(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007244
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】紙袋用の紙積層体、及び紙袋
(51)【国際特許分類】
B65D 30/02 20060101AFI20240111BHJP
B32B 29/06 20060101ALI20240111BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240111BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20240111BHJP
【FI】
B65D30/02
B32B29/06
B32B27/10
C08L101/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022108612
(22)【出願日】2022-07-05
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】戸出 良平
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
4J002
【Fターム(参考)】
3E064AA03
3E064AB11
3E064BA03
3E064BB03
3E064BC13
3E064BC18
3E064EA05
3E064FA01
3E064GA01
3E064HA06
3E064HH04
4F100AJ04A
4F100AK06B
4F100AK06G
4F100AK07B
4F100AK07G
4F100AK63B
4F100AK63G
4F100AT00
4F100BA02
4F100CA12A
4F100CA12H
4F100CA30A
4F100CA30H
4F100DG10A
4F100EH462
4F100EH46A
4F100GB15
4F100HB312
4F100HB31A
4F100JK15
4F100JN01A
4J002AE051
4J002BB171
4J002BC071
4J002CC031
4J002CC161
4J002CC181
4J002CD001
4J002CF011
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4J002CK021
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4J002FD201
4J002FD206
4J002GF00
4J002GG00
4J002HA05
(57)【要約】
【課題】プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、パッケージデザインのバリエーションを出しやすい紙製の袋を提供する。
【解決手段】少なくとも紙基材を有する、紙袋用の紙積層体であり、上記紙基材は、平面視で、透明化剤を含む1又は2以上の透明部領域と、透明化剤を含まない非透明部領域とを有し、上記透明部領域は、全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、上記非透明部領域の全光線透過率よりも15%以上高く、上記透明部領域のヘイズ値が90%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも紙基材を有する、紙袋用の紙積層体であり、
上記紙基材は、平面視で、透明化剤を含む1又は2以上の透明部領域と、透明化剤を含まない非透明部領域とを有し、
上記透明部領域は、全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、上記非透明部領域の全光線透過率よりも15%以上高く、
上記透明部領域のヘイズ値が90%以上である、
ことを特徴とする紙袋用の紙積層体。
【請求項2】
上記透明部領域は、上記透明化剤の含有量が10g/m2以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載した紙袋用の紙積層体。
【請求項3】
上記紙積層体の坪量が40g/m2以上80g/m2以下である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した紙袋用の紙積層体。
【請求項4】
上記紙基材の一方の面側に、ヒートシール性を有する材料からなる熱可塑性樹脂層を有する、
ことを特徴とする請求項1に記載した紙袋用の紙積層体。
【請求項5】
請求項1に記載の紙積層体からなる、紙袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙袋を構成するための紙積層体及びその紙積層体からなる紙袋に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
中身の見える紙袋としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載の紙袋がある。
特許文献1には、内層紙と外層紙に表裏を抜ける孔をあけ、その内層紙と外層紙との間に透明フィルムを接着して介在せしめて上記孔を塞いでなる窓付き紙袋が記載されている。
特許文献2には、ビニル袋の代替として、トレーシングペーパー紙のような透明紙を折り曲げ等の加工を行って作成した、中味の見える紙袋が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-114000号公報
【特許文献2】実用新案登録第3155175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、プラスチックフィルムはその透明性の高さから、内容物を外から確認できることが必要となる包材用途で用いられてきた。しかしながら、サステイナブルな社会の実現の観点からプラスチック使用量の削減が社会的に求められている。そこで、プラスチックフィルムを用いて作成されていた包材を、紙に置き換える動きも出てきている。
しかしながら、紙は透明性の観点でプラスチックフィルムよりも劣る。このため、内容物を外から確認したい包材用途へ展開する上で、乗り越えるべき課題がある。
【0005】
ここで、特許文献1に記載の紙袋は、紙を主体とした袋体の一部に透明フィルムを介在させることにより内容物を見られる物品である。この紙袋の構造は、プラスチック使用量は減らせるが、まだプラスチックフィルムを使用する点で好ましくない。
また、特許文献2には、トレーシングペーパー紙だけからなる、中身の見える紙袋が提案されている。しかし、この紙袋は、全面が透明となるため、パッケージのデザインのバリエーションを出しづらいといった観点で好ましくはない。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、パッケージデザインのバリエーションを出しやすい紙製の袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
課題解決のために、本発明の一態様は、少なくとも紙基材を有する、紙袋用の紙積層体であり、上記紙基材は、平面視で、透明化剤を含む1又は2以上の透明部領域と、透明化剤を含まない非透明部領域とを有し、上記透明部領域は、全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、上記非透明部領域の全光線透過率よりも15%以上高く、上記透明部領域のヘイズ値が90%以上である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の態様によれば、プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、部分的に適度な透明性を有する紙製の袋を提供可能となる。そして、本発明の態様によれば、プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、パッケージデザインのバリエーションを出しやすい紙製の袋を提供可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に基づく実施形態に係る紙袋用の紙積層体を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明に基づく実施形態について図面を参照して説明する。
(構成)
本開示の紙積層体は、少なくとも紙基材1を有する。
本実施形態の紙積層体は、
図1のように、紙基材1の一方の面側に熱可塑性樹脂層2が形成され、紙基材1の他方の面側に、コーティング層3、透明蒸着層4がこの順に記載されている。
本開示の紙積層体は、熱可塑性樹脂層2、コーティング層3、透明蒸着層4などの他の層が無くても良い。
【0011】
熱可塑性樹脂層2は、例えば、LDPE、LLDPE、PPなどのヒートシール性を有する熱可塑性樹脂からなる膜材である。
コーティング層3、透明蒸着層4は、それぞれ2層以上であってもよい。コーティング層3、透明蒸着層4としては、包装用の紙積層体に適用されている公知のコーティング層や透明蒸着層を適用すればよい。コーティング層3は、透明性が高い方が好ましいが、顔料を含んでいてもよい。
紙基材1における、他方の面側の最表層の一部に、接着層が形成されていてもよい。例えば、紙袋に成形する際における、接合部に接着層を有していても良い。
【0012】
<紙基材1>
紙基材1は、主に紙袋の成形性や剛性を付与するための層である。
紙基材1の主材料には、紙容器に用いられている公知のパルプ材その他の紙材を用いればよい。
本実施形態の紙基材1は、
図2のように、平面視で、透明化剤を含む1又は2以上の透明部領域1Aと、透明化剤を含まない非透明部領域1Bとに区分されている。
【0013】
紙基材1における透明部領域1Aは、透明化剤を含むことで、全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、上記非透明部領域1Bの全光線透過率よりも15%以上高く、かつ透明部領域1Aのヘイズ値が90%以上となっている。この制御は、透明化剤によって調整可能である。
紙基材1は、製袋性の観点から、坪量が40g/m2以上であることが好ましい。
また、紙基材1は、油脂系材料の塗布・乾燥後の透明性の観点から、坪量が80g/m2以下であることが好ましい。
そして、紙基材1の坪量を40g/m2以上80g/m2以下の範囲とすることで、透明化度を適度に高くすることができる。
【0014】
<透明化剤について>
透明化剤は、紙基材1に含有されることにより、含有された部位の透明性を向上させる材料である。
紙基材1の透明部領域1Aに含ませる透明化剤は、紙基材1の表面に異なる層として積層されていてもよく、紙基材1の内部に分散されて存在していてもよい。
透明化剤の含有量は、10g/m2以下であることが好ましい。これにより、紙積層体を上述のような範囲に適度に透明化することができ、紙の風合を一層高めることができる。また、これにより、グラビア印刷機により塗工しやすくなるので、容易に透明の部分を形成することができる。透明化剤の含有量は、3g/m2以上6g/m2以下が好ましい。
【0015】
透明化剤としては、例えば、溶剤に希釈された油脂系材料が例示できる。透明化剤としては、透明紙などに使用される公知の透明化剤を使用すれば良い。
透明化剤に使用される油脂系材料について補足する。
油脂系材料は、溶剤で任意の粘度に希釈でき、かつ溶剤揮発後に固体として振る舞う任意の透明化材料として用いることができる。
油脂系材料は、紙基材1を構成する紙繊維(セルロース)との屈折率差が小さいために、油脂系材料が含まれる紙の透明性を向上させることができる。そのような透明化材料としては、例えば、特開2007-262599号公報に開示される石油系炭化水素樹脂、ロジン系樹脂が例示できる。ロジン系樹脂は、ロジン又は水添ロジン、及びマレイン化ロジンのようなロジン系樹脂の中から選ばれた少なくとも一種又はそれらの混合物である。
【0016】
他の透明化剤としては、石油系炭化水素樹脂を公的に使用できる。
石油系炭化水素樹脂とは、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、2,2’-ジ(4-ヒドロキシフェニル)プロパン等の脂環族飽和炭化水素、芳香族不飽和炭化水素から得られる樹脂及びその他アミノ基、水酸基、ビニル基、ニトロ基、カルボニル基等の各種置換基を有する樹脂を意味する。また、係る石油系炭化水素樹脂に、パラフィンワックス、イソパラフィン等の飽和炭化水素、菜種油、大豆油、牛脂硬化脂肪酸の動植物油脂、ステアリン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の飽和若しくは不飽和脂肪酸の1種又は2種以上を配合したものも使用できる。
【0017】
また、透明化剤として、セルロースの屈折率にほぼ等しい屈折率を有する物質、例えば、流動パラフィン、ポリブテン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、スチレン無水マレイン酸共重合体、ポリスチロール樹脂などの熱硬化性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、不飽和アルキド樹脂、変性アクリル樹脂、変性エポキシ樹脂、変性ウレタン樹脂などに、それぞれ適切なビニルモノマーと光増感性物質とを含ませた紫外線硬化型樹脂、オレフィン重合油を主成分とするもの等を例示することができる。
以上のような透明化剤の使用は、例えば、油脂系材料を溶剤希釈して塗液化し、その塗液をグラビア印刷機にて透明部領域1Aとなる紙面の部分だけに印刷し、乾燥することにより透明部領域1Aが形成される。
【0018】
(紙袋)
本実施形態の紙積層体を、公知の形状に加工することで紙袋とする。紙袋の形態には、特に限定はないが、例えば透明部領域1Aが正面などに位置するように、紙袋の形状を設計することが好ましい。
【0019】
(作用その他)
本実施形態では、透明部領域1Aの全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、非透明部領域1Bの全光線透過率よりも15%以上高く、かつ透明部領域1Aのヘイズ値が90%以上となっている。この結果、本実施形態では、プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、部分的に適度な透明性を有する紙製の袋を提供可能となる。
また、本実施形態によれば、プラスチックフィルムを用いずに、紙の風合を有しつつも、パッケージデザインのバリエーションを出しやすい紙製の袋を提供可能となる。
【0020】
(その他)
本開示は、次の構成も取り得る。
(1)少なくとも紙基材を有する、紙袋用の紙積層体であり、
上記紙基材は、平面視で、透明化剤を含む1又は2以上の透明部領域と、透明化剤を含まない非透明部領域とを有し、
上記透明部領域は、全光線透過率が35%以上であり、その全光線透過率が、上記非透明部領域の全光線透過率よりも15%以上高く、
上記透明部領域のヘイズ値が90%以上である。
(2)上記透明部領域は、上記透明化剤の含有量が10g/m2以下である。
(3)上記紙積層体の坪量が40g/m2以上80g/m2以下である。
(4)上記紙基材の一方の面側に、ヒートシール性を有する材料からなる熱可塑性樹脂層を有する。
(5)本開示の紙積層体からなる、紙袋。
【実施例0021】
次に、本実施形態に基づく実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、紙積層体を紙基材1だけから構成した。
実施例1では、紙基材1として大王製紙製 金鯱(坪量30g/m2)を用いた。
透明化剤として油脂系材料と用い、その油脂系材料として大和化学製 クラリテンDCを用いた。
その透明化剤を、紙基材1の非クレーコート面に5g/m2(乾燥時)になるようにグラビア塗工することにより、透明部領域1Aを形成して、実施例1の紙積層体を得た。
この紙積層体を長方形に切り出して、2枚の紙積層体を用意し、その2枚の紙積層体の外周のうち、三辺を貼り合わせて袋状として、実施例1の紙袋とした。
【0022】
(実施例2)
実施例2では、紙基材1として大王製紙製 ナゴヤ晒竜王(秤量80g/m2)を用いた以外は、実施例1と同じ条件で、紙積層体及び紙袋を作製した。
(実施例3)
実施例3では、透明化剤を構成する油脂系材料として、東京インキ製 LG-WRを用いた以外は、実施例1と同じ条件で、紙積層体及び紙袋を作製した。
(実施例4)
実施例4では、透明化剤を構成する油脂系材料として、東京インキ製 LG-WRを用いた以外は、実施例2と同じ条件で、紙積層体及び紙袋を作製した。
【0023】
(比較例1)
比較例1では、紙積層体を紙基材1だけから構成した。
比較例1では、紙基材1として大王製紙製 ナゴヤ晒竜王(秤量80g/m2)を用いた。
そして、透明化剤の塗工を実行することなく、比較例1の紙積層体を得た。
この紙積層体を長方形に切り出して、2枚の紙積層体を用意し、その2枚の紙積層体の外周のうち、三辺を貼り合わせて袋状として、比較例1の紙袋とした。
【0024】
各実施例及び比較例の条件及び評価結果を表1に示す。
表1中、透明部とは、透明部領域1Aの部分を指す。
【0025】
【0026】
(評価)
<透明性について>
各サンプルについて、日本電色工業製のヘーズメーター(NDH-7000)にて、紙基材1(紙積層体)の非クレーコート面側から露光して、油脂系材料の塗工部(透明部領域1A)及び非塗工部(非透明部領域1B)の測定を行い、各部の全光線透過率の値を読み取った。
判定結果は、次の通りである。
〇:油脂系材料の塗工部の全光線透過率が35%以上、かつ、油脂系材料の塗工部の全光線透過率が非塗工部の全光線透過率よりも15%以上が高い
×…上記以外
【0027】
<紙の風合について>
各サンプルについて、日本電色工業製のヘーズメーター(NDH-7000)にて、紙基材1(紙積層体)の非クレーコート面側から露光して、油脂系材料の塗工部(透明部領域1A)の測定を行い、ヘイズ値を読み取った。
ここで、発明者は、種々の検討により、油脂系材料を塗工した部分のヘイズ値が90%以上であると、ある程度透明で袋の内部が透けて見えながらも、全体としては紙の風合を残した袋とすることができる、との知見を得た。
判定結果は、次の通りである。
〇:油脂系材料の塗工部(透明部領域1A)のヘイズ値が90%以上
×:油脂系材料の塗工部(透明部領域1A)のヘイズ値が90%未満
【0028】
<評価結果>
表1から分かるように、紙材料に実施例に記載した油脂系材料を塗工することにより、未塗工の場合やプラスチックフィルムで置き換えることでは再現できないような光学特性を発現させることができた。