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  • 特開-樹脂製の容器 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007243
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】樹脂製の容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/04 20060101AFI20240111BHJP
【FI】
B65D41/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108611
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】鍔 孝太郎
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA01
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HB02
3E084HC03
3E084HD02
3E084HD03
3E084HD04
3E084KB01
3E084LB02
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で、より確実に液止め性を向上させた樹脂製の容器を提供する。
【解決手段】容器本体内の内容物が通過する流路を形成し、外径面に雄ねじを有する樹脂製且つ筒状の口部3と、天板部と上記天板部の外周部に連続する筒部とを有し、上記筒部の内径面に上記雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成された樹脂製のキャップ4と、を備え、上記キャップ4は、上記天板部の内面側外周部に、周方向に延びる環状のアウターリング10を有し、そのアウターリング10は、内径側を向く環状の内周面に、上記天板部側が相対的に上記キャップの中心軸側に位置するように傾斜した環状の傾斜面10bを有し、上記口部3は、先端部側端面の外縁の角部に、閉栓の際に上記傾斜面10bに当接可能で且つ周方向に延びる環状の段差Sを有する、樹脂製の容器。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体内の内容物が通過する流路を形成し、外径面に雄ねじを有する樹脂製且つ筒状の口部と、
天板部と上記天板部の外周部に連続する筒部とを有し、上記筒部の内径面に上記雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成された樹脂製のキャップと、
を備え、
上記キャップは、上記天板部の内面側外周部に、周方向に延びる環状のアウターリングを有し、
そのアウターリングは、内径側を向く環状の内周面に、上記天板部側が相対的に上記キャップの中心軸側に位置するように傾斜した環状の傾斜面を有し、
上記口部は、先端部側端面の外縁の角部に、閉栓の際に上記傾斜面に当接可能で且つ周方向に延びる環状の段差を有する、
ことを特徴とする樹脂製の容器。
【請求項2】
上記キャップは、上記天板部の内面から口部側に延び、閉栓の際に、上記口部の内径面に接するインナーリングを備える、
ことを特徴とする請求項1に記載した樹脂製の容器。
【請求項3】
上記インナーリングは、上記天板部側の位置に、内径側に張り出して上記口部の先端部側端面と当接可能な張出部を有する、
ことを特徴とする請求項2に記載した樹脂製の容器。
【請求項4】
上記アウターリングは、外径面側が上記筒部と一体なっている、
ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか1項に記載した樹脂製の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体などの内容物を収容した樹脂製の容器に関し、その容器から内容物を注出する部分の密封構造に関する。
【背景技術】
【0002】
容器の口部に対しキャップを回転させることで密封する構造としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載の技術がある。これらの技術は、口部に対しキャップをねじ結合にて閉栓するものである。
【0003】
特許文献1に記載の容器は、瓶からなる容器に関する。
特許文献1に記載の口部(瓶口)の密封構造は、キャップ(瓶蓋)の天板部内面に、口部の内径面に接触するインナーリングと、口部の先端部側端面に当接する、断面形状が不等辺三角形状の環状の突起部(密封構造30)と、が設けられている。そして、特許文献1では、口部にキャップをねじ結合した際に、環状の突起部(密封構造30)が、瓶口上面(先端部側端面)の外側角を圧して押さえることで液止めする、ことが記載されている。このとき、環状の突起部は、外側角に相対する作用力を生じさせて緊密に上部を圧して押さえるが、形状変化を起こすことがないと、記載されている。
【0004】
また、特許文献2では、キャップ内側に、天板部から個々に突出したインナーリングとアウターリングを備える。特許文献2では、更に、天板部から上下方向に変位可能なコンタクトリングを突出されている。そして、特許文献2には、口部へのキャップの嵌合時(ねじ結合時)に、コンタクトリングが口部の先端部側端面に当接し、当該コンタクトリングが変形することで液止めする、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3173398号公報
【特許文献2】国際公開第2015/193971号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容器の用途などによっては、液体を収容した容器を、郵送などの搬送方法により搬送されることを想定する必要がある。特に樹脂製の容器は、軽量などの点で、簡易な郵送に適した容器である。
この場合、搬送中に、容器に振動が加わることにより、容器内部の液体が口部から漏れる懸念がある。これに対する、口部での液漏れを防ぐ構造を設ける必要がある。
一般に、容器の口部内径面とキャップのインナーリングとが接触することで密閉性を実現している(特許文献1,2参照)。しかし、上記搬送時の振動などで、容器がプラスチック製の場合、容器口元の変形などによって口部の口内径が広がり、口部内径面とキャップのインナーリングとの接触部に隙間が空いてしまい、液漏れが発生する懸念がある。
【0007】
しかし、特許文献1は、容器が瓶のような剛性を有することを前提としているため、搬送時の振動などによる口部やキャップの一時的な変形について考慮されておらず、また、アウターリングも無いことから、樹脂製の容器に適用した場合、液漏れが発生する懸念がある。
一方、特許文献1では、口部外径面と接触するアウターリングや、口部の先端部の端面に接触するコンタクトリングを設けているが、アウターリングと口部との密着性を向上させるためには、アウターリングに対して内周方向に向かう力(口部外径面との接触力)が不十分となるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記のような点に着目してなされたもので、簡易な構造で、より確実に液止め性を向上させた樹脂製の容器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するために、本発明の一態様は、容器本体内の内容物が通過する流路を形成し、外径面に雄ねじを有する樹脂製且つ筒状の口部と、天板部と上記天板部の外周部に連続する筒部とを有し、上記筒部の内径面に上記雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成された樹脂製のキャップと、を備え、上記キャップは、上記天板部の内面側外周部に、周方向に延びる環状のアウターリングを有し、そのアウターリングは、内径側を向く環状の内周面に、上記天板部側が相対的に上記キャップの中心軸側に位置するように傾斜した環状の傾斜面を有し、上記口部は、先端部側端面の外縁の角部に、閉栓の際に上記傾斜面に当接可能で且つ周方向に延びる環状の段差を有する、樹脂製の容器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の態様によれば、アウターリングの口部への接触による締め力の上昇を抑えつつ、液止め性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に基づく実施形態に係る容器(開封状態)を示す側面図である。
図2】口部の構造を示す断面図である。
図3】キャップの構造を示す断面図である。
図4】段差部の段差Sとアウターリングの傾斜面との関係を示す図である。
図5】閉栓時の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
(構成)
本実施形態の樹脂製の容器1は、容器本体2と、口部3と、口部3にねじ結合で取付け可能なキャップ4とを備える。
本実施形態の容器は、図1に示すように、容器本体2と口部3が一体成形されていて、口部3が容器本体2の一部を構成する場合を例示している。本発明は、容器本体2と口部3とが別体で成形され、容器本体2に口部3を溶着などで装着した構成であっても良い。
容器は、PP、PE、ポリ乳酸などの樹脂材料から、例えば射出成形で製造された物品である。
【0013】
<口部3>
上述の通り、口部3は、液体などの内容物を収容した容器本体2と一体に構成されている。なお、口部3は容器本体2と別体でも良く、口部3の樹脂材料は容器本体2と異なっていても良い。
口部3の内径面3bは、容器内の内容物が通過する流路5を形成する樹脂製の部材であり、外径面に雄ねじ7を有する筒形状となっている。
本実施形態の口部3は、図2のように、先端部側端面3aの外縁の角部に周方向に延びる環状の段差部6を有し、その段差部6の段差Sが、閉栓の際に後述の傾斜面10bに当接可能となっている(図4参照)。段差部6は、図2のように、横面6aと縦面6bとを有する凹形状の切欠き部である。そして、上記の段差部6の段差Sとは、口部3先端部側端面3aと縦面6bとの境界位置の角を指す。
これによって、先端部側端面3aの外径が、雄ねじ7が形成された口部3の外径面3cの外径よりも小さくなっている。
【0014】
<キャップ4>
キャップ4は、図3に示すように、天板部4Aと、天板部4Aの外周部に連続して下方に延在する筒部4Bとを有して、断面略コ字形状となった樹脂製の部材である。筒部4Bの内径面には、口部3の雄ねじ7に螺合可能な雌ねじ8が形成されている。
キャップ4は、内側に、天板部4Aの内面(図3では下面)から下方に突出したインナーリング9とアウターリング10とを備える。
【0015】
[インナーリング9]
インナーリング9は、天板部4Aの内面から突出し、天板部4Aの円周方向に延在する筒状部材(環状の部材)であって、閉栓の際に、インナーリング9における口部3と径方向で対向する外径面9aが、口部3の内径面3bに接するように構成されている。
また、本実施形態のインナーリング9は、天板部4A側の付け根部分に、内径側に張り出して口部3の先端部側端面3aと当接可能な張出部9bを有することもできる(図5参照)。この張出部9bは、円周方向に延在して環状となっている。
【0016】
[アウターリング10]
本実施形態のアウターリング10は、天板部4Aの内面側外周部に形成され、円周方向に延びる環状のリブからなる。
本実施形態のアウターリング10は、図4のように、天板部4Aと筒部4B上部との境界部を膨出させるように形成されている。すなわち、アウターリング10は、アウターリング10の外径面が筒部4Bと一体になって、段差S構造となっている。これによって、樹脂製であっても、アウターリング10の径方向の剛性が高くなっている。
そのアウターリング10は、内径側を向く環状の内周面に、天板部4A側が相対的にキャップ4の中心軸P側に位置するように傾斜した環状の傾斜面10bを有する。すなわち、環状の傾斜面10bで囲まれた空間が円錐台形状となっている。
【0017】
この傾斜面10bは、図4のように、閉栓の際に、口栓の段差部6の角に当接可能な位置に形成する。すなわち、閉栓状態で、段差部6の角と傾斜面10bとが、キャップ4の軸方向で対向するように形成する(図5参照)。段差部6で構成された角部(先端部側端面3aの外周部の角)である段差Sが当接する傾斜面10bの位置は、傾斜面10bのうち、天板部4Aから離れた位置が好ましい。
上述の通り、段差部6は、横面6aと縦面6bとを有する凹形状となっている。そして、閉栓の際に、段差Sが傾斜面10bに当接する際に、段差部6の横面6aにアウターリング10の下面10aが非接触状態になっているように、当該段差部6を構成する。すなわち、例えば、段差部6の縦面6bの傾斜角は、傾斜面10bの傾斜角よりも大きく、且つ閉栓状態でアウターリング10の下面よりも横面6aが下方(容器本体2側)とあるように設計する。
【0018】
ここで、上記傾斜面10bの中心軸P方向に沿った輪郭線は、直線状である必要はなく、凹又は凸の円弧状となっていても良い。
また、本実施形態のアウターリング10は、内径側を向く環状の内周面の全面で傾斜面10bを形成する場合を例示しているが、内径側を向く環状の内周面における、キャップ4の中心軸Pに沿った方向における一部の環状の領域だけで、傾斜面10bが形成されていてもよい。また、傾斜面10bの下方側に、口部3の外径面に接触する部分があっても良い。
【0019】
(動作その他)
本実施形態では、キャップ4の雌ねじ8を口部3の雄ねじ7に螺合させて、キャップ4で口部3を閉栓する際に、図5のように、インナーリング9が口部3の内径面3bに接触して第1の密閉構造を構成する。
また、図5のように、アウターリング10の環状の傾斜面10bが口部3の段差Sに当接して、第2の密閉構造を構成する。
更に、図5のように、インナーリング9に張出部9bを設けた場合には、その張出部9bが、口部3の先端部の端面3aに軸Pの方向から当接して第3の密封構造を構成する共に、段差Sに対する傾斜面10bの当接量(接触の押圧力)を制御する。
【0020】
すなわち、本実施形態では、キャップ4を閉栓する方向に回転させていくにつれて、キャップ4は徐々に下方向(容器本体2側)に軸移動し、口部3の段差Sがアウターリング10の傾斜面10bに接触することによって、口部3の先端側は内径側に向かって徐々に強い力で押されていくことになる。この結果、上記の第2の密封構造が確実に構成されると共に、口部3の内径面3bとインナーリング9の外径面とが強く接触して、上記の第1の密封構造を確実に構成する。これによって、運搬時などで容器1に振動が負荷されても、液漏れが防止される。
【0021】
また、本実施形態のアウターリング10は、キャップ4の内側角部に設けられた段構造(リブ)であるため、強い力が加わっても外径方向に歪む心配がない。このため、アウターリング10は、口部3を効率よくインナーリング9に押し付けることができる。更に、キャップ4や口部3が樹脂製であっても、より確実に第2の密封構造を構成することができる。
このように、本実施形態によれば、キャップ4の閉栓方向の回転に伴い、傾斜面10bが段差部6を内周方向に加圧するため、口部3が非対称に変形するような振動が容器に加わっても、容器口内が広がる際にキャップ4のアウターリング10と口部3の段差部6が接触することで、液漏れにつながる広がりを防ぐことができる。
【0022】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)容器本体内の内容物が通過する流路を形成し、外径面に雄ねじを有する樹脂製且つ筒状の口部と、
天板部と上記天板部の外周部に連続する筒部とを有し、上記筒部の内径面に上記雄ねじに螺合可能な雌ねじが形成された樹脂製のキャップと、
を備え、
上記キャップは、上記天板部の内面側外周部に、周方向に延びる環状のアウターリングを有し、
そのアウターリングは、内径側を向く環状の内周面に、上記天板部側が相対的に上記キャップの中心軸側に位置するように傾斜した環状の傾斜面を有し、
上記口部は、先端部側端面の外縁の角部に、閉栓の際に上記傾斜面に当接可能で且つ周方向に延びる環状の段差を有する、樹脂製の容器。
(2)上記キャップは、上記天板部の内面から口部側に延び、閉栓の際に、上記口部の内径面に接するインナーリングを備える。
(3)上記インナーリングは、上記天板部側の位置に、内径側に張り出して上記口部の先端部側端面と当接可能な張出部を有する。
(4)上記アウターリングは、外径面側が上記筒部と一体なっている。
【符号の説明】
【0023】
1 容器
2 容器本体
3 口部
3a 先端部側端面
4 キャップ
4A 天板部
4B 筒部
5 流路
6 段差部
9 インナーリング
10 アウターリング
10b 傾斜面
P 中心軸
S 段差
図1
図2
図3
図4
図5