基板14の表面に貼り合わせる。次いで、第2粘着剤層2の剥離シート4を剥離して第2粘着剤層2面を暴露させる。そして、図6に示すように、キャリア基板14に貼り合わせられた基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2面に対して、樹脂層111によりハンドリング基板112に保持されたマイクロLEDのチップ11の底面側(チップ側電極12とは反対面側)からマイクロLEDのチップ11を付着させる。
【0091】
ここで、本実施の形態の基材レスの両面粘着テープ10は、上述したように、第1粘着剤層1においては、チップ状部品の転載時や洗浄工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板14から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板14に対する密着力を有する一方で、第2粘着剤層2においては、チップ状部品転載時に転写不良を起こしたり、また洗浄工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(剥離力)を有する構成となっている。したがって、この付着段階においては、基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2面にマイクロLEDのチップ11を確実に付着させることができる。
【0092】
マイクロLEDのチップ11の転載(移載)は、図6に示すように、まず、ハンドリング基板112ごとチップ11を基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2面へ押し付ける。チップ11は、基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2の適切な付着力(プローブタック値)により基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2面に付着する。転載(移載)後のマイクロLEDのチップ11は、基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2の適切な付着力(プローブタック値)により確実に付着するため、簡単に位置ずれを起こしたり、チップ11がある面を下に向けてもキャリア基板14から容易に脱落したりすることはない。
【0093】
続いて、大面積ディスプレイ用の駆動基板20上のマイクロLEDのチップ11の最終的な配置分布に対応して、キャリア基板14へ転載(移載)したいマイクロLEDのチップ11のみをハンドリング基板112から選択的に分離して、それらのマイクロLEDのチップ11をキャリア基板14上の所定の位置に転載(移載)する。マイクロLEDのチップ11のハンドリング基板112からの分離は、例えば、レーザーリフトオフ技術が用いられる。図7に、レーザーリフト技術によりマイクロLEDチップをハンドリング基板から分離する方法を説明するための概略断面図を示す。レーザーリフトオフ技術によるマイクロLEDのチップ11のハンドリング基板112からの分離に際しては、まず、ハンドリング基板112の上部に、キャリア基板14へ転載(移載)したいマイクロLEDのチップ11の上部に位置する樹脂層(接着剤層)111部分のみにレーザー光Lが照射されるように開口部を設けたマスクMを配置する。次いで、ハンドリング基板112側から、ハンドリング基板112の全面を走査するように紫外線波長のレーザー光が照射される。使用するレーザー光Lは、例えば、波長248nmのKrFエキシマレーザーである。使用する波長はこれに限定されず、樹脂層(接着剤層)111として使用する樹脂材料に応じて適宜決定されてもよい。そして、図8に示すように、マスクMの開口部に位置する樹脂層(接着剤層)111は、レーザー光Lの照射によって溶解し、レーザー光が照射された樹脂層(接着剤)111に位置するマイクロLEDのチップ11のみがハンドリング基板112から分離され、キャリア基板14へ転載(移載)したいマイクロLEDのチップ11のみをハンドリング基板112から分離する。これらマイクロLEDのチップ11をハンドリング基板112から分離する際、マイクロLEDのチップ11は基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2の適切な付着力(プローブタック値)により付着しているため、キャリア基板14から剥離することはない。よって、ハンドリング基板112から分離されたマイクロLEDのチップ11はキャリア基板14上の所定の位置に転載(移載)される。また、上記分離の際、レーザー光が照射されなかった樹脂層(接着剤)111に位置するマイクロLEDのチップ11は、キャリア基板14上の基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2から剥離されて、ハンドリング基板112にそのまま残り、別の転載工程において、再度、利用される。
【0094】
キャリア基板14上のマイクロLEDのチップ11の配置分布において、マイクロLEDのチップ11が保持されたハンドリング基板1枚のみで、所定の位置の全てに配置することができない場合には、その空所にマイクロLEDのチップ11を配置分布させるのに、各色のマイクロLEDのチップ用に複数枚の更なるハンドリング基板112を用いることができる。
【0095】
キャリア基板14から剥離されたマイクロLEDのチップ11については、その後、チップ側電極12の面に残った樹脂層111が、洗浄処理により取り除かれる。洗浄処理は、たとえば、酸素プラズマアッシングなどのドライエッチングを所望の時間処理することで除去される。あるいは樹脂層111を溶解できる薬液を用いてウェットエッチングにより除去してもよい。
【0096】
ここで、本実施の形態の基材レスの両面粘着テープ10は、上述したように、第1粘着剤層1においては、チップ状部品の洗浄処理の工程中に両面粘着テープ10がキャリア基板14から剥離したり、ずれたりすることがない程度のキャリア基板14に対する密着力を有する一方で、第2粘着剤層2においては、チップ状部品の洗浄処理の工程中にチップ状部品が脱落したり位置ずれを起こしたりすることがない程度のチップ状部品に対する適切な付着力(剥離力)を有する構成となっている。したがって、上記洗浄処理の工程において不具合が発生することはない。
【0097】
上述のキャリア基板14への各色のマイクロLEDのチップ11の転載(移載)が終了すると、すべて色のすべてのマイクロLEDのチップ11が本実施の形態のチップ状部品転載用両面粘着テープ10によってキャリア基板14上に、所定の配列ピッチで配置分布される。配列ピッチは、駆動基板20上での配列ピッチである。また、マイクロLEDのチップ11は、チップ側電極12(マイクロバンプのはんだ13)が露出している。
【0098】
続いて、外観検査および電気的検査が行われる(検査段階)。外観検査においては、自動光学検査により、キャリア基板14上のマイクロLEDのチップ11の傾き、複数のチップ11間での高低差、チップ11の抜け等の外観不良が検出される。自動光学検査で検出された不良チップの位置およびチップ抜けの位置は、自動光学検査装置内の記憶装置や自動光学検査装置から検査情報を取得するコンピューター内の記憶装置に記憶される。
【0099】
その後、上記自動光学検査で検出された不良チップについては、記憶された不良チップの位置に基づいて良品のチップに交換される。チップ抜けについては、記憶されたチップ抜けの位置に基づいて、新たなチップが補充されて、キャリア基板14へ付着配置される。
【0100】
上記不良チップの良品チップへの交換は、例えば、以下のように行われる。まず、キャリア基板14上で不良チップが検出されたら、該不良チップを、粘着性スタンプ等を用いてキャリア基板14上から取り除く。粘着性スタンプは、例えば、その先端に、キャリア基板14上に貼り付けられた本実施の形態の基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2がチップ11を保持している力よりも大きい粘着力を有する粘着剤や接着剤等を付けたニードル等である。不良チップを取り除く際には、このニードルの先端に不良チップを粘着または接着させて、キャリア基板14に貼り付けられた基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2から不良チップを引き抜く。不良チップは、上述で説明したように、キャリア基板14上に貼り付けられた基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2に付着しているだけであり、また第1粘着剤層1はキャリア基板14に適切な力で十分に密着しているので、不良チップを第2粘着剤層2から、個別に、かつ、容易に引き抜くことができる。不良チップを取り除いた後は、その位置に良品チップを再度付着させて配置する。
【0101】
上記不良チップの良品チップへの交換、およびチップ抜け部への良品チップの再配置が行われた後、マイクロLEDのチップ11の電気的検査が行われる。この電気的検査は、各チップ11に対して、チップ側電極12から通電して、チップ11が良好に発光するか否かを発光輝度や発光スペクトル等から確認する発光試験である。所定の発光輝度未満または所定の発光スペクトルから外れているチップ11は、不良チップとされる。電気的検査で検出された不良チップの位置は、電気的装置内の記憶装置や電気的装置から検査情報を取得するコンピューター内の記憶装置等に記憶される。
【0102】
その後、上記電気的検査で検出された不良チップについては、記憶された不良チップの位置に基づいて、良品チップに交換される。
【0103】
上記自動光学検査および電気的検査、それに続く不良チップの交換やチップ抜け部への補充再配置の工程は、キャリア基板14上での不良チップの数が所定の不良品数未満となるまで繰り返し実施される。
【0104】
続いて、マイクロLEDのチップ11がキャリア基板14から駆動基板20へ移載される(接合段階)。駆動基板20には、マイクロLEDの各チップ11に電力を供給するために必要な配線やTFT(Thin-Film-Ttransistor)等と共に、チップ側電極12と接合するための駆動基板側電極21が形成されている。駆動基板側電極21には、駆動基板20上に形成されている金属配線の一部がそのまま用いられてもよいし、配線と接続された金属パッドが形成されていてもよい。駆動基板側電極21には、上述したチップ側電極12と同様の金属が用いられる。駆動基板側電極21の上は、通常は何も形成されないが、必要に応じて、はんだ13のマイクロバンプが形成されていてもよい。
【0105】
図9(a)~(c)は、マイクロLEDのチップ11をキャリア基板14から駆動基板20に転載(移載)する過程を説明するための概略断面図である。中継基板14から駆動基板20へのチップ11の移載は、フラックスレスにて仮接合が行われる(仮接合段階)。仮接合は、図9(a)に示すように、キャリア基板14に付着しているチップ11のチップ側電極12と、駆動基板20に形成されている駆動基板側電極21とが接するように、キャリア基板14と駆動基板20を重ね合わせる。その後、図9(b)に示すように、キャリア基板14と駆動基板20を互いに近づく方向へ加圧(例えば0.5~1.0MPa程度)しつつ、全体を、常温を超えてはんだ溶融温度未満の温度(例えば、はんだの素材がSAC(Sn96.5%、Ag3.0%、Cu0.5%)の場合には、200~216℃程度)で加熱する。これにより、チップ側電極12と駆動基板側電極21とがある程度の力で仮接合される。
【0106】
上記のような条件で加圧、加熱することにより、はんだ13が溶融することなく、チップ11と駆動基板20を仮接合させることができる。また、この温度範囲であれば、基材レスの両面粘着テープ10のシリコーン系粘着剤層が、変質することはない。
【0107】
続いて、図9(c)に示すように、マイクロLEDのチップ11から基材レスの両面粘着テープ10が貼り付けられたキャリア基板14が分離、除去される(キャリア基板分離段階)。チップ11からキャリア基板14を分離、除去するには、キャリア基板14をチップ11から引き剥がす。上述したように、キャリア基板14上のチップ11は、基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2に付着しているだけである。このため、キャリア基板14上のチップ11が基材レスの両面粘着テープ10の第2粘着剤層2に付着している力は、チップ11が仮接合で駆動基板20に接合されている力よりも小さい。したがって、基材レスの両面粘着テープ10が貼り付けられたキャリア基板14は、チップ11から容易に引き剥がすことができる。
【0108】
その後、駆動基板20をはんだ溶融温度以上まで加熱して、マイクロLEDのチップ11と駆動基板側電極21とを強固に接合させる(リフロー段階)。図10は、はんだリフローにより、マイクロLEDのチップ11が駆動基板20上に接合・実装された状態を示す概略断面図である。キャリア基板14の大きさが駆動基板20より小さい場合には、まず、複数回の転載(移載)工程を経て、すべてのマイクロLEDのチップ11をキャリア基板14から駆動基板20へ仮接合により転載(移載)する。その後、駆動基板20ごと全体をリフローすれば良い。
【実施例0109】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0110】
本実施例および比較例に使用する各種粘着剤を調整するために、粘着剤の主成分として下記のアルケニル基を有する付加反応型シリコーン系樹脂(A)~(E)を、架橋剤として下記のケイ素原子結合水素原子(SiH)を有するオルガノポリシロキサン(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)(F)および(H)を、ヒドロシリル化反応用触媒として白金系触媒である1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン白金錯体(白金分:6.0質量%)を用いた。また、付加反応遅延剤として3-メチル-1-ブチン-3-オールを用いた。
【0111】
付加反応型シリコーン系樹脂(A)および(C)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合物[質量比(G)/(R)=40/60]であり、付加反応型シリコーン系樹脂(D)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合物[質量比(G)/(R)=70/30]であり、付加反応型シリコーン系樹脂(E)は、シリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の混合物[質量比(G)/(R)=35/65]である。これら付加反応型シリコーン系樹脂(A)、(C)~(E)のシリコーンガム(G)には、重合平均分子量(Mw)が50万である分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体を、また、シリコーンレジン(R)には、重合平均分子量(Mw)が5,000のRSiO1/2単位(M単位)およびSiO4/2単位(Q単位)を有するオルガノポリシロキサン(MQレジン)を用いた。
【0112】
また、付加反応型シリコーン系樹脂(B)は、シリコーンガム(G)単独の樹脂である。この付加反応型シリコーン系樹脂(B)のシリコーンガム(G)には、重合平均分子量(Mw)が20万である分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体を用いた。
【0113】
・付加反応型シリコーン系樹脂(A) (固形分濃度:60質量%)
シリコーンガム(G)/シリコーンレジン(R)=40質量%/60質量%の混合物
アルケニル基(ビニル基)含有量:3.57×10-5mol/g
【0114】
・付加反応型シリコーン系樹脂(B) (固形分濃度:30質量%)
シリコーンガム(G)
アルケニル基(ヘキセニル基)含有量:2.83×10-4mol/g
【0115】
・付加反応型シリコーン系樹脂(C) (固形分濃度:60質量%)
シリコーンガム(G)/シリコーンレジン(R)=40質量%/60質量%の混合物
アルケニル基(ビニル基)含有量:2.84×10-6mol/g
【0116】
・付加反応型シリコーン系樹脂(D) (固形分濃度:40質量%)
シリコーンガム(G) /シリコーンレジン(R)=70質量%/30質量%の混合物
アルケニル基(ビニル基)含有量:4.98×10-6mol/g
【0117】
・付加反応型シリコーン系樹脂(E) (固形分濃度:60質量%)
シリコーンガム(G) /シリコーンレジン(R)=35質量%/65質量%の混合物
アルケニル基(ビニル基)含有量:2.49×10-6mol/g
【0118】
・架橋剤(F)(固形分濃度:20質量%)
オルガノハイドロジェンポリシロキサン
SiH基含有量:7.50×10-3mol/g
【0119】
・架橋剤(H)(固形分濃度:20質量%)
オルガノハイドロジェンポリシロキサン
SiH基含有量:1.00×10-2mol/g
【0120】
1.粘着剤溶液の作製
付加反応型シリコーン系樹脂、架橋剤、白金系触媒および付加反応遅延剤を、それぞれ表1~4に示す配合量(固形分換算)にて混合し、さらにトルエンにて希釈・撹拌し、固形分濃度30質量%の粘着剤(a)~(s)の溶液を作製した。それぞれの粘着剤のシリコーン系樹脂全体におけるシリコーンガム(G)とシリコーンレジン(R)の質量比(G)/(R)、アルケニル基含有量、および架橋剤に含まれるケイ素原子結合水素原子の全モル数と付加反応型シリコーン系樹脂に含まれるアルケニル基の全モル数の比[SiH]/[アルケニル]について、表1~4に示す。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
2.粘着テープの作製
<実施例1>
まず、第1粘着剤層を形成するために、粘着剤(i)の溶液を準備した。粘着剤(i)の溶液を、第1粘着剤層の乾燥厚さが5μmになるように、Siliconature社製の第1の剥離フィルム(PET、厚さ75μm)の剥離処理面上に塗工し、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が180℃となるゾーンで1分間乾燥することにより第1粘着剤層を加熱・硬化させ、該粘着剤層表面に、Siliconature社製の第2の剥離フィルム(PET、厚さ75μm)の剥離処理面側を貼り合わせ、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)の単層から成る基材レス両面粘着テープを作製した。
【0126】
次いで、第2粘着剤層を形成するために、粘着剤(c)の溶液を準備した。粘着剤(c)の溶液を、第2粘着剤層の乾燥厚さが5μmになるように、Siliconature社製の第1の剥離フィルム(PET、厚さ75μm)の剥離処理面上に塗工し、乾燥炉の前半部において、40~90℃の温度にて段階的に初期乾燥した。その後、乾燥炉の後半部に設けられた熱処理の最高温度が180℃となるゾーンで1分間乾燥することにより第2粘着剤層を加熱・硬化させ、該第2粘着剤層表面に、先に作製した第1粘着剤層(I)から成る基材レス両面テープの第2の剥離フィルムが剥離された第1粘着剤層(I)表面を貼り合わせ、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)と厚さ5μmの第2粘着剤層(C)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(C)を作製した。
【0127】
<実施例2>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(d)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)と厚さ5μmの第2粘着剤層(D)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(D)を作製した。
【0128】
<実施例3>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(e)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)と厚さ5μmの第2粘着剤層(E)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(E)を作製した。
【0129】
<実施例4>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(l)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(L)と厚さ5μmの第2粘着剤層(C)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(L)/(C)を作製した。
【0130】
<実施例5>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(m)の溶液に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(M)と厚さ5μmの第2粘着剤層(D)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(M)/(D)を作製した。
【0131】
<実施例6>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(n)の溶液に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(N)と厚さ5μmの第2粘着剤層(E)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(N)/(E)を作製した。
【0132】
<実施例7>
第1粘着剤層および第2粘着剤層の厚さを5μmから4μmに変更したこと以外は実施例3と同様にして、厚さ4μmの第1粘着剤層(I)と厚さ4μmの第2粘着剤層(E)とが積層された総厚さ8μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(E)を作製した。
【0133】
<実施例8>
第1粘着剤層および第2粘着剤層の厚さを5μmから8μmに変更したこと以外は実施例3と同様にして、厚さ8μmの第1粘着剤層(I)と厚さ8μmの第2粘着剤層(E)とが積層された総厚さ16μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(E)を作製した。
【0134】
<実施例9>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(p)の溶液に変更したこと以外は、実施例2と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(P)と厚さ5μmの第2粘着剤層(D)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(P)/(D)を作製した。
【0135】
<実施例10>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(q)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(Q)と厚さ5μmの第2粘着剤層(C)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(Q)/(C)を作製した。
【0136】
<実施例11>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(e)の溶液を粘着剤(g)の溶液に変更したこと以外は、実施例6と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(N)と厚さ5μmの第2粘着剤層(G)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(N)/(G)を作製した。
【0137】
<実施例12>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(h)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)と厚さ5μmの第2粘着剤層(H)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(H)を作製した。
【0138】
<実施例13>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(r)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(R)と厚さ5μmの第2粘着剤層(C)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(R)/(C)を作製した。
【0139】
<実施例14>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(s)の溶液に変更したこと以外は、実施例3と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(S)と厚さ5μmの第2粘着剤層(E)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(S)/(E)を作製した。
【0140】
<比較例1>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(a)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(I)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(I)/(A)を作製した。
【0141】
<比較例2>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(j)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(J)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(J)/(A)を作製した。
【0142】
<比較例3>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(k)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(K)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(K)/(A)を作製した。
【0143】
<比較例4>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(l)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(L)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(L)/(A)を作製した。
【0144】
<比較例5>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(m)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(M)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(M)/(A)を作製した。
【0145】
<比較例6>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(n)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(N)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(N)/(A)を作製した。
【0146】
<比較例7>
第1粘着剤層を形成するための粘着剤(i)の溶液を粘着剤(o)の溶液に変更したこと以外は、比較例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(O)と厚さ5μmの第2粘着剤層(A)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(O)/(A)を作製した。
【0147】
<比較例8>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(f)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(G)と厚さ5μmの第2粘着剤層(F)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(G)/(F)を作製した。
【0148】
<比較例9>
第2粘着剤層を形成するための粘着剤(c)の溶液を粘着剤(b)の溶液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、厚さ5μmの第1粘着剤層(G)と厚さ5μmの第2粘着剤層(B)とが積層された総厚さ10μmの基材レス両面粘着テープ(G)/(B)を作製した。
【0149】
3.粘着剤層の評価
3.1 粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)
第1粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)および第2粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)は以下の方法で測定した。まず、実施例および比較例で使用した粘着剤(a)~(s)のそれぞれの溶液について、粘着剤層の乾燥厚さが50μmになるように、Siliconature社製の第1の剥離フィルム(PET、厚さ75μm)の剥離処理面上に塗工し、実施例および比較例と同一の条件で乾燥、硬化させ、該粘着剤層表面に第2の剥離フィルム(PET、厚さ75μm)の剥離処理面側を貼り合わせ、厚さ50μmの粘着剤層から成る基材レス両面粘着テープを作製した。続いて、得られたそれぞれの基材レス両面粘着テープを小片に切断し、第1および第2の剥離フィルムを剥離した後、約500μmの厚さとなるように粘着剤層のみを10枚重ね合わせた試料を準備した。これらの試料について、株式会社日立ハイテクサイエンス社製の粘弾性測定装置“DMS6100”(製品名)を用いて、動的粘弾性を測定し、粘着剤層の23℃貯蔵弾性率を求めた。測定条件は、周波数1Hzのせん断ひずみを与えながら、昇温速度2℃/分とし、0℃から100℃まで温度を変化させ、動的粘弾性スペクトルを測定した。得られたスペクトルの23℃における貯蔵弾性率の値を、その粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)とした。
【0150】
3.2 粘着剤層のゲル分率
3.1で作製した基材レス両面粘着テープから所定量(重量A)の粘着剤層を採取し、ガラススクリュー管に入れ、30mLのトルエンを加えた後、ミックスローターにより、温度23℃、ローター回転速度60rpmの条件で24時間攪拌させた。その後、100mm×100mmのサイズに切り出した♯100ステンレスメッシュ(重量B)でろ過し、残った粘着剤層残渣をステンレスメッシュごと130℃で2時間乾燥させ、乾燥重量(重量C)を測定した。粘着剤層のゲル分率は、以下の式により算出した。
ゲル分率(%)=100×(C-B)/A
【0151】
4.両面粘着テープの評価
4.1 両面粘着テープのプローブタック
本発明において、粘着力の指標として、実際の付着・剥離による転載の工程を鑑み、プローブタックの値を用いた。実施例1~14および比較例1~9で作製した第1粘着剤層と第2粘着剤層とが積層された基材レス両面粘着テープについて、ASTM D2979に準拠して、テスター産業株式会社製プローブタック試験機“TE-6001”(製品名)を用いて、第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの値をそれぞれ測定した。測定は、基材レス両面粘着テープの40℃、30日保存前(初期)および保存後の試料について行った。具体的には、まず、適当な大きさに裁断された基材レス両面粘着テープの測定粘着剤層の面側の剥離フィルムを剥離し、ウエイトリングに貼り付けて、装置の試料台に置いた。次いで、直径5mm(φ5mm)の円柱状プローブ(SUS304製)を上記測定粘着剤層の面に、押し付け圧力9.8kPaで接触させ、1秒間保持させた。次いで、上記円柱状プローブを測定粘着剤層の面から垂直方向に剥離速度10mm/秒にて引き剥がした。そして、接触面直径が5mmである接触面から引き剥がす際に要する最大荷重を求めた。測定試料数は3検体とし、それらの最大荷重の平均値をその試料のプローブタックの値(単位:N/φ5mm、なお/φ5mmとは接触面直径が5mmである接触面の面積当たりを意味する)とした。
【0152】
粘着テープの第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの評価基準は、保存前後のいずれにおいても表5に示す通りとした。ただし、この評価基準は、基材レス両面粘着テープの第1粘着剤層側をキャリア基板に貼り付け、チップ状部品の底面を第2粘着剤層側の表面に接触・転写させて使用する場合、すなわち基材レス両面粘着テープの構成として、第1粘着剤層をプローブタックの値が大きい側、第2粘着剤層をプローブタックの値が小さい側となるように積層した構成を想定したものである。
【0153】
【表5】
【0154】
基材レス両面粘着テープとしてのプローブタックの総合評価については、その評価基準を以下の通りとし、B以上の評価を合格とした。
・総合評価基準
A:保存前後の第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの評価はすべて〇である。
B:保存前後の第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの評価において×を含まないが、△を少なくとも一つ以上含む。
C:保存前後の第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの評価において×を少なくとも一つ以上含む。
【0155】
4.2 40℃、30日保存後のプローブタック値の変化率
上記実施例1~14および比較例1~9で作製した第1粘着剤層と第2粘着剤層とが積層された基材レス両面粘着テープの40℃、30日保存後のプローブタック値の変化率は以下の式により算出した。
プローブタック値の変化率(%)=100×(T-T)/T
ここで、Tは40℃、30日保存前(初期)のプローブタック値、Tは40℃、30日保存後のプローブタック値である。
【0156】
5.評価結果
実施例1~14の基材レス両面粘着テープの評価結果を表6~8に、比較例1~9の基材レス両面粘着テープの評価結果を表9、10に示す。また、表には、第1粘着剤層および第2粘着剤層の各物性値、ならびに第1粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)と第2粘着剤層の23℃貯蔵弾性率(G’)の差の絶対値|(G’)-(G’)|も併せて示す。
【0157】
【表6】
【0158】
【表7】
【0159】
【表8】
【0160】
【表9】
【0161】
【表10】
【0162】
表6~8に示すように、本発明の要件を満たす実施例1~14の基材レス両面粘着テープは、第1粘着剤層のプローブタック値が、40℃、30日間保存前後のいずれにおいても、3.50N/φ5mm以上であり、第2粘着剤層のプローブタック値は、40℃、30日間保存前後のいずれにおいても、3.00N/φ5mm以下であり、良好な結果が得られることが確認できた。また、それぞれのプローブタックの値の保存後変化率も±10%以下で、安定であることが確認できた。すなわち、本発明の要件を満たす実施例1~14の基材レス両面粘着テープは、チップ状部品転載用両面粘着テープとして優れた特性を有していることが分った。
【0163】
これら実施例の中でも、実施例2、3、5、7、8および14の基材レス両面粘着テープは、第1粘着剤層のプローブタック値は、40℃、30日間保存前後のいずれにおいても、4.50N/φ5mm以上であり、第2粘着剤層のプローブタック値は、40℃、30日間保存前後のいずれにおいても、1.50N/φ5mm以上2.00N/φ5mm以下の範囲であり、特に優れていることが分った。
【0164】
これに対し、表9および10に示すように、本発明の要件を満たさない比較例1~9の基材レス両面粘着テープは、第1粘着剤層および第2粘着剤層のプローブタックの40℃、30日間保存前後の値のいずれか一つ以上において、所望の範囲を満足しないことが確認でき、実施例1~14の基材レス両面粘着テープよりも劣っていることが分った。すなわち、本発明の要件を満たさない比較例1~9の基材レス両面粘着テープは、チップ状部品転載用両面粘着テープとして適用した場合に、チップ状部品がうまく転写しなかったり、転写位置がずれたりする等の転写不良が発生するおそれや、洗浄工程において、両面粘着テープからチップ状部品が脱落したり、キャリア基板から両面粘着テープが剥離したりする等の不具合が発生するおそれがあることが分った。
【符号の説明】
【0165】
1…第1粘着剤層、
2…第2粘着剤層、
3…剥離シート(フィルム)、
4…剥離シート(フィルム)、
10…チップ状部品転載用両面粘着テープ、
11…マイクロLEDのチップ、
12…チップ側電極、
13…はんだ(マイクロバンプ)、
14…キャリア基板、
20…駆動基板、
21…起動基板側電極、
101…成長基板、
102…半導体層、
111…樹脂層(接着剤層)、
112…ハンドリング基板。
図1
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図10