(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072430
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】二次電池及び二次電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/184 20210101AFI20240521BHJP
H01M 50/197 20210101ALI20240521BHJP
H01M 50/178 20210101ALI20240521BHJP
H01M 50/193 20210101ALI20240521BHJP
H01M 50/105 20210101ALI20240521BHJP
【FI】
H01M50/184 C
H01M50/197
H01M50/178
H01M50/193
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183239
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩砂 皓之
【テーマコード(参考)】
5H011
【Fターム(参考)】
5H011AA09
5H011CC10
5H011DD13
5H011GG09
5H011HH02
(57)【要約】
【課題】シール材の流出を抑制する。
【解決手段】二次電池Aは、シート状セパレータ13を挟んで負極板11と正極板12を交互に積層した積層電極体10と、積層電極体10の外周縁21Sから突出したタブ18と、シート状基材22と、シート状基材22の内面を被覆する熱溶着可能なシール材23とを有し、積層電極体10とタブ18を挟んだ状態でシール材23を介して熱溶着される一対のシート状外装体21と、一対のシート状外装体21のうちタブ18の側方近傍部位25の間に挟まれるように配置され、表面が凹凸形状をなすシート状保持体33と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状セパレータを挟んで負極板と正極板を交互に積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
シート状基材と、前記シート状基材の内面を被覆する熱溶着可能なシール材とを有し、
前記積層電極体と前記タブを挟んだ状態で前記シール材を介して熱溶着される一対のシート状外装体と、
前記一対のシート状外装体のうち前記タブの側方近傍部位の間に挟まれるように配置され、表面が凹凸形状をなすシート状保持体と、を備えている二次電池。
【請求項2】
熱溶着可能な接着材からなる接着層を前記シート状保持体に積層した形態の機能シートを備えており、
前記機能シートが一対の前記側方近傍部位の間に配置されている請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
前記機能シートが、第1の前記接着層と前記シート状保持体と第2の前記接着層とを順に積層した構造である請求項2に記載の二次電池。
【請求項4】
一対の前記側方近傍部位の間に、一対の前記機能シートが積層状態で介在している請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項5】
前記機能シートが、前記シート状外装体と前記タブとの間に挟まれる拡張部を有しており、
一対の前記機能シートの前記拡張部が、前記タブを挟むように配置されている請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項6】
前記機能シートが、前記シート状外装体のうち前記側方近傍部位のみに配置されている請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項7】
1枚の前記機能シートが、前記タブを挟むように二つ折りに屈曲されており、
前記機能シートの屈曲部と、前記機能シートにおける一対の端縁部が、前記側方近傍部位の間に挟まれるように配置されている請求項2又は請求項3に記載の二次電池。
【請求項8】
前記側方近傍部位が溶着されていない状態で形成されたものであって、前記タブの外周面を包囲するように溶着された合成樹脂製の熱溶着層を備えている請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の二次電池。
【請求項9】
シート状セパレータを挟んで負極板と正極板を交互に積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
シート状基材と、前記シート状基材の内面を被覆する熱溶着可能なシール材とを有し、
前記積層電極体と前記タブを挟んだ状態で前記シール材を介して熱溶着される一対のシート状外装体と、
前記一対のシート状外装体のうち前記タブの側方近傍部位の間に挟まれるように配置され、表面が凹凸形状をなすシート状保持体と、
前記側方近傍部位が溶着されていない状態で形成されたものであって、前記タブの外周面を包囲するように溶着された合成樹脂製の熱溶着層とを備える二次電池を製造する方法であって、
第1熱溶着工程において、前記タブの外周面に前記熱溶着層を形成し、
前記第1熱溶着工程の後の第2熱溶着工程において、前記積層電極体と前記タブに対する前記シート状外装体の熱溶着を行う二次電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池及び二次電池の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セパレータを介して正電極と負電極を交互に積層した電極アセンブリと、正電極に接続されたリードタブと、負電極に接続されたリードタブとを有するリチウムイオンパウチセルが開示されている。電極アセンブリとリードタブの基端部は、金属ラミネートフィルムからなる2つのブランクの間に収容されている。リードタブと2つのブランクとの隙間は、2枚のテープからなるシールテープによってシールされている。シールテープは、ヒーターによって加圧しながら加熱することによって、リードタブとブランクとに熱溶着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シールテープは、リードタブを覆う部分だけでなく、リードタブを覆わずにリードタブの側縁に沿った部位に亘って配置されている。熱溶着用のヒーターは、シールテープの全体を加熱する大きさを有する。ここで、リードタブは一定程度の厚みを有しているため、ヒーターの加熱部におけるシールテープとの対向面は、リードタブが存在する部位の形状と、リードタブが存在しない部位の形状とに合わせた形状、即ち平面ではない形状をなす。そして、リードタブの厚さやブランクの厚さは、公差範囲内でばらつきがある。そのため、ヒーターでブランクとリードタブを加熱しながら加圧したときに、溶融状態のシールテープが加圧力によってブランクの外部へ流出することが懸念される。シールテープが流出すると、シール性が低下する。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、シール材の流出を抑制することことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の開示の二次電池は、
シート状セパレータを挟んで負極板と正極板を交互に積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
シート状基材と、前記シート状基材の内面を被覆する熱溶着可能なシール材とを有し、前記積層電極体と前記タブを挟んだ状態で前記シール材を介して熱溶着される一対のシート状外装体と、
前記一対のシート状外装体のうち前記タブの側方近傍部位の間に挟まれるように配置され、表面が凹凸形状をなすシート状保持体と、を備えている。
【0007】
第2の開示の二次電池の製造方法は、
シート状セパレータを挟んで負極板と正極板を交互に積層した積層電極体と、
前記積層電極体の外周縁から突出したタブと、
シート状基材と、前記シート状基材の内面を被覆する熱溶着可能なシール材とを有し、前記積層電極体と前記タブを挟んだ状態で前記シール材を介して熱溶着される一対のシート状外装体と、
前記一対のシート状外装体のうち前記タブの側方近傍部位の間に挟まれるように配置され、表面が凹凸形状をなすシート状保持体と、
前記側方近傍部位が溶着されていない状態で形成されたものであって、前記タブの外周面を包囲するように溶着された合成樹脂製の熱溶着層とを備える二次電池を製造する方法であって、
第1熱溶着工程において、前記タブの外周面に前記熱溶着層を形成し、
前記第1熱溶着工程の後の第2熱溶着工程において、前記積層電極体と前記タブに対する前記シート状外装体の熱溶着を行う。
【発明の効果】
【0008】
第1及び第2の開示の二次電池は、熱溶着工程において、シール材が一対の側方近傍部位の間で加圧されても、シート状保持体の凹凸形状によって、シール材の流出を抑制することができる。第2の開示の二次電池の製造方法は、第1熱溶着工程でタブの外周面に熱溶着層を形成しておき、その後に、シート状外装体の熱溶着を行うので、シート状外装体の外面からタブの外周面に至る伝熱経路の途中に、熱抵抗の大きい熱溶着層が存在する。これにより、シート状外装体に付与した熱がタブへ逃げ難くなっているので、シート状外装体に過剰な熱を付与しなくても、シール材と熱溶着層とを良好に溶着することができる。また、シート状外装体に過剰な熱を付与する必要がないので、シート状外装体のうち熱がタブ側へ逃げ難い側方近傍部位では、シール材の粘度が過剰に低下する虞がなく、シール材の流出を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】タブに熱溶着層を形成し、機能シートとシート状外装体を溶着していない状態をあらわす部分拡大正面図
【
図7】実施形態2の二次電池のラミネート構造をあらわす部分拡大正面図
【
図8】実施形態2においてタブに熱溶着層を形成し、機能シートとシート状外装体を溶着していない状態をあらわす部分拡大正面図
【
図9】実施形態3の二次電池のラミネート構造をあらわす部分拡大正面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで、本開示の望ましい形態例を示す。下記の複数の形態を、矛盾を生じない範囲で任意に組み合わせたものも、発明を実施するための形態に含まれる。
【0011】
前記二次電池は、熱溶着可能な接着材からなる接着層を前記シート状保持体に積層した形態の機能シートを備えており、前記機能シートが一対の前記側方近傍部位の間に配置されていてもよい。この構成によれば、シート状基材の内面におけるシール材の残留量が局部的に減少しても、その残留量の減少を接着材によって補うことができるので、シール性と接着性の低下を防止できる。
【0012】
前記二次電池は、前記機能シートが、第1の前記接着層と前記シート状保持体と第2の前記接着層とを順に積層した構造であってもよい。この構成によれば、シート状保持体の表裏両側に接着層が存在するので、側方近傍部位の熱溶着部分における接着性とシール性に優れている。
【0013】
前記二次電池は、一対の前記側方近傍部位の間に、一対の前記機能シートが積層状態で介在していてもよい。この構成によれば、一対の側方近傍部位の間では、一対の機能シートが積層した状態で介在しているので、シール材や接着層の一部が流出しても、高いシール性と接着性を維持することができる。
【0014】
前記二次電池は、前記機能シートが、前記シート状外装体と前記タブとの間に挟まれる拡張部を有しており、一対の前記機能シートの前記拡張部が、前記タブを挟むように配置されていてもよい。この構成によれば、シート状外装体のシート状基材とタブとの間には、シール材だけでなく機能シートの接着材も介在しているので、シート状外装体とタブとの間におけるシール性と接着性に優れている。
【0015】
前記二次電池は、前記機能シートが、前記シート状外装体のうち前記側方近傍部位のみに配置されていてもよい。この構成によれば、機能シートはタブを覆う部分を有していないので、機能シートの材料コストを低減することができる。
【0016】
前記二次電池は、1枚の前記機能シートが、前記タブを挟むように二つ折りに屈曲されており、前記機能シートの屈曲部と、前記機能シートにおける一対の端縁部が、前記側方近傍部位の間に挟まれるように配置されていてもよい。この構成によれば、シート状外装体のシート状基材とタブとの間には、シール材だけでなく機能シートの接着材も介在しているので、シート状外装体とタブとの間におけるシール性と接着性に優れている。
【0017】
前記二次電池は、前記側方近傍部位が溶着されていない状態で形成されたものであって、前記タブの外周面を包囲するように溶着された合成樹脂製の熱溶着層を備えていてもよい。タブに対するシート状外装体の熱溶着と、シート状外装体の側方近傍部位同士の熱溶着とを1工程で行った場合、シート状外装体のうちタブを覆う領域では、シート状外装体に付与した熱がタブへ逃げるため、シール材が充分に加熱されず、溶着不良を生じ易いという不具合がある。この対策として、シート状外装体に付与する熱量を増大させると、シート状外装体のうち熱がタブへ逃げ難い側方近傍部位では、シール材の粘度が低下し過ぎてシール材が流出し易くなる、という不具合が生じる。
【0018】
これに対し、前工程でタブの外周面に熱溶着層を形成しておき、その後に、シート状外装体の熱溶着を行った場合には、シート状外装体の外面からタブの外周面に至る伝熱経路の途中に、熱抵抗の大きい熱溶着層が存在するので、シート状外装体に付与した熱がタブへ逃げ難い。したがって、シート状外装体に過剰な熱を付与しなくても、シール材と熱溶着層とを良好に溶着することができる。また、シート状外装体に過剰な熱を付与する必要がないので、シート状外装体のうち熱がタブ側へ逃げ難い側方近傍部位では、シール材の粘度が過剰に低下する虞がなく、シール材の流出を抑制できる。
【0019】
[実施形態1]
本開示を具体化した実施形態1を、
図1~
図6を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。本実施形態1において、前後の方向については、
図1,2におけるF方向を前方と定義する。左右の方向については、
図1~3におけるR方向を右方と定義する。左右方向と幅方向を同義で用いる。上下の方向については、
図1~3におけるH方向を上方と定義する。尚、
図2は、各部材の厚みを省略して描いている。
図3~6は、各部材の厚みを誇張して描いている。
【0020】
本実施形態1の二次電池Aは、
図1に示すように、積層電極体10と、一対のタブ18と、積層電極体10とともに電解液を液密状に包囲するラミネート部材20とを備えて構成されている。ラミネート部材20は、
図3に示すように、一対のシート状外装体21と、熱溶着層28と、一対の機能シート30とを備えている。
【0021】
図2に示すように、積層電極体10は、複数枚の負極板11と複数枚の正極板12を、複数枚のシート状セパレータ13を挟んで交互に積層して構成されている。シート状セパレータ13は、PAN(ポリアクリロニトリル)や不織布等からなる。
【0022】
負極板11は、全体として長方形をなすシート状の負極用基材(図示省略)の表裏両面に、負極用スラリー(図示省略)を塗布して構成された周知形態のものである。負極用スラリーは、負極活物質、結着剤、導電材、分散増粘剤等を混練したものである。負極用基材は、突起状をなす1つの負極側接続部14を有する。負極側接続部14は、前側の長辺における長さ方向中央よりも右方の位置から前方へ突出している。負極側接続部14は、負極用スラリーが塗布されない未塗工部である。
【0023】
正極板12は、全体として長方形をなすシート状の正極用基材(図示省略)の表裏両面に、正極用スラリー(図示省略)を塗布して構成された周知形態のものである。正極用スラリーは、正極活物質、結着剤、導電材、分散増粘剤等を混練したものである。正極用基材は、突起状をなす1つの正極側接続部15を有する。正極側接続部15は、前側の長辺における長さ方向中央よりも左方の位置から前方へ突出している。正極側接続部15は、正極用スラリーが塗布されない未塗工部である。
【0024】
負極板11と正極板12をシート状セパレータ13を挟んで積層した状態では、前側の長辺には、積層状態の複数枚の負極側接続部14と、積層状態の複数枚の正極側接続部15とが左右に間隔を空けて配置される。負極側接続部14と正極側接続部15には、夫々、タブ18が導通可能に固着されている。負極側のタブ18と正極側のタブ18は、平板状をなしていて、積層電極体10の前方へ水平に突出している。
【0025】
シート状外装体21は、
図5に示すように、導電性のシート状基材22の内面に、絶縁性の合成樹脂からなるシール材23を積層したものである。本実施形態1では、シート状基材22は、アルミニウムやアルミニウム合金等の金属からなる。シール材23は、シール性と接着性を有する。シール材23は、シート状基材22の表面(内面)を絶縁状態に保つための被覆層であり、シート状基材22が積層電極体10の電解液と接触することを防止する。本実施形態1では、シール材23の材料として、例えば、変性PP(ポリプロピレン)が用いられている。一対のシート状外装体21は、積層電極体10の全体と、タブ18のうち負極側接続部14との固着部及び正極側接続部15との固着部を、上下から挟むように配置される。タブ18の前端部は、シート状外装体21の外周縁よりも前方へ突出している。
【0026】
一対のシート状外装体21の外周縁部21Sのうちタブ18を挟む部分及びタブ18と隣接する部分を除いた領域は、溶融した上下のシール材23同士を直接的に密着させた状態で熱溶着されている。一対のシート状外装体21の外周縁部21Sのうちタブ18を挟む領域及びタブ18と隣接する領域では、上下のシール材23の間に熱溶着層28と機能シート30が介在している。つまり、シート状外装体21の外周縁部21Sは、タブ18を覆う覆い部24と、タブ18を覆わない側方近傍部位25とを有する。側方近傍部位25は、タブ18の左右両側縁に近傍する部位である。
【0027】
熱溶着層28は、
図3に示すように、タブ18の外面に対して、直接的に密着した状態で包囲している。前後方向(積層電極体10からタブ18が突出する方向)における熱溶着層28の形成範囲は、シート状外装体21の外周縁部21S(覆い部24)によって上下に挟まれる領域であり、タブ18の前端よりも少し方向の領域である。本実施形態1では、熱溶着層28の材料として、変性PP(ポリプロピレン)が用いられているが、これ以外の材料を用いることができる。
【0028】
機能シート30は、
図6に示すように、第1の接着層31と、1枚のシート状保持体33と、第2の接着層32とを順に積層して一体化させた3層構造の部材である。一対の機能シート30は、タブ18と、タブ18の左右両側方に隣接する領域(側方近傍部位25が重なる領域)とを上下から挟むように配置される。一対の機能シート30のうち側方近傍部位25が重なる左右2つの領域は、両機能シート30が直接的に重なるように接触する直接接着部34として機能する。機能シート30のうちタブ18を挟む部位、即ち左右の両直接接着部34を繋ぐ部位は、拡張部35として機能する。
【0029】
シート状保持体33は、表面に細かい凹凸を有するとともに、内部に細かい隙間を有している。これらの凹凸や隙間は、熱溶着工程において接着層31,32の溶融状態の材料が入り込むことができる空間である。本実施形態1では、シート状保持体33の材料として、例えば全芳香族ポリエステルが用いられている。シート状保持体33は、接着層31,32の接着材、シート状外装体21のシール材23、及び熱溶着層28よりも融点が高く、電気的な絶縁性を有する。
【0030】
第1の接着層31と第2の接着層32は、シート状保持体33に接した状態で配置され、接着性能に加えてシール性能を兼ね備えている。本実施形態1では、両接着層31,32の接着材として、例えば、変性PP(ポリプロピレン)が用いられている。熱溶着層28と両接着層31,32は同じ材料からなる。本実施形態1では、機能シート30の厚さは、例えば、0.071mmである。シート状保持体33の厚さは、例えば、0.01mmであり、1つの接着層31,32の厚さは、例えば、0.035mmである。シート状保持体33の厚さと第1の接着層31と第2の接着層32の厚さは、上記以外に任意に設定することができる。
【0031】
次に、本実施形態1の製造工程のうち、積層電極体10にタブ18を固着した後のラミネート工程を説明する。まず、
図4に示すように、タブ18のうち前後方向においてシート状外装によって覆われる部位に、熱溶着層28を形成する。熱溶着層28は、変性PPからなるシート状の材料をタブ18の外面に巻き付けて、加熱することによって形成される。
【0032】
熱溶着層28が固化した後、タブ18の上面側と下面側に、上下一対の機能シート30を重ねるように配置する。このとき、タブ18の外面(熱溶着層28が形成されている領域)だけでなく、タブ18の左右両側縁よりも左右方向外方に隣接する領域(シート状外装体21の側方近傍部位25によって挟まれる領域)にも、機能シート30が配置されるようにする。
【0033】
この状態から、上下一対のシート状外装体21を、積層電極体10及びタブ18の上面側と下面側に重ね、熱溶着する。熱溶着工程では、シート状外装体21のシート状基材22の外面が加圧されると同時に加熱される。加熱により、シート状外装体21のシール材23と、機能シート30の両接着層31,32が溶融する。シール材23は、相手側のシール材23又は機能シート30の接着層31,32に対して密着した状態で溶着される。接着層31,32は、相手側の接着層31,32又は熱溶着層28に対して密着した状態で溶着される。
【0034】
熱溶着用のヒーター(図示省略)はタブ18の厚さに合わせた凹部を有するが、タブ18の厚さ、熱溶着層28の厚さ、シート状外装体21の厚さには、公差範囲内でばらつきがある。そのため、ヒーターによって加熱しながら加圧したときに、シート状外装体21の側方近傍部位25においては、溶融状態のシール材23が、加圧され過ぎてシート状基材22の外部へ流出することが懸念される。シール材23がが流出すると、シール性が低下するだけでなく、導電性のシート状基材22の内面が露出して積層電極体10の電解液と短絡してしまう虞がある。
【0035】
この対策として、本実施形態1では、側方近傍部位25同士が加圧される領域に、シート状保持体33を有する機能シート30を介在させた。機能シート30が加熱されると、溶融状態になった接着層31,32が、加圧によってシート状保持体33の凹凸や隙間に入り込み、シート状保持体33に保持される。つまり、接着層31,32の少なくとも一部は、側方近傍部位25の外部へ流出することなく、シート状保持体33と一体をなして、シート状基材22の間に挟まれた状態に保持される。これにより、シール材23が流出したとしても、シート状基材22同士の間が接着層31,32によって液密状にシールされる。また、接着層31,32は、シール性だけでなく絶縁性を有しているので、例えシール材23が流出したとしても、シート状基材22が第1の接着層31や第2の接着層32によって絶縁状態に被覆され、シート状基材22が積層電極体10の電解液と接触することを防止できる。
【0036】
本実施形態1の二次電池Aは、積層電極体10と、タブ18と、シート状外装体21と、シート状保持体33とを有する。積層電極体10は、シート状セパレータ13を挟んで負極板11と正極板12を交互に積層したものである。タブ18は、積層電極体10の外周縁(前縁)から前方へ突出している。シート状外装体21は、シート状基材22と、シート状基材22の内面を被覆する熱溶着可能なシール材23とを有する。一対のシート状外装体21は、積層電極体10とタブ18を挟んだ状態でシール材23を介して熱溶着される。シート状保持体33は、表面が凹凸形状をなす部材である。シート状保持体33は、一対のシート状外装体21のうちタブ18の側方近傍部位25の間に挟まれるように配置される。この構成によれば、熱溶着工程において、シール材23が一対の側方近傍部位25の間で加圧されても、シート状保持体33の凹凸形状によって、シール材23の流出を抑制することができる。
【0037】
二次電池Aは、熱溶着可能な接着材からなる第1の接着層31と第2の接着層32を、シート状保持体33に積層した形態の機能シート30を備えている。機能シート30は、一対の側方近傍部位25の間に配置されている。この構成によれば、シート状基材22の内面におけるシール材23の残留量が局部的に減少しても、その残留量の減少を接着材によって補うことができるので、シール性と接着性の低下を防止できる。機能シート30は、第1の接着層31とシート状保持体33と第2の接着層32とを順に積層した構造である。この構成によれば、シート状保持体33の表裏両側に第1の接着層31と第2の接着層32が存在するので、側方近傍部位25の熱溶着部分における接着性とシール性に優れている。
【0038】
一対の側方近傍部位25の間には、一対の機能シート30が積層状態で介在している。この構成によれば、シール材23や第1の接着層31や第2の接着層32の一部が流出しても、高いシール性と接着性を維持することができる。機能シート30は、シート状外装体21とタブ18との間に挟まれる拡張部35を有している。一対の機能シート30の拡張部35は、タブ18を挟むように配置されている。この構成によれば、シート状外装体21のシート状基材22とタブ18との間に、シール材23だけでなく機能シート30の接着材も介在しているので、シート状外装体21とタブ18との間におけるシール性と接着性に優れている。
【0039】
タブ18に対するシート状外装体21の熱溶着と、シート状外装体21の側方近傍部位25同士の熱溶着とを1工程で行った場合、シート状外装体21のうちタブ18を覆う領域では、シート状外装体21に付与した熱がタブ18へ逃げるため、シール材23が充分に加熱されず、溶着不良を生じ易いという不具合がある。この対策として、シート状外装体21に付与する熱量を増大させると、シート状外装体21のうち熱がタブ18へ逃げ難い側方近傍部位25では、シール材23の粘度が低下し過ぎてシール材23が流出し易くなる、という不具合が生じる。
【0040】
この対策として、本実施形態1では、タブ18に合成樹脂製の熱溶着層28を形成した。熱溶着層28は、シート状外装体21の側方近傍部位25が溶着されていない状態で、タブ18の外周面を包囲するように溶着されたものである。ラミネート工程においては、まず、第1熱溶着工程においてタブ18の外周面に熱溶着層28を形成した。その後の第2熱溶着工程において、積層電極体10とタブ18に対するシート状外装体21の熱溶着を行った。
【0041】
このように熱溶着工程を2工程に分けて行えば、シート状外装体21のシート状基材22の外面からタブ18の外周面に至る伝熱経路の途中に、熱抵抗の大きい熱溶着層28が存在することになるので、シート状外装体21に付与した熱がタブ18へ逃げ難い。したがって、シート状外装体21に過剰な熱を付与しなくても、シール材23と熱溶着層28とを良好に溶着することができる。また、シート状外装体21に過剰な熱を付与する必要がないので、シート状外装体21のうち熱がタブ18側へ逃げ難い側方近傍部位25では、シール材23の粘度が過剰に低下する虞がなく、シール材23の流出を抑制できる。
【0042】
[実施形態2]
本開示を具体化した実施形態2の二次電池Bを、
図7~
図8を参照して説明する。本実施形態2は、ラミネート部材39を構成する機能シート40を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0043】
本実施形態2の機能シート40は、実施形態1の機能シート30と同じく、第1の接着層31と、1枚のシート状保持体33と、第2の接着層32とを順に積層して一体化させた3層構造の部材である(
図6参照)。1つのタブ18に対して4枚の機能シート40が設けられている。機能シート40は、左右方向においてシート状外装体21の側方近傍部位25によって挟まれる領域のみに配置されている。つまり、本実施形態2の機能シート40は、実施形態1の機能シート30の拡張部35に相当する部位を有していない。したがって、タブ18の外周面の熱溶着層28のうち左右両端部を除いた大部分の領域には、シート状外装体21のシール材23が、直接、接触する。本実施形態2の機能シート40はタブ18を覆う部分を有していないので、機能シート40の材料コストを低減することができる。
【0044】
[実施形態3]
本開示を具体化した実施形態3の二次電池Cを、
図9を参照して説明する。本実施形態3の二次電池Cは、ラミネート部材49を構成する機能シート50を上記実施形態1とは異なる構成としたものである。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0045】
本実施形態3では、1枚の機能シート50だけで1つのタブ18を挟み込むようになっている。機能シート50は、実施形態1の機能シート30と同じく、第1の接着層31と、1枚のシート状保持体33と、第2の接着層32とを順に積層して一体化させた3層構造の部材である(
図6参照)。1枚の機能シート50は、二つ折りに屈曲されて、タブ18を上下に挟むように配置されている。屈曲状態の機能シート50は、左右両端のうち一方の端部に位置する屈曲部51と、他方の端部に位置する上下一対の端縁部52とを有する。屈曲部51と一対の端縁部52は、シート状外装体21の側方近傍部位25の間に挟まれるように配置されている。この構成によれば、実施形態1と同様、シート状外装体21のシート状基材22とタブ18との間に、シール材23だけでなく機能シート50の接着層31,32も介在するので、シート状外装体21とタブ18との間におけるシール性と接着性に優れている。また、機能シート50を二枚に分けた場合に比べると、機能シート50を移送する工程が少なくなるので、製造コストの低減を図ることができる。
【0046】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
・実施形態1~3において、タブの外周面を包囲する熱溶着層を設けない構成としてもよい。
・実施形態1~3において、機能シートは、1つの接着層と1つのシート状保持体だけで構成してもよい。この場合、接着層を側方近傍部位側に配置してもよく、シート状保持体を側方近傍部位側に配置してもよい。また、2枚の機能シートのうち一方の機能シートの接着層を側方近傍部位側に配置し、他方の機能シートのシート状保持体を側方近傍部位側に配置してもよい。
・実施形態1~3において、機能シートは、接着層を用いずに、表裏両面間に貫通する多数の孔を有するシート状保持体だけで構成してもよい。この場合、熱溶着時に、シート状外装体のシール材が、シート状保持体の孔に入り込んでシート状保持体の表裏両面に露出することによって、シール性と接着性を発揮する。
・実施形態1~3において、機能シートは、接着層を介して複数枚のシート状保持体を積層したものでもよい。
・実施形態1~3では、シート状保持体として不織布を用いたが、シート状保持体は、織布や合成樹脂製の多孔質シート等でもよい。
・実施形態2において、一対の側方近傍部位の間に介在させる機能シートは、1枚だけでもよい。この場合、一対の側方近傍部位のうちいずれか一方の側方近傍部位に、1枚の機能シートを接着しておけばよい。
【符号の説明】
【0047】
A,B,C…二次電池
10…積層電極体
11…負極板
12…正極板
13…シート状セパレータ
18…タブ
21…シート状外装体
22…シート状基材
23…シール材
25…側方近傍部位
28…熱溶着層
30,40…機能シート
31…第1の接着層
32…第2の接着層
33…シート状保持体
35…拡張部
40…機能シート
50…機能シート
51…屈曲部
52…端縁部