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特開2024-72433モータユニットおよび電動オイルポンプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024072433
(43)【公開日】2024-05-28
(54)【発明の名称】モータユニットおよび電動オイルポンプ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/10 20060101AFI20240521BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240521BHJP
   F04C 15/00 20060101ALI20240521BHJP
   H02K 5/18 20060101ALI20240521BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20240521BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20240521BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
F16J15/10 A
F04C15/00 K
H02K5/18
H02K7/14 B
H02K11/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022183243
(22)【出願日】2022-11-16
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(72)【発明者】
【氏名】水尻 健児
(72)【発明者】
【氏名】北山 直嗣
【テーマコード(参考)】
3H044
3J040
5H605
5H607
5H611
【Fターム(参考)】
3H044AA02
3H044BB03
3H044CC01
3H044CC14
3H044DD01
3H044DD09
3H044DD28
3J040AA17
3J040BA03
3J040EA16
3J040FA06
3J040HA09
3J040HA15
5H605AA02
5H605BB10
5H605CC01
5H605CC02
5H605DD01
5H605DD03
5H605DD12
5H605DD16
5H605EC20
5H605GG06
5H607AA05
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB09
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC07
5H607DD03
5H607DD08
5H607FF06
5H607JJ05
5H611AA09
5H611BB01
5H611BB07
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で複数のハウジング間の気密性を高めることができるモータユニットを提供する。
【解決手段】モータユニットは、モータ部を収容する第一ハウジング51と、第二ハウジング53と、第一ハウジング51と第二ハウジング53の間に配置された中間ハウジング52と、第一ハウジング51と中間ハウジング52の間に配置された第一ガスケット61と、第二ハウジング53と中間ハウジング52の間に配置された第二ガスケット62とを有する。中間ハウジング52のヤング率は、第一ハウジング51および第二ハウジング53よりも小さい。複数のねじ部材71,72の締付けによる軸力により、第一ハウジング51、中間ハウジング52、および第二ハウジング53が一体にユニット化される。軸方向から第二ガスケット62上に投影した第一ガスケット61は、ねじ部材72の間の領域に、第二ガスケット62と重なった部分を有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータ部を収容する第一ハウジングと、第二ハウジングと、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングの間に配置された中間ハウジングと、前記第一ハウジングと前記中間ハウジングの間に配置された第一ガスケットと、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングの間に配置された第二ガスケットと、ねじ部材と、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングとで形成される空間に配置された基板とを備え、
前記中間ハウジングのヤング率が、前記第一ハウジングおよび前記第二ハウジングよりも小さく、
前記ねじ部材の締付けによる軸力により、前記第一ハウジング、前記中間ハウジング、および前記第二ハウジングが一体にユニット化され、
軸方向から見た複数箇所に、前記ねじ部材が互いに平行となるように配置されている電動オイルポンプにおいて、
軸方向から前記第二ガスケット上に投影した前記第一ガスケットが、前記ねじ部材の間の領域に、前記第二ガスケットと重なった部分を有することを特徴とするモータユニット。
【請求項2】
軸方向から前記第二ガスケット上に投影した前記第一ガスケットが、前記第二ガスケットの一部のみと重なっている請求項1に記載のモータユニット。
【請求項3】
軸方向から前記第二ガスケット上に投影した前記第一ガスケットが、前記第二ガスケットの全周と重なっている請求項1に記載のモータユニット。
【請求項4】
前記第一ハウジングと前記中間ハウジングの間の面開きが前記第一ガスケットを収容するガスケット溝の面粗さ(Ry)よりも小さく、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングの間の面開きが前記第二ガスケットを収容するガスケット溝の面粗さ(Ry)よりも小さい請求項1に記載のモータユニット。
【請求項5】
前記第一ハウジングおよび中間ハウジングのうち前記第一ガスケットに接触する領域と、前記中間ハウジングおよび前記第二ハウジングのうち前記第二ガスケットに接触する領域と、前記第一ガスケットの表面と、前記第二ガスケットの表面とが、何れも防錆処理を施していない非防錆処理面である請求項1に記載のモータユニット。
【請求項6】
前記第一ハウジングと前記第二ハウジングの間に剛性差を設け、前記第一ハウジングおよび第二ハウジングのうち、高剛性側のハウジングと接するガスケットのヤング率を、低剛性側のハウジングと接するガスケットのヤング率よりも小さくした請求項1に記載のモータユニット。
【請求項7】
前記第二ハウジングが、軸方向から見て短辺と長辺とを有する矩形状をなし、前記第二ハウジングに、前記長辺と平行な方向に延びる複数の放熱フィンを設けた請求項1に記載のモータユニット。
【請求項8】
前記放熱フィンを、前記第二ガスケットと軸方向で重なる位置もしくは前記第二ガスケットよりも外側となる位置に配置した請求項7に記載のモータユニット。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載のモータユニットと、前記モータユニットのモータ部に駆動されるオイルポンプとを有する電動オイルポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータユニットおよび該モータユニットを有する電動オイルポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
DCブラシレスモータ等のモータユニットでは、ロータ及びステータを含むモータ部と、モータ部に駆動信号を与えるための制御回路を搭載した基板とが必要となる。モータ部と基板は別のハウジング(ケース)に収容する場合が多いため、モータユニットの組み立てに際しては、モータ部を収容したハウジングと、基板を収容したハウジングとを一体化する必要がある。この一体化の際には、両ハウジング間の気密性を確保する必要がある。例えば下記の特許文献1には、二つのケースをインロー嵌合させ、一方のケースに埋め込んだ金属線を通電により発熱させて互いの篏合部分を溶融固着させることにより、両ケース間の気密性を確保する手法が開示されている。
【0003】
また、モータユニットでは、二つのケースの間にガスケットを介在させて気密性を確保することも広く行われている。ガスケットを使用した場合、ケースの一方が樹脂製であると、樹脂ケースのヤング率が低いため、二つのケース間にボルト等で軸力を与えてガスケットを圧縮させると、ガスケットの圧縮による反力によって樹脂製ハウジングが変形するおそれがある。樹脂製ハウジングが変形すると、シール面に所定の面圧を発生させることができず、油漏れ等を生じることになる。樹脂製ハウジングの変形を防止するためには当該ハウジングを厚肉化する必要があり、モータユニットの大型化を招くことになる。
【0004】
この課題を解決するため、下記の特許文献2には、断面形状を改良して高面圧と低反力を両立可能としたパッキンが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-252958号公報
【特許文献2】特開2007-92911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のように、金属線の発熱により篏合部分を溶融固着する方法では、固着強度を確保するために樹脂の溶融量を厳密に管理する必要があり、高度な製造ノウハウが必要となる。
【0007】
特許文献2のように、ガスケットの断面形状を改良する場合、ガスケットの断面積が大きくなり、またガスケットの断面形状が複雑となる傾向にあるため、コストアップを招く。また、ガスケットの設置スペースが増大するため、ハウジング側の設計自由度の低下する問題もある。
【0008】
そこで、本発明は、簡易な構造で複数のハウジング間の気密性を高めたモータユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、モータ部を収容する第一ハウジングと、第二ハウジングと、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングの間に配置された中間ハウジングと、前記第一ハウジングと前記中間ハウジングの間に配置された第一ガスケットと、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングの間に配置された第二ガスケットと、ねじ部材と、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングとで形成される空間に配置された基板とを備え、前記中間ハウジングのヤング率が、前記第一ハウジングおよび前記第二ハウジングよりも小さく、前記ねじ部材の締付けによる軸力により、前記第一ハウジング、前記中間ハウジング、および前記第二ハウジングが一体にユニット化され、軸方向から見た複数箇所に、前記ねじ部材が互いに平行となるように配置されている電動オイルポンプにおいて、軸方向から前記第二ガスケット上に投影した前記第一ガスケットが、前記ねじ部材の間の領域に、前記第二ガスケットと重なった部分を有することを特徴とするものである。
【0010】
投影後の第一ガスケットと第二ガスケットとが重なった部分では、第一ガスケットおよび第二ガスケットで生じる各反力を軸方向で相殺することができる。そのため、ねじ部材の締付けに伴う中間ハウジングの変形を抑制することができる。これにより、第一ハウジングと中間ハウジングの境界部での面開き、および中間ハウジングと第二ハウジングの境界部での面開きを抑えることができる。そのため、ハウジング全体で高い気密性を確保することができる。
【0011】
(2)軸方向から前記第二ガスケット上に投影した第一ガスケットは、前記第二ガスケットの一部のみと重なっていてもよい。
【0012】
(3)軸方向から前記第二ガスケット上に投影した第一ガスケットは、前記第二ガスケットの全周と重なっていてもよい。
【0013】
(4)上記(1)~(3)で述べたモータユニットにおいては、前記第一ハウジングと前記中間ハウジングの間の面開きを前記第一ガスケットを収容するガスケット溝の面粗さ(Ry)よりも小さくし、前記第二ハウジングと前記中間ハウジングの間の面開きを前記第二ガスケットを収容するガスケット溝の面粗さ(Ry)よりも小さくすることが可能である。
【0014】
(5)上記(1)~(4)述べたモータユニットにおいては、前記第一ハウジングおよび中間ハウジングのうち前記第一ガスケットに接触する領域と、前記中間ハウジングおよび前記第二ハウジングのうち前記第二ガスケットに接触する領域と、前記第一ガスケットの表面と、前記第二ガスケットの表面とが、何れも防錆処理を施していない非防錆処理面であるのが好ましい。
【0015】
これにより、防錆処理の省略によるモータユニットの低コスト化を図ることができる。
【0016】
(6)上記(1)~(5)で述べたモータユニットにおいて、前記第一ハウジングと前記第二ハウジングの間に剛性差を設けた場合、前記第一ハウジングおよび第二ハウジングのうち、高剛性側のハウジングと接するガスケットのヤング率を、低剛性側のハウジングと接するガスケットのヤング率よりも小さくすることができる。
【0017】
(7)上記(1)~(6)で述べたモータユニットにおいては、前記第二ハウジングを軸方向から見て短辺と長辺とを有する矩形状とし、前記第二ハウジングに、前記長辺と平行な方向に延びる複数の放熱フィンを設けることができる。
【0018】
長辺側では、ねじ部材間の距離が長いため、第二ガスケットの反力により、ねじ部材間の間の領域が第二ガスケットから離反する方向に第二ハウジングが変形し易くなるが、(7)の構成であれば、放熱フィンがリブとして補強効果を発揮するため、第二ハウジングの変形を抑制することができる。そのため、第二ガスケットによる気密性を高めることができる
【0019】
(8)上記(7)で述べた放熱フィンを、前記第二ガスケットと軸方向で重なる位置もしくは第二ガスケットよりも外側となる位置に配置してもよい。
【0020】
このように第二ハウジングの長辺に接近した位置に放熱フィンを配置することにより、第二ガスケットの反力による第二ハウジングの変形抑制効果をさらに高めることができる。
【0021】
以上の(1)~(8)で述べたモータユニットと、前記モータユニットのモータ部に駆動されるオイルポンプとを有する電動オイルポンプは、ハウジング全体で高い気密性を有する。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、簡易な構造で複数のハウジング間の気密性を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】電動オイルポンプの断面図である。
図2】電動オイルポンプを構成するモータユニットの分解斜視図である(第一実施形態)。
図3】(a)図はモータケースとコントローラケースのアセンブリを半径方向から見た平面図であり、(b)図はコントローラケースとコントローラカバーのアセンブリを半径方向から見た平面図である。
図4】軸方向から第二ガスケット上に投影した第一ガスケットを示す投影図である。
図5】第一実施形態のモータユニットを半径方向から見た平面図である。
図6】電動オイルポンプを構成するモータユニットの分解斜視図である(第二実施形態)。
図7】コントローラカバーを軸方向他方側から見た平面図である(第三実施形態)。
図8】コントローラカバーを軸方向他方側から見た平面図である(第四実施形態)。
図9】コントローラカバーとコントローラケースのアセンブリを示す斜視図である(第四実施形態)。
図10】コントローラカバーとコントローラケースのアセンブリを示す斜視図である(第五実施形態)
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の第一~第五実施形態を図1図10に基づいて説明する。
【0025】
本実施形態の電動オイルポンプは、エンジンの停止中にトランスミッションに油圧を供給するものである。トランスミッションケース底部のオイル溜りからオイルを吸引し、このオイルを吐出してトランスミッション内にオイルを圧送することにより、トランスミッション内で必要な油圧が確保される。
【0026】
以下、図1図5に基づいて、本発明の第一実施形態を説明する。
図1に示すように、電動オイルポンプ1は、油圧を発生させるポンプ部2と、ポンプ部2を駆動するモータ部3と、基板4と、ポンプ部2、モータ部3、および基板4を収容するハウジング5とを有する。電動オイルポンプ1内には、軸方向一方側から他方側に向かって、ポンプ部2、モータ部3、および基板4の順に配置されている。モータ部3、基板4、およびハウジング5で第一実施形態のモータユニットが形成される。
【0027】
なお、以下の説明において、モータ部3の軸心Oと平行な方向を「軸方向」と呼び、軸心Oを中心とする円の半径方向を「半径方向」と呼ぶ(「内径方向」および「外径方向」も当該円の内径方向および外径方向を意味する)。また、軸心Oを中心とする円の円周方向を「周方向」と呼ぶ。軸方向のうち、ポンプ部2側を軸方向一方側と呼び、反ポンプ部側を軸方向他方側と呼ぶ。
【0028】
ポンプ部2は、複数の外歯が形成されたインナロータ21と、複数の内歯が形成されたアウタロータ22と、インナロータ21およびアウトロータ22を収容する静止部材としてのポンプケース23とを有するトロコロイドポンプである。アウタロータ22の内径側にインナロータ21が配置されている。アウタロータ22は、インナロータ21に対して偏心した位置にある。アウタロータ22の一部の歯部がインナロータ21の一部の歯部と噛み合っている。なお、インナロータ21の歯数をnとすると、アウタロータ22の歯数は(n+1)である。
【0029】
アウタロータ22の外周面およびポンプケース23の内周面は何れも互いに嵌合可能な円筒面である。アウタロータ22は、インナロータ21の回転に伴って従動回転するように、ポンプケース23の内周に回転可能に配置される。
【0030】
モータ部3として、例えば3相ブラシレスDCモータが使用される。このモータ部3は、周方向に複数のコイルを有するステータ30と、ステータ30の内径側に隙間をもって配置されたロータ31と、ロータ31に結合された出力軸32とを有する。ステータ30に設けられた複数のコイルは、それぞれU相、V相、W相に対応している。
【0031】
出力軸32はステータ30の軸方向一方側(ポンプ部2側)に突出している。出力軸32のうち、ステータ30から軸方向一方側に突出した部分が軸受33(例えば針状ころ軸受やすべり軸受)を介してハウジング5に対して回転可能に支持されている。
【0032】
出力軸32のポンプ部2側の端部には、ポンプ部2のインナロータ21が装着されている。出力軸32とポンプ部2の間に減速機は配置されておらず、インナロータ21はモータ部3の出力軸32に直結されている。軸受33とモータ部3のロータ32との間に、出力軸32の外周面に摺接するシールリップを備えたシール35が配置される。このシール35によって、ポンプ部2からモータ部3へのオイルの漏洩が防止されている。
【0033】
本実施形態のモータ部3はセンサレス駆動であり、センサによるロータ32の回転角の検出は行われていない。但し、公知の各種センサでロータ32の回転角を検出し、当該センサの検出値に応じてモータ部3の駆動を制御しても構わない。
【0034】
図1に示すように、基板4(メイン基板)は、モータ部3の出力軸32と直交する方向に延びるように配置される。基板4は、軸方向から見た平面視で矩形状に形成される。
【0035】
基板4には、外部電源に接続されるコネクタ42を介して電力が供給される。基板4の制御回路では駆動電流の極性が制御される。制御された電流は、基板4に接続したバスバー43を介して、モータ部3のステータ30に設けられた各コイルに供給される。
【0036】
基板4の片面または両面には複数の電子部品41が実装されている。基板4の両面のうち、反ポンプ部側の面45には、放熱部材としての放熱シート44が取り付けられている。放熱シート44は、熱伝導性が高くかつ圧縮可能な材料で形成されている。放熱シート44は、電子部品41のうちの高発熱部品(例えば半導体素子)と接触するように配置されている。また、放熱シート44は、後述するコントローラカバー52とも接触している。
【0037】
図1および図2に示すように、ハウジング5は、第一ハウジングとしてのモータケース51と、中間ハウジングとしてのコントローラケース52と、第二ハウジングとしてのコントローラカバー53とを備える。モータケース51とコントローラカバー53の間に、コントローラケース52が配置されている。
【0038】
モータケース51は、軸方向両側を開口した筒状をなし、内部にはモータ部3が収容されている。モータ部3を収容する空間は、モータケース51の軸方向他方側に開口している。モータ部3の外周面が円筒面状であることに対応して、モータケース51の内周面のうち、少なくともモータ部3の外周面と対向する部分は、図2に示すように、円筒面状に形成されている。モータケース51の軸方向他方側の端部の外周面には、外径方向に突出するフランジ部51aが一体に設けられている。
【0039】
既に述べたポンプケース23は、モータケース51の軸方向一方側の端部にモータケース51と一体に形成される。すなわち、ポンプケース23は、モータケース51の一部を構成している。モータケース51の軸方向一方側の開口部はポンプカバー54によって閉鎖されている。ポンプカバー54は、ボルト等のねじ部材を用いてモータケース51に固定される。
【0040】
コントローラケース52は、有底の筒状に形成される。コントローラカバー53は板状の本体53aと、本体53aの外側縁部の全周にわたって、軸方向一方側に突出するよう形成された周壁53bと、本体53aの軸方向他方側の面に形成された複数の放熱フィン53cとを有する。コントローラカバー53を構成する本体53a、周壁53b、および放熱フィン53cは一体に形成されている。コントローラケース52の軸方向一方側の端面がモータケース51の軸方向他方側の端面と接触し、コントローラケース52の軸方向他方側の端面がコントローラカバー53の軸方向一方側の端面となる周壁53bの端面と接触している。
【0041】
コントローラケース52の内側空間と、コントローラカバー53の内側空間とで基板収容空間55が形成され、この基板収容空間55内に、基板4が配置されている。モータ部3で生じた熱が基板収容空間55に伝わり難くなるように、モータケース51のモータ部3を収容する空間と、基板収容空間55とは、隔壁56によって区画されている。図1では、コントローラケース52に一体形成した底部が隔壁56として用いられている。
【0042】
コントローラケース52の内周面は、矩形状をなす基板4の輪郭に対応して、半径方向断面が概ね矩形状をなす角筒状に形成される。コントローラカバー53の周壁53bの内周面も、コントローラケース52の内周面と同じ形状(半径方向断面が概ね矩形状をなす角筒状)に形成されている。
【0043】
モータケース51とコントローラケース52の間には第一ガスケット61が配置され、コントローラケース52とコントローラカバー53の間には第二ガスケット62が配置される。第一ガスケット61および第二ガスケット62は、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)、ACM(アクリルゴム)、NBR(ニトリルゴム)、シリコーンゴム等のゴム材料で形成された固体ガスケット(パッキンも含む)である。ガスケット61、62の素材は特に問わず、樹脂材料や金属材料で形成されたガスケットも使用可能である。これらのガスケット61,62により、互いに接触する二つのハウジング(51、52)(52、53)間での気密性が確保される。
【0044】
第一ガスケット61は、モータケース51のモータ部3を収容する部分の内周面の形状に対応して円環状に形成され、第二ガスケット62はコントローラケース52の端面の形状に対応して矩形状に形成されている。本実施形態では、第一ガスケット61および第二ガスケット62を収容するガスケット溝を何れもコントローラケース52に設けた場合を例示しているが、第一ガスケット61のガスケット溝をモータケース51に設け、第二ガスケット62のガスケット溝をコントローラカバー53に設けてもよい。
【0045】
なお、第二ガスケット62のガスケット溝をコントローラカバー53に設けた場合、ガスケット溝周辺の剛性不足からコントローラカバー53が変形し易くなること、ガスケット溝の分だけコントローラカバーの軸方向の肉厚を増す必要があること、から、第二ガスケット62のガスケット溝はコントローラケース52に設けるのが好ましい。
【0046】
コントローラケース52は、図2に示すように、第一ねじ部材71、例えばボルトを用いてモータケース51に固定される。各第一ねじ部材71は、軸方向から見た複数箇所に、第一ねじ部材71の向きを平行にして配置される。本実施形態では、モータケース51のフランジ部51aの周方向4カ所に、フランジ部51aを軸方向に貫通するねじ孔が形成され、コントローラケース52の軸方向一方側の端面の四隅にそれぞれねじ孔が形成されている。フランジ部51aの軸方向一方側からねじ部材71を各ねじ孔にねじ込むことで軸力が発生し、この軸力によって、モータケース51とコントローラケース52が結合される。
【0047】
コントローラカバー53は、図2に示すように、第二ねじ部材72、例えばボルトを用いてコントローラケース52に固定される。各第二ねじ部材72は、軸方向から見た複数箇所に、第二ねじ部材72の向きを平行にして配置される。本実施形態では、コントローラカバー53の四隅にコントローラカバー53を軸方向に貫通するねじ孔が形成され、コントローラケース52の軸方向他方側の端面の四隅にねじ孔が形成されている。コントローラカバー53の軸方向他方側から第二ねじ部材72を各ねじ孔にねじ込むことで軸力が発生し、この軸力によって、コントローラケース52とコントローラカバー53が結合される。このように第一ねじ部材71および第二ねじ部材72を締め付けることで、モータケース51、コントローラケース52、およびコントローラカバー53が一体にユニット化される。
【0048】
図4に示すように、第一ねじ部材71と第二ねじ部材72は、周方向の同じ位相上に配置される。具体的には、コントローラケース52を軸方向から見た時の矩形の対角上に第二ねじ部材72が配置され、対角上の第二ねじ部材72同士を結ぶ線(対角線)上に第一ねじ部材71が配置されている。
【0049】
ハウジング5のうち、コントローラケース52は樹脂で形成され、それ以外のモータケース51、コントローラカバー53、およびポンプカバー54は何れもアルミニウム合金で形成される。従って、本実施形態に係るハウジング5では、コントローラケース52のヤング率が最も低くなり、モータケース51、コントローラカバー53、およびポンプカバー54のヤング率はこれよりも高くなる。コントローラケース52の軸方向両側のハウジング(モータケース51およびコントローラカバー53)は、同じヤング率の材料で形成してもよいし、異なるヤング率の材料で形成してもよい。
【0050】
以上に述べた電動オイルポンプ1では、ねじ部材71,72の締付けに伴って軸力が発生し、この軸力によって第一ガスケット61および第二ガスケット62が軸方向に圧縮される。この際、各ガスケット61、62には反力が生じる。コントローラケース52のヤング率が、両側のモータケース52およびコントローラカバー53のヤング率よりも小さいため、モータケース51とコントローラケース52の間では、図3(a)に示すように、ねじ部材71の間の領域(特に中央領域)で、第一ガスケット61の反力を受けたコントローラケース52がモータケース51から離反する方向に変形する。また、コントローラケース52とコントローラカバー53の間では、図3(b)に示すように、ねじ部材72の間の領域(特に中央領域)で、第二ガスケット62の反力を受けたコントローラケース52がコントローラカバー53から離反する方向に変形する。
【0051】
このようなコントローラケース52の変形により、モータケース51とコントローラケース52の突き合わせ部、およびコントロータケース52とコントローラカバー53の突き合わせ部にそれぞれ隙間g(面開き)が生じる。この隙間gの幅は、隣接する第一ねじ部材71間の中央領域、および隣接する第二ねじ部材72間の中央領域で最大となり、第一ねじ部材71の周辺領域および第二ねじ部材72の周辺領域で最小となる。この隙間gにより、第一ガスケット61および第二ガスケット62の面圧が部分的に低下し、気密性が低下することになる。また、隙間gが大きいほど、水分等の外部からの異物等が入り込み易くなり、ガスケット61,62の膨潤あるいは破損が発生し易くなる。
【0052】
この隙間gを介した水分等の異物の侵入による発錆を抑制するため、第一ガスケット61の表面、第二ガスケット62の表面、あるいはハウジング5のガスケット61、62との接触部に防錆処理(アルマイト処理、防錆グリースの塗布等)を施して発錆を防止する場合が多い。その一方で、防錆処理を行うとコストアップが避けられない。
【0053】
以上の課題を解決するため、本実施形態に係る電動オイルポンプ1では、図4に示すように、軸方向で第二ガスケット62上に投影した第一ガスケット61が、隣接するねじ部材71,72の間の領域に、第二ガスケット62と重なった部分M(ハッチングで示す)を有する。この重なった部分Mは、隣接するねじ部材72間の中央領域に形成するのが好ましい。
【0054】
投影後の第一ガスケット61と第二ガスケット62とが重なった部分Mでは、第一ガスケット61および第二ガスケット62で生じる各反力を軸方向で相殺することができる。そのため、ねじ部材71,72の締付けに伴うコントローラユニット52の変形を抑制することができる。これにより、図5に示すように、モータケース51とコントローラケース52の突き合わせ部S1での面開き、およびコントローラケース52とコントローラカバー53の突き合わせ部S2での面開きを抑えることができる。そのため、ハウジング5全体で高い気密性を確保することができる。
【0055】
また、ねじ部材71,72を緩めることで、モータケース51、コントローラケース52、およびコントローラカバー53を互いに分離することができるため、モータ部3あるいは基板4のメンテナンスも容易となる。特許文献1に記載のように、ハウジング同士の嵌合部を溶融固着させると、溶融固着後は二つのハウジングを分離できず、モータ部や基板のメンテナンスが困難となる。
【0056】
なお、図4では、図面左側の領域に第一ガスケット61と第二ガスケット62が重なった部分Mが存在していないが、これは、コントローラケース52における図4の左側の領域にコネクタ42が一体形成されているため、この領域でのコントローラケース52の剛性が確保されていることによる。
【0057】
突き合わせ部S1、S2での面開き幅は全周にわたって0とするのが望ましいが、周方向の一部または全部に微小幅の面開きが生じていても構わない。例えば、第一ガスケット61および第二ガスケット62を収容するガスケット溝の表面粗さRy(JIS B 0601に規定の最大高さ)以下の幅の部分的な面開きは許容される。本実施形態のように、第一ガスケット61および第2ガスケット62を収容する各ガスケット溝を樹脂製のコントローラケース52に成形する場合、その表面粗さRy=50s以下となるため、突き合わせ部S1、S2での面開き幅としては、Ry50s以下が許容される。
【0058】
また、突き合わせ部S1、S2での面開きが抑制されることで、モータケース51およびコントローラケース52のうち第一ガスケットに接触する領域、コントローラケース52およびコントローラカバー53のうち第二ガスケットに接触領域、第一ガスケット61の表面、および第二ガスケット62の表面、での防錆処理が不要となり、これらの面は非防錆処理面となる。そのため、電動オイルポンプ1の低コスト化を図ることができる。
【0059】
なお、モータケース51とコントローラカバー53の間に剛性差がある場合、モータケース51とコントローラカバー53のうち高剛性側の部材と接するガスケットのヤング率を、低剛性側の部材と接するガスケットのヤング率よりも小さくしてもよい。例えば、通常はコントローラカバー53よりもモータケース51の方が高剛性であるので、第一ガスケット61のヤング率を第二ガスケット62のヤング率よりも小さくする。これは、高剛性側のモータケース51と接する第一ガスケット61の反力はモータケース51によって吸収されにくいため、ヤング率の小さい第一ガスケット61の反力が大きくなり、第二ガスケット61で生じる反力とバランスさせることができるためである。
【0060】
図6に基づいて、本発明の第二実施形態を示す。図6は、第二実施形態にかかるモータユニットの分解斜視図である(基板4の図示は省略されている)。
【0061】
第一実施形態では、モータケース51とコントローラケース52の固定、およびコントローラケース52とコントローラカバー53の固定が、それぞれ別のねじ部材71,72を用いて行されていたが、第二実施形態は、双方の固定が共通のねじ部材73を用いて行われている点で第一実施形態と異なる。
【0062】
また、第一実施形態では、軸方向から第二ガスケット62上に投影した第一ガスケット61が、第二ガスケット62の一部のみと重なっている場合を説明したが、第二実施形態は、軸方向から第二ガスケット62上に投影した第一ガスケット61が、第二ガスケットの全周と重なっている点で第一実施形態と相違する。具体的には、第二実施形態では、第一ガスケット61が第二ガスケット62と同じ矩形状に形成されている。
【0063】
なお、第二実施形態では、矩形状の第一ガスケット61に対応して、モータケース51のフランジ部51aが軸方向から見て矩形状に形成されている。
【0064】
第二実施形態の構成でも、第一ガスケット61と第二ガスケット62の反力が軸方向で相殺されるため、ねじ部材73の締付けに伴うコントローラケース52の変形を抑制することができる。従って、第一実施形態と同様の効果を奏することができる。第一実施形態に対する第二実施形態の上記二つの相違点、すなわち共通のねじ部材73の使用と、第一ガスケット61および第二ガスケット62の同一形状化のうち、何れか一方のみを採用しても構わない。
【0065】
図7に本発明の第三実施形態を示す。図7は、コントローラカバー53を軸方向他方側から見た平面図である。
【0066】
この第三実施形態では、第一実施形態におけるコントローラカバー53を、基板4の形状に対応して、軸方向から見て長辺Xと短辺Yを有する矩形状に形成している。コントローラカバー53には複数の放熱フィン53cが一体形成されているが、第三実施形態では各放熱フィン53cが長辺Xと平行に延びる方向に配置されている。
【0067】
長辺X側では、ねじ部材72間の距離が長いため、第二ガスケット62の反力により、ねじ部材72間の中央領域が第二ガスケット62から離反する態様でコントローラカバー52が変形し易くなるが、第三実施形態の構成であれば、放熱フィン53cがリブとして補強効果を発揮するため、コントローラカバー53の上記態様での変形を抑制することができる。そのため、第2ガスケットによる気密性を高めることができる。
【0068】
図8および図9に本発明の第四実施形態を示す。図8は、コントローラカバー53を軸方向他方側から見た平面図であり、図9は、コントローラカバー53とコントローラケース52のアセンブリを示す斜視図である。なお、図8において、破線は第二ガスケット62の装着位置を示している。
【0069】
この第四実施形態では、第三実施形態において、第二ガスケット62と軸方向で重なる位置もしくは第二ガスケット62よりも外側となる位置に、放熱フィン53cと平行に配置した放熱フィン53dを追加している。この放熱フィン53c、53dは、本体部53aから軸方向他方側に突出させて本体部53aと一体に形成されている。この放熱フィン53dは、リブとしても機能する。このようにコントローラカバー53の長辺に接近した位置に放熱フィン53dを追加することにより、第二ガスケット62の反力によるコントローラカバー53の変形抑制効果をさらに高めることができる。
【0070】
図10に本発明の第五実施形態を示す。図10は、コントローラカバー53を軸方向他方側から見た平面図である。
【0071】
第五実施形態では、第四実施形態において、第二ガスケット62と軸方向で重なる位置もしくは第二ガスケット62よりも外側となる位置に、コントローラカバー52の短辺Y(図7参照)と平行に延びるリブ53eを追加している。このリブ53eも放熱フィンとして機能する。第五実施形態の構成であれば、第二ガスケット62の反力によるコントローラカバー53の変形抑制効果をさらに高めることができる。
【0072】
なお、以上の説明では、モータユニットを電動オイルポンプ1に組み込んでいるが、モータユニットの用途はこれに限らず、電動オイルポンプ以外の産業機器あるいは車載機器等に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 電動オイルポンプ
2 ポンプ部
3 モータ部
4 基板
5 ハウジング
51 モータケース(第一ハウジング)
52 コントローラケース(中間ハウジング)
53 コントローラカバー(第二ハウジング)
61 第一ガスケット
62 第二ガスケット
71 第一ねじ部材
72 第二ねじ部材
73 ねじ部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10